説明

乾燥装置及びキッチンキャビネット

【課題】 物品の出し入れの簡単な使い易い乾燥維持性能の良い乾燥装置を得る。
【解決手段】 上面の開放した引出し式の収納箱9を前面の開放した箱体10に、前面から出し入れ可能に収納し、収納箱9を箱体10に収納した状態では箱体10内が気密保持される本体構造を備える。この本体構造の収納箱9内に固定され、除湿運転と再生運転により可逆的な吸放湿機能を行う除湿機14、除湿機14の収納箱9内に通じる除湿空気についての出入口を除いて除湿機14の外側を覆う気密性を持つカバー25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や台所で使う物品を乾燥状態に保管する乾燥装置及び乾燥装置を組込んだキッチンキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品やその他の物品を乾燥状態に保管するための乾燥庫を備えたキッチンキャビネットとしては、吸着材を備えた除湿機能部を乾燥庫内に設け、庫内の空気を循環させて吸着材に吸湿させ、乾燥庫内を乾燥雰囲気にするものがある。吸着材として天然ゼオライトやシリカゲルを使った除湿機能部を備えた乾燥庫は、庫内に水も溜まらず、一度吸湿した吸着材に熱を加えて放湿させることによって再生でき、利便性が高い。なお、この種の従来技術としては、特許文献1に開示されているものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−299531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥庫を備えた従来のキッチンキャビネットは、乾燥庫自体が出し入れできる引出しになっており、乾燥庫には乾燥雰囲気を保持するため独自に開閉蓋が設けられている。従って、乾燥庫への物品の出し入れに当たっては、乾燥庫をキャビネットから引出し、開閉蓋を開け、物品を出し入れした後、再び開閉蓋を閉じ、乾燥庫を押込むといった面倒な作業が必要であり、使い難く、台所作業を煩雑なものにしている。そして、乾燥庫内に設けられた乾燥機能部の空気漏れが経年によって増加し、乾燥維持性能の低下を招いている。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、物品の出し入れの簡単な使い易い乾燥維持性能の良い乾燥装置を得ることであり、その乾燥装置を組込んだ、使い易く、整理のし易い利便性の高いキッチンキャビネットを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、上面の開放した引出し式の収納箱を前面の開放した箱体に、前面から出し入れ可能に収納し、収納箱を箱体に収納した状態では箱体内が気密保持される本体構造を構成する。この本体構造の収納箱内に固定され、除湿運転と再生運転により可逆的な吸放湿機能を行う除湿機、除湿機の収納箱内に通じる除湿空気についての出入口を除いて除湿機の外側を覆う気密性を持つカバーを備え、除湿機の再生空気の出入口については本体構造の外に臨ませる手段を採用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、本体構造が気密性をもち、物品の出し入れは、引出しの出し入れだけで済み、使い易く操作性が良い。収納箱内に設けられた除湿機は外側が気密性のあるカバーで覆われているので、除湿機から収納箱への空気漏れがなく、経年使用によっても乾燥維持性能の低下を来さない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のキッチンキャビネットは、システムキッチンを構成する六面体で前面の開放したキャビネットに乾燥装置と食器洗浄機が設置されている。キャビネットは、いずれのメーカーもほぼ共通な寸法に設定されている食器洗浄機の収納に好適な寸法に作られている。キャビネットの中段に棚が設けられていて、上段の空間に乾燥装置が、下段に食器洗浄機が設置されている。上段の空間の前面は、乾燥装置の前パネルで、下段の空間は開閉扉でそれぞれ外観性よく閉がれている。
【0009】
乾燥装置は、上面の開放した引出し式の収納箱が前面の開放した箱体に、前面から出し入れ可能に収納され、収納箱を箱体に収納した状態では箱体内が気密保持される概ね食器洗浄機と同じ寸法の六面体の本体構造を備えている。収納箱の前面は前パネルで構成され、収納箱を箱体に収納した状態ではこの前パネルで箱体の前面が密閉される。この本体構造の収納箱内の前パネルの裏面に除湿機が固定されている。除湿機は、空気を通す多数の通路を有し、可逆的な吸放湿機能を備えた除湿器と、除湿器の通路に通風させる送風機と、除湿器に通す空気を昇温する加熱手段とを組込んだ風路が外殻内に構成されている。この風路を経路とする収納箱内に通じる入口と出口を持つ除湿経路と、風路を経路とする前記入口と前記出口とは別の前パネルを通じて本体構造の外に連絡する入口と出口を持つ再生経路とを備え、除湿経路と再生経路とをモーターで動作する開閉ダンパ機構によって切換え、再生経路による再生運転と除湿経路による除湿運転とを交互に行う。除湿機の収納箱内の外側は、除湿経路の入口と出口を除いて気密性を持つカバーで確りと覆われ、除湿機の外殻からの空気漏れが長期にわたって防がれている。
【0010】
収納箱を箱体から引き出すと、収納箱は上部の開放した箱となり、食品や乾燥食材等を簡単に収納することができる。収納箱を箱体に押込んで収め、電源を投入すると、まず、再生経路が開かれ、除湿器を再生する再生運転を行い、その後、除湿経路が開かれ、除湿運転を行い、これを交互に繰返して本体構造内を乾燥雰囲気にする。収納箱内は、乾燥雰囲気に維持され、収納された食品や乾燥食材等は、最適な乾燥状態でカビが発生することもなく保管される。乾燥装置は、キャビネットのワークトップ下の上段にあり、調理作業に伴い、必要な食品や乾燥食材の出し入れの頻度が多くなっても立ち姿勢のまま手許近くで容易に操作でき、利便性が高い。
【0011】
実施の形態1.
図1〜図10によって示す本実施の形態は、食品や乾燥食材等を乾燥雰囲気において収納する乾燥装置を組込んだ、システムキッチンを構成するキッチンキャビネットに関するものである。図1は、キッチンキャビネットの斜視図、図2は、収納箱を引き出した状態のキッチンキャビネットの斜視図、図3は、乾燥装置の断面図、図4は、開閉ダンパ機構の構成を示す拡大部分断面図、図5は、除湿機とカバーの関係を示す斜視図、図6は、除湿機の断面図、図7は、操作パネルを示す斜視図、図8は、電源コードの配線を示すキッチンキャビネットの背面側斜視図、図9は、乾燥装置の取付けに関するキッチンキャビネットの斜視図、図10は、他のキッチンキャビネットの斜視図である。
【0012】
本実施の形態のキッチンキャビネットは、システムキッチンを構成する六面体で前面の開放したキャビネット1に乾燥装置2と食器洗浄機3が設置されている。キャビネット1は、いずれのメーカーもほぼ共通な寸法(縦450mm、横445mm、奥行595mm)に設定されている食器洗浄機3の収納に好適な寸法に作られている。キャビネット1の中段には棚4が設けられていて、上段の空間に乾燥装置2が、下段の空間に食器洗浄機3が設置されている。上段の空間の前面は、乾燥装置2の前パネル5で、下段の空間は開閉扉6でそれぞれ外観性よく閉じられている(図1,2参照)。乾燥装置2も食器洗浄機3とほぼ同じ寸法に作られていて、その設置は、図9に示すように棚4の前部に取付けられたL字金具7と、背部両側に取付けられた金具8によって行われている。金具8は、レール状に構成され、乾燥装置2の底に設けられたフランジを嵌め込むことで左右の位置ずれが防止されている。
【0013】
乾燥装置2は、上面の開放した引出し式の収納箱9が前面の開放した箱体10に、レール11によって受支えられて前面から出し入れ可能に収納され、収納箱9を箱体10に収納した状態では箱体10内が前面のパッキン12により気密保持される概ね食器洗浄機3と同じ寸法の六面体の本体構造を備えている(図3参照)。本体構造は、金属またはプラスチックで構成され、通気性のない構造となっている。また、レール11にはバネによる引き戻し機能があり、収納箱9の箱体10への収納は円滑に行うことができる。箱体10内の収納箱9の上方には、スプーン等の什器等、小物を収める引出し式の上面の開放した第二の収納箱13がレール11で支持されて設けられている。収納箱9の前面は前パネル5で構成され、収納箱9を箱体10に収納した状態ではこの前パネル5で箱体10の前面が第二の収納箱13とともに密閉される。この本体構造の収納箱9内の前パネル5の裏面に図3,4に示すように除湿機14が固定されている。
【0014】
除湿機14は、空気を通す多数の通路を有し、可逆的な吸放湿機能を備えた除湿器15と、除湿器15の通路に通風させる送風機16と、除湿器15に通す空気を昇温する加熱手段17とを組込んだ風路が外殻18内に構成されている(図6参照)。この風路を経路とする収納箱9内に通じる入口19と出口20を左右に離れた位置に持つ除湿経路と、風路を経路とする前記入口19と前記出口20とは別の前パネル5の下部を通じて本体構造の外に連絡する入口21と出口22を左右に離れた位置に持つ再生経路とを備え、除湿経路と再生経路とをステッピングモーター23で動作する開閉ダンパ機構24によって切換え、再生経路による再生運転と除湿経路による除湿運転とを交互に行う(図3,4参照)。
【0015】
除湿機14の収納箱9内の外側は、除湿経路の入口19と出口20を除いて通気性のない金属またはプラスチックでできたカバー25で確りと覆われ、除湿機14の外殻18からの空気漏れが長期にわたって防がれ、収納箱9の乾燥維持性能は高いものとなっている(図4,5参照)。このカバー25には、除湿機14の収納箱9内への除湿空気の出入口20,19を区分する仕切壁26が収納箱9内の奥にまで設けられている(図2参照)。この仕切壁26の出入口20,19から乖離した奥には空気の流通する開口部27が設けられている。仕切壁26は、除湿空気の収納箱9内での流通を均一にする働きをするが、その開口部27を収納箱9の底側に設けることによって、乾燥空気が下に流れやすいことから有効である。しかし、収納箱9に食品等を収納した場合、収納物によって開口部27が閉塞されるようなこともある。この場合、開口部27は中段または上段に設ければ良い。
【0016】
収納箱9の前パネル5には、操作パネル28が設けられている。操作パネル28には再生経路に通じるメッシュフィルタが装着された吸気口29と吹出口30があり、その間に運転スイッチ31や表示器等が配設されている(図7参照)。また、前パネル5の上部には取っ手があり、取っ手に閉止状態を維持するフックの操作部が臨んでいる。除湿機14の電源コード32は、図8に示すように箱体10の背後から収納箱9内に配線されている。収納箱9の奥板と箱体10の間の電源コード32は、収納箱9の引き出しによっても融通がつくように屈伸アーム33で吊り保持され、収納箱9の出し入れによってもレール11などに巻き込まれることはない。
【0017】
除湿器15は、セラミックス等の無機質繊維にシリカゲル等の吸湿材を重合反応を利用して、結合させたコルゲート構造材やハニカム構造材を積層して、被処理空気を通す直線状の多数の通路が全体にわたって分布する、密度230〜270kg/mの直方体状に構成したもので、可逆的な吸放湿機能を有する。各通路は平行状でそれらの開口端は全て除湿器15の対向する二面に開口している。この除湿器15の構造は、低圧損なため送風機16は小型のもので良い。
【0018】
加熱手段17は、正特性サーミスタと熱的に接続された放熱フィンが一体化された構成で、除湿器15の前段において風路を横断する状態に組付けられている。除湿器15と外殻18との間には断熱空気層又は多泡性の断熱樹脂の断熱構造が設けられ、再生時に効率よく除湿器15を加熱するようになっている。加熱手段17と送風機16並びにステッピングモーター23は、除湿機14に組込まれたマイクロコンピューターを搭載した制御回路によりそれぞれの運転が制御される。
【0019】
なお除湿機14は、図10に示すように収納箱9内の側部に設置すれば、収納箱9の奥行一杯の収納空間が確保でき、長い物の収納に便利である。この場合には、仕切壁26は設けない。また、食器洗浄機3を設けず、キャビネット1の下段の空間は、台所用品の収納場所としても良い。乾燥装置2は、自体で完結した構成であるので、キャビネット1に組込まず、適当な棚や台構造に設置して使い易い場所に置くこともできる。
【0020】
このキッチンキャビネットにおいて、収納箱9を箱体10から引き出すと、収納箱9は上部の開放した箱となり、食品や乾燥食材等を簡単に収納することができる。収納箱9を引き出せば、第二の収納箱13も引き出すことが可能であり、ここにはナイフやスプーン、フォーク等を収納しておく。これらは、水気を取りにくいものであるが、乾燥状態に収納しておくことができる。収納箱9を押し込み、運転スイッチ31を入れると、まず、再生経路が開かれ、除湿器15を再生する再生運転を行い、その後、除湿経路が開かれ、除湿運転を行う。これを交互に繰返して本体構造内を乾燥雰囲気にする。収納箱9内及び第二の収納箱13内は、乾燥雰囲気に維持され、収納された食品や乾燥食材等は、最適な乾燥状態でカビが発生することもなく保管される。乾燥装置2は、キャビネット1のワークトップ下の上段にあり、調理作業に伴い、必要な食品や乾燥食材の出し入れの頻度が多くなっても立ち姿勢のまま手許近くで容易に操作でき、大変使い易い。収納箱9内は、仕切壁26により乾燥空気が円滑に流動するため、乾燥性能は良好である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】キッチンキャビネットの斜視図である。(実施の形態1)
【図2】収納箱を引き出した状態のキッチンキャビネットの斜視図である。(実施の形態1)
【図3】乾燥装置の断面図である。(実施の形態1)
【図4】開閉ダンパ機構の構成を示す拡大部分断面図である。(実施の形態1)
【図5】除湿機とカバーの関係を示す斜視図である。(実施の形態1)
【図6】除湿機の断面図である。(実施の形態1)
【図7】操作パネルを示す斜視図である。(実施の形態1)
【図8】電源コードの配線を示すキッチンキャビネットの背面側斜視図である。(実施の形態1)
【図9】乾燥装置の取付けに関するキッチンキャビネットの斜視図である。(実施の形態1)
【図10】他のキッチンキャビネットの斜視図である。(実施の形態1)
【符号の説明】
【0022】
1 キャビネット、 2 乾燥装置、 3 食器洗浄機、 5 前パネル、 9 収納箱、 10 箱体、 13 第二の収納箱、 14 除湿機、 15 除湿器、 19,21 入口、 20,22 出口、 25 カバー、 26 仕切壁、 27 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面の開放した引出し式の収納箱を前面の開放した箱体に、前面から出し入れ可能に収納し、前記収納箱を前記箱体に収納した状態では前記箱体内が気密保持される本体構造、この本体構造の前記収納箱内に固定され、除湿運転と再生運転により可逆的な吸放湿機能を行う除湿機、前記除湿機の前記収納箱内に通じる除湿空気についての出入口を除いて前記除湿機の外側を覆う気密性を持つカバーを備え、前記除湿機の再生空気の出入口については前記本体構造の外に臨ませた乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥装置であって、箱体内の収納箱の上方に引出し式の小物を収める上面の開放した第二の収納箱を設けた乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の乾燥装置であって、除湿機を収納箱内の前部に設け、この除湿機の前記収納箱内への除湿空気の出入口を区分する仕切壁を同収納箱内に設け、この仕切壁の前記出入口から乖離した奥には空気の流通する開口部を設けた乾燥装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の乾燥装置であって、除湿機を収納箱内の側部に設けた乾燥装置。
【請求項5】
上面の開放した引出し式の収納箱を前面の開放した箱体に、前面から出し入れ可能に収納し、前記収納箱を前記箱体に収納した状態では前記箱体内が気密保持される本体構造、この本体構造の前記収納箱内に固定され、除湿運転と再生運転により可逆的な吸放湿機能を行う除湿機、前記除湿機の前記収納箱内に通じる除湿空気についての出入口と、前記本体構造の外に通じる再生空気についての出入口を除いて同除湿機の外側を覆う気密性のあるカバーを備えた乾燥装置を、箱型の台構造をしたキャビネットの上段に構成した空間に設置し、その下段の空間には食器洗浄機を設置したキッチンキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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