説明

作業機械の盗難防止監視システム

【課題】作業機械が盗難にあったことを確実に判断したり、また盗難にあう可能性を判断して盗難を未然に防止したりできる作業機械の盗難防止監視システムの提供。
【解決手段】作業機械A,Bと、作業現場に設置されている固定端末と、それらからの遠隔位置に配置されたサーバとを備え、作業機械A,Bおよび固定端末には、電力供給を不要とする受動型ICタグ18と、電力供給を必要とする能動型ICタグ19と、各ICタグ18,19からのICタグ情報信号を基にメンバーリストを作成するメンバーリスト作成手段とが設けられ、サーバには、メンバーリストを基にグループリストを作成するグループリスト作成手段と、作成されたグループリストを保存するグループリスト記憶部と、保存されたグループリストと新たに作成されたグループリストとを照合して盗難を特定する盗難特定手段とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の盗難防止監視システムに係り、例えば作業現場に置かれた建設機械等の作業機械の盗難防止監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業現場に夜間放置されている作業機械が盗難されることが多く、作業機械に様々な盗難防止装置が装着されている。
そのような装置を備えた盗難防止監視システムの例として、作業機械にGPS等による位置検出手段、振動検出器、および送信機を設けたものが知られている(特許文献1)。このシステムは、作業機械に設けられた振動検出器が振動を検出すると、送信機が位置情報信号および検出信号をセキュリティーセンターへ送信するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2004−237980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の盗難防止監視システムは、振動検出器が振動を検出し、送信機が振動の際に出力された検出信号を送信するため、仮に送信機が取り外された場合には、振動検出器が振動を検出しても検出信号をセキュリティーセンターへ送信できず、盗難されたことが判明しないという問題がある。また車両に搭載されたバッテリが外されると作業機械側のシステム自体が停止してしまうため、やはり盗難されたことが判明しない。
【0005】
本発明の目的は、作業機械が盗難にあったことを確実に判断したり、また盗難にあう可能性を判断して盗難を未然に防止したりできる作業機械の盗難防止監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る作業機械の盗難防止監視システムは、前記作業機械と、作業現場に設置されている固定端末と、前記作業機械および固定端末に対して遠隔した位置に配置されたサーバとを備え、前記作業機械および固定端末には、ICタグ情報を出力するための電力供給を必要としない受動型ICタグと、ICタグ情報を出力するための電力供給を必要とする能動型ICタグと、前記各ICタグからICタグ情報信号を受信するICタグ情報受信手段と、受信した前記ICタグ情報信号に基づいて認識される作業機械および固定端末のリストを作成するメンバーリスト作成手段と、前記メンバーリスト作成手段が作成するメンバーリストを保存するメンバーリスト記憶部と、前記メンバーリスト記憶部に保存されたメンバーリストと前記メンバーリスト作成手段により新たに作成されたメンバーリストとを照合するメンバーリスト照合手段とが設けられ、前記サーバには、前記メンバーリスト作成手段が作成するメンバーリストを基にグループリストを作成するグループリスト作成手段と、前記グループリスト作成手段が作成するグループリストを保存するグループリスト記憶部と、前記グループリスト記憶部に保存されたグループリストと前記グループリスト作成手段により新たに作成されたグループリストとを照合して盗難を特定する盗難特定手段とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上において、請求項1の発明によれば、作業現場にある作業機械、および作業現場に設置された固定端末のICタグ情報受信手段は、作業機械、および固定端末の受動型ICタグおよび能動型ICタグからICタグ情報信号を受信でき、メンバーリスト作成手段は、受信したICタグ情報信号を基にメンバーリストを作成できる。メンバーリスト照合手段は、作成したメンバーリストとメンバーリスト記憶部に保存されているメンバーリストとを照合して、相違がある場合にサーバへ送信することにより、サーバ側のグループリスト作成手段は、受信したメンバーリストを基にグループリストを作成できる。そうすると、盗難特定手段は、作成したグループリストとグループリスト記憶部に保存されているグループリストとを照合することで盗難されたか、または盗難されかかっているかを特定できる。すなわち、作業機械に設けられた外部アンテナが取り外されても、そのような外部アンテナが不要なICタグによる通信によって、作業機械の存在を認識できるうえ、特に、受動型ICタグを用いることでバッテリが外されても通信可能なことから、盗難のおそれのある作業機械をも確実に特定でき、作業機械の盗難を確実に判断できたり、盗難を未然に防止したりできる。よって、本発明の目的を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(全体構成の説明)
図1は、本実施形態に係る作業機械の盗難防止監視システムの全体概略構成を示す模式図である。
図1において、本システムは具体的に、複数の作業機械としての車両A,Bと、作業現場に設けられた固定端末Cと、各車両A,Bおよび固定端末Cに対して通信可能なサーバ4と、サーバ4に接続されているデータベース5と、車両A,B、固定端末Cの位置情報を受信するためのGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星6とで構成される。
【0009】
車両A,Bについては、図1に示すような油圧ショベルの他、ホイルローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、クレーン等の建設機械の車両であってよく、また、ダンプトラック等の運搬車両、さらには自走式の各種破砕機等の産業機械であってもよい。そして、車両A,Bとしては、複数台に限らず1台あってもよく、また、複数台の場合に、それらは同じ種別の作業機械であることを問わない。
固定端末Cは、作業現場に設置された移動しないものであり、固定端末Cから規定の範囲内に存在する車両A,Bを認識するためのものである。
【0010】
(作業機械の説明)
図2は車両A,Bの構成図を示したものである。この図において、車両A,Bは、GPSセンサ11と、ICタグリーダ13と、通信アンテナ16を介してサーバ4と通信可能に設けられた通信端末15と、通信コントローラ17と、受動型ICタグ18と、能動型ICタグ19と、能動型ICタグ19の電源であるバッテリ20とを備えている。
【0011】
GPSセンサ11は、車両A,Bの位置情報信号をGPS衛星6からGPSアンテナ12を介して受信し、受信した位置情報信号を通信コントローラ17へ送信する機能を備えている。これにより、車両A,Bの位置情報を明確に把握することができる。
【0012】
ICタグリーダ13は、他の車両A,Bに搭載された受動型ICタグ18および能動型ICタグ19や、固定端末Cに搭載された受動型ICタグ18および能動型ICタグ19を逐一認識し、認識したICタグ情報を通信コントローラ17へ送信する機能を備えている。また、ICタグリーダ13は、外部アンテナを必要とせず、他の車両A,B、および固定端末Cに搭載された受動型ICタグ18および能動型ICタグ19を認識できるものである。
【0013】
通信端末15は、通信コントローラ17とサーバ4とを、通信アンテナ16を介して無線通信可能にする機能を備えている。
なお、この通信端末15は通信コントローラ17に内蔵されてもよい。
【0014】
通信コントローラ17は、ICタグリーダ13が取得したICタグ情報信号を処理し、処理されたデータを通信端末15により通信アンテナ16を介してサーバ4へ送信する。通信コントローラ17の具体的に処理手段については後述する。また、通信コントローラ17は、GPSセンサ11からの位置情報信号をサーバ4へ送信する機能をも備えている。
【0015】
受動型ICタグ18は、外部電源を必要としないICタグである。また、能動型ICタグ19は、バッテリ20からの電力により電波を発信するアクティブ型のICタグである。
【0016】
(固定端末の説明)
図3は固定端末Cの構成図を示したものである。この図において、固定端末Cは、車両A,Bと同じ構成を備えている。つまり、固定端末Cは、GPSセンサ11、ICタグリーダ13、通信端末15、通信コントローラ17、受動型ICタグ18、能動型ICタグ19を備えている。
【0017】
(通信コントローラの説明)
図4は車両A,Bの通信コントローラ17のブロック図を示している。ここで、この通信コントローラ17は、車両Aに搭載されたものとして説明する。通信コントローラ17は、ICタグ情報受信手段31、位置情報受信手段32、メンバーリスト作成手段33、メンバーリスト記憶部34、メンバーリスト照合手段35を備えている。
【0018】
ICタグ情報受信手段31は、ICタグリーダ13で認識された車両Bおよび固定端末Cに搭載の受動型ICタグ18、能動型ICタグ19の各ICタグ情報信号を受信し、受信したICタグ情報信号をメンバーリスト作成手段33へ送信する。
【0019】
位置情報送受信手段32は、GPSセンサ11が取得した車両Aの現在の位置情報信号を受信し、サーバ4へ送信する。
【0020】
メンバーリスト作成手段33は、ICタグ情報受信手段31から送信されたICタグ情報信号に基づいて車両Aでのメンバーリスト101(図5参照)を作成する。
なお、図5において、メンバーリスト101中の「車両A受」は、車両Aが受動型ICタグ18を有していることを意味し、「車両A能」も同様に、車両Aが能動型ICタグ19を有していることを意味している。また、「車両B受」、「車両B能」は、車両AのICタグ情報受信手段31が車両Bの受動型ICタグ18、能動型ICタグ19から各ICタグ情報を受信したことを意味する。同様に、「固定端末C受」、「固定端末C能」は、車両AのICタグ情報受信手段31が固定端末Cの受動型ICタグ18、能動型ICタグ19から各ICタグ情報を受信したことを意味する。
【0021】
ここで、図6に示す事例について作成されるメンバーリストを説明する。図6は、車両A,B、および固定端末Cがお互いに認識できる範囲に存在する場合を示している。車両AのICタグリーダ13が車両B、固定端末Cの各受動型ICタグ18と能動型ICタグ19とを認識すると、車両Aのメンバーリスト作成手段33は、車両B受、車両B能、固定端末C受、固定端末C能をリストアップし、さらに、車両A自身が受動型ICタグ18、能動型ICタグ19を有していることを加えることで、図5に示すメンバーリスト101を作成する。車両Bや固定端末Cのメンバーリスト作成手段33においても同様に、メンバーリスト102,103を作成することになる。
【0022】
メンバーリスト記憶部34は、メンバーリスト作成手段33により作成したメンバーリスト101を一時的に記憶する。
【0023】
メンバーリスト照合手段35は、ICタグ情報受信手段31が逐一受信したICタグ情報信号に基づいて新たに作成するメンバーリストと、メンバーリスト記憶部34に保存されているメンバーリストとを照合する機能を備えている。こうすることでメンバーリスト照合手段35は、車両A,B、および固定端末Cがお互いを認識できる位置に存在するか否かを判断する。判断した結果、メンバーリストが異なっているものである場合には、新たに作成されたメンバーリストを通信端末15を介してサーバ4へ送信する。
なお、車両B、固定端末Cの通信コントローラ17についても同様の構成、および機能を有している。
【0024】
(サーバの説明)
図7はサーバ4を示すブロック図である。サーバ4は、通信手段41、メンバーリスト更新登録手段42、グループリスト作成手段43、盗難車両特定手段44、グループリスト更新登録手段45、グループリスト記憶部46、車両グループデータベース51、盗難車両データベース52を備えている。
【0025】
通信手段41は、車両A,B、および固定端末Cと通信する機能を備えている。
メンバーリスト更新登録手段42は、車両A,B、固定端末Cよりメンバーリストを受信するとともに、車両グループデータベース51にメンバーリストを更新登録する機能を備えている。
【0026】
グループリスト作成手段43は、登録されたメンバーリストを基に図5に示すグループリスト201を作成する機能を備えている。具体的には、図5に示すように、グループリスト作成手段43は、車両グループデータベース51に登録された車両A,B、および固定端末Cで作成されるメンバーリスト101,102,103を参照して各メンバーリストの組み合わせ、車両A、車両B、および固定端末Cが同グループであることを判断し、グループリスト201を作成する。作成されたグループリスト201は、グループリスト記憶部46に一時的に保存される。
【0027】
盗難車両特定手段44は、グループリスト記憶部46に一時的に保存されたグループリストと、車両グループデータベース51に保存されているグループリストとを読み出し、各リストを照合することで盗難車両を特定するとともに、特定した車両を盗難車両データベース52へ登録する。
【0028】
グループリスト更新登録手段45は、盗難車両特定手段44がグループリストを照合した際に相違があれば、グループリスト記憶部46の保存してあるグループリストを車両グループデータベース51に更新登録する。
【0029】
車両グループデータベース51には、車両A,B、固定端末Cの最新のメンバーリストと、メンバーリストに基づいて作成された最新のグループリストとが保存されている。
盗難車両データベース52には、盗難車両特定手段44によって特定された盗難車両の機種番号(A,B・・・)や、車両および固定端末から送信されてくる位置情報が保存されている。
【0030】
以上のように構成された本システムでは、複数の車両A,Bがお互いの受動型ICタグ18および能動型ICタグ19を認識し合うことにより、車両A,Bの存在を確認できるため、仮に車両Bが車両Aの能動型ICタグ19を認識できない場合、車両Aを盗難車両として検知できる。
さらに、固定端末Cの受動型ICタグ18および能動型ICタグ19は、車両A,Bの受動型ICタグ18および能動型ICタグ19と認識し合うことにより、車両A,Bが同時に盗難された場合に車両A,Bを盗難車両として検知できる。
【0031】
(第1事例)
以下は、図6に示した状態から車両Aが盗難された場合の事例について、図8〜図10を参照し説明する。図8は、車両Aが当初、車両Bおよび固定端末Cから認識される範囲に存在し(図6参照)、その後に盗難された状態を示す図である。図9は、図8の状態において作成されるメンバーリスト、およびグループリストを示す図である。図10は、本システムを利用した場合のフローチャートである。
【0032】
まず、車両Bおよび固定端末Cの各通信コントローラ17に設けられたICタグ情報受信手段31は、図8に示す状態では、ICタグリーダ13により受動型ICタグ18、能動型ICタグ19の各ICタグ情報信号を受信する(図10のS1)。この後、各メンバーリスト作成手段33は、受信したICタグ情報信号を基に、図9に示すメンバーリスト111,112を作成する(S2)。この際、車両Aの受動型ICタグ18および能動型ICタグ19はいずれも、車両Bや固定端末Cによって認識されないため、図9に示すように、車両Bで作成されるメンバーリスト111、および固定端末Cで作成されるメンバーリスト112には、車両Aに関してはリストアップされない。なお、盗難にあっている車両Aは、バッテリ20やアンテナ12,16が外されている場合が多く、サーバ4との通信やGPSセンサ11による通信はできないため、サーバ4には車両Aからメンバーリストは送信されてこない。
【0033】
次に、車両Bおよび固定端末Cにおいて、例えば、各メンバーリスト記憶部34に、図5に示す当初のメンバーリスト102,103が保存されているとすると、それぞれのメンバーリスト照合手段35は、新たに作成されたメンバーリスト111,112とメンバーリスト102,103とを照合する(S3)。照合した結果、不一致であるので、各メンバーリスト照合手段35は、メンバーリスト記憶部34のデータをメンバーリスト111,112へ更新登録するとともに、作成したメンバーリスト111,112をサーバ4へ送信する(S4)。なお、反対に一致している場合には、メンバーリスト照合手段35は、メンバーリスト111,112をサーバ4には送信せず、破棄する(S5)。
【0034】
車両Bおよび固定端末Cの各メンバーリスト照合手段35がメンバーリスト111,112をサーバ4に送信すると、サーバ4側では通信手段41がメンバーリスト111,112を受信し、メンバーリスト更新登録手段42が車両グループデータベース51に保存されているメンバーリストを最新のものに更新登録する(S6)。そして、サーバ4のグループリスト作成手段43は、車両グループデータベース51を参照して、登録されたメンバーリスト111,112を基にグループリスト202を作成し、グループリスト記憶部46に一時的に保存する(S7)。具体的には、図9に示すように、車両グループデータベース51から読み出したメンバーリスト111,112を組み合わせて、グループリスト202を作成する。
【0035】
この後、車両グループデータベース51に当初のグループリスト201が登録されていた場合、盗難車両特定手段44は、車両グループデータベース51からグループリスト201を読み出し、グループリスト記憶部46に一時的に保存されたグループリスト202と照合する(S8)。照合した結果、不一致であるので、グループリスト更新登録手段45は、新しく作成されたグループリスト202を車両グループデータベース51に更新登録する(S9)。本事例においては、相違点は「車両A受、車両A能」である。そうすると、盗難車両特定手段44は、車両Aの受動型ICタグ18および能動型ICタグ19の両方のICタグ情報が認識されていないと判断して、車両Aを盗難車両と特定し、特定した車両Aを盗難車両データベース52へ登録する(S10)。また、反対に、一致している場合には作成したグループリストを破棄する(S11)。
【0036】
本事例によると、複数の車両A,B、および固定端末Cは、相互に認識し合うことが可能であるから、認識できなくなった車両Aが持ち去られたと即座に判断でき、盗難車両の特定を迅速に、かつ容易に行える。
【0037】
(第2事例)
第2事例について、図11、図12を参照して説明する。図11は、当初、車両Aと車両Bが固定端末Cから認識される範囲に居た場合、その後に車両Aと車両Bが同時に盗難されたことを示す図である。図12は、図11の状態下で作成されるメンバーリスト121、およびグループリスト203を示す図である。
【0038】
以下には、車両Aおとび車両Bが同時に盗難された場合のフローについて説明する。この場合でも、図10のフローチャートに基づいて盗難の判断がなされることになる。そこで、第1事例と異なるフローについてのみ説明する。
まず、図11に示す状態において、車両Aおよび車両Bが同時に盗難されているため、固定端末CのICタグ情報受信手段31は、車両Aおよび車両BからICタグ情報を受信することはない。従って、本事例において、固定端末Cのメンバーリスト作成手段33は、図12に示すように固定端末C自身のみがリストアップされたメンバーリスト121を作成することになる(S2)。
【0039】
次に、固定端末Cがサーバ4へメンバーリスト121を送信すると、サーバ4のグループリスト作成手段43は、メンバーリスト121を参照して、固定端末Cのみのグループリスト203を作成し、グループリスト記憶部46に一時的に保存する(S7)。盗難車両特定手段44は、車両グループデータベース51から当初のグループリスト201を読み出し、グループリスト記憶部46に保存されたグループリスト203と照合する(S8)。本事例においては、相違点は「車両A受、車両A能、車両B受、車両B能」である。そうすると、盗難車両特定手段44は、車両A、Bを盗難車両と特定し、特定した車両Aを盗難車両データベース52へ登録する(S10)。
本事例においても、第1事例と同様の効果を奏することができる。
【0040】
(第3事例)
第3事例について、図13、図14を参照して説明する。図13は、当初、車両Aが車両Bと固定端末Cから認識される範囲に居た場合、その後に車両Aのバッテリ20が外され、車両Aが盗難された可能性があることを示す図である。図14は、図13の状態下で作成されるメンバーリスト、およびグループリストを示す図である。
【0041】
以下には、車両Aのバッテリ20が外され、車両Aが盗難される可能性がある場合のフローについて説明する。この場合でも、図10のフローチャートに基づいて盗難の判断がなされることになる。そこで、第1事例と異なるフローについてのみ説明する。
まず、図13に示すように、車両Aに搭載された能動型ICタグ19へバッテリ20からの電力供給が停止している。従って、車両B、固定端末Cのメンバーリスト作成手段33は、図14に示すように「車両A能」が無いメンバーリスト131,132を作成する(S2)。
【0042】
次いで、メンバーリスト作成手段33は、作成されたメンバーリスト131,132をサーバ4へ送信する(S4)。一方のサーバ4では、グループリスト作成手段43が、図14に示すように「車両A能」が無いグループリスト204を作成し、グループリスト記憶部46に一時的に保存する(S7)。盗難車両特定手段44は、車両グループデータベース51から当初のグループリスト201を読み出し、グループリスト記憶部46に保存されたグループリスト204と照合する(S8)。本事例においては、相違点は「車両A能」である。そうすると、盗難車両特定手段44は、車両Aのバッテリ20が外されたことを特定でき、車両Aは盗難される可能性があると判断し、盗難車両データベース52へ車両Aを登録するとともに、車両Aを所有する所有者へ警報等を発信する(S10)。
【0043】
本事例においては、車両Aに搭載されたバッテリ20が外されたことをも認識することができるため、盗難にあう可能性を検知でき、実際に持ち去られるのを未然に防止できる。
【0044】
(第4事例)
第4事例について、図15、図16を参照して説明する。図15は、能動型ICタグ19への電力供給が停止された車両Aが、例えば持ち去られる途中において、固定端末Cから認識される範囲に移動してきた場合を示す図である。この場合の車両Aは、すでに盗難されているもので現在のグループリストには記録されていないものである。図16は、図15の状態下で作成されるメンバーリスト、およびグループリストを示す図である。
【0045】
以下には、能動型ICタグ19への電力供給が停止された車両Aが移動してきた場合のフローについて説明する。この場合でも、図10のフローチャートに基づいて盗難の判断がなされることになる。
まず、図15に示すように、車両Aは能動型ICタグ19への電力供給が停止されているため、車両Aが固定端末Cに近づくと、固定端末CのICタグリーダ13は車両Aの受動型ICタグ18からのICタグ情報のみを受信し、メンバーリスト作成手段33は、図16に示す「車両A受」と固定端末C自身がリストアップされたメンバーリスト142を作成する(S2)。この後、メンバーリスト照合手段35は、メンバーリスト記憶部34に保存されている図16のメンバーリスト141と照合する(S3)。その結果、不一致であるので、固定端末Cからサーバ4へメンバーリスト142を送信する。
【0046】
グループリスト作成手段43は、図16に示す「車両A受」、および固定端末Cの「固定端末C受」、「固定端末C能」自身がリストアップされたグループリスト206を作成し、グループリスト記憶部46に一時的に保存する(S7)。さらに、盗難車両特定手段44は、グループリスト記憶部46に保存されたグループリスト205と照合する。すると、新たに「車両A受」がリストアップされており、不一致であるから(S8)、グループリスト更新登録手段45は、新しく作成されたグループリスト206を車両グループデータベース51に更新登録する(S9)。そして、この際に盗難車両特定手段44は、車両Aが能動型ICタグ19への電源供給が停止されていると判断し、盗難車両の可能性が高いと判断する。そこで、盗難車両特定手段44は、盗難車両データベース52の盗難車両リストにあるかを検索する。盗難車両リストにあれば、固定端末Cの位置情報を車両Aに紐付け登録するとともに(S10)、車両Aの所有者には、盗難車両が発見された旨のメッセージを送信する。
【0047】
本事例では、盗難された可能性のある車両Aが固定端末Cから認識できる範囲に移動してきたときに、車両Aが盗難車両かどうかを判断し、盗難車両である場合にはその位置を特定でき、盗難車両を容易に回収できる。
【0048】
なお、本発明は前述の事例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれるものである。
【0049】
例えば、本発明は、管理センターにて固定端末Cの位置情報を、あらかじめ登録しておくことで、GPS衛星6やGPSセンサ11がない構成にしてもよい。これにより、コストを抑える効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、各種の建設機械や輸送機械等の盗難防止、および監視に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の作業機械の盗難防止監視システムの概略構成を示す模式図。
【図2】作業機械の構成を示す構成図。
【図3】固定端末の構成を示す構成図。
【図4】通信コントローラを示すブロック図。
【図5】図6の状態下において作成されるメンバーリストとグループリストとを示す図。
【図6】作業機械と固定端末との関係を示す図。
【図7】サーバを示すブロック図。
【図8】作業機械が盗難されたことを示す図。
【図9】図8の状態下において作成されるメンバーリストとグループリストとを示す図。
【図10】本システムを利用した場合のフローチャート。
【図11】2台の作業機械が同時に盗難されたことを示す図。
【図12】図10の状態下において作成されるメンバーリストとグループリストとを示す図。
【図13】作業機械のバッテリが外されたことを示す図。
【図14】図13の状態下において作成されるメンバーリストとグループリストとを示す図。
【図15】バッテリが外された作業機械が新たに認識されたことを示す図。
【図16】図15の状態下において作成されるメンバーリストとグループリストとを示す図。
【符号の説明】
【0052】
A,B…作業機械としての建設機械の車両、C…固定端末、4…サーバ、6…GPS衛星、11…GPSセンサ、13…ICタグリーダ、17…通信コントローラ、18…受動型ICタグ、19…能動型ICタグ、20…バッテリ、31…ICタグ情報受信手段、33…メンバーリスト作成手段、35…メンバーリスト照合手段、43…グループリスト作成手段、46…盗難特定手段である盗難車両特定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の盗難防止監視システムにおいて、
前記作業機械と、
作業現場に設置されている固定端末と、
前記作業機械および固定端末に対して遠隔した位置に配置されたサーバとを備え、
前記作業機械および固定端末には、
ICタグ情報を出力するため外部からの電力供給を必要としない受動型ICタグと、
ICタグ情報を出力するため外部からの電力供給を必要とする能動型ICタグと、
前記各ICタグからICタグ情報信号を受信するICタグ情報受信手段と、
受信した前記ICタグ情報信号に基づいて認識される作業機械および固定端末のリストを作成するメンバーリスト作成手段と、
前記メンバーリスト作成手段が作成するメンバーリストを保存するメンバーリスト記憶部と、
前記メンバーリスト記憶部に保存されたメンバーリストと前記メンバーリスト作成手段により新たに作成されたメンバーリストとを照合するメンバーリスト照合手段とが設けられ、
前記サーバには、
前記メンバーリスト作成手段が作成するメンバーリストを基にグループリストを作成するグループリスト作成手段と、
前記グループリスト作成手段が作成するグループリストを保存するグループリスト記憶部と、
前記グループリスト記憶部に保存されたグループリストと前記グループリスト作成手段により新たに作成されたグループリストとを照合して盗難を特定する盗難特定手段とが設けられている
ことを特徴とする作業機械の盗難防止監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−250365(P2008−250365A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87101(P2007−87101)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】