説明

作業機械の操作装置

【課題】運転室内のレイアウト空間に制約がある場合でも、操作アームによる作業フロントの動作指示と操作レバーによる作業フロントの動作指示が相互に干渉しない作業機械の操作装置を提供する。
【解決手段】操作レバー54aは操作アーム52aに対し、操作者把持点72aが揺動支持装置60aの操作アームの揺動中心軸線71aを通過する運転席49の前後方向の平面73aよりも運転席49の左右方向内側に位置するように取り付けられている。操作アーム52aを揺動させるために必要な揺動中心シャフト601aの揺動中心軸線71a回りの最小トルクM0は、操作レバー54aが中立位置にあるときに操作レバー54aを前方ヘストローグエンドまで操作したときに揺動中心軸線71a回りに発生するトルM1に対し、M0≧M1なるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解体作業、建築作業、土木作業等に使用される作業フロントを備えた作業機械の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2本の作業フロント(第1及び第2作業フロント)を有した双腕型の作業機械が知られており、その一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
双腕型の作業機械は、操作軸数が大幅に増加するため、標準的な油圧ショベルの操作装置をそのまま適用することが困難である。そこで、特許文献1では、左右に揺動自在な操作アームと、横置きの操作レバーと、肘受けなどを備えた操作装置を運転席の左右両側に設置し、一方を第1作業フロント用、他方を第2作業フロント用としている。これにより操作者が、第1作業フロント用の操作装置と第2作業フロント用の操作装置のそれぞれを操作することにより、第1及び第2作業フロントを同時に独立して簡単に操作できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−252224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載の操作装置では、操作アームによる作業フロントの動作指示と操作レバーによる作業フロントの動作指示が相互に干渉し、操作者が意図しない動作が発生してしまうことを防止するために、操作レバーの操作者把持部分の中心位置である把持中心が操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面上に位置するように、操作レバーを操作アームに取り付けている。
【0006】
しかしながら、操作レバーの操作者把持部分の中心位置である把持中心が操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面上に位置するように、操作レバーを操作アームに取り付けるためには、操作アームを運転席左右方向の外側に屈曲させる必要がある。しかし、運転室の左右方向の幅が狭いなどレイアウトに制約がある場合には、操作レバーの操作者把持部分の中心位置である把持中心が操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面上に位置するように、操作アームを運転席左右方向の外側に屈曲させて取り付けることが困難となる。その結果、操作アームを先端部分の屈曲量を小さくせざるを得ない。しかし、その場合は、操作レバーの操作者把持部分の中心位置である把持中心が操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面より運転席左右方向の内側に位置してしまい、操作アームによる作業フロントの動作指示と操作レバーによる作業フロントの動作指示が干渉し、誤操作が発生してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転室内のレイアウト空間に制約がある場合でも、操作アームによる作業フロントの動作指示と操作レバーによる作業フロントの動作指示が相互に干渉しない作業機械の操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、走行体を備えた下部車体と、この下部車体の上部に旋回可能に設けられる運転室を備えた上部車体と、この上部車体の前部に揺動自在に設けられた作業フロントとを備えた作業機械の操作装置において、前記運転室内に設置された運転席の側方に取付けられた揺動支持装置と、前記揺動支持装置に左右揺動自在に取り付けられ、前記作業フロントの動作の一部を指示する操作アームと、
前記操作アームの先端部分に上下前後に回動自在に枢軸結合され、前記作業フロントの動作の他の一部を指示する横置きの操作レバーとを備え、前記操作レバーは前記操作アームに対し、前記操作レバーを操作者が把持したときの把持中心となる操作者把持点が、前記揺動支持装置の前記操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面よりも運転席左右方向の内側に位置するように取り付けられ、前記揺動支持装置は、前記操作アームを左右に揺動したときに前記操作アームを中立位置に戻すよう前記揺動支持装置の揺動中心軸線回りのトルクを発生する付勢装置を有し、前記付勢装置は、前記操作アームが前記中立位置にあるときに最小トルクを発生し、かつこの最小トルクが前記操作レバーの操作により前記揺動支持装置の揺動中心軸線回りに発生するトルクよりも大きくなるように設定されたものとする。
【0009】
このように構成した本発明においては、操作レバーを操作アームに対し、操作レバーを操作者が把持したときの把持中心となる操作者把持点が、揺動支持装置の操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面よりも運転席左右方向の内側に位置するように取り付けたため、操作アームを運転席左右方向の外側に屈曲させることなく取り付けることができるか、或いは操作アームを運転席左右方向の外側に屈曲させた場合でも、その屈曲量を少なくして取り付けることができる。その結果、運転室の左右方向の幅が狭いなど運転室内のレイアウト空間に制約がある場合でも、運転室内の操作装置を取り付けることができる。また、操作アームが中立位置にあるときに揺動支持装置に設けた付勢装置が発生する最小トルクを操作レバーの操作により揺動支持装置の揺動中心軸線回りに発生するトルクよりも大きくなるように設定したため、操作レバーを上下前後に操作しても意図しない操作アームの揺動の発生を抑制することができる。このためレイアウト空間に制約がある場合においても、操作アームによる作業フロントの動作指示と操作レバーによる作業フロントの動作指示が相互干渉を防止することができる。
【0010】
(2)請求項2記載の発明は、上記(1)の作業機械の操作装置において、前記付勢装置は、前記揺動支持装置の内部に備えられるスプリングを有し、前記最小トルクが、前記スプリングの初期張力によって設定されている。
【0011】
これによりステップSの初期張力を調整することで、上記のように付勢装置の最小トルクを設定することが可能となり、レイアウト空間に制約がある場合においても、操作アームによる作業フロントの動作指示と操作レバーによる作業フロントの動作指示が相互干渉を防止することができる。
【0012】
(3)請求項3記載の発明は、上記(1)または(2)の作業機械の操作装置において、前記最小トルクは、前記操作レバーの前方への操作により前記揺動支持装置の揺動中心軸線回りに発生するトルクを基準として、このトルクよりも大きくなるように設定されている。
【0013】
これにより操作レバーの前方操作に対して意図しない操作アームの揺動の発生を抑制する効果が確実に得られる。
【0014】
(4)請求項4記載の発明は、上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の作業機械の操作装置において、前記作業フロントは前記上部車体に対して上下左右に揺動自在であり、前記操作アームは、前記作業フロントの左右の揺動を指示し、前記操作レバーは前記作業フロントの上下の揺動を指示する。
【0015】
これによりレイアウト空間に制約がある場合においても、操作アームによる作業フロントの左右の揺動の動作指示と操作レバーによる作業フロントの上下の揺動の動作指示が相互干渉を防止することができる。
【0016】
(5)また,上記目的を達成するため、請求項5に記載の発明は、走行体を備えた下部車体と、この下部車体の上部に旋回可能に設けられる運転室を備えた上部車体と、この上部車体の前部左右に揺動自在に設けられた左右の作業フロントとを備えた作業機械の操作装置において、前記運転室内に設置された運転席の左右両側に前記左右の作業フロントに対応して設けられた左右の操作装置を有し、前記左右の操作装置は、各々、前記運転席の側方に取付けられた揺動支持装置と、前記揺動支持装置に左右揺動自在に取り付けられ、前記作業フロントの動作の一部を指示する操作アームと、前記操作アームの先端部分に基端部が上下前後に回動自在に取り付けられ、前記作業フロントの動作の他の一部を指示する横置きの操作レバーとを備え、前記操作レバーは前記操作アームに対し、前記操作レバーの操作者把持部分の中心位置である把持中心が、前記揺動支持装置の前記操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面よりも運転席内方側に位置するように取り付けられ、前記揺動支持装置は、前記操作アームを左右に揺動したときに前記操作アームを中立位置に戻すよう前記揺動支持装置の揺動中心軸線回りのトルクを発生する付勢装置を有し、前記付勢装置は、前記操作アームが前記中立位置にあるときに最小トルクを発生し、かつこの最小トルクが前記操作レバーの操作により前記揺動装置の揺動中心軸線回りに発生するトルクよりも大きくなるように設定されているものとする。
【0017】
これにより双腕型の作業機械において、運転室内の左右いずれの側のレイアウト空間に制約がある場合においても、上記(1)で述べたように、操作アームによる作業フロントの動作指示と操作レバーによる作業フロントの動作指示が相互干渉を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作レバーを上下前後に操作しても意図しない操作アームの揺動が発生しない構成となるため、レイアウト空間に制約がある場合でも、操作アームによる作業フロントの動作指示と操作レバーによる作業フロントの動作指示の相互干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態における操作装置が備えられた作業機械の一例である、双腕型の作業機械の外観を示す立面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係わる操作装置が備えられた作業機械の一例である、双腕型の作業機械の外観を示す上面図である。
【図3】第1の実施形態における操作装置を示す図である。
【図4】図3に示した操作装置の上面図である。
【図5】操作装置の操作と第1作業フロントの動作の対応を示す図である。
【図6】操作装置に備えられる揺動支持装置の内部構造を側面から見た部分断面図である。
【図7A】揺動支持装置の内部構造を複数の異なる断面位置で見た横断面図の1つであって、図6のA−A線断面図である。
【図7B】揺動支持装置の内部構造を複数の異なる断面位置で見た横断面図の1つであって、図6のB−B線断面図である。
【図7C】揺動支持装置の内部構造を複数の異なる断面位置で見た横断面図の1つであって、図6のC−C線断面図である。
【図8】操作アームが右方向に揺動された場合の揺動支持装置の動作状態を示す図である。
【図9】操作装置の上面図であって、操作装置に働く力とトルクを示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における操作装置の上面図であって、操作装置に働く力とトルクを示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における作業機械が単腕型である場合の操作装置を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態における操作装置の揺動支持装置の横断面図である。
【図13】図12に示した揺動支持装置の動作時の状態を示す図である。
【図14】図12に示した揺動支持装置のスプリング伸縮装置内のスプリングの初期張力と最小トルクの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
<全体構成>
図1及び図2は本発明の第1の実施形態に係わる操作装置が備えられた作業機械の一例である、双腕型の作業機械の外観を示す図である。図1は立面図であり、図2は上面図である。
【0021】
図1及び図2において、作業機械100は、走行体1を備えた下部車体2と、下部車体2上に旋回可能に取り付けられた上部車体である上部旋回体3とを有し、その上部旋回体3の前部中央付近に運転室4が取り付けられ、上部旋回体3の側部及び後部には図示しないエンジンやポンプ等が設けられている。また、上部旋回体3の前部左右には上下、左右揺動自在に第1作業フロント5Aと第2作業フロント5Bが取り付けられている。
<フロント構成>
第1作業フロント5Aは上部旋回体3の前部左側に設けられた第1ブラケット6aと、第1ブラケット6aに縦軸回りに左右揺動自在に取り付けられたスイングポスト7aと、このスイングポスト7aに上下揺動自在に取り付けられたブーム10aと、このブーム10aに上下揺動自在に取り付けられたアーム12aと、このアーム12aに上下回動自在に取り付けられた作業具14aと、スイングポスト7aと上部旋回体3とに連結され、スイングポスト7aを縦軸回りに左右方向に揺動させるスイングポストシリンダ9aと、スイングポスト7aとブーム10aとに連結され、ブーム10aを上下方向に揺動させるブームシリンダ11aと、ブーム10aとアーム12aとに連結され、アーム12aを上下方向に揺動させるアームシリンダ13aと、アーム12aと作業具14aとに連結され、作業具14aを上下方向に揺動させる作業具シリンダ15aとを有している。
【0022】
ここで、作業具14aは作業機械の作業内容に応じて、図のようなグラップルや、カッタ、ブレーカ、バケット、その他の作業具のいずれか1つに任意に交換可能である。
【0023】
第2作業フロント5Bは、上部旋回体3の前部右側に設けられている。これは、第1作業フロント5Aと同様に構成されており、同じ部材には符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。
<操作装置の概要>
図3は、本実施形態における操作装置を示す図である。運転室4内には運転席49が設置され、運転席49の左右両側には操作装置50a,50bが設けられている。操作装置50aは第1作業フロント5A用であり、操作装置50bは第2作業フロント5B用である。
【0024】
操作装置50aは、運転席49の左側でシート台座49aに取り付けられたアームブラケット51aと、運転席49の左側の側方位置でアームブラケット51aに取付けられた揺動支持装置60aと、揺動支持装置60aにその揺動中心軸線71a回りに左右揺動自在に取り付けられ、第1作業フロント5Aの左右の揺動を指示する操作アーム52aと、この操作アーム52aに一体に揺動するように取り付けられたアームレスト53aとを備えている。
【0025】
また、操作装置50aは、操作アーム52aの先端部分に、基端部のピボット55a(図9参照)において、上下前後に回動自在に枢軸結合(ピボット結合)された横置きの操作レバー54aを備えている。横置きの操作レバー54aは、その軸心回りにも回動自在となっている。横置き操作レバー54aは、第1作業フロント5Aの上下の揺動を指示する。
【0026】
図4は、図3に示した操作装置の上面図である。操作レバー54a上の点72aは、操作者が操作レバー54aを把持したときの把持中心となる操作者把持点であり、操作者はアームレスト53aに肘を置き、操作レバー54aの操作者把持点72aが位置する部分(把持部分)を把持することで、操作アーム52a及び操作レバー54aの揺動操作を行う。操作アーム52aを図4のように上方から見たとき、操作アーム52aは運転席49の前後方向にほぼまっすぐに伸びており、操作レバー54aは操作アーム52aに対し、操作者把持点72aが揺動支持装置60aの操作アームの揺動中心軸線71aを通過する運転席49の前後方向の平面73aよりも運転席49の左右方向内側に位置するように取り付けられている。
【0027】
操作装置50bは、運転席の右側に操作装置50aと同様に構成されており、同じ部材には符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。
<フロント動作>
図5は、操作装置50aの操作と第1作業フロント5Aの動作の対応について示したものである。
【0028】
揺動支持装置60aは、図示しない操作量検出器を備えている。操作アーム52aが揺動操作された場合には、操作量に比例した速度にて、スイングポストシリンダ9aが駆動される。操作アーム52aが左方向に揺動操作された場合には、スイングポスト7aが縦軸回りに左方向に揺動される。操作アーム52aが右方向に揺動操作された場合には、スイングポスト7aが縦軸回りに右方向に揺動される。
【0029】
横置き操作レバー54aは、図示しない操作量検出器を備えている。横置き操作レバー54aは、上下方向の操作でブーム10aの上下揺動を、前後方向の操作でアーム12aのブーム10aに対する上下揺動を、各々指示する。上方向へ操作することで、ブームシリンダ11aが伸び方向に駆動され、ブーム10aはスイングポスト7aに対して上方向へ揺動される。下方向へ操作することで、ブームシリンダ11aが縮み方向に駆動され、ブーム10aはスイングポスト7aに対して下方向へ揺動される。前方向へ操作することで、アームシリンダ13aが縮み方向に駆動され、アーム12aはブーム10aに対して上方向へ揺動される。後方向へ操作することで、アームシリンダ13aが伸び方向に駆動され、アーム12aはブーム10aに対して下方向へ揺動される。横置き操作レバー54aを軸心回りに回動操作すると、作業具14aの上下揺動が指示される。図5に示すように、作業具14aの上下揺動方向は、操作レバー54aの軸心回りの回動操作方向と同一である。
【0030】
操作装置50bは、運転席の右側に操作装置50aと同様に構成されており、同じ部材には符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。
<揺動支持装置の構造>
図6は、揺動支持装置60aの内部構造を側面から見た部分断面図であり、図7A、図7B、図7Cは、それぞれ、揺動支持装置60aの内部構造を複数の異なる断面位置で見た横断面図であって、図7Aは図6のA−A線、図7Bは図6のB−B線、図7Cは図6のC−C線断面図である。
【0031】
揺動支持装置60aは、揺動中心軸線71aを持つ揺動中心シャフト601aと、揺動中心シャフト601aの横断面8角形の軸部601a−1に挿通され、揺動中心シャフト601aと一体に回転する揺動プレート602aと、この揺動プレート602aの先端部分に取り付けられ、下方に垂下する揺動ピン602a−1と、揺動中心シャフト601aの横断面円形の軸部601a−2に挿通され、揺動中心シャフト601aが回転するとき、揺動ピン602a−1との接触によって揺動中心シャフト601aに対して相対回転する上下1対のカムプレート603a,604aと、カムプレート603a,604aを接続し、カムプレート603a,604aを互いに反対方向に付勢するスプリング(コイルバネ)605aと、カムプレート603a,604aのスプリング605aによる回転を制限し、カムプレート603a,604aの基準位置を設定するストッパピン606aとを備えている。
【0032】
揺動中心シャフト601aは、その上端部、下端部、中央部をそれぞれ、上軸受610a、下軸受(図示せず)及び中央軸受611aに回転可能に支持され、上軸受610a及び下軸受(図示せず)は図示しない上支持プレート及び下支持プレートに取り付けられ、中央軸受611aは中央支持プレート612aに取り付けられている。上下の支持プレート及び中央支持プレート612aはケーシング613aに取り付けられ、ケーシング613aはアームブラケット51aに取り付け板614aを介して取り付けられている。ストッパ606aは中央支持プレート612aに垂直に取り付けられている。
【0033】
上下1対のカムプレート603a,604aは左右対称であり、それぞれ、揺動中心シャフト601aの断面円形の軸部601a−2が挿通する円形の開口部を有する中央環状部603a−1,604a−1を有し、下側のカムプレート603aは、中央環状部603a−1の一側部分(図7Aで見て左側部分)から前方(図7Aで見て下方)に伸びる先端部分603a−2と、中央環状部603a−1の他側部分(図7Aで見て右側部分)から後方(図7Aで見て上方)に伸びる後方部分603a−3を有し、上側のカムプレート604aは、中央環状部604a−1の一側部分(図7bで見て右側部分)から前方(図7Aで見て下方)に伸びる先端部分604a−2と、中央環状部604a−1の他側部分(図7Bで見て左側部分)から後方(図7Aで見て上方)に伸びる後方部分604a−3を有している。
【0034】
上下1対のカムプレート603a,604aは、図示の中立位置(後述)にある状態で中央環状部603a−1,604a−1の部分において互いに交差しており、揺動ピン602a−1とストッパピン606aは上下1対のカムプレート603a,604aの先端部分603a−2,604a−2間に位置し、スプリング605aは上下1対のカムプレート603a,604aの後端部分603a−3,604a−3を接続している。
【0035】
スプリング605aは、下カムプレート603aに対し、図7A〜図7Cで見て反時計回りのトルクを発生し、下カムプレート603aはストッパピン606aにより図示の位置に拘束保持されている。また、スプリング605aは、上カムプレート604aに対し、図7A〜図7Cで見て時計回りのトルクを発生し、上カムプレート604aもストッパピン606aにより図示の基準位置に拘束保持されている。上下カムプレート603a,604aの図示の基準位置は、操作アーム52aの中立位置に対応する位置である。
【0036】
操作アーム52aは、揺動中心シャフト601aに取付けられている。操作アーム52aが揺動操作されると、揺動中心シャフト601aが揺動中心軸線71a回りに回転動作される。それに伴い、揺動プレート602aが同方向に回転動作される。図8は、操作アーム52aが右方向に揺動された場合の揺動支持装置60aの動作状態を示す図である。揺動プレート602aの揺動ピン602a−1によって下カムプレート603aが揺動中心シャフト601a回りに時計方向に回転動作され、スプリング605aが伸長する。このとき、カムプレート604aはストッパピン606aにより動作停止しているため、操作アーム52aには、スプリング605aによる復元力(トルク)が作用する。操作アーム52aの揺動操作力が低下し概略ゼロとなった場合には、スプリング605aによる復元力(トルク)によってカムプレート604aはストッパピン606aと接触する基準位置に復帰し、これに伴って操作アーム52aは中立位置に復帰する。
【0037】
操作アーム52aが左方向に揺動された場合の動作も上記と同様である。
【0038】
スプリング605aと上下1対のカムプレート603a,604a及びストッパピン606aは、操作アーム52aを左右に揺動したときに操作アーム52aを中立位置(初期位置)に戻すよう揺動支持装置60aの揺動中心軸線71a回りのトルクを発生する付勢装置を構成する。また、スプリング605aは、操作アーム52aが中立位置にあるときに最小トルクを発生し、かつこの最小トルクが操作レバー54aの操作により揺動支持装置60aの揺動中心軸線71a回りに発生するトルク(後述)よりも大きくなるように設定されている。
【0039】
操作装置50bは、運転席の右側に操作装置50aと同様に構成されており、同じ部材には符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。
<スプリング605aの初期張力の設定>
上下1対のカムプレート603a,604aが図示の基準位置にあるときのスプリング605aの初期張力は次のように設定する。操作アーム52aを揺動させるために必要な揺動中心シャフト601aの揺動中心軸線71a回りの最小トルクをM0とし、スプリング605aの初期張力をF0とする。また、図7Cに示す揺動支持装置60aの揺動中心軸線71aと上下1対のカムプレート603a,604aの後端部分におけるスプリング605aの取り付けピンの中心と間の距離をL0とする。最小トルクM0は、スプリング605aの初期張力F0と距離L0の積によって決定される。
【0040】
M0=F0×L0
図9は操作装置50aの上面図であって、操作装置50aに働く力とトルクを示す図である。
【0041】
運転室4の壁面4aが操作装置50aに迫っているため、操作者把持点72aを、揺動中心シャフト601aの中心軸である揺動中心軸線71aを通過する前後方向の平面73a上に配置できない構成となっている。このため前述したように、操作アーム52aを上方から見たとき、操作アーム52aは運転席49の前後方向にほぼまっすぐに伸びており、操作レバー54aは操作アーム52aに対し、操作者把持点72aが揺動支持装置60aの操作アームの揺動中心軸線71aを通過する運転席49の前後方向の平面73aよりも運転席49の左右方向内側に位置するように取り付けられている。
【0042】
操作レバー54aが中立位置にあるときに操作レバー54aを前方ヘストローグエンドまで操作するために必要な操作力をF1maxとし、操作レバー54aが中立位置にあるときの操作者把持点72aと平面73aとの距離をL1とした場合、揺動中心軸線71a回りに発生するトルクM1(操作レバー54aが中立位置にあるときに操作レバー54aを前方ヘストローグエンドまで操作したときに揺動中心軸線71a回りに発生するトルクM1)は、各々の積で決定される。
【0043】
M1=F1max×L1
本実施の形態においては、M0≧M1なるようにスプリング605aの初期張力F0と距離L0の値を設定する。或いは、距離L0が既に決まっている場合は、M0≧M1なるようにスプリング605aの初期張力F0を設定する。そのため、操作レバー54aの操作力に起因する操作アーム52aの誤操作を防止することができる。
【0044】
操作装置50bは、運転席の右側に操作装置50aと同様に構成されており、同じ部材には符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。
<第1の実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、操作レバー54aを操作アーム52aに対し、操作者把持点72aが揺動支持装置60aの操作アームの揺動中心軸線71aを通過する運転席49の前後方向の平面73aよりも運転席49の左右方向内側に位置するように取り付け、操作アーム52aを運転席左右方向の外側に屈曲させることなく、運転席49の前後方向にほぼまっすぐに伸びるように構成したため、運転室4の左右方向の幅が狭いなど運転室4内のレイアウト空間に制約がある場合でも、操作装置50a,50bを取り付けることができる。また、M0≧M1なるようにスプリング605aの初期張力F0を設定したため、操作レバー54aを上下前後に操作しても意図しない操作アーム52aの揺動の発生を抑制することができる。このためレイアウト空間に制約がある場合においても、操作アーム52aによる作業フロントの動作指示と操作レバー54aによる作業フロントの動作指示が相互干渉を防止することができる。
<第2の実施の形態>
本発明の作業機械の操作装置は、その詳細が上記の一実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、スプリング605aの初期張力は図10に示すように、操作レバー54aの最大操作時の操作方向を基準にして設定してもよい。
【0045】
図10において、平面75aは、揺動中心シャフト601aを通過し、操作レバー54aを前方へ最大に操作したときの操作力F2maxと平行な平面である。この操作レバー54aの最大操作時の操作者把持点72aと平面75aとの距離をL2とした場合、揺動中心シャフト601a回りの発生トルクM2(操作レバー54aの最大操作時の揺動中心シャフト601a回りの発生トルクM2)は、F2maxとL2の積で決定される。
【0046】
M2=F2max×L2
本実施の形態では、M0≧M2となるようにスプリング605aの初期張力F0と距離L0の値を設定する。或いは、距離L2が既に決まっている場合は、M0≧M2なるようにスプリング605aの初期張力F0を設定する。これにより操作レバー54aの操作力に起因する操作アーム52aの誤操作を防止することができる。
【0047】
本実施の形態によれば、操作レバー54aの操作方向がレバー操作に伴い変化した場合においても、操作アーム52aの誤操作を防止することができる点で、第1の実施例よりも優れた作用効果が得られる。
<第3の実施の形態:単腕作業機>
上述の実施の形態では、作業機械100は双腕型の作業機械であったが、この限りではない。図11は作業機械が単腕型である場合の操作装置の実施の形態を示す図である。この図に示すように、作業フロントが1つの作業機械の場合には、操作装置50aまたは操作装置50bの何れかを廃止すればよい。
<第4の実施の形態:揺動支持装置の構造>
上述の実施の形態では、揺動支持装置を図6に示した構成としたが、この限りではない。スプリングの種類、本数などは任意に設計が可能である。操作アーム52aを左右に揺動させることが可能で、揺動操作力が一定以下となった場合に中立に復帰する構造であれば、どのような構成であってもよい。
【0048】
図12は揺動支持装置の他の実施の形態の一例を示す図である。図12において、揺動支持装置70aは揺動中心軸線71aを持つ揺動中心シャフト701aと、左右のスプリング伸縮装置702a,712aと、左右のロッド703a,713aと、プレート704aとで構成されている。スプリング伸縮装置702a,712aはケーシング702a−1,712a−1と、ケーシング702a−1,712a−1内に挿入されたスプリング702a−2,712a−2を有し、ロッド703a,713aの左右方向への動作によりスプリング702a−2,712a−2が伸縮する。ロッド703a,713aはプレート704aの動作によりスプリング伸縮装置702a,712aのケーシング702a−1,712a−1内をスライド移動する。ロッド703a,713aは、揺動中心シャフト701aが図示の原点位置(基準位置)にあるときにストロークエンド状態となる。プレート704aは揺動中心シャフト701aと一体に揺動し、ロッド703a,713aを動作させる。プレート704aと揺動中心シャフト701aとの締結方法は任意であり、例えば溶接、ボルト止め、或いは第1実施例のような横断面8角形の軸部と嵌合である。
【0049】
図13は、図12に示した揺動支持装置70aの動作時の状態を示す図である。図13において、操作アーム52aが左方向に揺動した場合、動作は次のようになる。
【0050】
まず、操作アーム52aの操作により、揺動中心シャフト701aが左方向に揺動される。この揺動中心シャフト701aの揺動によりプレート704aが揺動し、ロッド703aが左方向に押し出され、スプリング伸縮装置702aのスプリング702a−2が圧縮される。このときスプリング伸縮装置712a側はロッド713aがストロークエンドにあるため動作しない。操作アーム42aの操作が無くなると、スプリング702a−2の復元力で揺動中心シャフト701aが原点位置に復帰する。
【0051】
図14は、図12に示した揺動支持装置のスプリング伸縮装置702a,712a内のスプリング702a−2,712a−2の初期張力と最小トルクの関係を示す図である。スプリング702a−2,712a−2の初期張力はスプリング伸縮装置702a,712a内でのスプリング702a−2,712a−2のバネ定数によって決まる。スプリング702a−2,712a−2のバネ定数は揺動中心シャフト701が原点位置(基準位置)にあるとき、スプリング伸縮装置702,712のスプリング702a−2,712a−2を自然長からどの程度縮めておくかで決定される。スプリング702a−2,712a−2を縮めておく程、初期張力が大きくなる。
【0052】
また、最小トルクは、先の実施の形態と同様、次の式で決定される。
【0053】
M0=F0×L0
本実施の形態においても、M0≧M1またはM0≧M2となるようにスプリングの初期張力F0と距離L0の値を設定する。
【0054】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
<その他の実施の形態>
上述の実施の形態では、操作レバー54aの前方への操作を基準に初期張力を設定したが、その限りではない。操作装置によっては、操作レバーを前方に移動させない場合もあり、その場合は、操作レバーの後方向或いは上下方向の操作を基準としてもよい。操作者把持点72aに加わる操作力によって揺動中心シャフト601aの揺動中心軸線71a回りに発生するトルクが、最大となる基準を選択すればよい。
【0055】
また、上述の実施例では、操作装置50aの操作と第1作業フロント5Aの動作の対応を図5に示した通りとしたが、この限りではない。例えば、操作アーム52aの揺動を、上部旋回体3の下部車体2に対する旋回動作に割当ててもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 走行体
2 下部車体
3 上部旋回体
4 運転室
5A 第1作業フロント
5B 第2作業フロント
7a スイングポスト
9a スイングポストシリンダ
10a ブーム
11a ブームシリンダ
12a アーム
13a アームシリンダ
14a 作業具
15a 作業具シリンダ
49 運転席
50a,50b 操作装置
51a アームブラケット
52a 操作アーム
53a アームレスト
54a 操作レバー
60a 揺動支持装置
70a 揺動支持装置
71a 揺動中心軸線
72a 操作者把持点
73a 平面
100 作業機械
601a 揺動中心シャフト
602a 揺動プレート
602a−1 揺動ピン
603a,604a 上下1対のカムプレート
605a スプリング(コイルバネ)
606a ストッパピン
701a 揺動中心シャフト
702a,712a 左右のスプリング伸縮装置
702a−2,712a−2 スプリング
703a,713a 左右のロッド
704a プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体を備えた下部車体と、この下部車体の上部に旋回可能に設けられる運転室を備えた上部車体と、この上部車体の前部に揺動自在に設けられた作業フロントとを備えた作業機械の操作装置において、
前記運転室内に設置された運転席の側方に取付けられた揺動支持装置と、
前記揺動支持装置に左右揺動自在に取り付けられ、前記作業フロントの動作の一部を指示する操作アームと、
前記操作アームの先端部分に上下前後に回動自在に枢軸結合され、前記作業フロントの動作の他の一部を指示する横置きの操作レバーとを備え、
前記操作レバーは前記操作アームに対し、前記操作レバーを操作者が把持したときの把持中心となる操作者把持点が、前記揺動支持装置の前記操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面よりも運転席左右方向の内側に位置するように取り付けられ、
前記揺動支持装置は、前記操作アームを左右に揺動したときに前記操作アームを中立位置に戻すよう前記揺動支持装置の揺動中心軸線回りのトルクを発生する付勢装置を有し、
前記付勢装置は、前記操作アームが前記中立位置にあるときに最小トルクを発生し、かつこの最小トルクが前記操作レバーの操作により前記揺動支持装置の揺動中心軸線回りに発生するトルクよりも大きくなるように設定されていることを特徴とする作業機械の操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の操作装置において、
前記付勢装置は、前記揺動支持装置の内部に備えられるスプリングを有し、
前記最小トルクが、前記スプリングの初期張力によって設定されていることを特徴とする作業機械の操作装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械の操作装置において、
前記最小トルクは、前記操作レバーの前方への操作により前記揺動支持装置の揺動中心軸線回りに発生するトルクを基準として、このトルクよりも大きくなるように設定されていることを特徴とする作業機械の操作装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の作業機械の操作装置において、
前記作業フロントは前記上部車体に対して上下左右に揺動自在であり、
前記操作アームは、前記作業フロントの左右の揺動を指示し、前記操作レバーは前記作業フロントの上下の揺動を指示することを特徴とする作業機械の操作装置。
【請求項5】
走行体を備えた下部車体と、この下部車体の上部に旋回可能に設けられる運転室を備えた上部車体と、この上部車体の前部左右に揺動自在に設けられた左右の作業フロントとを備えた作業機械の操作装置において、
前記運転室内に設置された運転席の左右両側に前記左右の作業フロントに対応して設けられた左右の操作装置を有し、
前記左右の操作装置は、各々、
前記運転席の側方に取付けられた揺動支持装置と、
前記揺動支持装置に左右揺動自在に取り付けられ、前記作業フロントの動作の一部を指示する操作アームと、
前記操作アームの先端部分に基端部が上下前後に回動自在に取り付けられ、前記作業フロントの動作の他の一部を指示する横置きの操作レバーとを備え、
前記操作レバーは前記操作アームに対し、前記操作レバーの操作者把持部分の中心位置である把持中心が、前記揺動支持装置の前記操作アームの揺動中心を通過する運転席前後方向の平面よりも運転席内方側に位置するように取り付けられ、
前記揺動支持装置は、前記操作アームを左右に揺動したときに前記操作アームを中立位置に戻すよう前記揺動支持装置の揺動中心軸線回りのトルクを発生する付勢装置を有し、
前記付勢装置は、前記操作アームが前記中立位置にあるときに最小トルクを発生し、かつこの最小トルクが前記操作レバーの操作により前記揺動装置の揺動中心軸線回りに発生するトルクよりも大きくなるように設定されていることを特徴とする作業機械の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−122207(P2012−122207A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272030(P2010−272030)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】