説明

作物収穫機

【課題】機体の走行に伴って葉部を圃場に排出させるものでありながら、排出された葉部によって阻害されることなく収穫作業を良好に行うことが可能となる作物収穫機を提供する。
【解決手段】機体横幅方向の一端側に位置して機体の走行に伴って圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送する引き抜き部6と、引き抜き部6にて後方に搬送される作物の葉部を切断して作物と分離する葉部切断部7と、葉部が切断された作物を機体横幅方向の他端側に搬送する作物搬送部8とが備えられ、葉部切断部7にて切断された葉部を機体横幅方向の他端側に搬送して機外に排出する葉部搬送装置21が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体横幅方向の一端側に位置して機体の走行に伴って圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送する引き抜き部と、前記引き抜き部にて後方に搬送される作物の葉部を切断して作物と分離する葉部切断部と、葉部が切断された作物を機体横幅方向の他端側に搬送する作物搬送部とが備えられている作物収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作物収穫機において、従来では、引き抜き部にて圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送しながら葉部切断部により葉部を切断して、葉部が切断された作物は作物搬送部としてのコンベアにより機体横幅方向の他端側に搬送するようになっているが、切断されて作物(人参)と分離された葉部は、ベルト式挟持搬送装置により引き抜き部の後方に向けて搬送したのちシュート等を介して機体後方側から機外に排出する構成となっていた(例えば、特許文献1参照。)。
尚、特許文献1に記載されるものでは、機体横幅方向の他端側に搬送した作物は、機体横幅方向の他端側に備えた回収部にて回収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−268357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場には間隔をあけて並ぶ状態で複数の作物列を形成する状態で作物が植えられている。そして、上記作物収穫機は、圃場に植えられている作物を1つの作物列に沿って機体を走行させながら収穫するものであるが、その収穫作業にあたり、未収穫領域の複数の作物列のうち最も既収穫領域側の列の作物を収穫対象として引き抜き部にて圃場から作物を引き抜きながら収穫することになる。このように走行機体に備えられている左右両側の走行装置にて未収穫領域の作物を踏みつけることのない状態で収穫を行えるようにしている。
【0005】
又、引き抜き部にて後方に搬送され且つ葉部が切断された作物を機体横幅方向の他端側に搬送する構成とすることにより、機体の左右重量バランスを考慮して機体横幅方向の他端側に備えた回収部にて作物を回収するようにしている。
尚、機体横幅方向の他端側に搬送する作物の処理形態としては、例えば、隣接する作物列における次回の作業行程での収穫作業の際に、走行装置により作物を踏み付けることが無いようにしながら、機体横幅方向の他端側の機体外方側から作物を圃場に放出させる作業形態を採ることもある。
【0006】
しかしながら、上記従来構成では、作物から分離された葉部は、引き抜き部の後方に向けて搬送したのち機体後方外方側から機外に排出する構成となっていることから、次のような不利があった。
【0007】
すなわち、葉部は、引き抜き部の後方側、つまり、機体横幅方向の一端側に位置している状態で圃場に排出されるので、隣接する作物列における次回の作業行程での収穫作業の際に収穫対象となる作物列に近い位置に存在することになる。
その結果、次回の作業行程での収穫作業を行う場合、収穫対象となる作物列に近い位置に圃場に放出された葉部が存在するので、例えば葉部が引き抜き部に絡み付いて収穫作業を阻害するおそれがあった。
【0008】
ところで、圃場に放出された葉部は一般的には収穫対象ではないので、機体に備えられた走行装置により踏み付けられることがあっても問題は少ないと考えられるが、例えば、圃場に排出された葉部を家畜の餌として再利用することがあり、従来構成では、このような場合に次のような不利があった。
【0009】
つまり、上記従来構成では、上述したように、圃場に放出された葉部は次回の作業行程での収穫作業の際に収穫対象となる作物列に近い位置に存在することから、その次回の作業行程での収穫作業の際に圃場に放出された葉部を機体に備えられた走行装置により踏み付けるおそれがある。このように葉部が走行装置にて踏み付けられると、圃場に排出された葉部を家畜の餌として利用することができないという不利がある。
【0010】
本発明の目的は、機体の走行に伴って葉部を圃場に排出させるものでありながら、排出された葉部が引き抜き部に絡みついて収穫作業を阻害したり、葉部が餌として利用できない等の不利を解消して良好に収穫作業を行うことが可能となる作物収穫機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る作物収穫機は、機体横幅方向の一端側に位置して機体の走行に伴って圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送する引き抜き部と、前記引き抜き部にて後方に搬送される作物の葉部を切断して作物と分離する葉部切断部と、葉部が切断された作物を機体横幅方向の他端側に搬送する作物搬送部とが備えられているものであって、その第1特徴構成は、前記葉部切断部にて切断された葉部を機体横幅方向の他端側に搬送して機外に排出する葉部搬送装置が備えられている点にある。
【0012】
第1特徴構成によれば、葉部切断部にて切断された葉部は、葉部搬送装置によって機体横幅方向の他端側に搬送されて機外に排出されることになるので、例えば、隣接する作物列における次回の作業行程での収穫作業の際には、圃場に排出された葉部は、収穫対象となる作物列から機体横幅方向他端側に離れた箇所に存在することになる。
【0013】
その結果、隣接する作物列における次回の作業行程での収穫作業の際に、圃場に排出された葉部が引き抜き部に絡みついたりして収穫作業を阻害するおそれが少ないものになり、収穫作業を良好に行えるものとなる。
【0014】
又、圃場に排出された葉部が、収穫対象となる作物列から機体横幅方向他端側に離れた箇所に存在することから、次回の作業行程での収穫作業の際に機体に備えられた走行装置が圃場に排出されている葉部を踏み付けるおそれが少ないものとなる。つまり、排出された葉部が走行装置によって傷つくことがなく、家畜の餌として良好に利用することができる。
【0015】
従って、機体の走行に伴って葉部を圃場に排出させるものでありながら、排出された葉部が引き抜き部に絡みついて収穫作業を阻害したり、葉部が餌として利用できない等の不利を解消して良好に収穫作業を行うことが可能となる作物収穫機を提供できるに至った。
【0016】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記作物搬送部にて機体横幅方向の他端側に搬送された作物を機体の走行に伴って順次圃場に落下放出する放出部が備えられ、前記葉部搬送装置が、前記放出部による作物の落下放出位置又はその近傍に前記葉部を排出するように構成されている点にある。
【0017】
第2特徴構成によれば、機体の走行に伴って収穫作業が行われるに伴って、作物搬送部にて機体横幅方向の他端側に搬送された作物は放出部によって順次圃場に落下放出される。そして、圃場における作物の落下放出位置又はその近傍の位置に、葉部搬送装置にて機体横幅方向の他端側に搬送された葉部が機外に排出される。
【0018】
このように葉部が排出される位置が、作物が放出される位置又はその近傍の位置になるので、作物が圃場に落下する際に葉部によって衝撃を緩和させることが可能となり、作物が圃場に落下する際に損傷するおそれを少ないものにできる。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記放出部が、前記作物搬送部にて機体横幅方向の他端側に搬送された作物を機体後方下方側に向けて流下案内しながら圃場に落下放出する傾斜案内体を備えて構成されている点にある。
【0020】
第3特徴構成によれば、作物搬送部にて機体横幅方向の他端側に搬送された作物は、傾斜案内体によって機体後方下方側に向けて流下案内されて圃場に落下放出されることになる。つまり、機体走行に伴って、機体後方側、すなわち機体進行方向と反対側に向けて作物を流下案内しながら放出させるので、作物が圃場に落下するときの勢いが緩和されることになり、落下の衝撃を極力少なくした状態で圃場に放出させることができる。
【0021】
又、葉部切断部にて切断された葉部は、葉部搬送装置によって機体横幅方向の他端側に搬送して機外に排出されるので、排出された葉部によって放出される作物を受止めることも可能となり、そのことにより一層落下の衝撃を少なくすることもできる。
【0022】
従って、圃場への落下の衝撃で作物が損傷することが回避できるものとなり、良好な状態で収穫作業を行うことができる。
【0023】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記葉部搬送装置が、機体前後向き軸芯周りで回転駆動されるベルトコンベアにて構成されている点にある。
【0024】
第4特徴構成によれば、葉部搬送装置が機体前後向き軸芯周りで回転駆動されるベルトコンベアにて構成されているから、例えば、葉部が水分を多く含んでいるような場合であっても、ベルトコンベアによって強制的に機体横幅方向の他端側に搬送することができ、その搬送終端部から外部に放出させることができる。
【0025】
ところで、葉部搬送装置をチェーンコンベアやローラコンベア等のように多数の隙間が形成されるような搬送装置で構成するものであれば、搬送中に葉部が引っ掛かり堆積するおそれがあるが、ベルトコンベアは搬送載置面が平坦な載置面で構成されるから、葉部が引っ掛かるおそれがなく円滑に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】作物収穫機の全体左側面図である。
【図2】作物収穫機の全体平面図である。
【図3】作物収穫機の背面図である。
【図4】放出部の右側面図である。
【図5】伝動系統図である。
【図6】別実施形態の作物収穫機の全体平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明に係る作物収穫機について説明する。
図1,2に示すように、作物収穫機は、作物の一例としての人参を収穫するためのものであり、左右一対のクローラ走行装置1,1にて支持されている機体フレーム2に、運転座席3及び操縦塔4等を備えた搭乗運転部5と、機体走行に伴って圃場から作物(人参)を引き抜いて機体後方に搬送する引き抜き部6と、引き抜き部6にて後方に搬送される作物の葉部を切断して作物と分離する葉部切断部7と、葉部が切断された作物を機体横幅方向の他端側に搬送する作物搬送部8と、収穫された人参を圃場に放出する放出部9と、切断された葉部を機外に排出する葉部排出部10とを搭載して構成されている。
【0028】
引き抜き部6は、機体走行に伴って作物列Aの左右両側にて作物の葉部を引き起こす左右一対の引起し装置11,11と、作物の横側の土中に入り込ませて振動付与によって土をほぐす土ほぐし刃12と、作物を挟持して圃場から抜き上げて機体後方上方に搬送する左右一対の無端回動ベルトからなる引き抜きベルト13,13とを備えて構成されている。
【0029】
葉部切断部7は、引き抜き部6の機体後方側に備えられ、引き抜きベルト13,13によって挟持搬送されてくる作物を挟持搬送する左右一対の無端回動ベルトからなる葉部除去ベルト14,14と、葉部を切断して葉部と作物とを分離させる回転カッター15とを備えて構成されている。
【0030】
この葉部切断部7にて葉部が切断されて下方に落下した作物は、葉部切断部7の下方に設けられた無端回動ベルトからなる後方搬送コンベア16にて受止められて機体後方側に向けて搬送される構成となっており、又、回転カッター15によって切断された葉部は、作物が切断された後も葉部除去ベルト14,14によって後方側に搬送されたのちに、葉部除去ベルト14,14の搬送終端部から下方に落下排出されるようになっている。
【0031】
図2に示すように、作物搬送部8は、後方搬送コンベア16にて載置搬送される作物を機体横幅方向右方に送り出す斜め姿勢の横送りローラ17と、横送りローラ17により送り出された作物を機体横幅方向右方向に向けて載置搬送する横送りコンベア18とを備えて構成されている。
【0032】
横送りコンベア18は、図4,5に示すように、左右両側に張設された左右両側の無端回動チェーン18aにわたって丸棒18bを所定ピッチで架設したスラットコンベアにて構成され、作物の長手方向が機体前後方向に向かうように、丸棒18bによって作物の向きが規制された状態で載置されるようになっている。又、図4に示すように、横送りコンベア18の搬送幅方両側(機体前後方向両側)には、無端回動チェーン18aの横側外方側を囲うように支持枠18Aが備えられ、無端回動チェーン18aが外方側に露出しないので葉部が絡みつくことがなく、又、運転者が誤って無端回動チェーン18aに接触することがないように構成されている。
【0033】
従って、作物搬送部8は、後方搬送コンベア16における横送りローラ17よりも搬送上流側部分、横送りローラ17、及び、横送りコンベア18にて構成されている。
【0034】
図2,4に示すように、放出部9は、横送りコンベア18により機体横幅方向右側に向けて載置搬送されて、その横送りコンベア18の搬送終端部から下方に落下排出された作物を機体後方下方側に向けて流下案内しながら圃場に落下放出する傾斜案内体19を備えて構成されている。
【0035】
この傾斜案内体19は、作物が機体横幅方向に広くばらついた状態で放出されることを規制するべく左右両側に縦壁19aが形成されており、底部案内面19bは、機体前部側が横送りコンベア18の搬送終端部に近い高い位置にあり、機体後部側が圃場に近い低い位置になるように後下がり傾斜姿勢にて構成されている。又、底部案内面19bの機体前部側端部が横送りコンベア18よりも機体前部側に位置しており、底部案内面19bの機体後部側端部が横送りコンベア18よりも機体後部側に位置する状態で設けられている。
【0036】
このように放出部9を構成することで、横送りコンベア18から作物を圃場に排出するときに、横送りコンベア18から作物が圃場面に直接落下するのではなく、放出部19により受止めて案内することで、作物が損傷するおそれが少なくなるようにしている。
【0037】
図2,3に示すように、葉部排出部10は、葉部除去ベルト14の搬送終端部から落下する葉部を後方搬送コンベア16における横送りローラ17よりも機体後方側の箇所に落下案内する左右両側の案内シュート20と、後方搬送コンベア16の搬送終端部から排出させる葉部を機体横幅方向右側(他端側に相当)に搬送して機外に排出する葉部搬送装置21とを備えて構成されている。
従って、葉部排出部10は、後方搬送コンベア16における横送りローラ17よりも搬送下流側部分、案内シュート20、及び、葉部搬送装置21にて構成されている。
【0038】
左右両側の案内シュート20のうち、右側に位置する案内シュート20は、図2に示すように、葉部搬送装置21に近接する位置まで機体前後方向に長く形成されており、しかも、図3に示すように、横送りローラ17の上端部に近づくように上下幅も広く形成され、葉部が横送りコンベア18に誤って搬送されることなく、適切に葉部搬送装置21に案内されるようにしている。
【0039】
図3,5に示すように、葉部搬送装置21は、後方搬送コンベア16の搬送終端部にて葉部が排出される排出箇所から機体横幅方向右側箇所(右側のクローラ走行装置1の右側端部と略同じ位置)に至るまで延びる状態で設けられ、前後軸芯周りで駆動される駆動輪体22と前後軸芯周りで回動する従動輪体23にわたって幅広の無端回動ベルト24が巻回されたベルトコンベアにて構成されている。又、葉部搬送装置21の搬送始端部の上部には、後方搬送コンベア16の搬送終端部から排出される葉部を受止めて、無端回動ベルト24の搬送始端部に案内する葉部案内体46が設けられている。
【0040】
図4に示すように、機体側面視において、葉部搬送装置21の機体前部側端部と、傾斜案内体19における底部案内面19bの機体後部側端部とが機体前後方向での位置が同じ又は略同じ位置になる状態で設けられ、又、葉部搬送装置21の搬送面に対して、底部案内面19bの上端部が高い位置になり、底部案内面19bの下端部が低い位置になるように設けられている。
【0041】
図2,3,4に示すように、葉部搬送装置21は、放出部9における傾斜案内体19による作物の落下放出位置又はその近傍に向けて、平面視で放出部9による放出方向に対して直交又は略直交する方向から葉部を排出するように構成されている。このように構成することで、圃場に作物が落下放出されるときに、圃場に排出された葉部によって作物を受止めて落下による衝撃を緩和させることが可能になる。
【0042】
葉部搬送装置21の構成について説明を加えると、この葉部搬送装置21は、図1,3,4に示すように、無端回動ベルト24の搬送幅と略同幅で且つ搬送方向長手方向の略全長にわたって設けられる板状の底部支持体47と、その底部支持体47の前後両側部に固定連結された前後一対の縦板支持体48とが備えられ、底部支持体47が、図3,4に示すように、左右一対の支持ブラケット50、及び、棒状体を側面視略L字形に折り曲げた支持部材51により機体フレーム2に連結支持されている。
【0043】
機体横幅方向一端側(機体横幅方向左側)の箇所にて前後両側の縦板支持体48に亘って架設された支持軸52により駆動輪体22が支持され、機体横幅方向他端側(機体進行方向視で右側)の箇所にて前後両側の縦板支持体48に亘って架設された支持軸53により従動輪体23が支持されている。そして、駆動輪体22と従動輪体23とに亘って巻回される無端回動ベルト24が、後述するように、エンジンEからの動力により回転駆動されるように構成されている。
【0044】
図2,3に示すように、葉部案内体46は、機体前後方向視で略L字形に屈曲形成された板体にて構成され、下端部が前後一対の縦板支持体48の上端部に連結されて支持されており、上部側の縦面部46Aは搬送方向上手側端部に位置して後方搬送コンベア16の搬送作用面よりも上方側にまで延びる状態で設けられている。又、下部の傾斜面46Bは下側ほど搬送方向下手側に位置するように傾斜姿勢に設けられ、後方搬送コンベア16から落下排出される葉部を無端回動ベルト24上に案内するように構成されている。
【0045】
次に、伝動構造について説明する。
図5に示すように、運転座席3の下方に配備されて機体横幅方向に沿う回転軸芯周りで回転するエンジンEの動力が、伝動ベルト25を介して静油圧式無段変速装置26及び走行ミッション27を介して変速後の出力を左右のクローラ走行装置1,1に伝達するとともに、一方向クラッチ28、伝動ベルト29、第1中間伝動軸30、伝動ベルト31を介して、左右の引き抜きベルト13,13や引起し装置11,11に伝えられるように構成されている。
【0046】
又、エンジンEの動力が、作物や葉部を搬送するための搬送駆動系に伝えられる構成となっている。すなわち、エンジンEの動力を、伝動ベルト32によって第2中間伝動軸33の一端側に伝達し、この第1中間伝動軸33の他端側から伝動ベルト34によって第3中間伝動軸35に伝達して、この第3中間伝動軸35の回転駆動力が、伝動チェーン36によって後方搬送コンベア16のコンベア駆動軸37に伝達するとともに分岐伝達機構38の入力スプロケット38aに伝達され、分岐伝達機構38の出力スプロケット38bの駆動力が、伝動チェーン39によって横送りローラ17に伝達するように構成されている。
【0047】
第3中間伝動軸35の駆動力は、伝動ベルト40により、図3に示すように、後方搬送コンベア16の下方側箇所にて機体フレーム2に支持される状態で設けられた向き変更用の伝動機構41に伝達され、この伝動機構41にて、機体横幅方向に沿う回転軸芯周りでの回転から機体前後方向に沿う回転軸芯周りでの回転になるように伝動向きが変更される。又、この伝動機構41では回転動力の減速も行われる。
【0048】
そして、図3,5に示すように、この伝動機構41の出力が伝動チェーン42によって横送りコンベア18に伝達され、さらに、この伝動機構41の出力が伝動チェーン43、中継伝動軸44、伝動チェーン45を介して葉部搬送装置21における駆動輪体22に伝達される構成となっている。このように葉部搬送装置21は、機体前後向き軸芯周りで回転駆動されることになる。
【0049】
上記構成の作物収穫機にて圃場に植えられた作物を収穫する際には、機体走行に伴って1列状態で植えられている作物列に沿って移動しながら、作物列の左右両側に位置する状態で左右一対の引起し装置11,11によって作物の葉部を引き起こし、且つ、土ほぐし刃12を作物の横側の土中に入り込ませて振動を付与することによって土をほぐして引き抜きやすくする。そして、作物の葉部を左右一対の引き抜きベルト13,13によって挟持して後方向きに持ち上げ搬送することにより、作物を圃場から抜き上げて収穫する。
【0050】
そして、引き抜きベルト13,13によって引き抜かれた作物の葉部を葉部除去ベルト14,14によって挟持搬送して、作物を吊り下げ状態で後方向きに搬送し、回転カッター15によって葉部を切断して葉部と作物とを分離する。
【0051】
葉部から分離した作物は、下方の後方搬送コンベア16における横向きローラ17よりも搬送上手側箇所に落下して、後方搬送コンベア16にて機体後方に向けて載置搬送されるが、作物は横向きローラ17による案内作用を受けて後方搬送コンベア16上を横滑りしながら機体横幅方向右方に案内されて横送りコンベア18に送りこまれる。そして、横送りコンベア18にて機体横幅方向右側に向けて搬送された作物は放出部9から機外に放出されることになる。
【0052】
又、切断された葉部は、葉部除去ベルト14によって回転カッター15よりも後方に搬送されてから、案内シュート20により下方の後方搬送コンベア16上における横向きローラ17よりも搬送下手側箇所に落下して、後方搬送コンベア16にてさらに機体後方に向けて載置搬送され、その搬送終端部から案内シュート20を介して葉部搬送装置21に落下案内される。そのとき、後方搬送コンベア16の搬送終端部から排出される葉部が葉部案内体46にて受止められて無端回動ベルト24の搬送始端部に案内される。
【0053】
このような構成の作物収穫機による収穫作業が終了したのちに、選別作業者が、圃場に放出された作物を目視で検査して、例えば、収穫に適した大きさや形状などの性状を備えた収穫適合作物と、収穫に適した性状を備えない収穫非適合作物とに選別してそのうち収穫適合作物だけを手作業で回収する等の作業を行うことになる。
【0054】
上記構成の作物収穫機では、葉部搬送装置21によって葉部を機体横幅方向右側箇所、具体的には、右側のクローラ走行装置1の右側端部と略同じ位置にまで搬送して排出するようにしたので、今回の作業行程にて圃場に放出された葉部を、隣接する次回の作業行程における作物列での収穫作業の際に、クローラ走行装置1,1によって踏み付けることがなく、又、葉部が引き抜き部6に絡み付いて収穫作業を阻害することがなく収穫作業を良好に行うことができ、しかも、圃場に排出された葉部を家畜の餌として再利用する場合に、葉部がクローラ走行装置1,1にて踏み付けられて傷むことがないので、葉部を餌に適した良好な状態で回収することができる。
【0055】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、葉部搬送装置21が、葉部を右側のクローラ走行装置1の右側端部と略同じ位置にまで搬送して機外に排出するようにしたが、このような構成に限らず、例えば、葉部搬送装置21の回転速度を高速にして搬送終端部から放出される葉部が勢いによって遠くまで放出される構成とするものでは、葉部搬送装置21の搬送終端位置を右側のクローラ走行装置1の右側端部よりも左側に寄った位置に設定するものでもよい。要するに、次回の作業行程にて排出された葉部を、引き抜き部6に絡みついたり、クローラ走行装置1により踏み付けるおそれがないような位置に排出するものであればよい。
【0056】
(2)上記実施形態では、作物搬送部8にて機体横幅方向の他端側に搬送された作物を機体の走行に伴って順次圃場に落下放出する放出部9が備えられる構成としたが、このような構成に代えて、例えば、図6に示すように、作物搬送部8にて機体横幅方向の他端側に搬送した作物を、機体横幅方向の他端側に備えた回収部50にて積載しながら貯留する形態で回収する構成としてもよい。
【0057】
(3)上記実施形態では、葉部搬送装置21が放出部9による作物の落下放出位置又はその近傍に葉部を排出するようにしたが、作物の落下放出位置と葉部の排出位置とを異なる位置にするものでもよい。
【0058】
(4)上記実施形態では、葉部搬送装置21がベルトコンベアにて構成するものを示したが、葉部搬送装置21としては、スラットコンベアやチェーンコンベア等の他の種類のコンベアでもよい。
【0059】
(5)上記実施形態では、作物収穫機として人参を収穫する収穫機を示したが、人参に代えて、大根、玉ねぎ、芋類など他の種類の作物を収穫対象とする構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、作物の葉部を切断して作物と分離する葉部切断部と、葉部が切断された作物を機体横幅方向の他端側に搬送する作物搬送部とが備えられている作物収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0061】
6 引き抜き部
7 葉部切断部
8 作物搬送部
9 放出部
19 傾斜案内体
21 葉部搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体横幅方向の一端側に位置して機体の走行に伴って圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送する引き抜き部と、前記引き抜き部にて後方に搬送される作物の葉部を切断して作物と分離する葉部切断部と、葉部が切断された作物を機体横幅方向の他端側に搬送する作物搬送部とが備えられている作物収穫機であって、
前記葉部切断部にて切断された葉部を機体横幅方向の他端側に搬送して機外に排出する葉部搬送装置が備えられている作物収穫機。
【請求項2】
前記作物搬送部にて機体横幅方向の他端側に搬送された作物を機体の走行に伴って順次圃場に落下放出する放出部が備えられ、
前記葉部搬送装置が、前記放出部による作物の落下放出位置又はその近傍に前記葉部を排出するように構成されている請求項1記載の作物収穫機。
【請求項3】
前記放出部が、前記作物搬送部にて機体横幅方向の他端側に搬送された作物を機体後方下方側に向けて流下案内しながら圃場に落下放出する傾斜案内体を備えて構成されている請求項2記載の作物収穫機。
【請求項4】
前記葉部搬送装置が、機体前後向き軸芯周りで回転駆動されるベルトコンベアにて構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作物収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−210161(P2012−210161A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76579(P2011−76579)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(599118768)株式会社斎藤農機製作所 (47)
【Fターム(参考)】