説明

位相フィルタ、光学装置及びラスタ顕微鏡

【課題】 殆ど波長に依存しない合焦スポットの形成を可能とするフィルタ及び光学装置を提供すること。
【解決手段】 光線束を焦点面に合焦する合焦光学系と、該光線束の合焦スポットの形状形成手段とを有するとともに、該合焦スポット形状形成手段が該光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成された光学装置において、前記合焦スポット形状形成手段は、第1の境界面と第2の境界面とを有すること、及び前記第1の境界面は、前記光線束の前記第1の部分を反射し、かつ前記第2の境界面は、前記光線束の前記第2の部分を反射することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線束を焦点面に合焦する合焦光学系と、該光線束の合焦スポット(ないし集光スポット)の形状形成手段とを有するとともに、該合焦スポット形状形成手段が該光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成された光学装置に関する。
【0002】
本発明は、更に、光線束を焦点面に合焦する合焦光学系と、該光線束の合焦スポットの形状形成手段とを有するとともに、該合焦スポット形状形成手段が該光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成されたラスタ顕微鏡(Rastermikroskop)に関する。
【0003】
本発明は、更に、光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成された位相フィルタに関する。
【背景技術】
【0004】
ラスタ顕微鏡法(走査顕微鏡法:Scanmikroskopie)では、試料(被検対象)は、1つの光ビームで照明され、該試料から放射された反射光又は蛍光光が観察される。照明光ビームの合焦スポット(集光スポット)は、制御可能なビーム偏向装置によって、通常は、2つのミラーの傾動によって、試料面内を移動する。この場合、2つの偏向軸は、大抵、互いに対し垂直になるよう配向されているので、一方のミラーはx方向の偏向を行い、他方のミラーはy方向の偏向を行う。2つのミラーの傾動運動は、例えば、ガルバノメータ調整要素によって実行される。試料から放射された光の強度は、走査ビームの位置に応じて測定される。通常は、ガルバノメータ調整要素は、各時点における実際のミラー位置(ないし配向状態)を求めるためのセンサ(複数)を有する。このいわゆるビーム走査法を使用するもののほか、照明光ビームの空間的位置を固定するとともに、精細位置調整可能な走行ステージによって試料を走査するよう構成された走査顕微鏡も知られている。後者の走査顕微鏡は、試料走査型と称される。
【0005】
とりわけ共焦点ラスタ顕微鏡では、被検対象は、光ビームの合焦(集光)スポットによって三次元的に走査される。
【0006】
共焦点ラスタ顕微鏡は、通常、光源、光源の光をピンホール絞り(いわゆる励起絞り)において合焦する合焦光学系、ビームスプリッタ、ビーム制御のためのビーム偏向装置、顕微鏡光学系、検出絞り、及び検出光ないし蛍光光を検出するための検出器(複数)を有する。照明光は、ビームスプリッタによって差込入射される。被検対象から放射された蛍光光又は反射光は、ビーム偏向装置を介して、ビームスプリッタに戻り着き、このビームスプリッタを通過した後、複数の検出器が後置されている検出絞りにおいて合焦される。なお、このように蛍光光又は検出光がビーム偏向装置を介して検出されるようなラスタ顕微鏡の構成は、ディスキャン(逆走査)型構成(Descan Anordnung)ないし反射光検出型構成と称される。合焦スポットの領域に直接由来しない検出光は、上記の光路とは異なる経路を辿るため、検出絞りを通過することができない。このため、被検対象をシーケンシャルに走査することにより三次元画像を生成するような点情報(Punktinformation)が得られる。多くの場合、三次元画像は、断層的な(各断層毎の)画像データの集積によって生成される。
【0007】
被検対象から放射された光の強度は、走査過程中一定時間間隔で測定されるが、そのためラスタ点毎の走査が行われる。測定データ(複数)から1つの画像を生成できるようにするために、測定値は、関連するスキャン位置と1対1の関係で対応付けられている必要がある。このため、ビーム偏向装置のガルバノメータ調整要素の状態データを常時一緒に測定するか、或いは、正確さは多少劣るが、ビーム偏向装置の制御目標データを直接使用すると目的に適う。
【0008】
例えば蛍光光、又は励起光の透過をコンデンサ側で検出するよう構成された透過光検出型構成を採用することも可能である。この場合、検出光ビームは、スキャンミラーを介さずに検出器に到達する(ノン・ディスキャン(非逆走査)型構成(Non descan Anordnung))。上記ディスキャン(逆走査)型構成の場合と同様の三次元的解像を達成するために、透過光検出型構成では、蛍光光を検出するために検出絞りが必要ともされる。尤も、二光子励起の場合は、励起確率は光子密度の二乗に依存(強度の二乗に比例)しかつ光子密度は合焦スポットにおいてはその周辺の領域におけるよりも遥かに大きいので、コンデンサ側の検出絞りは省くことができる。従って、検出されるべき蛍光光はその殆ど全ての部分が大きな確率で合焦スポット領域に由来するので、合焦スポット領域に由来する蛍光光子と合焦スポット周辺領域に由来する蛍光光子とを絞り装置によって更に区別することは不要となる。
【0009】
共焦点ラスタ顕微鏡の分解能は、とりわけ、励起光ビームの合焦スポットの強度分布及び空間的広がりによって与えられる。蛍光利用のために分解能を向上するための構成を記載している文献は存在する(後掲特許文献1参照)。この構成によれば、励起光ビームの合焦スポット空間の横方向(水平方向)の縁部(外周)領域が、第2のレーザによって放射される他の波長の光ビーム、いわゆる誘導光ビーム(Stimulationslichtstrahl)によって照射されることにより、第1のレーザの光によって励起されていた試料領域が誘導ないし刺激され、当該領域は基底状態に戻る。
【0010】
このとき、第2のレーザによって照射されなかった領域から自然発生的に放射される光のみが検出されるため、全体として分解能の向上が図られる。この方法に対して、STED(Stimulated Emission Depletion)という名称が与えられている。
【0011】
誘導光ビームの合焦スポットをその内部を空にすることができるとき、同時に横方向においても軸方向においても分解能の向上を達成することができるという新たな展開が見られた。これを実現するため、誘導光ビームの光路に、ビーム径よりも小さい直径を有し従ってオーバー(過)照射(ueberleuchten)される円板状のλ/2−プレート(二分の一位相板)を含む位相フィルタが配される。誘導光スポットの形状は、位相フィルタ関数のフーリエ変換の結果として得られる。
【特許文献1】PCT/DE/95/00124
【特許文献2】DE 101 05 391 A1
【非特許文献1】T. Watanabe et. al., "Two-point-separation in super-resolution fluorescence microscope based on up-conversion fluorescence depletion technique", 2003, Optics Express, Vol.11, No.24, 1 December 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現在のSTED顕微鏡法では、試料は、例えばパルス発振するレーザダイオードから放出される短波長のレーザパルスによって照射される。次に、大きな強度の長波長レーザパルスによって励起光スポット外周領域において蛍光分子の緩和が行われる。長波長のパルスの光傷害性を可能な限り小さく留めるためには、パルス幅が凡そ100ピコ秒以上の範囲に含まれるようにすべきである。この長波長レーザパルスは、第2のレーザダイオードから得ることができるが、例えば初めから相応のパルス幅を有するか或いは短い長波長レーザパルスのパルス幅拡大によって生成される。パルス幅拡大は、二段階プロセスを用いると最も良く行うことができる。この二段階プロセスでは、まず、短いパルスをしてガラス棒(Glasstab)を通過させることにより、パルス幅を数ピコ秒に広げる。次に、このレーザパルスをして長いグラスファイバを通過させることにより、パルス幅は更に広げられる。なお、ガラス棒の代わりに、その内部でパルスが全反射等の完全反射によって何回か反射されることにより進行光路長が長くなるよう構成されたガラス体(Glaskoerper)を使用することも可能である。レーザパルスを拡幅する他の手段としては、回折格子の使用が挙げられる。
【0013】
合焦スポット外周領域における蛍光分子の緩和を達成するために、緩和点像関数(Abregungs-Punktbildfunktion)が特別に形成される必要がある。このため、長波長レーザビームの光路に配される位相フィルタが使用される。位相フィルタは、緩和ビームの波面を位置依存的に(ortabhaengig)変化する。位相フィルタは、現在では、透明な構造体(例えばフッ化マグネシウム)をガラス基板上に配することによって製造されている。透明構造体とガラス基板とを透過する光は、ガラス基板のみを透過する光と比べると、透明構造体の厚さと光の波長に依存する位相の遅れが生じる。例えば異なる複数の蛍光着色物質を使用する場合にみられるように、異なる複数の波長を使用する場合、各波長に対し、それぞれ1つの別の位相フィルタを使用する必要がある。更に、例えばグラスファイバでパルス幅拡開を行う場合にみられるような緩和のために広い波長スペクトルを使用する場合、或いはフォトニック結晶ファイバ(フォトニックバンドギャップファイバ)を使用する場合、位相フィルタによる位相シフトが、選択された波長範囲の全ての波長に対して同一ではないという欠点もある。このため、緩和PSF(Point-spread-function:点像分布関数)の形態は理想から外れるため、通常、幾何学的な合焦スポットの位置において高解像化(hochaufloesenden)PSFのシャープな最大値に蛍光の望ましくない減衰も生じる。
【0014】
分解能を向上する多くの方法のために、位相フィルタが必要とされる。これは、とりわけSTED顕微鏡法、STED−4Pi顕微鏡法及びアップコンバージョン・ディプリーション顕微鏡法(up-conversion-depletion-Mikroskopie)に当てはまる。位相フィルタは、それ自身を通過する波面をその位置に依存して位相を変化する。通常、この位相フィルタは、ガラス基板上に構造体(Strukturen)を配することによって作成されるため、通過する波面には、ビーム径に関して位置依存的な位相遅れが生じる。このような位相フィルタの構成に基づいて、生じた位相シフトは光の波長に依存する。しかしながら、このようなことは、通常望まれない。というのは、このため、使用される個々の波長に対しそれぞれ1つの別の位相フィルタが必要となるからである。
【0015】
大きい位置分解能で試料の試料点を光学的に測定するための走査顕微鏡であって、試料のエネルギー状態の励起に適する励起光ビームの放射手段(第1レーザ)及び該励起光ビームによって励起された試料の試料点における誘導放射を引き起こすための誘導光ビームの放射手段(第2レーザ)を含む光源と、該誘導放射光を検出するための検出器とを有する走査顕微鏡を記載している文献が存在する(上掲特許文献2参照)。この顕微鏡では、励起光ビームと誘導光ビームは、合焦(スポット)領域におけるそれらの強度分布が部分的に重なり合うように配される。この走査顕微鏡は、誘導光ビームを形成する光学要素(複数)が、顕微鏡光路において位置調整可能な少なくとも1つのモジュールにまとめられることを特徴としている。この顕微鏡は、その一例として、誘導光ビームの合焦スポットの形状に影響を与える手段を備えたものが記載されている。
【0016】
分解能を向上するためにSTED顕微鏡法に類似する方法を記載した文献も存在する(上掲非特許文献1参照)。いわゆるアップコンバージョン・ディプリーション顕微鏡法では、励起状態は、STED顕微鏡法の場合と同じ様に誘導されて緩和されるのではなく、更なる励起により他の状態に遷移される。
【0017】
本発明の第1の課題は、殆ど波長に依存しない合焦スポット(ないし集光スポット)の形成を可能とする光学装置を提供することである。
【0018】
本発明の第2の課題は、とりわけ、波長に依存しない合焦スポットの形成を可能とする、大きな位置分解能で試料の試料点を光学的に測定するためのラスタ顕微鏡を提供することである。
【0019】
本発明の第3の課題は、殆ど波長非依存性の位相フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記第1の課題を解決するために、本発明の第1の視点により、光線束を焦点面に合焦する合焦光学系と、該光線束の合焦スポット(ないし集光スポット)の形状形成手段とを有するとともに、該合焦スポット形状形成手段が該光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成された光学装置が提供される。この光学装置において、前記合焦スポット形状形成手段は、第1の境界面と第2の境界面とを有すること、及び前記第1の境界面は、前記光線束の前記第1の部分を反射し、かつ前記第2の境界面は、前記光線束の前記第2の部分を反射することを特徴とする(形態1・基本構成1)。
【0021】
上記第2の課題を解決するために、本発明の第2の視点により、光線束を焦点面に合焦する合焦光学系と、該光線束の合焦スポットの形状形成手段とを有するとともに、該合焦スポット形状形成手段が該光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成されたラスタ顕微鏡が提供される。このラスタ顕微鏡において、前記合焦スポット形状形成手段は、第1の境界面と第2の境界面とを有すること、及び前記第1の境界面は、前記光線束の前記第1の部分を反射し、かつ前記第2の境界面は、前記光線束の前記第2の部分を反射するとともに、該第1の境界面は、第1の材料と第2の材料との間の境界面であり、かつ該第2の境界面は、該第1の材料と第3の材料との間の境界面であることを特徴とする(形態12・基本構成2)。
【0022】
上記第3の課題を解決するために、本発明の第3の視点により、光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成された位相フィルタが提供される。この位相フィルタは、第1の境界面と第2の境界面とを有すること、及び前記第1の境界面が、前記光線束の前記第1の部分を反射し、かつ前記第2の境界面が、前記光線束の前記第2の部分を反射するとともに、該第1の境界面が、第1の材料と第2の材料との間の境界面であり、かつ該第2の境界面が、該第1の材料と第3の材料との間の境界面であることを特徴とする(形態22・基本構成3)。
【発明の効果】
【0023】
本発明の各独立請求項により、上記課題に対応した効果がそれぞれ達成される。即ち、本発明の光学装置は、殆ど波長に依存することなく合焦スポットを(所望の形状に)形成することができる(基本構成1)。更に、本発明のラスタ顕微鏡は、殆ど波長に依存することなく合焦スポットを(所望の形状に)形成することができる(基本構成2)。更に、本発明の位相フィルタは、殆ど波長に依存することなく合焦スポットを(所望の形状に)形成することができる(基本構成3)。
更に、各従属請求項により、付加的な効果が後述のとおりそれぞれ達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を示すが、これらは従属請求項の対象でもある。
(形態1) 上掲。
(形態2) 上記形態1の光学装置において、前記第1の境界面は、第1の材料と第2の材料との間の境界面であり、かつ前記第2の境界面は、該第1の材料と第3の材料との間の境界面であることが好ましい。
(形態3) 上記形態1又は2の光学装置において、前記光線束の前記第1の部分の及び/又は前記第2の部分の前記反射は、全反射等の完全反射を含むことが好ましい。
(形態4) 上記形態2又は3の光学装置において、前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つは、低分散能を有することが好ましい。
(形態5) 上記形態2〜4の光学装置において、前記第3の材料は、1種類のガス又はとりわけ空気等の混合ガスから構成されることが好ましい。
(形態6) 上記形態1〜5の光学装置において、前記位相シフトは、前記光線束の波長λに殆ど依存しないこと、及び前記位相シフトは、任意の波長成分に対し、λ/2又はλ/4であることが好ましい。
(形態7) 上記形態1〜6の光学装置において、前記光線束は、複数の波長成分を有すること、及び前記位相シフトは、任意の波長成分に対し、λ/2又はλ/4であることが好ましい。
(形態8) 上記形態1〜7の光学装置において、前記光線束は、前記反射により、s偏光化されることが好ましい。
(形態9) 上記形態1〜8の光学装置において、前記位相シフトは、前記反射の角度を変化することにより調整可能であることが好ましい。
(形態10) 上記形態9の光学装置において、前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つを回動ないし旋回するための回動装置を有することが好ましい。
(形態11) 上記形態1〜10の光学装置において、前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つは、サブストラクチャ(Substruktur)を有することが好ましい。
(形態12) 上掲。
(形態13) 上記形態12のラスタ顕微鏡において、前記光線束の前記第1の部分の及び/又は前記第2の部分の前記反射は、全反射等の完全反射を含むことが好ましい。
(形態14) 上記形態12又は13のラスタ顕微鏡において、前記第2の材料は、前記第1の材料上の被膜であることが好ましい。
(形態15) 上記形態12〜14のラスタ顕微鏡において、前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つは、低分散能を有することが好ましい。
(形態16) 上記形態12〜15のラスタ顕微鏡において、前記第3の材料は、1種類のガス又はとりわけ空気等の混合ガスから構成されることが好ましい。
(形態17) 上記形態12〜16のラスタ顕微鏡において、前記光線束は、前記反射により、s偏光化されることが好ましい。
(形態18) 上記形態12〜17のラスタ顕微鏡において、前記位相シフトは、前記反射の角度を変化することにより調整可能であることが好ましい。
(形態19) 上記形態12〜18のラスタ顕微鏡において、試料は、試料領域において、励起光線束によって光学的に励起されることが好ましい。
(形態20) 上記形態19のラスタ顕微鏡において、前記光線束は、前記励起された試料領域又は前記励起された試料領域の部分領域において、誘導放射を引き起こすことが好ましい。
(形態21) 上記形態19のラスタ顕微鏡において、前記光線束は、前記励起された試料領域又は前記励起された試料領域の部分領域において、前記試料の更なる励起、とりわけ既に励起されている状態の更なる励起を引き起こすことが好ましい。
(形態22) 上掲。
(形態23) 上記形態22の位相フィルタにおいて、前記光線束の前記第1の部分の及び/又は前記第2の部分の前記反射は、全反射等の完全反射を含むことが好ましい。
(形態24) 上記形態22の位相フィルタにおいて、前記第2の材料は、前記第1の材料上の被膜であることが好ましい。
(形態25) 上記形態22〜24の位相フィルタにおいて、前記第1の材料は、低分散能を有することが好ましい。
(形態26) 上記形態22の位相フィルタにおいて、前記第1の材料は、プリズム又は斜方六面体又は直六面体等の三次元幾何構造体であることが好ましい。
(形態27) 上記形態26の位相フィルタにおいて、前記三次元幾何構造体の(1つの)面の一部は前記第2の材料と境を接し、かつ該面の残部(該面の当該一部以外の残余の部分)の少なくとも一部は前記第3の材料と境を接することが好ましい。
(形態28) 上記形態22〜27の位相フィルタにおいて、前記第3の材料は、1種類のガス又はとりわけ空気等の混合ガスから構成されることが好ましい。
(形態29) 上記形態22〜28の位相フィルタにおいて、前記位相シフトは、前記光線束の波長λに殆ど依存しないこと、及び前記位相シフトは、凡そλ/2又はλ/4であることが好ましい。
(形態30) 上記形態22〜29の位相フィルタにおいて、前記光線束は、複数の波長成分を有すること、及び前記位相シフトは、任意の波長成分に対し、λ/2又はλ/4であることが好ましい。
(形態31) 上記形態22〜30の位相フィルタにおいて、前記位相シフトは、前記反射の角度を変化することにより調整可能であることが好ましい。
(形態32) 上記形態31の位相フィルタにおいて、前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つを回動ないし旋回するための回動装置を有することが好ましい。
【0025】
本発明により、光波は、所定条件の下での境界面(複数)における反射の際に位相シフトを生じることが確認された。本発明は、この位相シフトを利用するものである。この位相シフトは、主として、境界面における複数の材料(媒質)の屈折率と反射角に依存する。屈折率の波長に対する依存性に基づいて、位相シフトの波長に対する依存性も生じる。尤も、この(後者の)依存性は、関連する材料(媒質)を適切に選択することにより極めて小さくすることができる。従って、境界面(複数)における反射によって、殆ど波長非依存性の位相シフトを生成することができる。境界面を形成する少なくとも1つの材料(媒質)の構造ないし形状(Strukturieren)によって、ビーム径に関し位置的に複数の異なる屈折率状態が生成される。換言すると、ビーム径方向(半径方向)の位置に対応して、異った屈折率状態のリング状領域(複数)が生成される。このため、殆ど波長非依存性の位相フィルタを作成することができる。
【0026】
第1の境界面が、第1の材料(媒質)と第2の材料(媒質)との間の境界面として構成され、かつ第2の境界面が、第1の材料と第3の材料(媒質)との間の境界面として構成されると都合がよい。
【0027】
好ましい一実施形態では、光線束の第1の部分の及び/又は第2の部分の反射は、全反射(Totalreflexion)等の完全反射を含む。金属構造体に入射しない光が全反射によって境界面において反射され、その反射の際に光損失が生じないような反射角αが選択されると都合がよい。
【0028】
とりわけ好ましい一実施形態では、第2の材料は、第1の材料上の被膜(コーティング)として構成される。とりわけ、第2の材料は、金属を含むことができる。とりわけ有利な一実施形態では、第2の材料は、金属被膜を含む。
【0029】
第1の材料は、ガラス、透明プラスチック及び結晶(性物質)の少なくとも1つから構成されると都合がよい。第1の材料、第2の材料及び第3の材料の少なくとも1つは、波長依存性をできるだけ小さく留めるために(そのために寄与しうる程度の)低分散性を有すると都合がよい。
【0030】
第1の材料は、例えば、三次元幾何構造体、とりわけプリズム又は斜方六面体(Rhomboeder)又は直六面体(Quader)として構成することができる。光ビームは、空間的スペクトル拡開を回避するために、90°の範囲の角度で(即ち入射面又は出射面に対しほぼ垂直に)第1の材料に入射及び/又は出射するのが好ましい。
【0031】
好ましい一変形形態では、(第1の材料としての)三次元幾何構造体の(1つの)面の一部が、第2の材料と境を接し、該面の残部(該面の第2の材料に接する当該一部以外の残余の部分)の少なくとも一部が第3の材料と境を接するよう構成される。
【0032】
例えば、第3の材料は、1種類のガス又はとりわけ空気等の混合ガスとして構成することができる。
【0033】
位相シフトは、光線束の波長λに殆ど依存しないと都合がよく、凡そλ/2又はλ/4が好ましい。光線束は、複数の波長を有しうる。従って、位相シフトは、個々の波長成分に対しλ/2又はλ/4であると都合がよい。
【0034】
光線束は、反射に関して、s偏光化されると都合がよい。s偏光化された光を使用することにより、通常、p偏光化された光を使用する場合よりより大きな位相差Δφを生成することができる。従って、通常、s偏光化光の使用は、p偏光化光の使用よりも優先されるべきである。
【0035】
とりわけ好ましい一変形形態では、位相シフトは、反射角の変化によって調整することができる。このため、例えば、第1の材料、第2の材料及び第3の材料の少なくとも1つを回動ないし旋回する回動装置を備えることができる。光線束の入射方向を例えば傾動ミラー装置によって変化させることも可能である。
【0036】
更なる一実施形態では、位相フィルタは、多段階プロセスによって位相シフトを生成する。このため、光は、複数の境界面で複数回反射されたのち、第1の材料から出射する。また、光線束又は光線束の部分(複数)の反射を行う更なる境界面(複数)を設けることも可能である。
【0037】
構造及び材料は、個々の境界面毎にそれぞれ異なるものとすることができる。境界面の構造は、複数の異なる材料から構成することができる。密度が可変でマイクロスコピックに(微視的に)小さい複数種類の物質(ないし複数の異種の(heterogeneous)物質)から構成されるサブストラクチャ(Substrukturen)によって位相シフトを生成する構造を構成することも有利であり得る。その意味で、第1の材料、第2の材料及び第3の材料の少なくとも1つが、サブストラクチャを有することができる。
【0038】
(形状)形成された合焦スポットが中空合焦スポット(Hohlfokus)であるか、又は合焦スポットの形状が環状(ドーナッツ状)構造を有すると都合がよい。これらのスポット形状は、とりわけ顕微鏡法に対し、特に良好に使用することができる。
【0039】
本発明の光学装置又は本発明の位相フィルタは、ラスタ顕微鏡法に、とりわけSTED顕微鏡法又はアップコンバージョン・ディプリーション顕微鏡法又は4PI顕微鏡法に有利に使用することができる。本発明の位相フィルタは、位相差顕微鏡法にとりわけ有利に使用することができる。
【0040】
本発明のラスタ顕微鏡は、(1つの)試料を(1つの)試料領域において励起光線束によって光学的に励起すると都合がよい。好ましい一変形形態では、形状形成された合焦スポットを有する光線束は、励起された試料領域において又は励起された試料領域の部分領域において、誘導放射を引き起こす。他の一変形形態では、光線束は、励起された試料領域において又は励起された試料領域の部分領域において、試料の更なる励起、とりわけ既に励起された状態の更なる励起を引き起こす。
【0041】
ラスタ顕微鏡は、共焦点ラスタ顕微鏡として、とりわけSTED顕微鏡又はアップコンバージョン・ディプリーション顕微鏡又は4PI顕微鏡として構成されると都合がよい。
【0042】
以下に、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例は、発明の理解の容易化のためのものであり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等の適用を排除することは意図しない。また、特許請求の範囲に付した図面参照符号も発明の理解の容易化のためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図しない。これらの点に関しては、補正・訂正後においても同様である。
【実施例】
【0043】
図1は、本発明の位相フィルタの一例を示す。この位相フィルタは、ガラスプリズム3として構成された第1の材料(媒質)1を含む。ガラスプリズム3の1つの面11の一部には、第2の材料(媒質)5が金属被膜7として配されている(蒸着ないし析着されている)。金属被膜7とガラスプリズム3との間には第1の境界面9が形成されている。ガラスプリズム3の面11の被膜されていない部分は、第3の材料(媒質)13、この実施例では周囲の空気に対する第2の境界面15を形成している。ガラスプリズム3の面11に入射する光線束19の第1の部分17は、第1の境界面9によって反射され、光線束19の第2の部分21は、第1の境界面9を取り囲む第2の境界面15によって反射される。第1の境界面9ないし第2の境界面15における屈折率変化:ガラス/金属及びガラス/空気が異なるため、光線束19のビーム径に関して位置依存的な位相シフトが生じる。この位相シフトは、とりわけ、面11に対する光線束19の入射角αに依存する。図示の位相フィルタは、ガラスプリズム3をその第1の境界面9及び第2の境界面15と共に回動することにより(面11に対する)入射角αを変化することができるように構成された回動テーブル23を含む。図2は、ガラスプリズム3の面11と、該面11に入射する光線束19の投影断面を示す。光線束19の第1の部分17は、第1の境界面に入射し、光線束19の第2の部分21は、第2の境界面15に入射する。
【0044】
図3は、ガラス/空気境界面(第2の境界面15)における内部反射に関するs偏光化された光の位相シフトφ及びガラス/金属境界面(第1の境界面9)における内部反射に関するs偏光化された光の位相シフトφと、反射角αとの関係を示す。2つの境界面ガラス/空気及びガラス/金属においてそれぞれ反射された光波間の位相シフト差Δφは、反射角αを適切に選択することにより、大きな範囲にわたって自由に調整することができる。反射角αは、金属構造体に入射しない光が全反射によって境界面において反射されることにより反射に際して光損失が生じないように選択されると都合がよい。
【0045】
図4は、材質BK7のガラスに関する全反射の際の位相シフトと波長との関係を示す。図示のグラフから明らかなとおり、500nm〜800nmの波長範囲における位相シフトの波長に対する依存性は、凡そ0.05ラジアン(rad)しかないこと、即ち非常に小さいことが分かる。
【0046】
図5は、本発明の位相フィルタの他の一例を示す。この位相フィルタは、ガラスプリズム25から構成される。ガラスプリズム25は、第1の境界面9及び第2の境界面15を有する第1の面27を有する。入射光線束19は、第1の面27において反射され、第4の材料(媒質)31と第5の材料(媒質)33が各別に被膜として配された第2の面29に到達する。光線束19は、第2の面29においても反射される。第4の材料31は、ガラスプリズム25と共に第3の境界面35を形成し、第5の材料33は、ガラスプリズム25と共に第4の境界面37を形成する。2つの境界面35及び37は、ガラスプリズム25と周囲空気との間のガラス/空気移行部として構成される第5の境界面39によって取り囲まれる。光線束19の内部での位相シフトは、この位相フィルタの場合、多段階プロセスによって、即ち面27及び29における計2回の反射によって生成される。
【0047】
図6は、光線束19を合焦する合焦光学系41と、光線束19の合焦スポット45の形状形成手段43とを有する本発明の光学装置の一例を示す。合焦スポット45の形状形成手段43は、本質的に、図1に示した位相フィルタを含み、合焦光学系41の焦点面に対するフーリエ面47の領域に配される。合焦スポット45の形状は、位相フィルタが光線束19に影響を与えることにより生じた位相シフトのフーリエ変換によって生成される。
【0048】
図7は、励起光線束51を放射する第1の光源49を有する本発明のラスタ顕微鏡の一例を示す。第1の光源49は、パルスレーザ53として、即ちパルス発振するダイオードレーザとして構成される。励起光線束51は、励起ピンホール絞り55を通過した後、メインビームスプリッタ57に入射し、メインビームスプリッタ57は、カルダン式に懸架されたスキャンミラー61を有するビーム偏向装置59に向けて励起光線束51を偏向する。更に、ラスタ顕微鏡は、第1の光源49と同期して作動するモード結合型(modengekoppelter)チタンサファイアレーザとして構成された第2の光源63を有する。第2の光源63は、光線束19(以下「誘導光線束67」という。)を放射する。誘導光線束67は、図1に示した位相フィルタと同様に構成された位相フィルタ69に入射する。位相フィルタ69は、ガラスプリズム3から構成され、第1の境界面9及び第2の境界面15を有する。位相フィルタ69から出射した誘導光線束67は、偏向ミラー71によってダイクロイックビームスプリッタ73へ偏向される。ダイクロイックビームスプリッタ73は、励起光線束51と誘導光線束67とを共通の光路に差込む。誘導光線束67もまたメインビームスプリッタ57によってビーム偏向装置59へ偏向される。ビーム偏向装置59は、励起光線束51及び誘導光線束67を、スキャン光学系75、鏡胴光学系77及び合焦光学系79、即ち顕微鏡対物レンズ81を介して、共通に(一緒に)、試料83上に導くか又は試料83を通過させる。励起光線束51の合焦スポットは、試料を(1つの)試料点において光学的に励起し、他方、誘導光線束67の合焦スポットは、励起された試料領域(試料点領域)の外周領域を誘導ないし刺激し緩和する(放射させて基底状態に戻す)。このため、誘導光線束の合焦スポットは適合化されている、即ち中空の合焦スポットとして形状形成される。位相フィルタ69は、この一変形例では、顕微鏡対物レンズ81の焦点面の共役面(フーリエ面)に配されている。試料から出射した検出光85は、顕微鏡対物レンズ81、鏡胴光学系77、スキャン光学系75を介してビーム偏向装置59に到達し、ビーム偏向装置59によってメインビームスプリッタ57へ偏向され、メインビームスプリッタ57とその下流に配された検出ピンホール絞り87とを通過した後、マルチバンドディテクタ(Multibanddetektor)91として構成された検出器89に到達する。検出器89は、検出光85の光強度に比例する電気信号を生成し、この電気信号は、画像表示のために、ビーム偏向装置59の位置信号と共に処理ユニット(不図示)へ伝送される。
【0049】
図示のラスタ顕微鏡は、種々異なる誘導波長特性に簡単に調整する(切換える)ことができるので、異なる試料を対象として作動することができる。
【0050】
本発明の有利な一実施例は、以下のような特徴を有する。即ち、本発明の光学装置の第2の材料が、第1の材料の被膜として構成される。第2の材料は、金属を含む。第2の材料は金属被膜を含み得る。第1の材料は、ガラス、透明プラスチック及び結晶(性物質)の少なくとも1つから構成される。第1の材料は、三次元幾何構造体、とりわけプリズム又は斜方六面体又は直六面体を形成する。第1の材料としての三次元構造体の1つの面の一部は、第2の材料と境を接し、該面の残部(該面の当該一部以外の残余の部分)の少なくとも一部は、第3の材料と境を接する。
【0051】
光線束又は光線束の部分(複数)を反射する更なる境界面を含むことも可能である。
【0052】
形状形成された合焦スポットは、中空スポット(Hohlfokus)であるか又は環状(ないしドーナッツ状)形態を有することが好ましい。
【0053】
本発明の光学装置は、ラスタ顕微鏡法、とりわけSTED顕微鏡法又はアップコンバージョン・ディプリーション顕微鏡法又は4PI顕微鏡法において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の位相フィルタの一例。
【図2】本発明の位相フィルタの一例の境界面(複数)。
【図3】s偏光化光の位相シフトの一例。
【図4】ガラスに関する全反射の際の位相シフトの一例。
【図5】本発明の位相フィルタの他の一例。
【図6】本発明の光学装置の一例。
【図7】本発明のラスタ顕微鏡の一例。
【符号の説明】
【0055】
1 第1の材料
3 ガラスプリズム
5 第2の材料
7 金属被膜
9 第1の境界面
11 ガラスプリズム3の(反射)面
13 第3の材料
15 第2の境界面
17 光線束19の第1の部分
19 光線束
21 光線束19の第2の部分
23 回動テーブル
25 ガラスプリズム
27 ガラスプリズム25の第1の面
29 ガラスプリズム25の第2の面
31 第4の材料
33 第5の材料
35 第3の境界面
37 第4の境界面
39 第5の境界面
41 合焦光学系
43 合焦スポット形状形成手段
45 合焦スポット
47 フーリエ面
49 第1の光源
51 励起光線束
53 パルスレーザ
55 励起絞り
57 メインビームスプリッタ
59 ビーム偏向(走査)装置
61 スキャンミラー
63 第2の光源
65 モード結合チタンサファイアレーザ
67 誘導光線束
69 位相フィルタ
71 偏向ミラー
73 ダイクロイックビームスプリッタ
75 スキャン光学系
77 鏡胴光学系
79 合焦光学系
81 顕微鏡対物レンズ
83 試料
85 検出光
87 検出ピンホール絞り
89 検出器
91 マルチバンドディテクタ

φ1 第2の境界面15における内部反射によるs偏光光の位相シフト
φ2 第1の境界面9における内部反射によるs偏光光の位相シフト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線束を焦点面に合焦する合焦光学系と、該光線束の合焦スポットの形状形成手段とを有するとともに、該合焦スポット形状形成手段が該光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成された光学装置であって、
前記合焦スポット形状形成手段は、第1の境界面と第2の境界面とを有すること、及び
前記第1の境界面は、前記光線束の前記第1の部分を反射し、かつ前記第2の境界面は、前記光線束の前記第2の部分を反射すること
を特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記第1の境界面は、第1の材料と第2の材料との間の境界面であり、かつ前記第2の境界面は、該第1の材料と第3の材料との間の境界面であること
を特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記光線束の前記第1の部分の及び/又は前記第2の部分の前記反射は、全反射を含むこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つは、低分散能を有すること
を特徴とする請求項2又は3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第3の材料は、1種類のガス又は混合ガスないし空気から構成されること
を特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記位相シフトは、前記光線束の波長λに殆ど依存しないこと、及び
前記位相シフトは、任意の波長成分に対し、λ/2又はλ/4であること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記光線束は、複数の波長成分を有すること、及び
前記位相シフトは、任意の波長成分に対し、λ/2又はλ/4であること
を特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記光線束は、前記反射により、s偏光化されること
を特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記位相シフトは、前記反射の角度を変化することにより調整可能であること
を特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つを回動ないし旋回するための回動装置を有すること
を特徴とする請求項9に記載の光学装置。
【請求項11】
前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つは、サブストラクチャを有すること
を特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項12】
光線束を焦点面に合焦する合焦光学系と、該光線束の合焦スポットの形状形成手段とを有するとともに、該合焦スポット形状形成手段が該光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成されたラスタ顕微鏡において、
前記合焦スポット形状形成手段は、第1の境界面と第2の境界面とを有すること、及び
前記第1の境界面は、前記光線束の前記第1の部分を反射し、かつ前記第2の境界面は、前記光線束の前記第2の部分を反射するとともに、該第1の境界面は、第1の材料と第2の材料との間の境界面であり、かつ該第2の境界面は、該第1の材料と第3の材料との間の境界面であること
を特徴とするラスタ顕微鏡。
【請求項13】
前記光線束の前記第1の部分の及び/又は前記第2の部分の前記反射は、全反射を含むこと
を特徴とする請求項12に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項14】
前記第2の材料は、前記第1の材料上の被膜であること
を特徴とする請求項12又は13に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項15】
前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つは、低分散能を有すること
を特徴とする請求項12〜14の何れか一項に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項16】
前記第3の材料は、1種類のガス又は混合ガスないし空気から構成されること
を特徴とする請求項12〜15の何れか一項に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項17】
前記光線束は、前記反射により、s偏光化されること
を特徴とする請求項12〜16の何れか一項に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項18】
前記位相シフトは、前記反射の角度を変化することにより調整可能であること
を特徴とする請求項12〜17の何れか一項に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項19】
試料は、試料領域において、励起光線束によって光学的に励起されること
を特徴とする請求項12〜18の何れか一項に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項20】
前記光線束は、前記励起された試料領域又は前記励起された試料領域の部分領域において、誘導放射を引き起こすこと
を特徴とする請求項19に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項21】
前記光線束は、前記励起された試料領域又は前記励起された試料領域の部分領域において、前記試料の更なる励起、ないし既に励起されている状態の更なる励起を引き起こすこと
を特徴とする請求項19に記載のラスタ顕微鏡。
【請求項22】
光線束の第1の部分と第2の部分との間に位相シフトを生成するよう構成された位相フィルタであって、
第1の境界面と第2の境界面とを有すること、及び
前記第1の境界面は、前記光線束の前記第1の部分を反射し、かつ前記第2の境界面は、前記光線束の前記第2の部分を反射するとともに、該第1の境界面は、第1の材料と第2の材料との間の境界面であり、かつ該第2の境界面は、該第1の材料と第3の材料との間の境界面であること
を特徴とする位相フィルタ。
【請求項23】
前記光線束の前記第1の部分の及び/又は前記第2の部分の前記反射は、全反射を含むこと
を特徴とする請求項22に記載の位相フィルタ。
【請求項24】
前記第2の材料は、前記第1の材料上の被膜であること
を特徴とする請求項22に記載の位相フィルタ。
【請求項25】
前記第1の材料は、低分散能を有すること
を特徴とする請求項22〜24の何れか一項に記載の位相フィルタ。
【請求項26】
前記第1の材料は、プリズム又は斜方六面体又は直六面体等の三次元幾何構造体であること
を特徴とする請求項22に記載の位相フィルタ。
【請求項27】
前記三次元幾何構造体の1つの面の一部は前記第2の材料と境を接し、かつ該面の残部の少なくとも一部は前記第3の材料と境を接すること
を特徴とする請求項26に記載の位相フィルタ。
【請求項28】
前記第3の材料は、1種類のガス又は混合ガスないし空気から構成されること
を特徴とする請求項22〜27の何れか一項に記載の位相フィルタ。
【請求項29】
前記位相シフトは、前記光線束の波長λに殆ど依存しないこと、及び
前記位相シフトは、凡そλ/2又はλ/4であること
を特徴とする請求項22〜28の何れか一項に記載の位相フィルタ。
【請求項30】
前記光線束は、複数の波長成分を有すること、及び
前記位相シフトは、任意の波長成分に対し、λ/2又はλ/4であること
を特徴とする請求項22〜29の何れか一項に記載の位相フィルタ。
【請求項31】
前記位相シフトは、前記反射の角度を変化することにより調整可能であること
を特徴とする請求項22〜30の何れか一項に記載の位相フィルタ。
【請求項32】
前記第1の材料、前記第2の材料及び前記第3の材料の少なくとも1つを回動ないし旋回するための回動装置を有すること
を特徴とする請求項31に記載の位相フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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