説明

介護浴槽

【課題】 浴槽上縁の上方に座部を昇降させる駆動部材を突出させず入退浴時に浴槽上縁部分を有効利用できるようにすると共に、要介護者が安全に入退浴できるようにすること。
【解決手段】
浴槽2と、該浴槽2内に昇降可能に設けられた座部3と、浴槽2内外に亘って配設され座部3を昇降駆動させる駆動機構部4とを有し、前記座部3を浴槽上縁2b面の高さにまで上昇させた際に前記駆動機構部4の構成部材を浴槽上縁2b面の高さより低高位置に留める介護浴槽1であり、駆動機構部4を、浴槽2外に配設され巻取ドラム38を有するギアモータ36と、浴槽2内外に亘って配設される複数個のベルトローラ17と、該ベルトローラ17に沿わされ一端部及び他端部がそれぞれ巻取ドラム38及び座部3に連結されたベルト24と、浴槽2内に立設され前記座部3の昇降移動を誘導案内するガイドレール42とを具備する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体障害者及び高齢者(以下、要介護者)を入浴させる介護浴槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、入浴者を乗せる昇降座とその昇降座の駆動部とを備え、浴槽側壁の上端にフランジを有しており、前記駆動部が前記フランジ下部の駆動部設置空間に設置された浴槽が開示されている。
【0003】
上記浴槽においては、昇降座を上昇させると浴槽のフランジからピストンロッドが上方へ延出する為、要介護者を昇降座へ移乗させる際に、前記ピストンロッド等の駆動部材が移乗の妨げとなり、フランジ部分を移乗時に有効利用できないといった問題点を有していた。
【0004】
又、下記特許文献2には、浴槽内にあるシートを昇降させるリフトが、浴槽の奥側の外側部に立設され、リフトが水圧シリンダーと、水圧シリンダーの上部と背凭れ部を連結する取着具とから構成される浴槽が開示されているが、当該浴槽においても水圧シリンダー等を収納する機械収納部が移乗の妨げとなり、浴槽奥側の上縁部分を移乗時に有効利用できないものであった。
【特許文献1】特開2001−104433号
【特許文献2】特許3531851号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたもので、浴槽上縁の上方に座部を昇降させる駆動部材を突出させず入退浴時に浴槽上縁部分を有効利用できるようにすると共に、要介護者が安全に入退浴できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を実現する為、本発明では、浴槽と、該浴槽内に昇降可能に設けられた座部と、浴槽内外に亘って配設され座部を昇降駆動させる駆動機構部とを有し、前記座部を浴槽上縁面の高さにまで上昇させた際に前記駆動機構部の構成部材を浴槽上縁面の高さより低位置に留めることを特徴としている。
【0007】
第一の実施形態では、駆動機構部が、浴槽外に設けられ伸縮作動するロッドを有する電動アクチュエーターと、一端部及び他端部がそれぞれ前記ロッド及び浴槽外に設けられるリンク取付フレームとに軸着され前記ロッドの伸縮作動に伴って上下に回動するリンク片と、前記リンク取付フレームと前記リンク片及び浴槽内に配設される複数個のベルトローラと、該ベルトローラに沿わされ一端及び他端がそれぞれ前記リンク取付フレーム及び座部に連結されたベルトと、浴槽内に立設され前記座部の昇降移動を誘導案内するガイドレールとを具備する構成とした。
【0008】
第二の実施形態では、駆動機構部が、浴槽外に配設され巻取ドラムを有するギアモータと、浴槽内外に配設される複数個のガイドローラと、該ガイドローラに沿わされ一端部及び他端部がそれぞれ前記巻取ドラム及び座部に連結されたベルトと、浴槽内に立設され前記座部の昇降移動を誘導案内するガイドレールとを具備する構成とした。
【0009】
第三の実施形態では、駆動機構部が、浴槽内に立設された支柱と、該支柱に沿って上下に摺動自在に設けられた摺動部材と、浴槽外に配設され伸縮作動するロッドを有する電動アクチュエーターと、前記ロッドと前記摺動部材とを連結する線状部材とを具備しており、座部を前記摺動部材に平行四節リンクを介して取り付けする構成とした。
【0010】
更に、浴槽底壁に段差部を形成し、座部を所定下限位置まで下降させると座部上面が上段底壁面と略同一平面上に配置されるようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、浴槽と、該浴槽内に昇降可能に設けられた座部と、浴槽内外に亘って配設され座部を昇降駆動させる駆動機構部とを有し、前記座部を浴槽上縁面の高さにまで上昇させた際に前記駆動機構部の構成部材を浴槽上縁面の高さより低位置に留めるものである。
【0012】
そして具体的には、駆動機構部を、浴槽外に設けられ伸縮作動するロッドを有する電動アクチュエーターと、一端部及び他端部がそれぞれ前記ロッド及び浴槽外に設けられる取付フレームとに軸着され前記ロッドの伸縮作動に伴って上下に回動するリンク片と、浴槽内外に亘って配設される複数個のベルトローラと、該ベルトローラに沿わされ一端及び他端がそれぞれ前記取付フレーム及び座部に連結されたベルトと、浴槽内に立設され前記座部の昇降移動を誘導案内するガイドレールとを具備する構成とし、或いは、駆動機構部を、浴槽外に配設され巻取ドラムを有するギアモータと、浴槽内外に亘って配設される複数個のベルトローラと、該ベルトローラに沿わされ一端部及び他端部がそれぞれ前記巻取ドラム及び座部に連結されたベルトと、浴槽内に立設され前記座部の昇降移動を誘導案内するガイドレールとを具備する構成とし、或いは、駆動機構部を、浴槽内に立設された支柱と、該支柱に沿って上下に摺動自在に設けられた摺動部材と、浴槽外に配設され伸縮作動するロッドを有する電動アクチュエーターと、前記ロッドと前記摺動部材とを連結する線状部材とを備え、座部が前記摺動部材に平行四節リンクを介して取り付けする構成としたものであるから、座部を浴槽上縁面にまで上昇させた際に、浴槽上縁面から上方に駆動機構部の構成部材が突出しないので、要介護者は前記浴槽上縁に適宜腰を掛けながら座部への移乗動作を安全に行うことができ、又、要介護者が突出した駆動部材に身体の一部を激突させ怪我をするといった不都合な事態を防止することができる。又、例えば、座部の下降開始時或いは上昇完了時等に、介護者が浴槽上縁に腰を掛け要介護者の上体を支持するといった使用態様も可能となる。
【0013】
又、上述したように、前記浴槽上縁部分を移動動作時に適宜利用できるので、例えば、浴槽の左右側壁部に水平な移乗エプロン部を形成する必要が無く、浴槽全体を小型化できるといったメリットを有するものである。
【0014】
本発明は、座部を所定下限位置にまで下降すると座部上面が上段底壁面とが略同一平面上に配置されるので、要介護者は下肢を伸展し易く、リラックスした姿勢で入浴が行えることになる。又、各要介護者の要介護度の度合に応じて、当該浴槽の使い分けが適宜行える。即ち、要介護度が低い(例えば、要介護度1)要介護者の場合は、座部を下限位置に下降・維持させた状態の一般浴槽として利用し、要介護度の高い(例えば、要介護度3)要介護者の場合は、座部昇降機能を活かした介護浴槽として利用するといった方法が挙げられる。更に、上述したように本発明の介護浴槽は一般浴槽としても利用可能なものであるから、例えば、福祉施設は介護浴槽と一般浴槽の二種類の浴槽を別個に購入する必要がなくなり、浴槽購入に要するコストが削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
浴槽上縁の上方に座部を昇降させる駆動部材を突出させず入退浴時に浴槽上縁部分を有効利用できるようにすると共に、要介護者が安全に入退浴できるようにするという目的を、浴槽と、該浴槽内に昇降可能に設けられた座部と、浴槽内外に亘って配設され座部を昇降駆動させる駆動機構部とを有し、駆動機構部が、浴槽外に設けられ伸縮作動するロッドを有する電動アクチュエーターと、一端部及び他端部がそれぞれ前記ロッド及び浴槽外に設けられるリンク取付フレームとに軸着され前記ロッドの伸縮作動に伴って上下に回動するリンク片と、前記リンク取付フレームと前記リンク片及び浴槽内に配設される複数個のベルトローラと、該ベルトローラに沿わされ一端及び他端がそれぞれ前記リンク取付フレーム及び座部に連結されたベルトと、浴槽内に立設され前記座部の昇降移動を誘導案内するガイドレールとを具備する構成とすることで実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1を図1乃至6を参照して説明する。図1は介護浴槽1の平面図、図2は介護浴槽1の側面図、図3は図1におけるA−A矢視断面図である。介護浴槽1は、載置フレーム13に載置された平面視長方形状の浴槽2と、浴槽2内に昇降可能に設けられた座部3と、座部3を昇降駆動させる駆動機構部4を主たる構成としている。
【0017】
浴槽2長手方向の一方の浴槽内側壁2a(図1中、左側)には浴槽2外側方向に向かって凹陥部5が形成されている。図3に示すように凹陥部5が形成される側の浴槽内側壁2aと浴槽上縁2bと浴槽外側壁2cとで包囲される空間(以降、第一収納部6と呼称する)内と浴槽2内の凹陥部5空間(以降、第二収納部7と呼称する)内に亘って座部3を昇降駆動させる駆動機構部4が配設される。
【0018】
図3に示すように浴槽2長手方向の略中間位置に対応する底壁2dに、駆動機構部4の配設側の底壁が下段となるように段差部8が形成されている。以降、底壁2dの上段側を上段底壁2e、下段側を下段底壁2fと呼称する。
【0019】
次に、座部3を浴槽2内にて昇降駆動させる駆動機構部4について説明する。図4は座部3の昇降過程を説明する断面図であり、(a)は座部3が上限位置に到達した状態を示す図、(b)は座部3が中間位置に到達した状態を示す図、(c)は座部3が下限位置に到達した状態を示す図であり、図5は図2におけるB−B矢視断面図、図6は図2におけるC−C矢視断面図である。
【0020】
図3及び図5に示すように第一収納部6が形成される側の浴槽内側壁2aの外表面中央部に固着された断面視略L字形状の取付金具10にC−C矢視断面が略コ字形状をなしたリンク取付フレーム11の上面部11a及び下面部11bが固着されている。下面部11bの下方において、下面部11bの裏側面に一端部が固着されA−A矢視断面が略コ字形状の電動アクチュエーター取付金具12に電動アクチュエーター9が載置されている。電動アクチュエーター9はロッド9aが下面部11bを貫通し鉛直方向に伸縮作動可能に載置されている。又、図5に示すように該アクチュエーター9の基部9b下面が載置フレーム13に支持されている。
【0021】
図3及び図5に示すようにリンク取付フレーム11の両側面部11cの上下中間位置よりやや上方に水平状に架け渡された第一リンク軸14の左右位置にそれぞれ長板状のリンク片15の一端部が取着され、各リンク片15の他端部はロッド9a先端部に該先端部を挾持するように第二リンク軸19で軸着されている。又、両側面部11cの下方位置にはそれぞれ長板状のベルト調整片16が取着されている。尚、詳細な説明は省略するがベルト調整片16はベルト調整片16のリンク取付フレーム11に対する取着位置を適宜調整することによりベルト24の長さを微調整する為の部材であり、通常はリンク取付フレーム11に対して移動不自在となされており、ベルト調整片16は本発明において必須の構成部材ではない。
【0022】
左右リンク片15の間に計三個のベルトローラ17が左右リンク片15で挟み込まれるように取着されており、又、左右のベルト調整片16の間にも計三個のベルトローラ17が左右ベルト調整片16で挟み込まれる態様で回動可能に取着されている。リンク取付フレーム11の上面部11aにはベルトローラ取付金具18を介してベルトローラ17が回動可能に軸着され、浴槽上縁2b面から浴槽2内方の方向に向かって階段状に形成された階段部20の最下段部にベルトローラ取付金具21を介してベルトローラ17が回動可能に軸着されている。尚、ベルト調整片16を用いない場合はリンク取付フレーム11の両側面部11aに直接計三個のベルトローラ17を軸着すれば良い。
【0023】
電動アクチュエーター9とベルト調整片16とで挟まれた位置におけるリンク取付フレーム11の左右の側面部11cに亘って回動軸23が設けられており、該回動軸23に後述する座部3を昇降駆動させるベルト24の一端を固定するベルト固定金具22の一端が取着されている。(図3参照)
【0024】
第二収納部7内において、コ字形状のガイドレール26が互いに開口部を対向する態様で浴槽内側壁2a外周面に固着される細長板状のガイドレール取付板74に沿って浴槽内側壁2a内面に螺着されている。ガイドレール26は座部フレーム3a一端側の左右位置を下方から支持する側面視略U字形状の昇降フレーム25の下方外側面に配設されたガイドローラ30(図6参照)を誘導案内するものである。
【0025】
座部3は前記昇降フレーム25がガイドレール26に沿って昇降移動することにより浴槽2内を昇降する。左右の昇降フレーム25は、一方フレーム部25aの上下位置にそれぞれ水平状に配設される上側連結棒27及び下側連結棒28にて連結されている。
【0026】
図3に示すように、前記ベルト固定金具22の他端にはベルト24の一端が止着され、ベルト24はリンク片15とベルト調整片16にそれぞれ取着された3個のベルトローラ17に交互に巻回された後、第一収納部6内において浴槽上縁2bの下面近傍に設けられたベルトローラ17に沿わされている。そしてベルト24は、階段部20の上段部に形成された通過孔35から浴槽2内に挿入されると共に階段部20の下段部に取着されたベルトローラ17に沿わされている。ベルト24の他端部は上側連結棒27と下側連結棒28とに挟み込まれるように固着されたベルト固定金具29に止着されている。
【0027】
図3及び図6に示すようにガイドレール26及び一方フレーム部25a等の構成部材を収容する第二収納部7は、該収納部7の前面中央部分の大半を覆う前面部収納カバー32と、第二収納部7の上面部を覆う上面部収納カバー33とで覆われている。
【0028】
図3に示すように前面部収納カバー32は下端部が浴槽2の下段底壁2fに固着されており、浴槽内側壁2aと略同等の傾斜角度となるように設けられている。
又、上面部収納カバー33上面は浴槽上縁2b上面と面一になるように形成されている。
【0029】
前面部収納カバー32の両側面は図6に示すように左右の昇降フレーム25の昇降移動を妨げないように左右の昇降フレーム25内側面との間に適度な空隙34が設けられている。上面部収納カバー33は階段部20に一端部が固着されている。
【0030】
上述した駆動機構部4が配設される側と反対側の浴槽上縁2g面には要介護者が入退浴時等に適宜把持する手摺31が立設されている。手摺31は浴槽上縁2g面の左右位置に鉛直状に立設された支柱部31aと、支柱部31aの頂部に該支柱部31aに対して鉛直方向に回動可能にそれぞれの端部が取着された平面視略U字形状の把持部31bとから構成される。
【0031】
次に、実施例1の介護浴槽1の作用を図4を用いて説明する。図4中、(a)は座部3上面が浴槽上縁2b面と面一になる位置(上限位置)にまで座部3を上昇させた状態を示しており、このとき電動アクチュエーター9のロッド9aは第一収納部6内で伸長状態となっている。
【0032】
入浴に際して、介護者は座部3を上限位置に上昇させた状態で車椅子等の他機器に着座した要介護者を座部3上に移乗させる。このとき、駆動機構部4の構成部材が浴槽上縁2b上面から上方へ突出しておらず、更に座部3上面と上面部収納カバー33上面と浴槽上縁2b上面とは面一となっているので、浴槽上縁2b及び上面部収納カバー33上面を、要介護者を座部3に移乗させる前段階の腰掛け場所等として適宜有効利用でき、要介護者をより安全に座部3へ移乗着座させることができる。
【0033】
座部3に着座した要介護者は必要に応じて手摺31(図3参照)を把持し、姿勢を安定に保持する。不図示の介護浴槽1に設けられる座部下降スイッチを押下しロッド9aの収縮作動を開始すると、リンク片15が第一リンク軸14を支点として下方向に回動することによってベルト24が浴槽内側壁2a近傍から浴槽2内に向かって繰出される結果、座部3が浴槽2内を下降可能となる。
【0034】
下降時、左右の昇降フレーム25に配設されたガイドローラ30がガイドレール26の内周面に当接しながら転動しており、座部3は浴槽2内をスムーズに下降できる。ロッド9aを更に収縮作動させていくと、座部3は図4中の(b)の過程を経て、最終的に図4中、(c)に示す座部3上面と上段底壁2e上面とが面一になる位置(下限位置)にまで下降する。尚、ロッド9aの前記収縮作動は座部3が下限位置に下降した段階で停止するように設定されている。
【0035】
要介護者は下肢を伸展し上段底壁2e上に載置した状態でリラックスした姿勢で入浴を行うことができる。
退浴する場合は、収縮状態にあるロッド9aを伸長動させ座部3を上限位置にまで上昇させる。不図示の介護浴槽1に設けられる座部昇降スイッチを押下しロッド9aを伸長作動させていくと、リンク片15が第一リンク軸14を支点として上方向に回動することよってベルト24が第一収納部6内方向へ引張られる結果、座部3は上述した下降過程と逆の上昇過程を辿りながら、浴槽2内を上昇する。座部3が上限位置に至るとロッド9aの伸長作動が停止する。
【0036】
要介護者を座部3から車椅子等の他機器へ移乗させ、入浴を完了する。退浴時にも浴槽上縁2b及び上面部収納カバー33上面を、要介護者を座部3から他機器に移乗させる前段階の腰掛け場所等として適宜有効利用できる。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の実施例2を図7乃至13を用いて説明する。尚、図7乃至13において図1乃至6と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。実施例2は駆動機構部4を構成するギアモータ36のモータ軸37に固定された巻取ドラム38を、ギアモータ36を駆動させることによって正反回転させ、ベルト24の巻取操作或いは繰出操作を行い、座部3を浴槽2内で昇降させる態様としている。
【0038】
図7は実施例2の介護浴槽1を示す平面図、図8は介護浴槽1の側面図、図9は図7におけるD−D矢視断面図、図10は図7におけるE−E矢視断面図、図11は図8におけるF−F矢視断面図、図12は図11における浴槽2の下方部分を拡大して示す部分図、図13は図8におけるG−G矢視断面図である。
【0039】
図7及び図11に示すように、浴槽2の第二収容部7内に左右一対のガイドレール42が配設されており、左右一対のガイドレール42の各上端部は浴槽内側壁2aに固着された平面視コ字形状のレール取付部材43に回動軸44にて鉛直方向に回動可能に軸着され、ガイドレール42の各他端部は連結板75で連結されている。
【0040】
図9乃至図11に示すように座部3を支持する左右昇降フレーム40の正方形状フレーム部40a側面には対角方向にそれぞれ二個のガイドローラ30が設けられ、前記二個のガイドローラ30はそれぞれ左右ガイドレール42の前後に当接して転動可能になされている。尚、図10中、76は昇降フレーム40がガイドレール42に沿って適正移動できるように補助する役割を果たす補助ガイドローラであり、ガイドローラ30の配設位置と異なる対角方向に二個設けられている。
【0041】
図9に示すようにギアモータ36は浴槽内側壁2a外面に固着されたギアモータ固定金具39を介して第一収納部6内に設けられている。一端が巻取ドラム38に止着され、該ドラム38に左巻きに巻回されたベルト24は浴槽内側壁2a上端近傍で浴槽内側壁2aの外表面の上方部に設けられたローラ支持部材46に回動可能に軸着されたベルトローラ17に沿わされ、通過孔35から浴槽2内に挿入された後、浴槽2内において前記レール取付部材43の中央部に下部が固着された正面視コ字形状のベルトローラ取付金具73に回動可能に軸着されるベルトローラ17に沿わされている。そしてベルト24は昇降フレーム40に設けられたベルトローラ41に沿わされた後、ベルト24端部が昇降フレーム40の適宜位置に止着されている。尚、実施例2においては第二収納部7内に配設される駆動機構部4の構成部材が収納カバーで覆われず露出状態となっているが、前記構成部材を昇降フレーム40の昇降を妨げないよう収納カバー等で適宜覆うように構成するのが好適である。
【0042】
従って、ギアモータ36を駆動させ巻取ドラム38を右回転(正回転)させるとベルト24が巻取ドラム38に巻き取られる結果、昇降フレーム40がガイドレール42に沿って上昇し、座部3が浴槽2内を上昇する。逆に、巻取ドラム38を左回転(反回転)させるとベルト24が巻取ドラム38から繰出される結果、昇降フレーム40がガイドレール42に沿って下降し、座部3が浴槽2内を下降する。
【0043】
図9中、45はベルト24の緩みを検知する緩み検知ローラで、該ローラ45は不図示の付勢手段によってベルト24を押圧する方向に常時付勢されている。緩み検知ローラ45はローラ支持部材46の下方部に浴槽内側壁2aに向かって伸長状に形成された長穴47に沿って移動自在に支持されており、ベルト24が緩みベルト張力が減少するとベルト24は緩み検知ローラ45にて浴槽内側壁2a方向へ押圧される。尚、図示は省略するが長穴47前方にはリミットスイッチが設けられており、浴槽内側壁2a方向へベルト24を押圧移動した緩み検知ローラ45にてリミットスイッチが押下されると、ギアモータ36の駆動が制止されるように配慮されている。従って、ベルト24が緩んだままの危険な状態で座部3が浴槽2内を昇降作動することはなく安全である。
【0044】
又、ベルト24の使用による経年劣化等に起因して座部3の昇降作動中に万一、ベルト24が切断される状況が発生した場合であっても、座部3の落下を最小限に留め要介護者の安全を確保する落下防止手段48が実施例2の介護浴槽1には具備されている。以下、落下防止手段48の構成について説明する。
【0045】
図12に示すように正方形状フレーム部40aの左右側面下部には左右ガイドレール42方向に向かってそれぞれ挿入ピン50が配設されており、左右挿入ピン50の一端は左右の正方形状フレーム部40aに亘って一体的に形成され各フレーム部40aと平行状に設けられる内側フレーム部40bに一端が固着されたバネ部材51の他端に連結されており、左右挿入ピン50は前記バネ部材51によって常時ガイドレール42方向に付勢されている。
【0046】
左右挿入ピン50の一端側寄り位置及び左右内側フレーム部40bの上下方向に伸長状に形成された長孔53に挿通されたベルトローラ軸49の両端近傍位置には左右挿入ピン50及びベルトローラ軸49に直交する方向にそれぞれ係止ピン55が固着されている。左右挿入ピン50に固着された係止ピン55は正面視L字形状のピン操作部材52の一端側切欠部52aに挿通係止され、ベルトローラ軸49に固着された係止ピン55はピン操作部材52の他端側切欠部52bに挿通係止されている。
【0047】
又、図10に示すように左右ガイドレール42の内側面には該レール42の長手方向中心線に沿って前記挿入ピン50先端が嵌入可能な四個の落下防止孔54が等間隔で形成されている。尚、図9乃至12はガイドレール42の最下位置に形成された落下防止孔54に左右挿入ピン50が挿入された状態を示している。
【0048】
例えば、座部3の下降作動中にベルト24が切断された場合にはベルト24の切断と同時に座部3がガイドレール42に沿って落下するが、挿入ピン50が最も近い低位置に形成される落下防止孔54に到達した時点で、左右挿入ピン50がバネ部材51によって付勢され落下防止孔54に挿入嵌合されることで、座部3の落下が最小限に留められる仕組みとなっている。従って、ベルト24切断による座部3の意図せぬ落下によって要介護者の身体が浴槽2の底壁2d等に激突し怪我をしたりする事態を軽減でき、又、要介護者が座部3から擦り落ち浴槽2内で溺れてしまうといった事態も軽減することができ、要介護者は安心して介護浴槽1を利用して入退浴を行うことができる。
【0049】
尚、座部3が正常に上昇作動及び下降作動している際には、ベルトローラ41及びベルトローラ軸49は、ベルト24の引張力及び座部3と昇降フレーム40の自重或いは座部3に着座した要介護者の体重等によって長孔53の上端内側壁53a側に移動し当接しており、この時、左右挿入ピン50は左右ピン操作部材52によってバネ部材51の付勢力に抗して同時に内側フレーム40b方向に引張されており、左右挿入ピン50は落下防止孔54から抜脱されている為、座部3の正常な上昇作動及び下降作動が落下防止手段48によって妨げられることはない。
【0050】
又、ガイドレール42及び座部3は、図9に示すように回動軸44を回動中心として一体的に回動させることが可能である。従って、浴槽2内の洗浄等を行う際には浴槽上縁2bの上方側へガイドレール42及び座部3を回転させ浴槽2内から一時的に退避させておくことで洗浄作業が行い易く、好都合である。
【実施例3】
【0051】
次に、本発明の実施例3を図14及び15を用いて説明する。尚、図14及び15において図1乃至6と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。実施例3は、第二収納部7内において下段底壁2fに立設された二本の支柱61と、該支柱61に沿って上下に摺動自在に設けられた摺動部材62と、第一収納部6内においてロッド57aが浴槽2短手方向に伸縮作動可能となるように配設された電動アクチュエーター57と、ロッド57aと摺動部材62にそれぞれ一端及び他端が止着される線状部材56とを備え、座部3が摺動部材62に平行四節リンク63を介して取り付けされる構成である。
【0052】
第二収納部7内において、下段底壁2fに浴槽2の短手幅方向に向かって配列された二本の支柱61が立設され、それぞれの支柱61には円筒状の摺動部材62が摺動自在に外嵌されている。摺動部材62・62の外周面に固着された板状の取付板60の左右端に設けられるリンク片取付部材64に上側リンク片65の中間部、下側リンク片66の基端部が軸着されており、上側リンク片65及び下側リンク片66の各先端部が座部フレーム3aに下方向に垂下取着された側面視略L字形状の取付金具67に軸着されている(平行四節リンク63)。
【0053】
上側リンク片65の基端は摺動部材62の後方向にまで延出されており、左右の上側リンク片65の基端部が連結棒68にて連結されている。第一収納部6内に配設される電動アクチュエーター57のロッド57aの略中間位置にロッド57aに対して所定角度で連結部材58の基端部が固着されている。
【0054】
第一収納部6内において、連結部材58の先端部には第一のワイヤローラ59が回動自在に軸着され、第一のワイヤローラ59と同一平面上に第二のワイヤローラ59が浴槽内側壁2aの外表面に固着された取付金具69に回動自在に軸着され、該第二のワイヤローラ59近傍の上方位置であって第二のワイヤローラ59と直交する方向に第三のワイヤローラ59が取付金具69に回動自在に軸着されている。
【0055】
そして、第二収納部7内において、第三のワイヤローラ59と同高位置であって第三のワイヤローラ59と同一平面上に第四のワイヤローラ59が浴槽内側壁2aの内表面上部に固着された取付金具70に回動自在に軸着されている。
【0056】
図示は省略するが線状部材56(例えば、ワイヤ)の一端は取付金具69の適宜位置に止着部材で止着されている。線状部材56の中途位置は図15に示すように第一乃至第四の4個のワイヤローラ59に沿わされ、他端はH−H断面が略コ字形状の前記取付板60の下面部に止着されている。又、取付金具69には直方体形状の規制部材71が浴槽内側壁2aを貫通するように一体的に形成されており、規制部材71は支柱61の所定高さ位置にて連結棒68の上昇移動を規制する部材である。
【0057】
第二収納部7に配設される支柱61、摺動部材62、第四のワイヤローラ59、規制部材71等の構成部材は浴槽内側壁2a面に固着されたFRP製の収納カバー72で覆われている。尚、図示を省略するが収納カバー72には上側・下側リンク片65・66の作動を妨げないようスリットが形成されている。
【0058】
以下、実施例3の介護浴槽1の作用について説明する。図15において、座部3が下限位置にまで下降した状態ではロッド57aは収縮状態となっており、当該下限位置から座部3を上限位置にまで上昇させる場合は、ロッド57aを伸長作動させる。ロッド57aの伸長動を開始すると、線状部材56がロッド57aによって引張られ摺動部材62が支柱61に沿って上方向へ摺動することで、座部3が摺動部材62と一体的に浴槽2内を上昇する。
【0059】
ロッド57aを伸長動させ摺動部材62が支柱61の所定高さ位置に至る(図15中、実線で示す座部3の高さ位置)と、左右上側リンク片65を連結する連結棒68が規制部材71に当接し、規制部材71によって連結棒68の更なる上昇移動が規制される。更に、ロッド57aを伸長動させると、線状部材56の引張力により摺動部材62が支柱61に沿って上昇すると共に上側・下側リンク片65・66(平行四節リンク63)が摺動部材62に対して回転し平行四節リンク63が作動を開始する。座部3は平行四節リンク63の作動によって常時水平状態を維持しながら浴槽2の上限位置にまで上昇する。
【0060】
座部3を下降させる場合は、伸長状態にあるロッド57aを収縮作動させる。ロッド57aを収縮作動していくと、座部3は上述した上昇過程と逆の下降過程を辿りながら、下限位置にまで下降する。
【0061】
浴槽2内における前記所定高さ位置から浴槽上縁2b面にまで至る所定距離間は摺動部材62の昇降移動及び平行四節リンク63の作動によって座部3が浴槽2内を昇降するが、該昇降時において、座部3は平行四節リンク63によって常時水平状態に維持されるので座部3から要介護者がずり落ち浴槽2内で溺れてしまうといった危険な事態に至ることはない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、座部を浴槽内にて昇降作動させることにより要介護者を入退浴させる介護浴槽に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1の介護浴槽を示す平面図である。
【図2】実施例1の介護浴槽の側面図である。
【図3】図1におけるA−A矢視断面図である。
【図4】実施例1の介護浴槽の座部の昇降過程を説明する断面図であり、(a)は座部が上限位置に到達した状態を示す図、(b)は座部が中間位置に到達した状態を示す図、(c)は座部が下限位置に到達した状態を示す図である。
【図5】図2におけるB−B矢視断面図である。
【図6】図2におけるC−C矢視断面図である。
【図7】本発明の実施例2の介護浴槽を示す平面図である。
【図8】実施例2の介護浴槽の側面図である。
【図9】図7におけるD−D矢視断面図である。
【図10】図7におけるE−E矢視断面図である。
【図11】図8におけるF−F矢視断面図である。
【図12】図11における浴槽の下方部分を拡大して示す部分図である。
【図13】図8におけるG−G矢視断面図である。
【図14】本発明の実施例3の介護浴槽を示す平面図である。
【図15】図14におけるH−H矢視断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 介護浴槽
2 浴槽
2b 浴槽上縁
2d 底壁
2e 上段底壁
3 座部
4 駆動機構部
8 段差部
9 電動アクチュエーター
9a ロッド
11 リンク取付フレーム
15 リンク片
17 ベルトローラ
24 ベルト
26 ガイドレール
36 ギアモータ
38 巻取ドラム
42 ガイドレール
56 線状部材
57 電動アクチュエーター
57a ロッド
61 支柱
62 摺動部材
63 平行四節リンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、該浴槽内に昇降可能に設けられた座部と、浴槽内外に亘って配設され座部を昇降駆動させる駆動機構部とを有し、前記座部を浴槽上縁面の高さにまで上昇させた際に前記駆動機構部の構成部材を浴槽上縁面の高さより低位置に留めることを特徴とする介護浴槽。
【請求項2】
駆動機構部は、浴槽外に設けられ伸縮作動するロッドを有する電動アクチュエーターと、一端部及び他端部がそれぞれ前記ロッド及び浴槽外に設けられるリンク取付フレームとに軸着され前記ロッドの伸縮作動に伴って上下に回動するリンク片と、前記リンク取付フレームと前記リンク片及び浴槽内に配設される複数個のベルトローラと、該ベルトローラに沿わされ一端及び他端がそれぞれ前記リンク取付フレーム及び座部に連結されたベルトと、浴槽内に立設され前記座部の昇降移動を誘導案内するガイドレールとを具備することを特徴とする請求項1記載の介護浴槽。
【請求項3】
駆動機構部は、浴槽外に配設され巻取ドラムを有するギアモータと、浴槽内外に配設される複数個のベルトローラと、該ベルトローラに沿わされ一端部及び他端部がそれぞれ前記巻取ドラム及び座部に連結されたベルトと、浴槽内に立設され前記座部の昇降移動を誘導案内するガイドレールとを具備することを特徴とする請求項1記載の介護浴槽。
【請求項4】
駆動機構部は、浴槽内に立設された支柱と、該支柱に沿って上下に摺動自在に設けられた摺動部材と、浴槽外に配設され伸縮作動するロッドを有する電動アクチュエーターと、前記ロッドと前記摺動部材とを連結する線状部材とを備え、座部は前記摺動部材に平行四節リンクを介して取り付けされることを特徴とする請求項1記載の介護浴槽。
【請求項5】
浴槽底壁に段差部を形成し、座部を所定下限位置まで下降させると座部上面が上段底壁面と略同一平面上に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の介護浴槽。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−204451(P2006−204451A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18743(P2005−18743)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】