説明

予混合圧縮着火式内燃機関

【課題】混合気の自着火時期を制御することにより、幅広い負荷領域にて使用可能な予混合圧縮着火式内燃機関を提供する。
【解決手段】シリンダ2と、シリンダ2の内部を往復運動するピストン3と、シリンダ2とピストン3との間に形成される燃焼室4と、排気弁32の開閉によって燃焼室4との連通・非連通が切り換えられる排気路31と、第1吸気弁12の開閉によって燃焼室4との連通・非連通が切り換えられる第1吸気路11と、第2吸気弁22の開閉によって燃焼室4との連通・非連通が切り換えられ、第1吸気路11から燃焼室4に供給される流体よりも高い圧力で流体を燃焼室4に供給可能に構成することにより燃焼室4内の圧力を調整可能な第2吸気路21と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内で混合気を圧縮させて自着火させることにより動力を取り出す予混合圧縮着火式内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、内燃機関において燃料が不完全燃焼を起こすとPM(粒子状物質)が発生し、これを防ぐために高温高圧下での燃焼を行うとNOx(窒素酸化物)が発生するため、PMとNOxの排出量を同時に低減させることは困難である。このような課題を解決する内燃機関として、燃焼室内で混合気を圧縮させて自着火させることにより動力を取り出す予混合圧縮着火式内燃機関(HCCI(=Homogeneous Charge Compression Ignition)エンジン)が注目されている。
【0003】
予混合圧縮着火式内燃機関においては、燃料であるガソリンを予め均一に空気中に拡散させるため不完全燃焼が起こりにくくPMの発生を抑制できると同時に、希薄混合気の燃焼であるため燃焼温度が低くNOxの排出が低減できるとされている。一方で、混合気の着火時期の制御が困難であるため、負荷が高い時に燃料濃度を濃くするとノッキングを引き起こしやすい等の問題がある。
【0004】
こういった問題を解消すべく、例えば特許文献1に記載の予混合圧縮着火式内燃機関においては、燃焼室内で若干濃い混合気中に希薄な混合気の領域を形成することにより自着火の時期を制御している。又、特許文献2に記載の予混合圧縮着火式内燃機関においては、排気バルブの弁開閉時期を制御することにより、高温の残留燃焼ガスを利用して混合気の圧縮端温度を高めるとともに、混合気のミキシングを改善して、安定的な自着火を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−28022号公報
【特許文献2】特開2005−201127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の予混合圧縮着火式内燃機関の場合、若干濃い混合気と希薄な混合気とのミキシングを制御するのは難しく、従って自着火時期の制御も容易ではない。更に、濃い混合気をミキシングするため、希薄混合気の燃焼によりNOxの排出を低減できるという予混合圧縮着火式内燃機関の利点が損なわれてしまうおそれがある。又、特許文献2には、高負荷時には現在主流の予混合火花点火燃焼方式を用いると記載されており、幅広い負荷に対応できる予混合圧縮着火式内燃機関として構成されているわけではない。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたもので、混合気の自着火時期を制御することにより、幅広い負荷領域にて使用可能な予混合圧縮着火式内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る予混合圧縮着火式内燃機関の第1特徴構成は、シリンダと、前記シリンダの内部を往復運動するピストンと、前記シリンダと前記ピストンとの間に形成される燃焼室と、排気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられる排気路と、第1吸気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられる第1吸気路と、第2吸気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられ、前記第1吸気路から前記燃焼室に供給される流体よりも高い圧力で流体を前記燃焼室に供給可能に構成することにより前記燃焼室内の圧力を調整可能な第2吸気路と、を備えた点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、第1吸気路から燃焼室に供給される流体よりも高い圧力で流体を燃焼室に供給可能に構成することにより燃焼室内の圧力を調整可能な第2吸気路を備えているので、混合気の圧縮比を調整することにより、混合気が自着火する時期を制御することができる。例えば、高負荷時に燃焼濃度を濃くすることにより自着火時期が早くなる傾向にある場合に、圧縮比を小さくして自着火時期を遅くするように制御すれば、自着火時期を適正に維持することができ、ノッキングの発生を抑制することができる。即ち、PMとNOxの排出量の同時低減という予混合圧縮着火式内燃機関の利点を損なうことなく、幅広い負荷領域にて使用可能な予混合圧縮着火式内燃機関を提供することができる。
【0010】
第2特徴構成は、シリンダと、前記シリンダの内部を往復運動するピストンと、前記シリンダと前記ピストンとの間に形成される燃焼室と、排気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられる排気路と、第1吸気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられる第1吸気路と、第2吸気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられ、前記第1吸気路から前記燃焼室に供給される流体よりも高い圧力で流体を前記燃焼室に供給する第2吸気路と、を備え、前記第2吸気弁の開閉時期及びリフト量、又はその何れか一方を制御する点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、第1吸気路から燃焼室に供給される流体よりも高い圧力で流体を燃焼室に供給する第2吸気路を備え、第2吸気弁の開閉時期及びリフト量、又は何れかその一方を制御するので、第2吸気弁から燃焼室への流体の供給時期及び供給量、又はその何れか一方を調整することができる。このように第2吸気弁から燃焼室への流体の供給時期や供給量を調整することにより、燃焼室内の混合気の圧縮比を調整することができるため、混合気が自着火する時期を制御することができる。例えば、高負荷時に燃焼濃度を濃くすることにより自着火時期が早くなる傾向にある場合に、圧縮比を小さくして自着火時期を遅くするように制御すれば、自着火時期を適正に維持することができ、ノッキングの発生を抑制することができる。即ち、PMとNOxの排出量の同時低減という予混合圧縮着火式内燃機関の利点を損なうことなく、幅広い負荷領域にて使用可能な予混合圧縮着火式内燃機関を提供することができる。
【0012】
第3特徴構成は、前記第2吸気弁は前記第1吸気弁よりも遅れて開弁するように構成されている点にある。
【0013】
第1吸気弁から燃焼室に供給される流体に燃料が含まれている場合、本特徴構成のごとく、第2吸気弁を第1吸気弁よりも遅れて開弁することにより、燃料を燃焼室内である程度均一に拡散させた後に第2吸気弁からの流体により圧縮比を高めることができる。このため、燃料が燃焼室内の一部に偏在し、不完全燃焼を起こしたり、自着火時期の制御性が低下したりすることを抑制することができる。
【0014】
第4特徴構成は、前記第1吸気路に燃料を供給する燃料噴射装置が設けられ、前記第2吸気路に空気を圧縮する過給機が設けられている点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、第1吸気路から燃焼室に供給される流体は混合気、第2吸気路から燃焼室に供給される流体は圧縮空気となる。従って、燃焼室内における混合気の空燃比は主に第1吸気路から供給される混合気の影響が支配的となり、燃焼室内における混合気の圧縮比は主に第2吸気路から供給される圧縮空気の影響が支配的となる。その結果、空燃比と圧縮比の調整が行い易くなり、自着火時期の制御性を向上させることができる。
【0016】
第5特徴構成は、前記第2吸気弁は可変バルブタイミング機構を備えている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、第2吸気弁の弁開閉時期を制御する場合に、第2吸気弁に備えられた可変バルブタイミング機構を用いることができる。可変バルブタイミング機構を用いることにより、弁開閉時期の制御性が向上し、自着火時期の制御性を向上させることができる。
【0018】
第6特徴構成は、前記第2吸気弁は可変バルブリフト機構を備えている点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、第2吸気弁のリフト量を制御する場合に、第2吸気弁に備えられた可変バルブリフト機構を用いることができる。可変バルブリフト機構を用いることにより、リフト量の制御性が向上し、自着火時期の制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る予混合圧縮着火式内燃機関の構成図である。
【図2】負荷が中程度(標準状態)の場合のバルブタイミングダイアグラムである。
【図3】負荷が標準状態よりも小さい場合のバルブタイミングダイアグラムである。
【図4】負荷が標準状態よりも大きい場合のバルブタイミングダイアグラムである。
【図5】フィードバック制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る予混合圧縮着火式内燃機関を自動車に適用した場合の実施形態について図1〜図5を用いて説明する。
【0022】
図1に示すように、予混合圧縮着火式内燃機関1は、シリンダ2の内部に形成されピストン3によって圧縮される燃焼室4に接続する第1吸気路11、第2吸気路21、及び排気路31を有している。第1吸気路11、第2吸気路21、及び排気路31は、それぞれ第1吸気弁12、第2吸気弁22、及び排気弁32の開閉によって燃焼室4との連通・非連通が切り換えられる。
【0023】
第1吸気路11には、エアクリーナ41にて異物が除去された空気が導入され、スロットルバルブ42にて燃料室4に導入される空気量が調整される。第1吸気路11の更に下流側には、第1吸気路に導入された空気に燃料を噴射して混合気を形成する燃料噴射装置43が設けられており、ECU51により燃料噴射量を調整できるように構成されている。尚、燃料噴射装置43を燃焼室4に設けることも可能である。第1吸気路11と燃焼室4との境界部には第1吸気弁12が備えられ、第1吸気弁12の開閉によって第1吸気路11と燃焼室4との連通・非連通が切り換えられる。
【0024】
第2吸気路21には、エアクリーナ41にて異物が除去された空気が導入され、過給機44にて空気が圧縮される。過給機44としては、排気エネルギーを利用するターボチャージャーや予混合圧縮着火式内燃機関1の出力を利用するスーパーチャージャーを用いてもよいし、電動式のものを用いてもよい。過給機44の下流側には、圧縮した空気が熱膨張することを抑制するため、空気の冷却を行うインタークーラー45が設けられている。
【0025】
第2吸気路21と燃焼室4との境界部には第2吸気弁22が備えられ、第2吸気弁22の開閉によって第2吸気路21と燃焼室4との連通・非連通が切り換えられる。第2吸気弁22は可変バルブタイミング機構46及び可変バルブリフト機構47を備えており、これらの機構をECU51によって制御することにより、第2吸気弁22の開閉時期及びリフト量の調整を行うことができる。
【0026】
排気路31は、燃焼室4で発生した排気を外部に排出するための管路である。排気路31と燃焼室4との境界部には排気弁32が備えられ、排気弁32の開閉によって排気路31と燃焼室4との連通・非連通が切り換えられる。
【0027】
尚、本実施形態においては、第1吸気弁12を2つ、第2吸気弁22を1つ、排気弁32を2つ備えた5バルブ式の予混合圧縮着火式内燃機関1を想定しているが、以降、2つの第1吸気弁12と、2つの排気弁32とについてはそれぞれを区別することなく、単に第1吸気弁12、排気弁32と称す。又、弁の構成はこれに限られるものではなく、他の構成を採ることも勿論可能である。
【0028】
ECU51には、アクセルの踏み込み具合を検出するアクセル開度センサ52、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ53、エンジン回転数を検出するクランク角センサ54、燃焼室4における自着火時期を検出する着火時期センサ55、及び予混合圧縮着火式内燃機関1におけるノッキングの発生を検出するノックセンサ56からの検出値が入力される。これらの検出値に応じて、ECU51は予混合圧縮着火式内燃機関1の自着火時期を適正に維持するように、可変バルブタイミング機構46、可変バルブリフト機構47、及び燃料噴射装置43が制御される。尚、ECU51に入力される検出値は上記各センサからの検出値の一部であってもよいし、これら以外のセンサからの検出値を読み込むことも可能である。
【0029】
以上の構成を有する予混合圧縮着火式内燃機関1を用いた制御手法の一例について説明する。まず、ECU51は、アクセル開度センサ52の検出値を読み込むことによって予混合圧縮着火式内燃機関1にかかる負荷を算出し、この負荷に応じて可変バルブタイミング機構46や可変バルブリフト機構47を適宜制御するものとする。尚、第1吸気弁12や排気弁32の開閉時期やリフト量を、それぞれに設けた可変バルブタイミング機構や可変バルブリフト機構を用いて制御することも可能であるが、このような技術は公知なので第1吸気弁12や排気弁32の制御についての説明はここでは割愛する。
【0030】
図2に示したバルブタイミングダイアグラムは、以降の説明の際に基準となる、負荷が中程度の標準状態における弁開閉時期を示したものである。第2吸気弁22を第1吸気弁12よりも遅れて開弁させることにより、燃料を燃焼室4内である程度均一に拡散させた後に第2吸気弁22からの流体により圧縮比を高めることができる。このため、燃料が燃焼室4内の一部に偏在し、不完全燃焼を起こしたり、自着火時期の制御性が低下したりすることを抑制し、その結果、ピストン3が上死点の時に適切に自着火する。以下、予混合圧縮着火式内燃機関1にかかる負荷が標準状態よりも大きい場合及び小さい場合の制御例を示す。
【0031】
ECU51が、アクセル開度センサ52からの検出値からユーザーがアクセルを踏み込んだと判断した場合には、第1吸気路11の燃料噴射装置43からの燃料噴射量を増加させるとともに、例えば、図3のバルブタイミングダイアグラムに示すように、第2吸気弁22の弁開閉時期を可変バルブタイミング機構46により遅角側に制御すればよい。そうすると、ピストン3が下死点から上死点に移動している上昇工程と、第2吸気弁22の開弁時間のオーバーラップが大きくなるため、燃焼室4の正圧により第2吸気路21から燃焼室4に圧縮空気量が流入し難くなる。その結果、標準状態と比べて燃焼室4内の圧縮圧力は小さくなるので自着火時期が遅くなる傾向となり、燃料噴射量が増えたことにより自着火時期が早まる傾向を相殺することができる。従って、ピストン3が上死点の時に自着火するよう調整することができ、ノッキングの発生を防止できる。
【0032】
又、可変バルブタイミング機構46を制御して弁開閉時期を遅くする代わりに、可変バルブリフト機構47を制御して第2吸気弁22のリフト量を小さくする(開弁時間を短くする)ことにより第2吸気路21から燃焼室4に流入する圧縮空気量を減少させてもよいし、弁開閉時期とリフト量との両方を同時に制御してもよい。
【0033】
上述のように第2吸気路21から燃焼室4に供給される圧縮空気量を減少させることにより、燃焼室4内の混合気の空燃比は上昇する傾向となる。従って、第2吸気弁22の制御による圧縮空気量の供給量の調整と併せて、燃料噴射装置43の制御により空燃比についても積極的に制御を行うように構成すれば好適である。
【0034】
ECU51が、アクセル開度センサ52からの検出値からユーザーがアクセルを緩めたと判断した場合には、第1吸気路11の燃料噴射装置43からの燃料噴射量を減少させるとともに、例えば、図4のバルブタイミングダイアグラムに示すように、第2吸気弁22の弁開閉時期を可変バルブタイミング機構46により進角側に制御すればよい。そうすると、ピストン3が上死点から下死点に移動している下降工程と、第2吸気弁22の開弁時間のオーバーラップが大きくなるため、燃焼室4の負圧により第2吸気路21から燃焼室4に圧縮空気量が流入し易くなる。その結果、標準状態と比べて燃焼室4内の圧縮圧力は大きくなるので自着火時期が早くなる傾向となり、燃料噴射量が減ったことにより自着火時期が遅くなる傾向を相殺することができる。従って、ピストン3が上死点の時に自着火するよう調整することができ、出力不足を防止できる。
【0035】
又、可変バルブタイミング機構46を制御して弁開閉時期を早くする代わりに、可変バルブリフト機構47を制御して第2吸気弁22のリフト量を大きくする(開弁時間を長くする)ことにより第2吸気路21から燃焼室4に流入する圧縮空気量を増加させてもよいし、弁開閉時期とリフト量との両方を同時に制御してもよい。
【0036】
上述のように第2吸気路21から燃焼室4に供給される圧縮空気量を増加させることにより、燃焼室4内の混合気の空燃比は減少する傾向となる。従って、第2吸気弁22の制御による圧縮空気量の供給量の調整と併せて、燃料噴射装置43の制御により空燃比についても積極的に制御を行うように構成すれば好適である。
【0037】
尚、以上の説明における標準状態とは便宜上設定した状態であり、どのような条件を標準状態としても構わない。又、上述の例では第2吸気弁22の弁開閉時期を可変バルブタイミング機構46により進角側に制御することにより、第2吸気路21から燃焼室4への圧縮空気量の流入量を増加させるものとした。しかしそうすると、図4に示すように、第1吸気弁12の開弁時間と第2吸気弁22の開弁時間とのオーバーラップが大きくなり、第2吸気路21から燃焼室4に供給される圧縮空気の流れによる燃焼室4から第1吸気路11への混合気の巻き返しの影響が大きくなる可能性がある。このような影響を利用して、自着火時期を制御することもできる。
【0038】
上述のごとく、予混合圧縮着火式内燃機関1における圧縮圧力や空燃比は種々の要因で変化し得るものなので、ECU51にてフィードバック制御を行うことにより、自着火時期が適正時期となるように制御サイクル毎に修正を行うことが好ましい。このようなフィードバック制御の一例について、図5に基づいて説明する。
【0039】
ECU51は、アクセル開度センサ52の検出値等の条件を読み込む(#11)ことによって、運転状態の把握を行う。尚、アクセル開度センサ52に限らず、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ53、エンジン回転数を検出するクランク角センサ54、燃焼室4における自着火時期を検出する着火時期センサ55、及び予混合圧縮着火式内燃機関1におけるノッキングの発生を検出するノックセンサ56からの検出値、更にはこれら以外のセンサからの検出値を読み込んでもよい。例えば、各流路(第1吸気路11、第2吸気路21、及び排気路31)に温度センサ、圧力センサ、又は流量センサを設置して、これらからの検出値を制御パラメータとして用いることもできる。
【0040】
ステップ#11で読み込んだ条件に応じて、自着火時期が適正となるように第2吸気弁22の弁開閉時期、第2吸気弁22のリフト量、及び燃料噴射装置43からの燃料噴射量のうち少なくとも何れかを変更する(#12)。これらの変更量は、条件に応じてマップ化されたデータとして予め用意されていてもよいし、条件値をパラメータとする数式から求められるように構成してもよい。
【0041】
ステップ#12で第2吸気弁22の弁開閉時期、第2吸気弁22のリフト量、及び燃料噴射装置43からの燃料噴射量のうち少なくとも何れかを変更した後、着火時期センサ55により予混合圧縮着火式内燃機関1における自着火時期を検出する(#13)。
【0042】
次に、ステップ#13で検出した自着火時期が適正か否かを判断する(#14)。その結果、自着火時期が適正であれば(#14,Yes)、自着火時期を補正するフィードバック制御を行うことなく、次の条件に応じた制御を継続する。一方、自着火時期が適正でなければ(#14,No)、自着火時期が適正となるように再度第2吸気弁22の弁開閉時期、第2吸気弁22のリフト量、及び燃料噴射装置43からの燃料噴射量のうち少なくとも何れかを変更する(#12)。このようなフィードバック制御を行うことにより、自着火時期がより適正となるように予混合圧縮着火式内燃機関1を作動させることができる。
【0043】
尚、以上説明してきた予混合圧縮着火式内燃機関1における自着火時期の制御は、アクセル操作のないアイドリング状態においても適用できるものである。又、予混合圧縮着火式内燃機関1の始動時には、燃焼室4が十分に暖機されておらず、適正な自着火時期に維持することが難しい場合もあり得る。このような場合には、一時的に予混合圧縮着火式内燃機関1の安定化を図るため、別途点火プラグを備えて、強制的に着火させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る予混合圧縮着火式内燃機関は、自動車以外の装置の動力として利用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 予混合圧縮着火式内燃機関
2 シリンダ
3 ピストン
4 燃焼室
11 第1吸気路
12 第1吸気弁
21 第2吸気路
22 第2吸気弁
31 排気路
32 排気弁
43 燃料噴射装置
44 過給機
46 可変バルブタイミング機構
47 可変バルブリフト機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダの内部を往復運動するピストンと、
前記シリンダと前記ピストンとの間に形成される燃焼室と、
排気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられる排気路と、
第1吸気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられる第1吸気路と、
第2吸気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられ、前記第1吸気路から前記燃焼室に供給される流体よりも高い圧力で流体を前記燃焼室に供給可能に構成することにより前記燃焼室内の圧力を調整可能な第2吸気路と、
を備えた予混合圧縮着火式内燃機関。
【請求項2】
シリンダと、
前記シリンダの内部を往復運動するピストンと、
前記シリンダと前記ピストンとの間に形成される燃焼室と、
排気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられる排気路と、
第1吸気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられる第1吸気路と、
第2吸気弁の開閉によって前記燃焼室との連通・非連通が切り換えられ、前記第1吸気路から前記燃焼室に供給される流体よりも高い圧力で流体を前記燃焼室に供給する第2吸気路と、
を備え、
前記第2吸気弁の開閉時期及びリフト量、又はその何れか一方を制御する予混合圧縮着火式内燃機関。
【請求項3】
前記第2吸気弁は前記第1吸気弁よりも遅れて開弁するように構成されている請求項1又は2に記載の予混合圧縮着火式内燃機関。
【請求項4】
前記第1吸気路に燃料を供給する燃料噴射装置が設けられ、前記第2吸気路に空気を圧縮する過給機が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の予混合圧縮着火式内燃機関。
【請求項5】
前記第2吸気弁は可変バルブタイミング機構を備えている請求項1〜4の何れか1項に記載の予混合圧縮着火式内燃機関。
【請求項6】
前記第2吸気弁は可変バルブリフト機構を備えている請求項1〜5の何れか1項に記載の予混合圧縮着火式内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7556(P2012−7556A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145020(P2010−145020)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】