作業靴
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木建築の現場や屋外での各種作業において、作業者のつま先を保護するために使用される作業靴に関する。
【0002】
【従来の技術】製造業や建設業,林業等の物の落下の危険のある作業現場では、作業者は、落下物からつま先を保護するため革製の安全靴を着用することが多い。
【0003】
【発明が解決する課題】安全靴は、甲革に装着した鋼製の先しんにより、落下物による圧迫や衝撃からつま先を確実に保護できるが、先しん及びこれを被覆する甲革,中底等の各部材が硬質で厚いため靴が重量となり、履き心地が悪く、作業がし難いものであった。また、安全靴は、製法が規格化され、所定の加工工程を経て製造されるため、生産性に劣り、生産コストの低減にも限界があった。
【0004】一方、落下物に対してつま先を確実に保護可能であれば、必ずしも従来形状の先しんを用いる必要性はなく、簡易な構造のつま先保護手段、及び生産性に優れた安全な作業靴が望まれていた。
【0005】本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量化を図りながら落下物に対し、つま先を安全且つ確実に保護することができ、低廉なコストで生産可能な作業靴を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の作業靴は、硬質板体をつま先を保護し得る高さでつま先部の外周に沿って湾曲させて形成された帯状の防護板を、つま先部の靴底から略垂直に立設させてなるものである。また、本発明の作業靴は、硬質板体をつま先を保護し得る高さでつま先部の外周に沿って湾曲させて形成された帯状の防護板を、つま先部の外側面部に、靴底に対して略垂直となるようにして固着してなるものである。上記各形態において、つま先部の外側面部と防護板との間には弾性材を介在させることが好ましい。また、各形態において、防護板の左右両側部間には、硬質梁板をアーチ状に掛渡して設けることが、より好ましい。さらに各形態において、防護板の下端部に略直角に折れ曲がった平坦部を形成して設けることが好ましい。
【0007】上記形態によれば、防護板の上端、さらには梁板の上面で落下物を受止し、また、防護板壁面で載置物との衝突を防護し、作業靴の上方又は前方からの圧迫や衝撃からつま先を保護することができる。防護板の下端部に平坦部を形成してあれば、防護板を靴底に、より確実に定着させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施例を図面を参照して説明する。図1〜5は本発明の第1実施例を示し、本例の作業靴1は、合皮や布地で縫製されたアッパー2を中底3の下面に吊り込み、この吊り込まれたアッパー2の底部にゴム製の靴底4を接着し、さらに適宜な高さを有していてアッパー2のつま先部2aの外周に沿って湾曲形成された防護板5を靴底4から略垂直に立設させて形成したものである。
【0009】防護板5は、図2に示すように、数ミリの厚さ、好ましくは2〜6mm程度の厚さの鉄板、合成樹脂板その他の硬質板体を、つま先部2aの外周形状に合致するように湾曲させると共に重量物が落下したときにこれを確実に受止し、つま先を保護するため、落下時の衝撃がつま先部2aの外側に逃げるように上縁5aを外方へ傾斜させ、また、靴底4の上面部分への係止を容易且つ確実に行うため、下縁5aを同じく外方へ傾斜させて帯状に形成してある。防護板5の高さは、落下物からつま先を安全に保護し、同時に履用中に邪魔とならない高さ、好ましくは10〜20mm程度に設定してある。
【0010】靴底4は、図4に示すように、未加硫底の少なくともつま先部2aの外周部分を若干外方に張り出させた張出縁として形成し、上記張出縁の周端上方に突起した縁部4aを設け、この縁部4aの内側に底上面に連続する溝4b部分を設け、さらに溝4b部分の縁部4a端に防護板5の下縁5bを挿入可能な細溝4cを設けて形成してある。
【0011】上記縁部4aは防護板5を安定して立設し得るように防護板5の外側面の下方の過半部分、さらに好ましくは下方から約2/3程度の部分に接合し得る高さに設定してあるのが好ましい。また、上記溝4bは防護板5の下部を差し込み固着し得る幅の凹部として、好ましくは防護板5の下端部が挿入しやすいように若干上広がり状に形成し、細溝4cはさらに下方に折曲状に突出した防護板5の下縁5a部分を圧入可能な外傾斜溝として形成してある。
【0012】本例の作業靴1の製造は、先ず、未加硫の靴底4内にアッパー2及び中底3の底部を接着し、この際アッパー2の指先外側面の接際部付近には未加硫ゴムシートを接合し或いは未加硫ゴム糊6を付着しておき、一方、縁部4aの内側面には接着剤を塗着しておき、上記アッパー2と縁部4aとの間に位置する溝4b部分に、固着した防護板5の下部を押圧しつつ嵌入させると同時に、防護板5の下縁5bを細溝4cに圧入し、その上で、靴底4を加硫成形すれば、各部材は確実強固に固着する。
【0013】また、靴底4は、図5に示すように、上記と同様に張出縁を形成してその周端上方に縁部4aを形成すると共に、その内側に溝4bを介して上方に突起した突部4dを形成し、溝4bの下面には上記と同様の細溝4cを形成してもよい。この場合の作業靴1の製造は、突部4dに上記と同様にしてアッパー2を吊り込んで接着するが、上記の如くゴム糊等を用いる必要はなく、さらに縁部4aの内側に接着剤を塗着しておいて縁部4aと突部4dの間の溝4bに防護板5の下部を嵌入させ、その上で靴底4を加硫成形すればよい。
【0014】このようにして形成された作業靴1は、つま先への落下物を防護板5の上端で確実に受止して落下時の衝撃を緩衝するので、仮に物が落下したとしても、落下物がつま先に直に当たって怪我をする等の危険性がなく、作業を安全に進めることができる。
【0015】また、防護板5はアッパー2の外側に設けてあるので、各指の自由度や運動性は通常の作業用の靴と何等変わることのない、良好な着用感及び安定感を得ることができ、しかも指全体を先しんで被覆する従来構造と比較して使用材料を節減でき、軽量化を図れるものである。
【0016】さらに、製造の際には、アッパー2を靴底4に接着した後で防護板5を取り付けることができるので、アッパー2に何等特別な加工を施す必要がなく、製造に手間がかからず、防護板5の曲げ加工のみで容易に形成できるから生産コストを抑えることができるものである。
【0017】図6〜8は本発明の第2実施例を示し、これは、アッパー2を中底3の下面に吊り込み、この吊り込まれたアッパー2の底部にゴム製の靴底4を接着し、アッパー2のつま先部2aの外周に弾性材片7を固着し、この弾性材片7の外側面部に沿って湾曲させた防護板8を貼着して形成したものである。
【0018】弾性材片7は、ゴムや合成樹脂等の弾性を有する材質を用い、好ましくは靴底4と同材質のゴム材を適宜な厚みで加硫成形し、つま先部2aの外周側面形状に沿って、当該アッパー2の外側面に一体に固着してある。
【0019】防護板8は、前述と同様に硬質板体を用い、つま先部2a及び弾性材片7の外側面形状に合致するように湾曲した帯状に形成してあるが、本例では弾性材片7表面への接着を確実に行うため前記防護板5と異なり上下両縁は折り曲げていない。
【0020】本例の作業靴1の製造は、アッパー2が接着された靴底4を加硫成形し、或いはアッパー2と靴底4を縫合する通常の加工工程で作業靴を形成した後、つま先部2aの外側面部に接着剤を介して弾性材片7を固着し、さらに、弾性材片7の外側面部に同じく接着剤を介して防護板8を接着し、これらを作業靴1に定着させることにより行われる。この場合、防護板8は、靴底4に対して略垂直を成すように固着するのが好ましい。
【0021】なお、未加硫の弾性材片7を用いる場合は、アッパー2を吊り込んで靴底4に接着した後、つま先部2aの外側面部に弾性材片7及び防護板8と、未加硫ゴム又は加硫ゴムシートを未加硫ゴム糊を介して接合し、その上で靴底4を加硫成形することにより各部材の定着を行うことができる。また、弾性材片7は、実施例1の作業靴1のアッパー2の端部と防護板5の間に介在させるようにしてもよい。
【0022】このようにして形成された作業靴1は、前述と同様、つま先への落下物を防護板8の上端で確実に受止してつま先を確実に保護することができると共に、防護板8がつま先部2aの外側面部に沿って設けてあるので防護板8によって指先が圧迫されず、指先の自由度を確保でき、また、弾性材片7を介して固着されているから、防護板8に指先が当たる等して指先を傷める危険性がなく、弾性材片7の弾性が指先と防護板との間でクッション作用を成して履き心地を和らげ、良好な履用感を得ることができる。
【0023】図9は本発明の第3実施例を示し、これは、靴底4の縁部をアッパー2の接際部よりも若干幅外方に張り出した張出縁4eとして形成し、この張出縁4e上面に防護板8を立設し、固着したものである。本例の作業靴1の製造も実施例2と同様、靴底4を加硫成形後、作業靴1のつま先部2aの外側面部に、弾性材片7及び防護板8を貼着することにより行われる。
【0024】図10及び図11は本発明の第4実施例を示し、これは防護板9を、下端部に縁部を略直角に折り曲げてなる平坦部9aを形成し、弾性材片7の外側面部と底面部に防護板9の内側面部と平坦部9aをそれぞれぴったりと定着させたものである。図11(B)に示すように、靴底4に張出縁4eを形成し、弾性材片7の底面部には溝7aを形成し、張出縁4eと溝7a間に防護板9の平坦部9aを嵌合させれば、より確実に定着させることができる。
【0025】図12〜14は本発明の第5実施例を示し、これらは、前述の如く湾曲形成された防護板5の左右両側部間に梁板10をアーチ状に掛渡して固着したものである。
【0026】この梁板10は、適宜な幅、例えばつま先部2aを被覆し得る程度の幅を有する鉄板,合成樹脂板その他の硬質板体をアーチ状に湾曲形成し、その左右両端の外側部を防護板5の左右両側の内側面に接合し、リベット止め、かしめ付け、溶接或いは接着等の適宜な接合手段により強固に止着してある。梁板10は、その頂端が防護板5よりも若干高く、履用時につま先の上側を擦らない程度に被覆し得る高さ、例えば靴底4の上面から25〜35mm程度の高さとなるように湾曲してある。
【0027】本実施例によれば、落下物を梁板10のアーチ上面で受けてつま先を直撃するのを防ぐと同時に、落下した際の衝撃力によって万一生じることがあり得る防護板5の拡大変形を梁板10との固着による引っ張り応力で防止し、落下物に対するつま先の保護をより確実なものとすることができる。
【0028】なお、本実施例における、防護板5の靴底4への取付けは梁板10を防護板5に固着した後、第1実施例と同様にして行なうことができ、また、第2実施例の防護板9に梁板10を固着し、これを弾性材片7を介してつま先部2aの外側面部に貼着してもよい。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明の作業靴によれば、アッパーのつま先部の外側面部に沿った適宜高さの帯状の防護板を設けるという簡単な構造を採用することで、つま先を落下物から確実且つ安全に保護することができ、この種従来の安全靴或いは他の作業靴と比較して、つま先を保護するという機能性及び安全性を低下させずに、作業靴を軽量化することができ、また、より低廉なコストで生産することができる。
【0030】また、防護板と、つま先外側面部との間に弾性材片を設けることにより、指先の自由度を確保して、防護板による指先の圧迫や損傷を防止し、また、弾性材片の弾性が指先と防護板との間でクッション作用を成して履き心地が和らげられ、良好な履用感を得ることができる。
【0031】さらに、防護板の両端部に、硬質板をアーチ状に湾曲させてなる梁板を固着することにより、落下物を確実に受止してつま先に当たることを阻止すると共に、落下の衝撃に対して防護板をより変形し難くし、強度を高めることができる。
【0032】上記両板は、アッパーの外側に設けてあるので各指の自由度や運動性は通常の作業用の靴と何等変わることのない、良好な着用感及び安定感が得られ、而も履用の際に邪魔となることはない。そして、製造の際には、アッパーを靴底に接着した後で両板を取り付けることができるので、アッパーに何等特別な加工を施す必要がなく、製造に手間がかからず、効率的に生産可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作業靴の第1実施例の斜視図である。
【図2】図1の防護板の一部破断斜視図である。
【図3】図1の作業靴のつま先部の拡大縦断面図である。
【図4】図1の作業靴のつま先部の拡大横断面図である。
【図5】図4に対応する他の形態のつま先部の拡大横断面図である。
【図6】本発明の作業靴の第2実施例の斜視図である。
【図7】図6の作業靴を上方から見たつま先部の拡大断面図である。
【図8】図6の作業靴のつま先部の拡大縦断面図である。
【図9】本発明の作業靴の第3実施例のつま先部拡大縦断面図である。
【図10】本発明の作業靴の第4実施例の防護板の一部破断斜視図である。
【図11】第4実施例の作業靴のつま先部の拡大縦断面図を示し、(A)はつま先部の外側面部に弾性材片及び防護板をそのまま貼着した形態、(B)は靴底と弾性材片に張出部と溝をそれぞれ設けて防護板を貼着する形態である。
【図12】本発明の作業靴の第5実施例の要部斜視図である。
【図13】図12の防護板と梁板の分解斜視図である。
【図14】図12の作業靴のつま先部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1 作業靴
2 アッパー
3 中底
4 靴底
5,8,9 防護板
6 ゴム糊
7 弾性材片
10 梁板
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木建築の現場や屋外での各種作業において、作業者のつま先を保護するために使用される作業靴に関する。
【0002】
【従来の技術】製造業や建設業,林業等の物の落下の危険のある作業現場では、作業者は、落下物からつま先を保護するため革製の安全靴を着用することが多い。
【0003】
【発明が解決する課題】安全靴は、甲革に装着した鋼製の先しんにより、落下物による圧迫や衝撃からつま先を確実に保護できるが、先しん及びこれを被覆する甲革,中底等の各部材が硬質で厚いため靴が重量となり、履き心地が悪く、作業がし難いものであった。また、安全靴は、製法が規格化され、所定の加工工程を経て製造されるため、生産性に劣り、生産コストの低減にも限界があった。
【0004】一方、落下物に対してつま先を確実に保護可能であれば、必ずしも従来形状の先しんを用いる必要性はなく、簡易な構造のつま先保護手段、及び生産性に優れた安全な作業靴が望まれていた。
【0005】本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量化を図りながら落下物に対し、つま先を安全且つ確実に保護することができ、低廉なコストで生産可能な作業靴を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明の作業靴は、硬質板体をつま先を保護し得る高さでつま先部の外周に沿って湾曲させて形成された帯状の防護板を、つま先部の靴底から略垂直に立設させてなるものである。また、本発明の作業靴は、硬質板体をつま先を保護し得る高さでつま先部の外周に沿って湾曲させて形成された帯状の防護板を、つま先部の外側面部に、靴底に対して略垂直となるようにして固着してなるものである。上記各形態において、つま先部の外側面部と防護板との間には弾性材を介在させることが好ましい。また、各形態において、防護板の左右両側部間には、硬質梁板をアーチ状に掛渡して設けることが、より好ましい。さらに各形態において、防護板の下端部に略直角に折れ曲がった平坦部を形成して設けることが好ましい。
【0007】上記形態によれば、防護板の上端、さらには梁板の上面で落下物を受止し、また、防護板壁面で載置物との衝突を防護し、作業靴の上方又は前方からの圧迫や衝撃からつま先を保護することができる。防護板の下端部に平坦部を形成してあれば、防護板を靴底に、より確実に定着させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施例を図面を参照して説明する。図1〜5は本発明の第1実施例を示し、本例の作業靴1は、合皮や布地で縫製されたアッパー2を中底3の下面に吊り込み、この吊り込まれたアッパー2の底部にゴム製の靴底4を接着し、さらに適宜な高さを有していてアッパー2のつま先部2aの外周に沿って湾曲形成された防護板5を靴底4から略垂直に立設させて形成したものである。
【0009】防護板5は、図2に示すように、数ミリの厚さ、好ましくは2〜6mm程度の厚さの鉄板、合成樹脂板その他の硬質板体を、つま先部2aの外周形状に合致するように湾曲させると共に重量物が落下したときにこれを確実に受止し、つま先を保護するため、落下時の衝撃がつま先部2aの外側に逃げるように上縁5aを外方へ傾斜させ、また、靴底4の上面部分への係止を容易且つ確実に行うため、下縁5aを同じく外方へ傾斜させて帯状に形成してある。防護板5の高さは、落下物からつま先を安全に保護し、同時に履用中に邪魔とならない高さ、好ましくは10〜20mm程度に設定してある。
【0010】靴底4は、図4に示すように、未加硫底の少なくともつま先部2aの外周部分を若干外方に張り出させた張出縁として形成し、上記張出縁の周端上方に突起した縁部4aを設け、この縁部4aの内側に底上面に連続する溝4b部分を設け、さらに溝4b部分の縁部4a端に防護板5の下縁5bを挿入可能な細溝4cを設けて形成してある。
【0011】上記縁部4aは防護板5を安定して立設し得るように防護板5の外側面の下方の過半部分、さらに好ましくは下方から約2/3程度の部分に接合し得る高さに設定してあるのが好ましい。また、上記溝4bは防護板5の下部を差し込み固着し得る幅の凹部として、好ましくは防護板5の下端部が挿入しやすいように若干上広がり状に形成し、細溝4cはさらに下方に折曲状に突出した防護板5の下縁5a部分を圧入可能な外傾斜溝として形成してある。
【0012】本例の作業靴1の製造は、先ず、未加硫の靴底4内にアッパー2及び中底3の底部を接着し、この際アッパー2の指先外側面の接際部付近には未加硫ゴムシートを接合し或いは未加硫ゴム糊6を付着しておき、一方、縁部4aの内側面には接着剤を塗着しておき、上記アッパー2と縁部4aとの間に位置する溝4b部分に、固着した防護板5の下部を押圧しつつ嵌入させると同時に、防護板5の下縁5bを細溝4cに圧入し、その上で、靴底4を加硫成形すれば、各部材は確実強固に固着する。
【0013】また、靴底4は、図5に示すように、上記と同様に張出縁を形成してその周端上方に縁部4aを形成すると共に、その内側に溝4bを介して上方に突起した突部4dを形成し、溝4bの下面には上記と同様の細溝4cを形成してもよい。この場合の作業靴1の製造は、突部4dに上記と同様にしてアッパー2を吊り込んで接着するが、上記の如くゴム糊等を用いる必要はなく、さらに縁部4aの内側に接着剤を塗着しておいて縁部4aと突部4dの間の溝4bに防護板5の下部を嵌入させ、その上で靴底4を加硫成形すればよい。
【0014】このようにして形成された作業靴1は、つま先への落下物を防護板5の上端で確実に受止して落下時の衝撃を緩衝するので、仮に物が落下したとしても、落下物がつま先に直に当たって怪我をする等の危険性がなく、作業を安全に進めることができる。
【0015】また、防護板5はアッパー2の外側に設けてあるので、各指の自由度や運動性は通常の作業用の靴と何等変わることのない、良好な着用感及び安定感を得ることができ、しかも指全体を先しんで被覆する従来構造と比較して使用材料を節減でき、軽量化を図れるものである。
【0016】さらに、製造の際には、アッパー2を靴底4に接着した後で防護板5を取り付けることができるので、アッパー2に何等特別な加工を施す必要がなく、製造に手間がかからず、防護板5の曲げ加工のみで容易に形成できるから生産コストを抑えることができるものである。
【0017】図6〜8は本発明の第2実施例を示し、これは、アッパー2を中底3の下面に吊り込み、この吊り込まれたアッパー2の底部にゴム製の靴底4を接着し、アッパー2のつま先部2aの外周に弾性材片7を固着し、この弾性材片7の外側面部に沿って湾曲させた防護板8を貼着して形成したものである。
【0018】弾性材片7は、ゴムや合成樹脂等の弾性を有する材質を用い、好ましくは靴底4と同材質のゴム材を適宜な厚みで加硫成形し、つま先部2aの外周側面形状に沿って、当該アッパー2の外側面に一体に固着してある。
【0019】防護板8は、前述と同様に硬質板体を用い、つま先部2a及び弾性材片7の外側面形状に合致するように湾曲した帯状に形成してあるが、本例では弾性材片7表面への接着を確実に行うため前記防護板5と異なり上下両縁は折り曲げていない。
【0020】本例の作業靴1の製造は、アッパー2が接着された靴底4を加硫成形し、或いはアッパー2と靴底4を縫合する通常の加工工程で作業靴を形成した後、つま先部2aの外側面部に接着剤を介して弾性材片7を固着し、さらに、弾性材片7の外側面部に同じく接着剤を介して防護板8を接着し、これらを作業靴1に定着させることにより行われる。この場合、防護板8は、靴底4に対して略垂直を成すように固着するのが好ましい。
【0021】なお、未加硫の弾性材片7を用いる場合は、アッパー2を吊り込んで靴底4に接着した後、つま先部2aの外側面部に弾性材片7及び防護板8と、未加硫ゴム又は加硫ゴムシートを未加硫ゴム糊を介して接合し、その上で靴底4を加硫成形することにより各部材の定着を行うことができる。また、弾性材片7は、実施例1の作業靴1のアッパー2の端部と防護板5の間に介在させるようにしてもよい。
【0022】このようにして形成された作業靴1は、前述と同様、つま先への落下物を防護板8の上端で確実に受止してつま先を確実に保護することができると共に、防護板8がつま先部2aの外側面部に沿って設けてあるので防護板8によって指先が圧迫されず、指先の自由度を確保でき、また、弾性材片7を介して固着されているから、防護板8に指先が当たる等して指先を傷める危険性がなく、弾性材片7の弾性が指先と防護板との間でクッション作用を成して履き心地を和らげ、良好な履用感を得ることができる。
【0023】図9は本発明の第3実施例を示し、これは、靴底4の縁部をアッパー2の接際部よりも若干幅外方に張り出した張出縁4eとして形成し、この張出縁4e上面に防護板8を立設し、固着したものである。本例の作業靴1の製造も実施例2と同様、靴底4を加硫成形後、作業靴1のつま先部2aの外側面部に、弾性材片7及び防護板8を貼着することにより行われる。
【0024】図10及び図11は本発明の第4実施例を示し、これは防護板9を、下端部に縁部を略直角に折り曲げてなる平坦部9aを形成し、弾性材片7の外側面部と底面部に防護板9の内側面部と平坦部9aをそれぞれぴったりと定着させたものである。図11(B)に示すように、靴底4に張出縁4eを形成し、弾性材片7の底面部には溝7aを形成し、張出縁4eと溝7a間に防護板9の平坦部9aを嵌合させれば、より確実に定着させることができる。
【0025】図12〜14は本発明の第5実施例を示し、これらは、前述の如く湾曲形成された防護板5の左右両側部間に梁板10をアーチ状に掛渡して固着したものである。
【0026】この梁板10は、適宜な幅、例えばつま先部2aを被覆し得る程度の幅を有する鉄板,合成樹脂板その他の硬質板体をアーチ状に湾曲形成し、その左右両端の外側部を防護板5の左右両側の内側面に接合し、リベット止め、かしめ付け、溶接或いは接着等の適宜な接合手段により強固に止着してある。梁板10は、その頂端が防護板5よりも若干高く、履用時につま先の上側を擦らない程度に被覆し得る高さ、例えば靴底4の上面から25〜35mm程度の高さとなるように湾曲してある。
【0027】本実施例によれば、落下物を梁板10のアーチ上面で受けてつま先を直撃するのを防ぐと同時に、落下した際の衝撃力によって万一生じることがあり得る防護板5の拡大変形を梁板10との固着による引っ張り応力で防止し、落下物に対するつま先の保護をより確実なものとすることができる。
【0028】なお、本実施例における、防護板5の靴底4への取付けは梁板10を防護板5に固着した後、第1実施例と同様にして行なうことができ、また、第2実施例の防護板9に梁板10を固着し、これを弾性材片7を介してつま先部2aの外側面部に貼着してもよい。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明の作業靴によれば、アッパーのつま先部の外側面部に沿った適宜高さの帯状の防護板を設けるという簡単な構造を採用することで、つま先を落下物から確実且つ安全に保護することができ、この種従来の安全靴或いは他の作業靴と比較して、つま先を保護するという機能性及び安全性を低下させずに、作業靴を軽量化することができ、また、より低廉なコストで生産することができる。
【0030】また、防護板と、つま先外側面部との間に弾性材片を設けることにより、指先の自由度を確保して、防護板による指先の圧迫や損傷を防止し、また、弾性材片の弾性が指先と防護板との間でクッション作用を成して履き心地が和らげられ、良好な履用感を得ることができる。
【0031】さらに、防護板の両端部に、硬質板をアーチ状に湾曲させてなる梁板を固着することにより、落下物を確実に受止してつま先に当たることを阻止すると共に、落下の衝撃に対して防護板をより変形し難くし、強度を高めることができる。
【0032】上記両板は、アッパーの外側に設けてあるので各指の自由度や運動性は通常の作業用の靴と何等変わることのない、良好な着用感及び安定感が得られ、而も履用の際に邪魔となることはない。そして、製造の際には、アッパーを靴底に接着した後で両板を取り付けることができるので、アッパーに何等特別な加工を施す必要がなく、製造に手間がかからず、効率的に生産可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作業靴の第1実施例の斜視図である。
【図2】図1の防護板の一部破断斜視図である。
【図3】図1の作業靴のつま先部の拡大縦断面図である。
【図4】図1の作業靴のつま先部の拡大横断面図である。
【図5】図4に対応する他の形態のつま先部の拡大横断面図である。
【図6】本発明の作業靴の第2実施例の斜視図である。
【図7】図6の作業靴を上方から見たつま先部の拡大断面図である。
【図8】図6の作業靴のつま先部の拡大縦断面図である。
【図9】本発明の作業靴の第3実施例のつま先部拡大縦断面図である。
【図10】本発明の作業靴の第4実施例の防護板の一部破断斜視図である。
【図11】第4実施例の作業靴のつま先部の拡大縦断面図を示し、(A)はつま先部の外側面部に弾性材片及び防護板をそのまま貼着した形態、(B)は靴底と弾性材片に張出部と溝をそれぞれ設けて防護板を貼着する形態である。
【図12】本発明の作業靴の第5実施例の要部斜視図である。
【図13】図12の防護板と梁板の分解斜視図である。
【図14】図12の作業靴のつま先部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1 作業靴
2 アッパー
3 中底
4 靴底
5,8,9 防護板
6 ゴム糊
7 弾性材片
10 梁板
【特許請求の範囲】
【請求項1】硬質板体をつま先を保護し得る高さでつま先部の外周に沿って湾曲させて形成された帯状の防護板を、つま先部の靴底から略垂直に立設させてなる作業靴。
【請求項2】硬質板体をつま先を保護し得る高さでつま先部の外周に沿って湾曲させて形成された帯状の防護板を、つま先部の外側面部に、靴底に対して略垂直となるようにして固着してなる作業靴。
【請求項3】つま先部の外側面部と防護板との間に弾性材を介在させた請求項1又は2に記載の作業靴。
【請求項4】防護板の左右両側部間に梁板をアーチ状に掛渡して固着してなる請求項1〜3の何れかに記載の作業靴。
【請求項5】防護板の下端部に略直角に折れ曲がった平坦部を形成してなる請求項1〜4の何れかに記載の作業靴。
【請求項1】硬質板体をつま先を保護し得る高さでつま先部の外周に沿って湾曲させて形成された帯状の防護板を、つま先部の靴底から略垂直に立設させてなる作業靴。
【請求項2】硬質板体をつま先を保護し得る高さでつま先部の外周に沿って湾曲させて形成された帯状の防護板を、つま先部の外側面部に、靴底に対して略垂直となるようにして固着してなる作業靴。
【請求項3】つま先部の外側面部と防護板との間に弾性材を介在させた請求項1又は2に記載の作業靴。
【請求項4】防護板の左右両側部間に梁板をアーチ状に掛渡して固着してなる請求項1〜3の何れかに記載の作業靴。
【請求項5】防護板の下端部に略直角に折れ曲がった平坦部を形成してなる請求項1〜4の何れかに記載の作業靴。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【特許番号】特許第3123639号(P3123639)
【登録日】平成12年10月27日(2000.10.27)
【発行日】平成13年1月15日(2001.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−294226
【出願日】平成7年11月13日(1995.11.13)
【公開番号】特開平9−135707
【公開日】平成9年5月27日(1997.5.27)
【審査請求日】平成9年6月3日(1997.6.3)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000155861)株式会社力王 (6)
【参考文献】
【文献】特開 平8−84601(JP,A)
【文献】実公 平3−32242(JP,Y2)
【文献】実公 平3−32241(JP,Y2)
【登録日】平成12年10月27日(2000.10.27)
【発行日】平成13年1月15日(2001.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成7年11月13日(1995.11.13)
【公開番号】特開平9−135707
【公開日】平成9年5月27日(1997.5.27)
【審査請求日】平成9年6月3日(1997.6.3)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000155861)株式会社力王 (6)
【参考文献】
【文献】特開 平8−84601(JP,A)
【文献】実公 平3−32242(JP,Y2)
【文献】実公 平3−32241(JP,Y2)
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