説明

付着物処理装置及び付着物処理方法

【課題】エレベータシャフト内で発生した粉塵がエレベータシャフトの外部に飛散するのを防止することができる付着物処理装置を提供する。
【解決手段】付着物処理装置としてのアスベスト除去装置100は、ケージ51の昇降移動を案内するエレベータシャフト52を備える建物10に設置され、エレベータシャフト52内にある物体の表面に付着しているアスベストを脱落させるためのアスベスト除去作業を実施する際に用いられる。アスベスト除去装置100は、エレベータシャフト52内を昇降移動する足場51bと、ケージ51が画成する空間と建物10内の空間とを連通する出入口をエレベータシャフト52の外側から封止する封止部材140とを備える。アスベスト除去作業は、ケージ51を足場51bとして実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着物処理装置及び付着物処理方法に関し、特に、ケージの昇降移動を案内するエレベータシャフトを備える建物に設置される付着物処理装置、並びに、該エレベータシャフト内にある物体の表面に付着している付着物に関わる処理(以下、「付着物関連処理」という)を行う付着物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物には、エレベータが設置されたものがある。エレベータは、人や物を運搬するためのケージ(cage:乗りかご)と、該ケージの昇降移動を案内するエレベータシャフトとを備える。
【0003】
このようなエレベータシャフト内において、エレベータシャフト内にある天井や壁などの物体の表面を清掃する清掃作業は、ケージの筐体上に乗り込んだ作業員が行っている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1に記載の技術のように、エレベータのドア(扉)を開放した状態で清掃作業を行うと(同文献中の図1の断面図参照。)、ドアの周囲の清掃も可能となる。
【特許文献1】特開2007−145448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように清掃作業を行うと、エレベータシャフト内の物体に付着していた付着物が脱落し、粉塵が発生する。発生した粉塵は、エレベータシャフト内に浮遊する。このとき、エレベータのドアが開放された状態にあると、浮遊している粉塵がエレベータシャフトの外部、つまりエレベータホールに向かって飛散する可能性がある。
【0005】
本発明の主たる目的は、エレベータシャフト内で発生した粉塵がエレベータシャフトの外部に飛散するのを防止することができる付着物処理装置及び付着物処理方法を提供することにある。本発明の二次的な目的は、エレベータシャフト内で発生した粉塵を所定の空間に誘導することができる付着物処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記主たる目的を達成するために、本発明の付着物処理装置は、ケージの昇降移動を案内するエレベータシャフトを備える建物に設置される付着物処理装置であって、前記エレベータシャフト内を昇降移動する足場と、前記ケージが画成する空間と前記建物内の空間とを連通する開口部を前記エレベータシャフトの外部から封止する封止部材とを備え、前記足場は前記ケージであり、前記付着物処理装置は、前記エレベータシャフト及び前記封止部材に囲まれた内部空間内にある物体の表面に付着している付着物に関わる付着物関連処理を行う際に用いられることを特徴とする。
【0007】
本発明の付着物処理装置によれば、封止部材が設けられているので、上記開口部を遮蔽しなくても、内部空間内において付着物関連処理の結果発生した粉塵がエレベータシャフトの外部に飛散するのを防止することができる。また、上記開口部を遮蔽したり開放したりすることが可能となるので、開口部を規定する建物の側面などに対する付着物関連処理を円滑に行うことができる。
【0008】
上記二次的な目的を達成するために、上記付着物処理装置は、粒状のドライアイスを噴射可能な噴射装置と、前記内部空間の下部と、当該内部空間外の外部空間とを連通する連通部材と、前記内部空間内の空気を、前記連通部材を介して前記外部空間に排出する排気装置と、前記内部空間の上部から酸素を含む気体を供給する気体供給装置とを備え、前記付着物関連処理は、前記噴射装置が噴射した前記ドライアイスを前記物体に吹き付けることにより、前記付着物を前記物体の表面から脱落させる処理であることを特徴とする。これにより、上述した主たる目的を達成することができるだけでなく、上記二次的な目的も達成することができる。具体的には、排気装置が設けられているので、内部空間内において発生した粉塵を、エレベータシャフトの外部に飛散させることなく、連通部材内に向かうように誘導することができる。さらには、ドライアイス使用により発生した二酸化炭素ガスも排気装置により内部空間の下部から排気することができる。また、内部空間に酸素が供給されるので、内部空間内でドライアイスを使用した付着物関連処理を行う作業員は、酸素を確保することができる。
【0009】
又は、上記二次的な目的を達成するために、上記付着物処理装置は、前記内部空間と、当該内部空間外の外部空間とを連通する連通部材と、前記内部空間内の空気を、前記連通部材を介して前記外部空間に排出する排気装置とを備えることを特徴とする。これにより、上述した主たる目的を達成することができるだけでなく、上記二次的な目的も達成することができる。具体的には、排気装置が設けられているので、内部空間内において発生した粉塵を、エレベータシャフトの外部に飛散させることなく、連通部材内に向かうように誘導することができる。
【0010】
また、上述したような付着物処理装置において、前記排気装置により排出される前記空気の除塵を行うフィルタを備えることが好ましい。これにより、排出される空気が清浄化される。また、排気装置が誘導した粉塵は、フィルタによって捕集(回収)されるので、粉塵が外部空間に排出されることも抑制される。
【0011】
上記主たる目的を達成するために、本発明の付着物処理方法は、建物が備えるエレベータシャフト内を昇降移動するケージが画成する空間と、前記建物内の空間とを連通する開口部を前記エレベータシャフトの外部から封止する封止ステップと、前記エレベータシャフト内を昇降移動するケージを足場として、前記封止ステップにおける封止により前記エレベータシャフト側に形成された空間内にある物体の表面に付着している付着物に関わる付着物関連処理を行う処理ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の付着物処理方法によれば、封止するので、上記開口部を遮蔽しなくても、封止により形成された空間内において付着物関連処理の結果発生した粉塵がエレベータシャフトの外部に飛散するのを防止することができる。また、上記開口部を遮蔽したり開放したりすることが可能となるので、開口部を規定する建物の側面などに対する付着物関連処理を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の付着物処理装置及び付着物処理方法によれば、封止するので、封止により形成された空間内において付着物関連処理の結果発生した粉塵がエレベータシャフトの外部に飛散するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る付着物処理装置としてのアスベスト除去装置が設置された建物の概略的な構成を示す縦断面図である。図2は、図1の建物に設置されたエレベータのドア部分の拡大断面図である。
【0016】
図1に示す建物10は、1階部分〜4階部分からなる4層構造の建物であり、さらにエレベータ50が設置されている。建物10の各階は、エレベータホールとして機能する。なお、建物10の1階部分の床面は、地上面1と同じ高さにある。
【0017】
エレベータ50は、人や物を運搬するための筐体を含むケージ51と、ケージ51が鉛直方向に昇降移動するためのガイドを行うエレベータシャフト52を備えている。ケージ51は、建物10の各階に停止可能である。エレベータシャフト52は、鉛直方向に立設された構造物である。エレベータシャフト52が画成する空間の底部にはピット(pit)53が形成されている。このピット53は、ケージ51を地上面1よりも低い位置に収納するためのものである。また、建物10においてエレベータシャフト52の上方には、ケージ51を昇降移動させるための機械等が設置された機械室54が設けられている。
【0018】
図2に示すように、ケージ51は、その筐体の外側に設けられた開閉自在なドア(扉)51aを有する。また、建物10のエレベータホールにも開閉自在なドア(扉)10aが設けられている。図2に示す例では、ドア51aはクローズ状態となっており、ドア10aはオープン状態となっている。エレベータ50の通常運転時においては、エレベータホールのドア10a及びエレベータ50のドア51aは、ケージ51が停止階において停止したときに、双方が連動的にオープン状態となることで、エレベータ50用の出入口を形成する。この出入口は、ケージ51が画成するケージ内空間と建物10のエレベータホール内の空間とを連通する開口部に相当する。
【0019】
また、上述した建物10には、アスベスト除去装置100が設置されている。アスベスト除去装置100は、アスベスト除去作業を実施する際に用いられるものである。アスベスト除去作業では、エレベータシャフト52内にある物体表面(天井面、壁面52aなど)やドア10a近傍の壁面などから、それらの物体に付着している有害物であるアスベストを剥離・脱落させる作業が中心となる。したがって、アスベスト除去作業は、上記付着物関連処理の一例である。
【0020】
アスベスト除去装置100は、図1に示すように、エレベータシャフト52内を昇降移動する足場51bと、エレベータホールのドア10a用の開口部をエレベータシャフト52の外側から(つまりエレベータホール側で)封止する封止部材140と、粒状のドライアイスを圧縮状態で噴射可能なブラストマシン150とを備える。
【0021】
封止部材140は、建物10の各階のエレベータホールを垂直方向に区切るように設置されている。ここで、封止部材140は、気密性の高いシート状部材で構成されており、例えば、PET(polyethylene terephthalate)製のシートである。なお、建物10の1階部分に設置される封止部材140(後述するセキュリティゾーン220に接する封止部材140)には、作業員が作業場内に直接入ることができるように、開閉可能な扉(図示せず)が設けられる。
【0022】
また、アスベスト除去装置100は、中空部材であるダクト110と、排気機能及び集塵機能を有する集塵機120と、送風装置130とを備えている。ダクト110は、吸気口111と、排気口119とを有する。吸気口111は、エレベータシャフト52内に配置されている。排気口119は、エレベータシャフト52外に配置され、集塵機120に接続される。送風装置130は、送風機131と、それに接続された配管132とから構成されている。
【0023】
ダクト110としては、例えば、フレキシブルダクト又はテレスコープ式ダクトを用いることができる。フレキシブルダクトは、可撓性及び気密性のある可撓性部材で囲んだ中空部材であり、可撓性があるので、例えば建物10内のコーナー部等に沿って任意に曲げることができ、また、伸縮可能でもある。テレスコープ式ダクトは、長さ方向に段階的に伸縮可能に形成されている。このようなフレキシブルダクトやテレスコープ式ダクトを用いることにより、ダクト110を任意の大きさ、任意の形状の室内空間20に設置することが容易となる。さらには、フレキシブルダクトやテレスコープ式ダクトを収縮状態にすることで、ダクト110の外形が占める体積が小さくなるため、持ち運びが容易となる。
【0024】
さらに、ダクト110には、吸気口111に対応する位置においてフィルタ(図示せず)が設置されている。このフィルタは、集塵機120が備える後述するHEPAフィルタ(high efficiency particle air filter)よりもメッシュが粗いフィルタであり、HEPAフィルタの目詰まりを起こしにくくするプレフィルタとして機能する。これにより、集塵機120が備えるHEPAフィルタの交換頻度を抑えることができる。
【0025】
集塵機120は、稼働されると、図1に示す矢印A方向に排気を行う(排気機能)。排気の際、集塵機120は、ダクト110の吸気口111を介して、エレベータシャフト52内の空気を取り込み(矢印B参照)、取り込んだ空気を排気口119に向かって移動させることになる。これにより、ダクト110において、図1に示す矢印Bから矢印Aに至るまでの排気経路が確保される。集塵機120は、アスベスト除去作業を行うための作業場の換気を実現するために、作業場を負圧に設定できる程度の高さに排気能力が設定されている。また、集塵機120は、通気可能な程度にメッシュの細かいHEPAフィルタ(図示せず)を備えている。集塵機120は、エレベータシャフト52内の空気吸い込む際、該空気に浮遊する埃などの粉塵も一緒に吸い込み、排気の際に、上記HEPAフィルタで粉塵を捕集する(集塵機能)。これにより、集塵機120の排気機能によって排気される空気は、除塵され、その結果、清浄化される。
【0026】
次に、エレベータシャフト52内におけるアスベスト除去作業について説明する。
図3は、図1に示すエレベータシャフト52内におけるアスベスト除去作業の工程を示すフローチャートである。
【0027】
図3において、まず、第1工程(ステップS1:養生工程)では、アスベスト除去作業を行う作業場の養生(covering)を行う。ここで、養生とは、隔離密閉養生とも称され、作業場の周囲を、気密性の高いシート等で囲み覆うことで、作業場内部の空間を密封空間にして他の空間(作業場外部)から隔離することをいう。
【0028】
作業場の養生は、アスベスト除去装置100の一部である封止部材140を建物10のエレベータホールにおいてエレベータシャフト52の近傍に設置し、それにより、エレベータホールを区切ることによって完了する。設置された封止部材140は、粘着テープ等によってエレベータホールの床面や壁面に固定される。
【0029】
封止部材140を設置することにより、建物10内の空間において、エレベータシャフト52及び封止部材140に囲まれた空間が形成される。この空間は、アスベスト除去作業を行うための作業場となる。したがって、作業場内の内部空間は、建物10内の空間から隔離されていることになる。このようにして、作業場を養生させることにより、作業場内のアスベストが外部へ漏出することが防止される。また、この第1工程において、ケージ51の外周面も気密性の高いシート等で囲み覆われる。これにより、作業場内のアスベストがケージ51の筐体内に進入することも防止される。
【0030】
封止部材140の設置手順の一例を説明する。まず、封止部材140の下端がドア10aの下部近傍になるようにエレベータホールの床面に固定する。続いて、封止部材140に若干のゆとりを持たせた状態で、封止部材140の上端をドア10a近傍にあるエレベータホールの壁面に固定する。最後に、封止部材140の側端部をエレベータホールの壁面に固定する。これにより、ドア10aをオープン状態にすると、ドア10a近傍にあるエレベータホールの壁面(例えば三方枠の表面)などが作業場の内部空間に露出し、ドア10aをクローズ状態にすると、ドア10aにより覆われていたエレベータシャフト52の壁面52aが作業場の内部空間に露出する。また、図2に示したように封止部材140を設置することにより、アスベストが付着していない部分(エレベータホールの床面、壁面、天井面など)が作業場の内部空間に露出するのを防止することができる。
【0031】
なお、建物10の各階に設置される封止部材140のうち、1階に設置される封止部材140は、図1に示すように、エレベータシャフト52から所定距離離れた位置に設置される。これにより、作業場内の空間において1階部分に作業スペースを確保することができる。
【0032】
また、第1工程では、アスベスト除去装置100の他の構成要素も設置される。図1に示す例では、アスベスト除去装置100のブラストマシン150は、足場51b上、つまりケージ51の筐体上に載置される。ダクト110は、ピット53の下部に吸気口111が配置され、且つ排気口119が封止部材140の外部(作業場外部)に配置されるように設置される。集塵機120は、作業場外部の、例えば建物10の1階部分に設置され、ダクト110の排気口119に接続される。送風装置130の送風機131は、機械室54内に設置され、配管132は、機械室54の床面54aを貫通するように設置される。
【0033】
続いて、第2工程(ステップS2:付帯設備設置工程)では、アスベスト除去装置100の付帯設備として、セキュリティゾーン220が設置される。セキュリティゾーン220は、建物10の1階部分に設置され、前室やエアシャワー室を含む。セキュリティゾーン220の前室は、作業員が作業場内へ入ったり作業場内から出たりするための作業場用出入口となる。このように、セキュリティゾーン220を設けることにより、アスベストを扱う作業員が作業場の外に出ることによるアスベストの外部への漏出を防止することができる。
【0034】
その後、第3工程(ステップS3:負圧設定工程)では、集塵機120を稼働させることにより、作業場内の排気を行って、作業場の気圧を大気圧よりも低い負圧に設定する。また、送風装置130を稼働させることにより、図1に示す矢印C方向に空気を移動させる。これにより、作業場内に新鮮な空気(酸素を含む気体)が供給される。これらにより、作業場の空気の入れ替え(換気)が達成されるので、作業員は容易に酸素を確保することができる。
【0035】
ここで、送風装置130が供給する空気の単位時間当たりの供給量(供給体積)は、集塵機120が排気する空気の単位時間当たりの排気量(供給体積)よりも小さくなるように制御される。これにより、作業場の内圧が低くなり過ぎない状態が維持され、且つ作業場に設定した負圧が維持される。このようにして、作業場の負圧を維持することで、後述する第4工程において発生するアスベストを含む粉塵は、矢印Bから矢印Aに至るまでの排気経路に誘導され、誘導された粉塵は、集塵機120のHEPAフィルタなどによって捕集されることになる。これにより、作業場外部へのアスベストの曝露を防止することができる。
【0036】
そして、第4工程(ステップS4:アスベスト除去工程)では、アスベスト除去作業を行う。アスベスト除去作業は、養生された作業場の上部(高所)から下部(低所)の順で実施される。そこで、まず、作業員は、1階のエレベータホールからケージ51の筐体上に乗り込む。すなわち、ケージ51の筐体がアスベスト除去作業用の足場51bとなる。さらに言い換えると、既設のケージ51は、アスベスト除去装置100の一部をなすと云える。そして、作業員は、ケージ51を用いてエレベータシャフト52内の最上部(高所)に移動する。
【0037】
続いて、作業員は、建物10からアスベストを除去するために、エレベータシャフト52内の物体の表面(天井面や壁面52aなど)やドア10a近傍の壁面などに付着しているアスベストに対して外力を作用させる。これにより、アスベストは物体表面などから剥離し脱落する。本実施の形態では、アスベストを脱落させるために、まず、へら・皮スキ・ブラシなどを用いて手作業を行う。続いて、作業員は、ブラストマシン150を用いたドライアイスブラスト法を実施する。ドライアイスブラスト法とは、ブラストマシン150が噴射した粒状のドライアイスを物体に吹き付け、この吹き付け時に生じた衝突エネルギーにより、物体に付着しているアスベストを物体表面から脱落させるものである。これらの作業によってもアスベストが脱落せずに残存する可能性がある場合には、さらに、アスベストに対して薬液を作用させて無害化させる作業なども行う。そして、脱落させたアスベストを手作業で回収する。これにより、アスベストを作業場から除去する。
【0038】
ここで、エレベータシャフト52内の物体から脱落したアスベストを含む粉塵は、作業場内に飛散するが、封止部材140が設置されているので、粉塵はエレベータホールにまで飛散することはない。そのため、粉塵は、吸気口111に設けられているフィルタや、集塵機120のHEPAフィルタによって、捕集(回収)される。これによっても、作業場からのアスベストの除去が実現される。
【0039】
ところで、ドライアイスブラスト法の実施の際に使用したドライアイス(固体)は、昇華(気化)した結果二酸化炭素ガスとなる。したがって、作業場内には、大量の二酸化炭素ガスが発生する。この二酸化炭素ガスは、集塵機が作業場を負圧にする際に作業場内に生じさせた気流(矢印B)により、作業場外へ排出される。ここで、二酸化炭素ガスは空気よりも比重が大きいために、エレベータシャフト52の底部にあるピット53に滞留しやすい。このために、ダクト110の吸気口111をピット53の下部に配置している。これにより、二酸化炭素ガスが作業場の下部に滞留・充満する前にそれを速やかに排気することができる。つまり、二酸化炭素ガスを効率的に排除することができる。これにより、作業員が酸素欠乏という危険に曝されるのを防止することができ、もって作業員の安全を確実に確保することができる。
【0040】
エレベータシャフト52の最上部でのアスベスト除去作業が完了したら、最上部よりも下方に移動して、移動した位置で同様のアスベスト除去作業を行う。そして、上述したような作業を繰り返し、最終的に、エレベータシャフト52の最下部(ピット53)でのアスベスト除去作業を行う。なお、ピット53でのアスベスト除去作業は、ケージ51を足場51bとせずに、ピット53の底面53a上で行われる。このようにして、エレベータシャフト52内でのアスベスト除去作業を完了する。
【0041】
第4工程が完了した後は、設置したアスベスト除去装置100やその付帯設備を撤去したり、回収したアスベストを最終処分場へ運搬したりして、本工程を完了する。
【0042】
図3の処理によれば、第1工程において封止部材140を用いて作業場の養生(封止)を行うので、エレベータ50用の出入口をドア10aで遮蔽しなくても、養生によってできた作業場の内部空間内においてアスベスト除去作業の際に発生したアスベストを含む粉塵がエレベータホールに向かって飛散するのを防止することができる。また、作業場が封止部材140で養生されているので、エレベータ50用の出入口をドア10aで遮蔽したり開放したりすることが可能となる。これにより、ドア10a近傍の壁面(エレベータシャフト52の壁面52aや三方枠の表面)などに対するアスベスト除去作業を円滑に行うことができる。
【0043】
また、図3の処理によれば、ケージ51を足場51bとするので、作業場内に足場を組む必要がない。これにより、足場を組むために必要な時間及び費用を削減することができる。また、足場を組むために必要な時間を削減することができるので、上記アスベスト除去作業全体にかかる工期を短縮して、エレベータ50の稼働を早期に再開することができる。つまり、工期を短縮することで、エレベータ50が使えない期間が短くなる。
【0044】
また、排気機能を有する集塵機120が設けられているので、作業場の内部空間内において発生した粉塵を、エレベータホールに向かって飛散させることなく、ダクト110が規定する排気経路内に向かうように誘導することができる。また、ドライアイス使用により発生した二酸化炭素ガスも集塵機120により作業場の内部空間の下部から排気することができる。さらには、送風装置130によって作業場の内部空間に酸素が供給されるので、作業場の内部空間内でドライアイスを使用したアスベスト除去作業を行う作業員は、酸素を確保することができる。これらにより、アスベスト除去作業を安全に且つ円滑に行うことができる。
【0045】
さらに、集塵機120が備えるHEPAフィルタやダクト110の吸気口111に設けられたフィルタが作業場の外部に排出される空気の除塵を行うので、排出される空気が清浄化される。また、集塵機120が排気経路内に向けて誘導した粉塵は、ダクト110に設置されたフィルタや、集塵機120のHEPAフィルタによって捕集(回収)されるので、アスベストを含む粉塵が作業場の外部に排出されることも抑制される。これにより、アスベスト除去作業を行う作業場周辺の安全を確実に確保することができる。
【0046】
なお、上述した実施の形態では、アスベスト除去作業の際に、ドライアイスブラスト法を実施したが、ドライアイスブラスト法を実施しなくてもよい。この場合、ブラストマシン150を使用することがないので二酸化炭素ガスが発生することはない。このため、ダクト110の吸気口111を作業場の下部に配置する必要はなく、吸気口111は、作業場内の任意の場所に配置される。さらには、二酸化炭素ガスが発生しないので、作業場内に酸素を積極的に供給するための送風装置130を設置しなくてもよい。そして、ドライアイスブラスト法を実施しない場合には、アスベスト除去装置100の集塵機120は、作業場の内部空間内において発生した粉塵をダクト110が規定する排気経路内に向かうように誘導し、誘導した粉塵をHEPAフィルタやダクト110のフィルタによって捕集(回収)すると共に、作業場の外部に排出される空気の清浄化を行う。
【0047】
ところで、ドライアイスブラスト法を実施しない場合のアスベストに対する措置(付着物関連処理)としては、封じ込めや囲い込みがある。封じ込めとは、薬液を壁面52aなどに向かって散布することにより、有害物の表面を薬液で被覆して有害物の脱落(飛散)を防止するための措置である。囲い込みとは、有害物が付着した壁面52aなどの全体、つまり有害物の周囲を別の部材で囲むことで、有害物が脱落したとしても飛散しないようにするための措置である。なお、上記封じ込めや上記囲い込みは、手作業やドライアイスブラスト法の実施によりアスベストが積極的に除去された後に、残存の可能性があるアスベストに対する措置として副次的に行われてもよい。
【0048】
また、上述した実施の形態では、集塵機120は、排気機能と集塵機能の双方を有するとしたが、排気機能だけを有する排気装置(送風機)であってもよい。この場合、ダクト110などに集塵機能を実現するHEPAフィルタが設置される。
【0049】
さらに、上述した実施の形態において、除去対象は、アスベストであるとしたが、アスベスト以外の有害物(例えば、ダイオキシン類や、放射性物質)であってもよい。また、除去対象は、有害物に限られることはなく、エレベータシャフト52内にある物体に付着した埃などの付着物であってもよい。ただし、除去対象が有害物である場合に、作業場外部への飛散(曝露)が問題となりやすいので、本発明は、除去対象が有害物であるときに高い効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施の形態に係る付着物処理装置としてのアスベスト除去装置が設置された建物の概略的な構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の建物に設置されたエレベータのドア部分の拡大断面図である。
【図3】図1に示すエレベータシャフト内におけるアスベスト除去作業の工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 地上面
10 建物
10a ドア
51 ケージ(乗りかご)
51a ドア
51b 足場
52 エレベータシャフト
52a 壁面
53 ピット
100 アスベスト除去装置
110 ダクト
111 吸気口
119 排気口
120 集塵機
130 送風装置
140 封止部材
150 ブラストマシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージの昇降移動を案内するエレベータシャフトを備える建物に設置される付着物処理装置であって、
前記エレベータシャフト内を昇降移動する足場と、
前記ケージが画成する空間と前記建物内の空間とを連通する開口部を前記エレベータシャフトの外部から封止する封止部材と、
を備え、
前記足場は前記ケージであり、
前記付着物処理装置は、前記エレベータシャフト及び前記封止部材に囲まれた内部空間内にある物体の表面に付着している付着物に関わる付着物関連処理を行う際に用いられる
ことを特徴とする付着物処理装置。
【請求項2】
粒状のドライアイスを噴射可能な噴射装置と、
前記内部空間の下部と、当該内部空間外の外部空間とを連通する連通部材と、
前記内部空間内の空気を、前記連通部材を介して前記外部空間に排出する排気装置と、
前記内部空間の上部から酸素を含む気体を供給する気体供給装置と、
を備え、
前記付着物関連処理は、前記噴射装置が噴射した前記ドライアイスを前記物体に吹き付けることにより、前記付着物を前記物体の表面から脱落させる処理である
ことを特徴とする請求項1に記載の付着物処理装置。
【請求項3】
前記内部空間と、当該内部空間外の外部空間とを連通する連通部材と、
前記内部空間内の空気を、前記連通部材を介して前記外部空間に排出する排気装置と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の付着物処理装置。
【請求項4】
前記排気装置により排出される前記空気の除塵を行うフィルタを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の付着物処理装置。
【請求項5】
建物が備えるエレベータシャフト内を昇降移動するケージが画成する空間と、前記建物内の空間とを連通する開口部を前記エレベータシャフトの外部から封止する封止ステップと、
前記エレベータシャフト内を昇降移動するケージを足場として、
前記封止ステップにおける封止により前記エレベータシャフト側に形成された空間内にある物体の表面に付着している付着物に関わる付着物関連処理を行う処理ステップと、
を有することを特徴とする付着物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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