説明

作業機械のキャブ下方部確認装置

【課題】キャブが機体の高位置にある作業機械において、キャブの下方部の死角領域を確実に監視できるようにして安全性を向上させる。
【解決手段】キャブ15が機体の高位置にある作業機械10において、前記キャブ15にはキャブ15の下方部を撮影するカメラ20が設けられ、該カメラ20で撮影した映像を表示するモニタ21を前記キャブ15内に設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械のキャブ下方部確認装置に関するものであり、特に、キャブが機体の高位置にある場合に、キャブ内のオペレータがキャブの下方部を確認するために設けられた確認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械の前方または後方の死角となる箇所を確認するために、機体の前部または後部にカメラを設置し、該カメラで撮影した映像をキャブ内のモニタに表示させてオペレータが確認する装置は知られている。
【0003】
例えば、油圧ショベルに起伏自在に枢着されたフロントアタッチメントのブームの下部で、上記ブームの左右に設けられた一対の起伏シリンダの間の車体フレームに前方収納室を形成し、該前方収納室に前方を撮す前方監視カメラを設けるとともに、上記左右一対の起伏シリンダの内側にそれぞれ配置された油圧管路が上記前方監視カメラに写らないように、それぞれの油圧配管の間を空けて配置しており、運転室内のディスプレイに上記カメラの映像を表示しうるようにした油圧ショベルの監視カメラ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、スクラップ作業や自動車解体作業などでは、フロントアタッチメントにリフティングマグネットや解体用フォークなどの作業アタッチメントを装着し、さらにキャブを昇降可能に形成した作業機械を使用することが多い。そして、作業時にはキャブを機体の高位置に上昇させ、オペレータがトラックの荷台の中などを確認しながら作業を行っている。
【0005】
例えば、図3に示すように、自動車解体仕様の作業機械10は、下部走行体11と、該下部走行体11の上に旋回可能に設けられた上部旋回体12とから機体が構成され、この上部旋回体12の前部中央に取り付けられたフロントアタッチメント13に、作業アタッチメントとして解体用フォーク14が装着されている。また、上部旋回体12の前部一側に運転席や操作機器類を装備したキャブ15が配置され、該キャブ15は昇降機構16によって昇降可能に形成されている。
【0006】
このような作業機械10では、キャブ15が機体の高位置にあるため、キャブ15内に設置されている操作機器類などにより、オペレータからはキャブ15の下方部の視界が妨げられ、同図中で二点鎖線にて示す下方部が死角領域Sとなり、作業を安全に行うのに支承を来たして非常に危険であった。
【特許文献1】実開平7−20354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の発明は、機体の前方または後方の死角を、カメラで撮影した映像をモニタに表示させて確認できるようにしているが、キャブが高位置にある作業機械において、機体またはキャブの下方部の死角領域Sを監視できるものではない。
【0008】
そこで、キャブが機体の高位置にある作業機械において、キャブの下方部の死角領域を確実に監視できるようにして安全性を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、キャブが機体の高位置にある作業機械において、前記キャブにはキャブの下方部を撮影するカメラが設けられ、該カメラで撮影した映像を表示するモニタを前記キャブ内に設置したことを特徴とする作業機械のキャブ下方部確認装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、キャブに設けられたカメラによって、高位置にあるキャブの下方部が撮影され、該カメラで撮影された映像がキャブ内に設置したモニタに表示される。キャブ内のオペレータは、このモニタに映された映像により、運転席から死角となるキャブの下方部を確認することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、上記カメラは撮影方向を変更可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の作業機械のキャブ下方部確認装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、上記カメラは撮影方向が変更可能であるので、該カメラの撮影方向を手動または自動で上下あるいは左右に変更することにより、キャブの下方部を広範囲に撮影することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記キャブは昇降可能に形成され、少なくともキャブが上昇時には上記カメラが作動してキャブの下方部を撮影するように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械のキャブ下方部確認装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、上記キャブは昇降可能に形成され、少なくとも該キャブが上昇時にはカメラが作動して、キャブの下方部を撮影して上記モニタに表示する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、キャブが高位置にあって作業を行う場合に、運転席から死角となるキャブの下方部をカメラで撮影し、その映像がキャブ内のモニタに表示されるので、オペレータは死角領域をモニタの映像で見ることにより、危険の有無を確認しながら作業を行うことができ、安全性を確保できる。
【0016】
請求項2記載の発明は、上記カメラの撮影方向が変更可能であるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、固定式のカメラに比較して撮影できる範囲が広がり、キャブの下方部の死角領域をもらすことなく広範囲に撮影してモニタに表示することができ、安全性をより一層向上させることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、上記キャブは昇降可能に形成され、少なくとも該キャブが上昇時にはカメラが作動して、キャブの下方部を撮影して上記モニタに表示するので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、キャブが上昇したときにはキャブの下方部の死角領域を自動的に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る作業機械のキャブ下方部確認装置について、好適な実施例をあげて説明する。キャブが機体の高位置にある作業機械において、キャブの下方部を確実に監視できるようにして安全性を向上させるという目的を達成するために、本発明は、キャブが機体の高位置にある作業機械において、前記キャブにはキャブの下方部を撮影するカメラが設けられ、該カメラで撮影した映像を表示するモニタを前記キャブ内に設置したことにより実現した。
【実施例1】
【0019】
図1は作業機械の一例として自動車解体仕様の作業機械10を示し、クローラ式の下部走行体11と、該下部走行体11の上に旋回可能に設けられた上部旋回体12とから機体が構成され、この上部旋回体12の前部中央に取り付けられたフロントアタッチメント13に、作業アタッチメントとして解体用フォーク14が装着されている。また、上部旋回体12の前部一側に運転席や操作機器類を装備したキャブ15が配置され、該キャブ15は昇降機構16によって昇降可能に形成されている。
【0020】
前記キャブ15には、キャブ15の下方部を撮影するカメラ20が設けられている。該カメラ20は静止画または動画の何れかの映像を撮影できるものであり、取り扱いやメンテナンスなどを考えるとデジタル方式のカメラが好ましい。該カメラ20の設置場所は特に限定されず、キャブ15の下方部の死角領域を映し出すことができる場所であれば、キャブ15の前下部、底部、後下部などの任意の場所でよい。
【0021】
また、前記キャブ15の内部には、前記カメラ20で撮影した映像を表示するためのモニタ21が設置されている。該モニタ21は、作業中にオペレータの操作を妨げることなく、かつ見やすい位置に設置されており、前記カメラ20で撮影されたキャブ15の下方部の映像が表示される。オペレータは該モニタ21に映し出される映像を見て、危険の有無を確認しながら作業を行う。
【0022】
図1に示した一例では、キャブ15の底部前寄りにカメラ20を設置してあり、該カメラ20の撮影範囲は、同図中で二点鎖線にて示す領域T1を撮影できるものとする。したがって、従来キャブ15が機体の高位置にある場合は、オペレータから死角となっていた領域も、本発明のように、キャブ15にカメラ20を設けたことにより、該カメラ20で撮影されたキャブ15の下方部の映像が、キャブ15内に設置した前記モニタ21に表示される。キャブ15内のオペレータは、このモニタ21に映し出された映像により、運転席から死角となるキャブ15の下方部を確認することができる。
【0023】
前記カメラ20の撮影方向は一方向に固定してあるが、カメラ20の取付部分を可動式にしてモータなどの駆動装置を設け、該カメラ20の撮影方向を変更可能な構成にすることもできる。かかる構成の場合、キャブ15内でオペレータの手動による遠隔操作、あるいは制御部による自動操作などにより、該カメラ20の撮影方向を上下方向あるいは左右方向に変更することができる。
【0024】
例えば、カメラ20の撮影方向を図1に示す真下方向から、図2に示す後下方向へ移動することにより、新たに後方の領域T2が撮影される。このように、カメラ20自体の撮影方向が狭い範囲に設定されている場合でも、キャブ15の下方部を広範囲に撮影することができ、オペレータからの確認範囲を拡張して、より一層安全性を向上させることができる。
【0025】
ここで、作業の終了時や機械の移動走行時など、前記キャブ15が低位置に降下した状態では、キャブ15の下方部の死角を確認する必要性がほとんどないので、前記カメラ20の撮影をオフしてもよい。そして、キャブ15が上昇したときは、手動もしくは自動的にカメラ20を作動させて、キャブ15の下方部を撮影するように構成する。かくして、キャブ15が上昇したときには、キャブ15の下方部の死角領域を自動的に確認することができ、安全性および利便性が向上する。
【0026】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用された作業機械の側面図。
【図2】図1の応用例を示す側面図。
【図3】従来技術の説明図。
【符号の説明】
【0028】
10 作業機械
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 フロントアタッチメント
14 解体用フォーク
15 キャブ
16 昇降機構
20 カメラ
21 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブが機体の高位置にある作業機械において、
前記キャブにはキャブの下方部を撮影するカメラが設けられ、該カメラで撮影した映像を表示するモニタを前記キャブ内に設置したことを特徴とする作業機械のキャブ下方部確認装置。
【請求項2】
上記カメラは撮影方向を変更可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の作業機械のキャブ下方部確認装置。
【請求項3】
上記キャブは昇降可能に形成され、少なくともキャブが上昇時には上記カメラが作動してキャブの下方部を撮影するように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械のキャブ下方部確認装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−35905(P2009−35905A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200085(P2007−200085)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】