説明

伝送装置およびデスタッフジッタ低減方法

【課題】複数チャネルの信号を非同期マッピングして多重化するように構成された伝送装置等におけるデスタッフジッタを低減させる。
【解決手段】伝送装置は、クロック信号を発生するクロック信号発生手段21と、クロック信号発生手段21が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行うスタッフ制御手段22と、スタッフ制御手段22によってスタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成する多重化手段23とを備えている。多重化手段が作成する多重化信号の周波数偏差は、スタッフ率がゼロの領域を含まないように制限されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システム等の伝送システムで使用され、複数のディジタル信号が多重化された信号から複数のディジタル信号を再生する伝送装置、および伝送装置において実行されるデスタッフジッタ低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SDH(Synchronous Digital Hierarchy)について、ITU−T G.707,G.708,G.709等で規定され、信号多重化についてG.709で規定されている。SDHでは、伝送速度(ビットレート)が155.52Mb/s(以下、156Mb/sとする。)のSTM(Synchronous Transport Module)−1を基本にして、156Mb/sのN倍の伝送速度のSTM−Nが規定される。
【0003】
また、4チャネル(ch)のSTM−64信号を、光伝送網(OTN:Optical Channel Transport Network )におけるOTU(Optical Channel Transport Unit)3信号に非同期マッピングすることに関して、G.709で規定されている。STM−64信号の伝送速度は、9.95328Gb/s(以下、10Gb/sとする。)±20ppmである。
【0004】
例えば、OTU3信号は、STM−64信号がOPU2(Optical Channel Payload Unit-2)信号に非同期マッピングされ、OPU2信号がODTU(Optical Channel Data Tributary)23信号に非同期マッピングされ、4つのODTU23信号を多重することによって形成される。また、OTU3信号の伝送速度は、約43Gb/s±20ppmである。すなわち、±20ppmの周波数偏差(周波数の変動分)が許容される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
OTU3信号の周波数偏差は、ダミーデータであるスタッフデータとしてのJC(Justification Control )バイトをフレームに挿入するスタッフ制御を行うことによって吸収される。このように、JCバイトをフレームに挿入することによって各々の信号生成の際に使用されるクロック信号の周波数差を吸収するスタッフ同期を行いつつ信号の多重化を行うスタッフ同期多重化が実行される。JCバイトを挿入するスタッフ制御では、フレームにおける適当な位置に負スタッフ制御のためのNJC(Negative JC )バイトを挿入したり、正スタッフ制御のためにPJC(Positive JC )バイトが挿入される(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
OTU3信号を受信した伝送装置において、OTU3信号についてスタッフデータを除去するデスタッフ制御を行う。例えば、OTU3信号を分離(デマッピング)するときに、JCバイトがメモリに書き込まれないように制御する。このとき、クロック信号に位相変動が生ずる。すなわち、デスタッフジッタが生ずる。
【0007】
【特許文献1】特表2004−523959号公報(段落0006)
【特許文献2】特開2007−96822号公報(段落0002−0009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、STM−64信号およびODTU23信号には、±20ppmの周波数偏差が許容されるが、その範囲内でSTM−64信号をODTU23信号に多重すると、スタッフ率(フレームにおいてスタッフデータが占める割合、すなわち1フレーム中に平均何回スタッフ制御が行われかを示す値)がゼロになる領域が含まれ、その領域の近傍ではデスタッフジッタが増大する。一般に、デマッピングを行うときにPLL(Phase Lock Loop )回路が使用されるが、スタッフ率がゼロになる領域では、デスタッフジッタの周波数は低い周波数になる。その結果、PLL回路ではデスタッフジッタを吸収できず、正スタッフまたは負スタッフによって発生するデスタッフジッタ量である8UI(1バイト幅)[10Gb/s換算]がほぼそのままPLL回路を通過することになる。すなわち、出力されるデスタッフジッタは大きくなる。
【0009】
そこで、本発明は、複数チャネルの信号を非同期マッピングして多重化するように構成された伝送装置等におけるデスタッフジッタを低減させることができる伝送装置およびデスタッフジッタ低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による伝送装置は、スタッフデータを用いてスタッフ同期多重化を行う伝送装置であって、クロック信号を発生するクロック信号発生手段と、クロック信号発生手段が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行うスタッフ制御手段と、スタッフ制御手段によってスタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成する多重化手段とを備え、多重化手段が作成する多重化信号の周波数偏差を、スタッフ率がゼロの領域を含まないように制限することを特徴とする。
【0011】
本発明による他の態様の伝送装置は、スタッフデータを用いてスタッフ同期多重化を行う伝送装置であって、クロック信号を発生するクロック信号発生手段と、クロック信号発生手段が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行うスタッフ制御手段と、スタッフ制御手段によってスタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成する多重化手段とを備え、多重化手段が作成する多重化信号の周波数偏差を、−15ppm≦δ≦+20ppmに制限することを特徴とする。
【0012】
本発明によるデスタッフジッタ低減方法は、スタッフデータを用いてスタッフ同期多重化を行う伝送装置で用いられるデスタッフジッタ低減方法であって、クロック信号発生手段が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行い、スタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成し、多重化信号の周波数偏差を、スタッフ率がゼロの領域を含まないように制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数チャネルの信号を非同期マッピングして多重化するように構成された伝送装置等において、デマッピングの際に生ずるデスタッフジッタを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、図1の説明図を参照して、STM−64信号の収容方法を説明する。本発明では、STM−64信号をOPU2信号に非同期マッピングする。次いで、ODU(Optical Data Unit )2−OH(オーバヘッド)をOPU2信号に付加した後、ODU2信号、ODTU23信号にさらに非同期マッピングし、ODTU23信号を4つ多重しOTU3信号に収容するマッピング方法を使用する。
【0015】
なお、図1において、実線の矢印は、非同期マッピングがなされること示し、破線の矢印は、非同期マッピングと同期マッピングとのうちのいずれかを行うことが可能であることを示す。また、図1には、STM−16信号からOTU1信号へのマッピング、およびSTM−256信号からOTU3信号へのマッピングについても記されている。
【0016】
図2は、本発明による伝送装置の概要を示すブロック図である。図2に示す伝送装置は、クロック信号を発生するクロック信号発生手段21と、クロック信号発生手段21が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行うスタッフ制御手段22と、スタッフ制御手段22によってスタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成する多重化手段23とを備えている。多重化手段が作成する多重化信号の周波数偏差は、スタッフ率がゼロの領域を含まないように制限されている。なお、スタッフ制御手段22は、多重化の対象のチャネル数分設けられている。
【0017】
図3に示すように、多重化手段23は、例えば、STM−64信号をOTU3信号に収容するように構成される。また、多重化手段が作成する信号の周波数偏差δを、Telcordia GR−1244−COREに準拠したStratum3相当である−4.6ppm≦δ≦+4.6ppmに制限することが好ましい。
【0018】
具体的には、クロック信号発生手段21の周波数精度を、多重化手段23が作成する信号の周波数偏差がスタッフ率がゼロの領域を含まないように制限される範囲(例えば、4.6ppm以内)に相当するように設定する。なお、Stratum3相当の周波数精度を有するクロック信号発生手段21(例えば、水晶発振器)は広く入手可能であり、周波数偏差δを−4.6ppm≦δ≦+4.6ppmに制限する場合には、伝送装置のコストを向上させずに多重化信号の周波数偏差をスタッフ率がゼロの領域を含まないように制限することができる。
【0019】
図4は、本発明によるデスタッフジッタ低減方法の概要を示すフローチャートである。図4に示すように、本発明によるデスタッフジッタ低減方法では、クロック信号発生手段が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行い(ステップS1)、スタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成し(ステップS2)、多重化信号の周波数偏差を、スタッフ率がゼロの領域を含まないように制限する(ステップS3)。なお、ステップS3の処理は、ステップS1,S2の処理よりも前に、またはステップS1、S2の処理に並行して実行されてもよい。
【0020】
実施の形態1.
図5および図6を参照して本発明による伝送装置の第1の実施の形態を説明する。図5は、マッピングを行う側のブロック図を示す。図6は、デマッピングを行う側のブロック図を示す。
【0021】
図5には、第1ch〜第4chのODTU23信号作成部(マッピング回路)100,101,102,103が示されているが、具体的構成例は、第1チャネルのODTU23信号生成部100についてのみ示されている。第2〜第4chのODTU23信号生成部101,102,103の具体的な構成および動作は、第1チャネルのODTU23信号生成部100の具体的な構成および動作と同じである。また、図6には、第1ch〜第4chのSTM−64再生部200,201,202,203が示されているが、具体的構成例は、第1チャネルのSTM−64再生部200の構成についてのみ示されている。第2〜第4chのSTM−64再生部201,202,203の具体的な構成および動作は、第1チャネルのSTM−64再生部200の具体的な構成および動作と同じである。
【0022】
図5に示す伝送装置におけるODTU23信号生成部100において、STM−64信号は、STM−64信号書込みクロック信号によってES(エラスティックストア)部10に書き込まれる。具体的には、書込みアドレス生成部60が生成する書込みアドレスに書き込まれる。ES部10に書き込まれたSTM−64信号は、OTU3共通クロック信号であるオシレータ(発振器)1のクロック信号によって読み出される。読出しアドレスは、読出しアドレス生成部20によって生成される。読出しアドレス生成部20は、ODTU23スタッフ判定40およびOPU2スタッフ判定部30のスタッフ判定結果に応じて読出しアドレスを生成する。
【0023】
ODTU23フレームカウンタ41は、オシレータ1が出力するクロック信号を使用して、OTU3信号のOH位置やJCバイト位置を示すパルスを生成し、ODTU23スタッフ判定部40に出力する。ODTU23スタッフ判定部40は、ODTU23フレームカウンタ41が出力した情報等を用いて、ODTU23のスタッフ制御を実行するか否かの判定を行う。そして、判定結果を、ODU2フレームカウンタ31とODTU23JCバイト挿入部80に出力する。
【0024】
ODU2フレームカウンタ31は、ODU2のOH位置やOPU2JCバイト位置を示すパルス信号を生成し、OPU2スタッフ判定部30に出力する。OPU2スタッフ判定部30は、ODU2フレームカウンタ31が出力した情報等を用いて、OPU2のスタッフを実行するか否か判定し、判定結果を読出しアドレス生成部20とOPU2JCバイト挿入部50に出力する。
【0025】
第2〜第4chのODTU23信号生成部101,102,103の構成は、第1チャネルのODTU23信号生成部100の構成と同じであるが、第1〜第4chのODTU23信号生成部100,101,102,103が出力する10GHzの信号は、MUX(多重化)部70に出力される。4chの10GデータはMUX部70で多重化されOTU3信号が生成される。また、ODTU23JCバイト挿入部80は、ODTU23スタッフ判定部40の判定結果に従って、OTU3信号にJCバイトを挿入する。
【0026】
図6に示す伝送装置において、OTU3信号はOTU3フレーム同期回路部242に入力される。OTU3フレーム同期回路部242は、OTU3フレームパルスを生成した後、OTU3信号とOTU3フレームパルスとをDMUX部(分離部)210に出力する。DMUX部210は、OTU3信号を、STM−64信号を含んだ4chのODTU23信号に分離し、それぞれのODTU23信号を第1〜第4のSTM−64再生部200〜203に出力する。
【0027】
STM−64再生部200において、ODTU23フレームカウンタ/JCバイト抽出部241は、ODTU23信号のJCバイトを抽出する。ODTU23デスタッフ判定部240は、ODTU23信号についてデスタッフを行うか否かを判定し、判定結果をODU2フレーム同期回路部232と書込みアドレス生成部250に出力する。
【0028】
ODU2フレーム同期回路部232は、DMUX部210から入力されるODTU23信号とODTU23デスタッフ判定部240の判定結果をもとに、ODTU23信号のペイロードに収容されているODU2信号のフレーム同期をとる。そして、ODU2フレームカウンタ/JCバイト抽出部231は、OPU2信号のJCバイトを抽出する。OPU2デスタッフ判定部230は、JCバイトの値からOPU2信号についてデスタッフ制御を実行するか否か判定し、判定結果を書き込みアドレス部250に出力する。
【0029】
書込みアドレス生成部250は、ES部280の書込みアドレスを生成する。書込みアドレス生成部250は、フレーム同期処理後の信号からSTM−64信号部分のみのアドレスをインクリメントする。従って、OH等が除去されたSTM−64信号部分のみがES部280に書き込まれる。ES部280に書き込まれたSTM−64信号は、VCO(電圧制御発振器)220から入力されるクロック信号によって読み出される。読出しアドレス生成部270は、VCO220が出力するクロック信号を用いて読出しアドレスを生成する。
【0030】
位相比較部260は、ES部280の読出しアドレスと書込みアドレスとを比較して位相比較結果信号を生成する。位相比較結果信号でVCO220は駆動される。そのような制御によって、位相ずれを含む書込み側クロック信号から、平滑化されたSTM−64クロック信号が再生される。そのSTM−64クロック信号によってES部280からデータが読み出される。
【0031】
図7は、スタッフ率がゼロになる領域を説明するための説明図である。STM−64信号をOTU3信号に収容するときに、オシレータ1をITU−T G.707/G.709で規定されている±20ppm以内(図7における枠300の範囲)にすると、デスタッフジッタが増大するスタッフ率がゼロとなる領域を含んでしまう。
【0032】
そこで、本実施形態では、マッピング処理においてOTU3信号の周波数偏差δをStratum3相当である−4.6ppm≦δ≦+4.6ppm(図7で示す枠310の範囲)に制限したオシレータ1を使用する。すなわち、オシレータ1として、4.6ppm以内の周波数精度を有するオシレータを使用する。その結果、スタッフ率がゼロになる領域を除くことができる。
【0033】
図7において、
:OTU3がSTM−64を収容するペイロードのバイトレート[byte/s]、
δ:OTU3信号の周波数偏差[ppm]、
:クライアント信号(STM−64信号)のバイトレート[bite/s ]、
δ:クライアント信号(STM−64信号)の周波数偏差[ppm]
64:STM−64の公称バイトレート[bite/s ]、
256:STM−256の公称バイトレート[bite/s ]
とする。
【0034】
=R256・(255/236)・(238/(255・4))・(237/239)・(1+δ)=R64・((237/238)/(236/239))・(1+δ
=R64・(1+δ
である。なお、上の2式における数値は、ITU−T G.709で定義されている規格における数値である。
【0035】
スタッフバイトが挿入されるバイトレート(f−f)は、
(f−f)=R64・[((237/238)/(236/239))・(1+δ)−R64・(1+δ)]
である。
【0036】
フレームの繰り返し周波数fは、
=(R256・(255/236)・(1+δ))/(255・16・4・4)
である。
【0037】
従って、スタッフ率ρは、
ρ=(f−f)/f=4・16・256・[(237/238)/(236・239)−(1+δ)/(1+δ)]となる。図7には、横軸をδ、縦軸をδとして、スタッフ率がゼロとなる領域(直線320の部分に相当)を表すグラフが示されている。
【0038】
図7に示すように、直線320は、枠300の範囲内にかかっているが、枠310の範囲内にはかかっていない。すなわち、OTU3信号の周波数偏差δが−4.6ppm≦δ≦+4.6ppmであれば、スタッフ率がゼロとなる領域を含まないようになる。なお、図7に示すように、スタッフ率がゼロとなる領域を含まないようにする場合、OTU3信号の周波数偏差δは、−4.6ppm≦δ≦+4.6ppmの範囲を越えてもよい。例えば、−15ppm≦δ≦+20ppmの範囲であっても、スタッフ率がゼロとなる領域を含まないようにすることができる。
【0039】
次に、図5および図6に示された伝送装置の動作を説明する。
図5に示す伝送装置において、オシレータ1のクロック信号は、ODTU23信号生成部100のODTU23フレームカウンタ41、読出しアドレス生成部20およびES部10に供給されている。なお、オシレータ1のクロック信号は、ODTU23信号生成部101〜103のODTU23フレームカウンタ、読出しアドレス生成部およびES部にも供給されている。
【0040】
ODTU23信号生成部100において、STM−64信号は、STM−64信号書込みクロック信号によって、ES部10に書き込まれる。STM−64信号書込みクロック信号は、書込みアドレス生成部60にも入力されている。書込みアドレス生成部60は、STM−64信号書込みクロック信号をカウントすることによって、STM−64信号の書込みアドレスを生成し、生成した書込みアドレスをES部10に出力する。ES部10は、入力されたSTM−64信号のデータを、書込みアドレス生成部60が生成した書込みアドレスに書き込む。
【0041】
ES部10は、OTU3共通クロック信号であるオシレータ1のクロック信号を読出しクロック信号としてデータを出力する。読出しアドレス生成部20が生成した読出しアドレスをES部10に出力する。ES部10は、書き込まれたSTM−64信号のデータのうち、読出しアドレス生成部20が生成した読出しアドレスのデータを出力する。読出しアドレス生成部20は、ODTU23スタッフ判定40のスタッフ判定結果およびOPU2スタッフ判定部30のスタッフ判定結果に従って読出しアドレスを生成する。すなわち、ES部10からOTU3信号のOH位置やFEC(forward Error Correction)の位置とODU2信号のOH位置とで読出しが行われないような読出しアドレスを生成する。
【0042】
オシレータ1が出力するクロック信号で駆動されるODTU23フレームカウンタ41は、OTU3信号のOH位置やJCバイト位置を示すパルス信号を生成し、ODTU23スタッフ判定部40に出力する。ODTU23スタッフ判定部40は、OTU3信号のOH位置やJCバイト位置を示すパルス信号、書込みアドレスおよび読出しアドレスを入力し、それらから、ODTU23信号についてスタッフ制御を実行するか否か判定する。そして、判定結果をODU2フレームカウンタ31およびODTU23JCバイト挿入部80に出力する。ODU2フレームカウンタ31は、ODTU23スタッフ判定部40の判定結果をもとに、ODU2信号のOH位置やOPU2信号におけるJCバイト位置を示すパルス信号を生成し、OPU2スタッフ判定部30に出力する。
【0043】
OPU2スタッフ判定部30は、フレームカウンタ31からのパルス信号、書込みアドレスおよび読出しアドレスを入力し、それらから、OPU2信号についてスタッフ制御を実行するか否か否か判定する。そして、判定結果を読出しアドレス生成部20とOPU2JCバイト挿入部50に出力する。OPU2JCバイト挿入部50は、OPU2スタッフ判定部30の判定結果に従って、ES部10から読み出されたデータにJCバイトを挿入し、MUX部70に出力する。
【0044】
以上のような処理によって、ES部10は、OTU3信号のOH位置やFECの位置とODU2信号のOH位置での読出しを行わず、ODTU23/OPU2のスタッフ制御を反映させたデータの読出しを行う。
【0045】
なお、第2〜第4chのODTU23信号生成部101,102,103も、第1チャネルのODTU23信号生成部100と同様の動作を行う。
【0046】
MUX部70は、第1〜第4chのODTU23信号生成部100,101,102,103が出力する10GHzの信号を多重化してOTU3信号を生成する。また、ODTU23JCバイト挿入部80は、ODTU23スタッフ判定部40の判定結果に従って、OTU3信号にJCバイトを挿入する。そして、ODTU23JCバイト挿入部80の出力が伝送される。
【0047】
図6に示す伝送装置において、伝送されてきたOTU3信号はOTU3フレーム同期回路部242に入力される。OTU3フレーム同期回路部242は、OTU3フレームパルスを生成した後、OTU3信号とOTU3フレームパルスとをDMUX部(分離部)210に出力する。DMUX部210は、OTU3信号を、STM−64信号を含んだ4chのODTU23信号に分離し、それぞれのODTU23信号を第1〜第4のSTM−64再生部200〜203に出力する。
【0048】
STM−64再生部200において、ODTU23フレームカウンタ/JCバイト抽出部241は、ODTU23信号のJCバイトを抽出する。ODTU23デスタッフ判定部240は、ODTU23フレームカウンタ/JCバイト抽出部241の抽出結果に応じて、ODTU23信号についてデスタッフ制御を行うか否か判定する。そして、判定結果をODU2フレーム同期回路部232と書き込みアドレス生成部250に出力する。
【0049】
ODU2フレーム同期回路部232は、DMUX部210から入力されるODTU23信号とODTU23デスタッフ判定部240の判定結果をもとに、ODTU23信号のペイロードに収容されているODU2信号のフレーム同期をとる。ODU2フレーム同期回路部232がODU2信号のフレーム先頭位置を認識できると、ODU2フレームカウンタ/JCバイト抽出部231は、OPU2信号のJCバイトを抽出する。OPU2デスタッフ判定部230は、ODU2フレームカウンタ/JCバイト抽出部231が抽出したJCバイトの値からOPU2のデスタッフ制御を実行するか否か判定する。そして、判定結果を書込みアドレス部250に出力する。
【0050】
書込みアドレス生成部250は、ODTU23デスタッフ判定部240の判定結果(デスタッフ制御を行うか否かの判定結果やOH位置の情報を含む。)およびOPU2デスタッフ判定部230の判定結果(デスタッフ制御を行うか否かの判定結果やOH位置の情報を含む。)をもとに、ES部280のデータ書込アドレスを示す書込みアドレスを生成する。書込みアドレス生成部250が、ODU2フレーム同期処理後の信号のうちのSTM−64信号部分のみについてアドレスをインクリメントすることによって、OH等が除去されたSTM−64信号部分のみがES部280に書き込まれる。
【0051】
読出しアドレス生成部270は、VCO220が出力するクロック信号によって読み出しアドレスを生成する。従って、ES部280から、VCO220から入力されるクロック信号によってデータが読み出されることになる。
【0052】
位相比較部260は、読出しアドレス生成部270が生成した読出しアドレスと書込みアドレス生成部250が生成した書込みアドレスとを比較することによって、位相比較結果信号を生成し、位相比較結果信号でVCO220を駆動する。そのような制御によって、ODTU23/ODU2−OH等によって発生した位相変動を含む書込み側クロック信号がVCO220で平滑化され、STM−64クロック信号が再生される。そのクロック信号でES部280からデータが読み出されることによって、STM−64信号が再生される。
【0053】
なお、第2〜第4chのSTM−64再生部201,202,203も、第1チャネルのSTM−64再生部200と同様の動作を行う。
【0054】
上記のように、本実施形態では、マッピング処理においてOTU3信号の周波数偏差δをStratum3相当である−4.6ppm≦δ≦+4.6ppm(図7における枠310の範囲)に制限したオシレータ1を使用する。よって、スタッフ率がゼロになる領域を除くことができ、デスタッフジッタを低減させることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、OTU3信号の周波数偏差δを−4.6ppm≦δ≦+4.6ppmに制限したが、スタッフ率がゼロの領域を含めないように周波数偏差を制限すればよく、OTU3信号の周波数偏差δの範囲は、必ずしも−4.6ppm≦δ≦+4.6ppmでなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、光伝送網における光伝送装置などに好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】STM−64信号の収容方法を説明するための説明図である。
【図2】本発明による伝送装置の概要を示すブロック図である。
【図3】本発明による伝送装置の概要を示すブロック図である。
【図4】本発明によるデスタッフジッタ低減方法の概要を示すフローチャートである。
【図5】伝送装置におけるマッピングを行う側のブロック図である。
【図6】伝送装置におけるデマッピングを行う側のブロック図である。
【図7】スタッフ率がゼロになる領域を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 オシレータ
10 ES部
20 読出しアドレス生成部
30 OPU2スタッフ判定部
31 OPU2フレームカウンタ
40 ODTU23スタッフ判定部
42 ODTU23フレームカウンタ
50 OPU2JCバイト挿入部
60 書込みアドレス生成部
70 MUX部
80 ODTU23JCバイト挿入部
100〜103 ODTU23信号生成部
200〜203 STM−64再生部
210 DMUX部
220 VCO
230 OPU2デスタッフ判定部
231 OPU2フレームカウンタ/JCバイト抽出部
232 OPU2フレーム同期回路部
240 ODTU23デスタッフ判定部
241 ODTU23フレームカウンタ/JCバイト抽出部
250 書込みアドレス生成部
260 位相比較部(PC)
270 読出しアドレス生成部
280 ES部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッフデータを用いてスタッフ同期多重化を行う伝送装置であって、
クロック信号を発生するクロック信号発生手段と、
前記クロック信号発生手段が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行うスタッフ制御手段と、
前記スタッフ制御手段によってスタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成する多重化手段とを備え、
前記多重化手段が作成する多重化信号の周波数偏差を、スタッフ率がゼロの領域を含まないように制限する
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項2】
スタッフデータを用いてスタッフ同期多重化を行う伝送装置であって、
クロック信号を発生するクロック信号発生手段と、
前記クロック信号発生手段が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行うスタッフ制御手段と、
前記スタッフ制御手段によってスタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成する多重化手段とを備え、
前記多重化手段が作成する多重化信号の周波数偏差を、−15ppm≦δ≦+20ppmに制限する
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項3】
多重化手段は、STM−64信号をOTU3信号に収容する
請求項1または請求項2記載の伝送装置。
【請求項4】
多重化手段が作成する信号の周波数偏差δをStratum3相当である−4.6ppm≦δ≦+4.6ppmに制限する
請求項3記載の伝送装置。
【請求項5】
クロック信号発生手段の周波数精度は、多重化手段が作成する信号の周波数偏差がスタッフ率がゼロの領域を含まないように制限される範囲に相当する
請求項1から請求項4のうちのいずれか記載の伝送装置。
【請求項6】
クロック信号発生手段の周波数精度は4.6ppm以内である
請求項5記載の伝送装置。
【請求項7】
スタッフデータを用いてスタッフ同期多重化を行う伝送装置で用いられるデスタッフジッタ低減方法であって、
クロック信号発生手段が発生したクロック信号を用いて入力信号に対してスタッフ制御を行い、
前記スタッフ制御がなされた信号を多重して多重化信号を作成し、
前記多重化信号の周波数偏差を、スタッフ率がゼロの領域を含まないように制限する
ことを特徴とするデスタッフジッタ低減方法。
【請求項8】
多重化信号を作成する際に、STM−64信号をOTU3信号に収容し、
多重化信号の周波数偏差δをStratum3相当である−4.6ppm≦δ≦+4.6ppmに制限する
請求項7記載のデスタッフジッタ低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−212882(P2009−212882A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54344(P2008−54344)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】