説明

作業車両

【課題】ミッションケース17内に油圧無段変速機29をコンパクトに設置できるものでありながら、ミッションケース17を低コストに製造可能な作業車両を提供する。
【解決手段】ミッションケース17に、エンジン5からの動力が伝達される主変速入力軸27と、油圧無段変速機29と、走行駆動輪(後車輪4)に動力を伝達する後輪用差動ギヤ機構58を設けた作業車両において、ミッションケース17の内部に前室34と後室35とを形成し、前室34の外側方から前室34を介して後室35に主変速入力軸27を延長し、後室35内の主変速入力軸27上に油圧無段変速機29を配置し、後室35内には、後輪用差動ギヤ機構58を油圧無段変速機29に隣接させて配置し、後室35内から後室35の後方に突出させるPTO軸23を更に備え、油圧無段変速機29と後輪用差動ギヤ機構58とPTO軸23の三者を後室35内に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業に使用されるトラクタまたは土木作業に使用されるホイルローダ等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、前記したトラクタまたはホイルローダ等では、機体フレームの前部にエンジンを設置し、機体フレームの後部にミッションケースを設置し、前後の車輪によって機体を支える。この場合、前記ミッションケースには、走行変速ギヤ機構、差動ギヤ機構、PTO変速ギヤ機構などが内設され、機体前部のエンジンから機体後部のミッションケースに動力伝達し、ミッションケースの差動ギヤ機構から少なくとも左右の後車輪に動力伝達し、同じくPTO変速ギヤ機構から作業部に動力伝達するように構成している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献2に開示されるインライン式油圧無段変速機が、前記トラクタ等の走行変速機構に組付けられる。特許文献2に示されるように、前記油圧無段変速機は、エンジンから入力軸を介して動力を伝える油圧ポンプ部と、後車輪等に出力軸を介して油圧変速出力を伝える油圧モータ部とにより構成される。前記入力軸と出力軸とが同心状に配置され、入力軸に被嵌して一体的に回転するシリンダブロックを挟んで、一側にて油圧ポンプ部が入力軸に被嵌され、シリンダブロックの他側にて油圧モータ部が入力軸に被嵌されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−277889号公報
【特許文献2】特開2002−89655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし乍ら、特許文献2の技術を特許文献1のトラクタに適用した場合、例えば、走行変速ギヤ機構及び差動ギヤ機構及びPTO変速ギヤ機構等がミッションケースに内設される伝動構造において、前記油圧無段変速機の出力側に走行変速ギヤ機構の入力側が連結され、走行変速ギヤ機構の出力側に差動ギヤ機構の入力側が連結され、後車輪に走行駆動力が出力される。また、前記油圧無段変速機の入力側にPTO変速ギヤ機構が連結され、PTO変速ギヤ機構の出力側に作業部の入力側が連結され、耕耘作業機等の作業部に作業駆動力が出力される。そのため、ミッションケースに前記油圧無段変速機を内設させることによって、ミッションケースが大型化したり、大重量になったり、組立て作業が複雑になって製造コストが高くなる等の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、ミッションケース内に前記油圧無段変速機をコンパクトに設置できるものでありながら、ミッションケースを低コストに製造できるようにした作業車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の作業車両は、ミッションケースに、エンジンからの動力が伝達される入力軸と、油圧無段変速機と、走行駆動輪に動力を伝達する差動ギヤ機構を設けた作業車両において、前記ミッションケースの内部に前室と後室とを形成し、前記前室の外側方から前記前室を介して前記後室に前記入力軸を延長し、前記後室内の前記入力軸上に前記油圧無段変速機を配置し、前記後室内には、前記差動ギヤ機構を前記油圧無段変速機に隣接させて配置し、前記後室内から前記後室の後方に突出させるPTO軸を更に備え、前記油圧無段変速機と前記差動ギヤ機構と前記PTO軸の三者を前記後室内に位置させたというものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記後室内には、前記差動ギヤ機構の差動出力軸が前記油圧無段変速機よりも低位置にくるように前記差動ギヤ機構を配置すると共に、前記差動ギヤ機構の差動出力軸よりも低位置にくるように前記PTO軸を配置し、前記後室内において、前記差動ギヤ機構の同一側方に片寄らせて、前記PTO軸と前記油圧無段変速機とを位置させたというものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の作業車両において、前記ミッションケースの上面側のうち前記後室の内部に連通した上面側開口部に油圧装置を着脱可能に設ける構造であって、前記油圧装置の下面側に前記油圧無段変速機の上面側を対向させるように構成したというものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明は、ミッションケースに、エンジンからの動力が伝達される入力軸と、油圧無段変速機と、走行駆動輪に動力を伝達する差動ギヤ機構を設けた作業車両において、前記ミッションケースの内部に前室と後室とを形成し、前記前室の外側方から前記前室を介して前記後室に前記入力軸を延長し、前記後室内の前記入力軸上に前記油圧無段変速機を配置し、前記後室内には、前記差動ギヤ機構を前記油圧無段変速機に隣接させて配置し、前記後室内から前記後室の後方に突出させるPTO軸を更に備え、前記油圧無段変速機と前記差動ギヤ機構と前記PTO軸の三者を前記後室内に位置させたものであるから、例えば複数組のギヤ機構などが前記ミッションケースの内部に設置されるトラクタ等の伝動構造であっても、前記後室内に前記差動ギヤ機構、前記油圧無段変速機及びPTO軸を簡単に設置できる。前記油圧無段変速機が内蔵される前記ミッションケースを小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0011】
請求項2の発明によると、前記後室内には、前記差動ギヤ機構の差動出力軸が前記油圧無段変速機よりも低位置にくるように前記差動ギヤ機構を配置すると共に、前記差動ギヤ機構の差動出力軸よりも低位置にくるように前記PTO軸を配置し、前記後室内において、前記差動ギヤ機構の同一側方に片寄らせて、前記PTO軸と前記油圧無段変速機とを位置させたものであるから、前記差動ギヤ機構の差動ギヤケースを挟んで、一側方に前記差動ギヤ機構のリングギヤを、他側方に前記PTO軸と前記油圧無段変速機をそれぞれ配置できる。前記後室内の一側に片寄らせて大径のリングギヤを設置でき、前記入力軸上で油圧ポンプ及び油圧モータ等を回転させる前記油圧無段変速機を高位置に設け、前記油圧無段変速機よりも前記ミッションケース内の作動油の撹拌抵抗が小さい前記PTO軸を低位置に設け、前記ミッションケースをコンパクトに形成できるものでありながら、前記ミッションケース内の作動油が前記油圧無段変速機にて撹拌されるのを抑制して、前記油圧無段変速機の作動油の撹拌抵抗を低減でき、前記油圧無段変速機の伝動効率を向上できる。
【0012】
請求項3の発明によると、前記ミッションケースの上面側のうち前記後室の内部に連通した上面側開口部に油圧装置を着脱可能に設ける構造であって、前記油圧装置の下面側に前記油圧無段変速機の上面側を対向させるように構成したものであるから、前記油圧装置の下面側から前記油圧無段変速機の上面側に向けて前記油圧装置の作動油が流下され、前記ミッションケース内に戻る前記油圧装置の作動油を、前記油圧無段変速機の潤滑油として活用できる。例えば、前記ミッションケース内に貯蔵する作動油の油面を前記油圧無段変速機よりも低くして、前記油圧無段変速機による作動油の撹拌抵抗をなくすことができ、前記油圧無段変速機等の伝動効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】農作業用のトラクタの側面図である。
【図2】トラクタの斜め後方斜視図である。
【図3】トラクタの側面説明図である。
【図4】トラクタ機体の斜視図である。
【図5】動力伝達のスケルトン図である。
【図6】ミッションケースの走行変速部の説明図である。
【図7】ミッションケースのPTO変速部の説明図である。
【図8】ミッションケースの無断変速機の説明図である。
【図9】ミッションケースの無段変速機の油圧回路図である。
【図10】ミッションケースの平面視断面説明図である。
【図11】図10の拡大説明図である。
【図12】ミッションケースの背面視説明図である。
【図13】ミッションケースの内部を示す平面視説明図である。
【図14】ミッションケースの内部を示す側面視説明図である。
【図15】ミッションケースの内部を示す斜視説明図である。
【図16】ミッションケースのPTO変速部の拡大説明図である。
【図17】図16の拡大説明図である。
【図18】ミッションケースの内部を示す底面説明図である。
【図19】オイルフイルタと電磁弁を示す底面斜視図である。
【図20】オイルフイルタを取り外した底面斜視図である。
【図21】走行制御説明図である。
【図22】走行制御のフローチャートである。
【図23】無段変速機の変速操作部を示す側面図である。
【図24】無段変速機の変速操作部を示す平面図である。
【図25】無段変速機の変速操作部を示す前方斜視図である。
【図26】無段変速機と後側壁部材を示す斜視図である。
【図27】無段変速機の変速操作部を示す後方斜視図である。
【図28】主変速アームの説明図である。
【図29】主変速アームの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、作業車としての農作業用トラクタに適用した場合の図面について説明する。図1はトラクタの側面図、図2は同後方斜視図、図3は側面説明図、図4はトラクタ機体の斜視図、図5は動力伝達のスケルトン図である。
【0015】
図1乃至4に示す如く、トラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持し、前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、前後進走行するように構成される。エンジン5はボンネット6にて覆われる。また、前記走行機体2の上面にはキャビン7が設置され、該キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りすることによって前車輪3を左右に動かすようにした操縦ハンドル9とが設置される。キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ10が設けられ、該ステップ10より内側で且つキャビン7底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
【0016】
また、前記走行機体2は、前バンパ12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部にボルト15にて着脱自在に固定する左右の機体フレーム16とにより構成される。機体フレーム16の後部には、前記エンジン5の回転を適宜変速して後車輪4及び前車輪3に伝達するためのミッションケース17が連結されている。この場合、後車輪4は、前記ミッションケース17に対して、当該ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18、及びこの後車軸ケース18の外側端に後方に延びるように装着されたギヤケース19を介して取付けられている。
【0017】
前記ミッションケース17の後部における上面には、耕うん機等の作業機(図示せず)を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取付けられている。前記耕うん機等の作業機は、ミッションケース17の後部にロワーリンク21及びトップリンク22を介して連結される。さらに、ミッションケース17の後側面に、前記耕うん機等の作業機に対するPTO軸23が後向きに突出するように設けられている。
【0018】
さらに、図5乃至図7は前記ミッションケース17を示す。ミッションケース17は、この内部を仕切り壁31にて前後に仕切られる。ミッションケース17の前側には、前側壁部材32がボルトにて着脱自在に固定される。ミッションケース17の後側には、後側壁部材33がボルトにて着脱自在に固定される。ミッションケース17は箱形に構成され、ミッションケース17の内部には、前室34と後室35とが形成される。前室34と後室35は、これらの内部の作動油(潤滑油)が相互に移動するように連通されている。
【0019】
図5に示されるように、前側壁部材32には、後述する前車輪駆動ケース69が備えられる。前室34には、後述する走行副変速ギヤ機構30と、PTO変速ギヤ機構96とが配置される。後室35には、後述する走行主変速機構である油圧無段変速機29と、差動ギヤ機構58とが配置される。
【0020】
前記エンジン5の後側面には、エンジン出力軸24が後ろ向きに突出するように設けられる。エンジン出力軸24には、フライホイール25が直結するように取付けられている。フライホイール25から後ろ向きに突出する主動軸26と、ミッションケース17の前面から前向きに突出する主変速入力軸27との間を、両端に自在軸継ぎ手を備えた伸縮式の動力伝達軸28を介して連結する。前記エンジン5の回転を、ミッションケース17における主変速入力軸27に伝達し、次いで、油圧無段変速機29と、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速して、差動ギヤ機構58を介して後車輪4にこの駆動力を伝達するように構成して成る。また、走行副変速ギヤ機構30にて適宜変速したエンジン5の回転を、前車輪駆動ケース69と前車軸ケース13の差動ギヤ機構86とを介して前車輪3に伝達するように構成して成る。
【0021】
次に、図8及び図9は、主変速入力軸27に主変速出力軸36が同心状に配置されたインライン式油圧無段変速機29を示す。後室35の内部には、主変速入力軸27を介して油圧無段変速機29が設置される。主変速入力軸27の後端側は、後側壁部材33に延設される。主変速入力軸27の入力側(前端側)に対して反対側になる主変速入力軸27の後端側は、後側壁部材33に玉軸受504にて回転自在に軸支される。
【0022】
油圧無段変速機29の前側、即ち主変速入力軸27の入力側には、円筒形の主変速出力軸36が被嵌される。油圧無段変速機29から主変速出力を取出すための主変速出力ギヤ37が主変速出力軸36に設けられる。主変速出力軸36は、この中間が仕切り壁31に貫通され、前端と後端とが前室34と後室35とにそれぞれ突出する。主変速出力軸36の中間は、二組の玉軸受502にて仕切り壁31に回転自在に軸支される。主変速出力軸36の前端部には、主変速出力ギヤ37が設けられる。主変速入力軸27の入力側(前端側)が、主変速出力軸36前端より前方に突出するように、主変速入力軸27の入力側がころ軸受503を介して主変速出力軸36の軸孔に回転自在に軸支される(図9参照)。
【0023】
油圧無段変速機29は、以下に述べるように、可変容量形の変速用油圧ポンプ部500と、この油圧ポンプ部500から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ部501とを備える。
【0024】
前記仕切り壁31と後側壁部材33との略中間の主変速入力軸27には、油圧ポンプ部500及び油圧モータ部501のためのシリンダブロック505が被嵌される。主変速入力軸27とシリンダブロック505とはスプライン525にて連結される。主変速入力軸27の入力側と反対側でシリンダブロック505を挟んでこの一側部に油圧ポンプ部500が配置される。主変速入力軸27の入力側であるシリンダブロック505他側部に油圧モータ部501が配置される。
【0025】
前記油圧ポンプ部500には、シリンダブロック505の側面に対向するようにミッションケース17内側面に固定する第1ホルダ510と、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を変更可能に第1ホルダ510に配置するポンプ斜板509と、該ポンプ斜板509に摺動自在に設けるシュー508と、該シュー508に球体自在継手を介して連結するポンププランジャ506と、ポンププランジャ506をシリンダブロック505に出入自在に配置する第1プランジャ孔507とが備えられる。ポンププランジャ506の一端側は、シリンダブロック505の側面からポンプ斜板509方向(図8右側)に突出する。前記油圧ポンプ部500は、シリンダブロック505と、ポンププランジャ506と、シュー508と、ポンプ斜板509と、第1ホルダ510とにより構成される。
【0026】
主変速入力軸27と第1ホルダ510との間には、主変速入力軸27に被嵌するスリーブ511と、ローラ軸受512と、ラジアル及びスラスト荷重用ころ軸受513とを介在させる。主変速入力軸27の後方にころ軸受513が抜け出るのを防ぐナット514を備える。
【0027】
前記シリンダブロック505には、ポンププランジャ506と同数の第1スプール弁536が設けられる。また、第1ホルダ510には、第1ラジアル軸受537が配置される。第1ラジアル軸受537は、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて第1ホルダ510に設けられる。図8において、ポンプ斜板509に対して約90度回転した位置(図8の図面の手前側)がシリンダブロック505の側面から離れるように、約180度反対側(図8の図面の奥側)がシリンダブロック505の側面に近くなるように、第1ラジアル軸受537が傾斜されて支持されるように構成している。
【0028】
他方、前記油圧モータ部501には、シリンダブロック505の側面に対向させて配置する第2ホルダ519と、主変速入力軸27の軸線に対して傾斜角を一定に保つように第2ホルダ519に固定するモータ斜板518と、モータ斜板518に摺動自在に設けるシュー517と、該シュー517に球体自在継手を介して連結するモータプランジャ515と、モータプランジャ515をシリンダブロック505に出入自在に配置する第2プランジャ孔516とが備えられる。モータプランジャ515の一端側は、シリンダブロック505の側面からモータ斜板518方向(図8左側)に突出する。前記油圧モータ部501は、シリンダブロック505と、モータプランジャ515と、シュー517と、モータ斜板518と、第2ホルダ519とにより構成される。
【0029】
第2ホルダ519には、継ぎ手部材526がボルト527にて固定される。前記出力軸36と継ぎ手部材525とがスプライン528にて連結される。
【0030】
主変速入力軸27と第2ホルダ519との間には、ラジアル荷重用のローラ軸受520,521と、主変速入力軸27に被嵌するスリーブ522と、ラジアル及びスラスト荷重用のころ軸受523とが介在する。主変速入力軸27からころ軸受523が抜け出るのを防ぐナット524を備える。
【0031】
前記シリンダブロック505には、モータプランジャ515と同数の第2スプール弁540が設けられる。また、第2ホルダ519には、第2ラジアル軸受541が配置される。第2ラジアル軸受541は、主変速入力軸27の軸線に対して一定の傾斜角で傾斜させて第2ホルダ519に設けられる。図8において、モータ斜板518に対して約90度回転した位置(図8手前側)がシリンダブロック505の側面に近くなるように、約180度反対側(図8奥側)がシリンダブロック505の側面から離れるように、第2ラジアル軸受541が傾斜されて支持されるように構成している。
【0032】
ポンププランジャ506と、該ポンププランジャ506と同数のモータプランジャ515とは、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に交互に配列される。
【0033】
さらに、主変速入力軸27が挿入されるシリンダブロック505の軸孔には、輪溝形の第1油室530と、輪溝形の第2油室531とがそれぞれ形成される。シリンダブロック505には、この回転中心の同一円周上に略等間隔に配列する第1弁孔532と第2弁孔533とが形成される。第1弁孔532及び第2弁孔533は、第1油室530及び第2油室531とそれぞれ連通している。第1プランジャ孔507は第1油路534を介して第1弁孔532と連通され、第2プランジャ孔516は第2油室531を介して第2弁孔533と連通されている。
【0034】
第1弁孔532には、第1スプール弁536が挿入される。第1スプール弁536は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列される。第1弁孔532から背圧バネ力の弾圧にて第1スプール弁536の先端が第1ホルダ510の方向に突出し、第1スプール弁536の先端が第1ラジアル軸受537の外輪538側面に当接される。そして、シリンダブロック505の1回転で第1スプール弁536が1往復し、第1プランジャ孔507が、第1弁孔532と第1油路534とを介して第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成する。
【0035】
また、第2弁孔533には、第2スプール弁540が挿入される。第2スプール弁540は、シリンダブロック505の回転中心の同一円周上に略等間隔に配列される。第2弁孔533から背圧バネ力の弾圧にて第2スプール弁540の先端が第2ホルダ519の方向に突出し、第2スプール弁540の先端が第2ラジアル軸受541の外輪542側面に当接される。そして、シリンダブロック505の1回転で第2スプール弁540が1往復し、第2プランジャ孔516が、第2弁孔533と第2油路535とを介し、第1油室530又は第2油室531に交互に連通されるように構成する。
【0036】
さらに、前記主変速入力軸27の中心部には、この軸線方向に作動油供給油路543が形成される。該供給油路543は、主変速入力軸27の後端面に開口され、上記した走行用油圧ポンプ95の吐出口に連通される。また、作動油供給油路543の作動油を第1油室530に補給する第1チャージ弁544と、作動油供給油路543の作動油を第2油室531に補給する第2チャージ弁545とが備えられる。
【0037】
そして、第1及び第2プランジャ孔507,516と、第1及び第2油室530,531との間に形成される油圧閉回路に対し、第1及び第2チャージ弁544,545を介し、作動油供給油路543から作動油が補給されるように構成する。なお、油圧ポンプ部500及びモータ部501のそれぞれの回転部分にも、それぞれ逆止弁を介して、作動油供給油路543から作動油が潤滑油として供給されるように構成している。
【0038】
さらに、前記ポンプ斜板509は、後述するように、傾斜角調節支点555を介して第1ホルダ510の小径部の外周に配置される(図9参照)。ポンプ斜板509はその傾斜角が主変速入力軸27の軸線に対して調節自在となるように設けられている。主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509の傾斜角を変更する変速用アクチュエータである主変速操作用の主変速油圧シリンダ556を備える(図9参照)。主変速油圧シリンダ556にてポンプ斜板509の傾斜角が変更されて、無段変速機29の主変速動作が行われるように構成する。なお、主変速入力軸27に対して、ポンプ斜板509が回転しないように、ミッションケース17の非回転部である後側壁部材33に、ホルダ連結部材690を介して第1ホルダ510を連結する(図14参照)。
【0039】
前記したインライン式油圧無段変速機29の主変速動作を、以下に説明する。主変速レバーなどにて油圧シリンダ556が制御され、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509の傾斜角が変更される。
【0040】
先ず、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509が略直交するように、ポンプ斜板509の傾斜角を略零に保つとき、シリンダブロック505が回転しても、第1プランジャ孔507にポンププランジャ506が進退動しない略一定姿勢で支持され、ポンププランジャ506の吐出行程で第1プランジャ孔507の作動油が第1油路534から第1弁孔532の方向に吐出されないから、第1プランジャ孔507から第2プランジャ孔516に作動油が供給されず、モータプランジャ515が進出しない。また、ポンププランジャ506の吸入行程でも第1プランジャ孔507に作動油が吸入されないから、第1プランジャ孔507に第2プランジャ孔516から作動油が排出されず、モータプランジャ515が退入しない。
【0041】
即ち、ポンプ斜板509の傾斜角が略零のとき、変速ポンプ部500にて変速モータ501部が駆動されない。そのため、モータプランジャ515を介してシリンダブロック505にモータ斜板518が固定された状態となり、シリンダブロック505とモータ斜板518とが同一方向に略同一回転数で回転し、主変速入力軸27と略同一回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が変更されることなく主変速出力ギヤ37に伝えられる。
【0042】
次に、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を傾斜させたときには、主変速入力軸27と一体回転するシリンダブロック505の回転により、第1ラジアル軸受537の外輪538にて第1スプール弁536が往復摺動し、シリンダブロック505の半回転毎に第1プランジャ孔507に第1油室530または第2油室531が交互に連通される。また、第2ラジアル軸受541の外輪542にて第2スプール弁540が往復摺動し、シリンダブロック505の半回転毎に第2プランジャ孔5016に第1油室530または第2油室531が交互に連通される。そして、第1プランジャ孔507と第2プランジャ孔516の間に閉油圧回路が形成され、ポンププランジャ506の吐出行程で第1プランジャ孔507から第2プランジャ孔516に作動油が圧送される一方、ポンププランジャ506の吸入行程で第1プランジャ孔507に第2プランジャ孔516から作動油が戻され、アキシャルピストンポンプ及びモータの動作が行われる。
【0043】
そして、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を一方向(正の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と同一方向にモータ斜板518が回転され、変速モータ501を増速(正転)動作させ、主変速入力軸27より高い回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が増速されて主変速出力ギヤ37に伝えられる。即ち、主変速入力軸27の回転数に、変速ポンプ500にて駆動される変速モータ501の回転数が加算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、主変速入力軸27の回転数よりも高い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜(正の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(正の傾斜角)で最大走行速度になる。
【0044】
さらに、主変速入力軸27の軸線に対してポンプ斜板509を他方向(負の傾斜角)側に傾斜させたときには、シリンダブロック505と逆の方向にモータ斜板518が回転され、変速モータ501を減速(逆転)動作させ、主変速入力軸27より低い回転数で主変速出力軸36が回転され、主変速入力軸27の回転速度が減速されて主変速出力ギヤ37に伝えられる。
【0045】
即ち、主変速入力軸27の回転数に、変速ポンプ500にて駆動される変速モータ501の回転数が減算されて、主変速出力ギヤ37に伝えられる。そのため、主変速入力軸27の回転数よりも低い回転数の範囲で、ポンプ斜板509の傾斜(負の傾斜角)に比例して、主変速出力ギヤ37からの変速出力(走行速度)が変更され、ポンプ斜板509の最大傾斜(負の傾斜角)で最低走行速度になる。
【0046】
次に、図5、図6に示されるように、前記ミッションケース17の前室34には、前進と後進の切換を行う前進ギヤ41及び後進ギヤ43と、低速と高速の切換を行う走行副変速ギヤ機構30とが配置される。
【0047】
前進ギヤ41及び後進ギヤ43を介して行う前進と後進の切換を説明する。図6に示されるように、主変速出力ギヤ37が配置される前室34の内部には、走行カウンタ軸38と逆転軸39とが配設される。前記走行カウンタ軸38には、前進用の湿式多板型油圧クラッチ40にて連結される前進ギヤ41と、後進用の湿式多板型油圧クラッチ42にて連結される後進ギヤ43とが被嵌される。主変速出力ギヤ37に前進ギヤ41が噛合される。主変速出力ギヤ37には、逆転軸39に設けられた逆転ギヤ44が噛合される。前記後進ギヤ43には、逆転軸39に設けられた逆転出力ギヤ45が噛合される。
【0048】
そして、主変速レバー(図示省略)の前進操作により、前進油圧電磁弁46にてクラッチシリンダ47が作動して前進用の油圧クラッチ40が継続され、主変速出力ギヤ37と走行カウンタ軸38が前進ギヤ41にて連結されるように構成する(図5、図6参照)。
【0049】
一方、主変速レバー(図示省略)の後進操作により、後進油圧電磁弁48にてクラッチシリンダ49が作動して後進用の油圧クラッチ42が継続され、主変速出力ギヤ37と走行カウンタ軸38が後進ギヤ43にて連結されるように構成する(図5、図6参照)。
【0050】
なお、主変速レバー(図示省略)が中立位置に支持されているとき、前進用及び後進用の湿式多板型の各油圧クラッチ40,42の両方がともに切断され、前車輪3及び後車輪4に対して出力される主変速出力ギヤ37からの走行駆動力が略零(主クラッチ切の状態)になるように構成している。
【0051】
次に、走行副変速ギヤ機構30を介して行う低速と高速の切換を説明する。図5、図6に示されるように、前記ミッションケース17の前室34には、走行副変速ギヤ機構30と、副変速軸50が配置される。走行カウンタ軸38と副変速軸50の間には、副変速用の低速ギヤ51,52と、副変速用の高速ギヤ53,54とが設けられる。また、副変速油圧シリンダ55にて継続または切断される低速クラッチ56及び高速クラッチ57が備えられる。そして、副変速レバー(図示省略)の操作、またはエンジン5の回転数検出などにより、副変速油圧シリンダ55にて低速クラッチ56または高速クラッチ57が継続されて、副変速軸50に低速ギヤ52または高速ギヤ54が連結され、副変速軸50から前車輪3及び後車輪4に対して走行駆動力が出力されるように構成する。
【0052】
前記副変速軸50は、この後端部が仕切り壁31を貫通してミッションケース17の後室35内部に延設される(図5参照)。副変速軸50の後端部にはピニオン59が設けられる。また、後室35の内部には、左右の後車輪4に走行駆動力を伝える差動ギヤ機構58が配置される。差動ギヤ機構58には、副変速軸50後端のピニオン59に噛合させるリングギヤ60と、該リングギヤ60に設ける差動ギヤケース61と、左右の差動出力軸62とが備えられる。差動出力軸62がファイナルギヤ63等にて後車軸64に連結され、後車軸64に設ける後車輪4を駆動するように構成している。
【0053】
また、差動出力軸62にはブレーキ65が設置され、左右ブレーキペダル66の操作にてブレーキ65が制動動作されるように構成している。一方、ハンドル9の操舵角検出などにより、オートブレーキ電磁弁67にてブレーキシリンダ68が作動して、ブレーキ65が自動的に制動動作され、Uターンなどの旋回走行が行われるように構成している。
【0054】
次に、図5,図6に示されるように、前後車輪3,4の二駆と四駆の切換を説明する。
【0055】
ミッションケース17の前側壁部材32には、前車輪駆動ケース69が設けられる。前車輪駆動ケース69には、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが備えられている。前車輪入力軸72は、ギヤ70,71にて副変速軸50に連結される。また、前車輪出力軸73には、四駆用の油圧クラッチ74にて連結される四駆ギヤ75と、倍速用の油圧クラッチ76にて連結される倍速ギヤ77とが被嵌される。四駆ギヤ75と倍速ギヤ77は、各ギヤ78,79にて前車輪入力軸72にそれぞれ連結される。
【0056】
そして、二駆と四駆の切換レバー(図示省略)の四駆操作により、四駆油圧電磁弁80にてクラッチシリンダ81が作動して四駆用の油圧クラッチ74が継続され、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが四駆ギヤ75にて連結され、後車輪4とともに前車輪3が駆動されるように構成する。
【0057】
次に、図5,図6に示されるように、前車輪3の倍速駆動の切換を説明する。操縦ハンドル9のUターン(圃場の枕地での方向転換)操作の検出により、倍速油圧電磁弁82にてクラッチシリンダ83が作動して倍速用の油圧クラッチ76が継続され、前車輪入力軸72と前車輪出力軸73とが倍速ギヤ77にて連結され、四駆ギヤ75にて前車輪3が駆動されるときの速度に比べて約2倍の高速度で前車輪3が駆動されるように構成する。
【0058】
図5に示されるように、前車軸ケース13から後ろ向きに突出する前車輪入力軸84と、前記ミッションケース17の前面から前向きに突出する前車輪出力軸73との間を、前車輪3に動力を伝達する前車輪駆動軸85を介して連結する。また、前車軸ケース13の内部には、左右の前車輪3に走行駆動力を伝える差動ギヤ機構86が配置される。
【0059】
差動ギヤ機構86には、前車輪入力軸84前端のピニオン87に噛合させるリングギヤ88と、該リングギヤ88に設ける差動ギヤケース89と、左右の差動出力軸90とが備えられる。差動出力軸90にはファイナルギヤ91等にて前車軸92が連結され、前車軸92に設ける前車輪3が駆動されるように構成している。また、前車軸ケース13の外側面には、操縦ハンドル9の操舵操作にて前車輪の走行方向を左右に変更するパワーステアリング用の油圧シリンダ93が配設される。
【0060】
図5、図7に示されるように、ミッションケース17の前側壁部材32の前面側には、前記作業機用昇降機構20に作動油を供給するための作業機用油圧ポンプ94と、ミッションケース17の各変速部およびパワーステアリング用の油圧シリンダ93に作動油を供給するための走行用油圧ポンプ95とを備える。油タンクとしてミッションケース17が併用されて該ケース17内部の作動油が各油圧ポンプ94,95に供給されるように構成する。
【0061】
次に、図5、図7を参照して、PTO軸23の駆動速度の切換(正転4段と、逆転1段)を説明する。ミッションケース17の前室34には、エンジン5からの動力をPTO軸23に伝えるPTO変速ギヤ機構96と、エンジン5からの動力を各油圧ポンプ94,95に伝えるポンプ駆動軸97とを設ける(図7参照)。
【0062】
図7に示されるように、後に詳述するPTO変速ギヤ機構96には、PTOカウンタ軸98と、PTO変速出力軸99を備える。PTO用の油圧クラッチ100にて連結されるPTO入力ギヤ101をPTOカウンタ軸98に被嵌させる。PTO入力ギヤ101には、前記主変速入力軸27に設ける入力側ギヤ102と、ポンプ駆動軸97の出力側ギヤ103とが噛合され、主変速入力軸27にポンプ駆動軸97が連結される。
【0063】
そして、PTOクラッチレバー(図示省略)の継続操作により、PTOクラッチ油圧電磁弁104(図5参照)にてクラッチシリンダ105が作動してPTO用の油圧クラッチ100が継続され、主変速入力軸27とPTOカウンタ軸98とがPTO入力ギヤ101にて連結されるように構成する。
【0064】
また、前記PTO変速出力軸99には、PTO出力用として、1速ギヤ106と、2速ギヤ107と、3速ギヤ108と、4速ギヤ109と、逆転ギヤ110とを被嵌する(図5、図7参照)。
【0065】
PTO変速出力軸99には、変速シフタ111が移動自在にスプラインにて軸支される。前記の各ギヤ106,107,108,109,110がPTO変速出力軸99に変速シフタ111にて択一的に連結されるように構成する。変速シフタ111には、PTO変速レバー(図示省略)に連結する変速アーム112が係合される。そして、PTO変速レバー(図示省略)の変速操作により、変速アーム112にてPTO変速出力軸99の軸線に沿って変速シフタ111が直線的に移動して、各ギヤ106,107,108,109,110のいずれかが、択一的に選択されてPTO変速出力軸99に連結される(図5、図7参照)。従って、1速、2速、3速、4速、逆転の各PTO変速出力が、PTO変速出力軸99からPTO軸23にギヤ113,114を介して伝えられるように構成する。
【0066】
なお、図6において、逆転軸39に設ける回転検出ギヤ115と、主変速出力ギヤ37の回転を検出するピックアップ116とを対向させて設置し、主変速機構29の出力回転数をピックアップ116にて検出するように構成する。また、前車輪入力軸72のギヤ78の回転を検出するピックアップ117が設置され、前車輪入力軸72及び副変速軸50の回転に基づき、走行速度(車速)がピックアップ117にて検出されるように構成する。
【0067】
上記の記載及び図8などから明らかなように、エンジン5から動力が伝達されるミッションケース17を備え、前記エンジン5から動力を伝える入力軸27と、左右の車輪3,4に油圧変速出力を伝える出力軸36とが、同一の軸線上に配置されたインライン式無段変速機29をミッションケース17に配設し、該無段変速機29を構成するシリンダブロック505を挟んで一側に油圧ポンプ部500を、他側に油圧モータ部501をそれぞれ配置し、前記入力軸27に出力軸36を被嵌させて二重軸構成にした作業車において、前記入力軸27の入力側とシリンダブロック505との間に油圧モータ501部を配置し、前記入力軸27の入力側と出力軸36の出力側を同一側に配置した。そのため、例えば、トラクタ1の伝動構造のように、走行副変速ギヤ及び差動ギヤ及びPTO変速ギヤなどをミッションケース17の内部に設置するものであっても、ミッションケース17の後部に前記無段変速機29の設置スペースを容易に確保できる。前記入力軸27の入力側であるミッションケース17の前部にPTO変速ギヤまたは走行副変速ギヤなどの設置スペースが確保され、例えばトラクタ1のミッションケース17などを小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0068】
また、前記ミッションケース17内部に出力軸36を軸受502にて回転自在に軸支し、前記無段変速機29に備える油圧モータ部501の斜板518の前側と、前記出力軸36の後側とを、スプライン528にて分離自在に連結した。そのため、シリンダブロック505の両側に油圧ポンプ部500と油圧モータ部501とをそれぞれ配置して入力軸27に支持した状態で前記無段変速機29を取付ける作業または取外す作業を行うことができる。前記無段変速機29に対して独立した軸受構造にてミッションケース17に前記出力軸36を軸支でき、ミッションケース17に出力軸36を軸支した状態でミッションケース17に対して無段変速機29を着脱でき、無段変速機29の取付けまたは取外しが容易に行える構造に構成できる。
【0069】
また、前記ミッションケース17の内部に、前記無段変速機29と、左右の車輪4に動力を伝達する差動ギヤ機構58とを設ける。そのため、差動ギヤ機構58を設けるミッションケース17内部の余剰スペースを利用して前記無段変速機29をコンパクトに配置でき、例えばトラクタ1のミッションケース17などを小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0070】
また、前記ミッションケース17の内部を前後に仕切り、ミッションケース17内部の前側に変速ギヤ機構30,96を配設し、ミッションケース17内部の後側に前記無段変速機29及び差動ギヤ機構58を配設する。そのため、差動ギヤ機構58を設けるミッションケース17の後部スペースを利用して前記無段変速機29をコンパクトに設置できる。しかも、ミッションケース17の前部に配置するPTO変速ギヤまたは走行副変速ギヤなどの変速ギヤ機構30,96と、ミッションケース17の後部に配置する無段変速機29及び差動ギヤ機構58とにより、例えば箱型のミッションケース17の内部を有効に活用でき、前記無段変速機29をコンパクトに配置でき、例えばトラクタ1のミッションケース17などを小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0071】
さらに、図10は前記ミッションケース17の平面視断面図、図11はミッションケース17後部の平面視断面の拡大図、図12はミッションケース17の背面視説明図である。
【0072】
図6、図8、図10乃至図12に示されるように、ミッションケース17の後室35内部に、無段変速機29と差動ギヤ機構58とが併設される。差動ギヤ機構58には、この差動の動作を停止(左右の差動出力軸62を常時等速で駆動)するデフロック機構560が備えられる。差動ギヤケース61の一側にデフロック機構560が配置され、差動ギヤケース61の他側にリングギヤ60がボルトにて固定される。リングギヤ60設置側と同側の差動ギヤケース61端部が、ベアリング軸受558にて軸受ホルダ559に軸受される。軸受ホルダ559は、ミッションケース17にボルトにて固定され、耐荷重が大きな大径のベアリング軸受558が用いられるように構成する。
【0073】
図11に示されるように、差動ギヤケース61を挟んで、一側にデフロック機構560が、他側にリングギヤ60が設けられる。デフロック機構560を設置する側と同じ側に無段変速機29が配置される。
【0074】
デフロック機構560には、差動ギヤケース61に出入自在に設けられるロックピン561と、ロックピン561の一端が固定されるスライダ562と、スライダ562が係合するロックアーム563と、ロックアーム563が摺動自在に支持される操作軸564とを備える。常時は、差動ギヤケース61内部の差動ギヤ565に対してロックピン561が離間して支持され、差動ギヤケース61から左右の差動出力軸62に差動出力が伝えられるように構成する。
【0075】
一方、図示しないデフロックレバー(又はペダル)の操作にてロックピン651が差動ギヤ565に係合したとき、差動ギヤ565が差動ギヤケース61に固定され、差動ギヤ565の差動機能が停止し、左右の差動出力軸62が等速にて駆動されるように構成する。
【0076】
図12に示されるように、ミッションケース17内部には、略一定量以上の作動油566が入れられる。作動油566の油面(上面)とほぼ同じ高さ位置に差動出力軸62が配置される。無段変速機29は、差動出力軸62の軸線より高い位置に配置される。したがって、無段変速機29は、ミッションケース17内部の作動油566油面より上方に配置される。
【0077】
次に、ミッションケース17に対する無段変速機29の組み付け及び取り外しについて説明する。無段変速機29をミッションケース17に組み込むときは、無段変速機29が主変速入力軸27に取り付けられ、かつ主変速入力軸27の後端が後側壁部材33に軸受504にて支持された状態で、これらがミッションケース17の内部にこの後方から入れられ、主変速出力軸36の内孔に主変速入力軸27が貫通し、主変速出力軸36に継ぎ手部材525がスプライン528にて連結され、ミッションケース17の内部に無段変速機29が組み込まれる。
【0078】
他方、無段変速機29を主変速入力軸27から取り外すときは、無段変速機29が主変速入力軸27に取り付けられ、かつ主変速入力軸27の後端が後側壁部材33に軸受504にて支持された状態で、後側壁部材33がミッションケース17から取り外され、主変速出力軸36にスプライン528にて連結された継ぎ手部材525が主変速出力軸36から外れ、仕切り壁31に主変速出力軸36が軸受502にて軸支された状態で、主変速入力軸27と、無段変速機29とが、後側壁部材33とともに取り外され、これらがミッションケース17の後方に取り出され、無段変速機29のメンテナンス作業などが行われる。
【0079】
上記の記載及び図11などから明らかなように、ミッションケース17内に、エンジン5からの動力が伝達される主変速入力軸27を配置し、前記入力軸27に主変速出力軸36を相対的に回転可能に被嵌し、前記入力軸27には、無段変速機29を構成するシリンダブロック505と、それを挟んで一側の油圧ポンプ部500と、他側の油圧モータ部501とを被嵌し、前記油圧モータ部501を介して前記出力軸36から差動ギヤ機構58に動力伝達し、差動ギヤ機構58から少なくとも左右車輪3,4に動力伝達するように構成してなる作業車両において、前記無段変速機29と差動ギヤ機構58とを前記ミッションケース17の後部に内設し、前記入力軸の入力側と前記出力軸の出力側を同一側に配置し、前記ミッションケース17の後方に前記無段変速機29を出入可能に構成した。そのため、例えば、トラクタ1の伝動構造のように、走行副変速ギヤ及び差動ギヤ及びPTO変速ギヤなどを前記ミッションケース17の内部に設置するものであっても、前記ミッションケース17の後部に前記無段変速機29の設置スペースを容易に確保できる。前記差動ギヤ機構58を組み込んだ状態で前記無段変速機29を着脱する作業を行うことができる。前記入力軸27の入力側であるミッションケース17の前部に走行副変速ギヤまたはPTO変速ギヤなどの設置スペースが確保され、例えばトラクタ1のミッションケース17などを小型化または軽量化でき、組み立て及び分解などの作業性が向上して製造コストを低減できる。
【0080】
また、前記差動ギヤ機構58の差動を停止するためのデフロック機構560を設置する側と同じ側に、前記無段変速機29を配置したから、前記差動ギヤ機構58を設けるミッションケース17内部の余剰スペースを利用して前記無段変速機29をコンパクトに配置でき、前記無段変速機29の設置により前記差動ギヤ機構58またはデフロック機構560の設置が殆ど制限されることがなく、例えばトラクタ1のミッションケースなどを小型化または軽量化でき、組み立て及び分解などの作業性が向上して製造コストを低減できる。
【0081】
また、前記出力軸36を軸受502にて前記ミッションケース17内部に回転自在に軸支し、前記油圧モータ部501の斜板518と、前記出力軸36とを、前記入力軸272の軸線方向に分離可能にスプライン528にて連結したから、前記ミッションケース17の前部に配置する走行副変速ギヤまたはPTO変速ギヤなどの変速ギヤ機構30,96と、前記ミッションケース171の後部に配置する無段変速機29及び差動ギヤ機構58とにより、例えば箱型のミッションケース17の内部を有効に活用でき、前記無段変速機29をコンパクトに配置でき、例えばトラクタ1のミッションケースなどを小型化または軽量化でき、組み立て及び分解などの作業性が向上して製造コストを低減できる。
【0082】
上記の記載及び図12などから明らかなように、ミッションケース17内に、エンジン5からの動力が伝達される入力軸27を配置し、前記入力軸27に出力軸36を相対的に回転可能に被嵌し、前記入力軸27には、無段変速機29を構成するシリンダブロック505と、それを挟んで一側の油圧ポンプ部500と、他側の油圧モータ部501とを被嵌し、前記油圧モータ部501を介して前記出力軸36から差動ギヤ機構58に動力伝達し、差動ギヤ機構58の差動出力軸62から少なくとも左右車輪3,4に動力伝達するように構成してなる作業車両において、前記入力軸27の入力側と前記出力軸336の出力側を同一側に配置し、前記無段変速機29と差動ギヤ機構58とを前記ミッションケース17の後部に内設し、前記差動出力軸62の軸線より高位置に前記無段変速機29を配置した。そのため、例えば、トラクタ1の伝動構造のように、走行副変速ギヤ及び差動ギヤ及びPTO変速ギヤなどをミッションケース17の内部に設置するものであっても、ミッションケース17の後部に前記無段変速機29の設置スペースを容易に確保できる。前記差動ギヤ機構58がミッションケース17の後部に組み込まれた状態で、無段変速機29の着脱作業を行うことができる。前記入力軸27の入力側であるミッションケース17の前部にPTO変速ギヤまたは走行副変速ギヤなどの設置スペースが確保され、例えばトラクタ1のミッションケース17などを小型化または軽量化でき、組み立て及び分解などの作業性が向上して製造コストを低減できる。
【0083】
また、前記ミッションケース17内部の作動油566の油面より上方に前記無段変速機29を配置したから、無段変速機29の回転にて作動油566が殆ど攪拌されることがなく、無段変速機29の回転負荷が作動油566の攪拌にて増大する不具合がなく、無段変速機29の動力伝動損失を低減できる。また、無段変速機29により作動油566が攪拌されて作動油566の油温が上昇する不具合もない。
【0084】
また、前記差動ギヤ機構58の入力ギヤであるリングギヤ60を挟んで、該リングギヤ60の軸受ホルダ559を一側に配置し、前記無段変速機29を他側に配置したから、無段変速機29及び差動ギヤ機構58を配置するミッションケース17の後部で軸受ホルダ559の設置に必要なスペースを、無段変速機29に制限されることなく確保できる。また、入力ギヤであるリングギヤ60を挟んで軸受ホルダ559と反対側の余剰スペースを利用して前記無段変速機29をコンパクトに配置できる。例えば箱型のミッションケース17後部の内部を有効に活用でき、ミッションケース17などを小型化または軽量化でき、組み立て及び分解などの作業性が向上して製造コストを低減できる。
【0085】
次に、図9、図12、図14、図23乃至図29を参照して、前記無段変速機29を変速動作する主変速油圧シリンダ556構造を詳述する。主変速油圧シリンダ556のシリンダ室691を後側壁部材33に形成する。主変速油圧シリンダ556のピストン557は、主変速油圧シリンダ556のシリンダ室691に挿入する。ピストン557をシリンダ室691内に上下方向に摺動自在に配置する。ピストン557中間の外周に窪み部692を形成する。窪み部692に四角柱形基端ピン693を係合する。四角柱形基端ピン693を主変速アーム558の一端側に回転自在に配置する。主変速アーム558の中間を、ホルダ連結部材690にアーム軸694を介して回転自在に軸支する。主変速アーム558他端側のアーム溝695に、四角柱形先端ピン696を摺動自在に係合する。四角柱形先端ピン696を、ポンプ斜板509の半円板形の傾斜角調節支点部555に回転自在に軸支する。傾斜角調節支点部555を支持するための回転ガイド697を、第1ホルダ510に配置する。回転ガイド697は、ポンプ斜板509の回転中心と同心状の半円筒面を形成する。回転ガイド697の案内にてポンプ斜板509の傾斜角を変更するように構成する。
【0086】
図12に示されるように、ミッションケース17(トラクタ1機体)の左右幅中央にPTO軸23を配置する。進行方向に向かってPTO軸23の右側に差動ギヤ機構58を配置する。進行方向に向かってPTO軸23の左側の斜上方に無段変速機29を配置する。進行方向に向かって無段変速機29の左側にピストン557を配置する。進行方向に向かって後側壁部材33の左側斜上方の角隅部に主変速油圧シリンダ556を配置する。後側壁部材33の左側斜上方に主変速油圧シリンダ556とこの切換機構などをコンパクトに設置する。
【0087】
図23に示されるように、主変速アーム558及びアーム軸694は、無段変速機29の軸線と略同一の高さ位置に配置する。図24に示されるように、主変速アーム558は、進行方向に向かって無段変速機29の左側で、この軸線と略平行に配置する。ピストン557は、上下方向に摺動するように、後側壁部材33内に略垂直に設置する。後側壁部材33の主変速油圧シリンダ556形成部の厚み幅を、ピストン557径よりも若干大きく形成するだけで、ピストン557を設置できる。なお、ピストン557は、左右方向に摺動するように、後側壁部材33内に略水平に設置することも行える。
【0088】
主変速油圧シリンダ556の変速操作を説明する。図示しない主変速レバーまたは主変速ペダルの走行変速操作により、油圧電磁比例弁(図示省略)を切換えると、主変速油圧シリンダ556が作動する。そして、ピストン557が上昇または下降動作したときに、主変速アーム558がアーム軸694回りに回転し、傾斜角調節支点部555と回転ガイド697とがポンプ斜板509を回転案内し、ポンプ斜板509の傾斜角が変更されて、無段変速機29の主変速動作が行われるように構成する。なお、主変速入力軸27に対して、ポンプ斜板509が回転しないように、ポンプ斜板509と第1ホルダ510とが連結され、第1ホルダ510とホルダ連結部材690とが連結される。
【0089】
上記の記載及び図8、図23などから明らかなように、ミッションケース17内に、エンジン5からの動力が伝達される入力軸27を配置し、前記入力軸27に出力軸36を相対的に回転可能に被嵌し、前記入力軸27には、無段変速機29を構成するシリンダブロック505と、それを挟んで一側の油圧ポンプ部500と、他側の油圧モータ部501とを被嵌し、前記油圧モータ部501を介して前記出力軸36から少なくとも左右車輪3,4に走行駆動力を伝達するように構成してなる作業車両において、前記油圧ポンプ部500を挟んで前記シリンダブロック505側部がミッションケース17の側壁部材である後側壁部材33に対向して配設され、前記油圧ポンプ部500を変速制御するための変速アクチュエータである主変速油圧シリンダ556を、前記後側壁部材33に設置した。そのため、例えば、トラクタ1の伝動構造のように、走行副変速ギヤ及び差動ギヤ及びPTO変速ギヤなどを前記ミッションケース17の内部に設置するものであっても、前記後側壁部材33に前記無段変速機29と主変速油圧シリンダ556とを取り付けた状態で、前記後側壁部材33をミッションケース17に着脱でき、組み立て及びメンテナンスなどの作業性を向上できる。前記後側壁部材33の内側に前記無段変速機19と主変速油圧シリンダ556の設置スペースを確保でき、例えばトラクタ1のミッションケース17などを小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0090】
また、前記入力軸27の入力側と前記出力軸36の出力側とを同一側に配置し、前記左右の車輪3,4に動力を伝達する差動ギヤ機構58を前記ミッションケース17に内設し、前記差動ギヤ機構58の側方に前記無段変速機29を配置し、前記ミッションケース17の後側壁部材33に前記主変速油圧シリンダ556を設置し、前記無段変速機29及び前記主変速油圧シリンダ556を後側壁部材33とともにミッションケース17の後方に取り出し可能に構成した。そのため、前記差動ギヤ機構58を設けるミッションケース17内部の余剰スペースを利用して前記無段変速機29と主変速油圧シリンダ556をコンパクトに配置でき、例えばトラクタ1のミッションケース17などを小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0091】
また、前記出力軸36を前記ミッションケース17の内部に軸受502を介して回転自在に軸支する。一方、前記油圧モータ部501は、シリンダブロック505と、モータプランジャ515と、シュー517と、モータ斜板518と、第2ホルダ519とにより構成される。第2ホルダ519には、継ぎ手部材526をボルト527にて固定する。そして、前記出力軸36と継ぎ手部材525とをスプライン528にて連結し、前記油圧モータ部501の出力部と前記出力軸36とを分離自在に連結し、前記入力軸27が軸線方向に移動可能にこの入力側に前記出力軸36を被嵌した。そのため、前記無段変速機29に対して独立した軸受502構造にて前記ミッションケース17に前記出力軸36を軸支でき、前記ミッションケース17に前記出力軸36が軸支された状態でミッションケース17に対して無段変速機29を着脱でき、前記無段変速機29の取付けまたは取外しが容易に行えるように構成でき、前記ミッションケース17の後部などに配置する無段変速機29及び差動ギヤ機構58とにより、例えば箱型のミッションケース17の内部を有効に活用でき、前記無段変速機29をコンパクトに配置でき、例えばトラクタ1のミッションケース17などを小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0092】
次に、図5、図7、図16、図17を参照して、前記PTO変速ギヤ機構96を詳述する。
【0093】
図16に示されるように、PTOカウンタ軸98は、仕切り壁31及び前側壁部材32に玉軸受を介して軸支されている。PTOカウンタ軸98には、PTO出力用1速ギヤ106に常時噛合する1速カウンタギヤ600が一体形成される。また、PTOカウンタ軸98には、PTO出力用2速ギヤ107に常時噛合する2速カウンタギヤ601と、PTO出力用3速ギヤ108に常時噛合する3速カウンタギヤ602と、PTO出力用4速ギヤ109に常時噛合する4速カウンタギヤ603とが被嵌される。PTOカウンタ軸98に各カウンタギヤ601,602,603がスプラインにて連結されている。
【0094】
PTOカウンタ軸98と平行に配置されるPTO変速出力軸99は、この前端側が仕切り壁31を貫通して前室34の内部に延設される。PTO変速出力軸99の中間は、仕切り壁31に玉軸受604を介して軸支される。PTO変速出力軸99の前端側には、この前側(図16の左側)から順に後方に向けて、逆転ギヤ110、1速ギヤ106、2速ギヤ107、3速ギヤ108、4速ギヤ109がそれぞれ配列される(図16参照)。
【0095】
PTO変速出力軸99には、逆転ギヤ110、1速ギヤ106、4速ギヤ109が玉軸受605,606,607を介してそれぞれ軸支される。2速ギヤ107は、1速ギヤ106の後側ボス部に被嵌された玉軸受608を介して軸支される。3速ギヤ108は、4速ギヤ109の前側ボス部に被嵌された玉軸受609を介して軸支される(図16参照)。
【0096】
1速ギヤ106の後側ボス部の外周後端部には、複数の係合突起610が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される。2速ギヤ107のボス部は、1速ギヤ106のボス部より後方に突出される。2速ギヤ107のボス部の内孔後端部には、複数の係合突起611が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される。3速ギヤ108のボス部は、4速ギヤ109のボス部より前方に突出される。3速ギヤ108のボス部の内孔前端部には、複数の係合突起612が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される。4速ギヤ109の前側ボス部の外周前端部には、複数の係合突起613が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される(図16参照)。
【0097】
図16に示されるように、PTO変速出力軸99に対して略平行になるように、ミッションケース17の内部には、PTO変速操作軸614が設置される。PTO変速操作軸614には、逆転アイドルギヤ620が玉軸受621を介して回転自在に軸支される。逆転アイドルギヤ620は、逆転ギヤ110と、1速カウンタギヤ600とに噛合される。
【0098】
PTO変速シフタ111は、正転用シフタ615と、逆転用シフタ616とからなる。正転用シフタ615及び逆転用シフタ616は、PTO変速出力軸99に被嵌されて、スプラインを介して移動自在に連結される。正転用シフタ615を挟んで、PTO出力用1速及び2速ギヤ106,107と、PTO出力用3速及び4速ギヤ108,109とが配置される(図16参照)。
【0099】
正転用シフタ615の内孔前端部には、1速ギヤ106の係合突起610に係合する複数の係合爪622が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される。正転用シフタ615の外周前端部には、2速ギヤ107の係合突起611に係合する複数の係合爪623が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される。正転用シフタ615の外周後端部には、3速ギヤ108の係合突起612に係合する複数の係合爪624が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される。正転用シフタ615の内孔後端部には、4速ギヤ109の係合突起613に係合する複数の係合爪625が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される(図16参照)。
【0100】
逆転ギヤ110は、このボス部を前方(図16の左側)に突出する。逆転ギヤ110のボス部の内孔前端部には、複数の係合突起626が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される。逆転用シフタ616の外周後端部には、逆転ギヤ110の係合突起626に係合する複数の係合爪627が円周方向に沿って適宜間隔にて形成される(図16参照)。
【0101】
PTO変速アーム112は、正転用変速アーム617と、逆転用変速アーム618とからなる。正転用変速アーム617と、逆転用変速アーム618とは、1本の軸619にて固定されて、一体的に前後移動可能に構成されている。正転用変速アーム617には、正転用シフタ615が連結される。逆転用変速アーム618には、逆転用シフタ616が連結される。(図16参照)。
【0102】
次に、PTO変速機構96の切換え動作を説明する。図16、図17は、PTO変速出力軸99が逆転するように、逆転ギヤ110と逆転用シフタ616とが、係合突起626および係合爪627を介して連結された状態を示す。図示しないPTO変速レバーなどの操作により、図17に示す位置より逆転用シフタ616を前方に移動したとき、逆転ギヤ110から逆転用シフタ616が離れ、PTO変速出力軸99の逆転動作が止められる。このとき、逆転用シフタ616とともに正転用シフタ615が前方に移動する。
【0103】
図17に示されるように、逆転用シフタ616が逆転ギヤ110に連結された状態から、所定距離C1だけ正転用シフタ615が前方に移動したとき、4速ギヤ109と正転用シフタ615とが、係合突起613および係合爪625を介して連結され、PTO変速出力軸99が4速にて回転する。
【0104】
正転用シフタ615が4速ギヤ109に連結された状態から、所定距離C2だけ正転用シフタ615がさらに前方に移動したとき、3速ギヤ108と正転用シフタ615とが、係合突起612および係合爪624を介して連結され、PTO変速出力軸99が3速にて回転する(図17参照)。
【0105】
正転用シフタ615が3速ギヤ108に連結された状態から、所定距離C3だけ正転用シフタ615がさらに前方に移動したとき、2速ギヤ10と正転用シフタ615とが、係合突起611および係合爪623を介して連結され、PTO変速出力軸99が2速にて回転する(図17参照)。
【0106】
正転用シフタ615が2速ギヤ107に連結された状態から、所定距離C4だけ正転用シフタ615がさらに前方に移動したとき、1速ギヤ106と正転用シフタ615とが、係合突起610および係合爪622を介して連結され、PTO変速出力軸99が1速にて回転する(図17参照)。
【0107】
なお、前記と逆に、PTO変速出力軸99が1速の状態から、正転用シフタ615を後方に移動する操作が行われると、1速から2速、3速、4速、逆転の順に、PTO変速出力軸99の回転が切換えられる。
【0108】
上記の記載及び図16、図17などから明らかなように、エンジン5から動力が伝達されるミッションケース17に、前記エンジン5から伝達された動力を走行出力用に変速する無段変速機29及び副変速ギヤ機構30と、前記副変速ギヤ機構30から出力された動力を左右の車輪3,4に伝達する差動ギヤ機構58と、前記エンジン5から伝達された動力をPTO出力用に変速するPTO変速ギヤ機構96とを備えた作業車両において、前記PTO変速ギヤ機構96は、複数段の正転駆動力を出力する複数の正転ギヤである1乃至4速ギヤ106,107,108,109と、逆転駆動力を出力する逆転ギヤ110と、前記1乃至4速ギヤ106,107,108,109及び逆転ギヤ110を同一軸線上に配置するPTO変速出力軸99と、その軸線に沿った直線的な切換動作にて前記1乃至4速ギヤ106,107,108,109及び逆転ギヤ110の各出力を選択するPTO変速シフタ111とを備えた。したがって、従来のような1乃至4速ギヤ及び逆転ギヤをシフトさせるものでは、各ギヤの幅以上にシフトする必要があるのに比べて、正転及び逆転の両方のPTO出力が得られる前記PTO変速ギヤ機構96をミッションケース17の内部にコンパクトに配置でき、前記ミッションケース17の内部に前記無段変速機29の設置スペースを容易に確保できる。例えば、トラクタ1の伝動構造のように、走行副変速ギヤ機構30及び差動ギヤ機構58及びPTO変速ギヤ機構96などをミッションケース17の内部に設置するものであっても、前記ミッションケース17を小型化または軽量化でき、ミッションケース17などの製造コストを低減できる。
【0109】
特に、1つの正転用シフタ615の内径部と外径部とに係合爪622,623,624,625が交互に形成され、1速乃至4速ギヤ106,107,108,109のボス部の内径部と外径部とに係合突起610,611,612,613が交互に形成され、正転用シフタ615の摺動につれて、係合爪622,623,624,625が係合突起610,611,612,613と選択的に噛合う。したがって、従来のような1速乃至4速ギヤがスライドするものに比べて、正転用シフタ615の摺動量が少なくなり、1乃至4速ギヤ106,107,108,109の取付け幅(PTO変速出力軸99の軸線方向の取付け寸法)をコンパクトにできる。
【0110】
また、前記PTO変速シフタ111は、前記1乃至4速ギヤ106,107,108,109を出力制御する正転用シフタ615と、前記逆転ギヤ110を出力制御する逆転用シフタ616とからなり、前記正転用シフタ615に逆転用シフタ616を連結した。そのため、例えば、複数の前記1乃至4速ギヤ106,107,108,109と、前記逆転ギヤ110と、前記正転用シフタ615と、逆転用シフタ616とを前記PTO変速出力軸99に被嵌する構造において、連続したPTO変速操作によって前記正転用シフタ615と逆転用シフタ616を略同時に移動でき、前記PTO変速ギヤ機構96をミッションケース17にコンパクトに内設でき、ミッションケース17を小型化または軽量化でき、ミッションケース17などの製造コストを低減できる。
【0111】
また、前記PTO変速ギヤ機構96は、前記正転用シフタ615に連結する正転用変速アーム617と、前記正転用変速アーム617を設けるPTO変速操作軸614と、前記PTO変速操作軸614に回転自在に軸支する逆転アイドルギヤ620とを備えた。そのため、前記PTO変速操作軸614を兼用して前記正転用変速アーム617と前記逆転アイドルギヤ620とを軸支でき、前記逆転アイドルギヤ620を軸支するための専用の軸が不要になり、前記PTO変速ギヤ機構96をミッションケース17にコンパクトに内設でき、ミッションケース17を小型化または軽量化でき、ミッションケース17などの製造コストを低減できる。
【0112】
次に、図5、図13、図14、図18、図19、図20を参照して、上記前進油圧電磁弁46、後進油圧電磁弁48、オートブレーキ電磁弁67、四駆油圧電磁弁80、倍速油圧電磁弁82、PTOクラッチ油圧電磁弁104の取付け構造を詳述する。
【0113】
図18乃至図20に示されるように、前側壁部材32の後側面には、ベース部材650がボルトを介して着脱自在に固定される。前側壁部材32の後面にベース部材650の前面が連結される。副変速軸50及び差動出力軸62及び作動油566油面よりも低い位置にベース部材650が配置される。ベース部材650の後面には、後方に突出する姿勢で前記各電磁弁46,48,67,80,82,104が設置される。各電磁弁46,48,67,80,82,104の後面を平板蓋651が覆う。平板蓋651は、ベース部材650にボルトにて着脱自在に固定される。
【0114】
図13及び図14、図18及び図19に示されるように、ミッションケース17には、作動油をろ過するオイルフイルタ652が内設される。ベース部材650に対して、各電磁弁46,48,67,80,82,104を挟んで、ベース部材650の後方にオイルフイルタ652が配置される。オイルフイルタ652は、フイルタ蓋653に着脱自在に固定される。フイルタ蓋653は、締結部材654に一体的に形成される。ミッションケース17の外側面に締結部材654がボルト655を介して着脱自在に固定される。作業機用油圧ポンプ94及び走行用油圧ポンプ95の給油管656が、フイルタ蓋653に油路管657を介して連通される。
【0115】
次に、ミッションケース17に対する各電磁弁46,48,67,80,82,104の組み付け及び取り外しについて説明する。各電磁弁46,48,67,80,82,104がミッションケース17に組み込まれるときは、先ず、各電磁弁46,48,67,80,82,104がベース部材650に取り付けられる。その後、ベース部材650が前側壁部材32の後面に固定される。次いで前側壁部材32がミッションケース17前面部に固定され、各電磁弁46,48,67,80,82,104がミッションケース17に内設される。
【0116】
各電磁弁46,48,67,80,82,104がミッションケース17に内設されたとき、図5に示される各クラッチシリンダ47,49,81,82,105に、各電磁弁46,48,80,82,104が、前側壁部材32及びベース部材650に形成される穿孔形油路(図示省略)を介して連通される。各電磁弁46,48,80,82,104が適宜手段によって制御されたとき、各クラッチシリンダ47,49,81,82,105がそれぞれ作動し、図5に示される各クラッチ40,42,74,76,100がそれぞれ切換えられる。
【0117】
他方、ミッションケース17に内設された各電磁弁46,48,80,82,104を取り外すときは、前記と逆の手順により行う。先ず、ミッションケース17から前側壁部材32が外される。そして、前側壁部材32からベース部材650が外され、各電磁弁46,48,80,82,104の交換またはメンテナンスが行われる。
【0118】
なお、オイルフイルタ652の交換作業は、先ず、締結部材654及び給油管656から油路管657が取り外され、次いでミッションケース17から締結部材654が外され、ミッションケース17からオイルフイルタ652が取り出され、オイルフイルタ652のフイルタが交換される。また、フイルタ交換後のオイルフイルタ652は、前記と逆の手順で、再びミッションケース17に組み込まれる。
【0119】
上記の記載及び図18、図20などから明らかなように、エンジン5から動力が伝達されるミッションケース17の内部に、前記エンジン5から伝達された動力を走行出力用に変速する無段変速機29及び副変速ギヤ機構30と、前記副変速ギヤ機構30から出力された動力を左右の車輪3,4に伝達する差動ギヤ機構58と、前記エンジン5から伝達された動力をPTO出力用に変速するPTO変速ギヤ機構96とが配設され、前記副変速ギヤ機構30またはPTO変速ギヤ機構96を変速制御する複数の電磁弁80,82,104を備えた作業車両において、前記ミッションケース17内部にベース部材650を介して前記電磁弁80,82,104が配置され、前記ミッションケース17内部の作動油566の油面より低い位置に前記電磁弁80,82,104が配置された。そのため、前記電磁弁80,82,104が常に油浴状態に維持され、前記電磁弁80,82,104が錆びるのを防ぐためのメッキ加工が不要になり、前記電磁弁80,82,104の製造コストを低減できる。また、ミッションケース17の外側に前記電磁弁80,82,104が設置される構造に比べ、前記電磁弁80,82,104を保護する特別な部材などが不要になる。
【0120】
また、前記ミッションケース17の前側面に前側壁部材32が設置され、前側壁部材32の内側部に前記ベース部材650が配置されたから、複数の前記電磁弁80,82,104をベース部材650を介して前記ミッションケース17にコンパクトに内設できる。また、前記ミッションケース17の前部スペースを有効に活用して前記電磁弁80,82,104をコンパクトに設置できる。また、走行副変速ギヤ機構30またはPTO変速ギヤ機構96などの各切換制御部と、複数の前記電磁弁80,82,104との油圧接続に、前側壁部材32とベース部材650が利用でき、前記電磁弁80,82,104の油圧回路を構成するための油圧配管の設置数などを低減できる。
【0121】
また、前記ミッションケース17内部の作動油をろ過するためのオイルフイルタ652が内設され、前記電磁弁80,82,104を挟んで前記ベース部材650に対向して前記オイルフイルタ652が配置されたから、前記オイルフイルタ652と前記電磁弁80,82,104が離間して前記ミッションケース17の内部に配置される構造に比べ、前記ミッションケース17の内部に前記オイルフイルタ652の設置スペースを確保するとき、前記電磁弁80,82,104及び前記ベース部材650の設置スペースを容易に確保でき、前記オイルフイルタ652及び前記電磁弁80,82,104などの油圧部品をミッションケース17にコンパクトに内設できる。
【0122】
次に、図5、図6、図21、図22を参照して、上記副変速ギヤ機構30の変速構造及び変速制御を詳述する。
【0123】
図21に示されるように、副変速油圧シリンダ55は、ピストン660の片側にピストンロッド661を備えた複動構造に構成される。副変速油圧シリンダ55には、ピストンロッド661が内設される第1シリンダ室662と、他方の第2シリンダ室663とが形成される。ピストンロッド661先端部には、シフトアーム664を介して副変速シフタ665が連結される。副変速シフタ665によって低速クラッチ56または高速クラッチ57を継続し、副変速軸50を低速または高速駆動するように構成する。
【0124】
第1シリンダ室662は、走行用油圧ポンプ95の吐出側に直接連通される。第2シリンダ室663は、2位置3ポート型の高速用油圧切換弁666を介して、走行用油圧ポンプ95の吐出側に連通される。高速用油圧切換弁666は、高速ソレノイド667を備える。高速用油圧切換弁666が高速ソレノイド667によって切換えられ、第2シリンダ室663が高速用油圧切換弁666を介して走行用油圧ポンプ95の吐出側に連通されたときに、ピストン660両側の受圧力の差により、ピストンロッド661を突出する方向にピストン660が移動し、高速クラッチ57を継続して副変速軸50を高速駆動するように構成する(図21参照)。なお、図21の符号668は、リリーフ弁である。
【0125】
図21に示されるように、高速ソレノイド667を制御するための走行コントローラ669を備える。走行コントローラ669には、高速ソレノイド667と、副変速用の高速スイッチ670及び低速スイッチ671と、電源印加用キースイッチ672と、エンジン5の回転を制御する電子ガバナコントローラ673とが、接続される。走行コントローラ669は、キースイッチ672を介してバッテリ674に接続される。キースイッチ672は、エンジン5を始動するためのスタータ675に接続される(図21参照)。
【0126】
電子ガバナコントローラ673には、エンジン5の燃料を調節するガバナ676と、エンジン5の回転数を検出するエンジン回転センサ677とが、接続される。ガバナ676に設けた燃料調節ラック(図示省略)が、スロットルレバー678の手動操作によって位置調節されて、エンジン5の回転数が設定されたとき、スロットルレバー678の設定回転数とエンジン5の回転数が一致するように、燃料調節ラック駆動用の電磁ソレノイド(図示省略)を介して燃料調節ラックが自動的に位置調節され、負荷変動などによってエンジン5の回転が変化するのを防ぐように構成する(図21参照)。
【0127】
次に、図22に示されるように、副変速ギヤ機構30の変速制御を説明する。キースイッチ672をオンに(S1)し、スタータ675を作動してエンジン5が始動されたとき(S2)、エンジン回転センサ677からエンジン5の回転数が走行コントローラ669に入力される(S3)。一定時間(例えばエンジン5の回転数が、スロットルレバー678によって設定された回転数と略一致するのに必要な時間)が経過したとき(S4)、副変速ギヤ機構30の高速操作を許可する(S5)。高速スイッチ670がオンに操作されると(S6)、高速ソレノイド667が励磁されて、高速用油圧切換弁666が切換えられ、ピストンロッド661が進出し、高速クラッチ57が継続されて、副変速ギヤ機構30が高速側に切換えられる(S7)。他方、高速スイッチ670がオンに操作されないとき、または高速スイッチ670がオンに操作されたのちに低速スイッチ671がオンに操作されたとき(S8)、高速ソレノイド667がオフになり、高速用油圧切換弁666が戻りバネによって切換えられ、ピストンロッド661が退入し、低速クラッチ56が継続されて、副変速ギヤ機構30が低速側に切換えられる(S9)。
【0128】
上記の記載及び図21、図22などから明らかなように、エンジン5から動力が伝達されるミッションケース17の内部に、走行出力用の無段変速機29及び副変速ギヤ機構30と、左右の車輪3,4に動力を伝達する差動ギヤ機構58とが配設され、前記エンジン5にて駆動される副変速用油圧ポンプである走行用油圧ポンプ95と、前記副変速ギヤ機構30を変速制御する副変速油圧シリンダ55とを備えた作業車両において、前記エンジン5を始動する操作が行われたときに、前記副変速ギヤ機構30を低速側に切換えるように、前記副変速油圧シリンダ55が低速側に変速動作し、前記エンジン5が始動して一定時間経過したとき、前記副変速油圧シリンダ55が高速側に変速動作可能に構成した。そのため、例えば、トラクタ1の伝動構造のように、走行クラッチが継続した状態で前記エンジン5の始動が可能なもの、または走行クラッチが省かれてエンジン5と油圧無段変速機29が直結されたものであっても、前記副変速ギヤ機構30を低速側に切換えた状態で前記エンジン5が始動され、エンジン5の始動によりトラクタ1が不意に高速で移動するダッシング動作を防止できる。
【0129】
また、前記副変速油圧シリンダ55は、ピストン660の片側にピストンロッド661を備えた複動構造に構成され、前記副変速ギヤ機構30の変速切換え部に前記ピストンロッド661の先端側が連結された。そのため、前記ピストンロッド661を設けた第1シリンダ室662と他方の第2シリンダ室663との油圧作用力の差を利用して、エンジン5が始動されるときに前記副変速ギヤ機構30を低速側に切換えることができ、複動構造の前記副変速油圧シリンダ55を制御するための油圧切換構造を簡略化でき、前記副変速ギヤ機構30の変速切換構造が簡略化され、前記副変速ギヤ機構30の製造コストを低減できる。
【0130】
また、前記ピストンロッド661を設けた側の第1シリンダ室662が前記副変速用油圧ポンプ95に直接連通され、他方の第2シリンダ室663が高速用油圧切換弁666を介して前記副変速用油圧ポンプ95に連通されるように構成した。そのため、前記高速用油圧切換弁666を制御して、副変速用油圧シリンダ55を低速側または高速側に作動でき、前記副変速ギヤ機構30が低速側または高速側に切換えられるように構成でき、前記副変速ギヤ機構30などを小型化または軽量化でき、前記副変速ギヤ機構30の製造コストを低減できる。
【0131】
図5、図10乃至図13に示す如く、ミッションケース17に、エンジン5からの動力が伝達される主変速入力軸27と、油圧無段変速機29と、走行駆動輪(後車輪4)に動力を伝達する後輪用差動ギヤ機構58を設けた作業車両において、ミッションケース17の内部に前室34と後室35とを形成し、前室34の外側方から前室34を介して後室35に主変速入力軸27を延長し、後室35内の主変速入力軸27上に油圧無段変速機29を配置し、後輪用差動ギヤ機構58に隣接させて油圧無段変速機29を配置したものであるから、例えば複数組のギヤ機構(走行副変速ギヤ機構30やPTO変速ギヤ機構96)などが前記ミッションケース17の内部に設置されるトラクタ1等の伝動構造であっても、後室35内に後輪用差動ギヤ機構58及び油圧無段変速機29を簡単に設置できる。油圧無段変速機29が内蔵されるミッションケース17を小型化または軽量化でき、製造コストを低減できる。
【0132】
図5、図6、図10乃至図12に示す如く、油圧無段変速機29の出力を変速して伝達する走行副変速ギヤ機構30を備え、前室34内に走行副変速ギヤ機構30を配置し、後室35から前室34に向けて油圧無段変速機29の主変速出力軸36を延長させたものであるから、ミッションケース17を大型化または重量化することなく、ミッションケース17に前記油圧無段変速機29をコンパクトに内蔵できるものでありながら、ミッションケース17の内部に複数組の変速ギヤ機構(走行副変速ギヤ機構30やPTO変速ギヤ機構96)などを簡単に設置できる。
【0133】
図10乃至図12、図14に示す如く、後室35内から後室35の後方に突出させるPTO軸23を備え、後輪用差動ギヤ機構58の差動出力軸62よりも低位置にPTO軸23を配置し、差動出力軸62よりも高位置に油圧無段変速機29を配置し、後輪用差動ギヤ機構58の同一側方に片寄らせて、PTO軸23と油圧無段変速機29を設けたものであるから、後輪用差動ギヤ機構58の差動ギヤケース61を挟んで、一側方に後輪用差動ギヤ機構58のリングギヤ60を、他側方にPTO軸23と油圧無段変速機29をそれぞれ配置できる。後室35内の一側に片寄らせて大径のリングギヤ60を設置でき、主変速入力軸27上で油圧ポンプ部500及び油圧モータ部501等を回転させる油圧無段変速機29を高位置に設け、油圧無段変速機29よりもミッションケース17内の作動油の攪拌抵抗が小さいPTO軸23を低位置に設け、ミッションケース17を小型コンパクトに形成できるものでありながら、ミッションケース17内の作動油566が油圧無段変速機29にて攪拌されるのを抑制して、油圧無段変速機29の作動油566の攪拌抵抗を低減でき、油圧無段変速機29の伝動効率を向上できる。
【0134】
図10、図11、図14、図15に示す如く、ミッションケース17の上面側のうち後室35の内部に連通した上面側開口部に油圧装置としての作業機用昇降機構20を着脱可能に設ける構造であって、作業機用昇降機構20の下面側に油圧無段変速機29の上面側を対向させるように構成したものであるから、作業機用昇降機構20の下面側から油圧無段変速機29の上面側に向けて作業機用昇降機構20の作動油が流下され、ミッションケース17内に戻る作業機用昇降機構20の作動油を、油圧無段変速機29の潤滑油として活用できる。例えば、ミッションケース17内に貯蔵する作動油の油面を油圧無段変速機29よりも低くして、油圧無段変速機29による作動油566の攪拌抵抗をなくすことができ、油圧無段変速機29等の伝動効率を向上できる。
【符号の説明】
【0135】
4 後車輪(走行駆動輪)
5 エンジン
17 ミッションケース
20 作業機用昇降機構(油圧装置)
23 PTO軸
27 主変速入力軸
29 無段変速機
30 走行副変速ギヤ機構
34 前室
35 後室
36 主変速出力軸
58 後輪用差動ギヤ機構
60 リングギヤ
61 差動ギヤケース
62 差動出力軸
96 PTO変速ギヤ機構
500 油圧ポンプ部
501 油圧モータ部
505 シリンダブロック
559 軸受ホルダ
566 作動油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケースに、エンジンからの動力が伝達される入力軸と、油圧無段変速機と、走行駆動輪に動力を伝達する差動ギヤ機構を設けた作業車両において、
前記ミッションケースの内部に前室と後室とを形成し、前記前室の外側方から前記前室を介して前記後室に前記入力軸を延長し、前記後室内の前記入力軸上に前記油圧無段変速機を配置し、前記後室内には、前記差動ギヤ機構を前記油圧無段変速機に隣接させて配置し、前記後室内から前記後室の後方に突出させるPTO軸を更に備え、前記油圧無段変速機と前記差動ギヤ機構と前記PTO軸の三者を前記後室内に位置させた、
作業車両。
【請求項2】
前記後室内には、前記差動ギヤ機構の差動出力軸が前記油圧無段変速機よりも低位置にくるように前記差動ギヤ機構を配置すると共に、前記差動ギヤ機構の差動出力軸よりも低位置にくるように前記PTO軸を配置し、
前記後室内において、前記差動ギヤ機構の同一側方に片寄らせて、前記PTO軸と前記油圧無段変速機とを位置させた、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ミッションケースの上面側のうち前記後室の内部に連通した上面側開口部に油圧装置を着脱可能に設ける構造であって、前記油圧装置の下面側に前記油圧無段変速機の上面側を対向させるように構成した、
請求項2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−66823(P2012−66823A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263582(P2011−263582)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2009−278585(P2009−278585)の分割
【原出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】