説明

乗用車用空気入りラジアルタイヤ

【目的】 2層のスチールコードベルト層を有するタイヤの軽量化を図りながら、従来タイヤと同等以上の操縦安定性を発揮できるようにする。
【構成】 トレッド面に少なくともタイヤ周方向に延びる複数本の溝6を設け、トレッド内部に2層のスチールコードからなるベルト層4u,4dを設けた空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層4u,4dの50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αを5≦α≦9mm2 の範囲にし、かつ前記溝6の溝深さdを6.0≦d≦8.0mmの範囲にすると共に、溝底から最外側のベルト層6uまでの溝下ゴム厚さtを1.0≦t≦2.5mmの範囲にする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、2層のベルト層をスチールコードから構成したトレッド・ベルト構造を有するタイヤの軽量化を図りながら操縦安定性を向上するようにした乗用車用空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】最近の地球規模で拡大しつつある環境汚染問題から車両の一層の低燃費化が強く要望されるようになり、その一環としてタイヤの軽量化も大きな技術課題としてクローズアップされてきている。従来、トレッド補強用の2層のベルト層をスチールコードから構成した乗用車用空気入りラジアルタイヤは、スチールコードの高強度,高弾性率が他の繊維コードに較べて非常に優れているため、高い操縦安定性を発揮することが知られている。しかし、スチールコードは比重が大きいためにタイヤ重量を増大させ、燃費を低下させてしまうという欠点があり、上述した技術課題に対応し難いという問題を有している。
【0003】従来、スチールコードベルト層を設けた空気入りラジアルタイヤでは、そのベルト層の50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積は、操縦安定性確保のため、最低9.5mm2 以上は必要とされていた。このような空気入りラジアルタイヤにおいて軽量化を図るには、ベルト層のスチールコードのワイヤ量を減らせばよいが、それによってベルト層の曲げ剛性が低下するため、コーナリングパワーが低減し、その優れた操縦安定性が損なわれる。したがって、スチールコードベルト構造のタイヤの優れた操縦安定性を維持乃至向上しながら軽量化することは殆ど不可能であるとされていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、2層のスチールコードベルト層を有するタイヤの軽量化を図りながら、従来タイヤと同等以上の操縦安定性を発揮できるようにする乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明は、トレッド面に少なくともタイヤ周方向に延びる複数本の溝を設け、トレッド内部に2層のスチールコードからなるベルト層を設けた空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層の50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αを5≦α≦9mm2 の範囲にし、かつ前記溝の溝深さdを6.0≦d≦8.0mmの範囲にすると共に、溝底から最外側のベルト層までの溝下ゴム厚さtを1.0≦t≦2.5mmの範囲にしたことを特徴とするものである。
【0006】本発明において溝深さ(d)とは、図2に示すようにトレッド面に垂直方向に最深の溝底まで測定した距離をいい、溝下ゴム厚さ(t)とは、最深の溝底から外側のベルト層(4u)のコード表面までの距離をいい、ベルト層がベルトカバー層に覆われているか否かに関わりなく、外側ベルト層までの距離として定義される。
【0007】また、50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積α(mm2 )とは、タイヤをベルト層のコード方向に対して直交する方向に切断したときのベルト層切断面に表れるスチールコードの50mm巾当たりの打ち込み数(エンド数)をEとし、コード1本当たりの素線数をn、素線直径をa(mm)とするとき、次式で示される値をいう。
【0008】α(mm2 )=n×(π/4)a2 ×E本発明は、上記のようにスチールコードベルト層の50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αを、従来タイヤの最低水準である9.5mm2 よりも小さい5≦α≦9mm2 の範囲にし、しかも溝深さd及び溝下ゴム厚さtを従来タイヤに比べて小さく設定したこととが相まって2層のベルト層ともスチールコードから構成したにもかかわらず、従来タイヤに比べて軽量化すると共にコーナリングパワーを同等以上にすることが可能になる。
【0009】図1及び図2は、本発明の構成を有する乗用車用空気入りラジアルタイヤを例示するものである。図において、1はトレッド部、2はナイロンコードやポリエステルコード等の有機繊維コードからなるカーカス層である。カーカス層2は左右一対のビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返され巻き上げられている。このカーカス層2のタイヤ周方向EE’に対するコード角は実質的に90°になっている。カーカス層2のトレッド部1の外側には、内側ベルト層4dと外側ベルト層4uの2層のベルト層がタイヤ1周にわたって配置されている。これら2層の外側ベルト層4uと内側ベルト層4dはいずれもスチールコードから構成され、50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αを5〜9mm2 の範囲にしている。これら内側ベルト層4dと外側ベルト層4uのタイヤ周方向EE’に対するコード角度は5〜40°であると共に互いに交差している。
【0010】トレッド部1の表面には、タイヤ周方向EE’に延びる主溝6とこれに交差する副溝7とが設けられている。主溝6の溝深さdは6.0≦d≦8.0mmの範囲に設定され、また溝下ゴム厚さtが1.0≦t≦2.5mmの範囲に設定されている。本発明者らは、上述した発明をするに当たり、タイヤの軽量化という技術課題を前提に、ラジアルタイヤのコーナリングパワーを左右する要因を多面的に探索した。その結果、後述する実験例で詳細を示すように、トレッド面に主としてタイヤ周方向に設けた溝の溝深さd及び溝下ゴム厚さtがコーナリングパワーを決める大きな要素になり、しかもこれら溝の溝深さdや溝下ゴム厚さtが小さいほどコーナリングパワーを大きくするということを知見した。この場合のタイヤ周方向の溝としては、ストレート溝であるか、ジグザグ溝であるかは関係なく、またタイヤ巾方向に副溝を有するか否かにも関係するものではなかった。すなわち、2層のスチールコードベルト層のスチールコード量を低減しても、それに伴う操縦安定性の低下を、トレッド面に設けた溝深さdや溝下厚さtを小さくすることによって補うことができることを見出した。
【0011】以下、実験例を参照しながら本発明の詳細について説明する。図3は、溝深さdとコーナリングパワーCPとの関係についての実験例の結果を示すものである。この実験はタイヤ構造を次のように共通にし、溝深さdだけを6mm,7mm,8mm,9mm,10mm,11mm,12mmのそれぞれに異ならせた7種類のラジアルタイヤについて行った結果である。
【0012】トレッド構造:図1リム:13×5Jタイヤサイズ:165SR13ベルト構造:ベルト層数:2枚コード構造:スチールコード1×2(0.3mm)
エンド数:49本/50mmコード角度:21°ベルト層巾:内側/外側=125mm/115mmスチールワイヤ総断面積α:6.9mm2 溝下ゴム厚さt:3.0mmコーナリングパワーCPは、ドラム試験において荷重300kgf、速度10km/hrで走行させるとき、スリップ角右1°時の横力とスリップ角左1°時の横力とをそれぞれ測定し、その両測定値の平均値(絶対値の平均値)を溝深さ6.0mmのタイヤの測定値を100とするときの指数で示した。
【0013】一方、図4は溝下ゴム厚さtとコーナリングパワーCPとの関係についての実験結果を示すものである。この実験は上記実験で使用したタイヤと同じトレッド構造、タイヤサイズ、ベルト構造にすると共に、溝深さdを7.5mmにする点を共通にし、エンド数を45本/50mm(α=6.4mm2)に変更し、かつ溝下ゴム厚さtを0.5mm,1.0mm,1.5mm,2.0mm,2.5mm,3.0mm,3.5mm,4.0mmのそれぞれに異ならせた8種類のラジアルタイヤについて行った。コーナリングパワーCPは上記と同じ方法で測定し、溝下ゴム厚さtが1.0mmのタイヤの測定値を100とするときの指数で示した。
【0014】先ず、溝深さdについては、図3から、溝深さdが浅いほどコーナリングパワーCPが高くなり、8.0mm以下でコーナリングパワーCPが急激に増大することがわかる。上述のような傾向は、試験に供したタイヤサイズのタイヤに限らず、他のサイズのタイヤについても同様の傾向があることが認められる。従来のラジアルタイヤでは、溝深さdを8〜11mmとするのが一般的であるが、本発明では、図3の結果から溝深さdを6.0〜8.0mmとし、好ましくは6.5〜7.5mmにするのである。下限の6.0mmは、摩耗寿命から決められ、これよりも浅くなってはタイヤとして実用性に乏しくなる。
【0015】また、溝下ゴム厚さtについては、図4から、溝下ゴム厚さtが薄くなるほどコーナリングパワーCPが大きくなり、特に2.5mm以下で急激に増大することがわかる。このような傾向は、他のサイズのタイヤについても同様の傾向が認められる。従来のラジアルタイヤでは、溝下ゴム厚さtを2.5〜4mmとするのが一般的であるが、本発明では、図4の結果から溝下ゴム厚さtを1.0〜2.5mm、好ましくは1.0〜2.0mmとするのである。下限の1.0mmは、ベルトコードを保護し、その破損故障を防止するための限界である。
【0016】本発明は、スチールコードベルト層のワイヤ量を減らした場合のコーナリングパワーの低下を、前述した溝深さdと溝下ゴム厚さtを薄くすることによって補うが、そのワイヤ量の低減されたスチールコードベルト層の50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αは、以下に説明する理由から5〜9mm2 の範囲でなければならない。
【0017】図5は、上述のように2層共にスチールコードベルト層にしたラジアルタイヤについて、スチールコードベルト層の50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αとコーナリングパワーCPとの関係についての実験結果を示したものである。この実験は、前記図3の実験で使用したタイヤと同じトレッド構造、タイヤサイズ、ベルト構造(ベルト層数,コード構造,コード角度,ベルト巾)を共通にすると共に、溝深さを7.0mmにし、溝下ゴム厚さを2.0mmにする点を共通にし、スチールコードベルト層のコード構造とエンド数を変えることによりスチールワイヤ総断面積αだけを4mm2 ,5.1mm2 ,6.9mm2 ,7.9mm2 及び9.6mm2 のそれぞれに異ならせた5種類のラジアルタイヤについて行った結果である。
【0018】これら各タイヤのコーナリングパワーCPは、上記図3と同じ方法で測定し、下記構成の従来タイヤの測定値を100とするときの指数で示した。
従来タイヤの構成トレッド構造:図1タイヤサイズ:165SR13ベルト構造:ベルト層数:2枚コード構造:1×5(0.25)のスチールコードエンド数:39本/50mmコード角度:21°ベルト層巾:内側/外側=125mm/115mmスチールワイヤ総断面積α=9.6mm2 溝深さ: 9.0mm溝下ゴム厚さ:3.0mmまた、図6は、図5の実験に使用したのと同じタイヤについて、スチールコードベルト層の50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αとタイヤ重量との関係についての実験結果を示したものである。このタイヤ重量は、2層のベルト層ともスチールコードから構成した上記従来タイヤの重量を100とするときの指数で示した。この指数値が小さい程軽量化されている。
【0019】図5から明らかなように、コーナリングパワーCPは、前述した溝深さdと溝下ゴム厚さtの条件を満足すると共にスチールコードベルト層のスチールワイヤ総断面積αをα≧5mm2 にすれば、従来タイヤと同等以上にすることができること判る。また、タイヤ重量については、図6から明らかなようにスチールワイヤ総断面積αが11.0mm2 を越えると従来タイヤよりも重量が増大する。
【0020】上述した図5、図6の結果から、従来タイヤよりも軽量で、かつコーナリングパワーを同等以上にできるようにするためには、溝深さdと溝下ゴム厚さtの条件を前述のように満足させた上でスチールワイヤ総断面積αを5〜9mm2 の範囲にする必要があり、望ましくは6.5〜8.0mm2 の範囲にするのがよい。本発明において、ベルト層に使用するスチールコードは、50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αが上記数値範囲を満足するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、素線径0.15〜0.35mmのスチールワイヤからなるコード構造1×2のもの、素線径0.15〜0.35mmのスチールワイヤからなるコード構造2+2のもの等がある。しかし、本発明の目的を達成する上では、望ましくはハイテンションワイヤからなる1×2のコード構造を有するものを使用することが望ましい。これらのスチールコードは、その打ち込み本数(エンド数)を調整し、本発明に規定するスチールワイヤ総断面積αを満足するようにする。
【0021】また、本発明に使用するスチールコードは、100%伸長時モジュラス(以下100%モジュラスという)Mr が35kg/cm2 <Mr ≦55kg/cm2 の範囲のコートゴムにより被覆したものを使用することが望ましい。より好ましくは40kg/cm2 ≦Mr ≦50kg/cm2 の範囲のものがよい。このコートゴムの100%モジュラスMr を35kg/cm2 より大きくすることによりスチールコードとのモジュラスの差を小さくし、ベルト層端部におけるセパレーしョンを抑制することができる。また、55kg/cm2 以下にすることによりスチールコードを折れ難くすることができる。
【0022】さらに、図2に示すように、外側ベルト層4uを構成するスチールコードの最内側表面から内側ベルト層4dを構成するスチールコードの最外側表面までの距離、即ちベルト間ゲージAを0.4mm<A<0.9mmになるようにすることが望ましい。より好ましくは0.5mm≦A≦0.8mmの範囲にするのがよい。このAを0.4mmより大きくすることにより単位体積当たりの層間剪断歪みを小さくし、セパレーションの発生を防止し、耐久性を向上することができる。また、このAを0.9mmより小さくすることによりベルト層全体の剛性の低下を防止し、溝深さdと溝下厚さtを小さくしたことによるコーナリングパワーの向上効果をより一層高めることができる。
【0023】また、2層のベルト層はタイヤ周方向に対するコード角度が5〜40度、好ましくは15〜30度になるようにし、かつベルトコードが互いに交差するように積層し、タイヤ子午線方向の巾をタイヤ接地巾の80〜130%、好ましくは90〜110%にするのがよい。
【0024】
【実施例】タイヤサイズとベルト構造を下記のようにし、また、トレッドゴムを表2のゴム組成、トレッドパターンを下記のようにする点を共通にする以外は、溝の溝深さd、溝下ゴム厚さt、内外ベルト層のコードの種類と構造、50mm巾当たりのエンド数、スチールコードベルト層のスチールワイヤ総断面積αを、それぞれ表1に示す値に変更した本発明タイヤ1、本発明タイヤ2、本発明タイヤ3、本発明タイヤ4、比較タイヤ1〜6を製作した。
【0025】タイヤサイズ:165SR13ベルト構造:図1ベルト層数:2枚ベルト層巾:内側/外側=120mm/115mmコード角度:内側/外側ともタイヤ周方向に対し21°トレッドパターン:タイヤ周方向に沿ってトレッド接地面内に4本の巾6mmのストレート主溝を設け、ほぼ巾が互いに均等な5本のリブを形成する。巾4mm,ストレート主溝と同じ溝深さの複数本の副溝をラジアル方向に約26mmの間隔で形成して前記リブを分割して短形ブロックにし、この矩形ブロック72個をタイヤ周上に5列に配列させたブロックパターンを形成した。
【0026】これら10種類のタイヤ及び前述した従来タイヤについて、前述した図3と同じ方法によるコーナリングパワーCP及び下記のワイヤ折れを評価し、これら評価結果をタイヤ1本当たりの重量の比較と共に表1に示した。コーナリングパワーCPの評価値は従来タイヤの測定値を100とするときの指数により表示し、タイヤ1本当たりの重量の比較は従来タイヤを基準として表示した。
ワイヤ折れ:室内ドラム試験機に、空気圧1.4kgf/cm2 ,使用リム13×5Jを共通にする各タイヤを取り付け、スリップ角±4°,荷重300±200kgfの条件で、20km/hrの速度で40時間走行した後のベルトコード折れの状況を調べ、次の基準によりワイヤ折れを評価した。ベルト折れ本数が3本以下の場合を○、3本を越えるときを×とした。
【0027】


【0028】


表2中、 1):日本ゼオン株式会社製スチレン・ブタジエン共重合体ゴム“Nipol 1712”2):大内新興化学株式会社製“ノクラック6C”3):大内新興化学株式会社製“サンノック”4):サンシン化学工業株式会社製“サンセラー232−MC”表1から、従来タイヤとはスチールワイヤ総断面積αを小さくした点だけが相違する比較タイヤ1は、タイヤ重量を225g低減できるもののコーナリングパワーCPが10%も低減している。この比較タイヤ1において溝深さdのみを浅くした比較タイヤ2並びに比較タイヤ1において溝下厚さtのみを薄くした比較タイヤ3は、それぞれタイヤ重量がさらに低減するもののコーナリングパワーCPは従来タイヤの水準に達していない。
【0029】また、比較タイヤ4のように、溝深さdを浅くし、溝下ゴム厚さtを薄くすると共に、スチールワイヤ総断面積αを小さくし過ぎると(4.8mm2 )、タイヤ重量は大きく低減する(−1210g)ものの、コーナリングパワーCPが低下し、しかもワイヤ折れが発生する。この比較タイヤ4ほどではないが、同様に溝深さdを浅くし、溝下ゴム厚さtを薄くすると共に、スチールワイヤ総断面積αを逆に大きくした比較タイヤ5は、従来タイヤよりもコーナリングパワーCPは向上するが同様にワイヤ折れが発生する。さらに比較タイヤ6のように、溝深さdとスチールワイヤ総断面積αをそれぞれ適正に小さくしても、溝下厚さtを薄くし過ぎると、コーナリングパワーCPは向上するものの、ワイヤ折れを生じる。
【0030】これに対し、本発明タイヤ1のように、スチールワイヤ総断面積αを小さくすると共に溝深さdと溝下ゴム厚さtをそれぞれ本発明の規定の上限に近くまで小さくすると、タイヤ重量を比較タイヤ1以上に低減(−485g)できる同時に、コーナリングパワーCPは僅かながら向上する。また、本発明タイヤ3及び本発明タイヤ4のように、溝深さdと溝下ゴム厚さtをそれぞれ比較タイヤ5と同じ値とし、スチールワイヤ総断面積αを本発明の規定の上限近くにすると、比較タイヤ5以上に軽量化できる上にワイヤ折れも発生しない。さらに、本発明タイヤ2のように、溝深さd、溝下ゴム厚さt及びスチールワイヤ総断面積αを、それぞれ本発明の規定の最適値にするときはタイヤ重量の低減効果(−1165g)に優れると同時に、コーナリングパワーCPも明確に向上する。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、上記のように2層のベルト層をスチールコードから構成したトレッド・ベルト構造を有する空気入りラジアルタイヤにおいて、スチールコードベルト層の50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αを従来タイヤよりも小さい5〜9mm2 の範囲にした場合に、トレッド部の溝深さ及び溝下ゴム厚さを従来タイヤに比べて小さく設定したことによるコーナリングパワーの増大作用により、従来タイヤに比べて軽量化しながらコーナリングパワーを同等以上にすることを可能にし、操縦安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明タイヤの実施例からなる乗用車用ラジアルタイヤを一部切り欠いて示す要部斜視図である。
【図2】本発明タイヤのトレッド部に設けた主溝及びベルト層部分の拡大断面図である。
【図3】溝の溝深さdとコーナリングパワーCPとの関係を示すグラフである。
【図4】溝下ゴム厚さtとコーナリングパワーCPとの関係を示すグラフである。
【図5】スチールワイヤ総断面積αとコーナリングパワーCPとの関係を示すグラフである。
【図6】スチールワイヤ総断面積αとタイヤ重量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 トレッド部 4u 外側ベルト層
4d 内側ベルト層 6 主溝
d 溝の溝深さ t 溝下ゴム厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トレッド面に少なくともタイヤ周方向に延びる複数本の溝を設け、トレッド内部に2層のスチールコードからなるベルト層を設けた空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層の50mm巾当たりのスチールワイヤ総断面積αを5≦α≦9mm2 の範囲にし、かつ前記溝の溝深さdを6.0≦d≦8.0mmの範囲にすると共に、溝底から最外側のベルト層までの溝下ゴム厚さtを1.0≦t≦2.5mmの範囲にした乗用車用空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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