説明

作業車の二次電池充電マネージメント方法及び充電システム

【課題】電気作業車に取り付ける二次電池の使用・交換・充電といったローテーションスケジュールを効率化して、該二次電池の運用を効率良く行うことができる、作業車の二次電池充電マネージメント方法及び充電システムを提供する。
【解決手段】複数のフォークリフト(作業車)1〜4へ各々電源を供給するリチウムイオン電池A〜Eの残量を取り込むステップと、複数の作業車1〜4の現在から所定時間後までの予想消費電力を演算するステップと、リチウムイオン電池A〜Eの残量と該予想消費電力との差から、複数の作業車1〜4の電池交換優先順位を定めるための指標値を演算するステップと、前記指標値及び前記リチウムイオン電池A〜Eの充電受け入れ可能な許容量に基づき、該当する作業車1〜4に対して、帰還指令を出力するステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電池により駆動される電気作業車に係り、特に、電気作業車に取り付ける充電池の使用・交換・充電といったローテーションスケジュールを効率の良いものとすることが可能な、作業車の二次電池充電マネージメント方法及び充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気式フォークリフト等の電気作業車に搭載用の鉛電池の場合、急速充電(満充電を数時間以内に完了する)はできず、8時間程度までの連続稼働に対して、8時間以上をかけての緩充電(標準的な、電池に無理をかけない方式)を行う。緩充電では満充電での稼働時間に対して充電時間はそれと同じかそれ以上の時間を要する。
このため、高稼働のユーザー(24時間フル、あるいはそれに近い1日に占める1台当りの電気作業車の稼働時間が長いユーザー)では、1台のフォークリフフトに2〜3個の交換用鉛電池パックを用意し、搭載している電池パックの電気残量が無くなると、予め充電済みのものと交換ローテーションする。
【0003】
鉛電池パックが電気作業車に搭載中のものと交換用の計2個である場合には、8時間充電した直後の鉛電池パックを即座に、電気作業車に搭載する必要があるが、充電直後の鉛電池パックは加熱しており、放置冷却する必要性がある。その冷却を行わずに直に電気作業車に搭載して使用すると、電池パックの寿命の劣化が目立って早まる。そのため多くのユーザー(特に欧米)では、24時間の電気作業車の使用において、1台の電気作業車に対して3個の鉛電池パック(搭載中1個+交換用2個)を用意する、すなわち、8時間の電気作業車での搭載及び使用に対して1個、充電器での8時間の充電に対して1個、充電後8時間の冷却に対して1個、合計3個もの鉛電池パックを用意して、8時間毎のローテーションスケジュールを組んで運用している。
【0004】
なお、電気作業車である電気式フォークリフトに使用されるバッテリ又はその交換管理について、特許文献1〜3に示される技術が示されている。この中で、例えば、引用文献1に示されるフォークリフト用バッテリの充電システムでは、バッテリを充電するための充電器と、バッテリの引き出し操作を行ったことを検出して、その検出信号を出力する検出手段と、検出手段における検出信号に応答して、充電器を制御する制御手段とを含み、バッテリ引き出し検出信号の検出後の最初の1回の充電を均等充電として、バッテリダメージを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−118596号公報
【特許文献2】特開2004−266892号公報
【特許文献3】特開2004−32869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した電気作業車の駆動に際して、鉛電池を使用した場合には、充電に長時間を要し、鉛電池であるから、質量が大きく、取り扱い及び管理が面倒である。さらに、前述したようなローテーションスケジュールで鉛電池を運用した場合には、4台の電気作業車を有するユーザーにとっては、4台の緩充電器(充電時間:8時間以上)と、4台(電気作業車)×3個/台=12個の鉛電池パックが必要となり、このようなユーザーでは、充電とバッテリ保管のために、貴重な倉庫内面積が占有されるという問題も発生していた。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、電気作業車に取り付ける二次電池に例えば例としてリチウムイオン電池のような急速充電可能なものを使用し、該二次電池の使用・交換・充電といったローテーションスケジュールを効率化して、該二次電池の運用を効率良く行うことができる、作業車の二次電池充電マネージメント方法及び充電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。すなわち、本発明に示される作業車の充電マネージメント方法によれば、複数の作業車へ各々電源を供給する二次電池の残量を取り込むステップと、複数の作業車の現在から所定時間後までの予想消費電力を演算するステップと、前記二次電池の残量と該予想消費電力との差から、前記複数の作業車の電池交換優先順位を定めるための指標値を演算するステップと、前記指標値及び前記二次電池の充電受け入れ可能な許容量に基づき、該当する作業車に対して、帰還指令を出力するステップと、を有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明では、二次電池を搭載し、該二次電池から供給される電力によって作動する複数の作業車と、該作業車との間で通信を行うとともに、前記二次電池を充電する充電基地と、から構成された作業車の二次電池充電システムにおいて、前記複数の作業車の各々において、該作業車に電源を供給する二次電池の残量を測定する電池残量センサと、複数の作業車の各々において、該作業車の消費電力を測定する消費電力センサと、これら電池残量センサ、消費電力センサから得られたデータを前記充電基地へ送信するとともに、前記充電基地から前記複数の作業車へ充電を行わせるための帰還指令を送信する通信手段と、を有し、前記充電基地は、前記消費電力センサから受信したデータと、各作業車の作業予定データとから前記作業車の現在から所定時間経過後までの予想消費電力を算出するとともに、演算された予想消費電力と前記電池残量との差から、前記複数の作業車の電池交換優先順位を定め、該優先順位に従って該当する作業車を、前記充電基地へ戻る旨の帰還指令を出力する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の作業車から取り込んだ二次電池の残量と、該作業車の現在から所定時間後までの予想消費電力との差から、該作業車の電池交換優先順位を定めるための指標値を演算し、該指標値及び二次電池の充電受け入れ可能な許容量に基づき、該当する作業車に対して、帰還指令を出力するようにした。そして、このような作業車の運用及び二次電池の充電順位によって、作業車に取り付ける二次電池の使用・交換・充電といったローテーションスケジュールを効率化して、該二次電池の運用を効率良く行うことができ、その結果、従来のように予備電池を余計に用意する必要が無く、二次電池の効率的な運用が可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、複数の作業車にそれぞれ装填される二次電池の使用可能時間と、充電器による該二次電池の充電受け入れ可能な許容量とに基づき、これら複数の作業車の運用及び二次電池の充電スケジュールとを予め定め、該スケジュールに従って、該作業車による作業を実行させるようにした。そして、このような作業車の二次電池充電システム及び充電マネージメント方法によって、作業車に取り付ける二次電池の使用・交換・充電といったローテーションスケジュールを効率化して、該二次電池の運用を効率良く行うことができ、その結果、従来のように予備電池を余計に用意する必要が無く、二次電池の効率的な運用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に係る二次電池充電システムの全体図である。
【図2】図1の制御部を中心とした制御ブロック図である。
【図3】制御部の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】実施例1に係るフォークリフトの運用及びリチウムイオン電池の充電スケジュールを具体的に示すタイムチャートである。
【図5】実施例2に係る二次電池充電システムの全体図である。
【図6】図5の制御部を中心とした制御ブロック図である。
【図7】制御部の制御内容を示すフローチャートである。
【図8】実施例2に係るフォークリフトの運用及びリチウムイオン電池の充電スケジュールを具体的に示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
本発明の実施例1として示した充電マネージメント方法及び該充電マネージメント方法を使用した二次電池充電システムについて、図1〜図4を参照して説明する。
【0014】
本実施例では、図1及び図2に示すように、電気作業車であるフォークリフトを4台(図面に、作業車1、作業車2、作業車3、作業車4として示す)使用し、二次電池として急速充電可能なリチウムイオン電池(電池A〜E)を5個使用し、バッテリ充電器を1台使用している。
なお、5個のリチウムイオン電池の中で、4個は充電を完了した状態で4台のフォークリフトにそれぞれ装填され、1個は予備電池として使用される。
【0015】
また、バッテリ充電器は、リチウムイオン電池(電池A〜E)を急速充電を可能とするものであって、通常では、4時間のリチウムイオン電池の使用に対して1時間の急速充電を行うことにより、再び、4時間の使用が可能となる。このようなリチウムイオン電池では、4時間稼動した場合に1時間で充電が完了し、8時間稼動した場合に2時間で充電が完了するが、本例では、リチウムイオン電池を(最大)4時間使用し、その後、1時間で充電を完了させる「急速充電」の場合について説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る二次電池充電システムの全体を示す概略図であって、符号1〜4は電気作業車(作業車1、作業車2、作業車3、作業車4)となるフォークリフトである。このフォークリフト1〜4には、上述したリチウムイオン電池(電池A〜E:後述する)がそれぞれ装填されるとともに、図2に詳細に示すように、該リチウムイオン電池の残量を測定する電池残量センサ1A〜4Aと、該フォークリフト1〜4の消費電力を測定する消費電力センサ1B〜4Bと、該フォークリフト1〜4の位置を示す位置センサ1C〜4Cとがそれぞれ設けられている。
【0017】
また、図1に符号10で示すものは基地局であって、この基地局10には、フォークリフト1〜4を制御するための制御部C1、フォークリフト1〜4に装填されたリチウムイオン電池を充電するための1台のバッテリ充電器11が設けられている。
また、この基地局10と、フォークリフト1〜4との間には、通信手段12が設けられており、この通信手段12を通じて、フォークリフト1〜4の電池残量センサ1A〜4A、消費電力センサ1B〜4B、及び位置センサ1C〜4Cの検出データが制御部C1に供給され、一方、制御部C1からフォークリフト1〜4へは、リチウムイオン電池を充電するための帰還指令が出力されるようになっている。
また、制御部C1には、該制御部C1での演算結果を表示するための表示部13、各種データを入力するための入力手段14が設けられている。
【0018】
前記制御部C1は、図2に示すように、信号送受信部20、指標値演算部21、充電スケジュール決定部22を有するものであり、信号送受信部20では、通信手段12を通じて、フォークリフト1〜4から、電池残量センサ1A〜4A、消費電力センサ1B〜4B、位置センサ1C〜4Cでの検出データを受信し、また、フォークリフト1〜4に対して充電のための帰還信号を発信する。
【0019】
また、前記制御部C1の指標値演算部21では、電池残量センサ1A〜4A、消費電力センサ1B〜4B及び位置センサ1C〜4Cの検出データに基づき、いずれのフォークリフト1〜4を基地局10に帰還させて、バッテリ充電器11にてリチウムイオン電池(電池A〜E)の充電を行わせるかの判断因子となる、指標値(Zn)を計算する。このような指標値(Zn)の計算は、例えば「Zn=Qn−(Ln+f(Wn))」という計算式を用いて行われる。ここで、「Qn」は、電池残量センサ1A〜4Aでの検出データを基にしたリチウムイオン電池(電池A〜E)の電池残量を示す値である。「Ln」は、外に出ているフォークリフト1〜4が基地局10に戻るまでに要する電力量を示す値であり、位置センサ1C〜4Cからの検出データと予め記憶させておいた単位時間当たりの消費電力値とから計算する。また、「f(Wn)」は、予め定めたおいた直近(例えば10分先)までの電力消費量を示す値であって、消費電力センサ1B〜4Bからの検出データを基にして計算する。
【0020】
また、前記制御部C1の充電スケジュール決定部22では、指標値演算部21で計算された指標値(Zn)を、フォークリフト1〜4毎に計算した指標値(Zn)を比較して、リチウムイオン電池(電池A〜E)の消耗の度合いから電池交換の優先順位を付けるとともに、該優先順位に従って、指標値(Zn)が最小となるフォークリフト1〜4を基地局10に帰還させる指示を出力する。そして、このような帰還指示に基づき、該フォークリフト1〜4に搭載されていたリチウムイオン電池を、バッテリ充電器11にて充電済のリチウムイオン電池と交換する作業を行わせる。
【0021】
ここで、フォークリフト1〜4の作業内容、及びリチウムイオン電池A〜Eの交換手順について、図3に示す前記制御部C1の処理ステップと、図4に示すタイムチャートを参照して説明する。
【0022】
なお、図4のタイムチャートにおいて、リチウムイオン電池A〜Dはそれぞれのフォークリフト1〜4に最初に搭載され、リチウムイオン電池Eは予備に用意されると、規定する。また、フォークリフト1〜4による荷役作業を開始(開始時間8時)するに当たり、各リチウムイオン電池A〜Eは予めフルに充電されていることを前提とする。また、図4のタイムチャートに示すリチウムイオン電池の交換処理は、〔1〕バッテリ充電器11でのリチウムイオン電池A〜Eの充電時間(本例では1時間)、〔2〕フォークリフト1〜4の台数(本例では4台)、〔3〕予備電池及びバッテリ充電器11の個数(本例では各1個)、〔4〕(リチウムイオン電池A〜Dの)フォークリフトの標準運用での最大使用可能時間(本例では4時間)に基づくものであり、このような〔1〕〜〔4〕のデータは入力手段14を通じて予め制御部C1に入力しておく。
【0023】
《ステップ1》
全車が朝8時に出発した後、予め定めた一定の時間間隔(例えば5分間隔)に、フォークリフト1〜4から、電池残量センサ1A〜4A、消費電力センサ1B〜4B、位置センサ1C〜4Cからの検出データを受信する。
【0024】
《ステップ2》
ステップ1でのデータ受信に基づき、各フォークリフト1〜4における指標値(Zn)を、先の演算式から予め定めた一定時間毎(例えば5分間隔)に演算する。
【0025】
《ステップ3》〜《ステップ4》
ステップ2で計算した各フォークリフト1〜4毎の指標値(Zn)を比較して、リチウムイオン電池(電池A〜E)の消耗の度合いから電池交換の優先順位を付けた後(ステップ3)、優先順位の高い1台のフォークリフト1〜4を基地局10に帰還させて、そのリチウムイオン電池を交換する(ステップ4)。
具体的には、図4のタイムチャートに示すように、例えば9時の時点で、フォークリフト1が非常に負荷の大きい作業をしており、リチウムイオン電池Aが他のリチウムイオン電池B〜Eと比較して大きく消耗していると判断した場合には、フォークリフト1を基地局10に帰還させて、予め8時から充電しておいた予備電池であるリチウムイオン電池Eと交換する。そして、ここでフォークリフト1から取り外したリチウムイオン電池Aは、バッテリ充電器11で充電する。
【0026】
その後、10時の時点でフォークリフト3が負荷の大きい作業をしており、リチウムイオン電池Cが他のリチウムイオン電池と比較して大きく消耗していると判断した場合には、フォークリフト3を基地局10に帰還させて、予め充電しておいた先のリチウムイオン電池Aと交換する。そして、ここでフォークリフト3から取り外したリチウムイオン電池Cは、バッテリ充電器11で充電する。
その後、11時の時点でフォークリフト4が負荷の大きい作業をしており、リチウムイオン電池Dが他のリチウムイオン電池と比較して大きく消耗していると判断した場合には、フォークリフト4を基地局10に帰還させて、予め充電しておいた先のリチウムイオン電池Cと交換する。そして、ここでフォークリフト4から取り外したリチウムイオン電池Dは、バッテリ充電器11で充電する。そして、以上のようなリチウムイオン電池の消耗に応じた交換を繰り返すことによって、フォークリフト1〜4の連続した作業を行わせる。
【0027】
そして、このようなバッテリ充電器11での充電処理は、該バッテリ充電器11の台数及び充電時間に左右されるものであり、従って、上記ステップにて、このようなバッテリ充電器11でのリチウムイオン電池の受け入れ可能な許容量(1時間に1個のリチウムイオン電池を充電できるという受け入れ可能な許容量)に基づき、前述のリチウムイオン電池A〜Eの交換順位(図4の下段参照)を決定する。また、フォークリフト1〜4による荷役作業が終了した後には、充電処理の末尾に示すように、翌日の処理に備えて全てのリチウムイオン電池A〜Eをフル充電する。
【0028】
以上詳細に説明したように本発明の実施例1に示す電気作業車の二次電池充電システム及び充電マネージメント方法によれば、複数のフォークリフト1〜4の現在から所定時間後までの予想消費電力と、リチウムイオン電池A〜Eの残量との差から、前記複数のフォークリフト1〜4のリチウムイオン電池A〜Eの交換優先順位を定めるための指標値を演算した後、該指標値及び前記バッテリ充電器11でのリチウムイオン電池A〜Eの充電受け入れ可能な許容量に基づき、該当するフォークリフト1〜4に対して、帰還指令を出力するようにした。すなわち、このような電気作業車の二次電池充電システム及び充電マネージメント方法によって、フォークリフト1〜4に取り付けるリチウムイオン電池A〜Eの使用・交換・充電といったローテーションスケジュールを効率化して、該リチウムイオン電池A〜Eの運用を効率良く行うことができ、従来のように予備電池を余計に用意する必要が無く、二次電池の効率的な運用が可能となる。
【0029】
なお、図4のタイムチャートに示すようなリチウムイオン電池A〜Eの交換順位では、バッテリ充電器11でのリチウムイオン電池の受け入れ可能な許容量(1時間に1個のリチウムイオン電池を充電できるという受け入れ可能な許容量)に制限されるために、状況に応じて複数のリチウムイオン電池A〜Eが順番待ちすることも予想されるが、その場合には、例えば、フル充電せずに部分充電のみで対応する、いずれか1台のフォークリフト1〜4の運転を休止する、予備電池となるリチウムイオン電池/バッテリ充電器11をもう1台増やす、などで対応すると良い。
【0030】
また、ステップ2で計算した各フォークリフト1〜4における指標値(Zn)が、マイナスになる、すなわち、電池容量の残量不足により、現在の作業を完了させるのに支障が出ると判断された場合には、当該作業の中止、スケジュールの変更(予定時間まで待つ)などの措置を行い、例えば、電池残量不足になっていない代替のフォークリフト1〜4により作業を続行させるようにしても良い。
【0031】
また、上記実施例1では、フォークリフト1〜4を例に挙げたが、これに限定されず、電気自動車、電動式のカートなどの電気作業車に適用しても良い。
このとき、数十キロ、数百キロ遠方まで出向いて荷物を運搬する電気自動車に適用する場合には、電気自動車に搭載したリチウムイオン電池が走行途中で消耗しないように、前述した指標値(Zn)を常に監視することで、このような作業途中での走行停止というトラブルを未然に防止することができる。
【0032】
また、図4で示す複数のフォークリフト1〜4の運用及びリチウムイオン電池A〜Eの充電順位は一例を示すものであり、上述した〔1〕〜〔4〕のデータ内容、及び作業負荷により刻々と変化する指標値(Zn)に応じて適宜、変更されることは言うまでもない。
【0033】
[実施例2]
本発明の実施例2として示した充電マネージメント方法及び該充電マネージメント方法を使用した二次電池充電システムについて、図5〜図8を参照して説明する。実施例2が実施例1と異なる点は、フォークリフト1〜4に搭載したセンサの検出値に基づき電池交換順位を定めるのではなく、予め設定した電池交換スケジュールに従って電池交換を行うようにした点である。
また、実施例1との共通な技術事項は、バッテリ充電器11によるリチウムイオン電池A〜Eの受け入れ可能な許容量(例えば、1時間に1個のリチウムイオン電池を充電できるという受け入れ可能な許容量)に基づき、これら複数のフォークリフト1〜4の運用及びリチウムイオン電池A〜Eを予め定めるようにした点である。
【0034】
図5は、実施例2を示す全体構成図であって、図1との相違点は、符号C2で示す制御部の制御内容の他、フォークリフト1〜4にセンサ類が備えられていない点である。
【0035】
ここで、実際例2の制御部C2は、複数のフォークリフト1〜4にそれぞれ装填されるリチウムイオン電池A〜Eの使用可能時間と、バッテリ充電器11による該リチウムイオン電池A〜Eの充電受け入れ可能な許容量とに基づき、これら複数のフォークリフト1〜4の運用及び前記リチウムイオン電池A〜Eの充電スケジュールとを予め定めるスケジュール作成部30と、該スケジュール作成部30で作成されたフォークリフト1〜4の運用及びリチウムイオン電池A〜Eの充電スケジュールに従って、前記フォークリフト1〜4の作業を実行させるスケジュール発信部31とから構成される。
【0036】
そして、このような制御部C2の制御内容を、ステップで示すと図7で示すようになる。
《ステップ1》
まず、ステップ1において、フォークリフト1〜4の運用及び前記リチウムイオン電池A〜Eの充電スケジュールを予め定めるために必要な各種データを、入力手段14を通じて入力する。ここで入力するデータとしては、〔1〕バッテリ充電器11でのリチウムイオン電池A〜Eの充電時間(本例では1時間)、〔2〕フォークリフト1〜4の台数(本例では4台)、〔3〕予備電池及びバッテリ充電器11の個数(本例では各1個)、
〔4〕(リチウムイオン電池A〜Dの)フォークリフトの標準運用での最大使用可能時間(本例では4時間)である。
【0037】
《ステップ2》
次に、スケジュール作成部30において、複数のフォークリフト1〜4にそれぞれ装填されるリチウムイオン電池A〜Eの使用可能時間、及びバッテリ充電器11による該リチウムイオン電池A〜Eの充電受け入れ可能な許容量(ステップ1で入力したデータによる)に基づき、これら複数のフォークリフト1〜4の運用及びリチウムイオン電池A〜Eの充電スケジュール(図8参照)を予め定める。
具体的には、図8で示すように、1時間毎に、バッテリ充電器11にてリチウムイオン電池A〜Eが1個ずつ順番に受け入れ可能なようにするために、まず、作業開始1時間前の朝7時からフォークリフト1に装填するリチウムイオン電池Aの充電を開始し、その後、8時に、該リチウムイオン電池Aをフォークリフト1に装填して出発させた後、次のフォークリフト2で使用するリチウムイオン電池Bの充電を開始する。その後、9時に、該リチウムイオン電池Bをフォークリフト2に装填して出発させた後、次のフォークリフト3で使用するリチウムイオン電池Cの充電を開始する。その後、10時に、該リチウムイオン電池Cをフォークリフト3に装填して出発させた後、次のフォークリフト4で使用するリチウムイオン電池Dの充電を開始する。
その後、11時に、該リチウムイオン電池Dをフォークリフト4に装填して出発させた後、先に出発しかつ12時に帰還予定のフォークリフト1で使用するためのリチウムイオン電池E(予備電池となる)の充電を開始する。その後、12時に、該リチウムイオン電池Eを、4時間が経過して帰還したフォークリフト1に装填して出発させるとともに、該フォークリフト1から取り外したリチウムイオン電池Aの充電を開始する、というスケジュールを決定する。
そして、このような処理を順次繰り返すことで、フォークリフト1〜4による荷役作業と、バッテリ充電器11によるリチウムイオン電池A〜Eの充電とを中断することなく連続的に行うことができる。
【0038】
《ステップ3》
作業開始前に、通信手段12を通じて、先のステップで決定した図8に示すような、フォークリフト1〜4の運用及びリチウムイオン電池A〜Eの充電スケジュールを各フォークリフト1〜4に送信し、該スケジュールに従ってフォークリフト1〜4に対して荷役及びリチウムイオン電池A〜Eの充電作業を実行させる。
【0039】
以上詳細に説明したように本発明の実施例2に示す電気作業車の二次電池充電システム及び充電マネージメント方法によれば、複数のフォークリフト1〜4にそれぞれ装填されるリチウムイオン電池A〜Eの使用可能時間と、充電器による該リチウムイオン電池A〜Eの充電受け入れ可能な許容量とに基づき、これら複数のフォークリフト1〜4の運用及びリチウムイオン電池A〜Eの充電スケジュールとを予め定め、該スケジュールに従って、該フォークリフト1〜4に対して荷役作業及びリチウムイオン電池A〜Eの充電作業を実行させるようにした。すなわち、このような作業車の二次電池充電システム及び充電マネージメント方法によって、フォークリフト1〜4に取り付けるリチウムイオン電池A〜Eの使用・交換・充電といったローテーションスケジュールを効率化して、該リチウムイオン電池A〜Eの運用を効率良く行うことができ、従来のように予備電池を余計に用意する必要が無く、二次電池の効率的な運用が可能となる。
【0040】
なお、図8で示す複数のフォークリフト1〜4の運用及びリチウムイオン電池A〜Eの充電スケジュールは一例を示すものであり、上述した〔1〕〜〔4〕のデータ内容に応じて適宜、変更されることは言うまでもない。
【0041】
なお、上記実施例2では、フォークリフト1〜4を例に挙げたが、これに限定されず、電気自動車、電動式のカートなどの電気作業車に適用しても良い。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、フォークリフト、電気自動車、電動式のカートなど充電池により駆動される電気作業車に係り、特に、電気作業車に取り付ける充電池の使用・交換・充電といったローテーションスケジュールを効率の良いものとすることができる、作業車の二次電池充電マネージメント方法及び充電システムに関する。
【符号の説明】
【0044】
1 フォークリフト(作業車1)
2 フォークリフト(作業車2)
3 フォークリフト(作業車3)
4 フォークリフト(作業車4)
1A〜4A 電池残量センサ
1B〜4B 消費電力センサ
C1 制御部
C2 制御部
A リチウムイオン電池
B リチウムイオン電池
C リチウムイオン電池
D リチウムイオン電池
E リチウムイオン電池(予備電池)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業車へ各々電源を供給する二次電池の残量を取り込むステップと、
複数の作業車の現在から所定時間後までの予想消費電力を演算するステップと、
前記二次電池の残量と該予想消費電力との差から、前記複数の作業車の電池交換優先順位を定めるための指標値を演算するステップと、
前記指標値及び前記二次電池の充電受け入れ可能な許容量に基づき、該当する作業車に対して、帰還指令を出力するステップと、を有することを特徴とする作業車の充電マネージメント方法。
【請求項2】
前記二次電池の残量不足により、現在の作業を完了させるのに支障が出ると判断された場合には、当該作業の中止、スケジュールの変更等を行わせることを特徴とする請求項1に記載の作業車の充電マネージメント方法。
【請求項3】
前記予想消費電力は、作業車が基地に帰還するまでの電力消費量を含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の作業車の充電マネージメント方法。
【請求項4】
複数の作業車にそれぞれ装填される二次電池の使用可能時間と、充電器による該二次電池の充電受け入れ可能な許容量とに基づき、これら複数の作業車の運用及び前記二次電池の充電スケジュールとを予め定めるステップと、
前記作業車の運用及び二次電池の充電スケジュールに従って、前記作業車による作業を実行させるステップと、を有することを特徴とする作業車の充電マネージメント方法。
【請求項5】
前記作業車の運用及び二次電池の充電スケジュールに基づき、前記作業車を一定時間毎に出発させることを特徴とする請求項4に記載の作業車の充電マネージメント方法。
【請求項6】
前記二次電池はリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車の充電マネージメント方法。
【請求項7】
前記作業車は電気フォークリフトであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車の充電マネージメント方法。
【請求項8】
二次電池を搭載し、該二次電池から供給される電力によって作動する複数の作業車と、該作業車との間で通信を行うとともに、前記二次電池を充電する充電基地と、
から構成された作業車の二次電池充電システムにおいて、
前記複数の作業車の各々において、該作業車に電源を供給する二次電池の残量を測定する電池残量センサと、
複数の作業車の各々において、該作業車の消費電力を測定する消費電力センサと、
これら電池残量センサ、消費電力センサから得られたデータを前記充電基地へ送信するとともに、前記充電基地から前記複数の作業車へ充電を行わせるための帰還指令を送信する通信手段と、を有し、
前記充電基地は、前記消費電力センサから受信したデータと、各作業車の作業予定データとから前記作業車の現在から所定時間経過後までの予想消費電力を算出するとともに、演算された予想消費電力と前記電池残量との差から、前記複数の作業車の電池交換優先順位を定め、該優先順位に従って該当する作業車を、前記充電基地へ戻る旨の帰還指令を出力する制御部と、を有することを特徴とする作業車の二次電池充電システム。
【請求項9】
前記二次電池の残量不足により、現在の作業を完了させるのに支障が出ると判断された場合には、当該作業の中止、スケジュールの変更等を行わせることを特徴とする請求項8に記載の作業車の二次電池充電システム。
【請求項10】
前記予想消費電力は、作業車が基地に帰還するまでの電力消費量を含むことを特徴とする請求項8又は9のいずれか1項に記載の作業車の二次電池充電システム。
【請求項11】
複数の作業車にそれぞれ装填される二次電池の使用可能時間と、充電器による該二次電池の充電受け入れ可能な許容量とに基づき、これら複数の作業車の運用及び前記二次電池の充電スケジュールとを予め定めるスケジュール作成部と、
前記作業車の運用及び二次電池の充電スケジュールに従って、前記作業車による作業を実行させるスケジュール発信部とからなる制御部を有することを特徴とする作業車の二次電池充電システム。
【請求項12】
前記作業車の運用及び二次電池の充電スケジュールに基づき、前記作業車を一定時間毎に出発させることを特徴とする請求項11に記載の二次電池充電システム。
【請求項13】
前記二次電池はリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の作業車の二次電池充電システム。
【請求項14】
前記作業車は電気フォークリフトであることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の作業車の二次電池充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−142704(P2011−142704A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−423(P2010−423)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】