乾燥装置、プリンタ
【課題】被乾燥体を素早く乾燥させることができる乾燥装置及び印刷品質が良好で高速印刷が可能プリンタを提供する。
【解決手段】本発明の乾燥装置は、紙にマイクロ波を放射するマイクロ波ヘッド50が、平行に配置される一対の極板51A,52Aを備え、一対の極板51A,52Aの半径rを、X1×v/ωとし、一対の極板51A,52A間を紙が通過することで当該紙を乾燥する構成となっている(但し、2.3<X1<2.5となっている。また、マイクロ波の角振動数:ω=2πf、マイクロ波の周波数:f、前記マイクロ波の速度:vとする。)。
【解決手段】本発明の乾燥装置は、紙にマイクロ波を放射するマイクロ波ヘッド50が、平行に配置される一対の極板51A,52Aを備え、一対の極板51A,52Aの半径rを、X1×v/ωとし、一対の極板51A,52A間を紙が通過することで当該紙を乾燥する構成となっている(但し、2.3<X1<2.5となっている。また、マイクロ波の角振動数:ω=2πf、マイクロ波の周波数:f、前記マイクロ波の速度:vとする。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及びこれを備えたプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタの印刷の高速化、高精細化には、塗布したインクが充分乾燥する前に更にインクが塗布されることによる「にじみ」が問題となっている。これを回避するためには、印刷前に紙質(水分量や材質)を検知することによるインク塗布量の最適化を行うこと、又は塗布したインクを高速に乾燥させることなどが有効な手段である。
使用するエネルギー効率の面からは、例えば電子レンジのようなマイクロ波による加熱は、物質に直接エネルギーを与えることができるため、熱の伝達による加熱に比べて効率が高い。マグネトロンなどによるマイクロ波発信源では電力利用効率が低いが、固体発振源によるマイクロ波電源を用いれば省電力、高効率励起が可能である。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、マイクロ波を用いて印刷用紙に付着したインクを加熱して乾燥させる方法が提案されている。
【特許文献1】特表2003−534164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、紙に含まれる水分量を検知することなくインクを乾燥させる方法なので、水分の量によっては乾燥時間が長く掛かることがあり、効率的であるとは言えず、高速印刷を行うことが困難であった。また、紙に含まれる水分量が多いと、紙の種類によっては、紙の裏側までインクが浸透してしまうことがあり、インクのにじみが発生することがあった。このインクのにじみが発生すると、裏面をきれいに印刷することが困難となり、両面印刷のような印刷の場合、好ましいとは言えない。しかも、マイクロ波を発生させるためのマイクロ波発信源にマグネトロンを用いると、装置が巨大化することになり、職場や家庭で用いられるような小型化の要求が高いプリンタには適した構造とは言えない。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、被乾燥体を素早く乾燥させることができる乾燥装置及び印刷品質が良好で高速印刷が可能プリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乾燥装置は、上記課題を解決するために、被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、平行に配置される一対の極板を備え、前記一対の極板の半径rを、X1×v/ωとし、前記一対の極板間を前記被乾燥体が通過することを特徴とする乾燥装置(但し、2.3<X1<2.5、マイクロ波の角振動数:ω=2πf、マイクロ波の周波数:f、前記マイクロ波の速度:vとする。)。
【0007】
本発明によれば、極板間で発生する電界の作用により被乾燥体の乾燥を効果的に行うことができる。また、極板の半径rを適切に設定することによって、シールドを用いることなくマイクロ波放射部(円筒共振器)内にマイクロ波を封じ込めることが可能となる。これにより、エネルギー密度が向上し、短時間で高効率な乾燥を行うことができる。
ここで、X1が、ベッセル関数の第1の根(X>0で、X=0に最も近い根)であることが好ましい。
【0008】
また、一対の極板の内面間距離がマイクロ波の波長の略半分であることが好ましい。
本発明によれば、基板間の略中心部分にマイクロ波のエネルギーを最も集中させることができる。そこを被乾燥体が通過することで被乾燥体をすぐさま昇温させることができ、乾燥効率が向上する。
【0009】
本発明の乾燥装置は、被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、軸心を一致させて離間して配置した一対の円柱状のアンテナから構成され、前記円筒型アンテナ間を、前記軸心と垂直方向に前記被乾燥体が通過することを特徴とする。
本発明によれば、一対のアンテナ間で発生する電界の作用により被乾燥体の加熱をより効果的に行うことができる。マイクロ波は、一対のアンテナ間でエネルギーが最も集中するため、アンテナ間に被乾燥体を配置することにより乾燥効率を高めることができる。
【0010】
本発明の乾燥装置は、被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、軸心を一致させて離間して配置した一対の円柱状のアンテナ及び前記アンテナ間近傍に配置された導体から構成され、前記一対のアンテナと前記導体との間を、前記軸心と平行方向に前記被乾燥体が通過することを特徴とする。
本発明によれば、一対のアンテナと導体との間で発生する電界の作用により被乾燥体の加熱をより効果的に行うことができる。マイクロ波は、一対のアンテナと導体との間でエネルギーが最も集中することになり、アンテナと導体との間に被乾燥体を配置することで乾燥効率を高めることができる。また、本発明では、マイクロ波放射部の長手方向を被乾燥体の通過方向に平行としていることから、マイクロ波放射部の低背化が可能となり、乾燥装置の小型化を図ることができる。さらに、他の装置への組み込みが容易となり設計自由度が向上する。
【0011】
また、マイクロ波放射部の長さ及び開口径が、マイクロ波の半波長の整数倍又は整数分の1と一致することが好ましい。
本発明によれば、被乾燥体が配置される箇所に、マイクロ波のエネルギーを最も集中させることができる。よって、被乾燥体の乾燥効率が向上するとともに短時間で乾燥させることができる。
【0012】
また、一対のアンテナが同じ長さで、マイクロ波放射部の長さ方向中央部を被乾燥体が通過することが好ましい。
本発明によれば、マイクロ波放射部の長さ方向中央部、すなわち、アンテナ間を被乾燥体が通過することになり、被乾燥体が配置されるアンテナ間にマイクロ波のエネルギーを最も集中させることができる。
【0013】
また、一対のアンテナの互いに対向する先端部が縮径されていることが好ましい。
本発明によれば、被乾燥体が配置されるアンテナ間におけるマイクロ波のエネルギーをより一層向上させることができる。
【0014】
また、マイクロ波放射部にマイクロ波を供給するマイクロ波電源部を備え、マイクロ波電源部は、被乾燥体の乾燥状態に応じた反射波を検出する反射波検出部と、マイクロ波を増幅する増幅回路と、被乾燥体の乾燥状態に応じた反射波を検出する反射波検出部と、反射波検出部の出力に基づいて増幅回路を制御する制御部と、を備えていることが好ましい。
本発明によれば、被乾燥体にマイクロ波を照射することで、被乾燥体に含まれる水分量の検視と乾燥とを略同時に実施することができるので、短時間で乾燥することができて効率的である。しかも、にじみが少なくて綺麗に乾燥することができる。また、被乾燥体の水分量に応じてマイクロ波のエネルギーを調節することができるので、無駄な電力消費を抑えることが可能となる。
【0015】
また、マイクロ波放射部に接続されるインダクタを備え、被乾燥体が水分を含んだ状態のときのマイクロ波放射部の複素インピーダンスと、インダクタのインピーダンスを合成した複素インピーダンスとが、マイクロ波放射部の出力端における複素インピーダンスと共役となることが好ましい。
本発明によれば、マイクロ波放射部内に存在する被乾燥体の水分量が減少したことを把握でき、被乾燥体が乾燥した時点を検知することができる。これにより、被乾燥体が乾燥した時点で乾燥を終えることができるので、乾燥不足を低減することができる。
【0016】
本発明のプリンタは、被乾燥体上に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乾燥装置と、を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、上述したように、本発明によれば、被乾燥体に含まれる水分量を検知して、被乾燥体の上に配置される液滴を乾燥することができる液滴乾燥装置を搭載しているので、悲観装置アの表面と裏面とに印刷するような両面印刷の場合であっても、にじみが少なく、綺麗な印刷を行うことができる。しかも、被乾燥体に含まれる水分量の検知と、液滴の乾燥とを略同時に実施することができるので、高速印刷を実現可能なプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
[プリンタ]
図1は、本実施形態の液滴乾燥装置を搭載したプリンタの構成を示す斜視図である。
図1に示すように、プリンタ1は、記録ヘッド2と、マイクロ波ヘッド50と、キャリッジ4と、ガイド部材5と、紙送りローラ21と、筐体40と、で概略構成されている。
記録ヘッド2は、被乾燥体としての紙(記録紙)10に印刷をする機能を有している。
キャリッジ4は、インクカートリッジ11を搭載することができる。このキャリッジ4は、駆動プーリ6と遊動プーリ7との間に掛け渡したタイミングベルト8に接続されている。
駆動プーリ6は、パルスモータ9の回転軸に接合されており、キャリッジ4はパルスモータ9の駆動によって紙10をその幅方向である主走査方向に移動することができる。
また、キャリッジ4における紙10との対向面に取り付けられている記録ヘッド2は、液体のインクを噴射する噴射ヘッドの一種である。なお、キャリッジ4には、インクカートリッジ11が搭載されている。
ガイド部材5は、このキャリッジ4とマイクロ波ヘッド50とを移動させることができる機能を有している。
紙送りローラ21は、紙10を所定の方向に送ることができる機能を有している。さらに、紙送りローラ21を回転させて紙10を主走査方向に送る紙送りモータ39が、プリンタ1に備えられている。
【0019】
図2は、プリンタの構成を示す概略図である。なお、同図は、図1の矢印の方向から見た状態を示している。
図2に示すように、紙10を挟み込むようにマイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド50が配置されている。このマイクロ波ヘッド50は、紙10の上側に配置された上ヘッド51と、紙10の下側に配置された下ヘッド52とで構成されており、上ヘッド51と下ヘッド52との間に紙10が配置されている。そして、マイクロ波ヘッド50は、記録ヘッド2の横に配置されており、記録ヘッド2と、マイクロ波ヘッド50とが、同時に移動(この場合、左右方向)するように構成されている。
【0020】
(液滴乾燥装置)
図3は、液滴乾燥装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、液滴乾燥装置500は、本発明に係る乾燥装置の一実施形態であって、マイクロ波100aを発振するマイクロ波発生部としての発振器100と、マイクロ波100aを増幅するアンプ120と、反射波100bの反射強度から反射率を求めてアンプ120を制御する制御部36と、検出部としてのパワーモニタ560と、信号の流れる方向に制限をつけるサーキュレータ570と、マイクロ波ヘッド50とで、概略構成されている。この液滴乾燥装置500において、サーキュレータ570に導入されたマイクロ波100aは、マイクロ波ヘッド50に導かれるように構成されている。さらに、紙10から反射した反射波100bは、パワーモニタ560に導かれるように構成されている。そして、パワーモニタ560に導かれた反射波100bは、制御部36に導かれ、反射波100bの反射強度の程度によって制御部36がアンプ120を制御するように構成されている。
【0021】
発振器100は、固体高周波発振器である弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)を応用したダイヤモンドSAW発振器である。
【0022】
アンプ120は、発振器100から出力された信号を増幅させて、2.45GHz帯の高周波信号を出力し、マイクロ波100aを増幅することができる。そして、このアンプ120と、発振器100とが、電気的に接続されている。
【0023】
検出部としてのパワーモニタ560は、紙10から反射する反射波100bの反射強度を検出することができる機能を有しており、この検出部としてのパワーモニタ560と、サーキュレータ570とが、電気的に接続されている。
【0024】
サーキュレータ570は、アンプ120で増幅された信号をマイクロ波ヘッド50に供給するとともに、信号の流れる方向に制限をつける機能を有しており、このサーキュレータ570と、マイクロ波ヘッド50とが、電気的に接続されている。
【0025】
マイクロ波ヘッド50は、上ヘッド51と、下ヘッド52とを備え、相互間に紙10を挿入できるように離間して配置されている。マイクロ波ヘッド50は、コンデンサであるキャパシタCと、コイルであるインダクタLとを、有しており、これらキャパシタCと、インダクタLとを、配置してLC共振子(この場合、キャパシタCと、インダクタLとを、直列に配置する直列共振回路であり、抵抗成分Rを含んでいてもよい)を構成している。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態である液滴乾燥装置の概略構成を示すとともに電界及び磁界の分布を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。図5は、電界強度分布を示すためのベッセル関数のグラフである。
図4(a),(b)に示すように、キャパシタCは、一対の円形状の極板からなる平行平板コンデンサであって、上ヘッド51内に設けられる第1の極板51Aと、下ヘッド52内に設けられる第2の極板52Aとを備える。第1の極板51Aと第2の極板52Aとはそれぞれの対向面間の距離hがλ/2(61.2mm)となるように配置されている。また、極板51A,52Aの半径rは、X1×v/ω(式1)で設定され、X1が2.3〜2.5の範囲内とされている。ここで、ωがマイクロ波の角振動数、fがマイクロ波の周波数、vがマイクロ波の速度であって、マイクロ波の角振動数は、ω=2πfで表される。
【0027】
そして、第1の極板51Aとサーキュレータ570とが電気的に接続され、第2の極板52AとインダクタLの一方の端子とが電気的に接続されている。また、インダクタLの他方の端子は、グランドGNDと電気的に接続されている。
【0028】
さらに、キャパシタCの値や、インダクタLの値を任意に選択して設定をすることができ、インクの乾燥の条件を決定することができる。
【0029】
キャパシタCにマイクロ波が印加された場合、電場E及び磁場Bの分布は図4(a),(b)に示すようになる。内部の電界強度分布は、図5に示すような第1種ベッセル関数になる。つまり、極板の中心が最も強度が強く、半径方向外側(外周)へ向かうにつれて強度が漸次低下していくとともにマイクロ波が発生しない箇所(ベッセル関数のグラフで振幅が0となる箇所)がいくつか存在する。そこで、極板51A,52Aの半径rを、第1の根X1のX座標(X=2.405)となるように設定することで、マイクロ波のエネルギー(電界強度)を極板51A,52Aの周縁部でゼロとすることができる。これにより、マイクロ波を封じ込めるため(漏れを防止するため)のシールドが不要となる。例えば、周波数が2.45GHzの場合には、上記式1により極板51A,52Aの半径rは4.7cmとなる。また、半径方向途中において電界Eがゼロとなる領域が存在しないので、加熱効率が向上する。
【0030】
ここで、例えば、極板51A,52Aの半径rを第2の根X2のx座標(X=5.52)とした場合、極板51A,52Aの半径方向にマイクロ波が発生しない箇所が複数存在することになり、電界Eの分布にむらが生じてしまうことになる。そのため、極板51A,52Aの半径rを第1の根X1のX座標とすることが好ましい。
【0031】
乾燥すべき紙10は、マイクロ波ヘッド50内を通過する際に、極板51A,52A間に発生している電界の作用を受けて加熱され、含有している水分が急速に蒸発して高効率な乾燥が行われることになる。
【0032】
図6は、プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図6に示すように、プリンタ1は、プリンタコントローラ31と、プリントエンジン32とで、概略構成されている。そして、プリンタコントローラ31に有する制御部36が、プリンタ1の制御と、液滴乾燥装置500(図3参照)の制御とを、行うことができるように構成されている。
【0033】
プリンタコントローラ31は、I/F(インターフェース)33と、RAM(Random Access Memory)34と、ROM(Read Only Memory)35と、CPU(中央処理ユニット)等からなる制御部36と、クロック信号を発生する発振回路37と、駆動信号発生回路3と、I/F(インターフェース)38とを、有している。
【0034】
I/F33は、例えばキャラクタコード、グラフィックコード、イメージデータのいずれか一つのデータまたは複数のデータからなる印刷データをホストコンピュータ(図示省略)等から受信することができる。また、I/F33は、ホストコンピュータに対してビジー信号や、アクノレッジ信号等を出力することができる。
【0035】
RAM34は、各種データの記憶等を行う機能を有しており、受信バッファ、中間バッファ、出力バッファ及びワークメモリ(図示省略)等として利用される。受信バッファには、I/F33が受信したホストコンピュータからの印刷データが一時的に記憶される。中間バッファには、制御部36によって中間コードに変換された中間コードデータが記憶される。出力バッファには、ドット毎の印字データが展開される。
【0036】
ROM35は、制御部36によって実行される各種制御ルーチン、フォントデータ及びグラフィック関数、各種手続き等を記憶する機能を有している。
【0037】
制御部36は、受信バッファ内の印刷データを読み出して中間コードに変換し、この中間コードデータを中間バッファに記憶する。また、制御部36は、中間バッファから読み出した中間コードデータを解析し、ROM35内のフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して中間コードデータを印字データに展開する機能を有している。この印字データは、例えば2ビットの階調情報で構成されている。この展開された印字データは、出力バッファに記憶されて、記録ヘッド2の1行分に相当する印字データが得られると、この1行分の印字データは、I/F38を介して記録ヘッド2にシリアル伝送される。出力バッファから1行分の印字データが送信されると、中間バッファの内容が消去されて、次の中間コードに対する変換が行われる。また、制御部36は、タイミング信号発生手段の一部を構成している。I/F38を通じて記録ヘッド2にラッチ信号や、チャンネル信号を供給する機能を有している。これらのラッチ信号や、チャンネル信号は、駆動信号を構成する各パルス信号の供給開始のタイミングを規定する機能を有している。しかも、制御部36は、図3に示す液滴乾燥装置500の制御をすることができる機能を有している。
【0038】
駆動信号発生回路3は、駆動信号生成手段の一種であり、複数の波形要素によって構成された駆動パルスを含む一連の駆動信号を生成し、これら駆動信号を記録ヘッド2へ供給
する機能を有している。
【0039】
I/F(インターフェース)38は、ドットパターンデータに展開された印字データ及び駆動信号等をプリントエンジン32に送信する機能を有している。
【0040】
プリントエンジン32は、記録ヘッド2の電気駆動系と、キャリッジ4(図1参照)を移動させるパルスモータ9と、紙送りローラ21(図1参照)を回転させる紙送りモータ39等から構成されている。
【0041】
記録ヘッド2の電気駆動系は、第1シフトレジスタ41及び第2シフトレジスタ42からなるシフトレジスタ回路と、第1ラッチ回路43と第2ラッチ回路44からなるラッチ回路と、デコーダ45と、制御ロジック46と、レベルシフタ47と、スイッチ回路48と、圧電振動子15とを、備えている。
【0042】
そして、図1に示すプリンタ1は、本実施形態における液滴乾燥装置500を搭載している。
【0043】
次に、液滴乾燥装置の動作について説明する。
図7は、本実施形態に係る液滴乾燥装置の動作手順を示すフローチャートである。なお、マイクロ波の進行方向を含めて図3を参照しながらステップごとに説明する。
【0044】
図7のステップS1では、マイクロ波100aの放射を開始する。マイクロ波発生部としての発振器100は、高周波信号を生成しマイクロ波100aの放射を開始する。
【0045】
ステップS2では、マイクロ波100aを増幅する。マイクロ波100aは、増幅器としてのアンプ120により増幅される。
【0046】
ステップS3では、マイクロ波100aを放射する。アンプ120から出力されたマイクロ波100aは、サーキュレータ570を経由してマイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド50へ導かれる。マイクロ波ヘッド50へ導かれたマイクロ波100aのうち、インピーダンスの不整合によって反射された反射波100bは、サーキュレータ570のもう一端に伝達され、反射波100bを検出する検出部としてのパワーモニタ560へ導かれる。一般に、反射波100bがアンプ120に戻った場合、増幅回路が破壊される恐れがあるため、保護回路としてサーキュレータ570が挿入されていることが多い。放射されるマイクロ波100aは、略平面波であり、マイクロ波ヘッド50を構成する上ヘッド51から、下ヘッド52に向けて放射される。マイクロ波100aは、上ヘッド51と、下ヘッド52との間に挿入されている紙10の表面から裏面に向けて放射されることになる。
【0047】
ステップS4では、紙10の水分量を検知して、インクを乾燥する。紙10が濡れていた場合、濡れた紙10がマイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド50に入っている状態で、LC共振回路のインピーダンスがマイクロ波源の発振周波数においてマイクロ波電源部の出力端のインピーダンスと共役(整合)となるように素子の定数を設定しておく。キャパシタCの間に存在する紙10の水分量が減少(湿度が低いとき)したときには、LC共振回路(この場合、直列共振回路)が共振しにくくなり、反射波100bの反射強度が増える。この反射強度は紙10の誘電率により変化する。紙10が濡れた状態でインピーダンスが整合するようにLC共振回路をあらかじめ設定してあるので、紙10が乾燥され紙10中の水分量が減少するにつれ紙10の誘電率が小さくなる。この反射強度を検出することで紙10の誘電率を求めることができ、求めた誘電率から紙10の水分量を算出することができる。
【0048】
この方法により、紙10の乾燥した時点を検知することができる。そして、紙10の乾燥を検知した時点で加熱終了となり、乾燥不足を低減することができる。逆に、紙10の水分量が増加(湿度が高いとき)したときには、LC共振回路が共振し始めてマイクロ波100aを集中的に放射して効率よく水分を乾燥させることができる。また、紙10や、液滴としてのインクに含まれる水分が乾燥した状態に近づくと、マイクロ波100aの出力を小さくすることで、無駄な電力消費を抑えることができる。さらに、加熱し過ぎによる紙10の焦げや、インクの変質を押さえることもできる。ここで使用されるインクとしては、紙10に印字(印刷を含む)するためのものであって、例えば6色のカラーで印刷するような場合は、シアン、ライトシアン、マゼンダ、ライトマゼンダ、黄色、黒色などの色素を有しているものを用いている。なお、よく使われる紙(印刷用紙)10の種類ごとの水分量と誘電率との対応データをあらかじめ準備しておくと、乾燥するための条件を選択するのに好都合である。
【0049】
ステップS5では、反射波100bの反射強度を検出して、アンプ120を制御する。マイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド50からの反射波100bの強度を検出部としてのパワーモニタ560を用いて検出する。なお、図1に示すプリンタ1の動作時において、反射波100bの強度を検出する検出作業は、常に実施することが望ましい。この検出作業を常に行うことにより、より精度の高い検出結果を得ることができる。ここで、紙10に含まれる水分量が減少すると、コンデンサC間の誘電率が変化し、静電容量の値が変化する。すると、インピーダンスが変化し、反射波100bの強度が増える(この状態を不整合状態という)。そこで、この反射波100bの強度の増減を利用して、紙10の誘電率を求めることができる。そして、紙10の種類ごとの水分量と誘電率との対応データをあらかじめ準備しておけば、求めた誘電率から紙10の水分量を算出できる。この方法により、紙10に含まれる水分量を検知し、それに応じてアンプ120の出力を制御部36が制御する。この制御部36は、反射波100bの強度が低いときにアンプ120の増幅率を高くし、逆に、反射波100bの強度が高くなるにつれてアンプ120の増幅率を小さくすることができる。
【0050】
ステップS6では、インクを乾燥することができ、図1に示す記録ヘッド2からインクの吐出が終了したら、マイクロ波100aの放射を停止する。マイクロ波発生部としての発振器100から発振される高周波信号の発振を停止する。
【0051】
単一のマイクロ波源を用いることで、紙10に含まれている水分量の検知と、インクの乾燥とを、ほぼ同時に行うことができる。紙10に含まれている水分量の検知は、コンデンサの誘電率変化に伴うインピーダンス変化によって確認でき、反射波100bの反射強度の変化により行うことができる。そして、紙10に含まれている水分量を検知することで、マイクロ波100aの出力強度を適正な値に制御することができ、乾燥時間の短縮や、消費電力を抑えることにつながる。
【0052】
以上のような実施形態における液滴乾燥装置及びプリンタの構成によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態は、紙10にマイクロ波100aを放射するマイクロ波ヘッド50を備えているから、紙10にマイクロ波100aを放射することで、紙10に含まれる水分量の検知と、紙10の上に配置される液滴としてのインクの乾燥とを、ほぼ同時に実施することが可能な液滴乾燥装置500を提供できる。この液滴乾燥装置500は、マイクロ波ヘッド50は、円形を呈する一対の極板51A,52Aから構成されているため、両極板51A,52A間に均一な電界分布が得られる。本実施形態では、マイクロ波ヘッド50の極板51A,52Aの半径rを上述したベッセル関数を用いて設定しており、その結果、シールドを用いることなくマイクロ波ヘッド50内にマイクロ波を封じ込めることができる。これにより、従来の製造方法を用いて作製することができ、コストが増加することもない。また、極板51A,52Aの半径rを適切に設定しているためマイクロ波ヘッド50内で電界Eがゼロとなる箇所が生じないので、エネルギー密度の向上による乾燥効率の向上が図れ、短時間で高効率な乾燥を行うことができる。
【0053】
しかも、マイクロ波ヘッド50にLC共振子(この場合、直列共振回路)を構成しているから、加熱用アンテナとしての機能と、検出素子としての機能とを、兼用させることができ、装置構成を簡単にすることができる。特に、マイクロ波ヘッド50が水分量検出用のセンサの役割を兼ねるため、記録ヘッド2に付加する部品が最小限ですむ。このため、ヘッド部の設計の制約条件が少なくなる。また、水分量検出用に別途センサを設けるような場合に比べて、センシング部への配線が少なくなるため、構成を簡略化できる。
【0054】
また、紙10にマイクロ波100aを放射する工程を備えているから、紙10にマイクロ波100aを放射することで、紙10に含まれる水分量の検知と、紙10の上に配置される液滴としてのインクの乾燥とを、ほぼ同時に実施することができるので、にじみが少なくて、綺麗に乾燥することができる。しかも、短時間で乾燥することができるので、効率的である。さらに、検出素子としての機能と、加熱用アンテナとしての機能とを、兼用しているLC共振子を発振させれば、紙10に含まれる水分量の検知と、紙10の上に配置される液滴としてのインクの乾燥とを、略同時に実施することができるので、効率的である。
【0055】
また、被乾燥体が紙10であるから、使用頻度の高い順に水分量と誘電率との対応データをあらかじめ用意しておけば、紙10の品質が変わったとしても、紙10の上に配置される液滴を乾燥するときの条件を素早く選択できるので、より早く乾燥させることができ、高速印刷を実現することができる。
【0056】
また、紙10に含まれる水分量を検知して、紙10の上に配置される液滴としてのインクを乾燥することができる液滴乾燥装置500を搭載しているので、紙10の表面と裏面とに印刷するような両面印刷の場合であっても、にじみが少なく、綺麗な印刷をすることができる。しかも、紙10に含まれる水分量の検知と、液滴としてのインクの乾燥とを、ほぼ同時に実施することができるので、高速印刷を実現可能なプリンタ1を提供することができる。さらに、ダイヤモンドSAW発振器のような固体発振源によるマイクロ波電源を発振器100として用いているから、省電力、高効率励起が可能となるので、エネルギ消費量を抑制することができる。エネルギ消費量を抑制することができれば、環境負荷の低減にも貢献できる。
【0057】
上記実施形態では、平行平板コンデンサを用いてLC共振子を構成するマイクロ波ヘッドについて述べた。以下に示す実施形態では、軸方向長さを可変とする円筒型空洞共振器を用いてLC共振子を構成するマイクロ波ヘッドについて述べる。
【0058】
(液体乾燥装置の第2の実施形態)
次に、本発明に係る液体乾燥装置の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。ここで、図8は、本実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は軸方向に沿う断面図、(b)は径方向における断面図である。図9は、マイクロ波ヘッドのエネルギー密度を示す図である。
本実施形態における液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッド60は、図8(a),(b)に示すように、キャパシタCとして用いられるダイポールアンテナ63を内部に具備する円筒型空洞共振器64を構成する。
【0059】
円筒型空洞共振器64は、円筒形状をなす一対の共振体61及び共振体62を備え、長手方向一方の開口面61aと開口面62aとを対向させるとともに互いに所定間隔をおいて配置されている。具体的には、共振体61が図2に示す上ヘッド51内に配置され、下ヘッド52内に共振体62が配置される。円筒型空洞共振器64の長さh及び径d1は、マイクロ波の半波長の整数倍又は整数分の1と一致しており、例えば長手方向長さhがλ/2、径d1がλ/2〜λ/8とされている。
【0060】
各共振体61,62内には、これら各共振体61,62と軸心を一致させるとともに紙10の通過方向に対して垂直に延在する円柱状のアンテナ63A,63Bが設けられている。そして、共振体61内に配置される送信用の第1のアンテナ63Aと、共振体62内に配置される受信用の第2のアンテナ63Bとにより上記ダイポールアンテナ63が構成されている。また、各共振体61,62と各アンテナ63A,63Bとはそれぞれ電気的に離間している。
【0061】
そして、第1のアンテナ63Aとサーキュレータ570とが電気的に接続され、第2のアンテナ63BとインダクタLの一方の端子とが電気的に接続されている。また、インダクタLの他方の端子は、グランドGNDと電気的に接続されている点は上記実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態では、例えば、マイクロ波の波長が2.45GHzの場合、各共振体61,62の直径d1をλ/8(15.3mm程度)、マイクロ波ヘッド60の長手方向長さhをλ/2(61.2mm程度)とする。また、アンテナ63A,63Bの長さを29mm程度とすることで第1のアンテナ63Aと第2のアンテナ63Bとの間のギャップgが3mm程度となる。これはマイクロ波の波長に比べて十分短い距離であることから、マイクロ波の漏れが生じ難いという効果が得られる。
【0063】
乾燥すべき紙10は、当該紙10の厚さ方向に強い電界を励起する円筒型空洞共振器64内のアンテナ63A,63B間を通過する際に、空洞内に発生している電界(図9参照)の作用を受けて加熱され、含有する水分が急速に蒸発して効率よく乾燥が行われる。図9に示すように、円筒型空洞共振器64のアンテナ63A,63B間で電界が極めて強くなっている。これにより、マイクロ波のエネルギー密度が向上して紙10を速やかに昇温させることができるので、加熱効率をより高めることができる。
【0064】
(液体乾燥装置の第3の実施形態)
次に、本発明に係る液体乾燥装置の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。ここで、図10は、本実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、軸方向に沿う断面図である。図11は、マイクロ波ヘッドのエネルギー密度を示す図である。
【0065】
以下に示す本実施形態のマイクロ波ヘッド70の基本構成は、上記第2の実施形態と略同様であるがダイポールアンテナの形状が上記第2実施形態と異なっている。具体的には、図10に示すように、ダイポールアンテナ73を構成する円柱状のアンテナ73A,73Bの先端部73a,73b(対向側端部)の直径d2が縮径(d2<d1)して形成されている。
このように、アンテナ73A,73Bの先端部73a,73bを細くすることで電界が強まり、より高いエネルギー密度を得ることができる(図11参照)。
【0066】
(液体乾燥装置の第4の実施形態)
次に、本発明に係る液体乾燥装置の第4の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。ここで、図12は本実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は軸方向に沿った断面図、(b)は径方向における断面図である。図13は、本実施形態に係るマイクロ波ヘッドのエネルギー密度を示す図である。
【0067】
上記第2,3実施形態の液体乾燥装置は、円筒型空洞共振器の軸方向が紙10の紙面(紙10の通過方向)に対して垂直な姿勢となっていたが、本実施形態における円筒型空洞共振器の長手方向が紙面に対して平行な姿勢となっている点において上記実施形態と異なっている。
【0068】
図12(a),(b)に示すように、本実施形態における液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッド80は、一対の共振体81及び共振体82と、共振体81内に配置されるダイポールアンテナ83と、共振体82内に配置される導体85と、を備える円筒型空洞共振器84を構成する。
【0069】
図12(b)に示すように、共振体81及び共振体82は、断面視半円弧形状をなし、径方向に開口する開口81b,82b同士を対向させるとともに互いに所定間隔をおいて配置されることで円筒形状とされている。ここで、共振体81は図2に示す上ヘッド51内に配置され、共振体82は下ヘッド52内に配置される。
【0070】
ダイポールアンテナ83を構成する円柱状の第1のアンテナ83Aと第2のアンテナ83Bとは、共振体81の開口81b側において、互いの軸心を一致させるとともに各アンテナ83A,83Bの軸方向が紙の通過方向と平行となるように配置され、互いに所定距離離間している。
【0071】
導体85は、導電性の金属材料により所定の軸方向長さ及び直径を有して構成されている。そして、アンテナ83A,83B間に形成される領域sの近傍であって共振体82の長手方向中央付近において、アンテナ83A,83BとのギャップGが3mm程度となるように配置されている。この導体85は、共振体82と繋がっていても良いが、アンテナ83A,83Bからは離間させておく。本実施形態における導体85は、このアンテナ83A,83BとのギャップGよりも大きい直径d3を有している。
【0072】
そして、第1のアンテナ83A及び第2のアンテナ83Bとサーキュレータ570とが電気的に接続され、導体85とインダクタLの一方の端子とが電気的に接続されている。このように、本実施形態においては、一対のアンテナ83A,83Bが送信用とされ、導体85が受信用となっており、各アンテナ83A,83と導体85との間で放電する(図13参照)。紙10は、共振体81と共振体82との間、すなわち一対のアンテナ83A,83Bと導体85との間を通過する。
【0073】
本実施形態のマイクロ波ヘッド80は、例えば、マイクロ波の波長が2.45GHzの場合、軸方向における開口端の径d4がλ/4(30.6mm程度)、円筒型空洞共振器84の長手方向長さhがλ/2(61.2mm程度)となっている。また、アンテナ83A,83Bの長さが29mm程度で、第1のアンテナ83Aと第2のアンテナ83Bとの間のギャップgが3mm程度となっている。マイクロ波の漏れを防止するためには、アンテナ83A,83Bと導体85と間のギャップGが3mm程度となることが好ましいことから、上記ギャップGの条件を満たすように円筒型空洞共振器84の径d4や導体85の長さを設定するようにする。
【0074】
本実施形態によれば、円筒型空洞共振器84を、その軸方向が紙10の紙面と平行となるように横倒しに配置したので、マイクロ波ヘッド80を低背化することができる。また、アンテナ83A,83B間の領域sの近傍であって、対向しているアンテナ83A,83Bの両端部と向き合うようにして導体85が配置されている。そのため、図13に示すように、マイクロ波はアンテナ83A,83Bと導体85との間で発生し、これらアンテナ83A,83Bと導体85との間を紙10が通過することによって紙10にマイクロ波が放射されることになる。
【0075】
このように、マイクロ波のエネルギーが集中する場所を、アンテナ83A,83B間ではなく、アンテナ83A,83Bと導体85との間にずらすことで、円筒型空洞共振器84を横倒しにしても乾燥効率に変わりはなく、各共振体81,82の軸方向長さ(マイクロ波ヘッド80の長手方向長さh)を短くすることができる。したがって、マイクロ波ヘッド80(円筒型空洞共振器84)の低背化を実現でき、プリンタへの組み込みが容易となる。さらに、装置全体の設計自由度が向上するので小型化も可能となる。
【0076】
以上、好ましい実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含み、本発明の目的を達成できる範囲で、他のいずれの具体的な構造及び形状に設定できる。
【0077】
(変形例1)
前述の実施形態では、キャパシタCと、インダクタLとを、直列に配置した直列共振回路を液滴乾燥装置500に採用する構成にしたが、これに限らない。例えば図14に示す液滴乾燥装置501のように、キャパシタCと、インダクタLとを、並列に配置する並列共振回路(抵抗成分Rを含んでいてもよい)を採用した構成にしてもよい。このようにしても、マイクロ波ヘッド50を構成する上ヘッド51と、下ヘッド52とが、紙10を挟むように構成されているので、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(変形例2)
前述の実施形態では、プリンタ1にマイクロ波ヘッド50を一つ搭載する構成にしたが、これに限らない。例えばマイクロ波ヘッド50を複数搭載する構成にしてもよい。このようにすれば、プリンタ1にマイクロ波ヘッド50がたくさん搭載されることになれば、水分量を検知してインクを乾燥させるまでの時間をより速く実施することを期待できる。
【0079】
(変形例3)
前述の実施形態では、マイクロ波ヘッド50を搭載した液滴乾燥装置500をプリンタ1に採用したが、これに限らない。例えばプリンタ1以外の印刷装置や、紙10を乾燥させるのに必要なその他の各種装置に採用してもよい。このようにすれば、色々な分野で使用することができるので、その用途を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施形態に係る液滴乾燥装置を搭載したプリンタの構成を示す斜視図。
【図2】プリンタの構成を示す概略図。
【図3】液滴乾燥装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】1本実施形態に係る液滴乾燥装置の概略構成を示すとともに電界及び磁界の分布を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図。
【図5】ベッセル関数を示す図。
【図6】プリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図7】液滴乾燥装置の動作手順を示すフローチャート。
【図8】第2の実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は軸方向に沿う断面図、(b)は径方向に沿う断面図。
【図9】第2の実施形態に係る液滴乾燥装置の電界及び磁界の分布を示す図。
【図10】第3の実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、軸方向に沿う断面図。
【図11】第3の実施形態に係る液滴乾燥装置の電界及び磁界の分布を示す図。
【図12】第4の実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は軸方向に沿う断面図、(b)は径方向に沿う断面図。
【図13】第4の実施形態に係る液滴乾燥装置の電界及び磁界の分布を示す図。
【図14】変形例1に係る液滴乾燥装置の電気的構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0081】
1…プリンタ、2…液滴吐出ヘッドとしての記録ヘッド、10…被乾燥体としての紙、36…制御部、50…マイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド、51…上ヘッド、52…下ヘッド、100…マイクロ波発生部としての発振器、100a…マイクロ波、100b…反射波、101…プリンタ、102…プリンタ、120…アンプ、500…液滴乾燥装置、501…液滴乾燥装置、560…検出部としてのパワーモニタ、570…サーキュレータ、X1…第1のゼロ点、X2…第2のゼロ点、60…第2の実施形態のマイクロ波ヘッド、61…共振体、62…共振体、63A…第1のアンテナ、63B…第2のアンテナ、63…ダイポールアンテナ、64…円筒型空洞共振器、70…第3の実施形態のマイクロ波ヘッド、73A…第1のアンテナ、73B…第2のアンテナ、73a…先端部、73b…先端部、73…ダイポールアンテナ、80…第4の実施形態のマイクロ波ヘッド、81…共振体、82…共振体、81b、82b…開口面、83A…第1のアンテナ、83B…第2のアンテナ、83…ダイポールアンテナ、85…導体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及びこれを備えたプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタの印刷の高速化、高精細化には、塗布したインクが充分乾燥する前に更にインクが塗布されることによる「にじみ」が問題となっている。これを回避するためには、印刷前に紙質(水分量や材質)を検知することによるインク塗布量の最適化を行うこと、又は塗布したインクを高速に乾燥させることなどが有効な手段である。
使用するエネルギー効率の面からは、例えば電子レンジのようなマイクロ波による加熱は、物質に直接エネルギーを与えることができるため、熱の伝達による加熱に比べて効率が高い。マグネトロンなどによるマイクロ波発信源では電力利用効率が低いが、固体発振源によるマイクロ波電源を用いれば省電力、高効率励起が可能である。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、マイクロ波を用いて印刷用紙に付着したインクを加熱して乾燥させる方法が提案されている。
【特許文献1】特表2003−534164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、紙に含まれる水分量を検知することなくインクを乾燥させる方法なので、水分の量によっては乾燥時間が長く掛かることがあり、効率的であるとは言えず、高速印刷を行うことが困難であった。また、紙に含まれる水分量が多いと、紙の種類によっては、紙の裏側までインクが浸透してしまうことがあり、インクのにじみが発生することがあった。このインクのにじみが発生すると、裏面をきれいに印刷することが困難となり、両面印刷のような印刷の場合、好ましいとは言えない。しかも、マイクロ波を発生させるためのマイクロ波発信源にマグネトロンを用いると、装置が巨大化することになり、職場や家庭で用いられるような小型化の要求が高いプリンタには適した構造とは言えない。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、被乾燥体を素早く乾燥させることができる乾燥装置及び印刷品質が良好で高速印刷が可能プリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乾燥装置は、上記課題を解決するために、被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、平行に配置される一対の極板を備え、前記一対の極板の半径rを、X1×v/ωとし、前記一対の極板間を前記被乾燥体が通過することを特徴とする乾燥装置(但し、2.3<X1<2.5、マイクロ波の角振動数:ω=2πf、マイクロ波の周波数:f、前記マイクロ波の速度:vとする。)。
【0007】
本発明によれば、極板間で発生する電界の作用により被乾燥体の乾燥を効果的に行うことができる。また、極板の半径rを適切に設定することによって、シールドを用いることなくマイクロ波放射部(円筒共振器)内にマイクロ波を封じ込めることが可能となる。これにより、エネルギー密度が向上し、短時間で高効率な乾燥を行うことができる。
ここで、X1が、ベッセル関数の第1の根(X>0で、X=0に最も近い根)であることが好ましい。
【0008】
また、一対の極板の内面間距離がマイクロ波の波長の略半分であることが好ましい。
本発明によれば、基板間の略中心部分にマイクロ波のエネルギーを最も集中させることができる。そこを被乾燥体が通過することで被乾燥体をすぐさま昇温させることができ、乾燥効率が向上する。
【0009】
本発明の乾燥装置は、被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、軸心を一致させて離間して配置した一対の円柱状のアンテナから構成され、前記円筒型アンテナ間を、前記軸心と垂直方向に前記被乾燥体が通過することを特徴とする。
本発明によれば、一対のアンテナ間で発生する電界の作用により被乾燥体の加熱をより効果的に行うことができる。マイクロ波は、一対のアンテナ間でエネルギーが最も集中するため、アンテナ間に被乾燥体を配置することにより乾燥効率を高めることができる。
【0010】
本発明の乾燥装置は、被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、軸心を一致させて離間して配置した一対の円柱状のアンテナ及び前記アンテナ間近傍に配置された導体から構成され、前記一対のアンテナと前記導体との間を、前記軸心と平行方向に前記被乾燥体が通過することを特徴とする。
本発明によれば、一対のアンテナと導体との間で発生する電界の作用により被乾燥体の加熱をより効果的に行うことができる。マイクロ波は、一対のアンテナと導体との間でエネルギーが最も集中することになり、アンテナと導体との間に被乾燥体を配置することで乾燥効率を高めることができる。また、本発明では、マイクロ波放射部の長手方向を被乾燥体の通過方向に平行としていることから、マイクロ波放射部の低背化が可能となり、乾燥装置の小型化を図ることができる。さらに、他の装置への組み込みが容易となり設計自由度が向上する。
【0011】
また、マイクロ波放射部の長さ及び開口径が、マイクロ波の半波長の整数倍又は整数分の1と一致することが好ましい。
本発明によれば、被乾燥体が配置される箇所に、マイクロ波のエネルギーを最も集中させることができる。よって、被乾燥体の乾燥効率が向上するとともに短時間で乾燥させることができる。
【0012】
また、一対のアンテナが同じ長さで、マイクロ波放射部の長さ方向中央部を被乾燥体が通過することが好ましい。
本発明によれば、マイクロ波放射部の長さ方向中央部、すなわち、アンテナ間を被乾燥体が通過することになり、被乾燥体が配置されるアンテナ間にマイクロ波のエネルギーを最も集中させることができる。
【0013】
また、一対のアンテナの互いに対向する先端部が縮径されていることが好ましい。
本発明によれば、被乾燥体が配置されるアンテナ間におけるマイクロ波のエネルギーをより一層向上させることができる。
【0014】
また、マイクロ波放射部にマイクロ波を供給するマイクロ波電源部を備え、マイクロ波電源部は、被乾燥体の乾燥状態に応じた反射波を検出する反射波検出部と、マイクロ波を増幅する増幅回路と、被乾燥体の乾燥状態に応じた反射波を検出する反射波検出部と、反射波検出部の出力に基づいて増幅回路を制御する制御部と、を備えていることが好ましい。
本発明によれば、被乾燥体にマイクロ波を照射することで、被乾燥体に含まれる水分量の検視と乾燥とを略同時に実施することができるので、短時間で乾燥することができて効率的である。しかも、にじみが少なくて綺麗に乾燥することができる。また、被乾燥体の水分量に応じてマイクロ波のエネルギーを調節することができるので、無駄な電力消費を抑えることが可能となる。
【0015】
また、マイクロ波放射部に接続されるインダクタを備え、被乾燥体が水分を含んだ状態のときのマイクロ波放射部の複素インピーダンスと、インダクタのインピーダンスを合成した複素インピーダンスとが、マイクロ波放射部の出力端における複素インピーダンスと共役となることが好ましい。
本発明によれば、マイクロ波放射部内に存在する被乾燥体の水分量が減少したことを把握でき、被乾燥体が乾燥した時点を検知することができる。これにより、被乾燥体が乾燥した時点で乾燥を終えることができるので、乾燥不足を低減することができる。
【0016】
本発明のプリンタは、被乾燥体上に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乾燥装置と、を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、上述したように、本発明によれば、被乾燥体に含まれる水分量を検知して、被乾燥体の上に配置される液滴を乾燥することができる液滴乾燥装置を搭載しているので、悲観装置アの表面と裏面とに印刷するような両面印刷の場合であっても、にじみが少なく、綺麗な印刷を行うことができる。しかも、被乾燥体に含まれる水分量の検知と、液滴の乾燥とを略同時に実施することができるので、高速印刷を実現可能なプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
[プリンタ]
図1は、本実施形態の液滴乾燥装置を搭載したプリンタの構成を示す斜視図である。
図1に示すように、プリンタ1は、記録ヘッド2と、マイクロ波ヘッド50と、キャリッジ4と、ガイド部材5と、紙送りローラ21と、筐体40と、で概略構成されている。
記録ヘッド2は、被乾燥体としての紙(記録紙)10に印刷をする機能を有している。
キャリッジ4は、インクカートリッジ11を搭載することができる。このキャリッジ4は、駆動プーリ6と遊動プーリ7との間に掛け渡したタイミングベルト8に接続されている。
駆動プーリ6は、パルスモータ9の回転軸に接合されており、キャリッジ4はパルスモータ9の駆動によって紙10をその幅方向である主走査方向に移動することができる。
また、キャリッジ4における紙10との対向面に取り付けられている記録ヘッド2は、液体のインクを噴射する噴射ヘッドの一種である。なお、キャリッジ4には、インクカートリッジ11が搭載されている。
ガイド部材5は、このキャリッジ4とマイクロ波ヘッド50とを移動させることができる機能を有している。
紙送りローラ21は、紙10を所定の方向に送ることができる機能を有している。さらに、紙送りローラ21を回転させて紙10を主走査方向に送る紙送りモータ39が、プリンタ1に備えられている。
【0019】
図2は、プリンタの構成を示す概略図である。なお、同図は、図1の矢印の方向から見た状態を示している。
図2に示すように、紙10を挟み込むようにマイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド50が配置されている。このマイクロ波ヘッド50は、紙10の上側に配置された上ヘッド51と、紙10の下側に配置された下ヘッド52とで構成されており、上ヘッド51と下ヘッド52との間に紙10が配置されている。そして、マイクロ波ヘッド50は、記録ヘッド2の横に配置されており、記録ヘッド2と、マイクロ波ヘッド50とが、同時に移動(この場合、左右方向)するように構成されている。
【0020】
(液滴乾燥装置)
図3は、液滴乾燥装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、液滴乾燥装置500は、本発明に係る乾燥装置の一実施形態であって、マイクロ波100aを発振するマイクロ波発生部としての発振器100と、マイクロ波100aを増幅するアンプ120と、反射波100bの反射強度から反射率を求めてアンプ120を制御する制御部36と、検出部としてのパワーモニタ560と、信号の流れる方向に制限をつけるサーキュレータ570と、マイクロ波ヘッド50とで、概略構成されている。この液滴乾燥装置500において、サーキュレータ570に導入されたマイクロ波100aは、マイクロ波ヘッド50に導かれるように構成されている。さらに、紙10から反射した反射波100bは、パワーモニタ560に導かれるように構成されている。そして、パワーモニタ560に導かれた反射波100bは、制御部36に導かれ、反射波100bの反射強度の程度によって制御部36がアンプ120を制御するように構成されている。
【0021】
発振器100は、固体高周波発振器である弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)を応用したダイヤモンドSAW発振器である。
【0022】
アンプ120は、発振器100から出力された信号を増幅させて、2.45GHz帯の高周波信号を出力し、マイクロ波100aを増幅することができる。そして、このアンプ120と、発振器100とが、電気的に接続されている。
【0023】
検出部としてのパワーモニタ560は、紙10から反射する反射波100bの反射強度を検出することができる機能を有しており、この検出部としてのパワーモニタ560と、サーキュレータ570とが、電気的に接続されている。
【0024】
サーキュレータ570は、アンプ120で増幅された信号をマイクロ波ヘッド50に供給するとともに、信号の流れる方向に制限をつける機能を有しており、このサーキュレータ570と、マイクロ波ヘッド50とが、電気的に接続されている。
【0025】
マイクロ波ヘッド50は、上ヘッド51と、下ヘッド52とを備え、相互間に紙10を挿入できるように離間して配置されている。マイクロ波ヘッド50は、コンデンサであるキャパシタCと、コイルであるインダクタLとを、有しており、これらキャパシタCと、インダクタLとを、配置してLC共振子(この場合、キャパシタCと、インダクタLとを、直列に配置する直列共振回路であり、抵抗成分Rを含んでいてもよい)を構成している。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態である液滴乾燥装置の概略構成を示すとともに電界及び磁界の分布を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。図5は、電界強度分布を示すためのベッセル関数のグラフである。
図4(a),(b)に示すように、キャパシタCは、一対の円形状の極板からなる平行平板コンデンサであって、上ヘッド51内に設けられる第1の極板51Aと、下ヘッド52内に設けられる第2の極板52Aとを備える。第1の極板51Aと第2の極板52Aとはそれぞれの対向面間の距離hがλ/2(61.2mm)となるように配置されている。また、極板51A,52Aの半径rは、X1×v/ω(式1)で設定され、X1が2.3〜2.5の範囲内とされている。ここで、ωがマイクロ波の角振動数、fがマイクロ波の周波数、vがマイクロ波の速度であって、マイクロ波の角振動数は、ω=2πfで表される。
【0027】
そして、第1の極板51Aとサーキュレータ570とが電気的に接続され、第2の極板52AとインダクタLの一方の端子とが電気的に接続されている。また、インダクタLの他方の端子は、グランドGNDと電気的に接続されている。
【0028】
さらに、キャパシタCの値や、インダクタLの値を任意に選択して設定をすることができ、インクの乾燥の条件を決定することができる。
【0029】
キャパシタCにマイクロ波が印加された場合、電場E及び磁場Bの分布は図4(a),(b)に示すようになる。内部の電界強度分布は、図5に示すような第1種ベッセル関数になる。つまり、極板の中心が最も強度が強く、半径方向外側(外周)へ向かうにつれて強度が漸次低下していくとともにマイクロ波が発生しない箇所(ベッセル関数のグラフで振幅が0となる箇所)がいくつか存在する。そこで、極板51A,52Aの半径rを、第1の根X1のX座標(X=2.405)となるように設定することで、マイクロ波のエネルギー(電界強度)を極板51A,52Aの周縁部でゼロとすることができる。これにより、マイクロ波を封じ込めるため(漏れを防止するため)のシールドが不要となる。例えば、周波数が2.45GHzの場合には、上記式1により極板51A,52Aの半径rは4.7cmとなる。また、半径方向途中において電界Eがゼロとなる領域が存在しないので、加熱効率が向上する。
【0030】
ここで、例えば、極板51A,52Aの半径rを第2の根X2のx座標(X=5.52)とした場合、極板51A,52Aの半径方向にマイクロ波が発生しない箇所が複数存在することになり、電界Eの分布にむらが生じてしまうことになる。そのため、極板51A,52Aの半径rを第1の根X1のX座標とすることが好ましい。
【0031】
乾燥すべき紙10は、マイクロ波ヘッド50内を通過する際に、極板51A,52A間に発生している電界の作用を受けて加熱され、含有している水分が急速に蒸発して高効率な乾燥が行われることになる。
【0032】
図6は、プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図6に示すように、プリンタ1は、プリンタコントローラ31と、プリントエンジン32とで、概略構成されている。そして、プリンタコントローラ31に有する制御部36が、プリンタ1の制御と、液滴乾燥装置500(図3参照)の制御とを、行うことができるように構成されている。
【0033】
プリンタコントローラ31は、I/F(インターフェース)33と、RAM(Random Access Memory)34と、ROM(Read Only Memory)35と、CPU(中央処理ユニット)等からなる制御部36と、クロック信号を発生する発振回路37と、駆動信号発生回路3と、I/F(インターフェース)38とを、有している。
【0034】
I/F33は、例えばキャラクタコード、グラフィックコード、イメージデータのいずれか一つのデータまたは複数のデータからなる印刷データをホストコンピュータ(図示省略)等から受信することができる。また、I/F33は、ホストコンピュータに対してビジー信号や、アクノレッジ信号等を出力することができる。
【0035】
RAM34は、各種データの記憶等を行う機能を有しており、受信バッファ、中間バッファ、出力バッファ及びワークメモリ(図示省略)等として利用される。受信バッファには、I/F33が受信したホストコンピュータからの印刷データが一時的に記憶される。中間バッファには、制御部36によって中間コードに変換された中間コードデータが記憶される。出力バッファには、ドット毎の印字データが展開される。
【0036】
ROM35は、制御部36によって実行される各種制御ルーチン、フォントデータ及びグラフィック関数、各種手続き等を記憶する機能を有している。
【0037】
制御部36は、受信バッファ内の印刷データを読み出して中間コードに変換し、この中間コードデータを中間バッファに記憶する。また、制御部36は、中間バッファから読み出した中間コードデータを解析し、ROM35内のフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して中間コードデータを印字データに展開する機能を有している。この印字データは、例えば2ビットの階調情報で構成されている。この展開された印字データは、出力バッファに記憶されて、記録ヘッド2の1行分に相当する印字データが得られると、この1行分の印字データは、I/F38を介して記録ヘッド2にシリアル伝送される。出力バッファから1行分の印字データが送信されると、中間バッファの内容が消去されて、次の中間コードに対する変換が行われる。また、制御部36は、タイミング信号発生手段の一部を構成している。I/F38を通じて記録ヘッド2にラッチ信号や、チャンネル信号を供給する機能を有している。これらのラッチ信号や、チャンネル信号は、駆動信号を構成する各パルス信号の供給開始のタイミングを規定する機能を有している。しかも、制御部36は、図3に示す液滴乾燥装置500の制御をすることができる機能を有している。
【0038】
駆動信号発生回路3は、駆動信号生成手段の一種であり、複数の波形要素によって構成された駆動パルスを含む一連の駆動信号を生成し、これら駆動信号を記録ヘッド2へ供給
する機能を有している。
【0039】
I/F(インターフェース)38は、ドットパターンデータに展開された印字データ及び駆動信号等をプリントエンジン32に送信する機能を有している。
【0040】
プリントエンジン32は、記録ヘッド2の電気駆動系と、キャリッジ4(図1参照)を移動させるパルスモータ9と、紙送りローラ21(図1参照)を回転させる紙送りモータ39等から構成されている。
【0041】
記録ヘッド2の電気駆動系は、第1シフトレジスタ41及び第2シフトレジスタ42からなるシフトレジスタ回路と、第1ラッチ回路43と第2ラッチ回路44からなるラッチ回路と、デコーダ45と、制御ロジック46と、レベルシフタ47と、スイッチ回路48と、圧電振動子15とを、備えている。
【0042】
そして、図1に示すプリンタ1は、本実施形態における液滴乾燥装置500を搭載している。
【0043】
次に、液滴乾燥装置の動作について説明する。
図7は、本実施形態に係る液滴乾燥装置の動作手順を示すフローチャートである。なお、マイクロ波の進行方向を含めて図3を参照しながらステップごとに説明する。
【0044】
図7のステップS1では、マイクロ波100aの放射を開始する。マイクロ波発生部としての発振器100は、高周波信号を生成しマイクロ波100aの放射を開始する。
【0045】
ステップS2では、マイクロ波100aを増幅する。マイクロ波100aは、増幅器としてのアンプ120により増幅される。
【0046】
ステップS3では、マイクロ波100aを放射する。アンプ120から出力されたマイクロ波100aは、サーキュレータ570を経由してマイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド50へ導かれる。マイクロ波ヘッド50へ導かれたマイクロ波100aのうち、インピーダンスの不整合によって反射された反射波100bは、サーキュレータ570のもう一端に伝達され、反射波100bを検出する検出部としてのパワーモニタ560へ導かれる。一般に、反射波100bがアンプ120に戻った場合、増幅回路が破壊される恐れがあるため、保護回路としてサーキュレータ570が挿入されていることが多い。放射されるマイクロ波100aは、略平面波であり、マイクロ波ヘッド50を構成する上ヘッド51から、下ヘッド52に向けて放射される。マイクロ波100aは、上ヘッド51と、下ヘッド52との間に挿入されている紙10の表面から裏面に向けて放射されることになる。
【0047】
ステップS4では、紙10の水分量を検知して、インクを乾燥する。紙10が濡れていた場合、濡れた紙10がマイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド50に入っている状態で、LC共振回路のインピーダンスがマイクロ波源の発振周波数においてマイクロ波電源部の出力端のインピーダンスと共役(整合)となるように素子の定数を設定しておく。キャパシタCの間に存在する紙10の水分量が減少(湿度が低いとき)したときには、LC共振回路(この場合、直列共振回路)が共振しにくくなり、反射波100bの反射強度が増える。この反射強度は紙10の誘電率により変化する。紙10が濡れた状態でインピーダンスが整合するようにLC共振回路をあらかじめ設定してあるので、紙10が乾燥され紙10中の水分量が減少するにつれ紙10の誘電率が小さくなる。この反射強度を検出することで紙10の誘電率を求めることができ、求めた誘電率から紙10の水分量を算出することができる。
【0048】
この方法により、紙10の乾燥した時点を検知することができる。そして、紙10の乾燥を検知した時点で加熱終了となり、乾燥不足を低減することができる。逆に、紙10の水分量が増加(湿度が高いとき)したときには、LC共振回路が共振し始めてマイクロ波100aを集中的に放射して効率よく水分を乾燥させることができる。また、紙10や、液滴としてのインクに含まれる水分が乾燥した状態に近づくと、マイクロ波100aの出力を小さくすることで、無駄な電力消費を抑えることができる。さらに、加熱し過ぎによる紙10の焦げや、インクの変質を押さえることもできる。ここで使用されるインクとしては、紙10に印字(印刷を含む)するためのものであって、例えば6色のカラーで印刷するような場合は、シアン、ライトシアン、マゼンダ、ライトマゼンダ、黄色、黒色などの色素を有しているものを用いている。なお、よく使われる紙(印刷用紙)10の種類ごとの水分量と誘電率との対応データをあらかじめ準備しておくと、乾燥するための条件を選択するのに好都合である。
【0049】
ステップS5では、反射波100bの反射強度を検出して、アンプ120を制御する。マイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド50からの反射波100bの強度を検出部としてのパワーモニタ560を用いて検出する。なお、図1に示すプリンタ1の動作時において、反射波100bの強度を検出する検出作業は、常に実施することが望ましい。この検出作業を常に行うことにより、より精度の高い検出結果を得ることができる。ここで、紙10に含まれる水分量が減少すると、コンデンサC間の誘電率が変化し、静電容量の値が変化する。すると、インピーダンスが変化し、反射波100bの強度が増える(この状態を不整合状態という)。そこで、この反射波100bの強度の増減を利用して、紙10の誘電率を求めることができる。そして、紙10の種類ごとの水分量と誘電率との対応データをあらかじめ準備しておけば、求めた誘電率から紙10の水分量を算出できる。この方法により、紙10に含まれる水分量を検知し、それに応じてアンプ120の出力を制御部36が制御する。この制御部36は、反射波100bの強度が低いときにアンプ120の増幅率を高くし、逆に、反射波100bの強度が高くなるにつれてアンプ120の増幅率を小さくすることができる。
【0050】
ステップS6では、インクを乾燥することができ、図1に示す記録ヘッド2からインクの吐出が終了したら、マイクロ波100aの放射を停止する。マイクロ波発生部としての発振器100から発振される高周波信号の発振を停止する。
【0051】
単一のマイクロ波源を用いることで、紙10に含まれている水分量の検知と、インクの乾燥とを、ほぼ同時に行うことができる。紙10に含まれている水分量の検知は、コンデンサの誘電率変化に伴うインピーダンス変化によって確認でき、反射波100bの反射強度の変化により行うことができる。そして、紙10に含まれている水分量を検知することで、マイクロ波100aの出力強度を適正な値に制御することができ、乾燥時間の短縮や、消費電力を抑えることにつながる。
【0052】
以上のような実施形態における液滴乾燥装置及びプリンタの構成によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態は、紙10にマイクロ波100aを放射するマイクロ波ヘッド50を備えているから、紙10にマイクロ波100aを放射することで、紙10に含まれる水分量の検知と、紙10の上に配置される液滴としてのインクの乾燥とを、ほぼ同時に実施することが可能な液滴乾燥装置500を提供できる。この液滴乾燥装置500は、マイクロ波ヘッド50は、円形を呈する一対の極板51A,52Aから構成されているため、両極板51A,52A間に均一な電界分布が得られる。本実施形態では、マイクロ波ヘッド50の極板51A,52Aの半径rを上述したベッセル関数を用いて設定しており、その結果、シールドを用いることなくマイクロ波ヘッド50内にマイクロ波を封じ込めることができる。これにより、従来の製造方法を用いて作製することができ、コストが増加することもない。また、極板51A,52Aの半径rを適切に設定しているためマイクロ波ヘッド50内で電界Eがゼロとなる箇所が生じないので、エネルギー密度の向上による乾燥効率の向上が図れ、短時間で高効率な乾燥を行うことができる。
【0053】
しかも、マイクロ波ヘッド50にLC共振子(この場合、直列共振回路)を構成しているから、加熱用アンテナとしての機能と、検出素子としての機能とを、兼用させることができ、装置構成を簡単にすることができる。特に、マイクロ波ヘッド50が水分量検出用のセンサの役割を兼ねるため、記録ヘッド2に付加する部品が最小限ですむ。このため、ヘッド部の設計の制約条件が少なくなる。また、水分量検出用に別途センサを設けるような場合に比べて、センシング部への配線が少なくなるため、構成を簡略化できる。
【0054】
また、紙10にマイクロ波100aを放射する工程を備えているから、紙10にマイクロ波100aを放射することで、紙10に含まれる水分量の検知と、紙10の上に配置される液滴としてのインクの乾燥とを、ほぼ同時に実施することができるので、にじみが少なくて、綺麗に乾燥することができる。しかも、短時間で乾燥することができるので、効率的である。さらに、検出素子としての機能と、加熱用アンテナとしての機能とを、兼用しているLC共振子を発振させれば、紙10に含まれる水分量の検知と、紙10の上に配置される液滴としてのインクの乾燥とを、略同時に実施することができるので、効率的である。
【0055】
また、被乾燥体が紙10であるから、使用頻度の高い順に水分量と誘電率との対応データをあらかじめ用意しておけば、紙10の品質が変わったとしても、紙10の上に配置される液滴を乾燥するときの条件を素早く選択できるので、より早く乾燥させることができ、高速印刷を実現することができる。
【0056】
また、紙10に含まれる水分量を検知して、紙10の上に配置される液滴としてのインクを乾燥することができる液滴乾燥装置500を搭載しているので、紙10の表面と裏面とに印刷するような両面印刷の場合であっても、にじみが少なく、綺麗な印刷をすることができる。しかも、紙10に含まれる水分量の検知と、液滴としてのインクの乾燥とを、ほぼ同時に実施することができるので、高速印刷を実現可能なプリンタ1を提供することができる。さらに、ダイヤモンドSAW発振器のような固体発振源によるマイクロ波電源を発振器100として用いているから、省電力、高効率励起が可能となるので、エネルギ消費量を抑制することができる。エネルギ消費量を抑制することができれば、環境負荷の低減にも貢献できる。
【0057】
上記実施形態では、平行平板コンデンサを用いてLC共振子を構成するマイクロ波ヘッドについて述べた。以下に示す実施形態では、軸方向長さを可変とする円筒型空洞共振器を用いてLC共振子を構成するマイクロ波ヘッドについて述べる。
【0058】
(液体乾燥装置の第2の実施形態)
次に、本発明に係る液体乾燥装置の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。ここで、図8は、本実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は軸方向に沿う断面図、(b)は径方向における断面図である。図9は、マイクロ波ヘッドのエネルギー密度を示す図である。
本実施形態における液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッド60は、図8(a),(b)に示すように、キャパシタCとして用いられるダイポールアンテナ63を内部に具備する円筒型空洞共振器64を構成する。
【0059】
円筒型空洞共振器64は、円筒形状をなす一対の共振体61及び共振体62を備え、長手方向一方の開口面61aと開口面62aとを対向させるとともに互いに所定間隔をおいて配置されている。具体的には、共振体61が図2に示す上ヘッド51内に配置され、下ヘッド52内に共振体62が配置される。円筒型空洞共振器64の長さh及び径d1は、マイクロ波の半波長の整数倍又は整数分の1と一致しており、例えば長手方向長さhがλ/2、径d1がλ/2〜λ/8とされている。
【0060】
各共振体61,62内には、これら各共振体61,62と軸心を一致させるとともに紙10の通過方向に対して垂直に延在する円柱状のアンテナ63A,63Bが設けられている。そして、共振体61内に配置される送信用の第1のアンテナ63Aと、共振体62内に配置される受信用の第2のアンテナ63Bとにより上記ダイポールアンテナ63が構成されている。また、各共振体61,62と各アンテナ63A,63Bとはそれぞれ電気的に離間している。
【0061】
そして、第1のアンテナ63Aとサーキュレータ570とが電気的に接続され、第2のアンテナ63BとインダクタLの一方の端子とが電気的に接続されている。また、インダクタLの他方の端子は、グランドGNDと電気的に接続されている点は上記実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態では、例えば、マイクロ波の波長が2.45GHzの場合、各共振体61,62の直径d1をλ/8(15.3mm程度)、マイクロ波ヘッド60の長手方向長さhをλ/2(61.2mm程度)とする。また、アンテナ63A,63Bの長さを29mm程度とすることで第1のアンテナ63Aと第2のアンテナ63Bとの間のギャップgが3mm程度となる。これはマイクロ波の波長に比べて十分短い距離であることから、マイクロ波の漏れが生じ難いという効果が得られる。
【0063】
乾燥すべき紙10は、当該紙10の厚さ方向に強い電界を励起する円筒型空洞共振器64内のアンテナ63A,63B間を通過する際に、空洞内に発生している電界(図9参照)の作用を受けて加熱され、含有する水分が急速に蒸発して効率よく乾燥が行われる。図9に示すように、円筒型空洞共振器64のアンテナ63A,63B間で電界が極めて強くなっている。これにより、マイクロ波のエネルギー密度が向上して紙10を速やかに昇温させることができるので、加熱効率をより高めることができる。
【0064】
(液体乾燥装置の第3の実施形態)
次に、本発明に係る液体乾燥装置の第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。ここで、図10は、本実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、軸方向に沿う断面図である。図11は、マイクロ波ヘッドのエネルギー密度を示す図である。
【0065】
以下に示す本実施形態のマイクロ波ヘッド70の基本構成は、上記第2の実施形態と略同様であるがダイポールアンテナの形状が上記第2実施形態と異なっている。具体的には、図10に示すように、ダイポールアンテナ73を構成する円柱状のアンテナ73A,73Bの先端部73a,73b(対向側端部)の直径d2が縮径(d2<d1)して形成されている。
このように、アンテナ73A,73Bの先端部73a,73bを細くすることで電界が強まり、より高いエネルギー密度を得ることができる(図11参照)。
【0066】
(液体乾燥装置の第4の実施形態)
次に、本発明に係る液体乾燥装置の第4の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。ここで、図12は本実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は軸方向に沿った断面図、(b)は径方向における断面図である。図13は、本実施形態に係るマイクロ波ヘッドのエネルギー密度を示す図である。
【0067】
上記第2,3実施形態の液体乾燥装置は、円筒型空洞共振器の軸方向が紙10の紙面(紙10の通過方向)に対して垂直な姿勢となっていたが、本実施形態における円筒型空洞共振器の長手方向が紙面に対して平行な姿勢となっている点において上記実施形態と異なっている。
【0068】
図12(a),(b)に示すように、本実施形態における液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッド80は、一対の共振体81及び共振体82と、共振体81内に配置されるダイポールアンテナ83と、共振体82内に配置される導体85と、を備える円筒型空洞共振器84を構成する。
【0069】
図12(b)に示すように、共振体81及び共振体82は、断面視半円弧形状をなし、径方向に開口する開口81b,82b同士を対向させるとともに互いに所定間隔をおいて配置されることで円筒形状とされている。ここで、共振体81は図2に示す上ヘッド51内に配置され、共振体82は下ヘッド52内に配置される。
【0070】
ダイポールアンテナ83を構成する円柱状の第1のアンテナ83Aと第2のアンテナ83Bとは、共振体81の開口81b側において、互いの軸心を一致させるとともに各アンテナ83A,83Bの軸方向が紙の通過方向と平行となるように配置され、互いに所定距離離間している。
【0071】
導体85は、導電性の金属材料により所定の軸方向長さ及び直径を有して構成されている。そして、アンテナ83A,83B間に形成される領域sの近傍であって共振体82の長手方向中央付近において、アンテナ83A,83BとのギャップGが3mm程度となるように配置されている。この導体85は、共振体82と繋がっていても良いが、アンテナ83A,83Bからは離間させておく。本実施形態における導体85は、このアンテナ83A,83BとのギャップGよりも大きい直径d3を有している。
【0072】
そして、第1のアンテナ83A及び第2のアンテナ83Bとサーキュレータ570とが電気的に接続され、導体85とインダクタLの一方の端子とが電気的に接続されている。このように、本実施形態においては、一対のアンテナ83A,83Bが送信用とされ、導体85が受信用となっており、各アンテナ83A,83と導体85との間で放電する(図13参照)。紙10は、共振体81と共振体82との間、すなわち一対のアンテナ83A,83Bと導体85との間を通過する。
【0073】
本実施形態のマイクロ波ヘッド80は、例えば、マイクロ波の波長が2.45GHzの場合、軸方向における開口端の径d4がλ/4(30.6mm程度)、円筒型空洞共振器84の長手方向長さhがλ/2(61.2mm程度)となっている。また、アンテナ83A,83Bの長さが29mm程度で、第1のアンテナ83Aと第2のアンテナ83Bとの間のギャップgが3mm程度となっている。マイクロ波の漏れを防止するためには、アンテナ83A,83Bと導体85と間のギャップGが3mm程度となることが好ましいことから、上記ギャップGの条件を満たすように円筒型空洞共振器84の径d4や導体85の長さを設定するようにする。
【0074】
本実施形態によれば、円筒型空洞共振器84を、その軸方向が紙10の紙面と平行となるように横倒しに配置したので、マイクロ波ヘッド80を低背化することができる。また、アンテナ83A,83B間の領域sの近傍であって、対向しているアンテナ83A,83Bの両端部と向き合うようにして導体85が配置されている。そのため、図13に示すように、マイクロ波はアンテナ83A,83Bと導体85との間で発生し、これらアンテナ83A,83Bと導体85との間を紙10が通過することによって紙10にマイクロ波が放射されることになる。
【0075】
このように、マイクロ波のエネルギーが集中する場所を、アンテナ83A,83B間ではなく、アンテナ83A,83Bと導体85との間にずらすことで、円筒型空洞共振器84を横倒しにしても乾燥効率に変わりはなく、各共振体81,82の軸方向長さ(マイクロ波ヘッド80の長手方向長さh)を短くすることができる。したがって、マイクロ波ヘッド80(円筒型空洞共振器84)の低背化を実現でき、プリンタへの組み込みが容易となる。さらに、装置全体の設計自由度が向上するので小型化も可能となる。
【0076】
以上、好ましい実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含み、本発明の目的を達成できる範囲で、他のいずれの具体的な構造及び形状に設定できる。
【0077】
(変形例1)
前述の実施形態では、キャパシタCと、インダクタLとを、直列に配置した直列共振回路を液滴乾燥装置500に採用する構成にしたが、これに限らない。例えば図14に示す液滴乾燥装置501のように、キャパシタCと、インダクタLとを、並列に配置する並列共振回路(抵抗成分Rを含んでいてもよい)を採用した構成にしてもよい。このようにしても、マイクロ波ヘッド50を構成する上ヘッド51と、下ヘッド52とが、紙10を挟むように構成されているので、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(変形例2)
前述の実施形態では、プリンタ1にマイクロ波ヘッド50を一つ搭載する構成にしたが、これに限らない。例えばマイクロ波ヘッド50を複数搭載する構成にしてもよい。このようにすれば、プリンタ1にマイクロ波ヘッド50がたくさん搭載されることになれば、水分量を検知してインクを乾燥させるまでの時間をより速く実施することを期待できる。
【0079】
(変形例3)
前述の実施形態では、マイクロ波ヘッド50を搭載した液滴乾燥装置500をプリンタ1に採用したが、これに限らない。例えばプリンタ1以外の印刷装置や、紙10を乾燥させるのに必要なその他の各種装置に採用してもよい。このようにすれば、色々な分野で使用することができるので、その用途を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施形態に係る液滴乾燥装置を搭載したプリンタの構成を示す斜視図。
【図2】プリンタの構成を示す概略図。
【図3】液滴乾燥装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】1本実施形態に係る液滴乾燥装置の概略構成を示すとともに電界及び磁界の分布を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図。
【図5】ベッセル関数を示す図。
【図6】プリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図7】液滴乾燥装置の動作手順を示すフローチャート。
【図8】第2の実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は軸方向に沿う断面図、(b)は径方向に沿う断面図。
【図9】第2の実施形態に係る液滴乾燥装置の電界及び磁界の分布を示す図。
【図10】第3の実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、軸方向に沿う断面図。
【図11】第3の実施形態に係る液滴乾燥装置の電界及び磁界の分布を示す図。
【図12】第4の実施形態に係る液滴乾燥装置のマイクロ波ヘッドの概略構成を示す図であって、(a)は軸方向に沿う断面図、(b)は径方向に沿う断面図。
【図13】第4の実施形態に係る液滴乾燥装置の電界及び磁界の分布を示す図。
【図14】変形例1に係る液滴乾燥装置の電気的構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0081】
1…プリンタ、2…液滴吐出ヘッドとしての記録ヘッド、10…被乾燥体としての紙、36…制御部、50…マイクロ波放射部としてのマイクロ波ヘッド、51…上ヘッド、52…下ヘッド、100…マイクロ波発生部としての発振器、100a…マイクロ波、100b…反射波、101…プリンタ、102…プリンタ、120…アンプ、500…液滴乾燥装置、501…液滴乾燥装置、560…検出部としてのパワーモニタ、570…サーキュレータ、X1…第1のゼロ点、X2…第2のゼロ点、60…第2の実施形態のマイクロ波ヘッド、61…共振体、62…共振体、63A…第1のアンテナ、63B…第2のアンテナ、63…ダイポールアンテナ、64…円筒型空洞共振器、70…第3の実施形態のマイクロ波ヘッド、73A…第1のアンテナ、73B…第2のアンテナ、73a…先端部、73b…先端部、73…ダイポールアンテナ、80…第4の実施形態のマイクロ波ヘッド、81…共振体、82…共振体、81b、82b…開口面、83A…第1のアンテナ、83B…第2のアンテナ、83…ダイポールアンテナ、85…導体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、
前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、平行に配置される一対の極板を備え、
前記一対の極板の半径rを、X1×v/ωとし、
前記一対の極板間を前記被乾燥体が通過することを特徴とする乾燥装置
(但し、2.3<X1<2.5、マイクロ波の角振動数:ω=2πf、マイクロ波の周波数:f、前記マイクロ波の速度:vとする。)。
【請求項2】
前記一対の極板の内面間距離がマイクロ波の波長の略半分であることを特徴とする請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、
前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、軸心を一致させて離間して配置した一対の円柱状のアンテナから構成され、
前記アンテナ間を、前記軸心と垂直方向に前記被乾燥体が通過することを特徴とする乾燥装置。
【請求項4】
被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、
前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、軸心を一致させて離間して配置した一対の円柱状のアンテナ及び前記アンテナ間近傍に配置された導体から構成され、
前記一対のアンテナと前記導体との間を、前記軸心と平行方向に前記被乾燥体が通過することを特徴とする乾燥装置。
【請求項5】
前記マイクロ波放射部の長さ及び開口径が、マイクロ波の半波長の整数倍又は整数分の1と一致することを特徴とする請求項3または4記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記一対のアンテナが同じ長さであることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記一対のアンテナの互いに対向する先端部が縮径されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記マイクロ波放射部に前記マイクロ波を供給するマイクロ波電源部を備え、
前記マイクロ波電源部は、前記被乾燥体の乾燥状態に応じた反射波を検出する反射波検出部と、マイクロ波を増幅する増幅回路と、前記反射波検出部の出力に基づいて前記増幅回路を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記マイクロ波放射部に接続されるインダクタを備え、
前記被乾燥体が水分を含んだ状態のときの前記マイクロ波放射部の複素インピーダンスと、前記インダクタのインピーダンスを合成した複素インピーダンスとが、前記マイクロ波放射部の出力端における複素インピーダンスと共役となることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項10】
被乾燥体上に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乾燥装置と、を備えていることを特徴とするプリンタ。
【請求項1】
被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、
前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、平行に配置される一対の極板を備え、
前記一対の極板の半径rを、X1×v/ωとし、
前記一対の極板間を前記被乾燥体が通過することを特徴とする乾燥装置
(但し、2.3<X1<2.5、マイクロ波の角振動数:ω=2πf、マイクロ波の周波数:f、前記マイクロ波の速度:vとする。)。
【請求項2】
前記一対の極板の内面間距離がマイクロ波の波長の略半分であることを特徴とする請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、
前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、軸心を一致させて離間して配置した一対の円柱状のアンテナから構成され、
前記アンテナ間を、前記軸心と垂直方向に前記被乾燥体が通過することを特徴とする乾燥装置。
【請求項4】
被乾燥体を乾燥する乾燥装置において、
前記被乾燥体にマイクロ波を放射するマイクロ波放射部は、軸心を一致させて離間して配置した一対の円柱状のアンテナ及び前記アンテナ間近傍に配置された導体から構成され、
前記一対のアンテナと前記導体との間を、前記軸心と平行方向に前記被乾燥体が通過することを特徴とする乾燥装置。
【請求項5】
前記マイクロ波放射部の長さ及び開口径が、マイクロ波の半波長の整数倍又は整数分の1と一致することを特徴とする請求項3または4記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記一対のアンテナが同じ長さであることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記一対のアンテナの互いに対向する先端部が縮径されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記マイクロ波放射部に前記マイクロ波を供給するマイクロ波電源部を備え、
前記マイクロ波電源部は、前記被乾燥体の乾燥状態に応じた反射波を検出する反射波検出部と、マイクロ波を増幅する増幅回路と、前記反射波検出部の出力に基づいて前記増幅回路を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記マイクロ波放射部に接続されるインダクタを備え、
前記被乾燥体が水分を含んだ状態のときの前記マイクロ波放射部の複素インピーダンスと、前記インダクタのインピーダンスを合成した複素インピーダンスとが、前記マイクロ波放射部の出力端における複素インピーダンスと共役となることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乾燥装置。
【請求項10】
被乾燥体上に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乾燥装置と、を備えていることを特徴とするプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−133515(P2009−133515A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308406(P2007−308406)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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