説明

作業機械の位置管理システム、及び作業エリアデータの更新方法

【課題】作業機械がサーバから送信される情報を確実に受信できるようにする。
【解決手段】作業機械1は、作業エリアデータ35を記憶した記憶装置33と、作業エリア内に、作業エリアよりも狭い監視エリアが設定されているときGPSセンサ14が検出した現在位置に基づいて、作業機械1が監視エリア内かを監視する位置監視部32と、を備える。位置監視部32が、作業機械1が監視エリア外であると、作業エリアデータ35の識別情報をサーバへ送信する。サーバは、作業エリアデータを記憶した記憶装置を有する。作業機械1から通知された作業エリアデータ35の識別情報が、作業エリアデータの識別情報と異なるとき、作業エリアデータを作業機械1へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の位置を管理する技術に関し、特に作業機械の作業エリアを更新する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
作業現場において使用される建設機械などの作業機械の盗難を防止するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1、2には、作業機械の作業エリア(稼働可能領域)の設定方法、及び作業エリア外へ作業機械が移動したときにエンジン停止させ、動作できなくさせることが記載されている。具体的には、特許文献1には、ユーザが所有するパソコンで設定された作業エリアに関する情報が、インターネット網やサーバを介し、作業機械の制御装置に設定され、GPS位置情報が制御装置に読み込まれ、可動領域情報と位置情報とを比較することにより、作業機械側のみで可動領域内にあるかどうかを判断することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−327466号公報
【特許文献2】特開2002−173003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1では、作業機械の作業エリア情報を書き換えるとき、パソコンで作業エリア情報の変更を行い、その情報を作業機械に送信して、作業機械の制御装置に設定されている作業エリア情報を更新する。
【0004】
このため、通信機に電源が供給されていない場合などには、作業機械がサーバから送られてくる作業エリア情報を受信できない。この場合には、サーバ側でのリトライ送信が永遠に続くか、またはタイムアウトが設定されている場合はその間継続的に続き、通信費用の増大などの問題が生じる。
【0005】
また、特許文献1の技術では、盗難防止を目的としているので、作業エリア外に出て通信停止やエンジン停止となった後、作業エリア内に戻ったときに、通信を再開させる技術は検討されていない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、作業機械がサーバから送信される情報を確実に受信できるようにすることである。
【0007】
本発明の別の目的は、一旦、作業エリア外へ出てサーバとの通信を停止した作業機械が作業エリア内に戻ったときに、サーバとの通信を再開させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施態様に従う作業機械の位置管理システムは、作業機械(1)に搭載された車載装置(13,14,15)と、前記作業機械(1)を管理する管理サーバ(10)とを備える。前記車載装置(13,14,15)は、前記管理サーバ(10)とデータの送受信を行う第1の通信手段(15)と、前記作業機械(1)の現在位置を検出する現在位置検出手段(14)と、前記作業機械(1)の第1の作業エリアを示す第1のエリアデータ(35)を記憶した第1の記憶手段(33)と、前記第1の作業エリア内に、前記第1の作業エリアよりも狭い監視エリアが設定されているとき、前記現在位置検出手段(14)が検出した現在位置に基づいて、前記作業機械(1)が前記監視エリア内であるか、または前記監視エリア外であるかを監視する監視手段(32)と、を備え、前記監視手段(32)が、前記作業機械(1)が前記監視エリア外であることを検知すると、前記第1の通信手段(15)は、前記第1の記憶手段(33)に記憶されている第1のエリアデータ(35)の識別情報を前記管理サーバ(10)へ送信する。前記管理サーバ(10)は、前記車載装置(13,14,15)とデータの送受信を行う第2の通信手段(41)と、前記作業機械(1)の第2の作業エリアを示す第2のエリアデータ(45)を記憶した第2の記憶手段(43)と、前記第2の通信手段(41)が前記車載装置(13,14,15)から前記第1のエリアデータ(35)の識別情報の通知を受けると、前記第1のエリアデータ(35)の識別情報と前記第2の記憶手段(43)に記憶されている第2のエリアデータ(45)の識別情報とを比較する比較手段(47)と、を備え、前記比較手段(47)による比較の結果、前記第1のエリアデータ(35)の識別情報と前記第2のエリアデータ(45)の識別情報とが異なるときは、前記第2の通信手段(41)が前記第2の記憶手段(43)に記憶されている第2のエリアデータ(45)を前記車載装置(13,14,15)へ送信する。前記車載装置(13,14,15)は、前記第1の通信手段(15)が前記管理サーバ(10)から送信された前記第2のエリアデータ(45)を受信すると、受信した前記第2のエリアデータ(45)は前記第1の記憶手段(33)に格納される。
【0009】
好適な実施形態では、前記監視手段(32)は、さらに、前記現在位置検出手段(14)が検出した現在位置に基づいて、前記作業機械(1)が前記第1の作業エリア内であるか、または前記第1の作業エリア外であるかを監視し、前記監視手段(32)による監視の結果、前記作業機械(1)が前記第1の作業エリア内にあるときは、前記第1の通信手段(15)は、前記管理サーバ(10)に対するデータ送信機能を動作させ、前記作業機械(1)が前記第1の作業エリア外にあるときは、前記第1の通信手段(15)は、前記管理サーバ(10)に対するデータ送信機能を停止させるようにしてもよい。
【0010】
好適な実施形態では、前記監視手段(32)が、前記作業機械(1)が前記第1の作業エリア外から前記第1の作業エリア内へ移動したことを検知したときに、前記第1の通信手段(15)は、前記第1の記憶手段(33)に記憶されている第1のエリアデータ(35)の識別情報を前記管理サーバ(10)へ送信するようにしてもよい。
【0011】
好適な実施形態では、前記監視手段(32)が、前記作業機械(1)が前記監視エリア内から前記監視エリア外へ移動したことを検知したときに、前記第1の通信手段(15)は、前記第1の記憶手段(33)に記憶されている第1のエリアデータ(35)の識別情報を前記管理サーバ(10)へ送信するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る作業機械の位置管理システムについて、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る作業機械の位置管理システムの概略構成を示す模式図である。
【0014】
本実施形態での位置管理システムは、作業機械1の作業エリアを変更したようなときに、作業機械1が保持している作業エリアデータを更新する。
【0015】
図1において、位置管理システムは、作業機械1、作業機械メーカ側のネットワーク管制局5に設けられたサーバ10、作業機械1のユーザ側(或るいは、販売店側)に設けられたユーザ端末20、およびこれらを結ぶ通信網7を有する。ここで、通信網7は、作業機械1と衛星地球局6とを通信衛星8を介して結ぶ衛星通信回線、衛星地球局6とネットワーク管制局5のサーバ10を結ぶ専用の地上通信回線、サーバ10とユーザ端末20とを結ぶイントラネットあるいはインターネット等のコンピュータネットワークなどから構成される。
【0016】
作業機械1及びユーザ端末20は、それぞれ1台しか図示してないが、実際には多数存在する。多数の作業機械1には、油圧ショベル、ホイルローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、およびクレーン等の建設機械、ダンプトラック等の運搬車両、各種破砕機や発電機等の産業機械が含まれる。サーバ10は1台でもよいが、複数台あってもよい。1台又は少数のサーバ10による集中処理又は分散処理により、多数の作業機械1の監視及び多数のユーザ端末20への情報提供が行われる。
【0017】
ユーザ端末20には、OS(Operating Systems)上において各種のアプリケーションソフトウェアが実行される汎用のパーソナルコンピュータが使用される。アプリケーションソフトウェアには、サーバ10が提供するWWW文書を表示するウェブブラウザや、電子メールの送受信を行う電子メーラ等がある。
【0018】
図2は、作業機械1の位置管理に関連する部分の構成を示す。
【0019】
図2に示すように、作業機械1は、エンジン80、エンジン80のための燃料を蓄えた燃料タンク81、エンジン80を制御するエンジンコントローラ82、エンジン80により駆動される油圧システム(図示せず)を制御するバルブコントローラ83、エンジンコントローラ82やバルブコントローラ83やその他の電気部品に電力を供給するバッテリ84、及びオペレータによるイグニションキーの操作によりターンオンされるキースイッチ85などを備える。また、作業機械1は、車体内ネットワーク18を備える。車体内ネットワーク18は、作業機械1の各部の状態を計測する計測装置12、計測装置12に接続されるコントローラ13、コントローラ13に接続されるGPS(Global
Positioning System)センサ14、およびコントローラ13に接続される衛星通信端末15などを含む。GPSセンサ14は、GPS衛星9(図1参照)からの電波を受信するためのGPSアンテナ16を有する。衛星通信端末15は、通信衛星8(図1参照)と通信するための衛星通信アンテナ17を有する。
【0020】
計測装置12は、作業機械1のエンジン80、燃料タンク81、バッテリ84及びその他の種々の部品に取り付けられた種々のセンサと接続される。それら種々のセンサには、例えば、サービスメータ(稼働時間積算器)11が含まれる。サービスメータ11は、作業機械1の稼働時間をカウントし積算して通算稼働時間を示す検出信号を出力する。計測装置12に接続されるセンサには、さらに、図示してないが、燃料タンク81内の残燃料を検出する燃料センサ(液面センサ及び燃料重量センサの双方またはいずれか一方)、エンジン80の冷却水温を検出する冷却水温度センサ、エンジン80の回転数を検出するエンジン回転数センサ、エンジン80のガバナラック位置信号に基づいてエンジン80の燃料噴射量を計測する燃料噴射量センサ、バッテリ84の出力電圧を検出するバッテリ電圧センサなどが含まれる。
【0021】
計測装置12は、衛星通信端末15を用いて、衛星通信回線を通じてサーバ10と双方向通信を行うことができる。計測装置12は、上述した各種のセンサからの検出信号を受けて、作業機械1の各種の状態を示す情報を生成する。計測装置12で生成される情報には、通算稼働時間を示す稼働時間情報、残燃料情報(体積、重量)、エンジン冷却水温度を示す温度情報、エンジン回転数を示す回転数情報、燃料噴射量を示す噴射量情報、及びバッテリ電圧を示す電圧情報などがある。これらの情報を、以下の説明では、「機械データ」と総称する。
【0022】
計測装置12は、定期的に、最新の機械データを生成してそれをコントローラ13に送る。また、エンジンコントローラ82やバルブコントローラ83は、計測装置12から機械データのうちの所定の幾つかの情報を取得し、それらの情報を処理することにより、それぞれの制御動作を行う。
【0023】
計測装置12、コントローラ13、GPSセンサ14及び衛星通信端末15は、キースイッチ85を介さずに、常時、バッテリ84からの電力を供給されるようになっている。従って、本実施形態では、コントローラ13は、エンジン始動直後およびエンジン停止直後に、最新の機械データを計測装置12から取得して、これをサーバ10に送信することができる。
【0024】
コントローラ13は、例えばマイクロコンピュータであり、送信データの生成、受信データの解析を行う送受信データ処理部31と、作業機械1の位置を監視する位置監視部32、記憶装置33とを備える。
【0025】
記憶装置33には、作業機械1のユーザ名、作業機械1の作業エリアを示す作業エリアデータ35、ならびに、上述した機械データ及び位置情報の最近過去一定期間の履歴データなどが記憶されている。
【0026】
コントローラ13は、作業機械1が作業エリア内にいるときに、サーバ10に対するデータ送信機能を動作させ、作業エリア外にいるときは、サーバ10に対するデータ送信機能を停止させる。
【0027】
記憶装置33に記憶されている作業エリアデータ35は、例えば、多角形の作業エリアであり、各頂点の緯度及び経度により作業エリアを特定してもよい。また、作業エリアが矩形の場合には、作業エリアデータ35は対角に位置する2頂点の緯度及び経度のみを含んでもよい。
【0028】
記憶装置33に記憶されている作業エリアデータ35は更新可能である。例えば、コントローラ13は、衛星通信回線を通じてサーバ10から送信された作業エリアデータ45を、記憶装置33に格納することができる。その結果、例えば、更新前の作業エリアと更新後の作業エリアとが連続しているような場合には、作業機械1が通信を停止せずに新しい作業エリアへ移動することができる。
【0029】
送受信データ処理部31は、衛星通信端末15から衛星通信回線を介してサーバ10へ送信するための送信データを生成する。例えば、送受信データ処理部31は、計測装置12から定期的に又は随時に最新の上記機械データを取得して、それを含む送信データを生成する。また、送受信データ処理部31は、記憶装置33に記憶されている作業エリアデータ35の識別情報を含む送信データを生成する。送信データには、機械データ及び作業エリアデータ35の識別情報が含まれていてもよい。さらに、送信データには、GPSセンサ14から受信した現在位置を示す位置情報が含まれていてもよい。
【0030】
また、送受信データ処理部31は、衛星通信回線から衛星通信端末15を通じて送信されてきたデータを受信したとき、その受信データを処理する。例えば、送受信データ処理部31は、受信データに含まれる作業エリアデータ45及びその識別情報を、記憶装置33に格納する。
【0031】
位置監視部32は、作業機械1の現在位置が作業エリア内であるか否かを監視する。位置監視部32は、作業エリア内であるか否かの判定を、所定の周期で行ってもよい。例えば、位置監視部32は、GPSセンサ14から作業機械1の現在位置を示す位置情報を取得する。そして、位置監視部32は、記憶装置33に記憶されている作業エリアデータ35とGPSセンサ14から取得した作業機械1の現在位置情報とを比較して、作業機械1が作業エリア内であるか、作業エリア外であるかを判定する。
【0032】
ここで、位置監視部32によって作業機械1が作業エリア内であることが検知されると、コントローラ13は、衛星通信端末15を通じたサーバ10への情報送信機能を動作させる。一方で、作業機械1が作業エリア外であることが検知されると、コントローラ13は、衛星通信端末15を通じてサーバ10へ宛てた情報送信機能を停止させる。つまり、作業機械1が作業エリア内に存在する間は、サーバ10に対する所定の情報送信タイミングにおいて、サーバ10に対して所定の情報(機械データなど)を送信する。一方、作業機械1が作業エリア外に存在するときは、所定の情報送信を行うタイミングであっても、コントローラ13はサーバ10に対するすべての情報送信を行わない。作業機械1が、一旦作業エリア外に出たときであっても、再び作業エリア内に戻ったときは、コントローラ13は、サーバ10に対する情報送信を行う。
【0033】
なお、作業機械1の位置が作業エリア内であるか作業エリア外であるかに関わらず、コントローラ13は、サーバ10から送信された情報を受信してもよい。
【0034】
また、作業エリア内に、作業エリアよりも狭い監視エリアが設定されているとき、位置監視部32は、作業機械1の現在位置が監視エリア内であるか否かを監視する。監視エリアのすべてのエリアが、作業エリア内に存在する。位置監視部32は、監視エリア内であるか否かの判定を、所定の周期で行ってもよい。
【0035】
作業エリアA1と監視エリアA2の一例を図3に示す。同図に示すように、監視エリアA2は、例えば、作業エリアA1の外縁から所定の距離だけ内側に、その外縁が形成された領域であってもよい。監視エリアA2をこのように設定すると、作業機械1が監視エリアA2の外へ出た直後は、作業機械1は監視エリアA2の外側であり、且つ、作業エリアA1の内側に位置することになる。
【0036】
位置監視部32は、例えば、記憶装置33に記憶されている作業エリアデータ35に基づいて、所定の監視エリア設定規則に従って監視エリアを設定する。例えば、監視エリア設定規則は、「監視エリアの外縁を作業エリアの外縁から所定の距離だけ内側に移動させた位置とする」というものでもよい。そして、位置監視部32は、設定された監視エリアとGPSセンサ14から取得した作業機械1の現在位置情報とを比較して、作業機械1が監視エリア内であるか、監視エリア外であるかを判定する。
【0037】
ここで、位置監視部32によって作業機械1が監視エリアA2外であることが検知されると、コントローラ13は、記憶装置33に記憶されている作業エリアデータ35の識別情報を、サーバ10へ宛てて衛星通信端末15を通じて送信する。
【0038】
また、コントローラ13は、作業機械1が、作業エリア外に出た後、作業エリア内に戻ったことが検知されたときにも、記憶装置33に記憶されている作業エリアデータ35の識別情報をサーバ10へ送信してもよい。
【0039】
ネットワーク管制局5(図1参照)のサーバ10は、作業機械1の始動直後及び停止直後に通信網7を通じて作業機械1から送られてくる機械データを受信して、記憶する。また、サーバ10は、作業機械1の作業エリアを更新するために、通信網7を通じて作業エリアデータを作業機械へ送信する。
【0040】
図4は、サーバ10の機能的構成を示す。
【0041】
図4に示すように、サーバ10は、通信網7との通信を制御する通信制御部41と、通信制御部41を介して受送信される情報を処理する例えばマイクロプロセッサを含む演算処理部42と、磁気記憶装置等から構成される記憶装置43とを備えている。
【0042】
記憶装置43には、図示されてないが、演算処理部42により実行されるコンピュータプログラムなどが格納されている。さらに、記憶装置43には、作業機械1から送信された機械データ44及び作業機械1の作業エリアデータ45が記憶されている。
【0043】
演算処理部42が記憶装置43に記憶されている所定のコンピュータプログラムを実行することによって、送受信データ処理部46及び作業エリア更新判定部47が実現される。
【0044】
送受信データ処理部46は、通信制御部41が衛星通信回線を介して作業機械1へ送信するための送信データを生成する。例えば、送受信データ処理部46は、記憶装置43に格納されている作業エリアデータ45及びその識別情報を含む送信データを生成する。また、送受信データ処理部46は、作業機械1から衛星通信回線を通じて送信されてきたデータを受信したとき、その受信データを処理する。例えば、送受信データ処理部46は、受信データに含まれる作業エリアデータ35の識別情報を抽出したり、機械データを記憶装置43に格納したりする。
【0045】
作業エリア更新判定部47は、作業機械1が保有している作業エリアデータ35と記憶装置43に記憶されている作業エリアデータ45とが同一であるか否かを判定する。例えば、作業エリア更新判定部47は、作業機械1から作業エリアデータ35の識別情報の通知を受けると、この作業エリアデータ35の識別情報と、記憶装置43に記憶されている作業エリアデータ45の識別情報とが同一であるか否かを判定する。これらの識別情報が異なる場合は、作業エリアデータ35と作業エリアデータ45とがそれぞれ定める作業エリアが異なる。従って、記憶装置43に記憶されている作業エリアデータ45を、作業機械1へ送信して、作業機械1が保持している作業エリアデータを更新させる。
【0046】
これにより、例えば、作業機械1の作業エリアを変更したいときに、新たな作業エリアを定めた作業エリアデータ45に、作業エリアデータ35と異なる識別情報を付して記憶装置43に格納しておくことにより、作業機械1に作業エリアデータ45を送ることができる。その結果、作業機械1が保持している作業エリアデータ35を、新たな作業エリアを定めた作業エリアデータ45で更新することができる。
【0047】
図5及び図6は、作業機械1とサーバ10とが通信を行うときの処理手順を示すフローチャートである。図5はコントローラ13の処理フローであり、図6はサーバ10の処理フローである。図5及び図6のフローチャートに示す処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0048】
まず、GPSセンサ14が、GPSアンテナ16が受信したGPS信号に基づいて、作業機械1の現在位置を検出する(S11)。
【0049】
ここで、位置監視部32は、作業エリアデータ35に基づいて、作業機械1が作業エリア内であるか否か判定する(S13)。作業機械1が作業エリア内であるときは(S13:Yes)、位置監視部32が、さらに作業機械1が、作業エリア内に設定された監視エリア内であるか否かを判定する(S15)。ここで、ステップS15の判定結果は、次回の処理で必要なので、所定の領域に保存する。
【0050】
作業機械1が監視エリア内でない(つまり、監視エリア外にいる)ときは(S15:No)、保存されている前回のステップS15の判定結果が、監視エリア外であったか否かを判定する(S17)。
【0051】
前回のステップS15の判定結果が監視エリア内であったときは(S17:Yes)、送受信データ処理部31が作業エリアデータ35の識別情報含む送信データを生成する(S19)。そして、衛星通信端末15が、この送信データをサーバ10へ送信する(S21)。
【0052】
なお、ステップS13で作業機械1が作業エリア内でないとき(S13:No)、ステップS15で作業機械1が監視エリア内にいるとき(S15:Yes)、及びステップS17で前回のステップS15の判定結果が監視エリア内でなかったときは(S17:No)、処理を終了する。
【0053】
また、ステップS17の処理(前回のステップS15の判定結果が監視エリア外であったか否かの判定)は、省略してもよい。
【0054】
つぎに、サーバ10の処理を示す図6を参照する。サーバ10では、通信制御部41が、作業機械1から送信された送信データを受信する(S31)。そして、送受信データ処理部46が受信データを解析して、この受信データに含まれる情報を取得する(S33)。例えば、受信データに機械データが含まれるときは、送受信データ処理部46が受信データから機械データを取得して、記憶装置43に格納する。
【0055】
受信データに作業エリアデータ35の識別情報が含まれていないときは、ここで処理を終了する(S35:No)。受信データに作業エリアデータ35の識別情報が含まれているときは(S35:Yes)、作業エリア更新判定部47は、作業エリアデータ35の識別情報と記憶装置43に記憶されている作業エリアデータ45の識別情報とが一致するか否かを判定する(S37)。作業エリアデータ35の識別情報と記憶装置43に記憶されている作業エリアデータ45の識別情報とが一致しないとき(S37:No)、送受信データ処理部46が作業エリアデータ45及び作業エリアデータ45の識別情報を送信データに設定する(S39)。そして、通信制御部41が送信データを1へ宛てて送信する(S40)。
【0056】
再び図5へ戻ると、コントローラ13が衛星通信端末15を介してサーバ10から送信された送信データを受信する(S23)。そして、送受信データ処理部31が受信データから作業エリアデータ45及び作業エリアデータ45の識別情報を取得して(S25)、記憶装置33の作業エリアデータ35に上書きする(S27)。これにより、記憶装置33には、最新の作業エリアデータが格納される。
【0057】
次に、図7は、機械データ送信時の作業機械1における処理フローである。
【0058】
まず、コントローラ13は、機械データの送信タイミングであるか否かを監視する(S41)。この機械データの送信タイミングとは、例えば、定時送信の送信時刻、エンジン始動時、エンジン停止時、あるいは作業機械1が監視エリア外であることが検出されたときなどである。コントローラ13は、機械データの送信タイミングが到来するまでウェイトする(S41:No)。
【0059】
送信タイミングが到来すると(S41:Yes)、コントローラ13は、GPSセンサ14が、GPSアンテナ16が受信したGPS信号に基づいて検出した、作業機械1の最新の現在位置情報を取得する(S43)。そして、位置監視部32が、作業エリアデータ35に基づいて、作業機械1が作業エリア内であるか否か判定する(S45)。ここで、ステップS45の判定結果は、次回の処理で必要なので、所定の領域に保存する。
【0060】
作業機械1が作業エリア内でないときは(S45:No)、ステップS41へ戻る。従って、作業機械1が作業エリア外にいるときは、機械データの送信タイミングであっても、作業機械1からサーバ10へデータ送信を行わない。
【0061】
一方、作業機械1が作業エリア内であるときは(S45:Yes)、位置監視部32は、さらに保存されている前回のステップS45の判定結果が、作業エリア外であったか否かを判定する(S47)。
【0062】
前回のステップS45の判定結果が作業エリア外であったときは(S47:Yes)、送受信データ処理部31が機械データ及び作業エリアデータ35の識別情報を含む送信データを生成する(S49)。一方で、前回のステップS45の判定結果が作業エリア外でなかった(つまり、作業エリア内にいた)ときは(S47:No)、送受信データ処理部31が機械データを含む送信データを生成する(S51)。
【0063】
そして、衛星通信端末15が、送受信データ処理部31が生成した送信データをサーバ10へ送信する(S53)。
【0064】
サーバ10は、図6に従う処理を実行する。さらに、サーバ10による図6の処理後は、作業機械1が図5のステップS23以降の処理に従う。
【0065】
これによって、送信したデータに作業エリアデータ35の識別情報が含まれていれば、サーバ10は作業エリアデータ45及び作業エリアデータ45の識別情報を作業機械1に送信する。作業機械1は、これを取得して、記憶装置33の作業エリアデータを更新することができる。
【0066】
この結果、作業機械1が作業エリア外で、サーバ10に対する送信が禁止された場合であっても、その間にサーバ10において作業エリアが更新されると、作業機械1が作業エリア内に戻った時点で、サーバ10に対する送信が再開されたときに、新たな作業エリアデータを直ちに取得することができる。
【0067】
上述した実施形態では、エリアデータ35の識別情報とエリアデータ45の識別情報とが異なるときに、サーバ10がエリアデータ45を作業機械1に送信するようにしているが、このとき、さらにサーバ10は、エリアデータ45が最新データであるか否かを確認し、最新データであった場合にエリアデータ45を作業機械1へ送信するようにしてもよい。これにより、確実に最新のエリアデータに更新することができる。
【0068】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係る作業機械の位置管理システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】作業機械1の位置管理に関連する部分の構成を示す。
【図3】作業エリアA1と監視エリアA2の一例を示す。
【図4】サーバ10の機能的構成を示す。
【図5】作業機械1の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】サーバ10の処理フローを示すフローチャートである。
【図7】機械データ送信時の作業機械1の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 作業機械
10 サーバ
13 コントローラ
14 GPSセンサ
15 衛星通信端末
16 GPSアンテナ
17 衛星通信アンテナ
31 送受信データ処理部
32 位置監視部
33 記憶装置
35 作業エリアデータ
41 通信制御部
42 演算処理部
43 記憶装置
44 機械データ
45 作業エリアデータ
46 送受信データ処理部
47 作業エリア更新判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械(1)に搭載された車載装置(13,14,15)と、前記作業機械(1)を管理する管理サーバ(10)とを備え、
前記車載装置(13,14,15)は、
前記管理サーバ(10)とデータの送受信を行う第1の通信手段(15)と、
前記作業機械(1)の現在位置を検出する現在位置検出手段(14)と、
前記作業機械(1)の第1の作業エリアを示す第1のエリアデータ(35)を記憶した第1の記憶手段(33)と、
前記第1の作業エリア内に、前記第1の作業エリアよりも狭い監視エリアが設定されているとき、前記現在位置検出手段(14)が検出した現在位置に基づいて、前記作業機械(1)が前記監視エリア内であるか、または前記監視エリア外であるかを監視する監視手段(32)と、を備え、
前記監視手段(32)が、前記作業機械(1)が前記監視エリア外であることを検知すると、前記第1の通信手段(15)は、前記第1の記憶手段(33)に記憶されている第1のエリアデータ(35)の識別情報を前記管理サーバ(10)へ送信し、
前記管理サーバ(10)は、
前記車載装置(13,14,15)とデータの送受信を行う第2の通信手段(41)と、
前記作業機械(1)の第2の作業エリアを示す第2のエリアデータ(45)を記憶した第2の記憶手段(43)と、
前記第2の通信手段(41)が前記車載装置(13,14,15)から前記第1のエリアデータ(35)の識別情報の通知を受けると、前記第1のエリアデータ(35)の識別情報と前記第2の記憶手段(43)に記憶されている第2のエリアデータ(45)の識別情報とを比較する比較手段(47)と、を備え、
前記比較手段(47)による比較の結果、前記第1のエリアデータ(35)の識別情報と前記第2のエリアデータ(45)の識別情報とが異なるときは、前記第2の通信手段(41)が前記第2の記憶手段(43)に記憶されている第2のエリアデータ(45)を前記車載装置(13,14,15)へ送信し、
前記車載装置(13,14,15)は、
前記第1の通信手段(15)が前記管理サーバ(10)から送信された前記第2のエリアデータ(45)を受信すると、受信した前記第2のエリアデータ(45)は前記第1の記憶手段(33)に格納されることを特徴とする作業機械の位置管理システム。
【請求項2】
前記監視手段(32)は、さらに、前記現在位置検出手段(14)が検出した現在位置に基づいて、前記作業機械(1)が前記第1の作業エリア内であるか、または前記第1の作業エリア外であるかを監視し、
前記監視手段(32)による監視の結果、前記作業機械(1)が前記第1の作業エリア内にあるときは、前記第1の通信手段(15)は、前記管理サーバ(10)に対するデータ送信機能を動作させ、
前記作業機械(1)が前記第1の作業エリア外にあるときは、前記第1の通信手段(15)は、前記管理サーバ(10)に対するデータ送信機能を停止させることを特徴とする請求項1記載の作業機械の位置管理システム。
【請求項3】
前記監視手段(32)が、前記作業機械(1)が前記第1の作業エリア外から前記第1の作業エリア内へ移動したことを検知したときに、
前記第1の通信手段(15)は、前記第1の記憶手段(33)に記憶されている第1のエリアデータ(35)の識別情報を前記管理サーバ(10)へ送信することを特徴とする請求項2記載の作業機械の位置管理システム。
【請求項4】
前記監視手段(32)が、前記作業機械(1)が前記監視エリア内から前記監視エリア外へ移動したことを検知したときに、
前記第1の通信手段(15)は、前記第1の記憶手段(33)に記憶されている第1のエリアデータ(35)の識別情報を前記管理サーバ(10)へ送信することを特徴とする請求項1記載の作業機械の位置管理システム。
【請求項5】
作業機械(1)に搭載された車載装置(13,14,15)と、前記作業機械(1)を管理する管理サーバ(10)とを備え、前記車載装置(13,14,15)が有する作業エリアデータ(35)を更新する方法であって、
第1の作業エリアを示す第1のエリアデータ(35)を有する車載装置(13,14,15)は、
前記作業機械(1)の現在位置を検出し、
前記作業エリア内に、前記第1の作業エリアよりも狭い監視エリアが設定されているとき、前記検出された作業機械の現在位置に基づいて、前記作業機械(1)が前記監視エリア内であるか、または前記監視エリア外であるかを判定し、
前記作業機械(1)が前記監視エリア外であるときは、前記第1のエリアデータ(35)の識別情報を前記管理サーバへ送信し、
第2の作業エリアを示す第2のエリアデータ(45)を有する管理サーバ(10)は、
前記車載装置(13,14,15)から前記第1のエリアデータ(35)の識別情報の通知を受けると、前記第1のエリアデータ(35)の識別情報と前記第2のエリアデータ(45)の識別情報とを比較し、
前記比較の結果、前記第1のエリアデータ(35)の識別情報と前記第2のエリアデータ(45)の識別情報とが異なるときは、前記第2のエリアデータ(45)を前記車載装置(13,14,15)へ送信し、
前記車載装置(13,14,15)は、
前記管理サーバ(10)から送信された前記第2のエリアデータ(45)を受信すると、受信した前記第2のエリアデータ(45)で前記第1のエリアデータ(35)を更新することを特徴とする作業エリアデータの更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−235815(P2009−235815A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84501(P2008−84501)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】