説明

仮設阻集ユニット

【課題】
排水設備の整っていない建築工事現場に仮設置し、混入物が含まれる排水の処理を手間をかけることなく行うことができる仮設阻集ユニットを提供する
【解決の手段】
【請求項1】
阻集容器と、該阻集容器上面の開口部上に載置されるパンとを備え、該パンは、排水が阻集容器へ流れ込むための排出口を有し、該阻集容器は、該パンから流れ込んだ排水に含まれる混入物を阻集した後に、外部に排水を排出することを特徴とする仮設阻集ユニットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水設備の整っていない建築工事現場に仮設置し、洗浄作業後の排水に含まれる混入物を阻集した後に排出する仮設阻集ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築工事現場においては、モルタル、塗料、土砂等が付着した工具、冶具、資材等を洗浄することがある。しかし、側溝や排水管のつまり、あるいは河川等の汚染を防止するために、モルタル、塗料、土砂等の混入物を含んだ排水を側溝や下水道にそのまま排出(放流)することは慎まなければならない。
【0003】
そのため、排水設備の整っていない建築工事現場では、バケツ等の容器に汲み置いた水で洗浄し、その後、排水に含まれる混入物が沈殿するのを待って、上澄み水を静かに放流するとともに、容器に沈殿した混入物を別途処分するという作業が必要であり、手間と時間を要していた。
【0004】
一方、従来より、排水に含まれる混入物を除去する装置として阻集器が存在していた。例えば、工場や厨房等からの排水に含まれる油分などを除去するグリーストラップ等は、この阻集器の一形態である。また、浄化槽や排水枡などにも同様の機能がある。
【0005】
しかしながら、これらの装置は、工場排水や生活排水を処理する目的で、建物の床面や地盤面に埋め込まれた状態で恒久的に使用されるように設計されたものである。
【0006】
例えば、特許文献1には、既存の共同住宅・マンション等の排水系統の工事の際に使用する排水設備仮設装置に関する技術が開示されているが、これは既存の排水管に直結して使用するものであり、排水設備の整っていない建築工事現場で発生する排水を処理する目的で、仮設的に設置されるように設計されたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2905768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題を解決するものであり、排水設備の整っていない建築工事現場に仮設置し、混入物が含まれる排水の処理を手間をかけることなく行うことができる仮設阻集ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る仮設阻集ユニットは、阻集容器と、該阻集容器上面の開口部上に載置されるパンとを備える。該パンは、排水が阻集容器へ流れ込むための排出口を有し、該阻集容器は、該パンから流れ込んだ排水に含まれる混入物を阻集した後に、外部に排水を排出することを特徴とする。
【0010】
上記構成からなる仮設阻集ユニットによれば、パンに水を貯留して洗浄する機能と、洗浄後の排水に含まれる混入物を除去する機能とを兼ね備えてユニット化されているので、建築工事現場での工具、冶具、資材等の洗浄作業を簡便に行うことができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記仮設阻集ユニットは、前記阻集容器の内部を、前記パンの排出口の下方に位置し混入物を沈殿させる沈殿槽と、外部排出口を有し該沈殿槽からの上澄み水が放流される放流槽と、に区画する第一仕切り板を備えている。本発明に係る仮設阻集ユニットは、阻集容器内部が第一仕切り板によって沈殿槽と放流槽に区画されているので、落下した排水の勢いによって内部が乱され沈殿した混入物が排水とともに放流されてしまう事態を防止することができる。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、前記仮設阻集ユニットは、下端部に開口を有し、前記沈殿槽の内部を上流部と下流部とに区画する第二仕切り板を備え、該上流部は前記パンの排出口の下方に位置し、該上流部には固形混入物を受け止める網状体が収容されている。本発明に係る仮設阻集ユニットは、第二仕切り板によって沈殿槽が上流部と下流部に区画され、上流部には固形混入物を受け止める網状体が収容されているので、前記効果が更に高まるとともに、網状体によって比較的大きな固形の混入物が受け止められ、混入物の分別処分を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、前記仮設阻集ユニットは、前記阻集容器は側壁を有し、前記第一仕切り板及び第二仕切り板は、該側壁の内面に縦方向に形成された溝に嵌め込まれて固定され、取り外し自在に構成されている。本発明に係る仮設阻集ユニットは、第一仕切り板及び第二仕切り板が取り外し自在なので、沈殿槽に沈殿した混入物の除去作業や内部の清掃作業を簡便に行うことができる。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、前記仮設阻集ユニットは、前記沈殿槽の下流部内に設置され、側面部及び前記排水の沈殿物が沈殿する底面部を有する第一沈殿物回収容器を備えている。また、前記放流槽内に設置され、側面部及び前記排水の沈殿物が沈殿する底面部を有する第二沈殿物回収容器を備えている。本発明に係る仮設阻集ユニットは、これら沈殿物回収容器を備えているため、排水の処理後、沈殿槽の下流部及び放流槽に沈殿する、前記網状体で回収されなかった混入物の細かい沈殿物を容易に回収することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、排水設備の整っていない建築工事現場であっても、混入物が含まれる排水の処理を手間をかけることなく行うことができる仮設阻集ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る仮設阻集ユニットの斜視図である。
【図2】本施形態に係る仮設阻集ユニットの断面図である。
【図3】阻集容器に設けられた溝の構成を示す図である。
【図4】沈殿物回収容器を備える仮設阻集ユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】沈殿物回収容器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、一実施形態を例に挙げて本発明を詳細に説明するが、この実施形態は本発明の理解を助けるために記載するものであって、本発明を記載された実施形態に限定する趣旨で無いことは自明である。
【0018】
先ず、図1を用いて、本実施形態に係る仮設阻集ユニットAの概要について説明する。本実施形態に係る仮設阻集ユニットAは、図1に示すように、主にパンA1、パンA1が載置される阻集容器A2、から構成される。そして、阻集容器A2は、第一仕切り板11、第二仕切り板12、網かご(網状体)14を備えている。以下、各構成について説明する。
【0019】
[パン]
パンA1は、図一に示すように、底板1と底板の周縁から起立した側壁2と側壁2の上端から外方向に水平に延出した鍔3とを有している。底板の四隅にはパンA1のずれを防止する為の突出片が阻集容器A2の略矩形の開口部9に対応して設けられており、阻集容器A2の開口部9に該突出片が嵌め込まれた状態で載置される。
【0020】
底板1には洗浄作業によって混入物が混ざった水を阻集容器A2に導く排出口4が設けられている。また、パンA1は排水口4を塞ぐゴム栓5を備えており、ゴム栓5で排水口4を塞ぐことによってパンA1内に水を貯留して洗浄作業をすることができる。
【0021】
また、鍔3には長孔6が穿設されており、例えば、仮設水栓をパンA1の上方に立設する際に仮設水栓を保持する支柱や給水管等を金具や固定具を用いて固定する場合に使用したり、洗浄作業に使用するブラシ等を掛止する際に使用することができる。
【0022】
[阻集容器]
阻集容器A2は、パンA1からの排水を該排水に含まれる混入物を阻集したのちに外部に排出する機能を有するものであり、その外装部分は、底板7と底板7の周縁から起立した側壁8を有している。
【0023】
側壁8の上部には開口部9が形成され、阻集容器A2の上部は全面的に開放されており、パンA1の下部を載置して嵌め込むことによって開口部9は閉塞される。
【0024】
パンA1、阻集容器A2は、ともに合成樹脂の成形品であることが好ましく、水が貯留されていない状態では、一人で持ち運びができる程度の大きさと重量を有している。
【0025】
[第一仕切り板]
阻集容器A2には、その内部を、パンA1の排出口4の下方に位置し混入物を沈殿させる沈殿槽aと側壁8に備えられた外部排出口10を有し沈殿槽からの上澄み水が放流される放流槽bとに区画する第一仕切り板11を備えている。
【0026】
第一仕切り板11は、パンA1を装着した状態でパンA1の底板1との間に排水を放流槽bへ導く為の隙間が形成されるように設定されている。このため、排水の上澄み液のみが放流槽bへと流れ込むようになる。
【0027】
[第二仕切り板]
更に、沈殿槽a側には、その内部を上流部a1と下流部a2とに区画する第二仕切り板12を備えている。第二仕切り板12は、阻集容器A2の底板7との間に隙間が形成されるように設定されているため、排水に含まれる混入物は網状体に効率的に捕集される。
【0028】
第一仕切り板11及び第二仕切り板12は、図3に示すように、対向する側壁8の内面側に第一仕切り板11、第二仕切り板12の厚さに対応した幅で設けられた溝13に嵌め込まれている。これにより、パンA1を取り外した状態で、第一仕切り板11又は第二仕切り板12を上方にスライドさせることによって取り外すことができる。図3は、阻集容器A2の溝13周辺を開口部9の方向から見た図である。
【0029】
なお、溝13は、突起を設けて形成してもよいし(図3(b))、沈殿槽aに沈殿した混入物が放流槽bに流出しなければ、連続した溝が形成されていなくてもよい。
【0030】
[網状体]
上流部a1はパンの排出口4の下方に位置し、その内部には網かご(網状体)14が収容されており、網の目よりも大きな固形の混入物を阻集することができる。
【0031】
なお、網状体は網袋などでもよく、この場合網袋の口の部分を開放状態に保つ為に、第二仕切り板12や側壁8にフック、クリップ等の係止手段を設けるのが好ましい。
【0032】
放流槽bの側壁8の下端寄りの位置に設けられた外部排出口10には蛇腹状のホース15が装着されている。
【0033】
[沈殿物回収容器]
また、上記仮設阻集ユニットは、図4に示すように、沈殿物回収容器(第一沈殿物回収容器16、第二沈殿物回収容器17)を備えていてもよい。
【0034】
沈殿物回収容器は、図5に示すように、排水中の混入物が沈殿する底面部18、側面部19を有している。混入物は回収容器の底面部18に沈殿するため、排水の処理後に、この沈殿物回収容器を取り出すことにより、沈殿した混入物を回収することができる。
【0035】
沈殿物回収容器には、突出部20が設けられており、図3(c)に示すように、該突出部20を溝13にはめ込むことにより沈殿物回収容器を固定することができる。また、沈殿物回収容器の側面部19には、沈殿物回収時に容易に掴めるよう、持ち手部21が設けられている。
【0036】
なお、第一沈殿物回収容器16は、側面部19が仕切り板11と同様の機能を有するため、仕切り板11を用いずともよい。しかし、図4に示すように、第一沈殿物回収容器及び仕切り板11の両方を備えていてもよい。
【0037】
さらに、上記仮設阻集ユニットは、第二沈殿物回収容器17を備えていてもよい。第二沈殿物回収容器17は、機能や形状、材質等は上記第一沈殿物回収容器16と同様のものであってもよいが、排水が排出されるために、外部排出口10の位置に合わさるように穴が設けられている。
【0038】
なお、第一沈殿物回収容器、第二沈殿物回収容器を備えている場合も、仮設阻集ユニットのその他の各構成は上記構成と同様である。
【0039】
上記構成の仮設阻集ユニットAを排水設備の整っていない建築工事現場の最終桝や側溝に近接した位置に設置し、ホース15を最終桝や側溝に接続することによって工具、冶具、資材等の洗浄作業に使用することができる。特に、パンA1に水を貯留して洗浄する機能と、洗浄後の排水に含まれる混入物を除去する機能とを兼ね備えてユニット化されているので、洗浄作業を簡便に行うことができる。
【0040】
また、阻集器本内内部が第一仕切り板11および第二仕切り板12によって仕切られているので、落下した排水の勢いによって内部が乱され沈殿した混入物が排水とともに放流されてしまう事態を防止することができる。
【0041】
また、網状体によって比較的大きな混入物が阻集できるので、混入物の分別処分を容易に行うことができる。
【0042】
また、第一仕切り板11及び第二仕切り板12が取り外し自在なので、沈殿槽に沈殿した混入物の除去作業や内部の清掃作業を簡便に行うことができる。
【0043】
以上説明したように、本発明に係る仮設阻集ユニットは、パンに水を貯留して洗浄する機能と、洗浄後の排水に含まれる混入物を除去する機能とを兼ね備えてユニット化されているので、建築工事現場での工具、冶具、資材等の洗浄作業を簡便に行うことができる。なお、上記仮設阻集ユニットは、新築工事に限らず、増改築工事の際にも使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
A 仮設阻集ユニット
A1 パン
A2 阻集容器
1 パンの底板
2 パンの側壁
3 鍔
4 排出口
5 ゴム栓
6 長孔
7 底板
8 側壁
9 開口部
10 外部排出口
11 第一仕切り板
12 第二仕切り板
13 溝
14 網状体
15 ホース
16 第一沈殿物回収容器
17 第二沈殿物回収容器
18 底面部
19 側面部
20 突出部
21 持ち手部
a 沈殿槽
a1 上流部
a2 下流部
b 放流槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
阻集容器と、該阻集容器上面の開口部上に載置されるパンとを備え、
該パンは、排水が阻集容器へ流れ込むための排出口を有し、
該阻集容器は、該パンから流れ込んだ排水に含まれる混入物を阻集した後に、外部に排水を排出することを特徴とする仮設阻集ユニット。
【請求項2】
前記阻集容器の内部を、前記パンの排出口の下方に位置し混入物を沈殿させる沈殿槽と、外部排出口を有し該沈殿槽からの上澄み水が放流される放流槽と、に区画する第一仕切り板を備えていることを特徴とする請求項1に記載の仮設阻集ユニット。
【請求項3】
下端部に開口を有し、前記沈殿槽の内部を上流部と下流部とに区画する第二仕切り板を備え、該上流部は前記パンの排出口の下方に位置し、該上流部には固形混入物を受け止める網状体が収容されていることを特徴とする請求項2に記載の仮設阻集ユニット。
【請求項4】
前記阻集容器は側壁を有し、前記第一仕切り板及び第二仕切り板は、該側壁の内面に縦方向に形成された溝に嵌め込まれて固定され、取り外し自在に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の仮設阻集ユニット。
【請求項5】
前記沈殿槽の下流部内に設置され、側面部及び前記排水の沈殿物が沈殿する底面部を有する第一沈殿物回収容器を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の仮設阻集ユニット。
【請求項6】
前記放流槽内に設置され、側面部及び前記排水の沈殿物が沈殿する底面部を有する第二沈殿物回収容器を備えていることを特徴とする請求項5に記載の仮設阻集ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−281087(P2010−281087A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134511(P2009−134511)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】