説明

低温殺虫方法及び低温殺虫設備

【課題】過剰に低温殺虫処理することなく、しかも確実に被処理物全体を低温殺虫処理することが可能であり、さらに復温時の結露等による被処理物の品質劣化が防止される低温殺虫方法及び低温殺虫設備を提供する。
【解決手段】低温殺虫設備は、被処理物1を低温殺虫処理するための低温貯蔵庫2と、被処理物1を復温させるための常温の室3と、被処理物1を搬送するための搬送室4とを有している。被処理物1を低温殺虫処理するに当っては、収納体1aを通して該被処理物1の内部まで温度センサを差し込み、コンベヤ22,23,26で低温貯蔵庫2内に搬送する。温度センサによる被処理物1の内部温度の検出信号は無線を介して制御装置(監視装置)に送信される。低温殺虫処理後の被処理物1をコンベヤ26,23,24,36で低温貯蔵庫2から常温の室3へ搬出し、復温させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温殺虫方法及び低温殺虫設備に関する。なお本発明における殺虫には、成虫、幼虫などの殺虫だけでなく、卵の孵化能力を喪失させることも包含される。
【背景技術】
【0002】
食品や農産物に付着した虫を低温貯蔵庫に保管して低温殺虫処理することは周知であり、下記非特許文献1には虫別に殺虫に適する温度が示されている。また、下記特許文献1には、低温貯蔵庫の低温度域で温度及び時間を周期的に変化させることが記載されている。
【特許文献1】特許第3560242号
【非特許文献1】Collection Forum,8(2),1992,pp41-67
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
農作物や生薬などは布袋、紙袋、段ボールなどの収納体に収納されて搬送、あるいは取り引きされる。そのため、これらを低温殺虫処理する場合には、収納体に収納された農産物等の被処理物の深部を含めた全体が十分に低温に晒されることが必要である。
【0004】
従来は、収納体内の被処理物の奥深い部分の温度までは検知できないところから、確実に被処理物の全体を殺虫するために必要以上に長時間低温に保持せざるを得ず、その結果、低温殺虫処理効率が低下していた。
【0005】
また、低温殺虫処理された被処理物は、そのまま常温の通常環境下で復温させると、結露を生じるため、被処理物の品質劣化を起こすおそれがある。
【0006】
本発明は、過剰に低温殺虫処理することなく、しかも確実に被処理物全体を低温殺虫処理することが可能であり、且つ結露による品質劣化が防止された低温殺虫方法及び低温殺虫設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の低温殺虫方法は、低温貯蔵庫内にて被処理物を冷却することにより被処理物の殺虫処理を行う低温殺虫方法において、被処理物が収納体内に収納されており、該収納体を通して被処理物内に温度センサを配置し、該温度センサで被処理物の内部の温度を検知し、予め定められた冷却負荷以上の冷却負荷を被処理物に与えることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の低温殺虫方法は、請求項1において、前記温度センサの検出温度を無線を介して監視手段へ送信することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の低温殺虫方法は、請求項1又は2において、殺虫処理された被処理物の収納体を前記低温貯蔵庫から乾燥雰囲気の常温の室へ移送し、被処理物の温度を常温に復した後、該室から取り出すことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の低温殺虫方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記低温貯蔵庫内に、前記収納体を載せたパレットを搬送するコンベヤが設置されており、コンベヤの移送距離に基づいて収納体の現在位置を検知することを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の低温殺虫設備は、低温貯蔵庫と、該低温貯蔵庫内に設置された、低温殺虫処理される被処理物の収納体を載せたパレットを搬送するためのコンベヤと、該被処理物内に差し込まれた温度センサからの無線信号を受信するための受信器とを備えてなるものである。
【0012】
請求項6の低温殺虫設備は、請求項5において、該低温貯蔵庫に隣接して設置された、被処理物を復温させるための常温の室と、被処理物の結露を防ぐために該常温の室内の雰囲気を除湿する除湿手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
袋や箱などの収納体内に収納された農産物、生薬などの被処理物内の深部に温度センサを配置し、該被処理物深部の温度を検出することにより、被処理物の全体に必要にして十分な冷却負荷(温度と時間)を与えることができる。従って、被処理物を過剰に長時間冷却したり、逆に深部の冷却が不十分となって殺虫処理が不完全になったりすることが確実に防止される。
【0014】
この温度センサの検出温度を無線によって送信することにより、多数の被処理物収納体を低温貯蔵庫内に保管する場合でもリードハーネスの絡まりなどが無い。また、被処理物収納体を低温貯蔵庫にスムーズに出し入れすることができる。
【0015】
この低温貯蔵庫内にコンベヤを設置し、収納体をパレットに載せて該コンベヤにて搬送することにより、収納体の出し入れを容易に行うことができる。この場合、コンベヤの移送距離を検知し、これに基づいて収納体の現在位置を検知することができる。そのため、多数の収納体を低温貯蔵庫内に保管している場合でも、特定の収納体を低温貯蔵庫から迅速に取り出すことができる。
【0016】
低温貯蔵庫で冷却殺虫処理された被処理物は、そのまま大気雰囲気に取り出したのでは、結露により湿ってしまう。そこで、低温貯蔵庫から一旦、乾燥した雰囲気の室に移して常温に復温させるのが好ましい。
【0017】
本発明では、被処理物としては生薬、香辛料、殻類、その他の農産物や食品などが例示されるが、これに限定されない。
【0018】
被処理物の冷却負荷は被処理物の種類によって異なる。被処理物の深部まで目標とする低温にまで達するのに要する時間も、被処理物の種類や、嵩(量)、収納密度、収納体の種類によって異なる。本発明では、被処理物の深部温度を温度センサで検出するので、これらの条件が種々別々であっても、被処理物の深部まで確実に必要な冷却負荷を与えることができる。
【0019】
収納体としては、麻などの布袋、紙袋、合成繊維の袋、合成繊維を箱状に賦形したケース、段ボール、木箱などが例示されるが、これらに限定されない。
【0020】
収納体内の被処理物の量は特に限定されないが、例えば数kg〜数百kg程度とされる。タイソウ、ハッカなどの生薬を麻布袋に数十〜数百kg収納した場合、−40℃の低温貯蔵庫内に収容しても深部が−20℃に達するまでは数時間〜数日程度要する。
【0021】
コンベヤによって搬送されるパレットは、一段積みであってもよく、多段積みされてもよい。多段積みする場合、パレットの4隅から支柱を立設し、この支柱の上に上段側パレットを載設してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
第1図は実施の形態に係る低温殺虫設備の平面図、第2図は第1図のII−II線に沿う断面(立面)図であり、第3図はこの低温殺虫設備の低温貯蔵庫の平面図である。
【0024】
この低温殺虫設備は、食品や農産物等の被処理物1を低温殺虫処理するための低温貯蔵庫2と、低温殺虫処理された該被処理物1を復温させるための常温の室3と、低温処理前の被処理物1を低温貯蔵庫2内へ搬入したり、低温処理後の被処理物1を低温貯蔵庫2から常温の室3へ搬出したりするための搬送室4とを有している。これらの低温貯蔵庫2、常温の室3及び搬送室4は相互に隣接して設置されている。
【0025】
この低温貯蔵庫2を取り囲む壁、床及び天井はいずれも高断熱性となっている。これ以外の常温の室3及び搬送室4の壁、床及び天井は、高断熱性であってもよく、高断熱性でなくてもよい。
【0026】
この実施の形態では、図示しない制御装置(監視装置)に制御された低温貯蔵庫2内の温度は、−15〜−50℃(好ましくは−40±3℃程度)に保たれている。また、常温の室3内は、除湿装置(図示略)により露点温度−15℃以下(好ましくは露点温度−20℃以下)の乾燥雰囲気に保たれている。搬送室4内の温度については特に制限はないが、−5〜5℃程度であることが好ましい。
【0027】
搬送室4と低温貯蔵庫2との間の壁5、搬送室4と常温の室3との間の壁6、及び搬送室4と設備外部との間の壁7には、それぞれ、被処理物1の搬送用のゲート8,9,10が設けられている。なお、第1図に示すように、壁5,6,7は搬送室4の3方を囲む壁であり、これらのうち壁5,7同士が対向する位置関係となっている。また、この壁5のゲート8と壁7のゲート10も互いに対面する位置関係にて配置されている。
【0028】
各ゲート8,9,10にはドア8a,9a,10aが設けられている。これらのドア8a,9a,10aは、それぞれ、前記制御装置からの信号に基づいて自動的に開閉する。
【0029】
なお、この実施の形態では、壁7に、非常時や点検時等に人が設備外部から搬送室4に入るための非常扉11が設けられている。また、壁5には、人がこの搬送室4から低温貯蔵庫2に入るための非常扉12が設けられている。前記ゲート10,8は、それぞれ壁7,5の一半側(壁6側)に配置され、該非常扉11,12はそれぞれ壁7,5の他半側に設けられている。各非常扉11,12は手動にて開閉可能となっている。
【0030】
また、この実施の形態では、低温貯蔵庫2と常温の室3との間の壁13及び低温貯蔵庫2の該壁13と対向する壁14に、それぞれ点検窓15,16が設けられている。これらの点検窓15,16も手動にて開閉可能となっている。
【0031】
なお、少なくともゲート8のドア8a、非常扉12及び各点検窓15,16は、高断熱性のものであり、且つ閉状態時には低温貯蔵庫2内からの冷気の漏出を遮断する構造となっている。
【0032】
常温の室3の設備外部に面する壁(この実施の形態では搬送室4の壁7に連なる壁)17には、復温後の被処理物1を該室3の外に搬出するためのゲート18が設けられている。符号18aはこのゲート18のドアを示している。
【0033】
この実施の形態では、ゲート10(ドア10a)の外側に、該ゲート10を介して搬送室4内に低温殺虫処理前の被処理物1を投入するための投入用チェーン式コンベヤ22が設置されている。
【0034】
搬送室4内には、この投入用チェーン式コンベヤ22から低温殺虫処理前の被処理物1を受け取って低温貯蔵庫2内へ投入したり(投入作動時)、該低温貯蔵庫2内から送り出されてきた低温殺虫処理済被処理物1をゲート9の前まで搬送したり(搬出作動時)するための搬送用チェーン式コンベヤ23が設置されている。この搬送用チェーン式コンベヤ23は、壁6に沿って配設され、両端側がゲート10とゲート8とにそれぞれ臨んでいる。
【0035】
この搬送用チェーン式コンベヤ23の途中には、搬出作動時にゲート9の前まで送られてきた低温殺虫処理済被処理物1を、該コンベヤ23上からゲート9を介して常温の室3へ送り出すためのダイバーターユニットコンベヤ24が設置されている。また、該ダイバーターユニットコンベヤ24とゲート9との間には、この被処理物1を常温の室3内の排出用コロコンベヤ36へ渡すための渡り駆動コロコンベヤ25が設置されている。
【0036】
低温貯蔵庫2内には、投入作動時に該搬送用チェーン式コンベヤ23から低温殺虫処理前の被処理物1を受け取って低温貯蔵庫2内へ引き込むための引き込み用チェーン式コンベヤ26と、この被処理物1を低温貯蔵庫2内にストックするための第1(上流側)及び第2(下流側)のストック用チェーン式コンベヤ27,28と、該第2のストック用チェーン式コンベヤ28から被処理物1を引き出すための引き出し用チェーン式コンベヤ29とが設置されている。
【0037】
該引き込み用チェーン式コンベヤ26と第1のストック用チェーン式コンベヤ27とは壁13に沿って一直線状に配設されており、第2のストック用チェーン式コンベヤ28と引き出し用チェーン式コンベヤ29とはこれらと平行に反対側の壁14に沿って一直線状に配設されている。
【0038】
詳しくは、該引き込み用チェーン式コンベヤ26は、一端側がゲート8(ドア8a)に臨むように配置され、第1のストック用チェーン式コンベヤ27は、その上流側を該引き込み用チェーン式コンベヤ26の他端側に突き合わせるようにして配置されている。該第1のストック用チェーン式コンベヤ27の下流側は、ゲート8(壁5)と反対側の壁(符号略)付近まで延在している。
【0039】
第2のストック用チェーン式コンベヤ28は、上流側から下流側へ向う方向を第1のストック用チェーン式コンベヤ27と反対方向としてその隣りに平行に配置されている。この実施の形態では、これらの第1及び第2のストック用チェーン式コンベヤ27,28は同じ長さとなっている。引き出し用チェーン式コンベヤ29は、一端側を該第2のストック用チェーン式コンベヤ27の下流側に突き合わせるようにして、引き込み用コンベヤ26の隣りに配置されている。
【0040】
第1のストック用チェーン式コンベヤ27の下流側には、該コンベヤ27上の被処理物1を第2のストック用チェーン式コンベヤ28側へ移動させるためのダイバーターユニットコンベヤ30が設けられ、第2のストック用チェーン式コンベヤ28の上流側には、この被処理物1を受け取って該コンベヤ28上に載せるためのダイバーターユニットコンベヤ31が設けられている。これらのダイバーターユニットコンベヤ30,31同士の間には、被処理物1を該コンベヤ30からコンベヤ31へと渡すための渡り駆動コロコンベヤ32が設置されている。
【0041】
また、引き出し用チェーン式コンベヤ29の途中には、第2のストック用チェーン式コンベヤ28から引き出されてきた被処理物1を引き込み用チェーン式コンベヤ26側へ移動させるためのダイバーターユニットコンベヤ33が設けられ、引き込み用チェーン式コンベヤ26の途中には、この被処理物1を受け取って該コンベヤ26上に載せるためのダイバーターユニットコンベヤ34が設けられている。これらのダイバーターユニットコンベヤ33,34同士の間にも、被処理物1を該コンベヤ33からコンベヤ34へと渡すための渡り駆動コロコンベヤ35が設置されている。
【0042】
引き込み用チェーン式コンベヤ26は、搬出作動時には、このダイバーターユニットコンベヤ33,34及び渡り駆動コロコンベヤ35を介して引き出し用チェーン式コンベヤ29から移動してきた被処理物1を、ゲート8を介して搬送室4へ排出する。この被処理物1は、搬送室4内の前記搬送用チェーン式コンベヤ23に受け渡される。
【0043】
常温の室3内には、前記ダイバーターユニットコンベヤ24からゲート9を介し低温殺虫処理済被処理物1を受け取って常温の室3内へ排出するための排出用コロコンベヤ36が設置されている。
【0044】
なお、各コンベヤ22〜35には、それぞれ、被処理物1の移動を案内するガイドレール37(第3図)が設けられている。
【0045】
これらのコンベヤ22〜36は、ライン制御盤38(第3図)によって制御される。第3図の符号39は、常温の室3内からこれらのコンベヤ23〜36を搬出作動させるための操作盤を示している。
【0046】
被処理物1は、第2図のように、収納体1aに収納された状態でパレット40に載せられて各コンベヤ22〜36上を搬送される。この実施の形態では、収納体1aの大きさに合わせて大小2種類のパレットが用いられる。第3図の通り、この実施の形態では、各チェーン式コンベヤ22,23,26〜29は、それぞれ、小パレット用のチェーンラインと大パレット用のチェーンライン(いずれも符号略)とを備えている。
【0047】
このパレット40は、必要に応じ、第2図のように多段積みされて搬送される。この場合、下段側のパレット40の4隅からそれぞれ支柱を立設し、この支柱の上に上段側のパレット40を載設する。ただし、パレット40の積層構造はこれに限定されない。
【0048】
この低温殺虫設備の制御装置は、一連のコンベヤ26〜35による各パレット40の移送距離を検知し、これに基づいて各パレット40の現在位置を検知する。この実施の形態では、各パレット40の移送に供されたチェーンのコマ数や各回転軸の回転数等に基づいて各パレット40の移送距離が算定される。ただし、各パレット40の現在位置の検知方法はこれに限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。
【0049】
また、この制御装置は、後述の温度センサ(図示略)からの無線信号を受信する受信器(図示略)を備えている。この温度センサからの無線信号は、各温度センサの識別信号と、温度検出信号とを含んでいる。即ち、この制御装置は、無線を介して、温度センサにより検出された各被処理物1の内部温度を個別に(収納体1aごとに)モニターする。
【0050】
かかる構成の低温殺虫設備による被処理物1の低温殺虫処理手順について以下に説明する。
【0051】
この低温殺虫設備で低温殺虫処理される被処理物1としては、生薬、香辛料、殻類、その他の農産物や食品などが例示されるが、これに限定されない。
【0052】
このような被処理物1は、通常、麻などの布袋、紙袋、合成繊維の袋、合成繊維を箱状に賦形したケース、段ボール箱、木箱等の収納体1aに収納されて流通している。なお、収納体1aはこれに限定されない。また、被処理物1は収納体に収納されていなくてもよい。
【0053】
収納体1a内の被処理物1の量は特に限定されないが、例えば数kg〜数百kg程度とされる。ちなみに、タイソウ、ハッカなどの生薬を麻布袋に数十〜数百kg収納した収納体1aを−40℃の低温貯蔵庫2内に収容した場合、深部が−20℃に達するまでは数時間〜数日程度要する。
【0054】
被処理物1を低温殺虫処理するに当っては、まず、収納体1aを通して被処理物1の内部(深部)まで温度センサを差し込む。この温度センサは、無線を介して検出温度を前記制御装置の受信器に送信する。次いで、この被処理物1入り収納体1aをパレット40に載せて投入用チェーン式コンベヤ22上に設置する。この際、前述の通り、このパレット40の4隅から支柱を立設し、この支柱の上にさらに別のパレット40を載せるようにして多段積みしてもよい。
【0055】
次に、ライン制御盤38を操作し、コンベヤ22,23,26によりパレット40を低温貯蔵庫2内へ搬送する。その後、このパレット40はコンベヤ26から第1のストック用コンベヤ27に移送され、低温殺虫処理される。
【0056】
なお、この低温殺虫設備においては、複数のパレット40(複数の被処理物1)がストック用コンベヤ27,28上に配列され、同時に低温殺虫処理される。即ち、低温貯蔵庫2内にはコンベヤ22,23,26を介して次々にパレット40(被処理物1)が搬入される。これに伴い、先に搬入されたパレット40はストック用コンベヤ27の下流側へと移送される。パレット40が該ストック用コンベヤ27の下流側端部までくると、ダイバーターユニットコンベヤ30から渡り駆動コロコンベヤ32を介してダイバーターユニットコンベヤ31に受け渡されるようにして、第2のストック用コンベヤ28へと移送される。
【0057】
パレット40がさらにストック用コンベヤ28の下流側端部までくると、引き出し用コンベヤ29に移送され、次いでダイバーターユニットコンベヤ33から渡り駆動コロコンベヤ35を介してダイバーターユニットコンベヤ34に受け渡される。
【0058】
この実施の形態では、各パレット40は、低温殺虫処理が完了するまで、他のパレット40の搬入出に伴い、コンベヤ26,27,30,32,31,28,29,33,35,34,26…と循環するように移送される。
【0059】
パレット40上の被処理物1の低温殺虫処理が完了した場合(深部温度が予定温度以下であり、且つ予定時間以上に低温貯蔵庫2内に保管されている場合)には、コンベヤ23〜36を搬出作動させる。この場合、このパレット40は現在位置から引き込み用コンベヤ26上へと移送され、該引き込み用コンベヤ26により搬送室4へ搬出される。そして、このパレット40を搬送用コンベヤ23が受け取ってゲート9の前まで移送する。次いで、このパレット40がダイバーターユニットコンベヤ24から渡り駆動コロコンベヤ25を介して排出用コロコンベヤ36へと受け渡され、常温の室3へ排出される。
【0060】
その後、この乾燥雰囲気の常温の室3内において被処理物1を復温(解凍)させる。
【0061】
仮に、被処理物1の低温殺虫処理が不完全である場合(深部温度が予定温度よりも高い場合など)には、再度投入用チェーン式コンベヤ22より低温貯蔵庫2内に移送する。
【0062】
なお、各パレット40の現在位置及び各パレット40上の被処理物1の内部温度は、前述の通り、常に制御装置によって個別にモニターされている。
【0063】
被処理物1の冷却負荷は被処理物1の種類によって異なり、被処理物1の深部まで目標とする低温にまで達するのに要する時間も、被処理物1の種類や、嵩(量)、収納密度、収納体1aの種類によって異なる。この低温殺虫設備にあっては、被処理物1の深部温度を温度センサで検出するので、これらの条件が種々別々であっても、被処理物1の深部まで確実に必要にして十分な冷却負荷(温度と時間)を与えることができる。
【0064】
従って、被処理物1を過剰に長時間冷却したり、逆に深部の冷却が不十分となって殺虫処理が不完全になったりすることが確実に防止される。
【0065】
この実施の形態では各温度センサの検出温度を無線によって制御装置の受信器に送信しているので、多数の被処理物1(収納体1a)を低温貯蔵庫2内に保管する場合でもリードハーネスの絡まりなどが無い。また、被処理物1を低温貯蔵庫2にスムーズに出し入れすることができる。
【0066】
この実施の形態では、各室2〜4内(外)にコンベヤ22〜36を設置し、収納体1aをパレット40に載せて該コンベヤ22〜36にて搬送するようにしている。このため、収納体1aの出し入れを容易に行うことができる。
【0067】
また、この実施の形態では、低温貯蔵庫2内の各コンベヤ26〜34によるパレット40の移送距離を検知し、これに基づいて各パレット40の現在位置を個別に検知しているため、多数のパレット40(被処理物1)を低温貯蔵庫2内に保管している場合でも、特定のパレット40を低温貯蔵庫2から迅速に取り出すことができる。
【0068】
この実施の形態では、低温貯蔵庫2から搬出した被処理物1を、一旦、乾燥した雰囲気の常温の室3に移して常温に復温させるため、収納体1a内に結露が生じることが防止される。
【0069】
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示の構成に何ら限定されるものではない。
【0070】
例えば、コンベヤを用いて被処理物を搬送する代わりに、人手によって被処理物を搬送するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施の形態に係る低温殺虫設備の平面図である。
【図2】第1図のII−II線に沿う断面(立面)図である。
【図3】この低温殺虫設備の低温貯蔵庫の平面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 被処理物
1a 収納体
2 低温貯蔵庫
3 常温の室
4 搬送室
8〜10 ゲート
22〜36 コンベヤ
40 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温貯蔵庫内にて被処理物を冷却することにより被処理物の殺虫処理を行う低温殺虫方法において、被処理物が収納体内に収納されており、
該収納体を通して被処理物内に温度センサを配置し、該温度センサで被処理物の内部の温度を検知し、予め定められた冷却負荷以上の冷却負荷を被処理物に与えることを特徴とする低温殺虫方法。
【請求項2】
請求項1において、前記温度センサの検出温度を無線を介して監視手段へ送信することを特徴とする低温殺虫方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、殺虫処理された被処理物の収納体を前記低温貯蔵庫から乾燥雰囲気の常温の室へ移送し、被処理物の温度を常温に復した後、該室から取り出すことを特徴とする低温殺虫方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記低温貯蔵庫内に、前記収納体を載せたパレットを搬送するコンベヤが設置されており、コンベヤの移送距離に基づいて収納体の現在位置を検知することを特徴とする低温殺虫方法。
【請求項5】
低温貯蔵庫と、
該低温貯蔵庫内に設置された、低温殺虫処理される被処理物の収納体を載せたパレットを搬送するためのコンベヤと、
該被処理物内に差し込まれた温度センサからの無線信号を受信するための受信器と
を備えてなる低温殺虫設備。
【請求項6】
請求項5において、該低温貯蔵庫に隣接して設置された、被処理物を復温させるための常温の室と、
該常温の室内の雰囲気を除湿する除湿手段とを備えたことを特徴とする低温殺虫設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−325417(P2006−325417A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149685(P2005−149685)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000003665)株式会社ツムラ (43)
【Fターム(参考)】