説明

供給機

【課題】入力作業の手間を軽減でき、かつ、供給能力および供給精度の低下を防止できる、供給機を提供する。
【解決手段】操作パネル24から各段の供給時間(駆動時間)TF(1),TF(2),TF(3)が入力されると、各段について、駆動速度記憶部32に記憶されている駆動速度に応じた第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)が取得され、当該第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)からスクリューフィーダ5による原料の供給速度SI(1),SI(2),SI(3)が演算される。そして、当該供給速度SI(1),SI(2),SI(3)と操作パネル24から入力された供給時間TF(1),TF(2),TF(3)との乗算値にそれぞれ第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)が加算され、これらの加算値が第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)として自動的に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の原料などの被供給物を計量ホッパなどの供給対象機に供給する供給機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、樹脂成形品の原料を計量して、定量の原料を成形機などに供給する計量供給装置が知られている。
【0003】
計量供給装置には、原料が貯留された原料ホッパと、原料タンクから供給される原料を計量する計量ホッパとが備えられている。計量ホッパには、ロードセルが設けられている。原料ホッパから計量ホッパに原料が供給されると、ロードセルにより、その供給された原料の質量(重量)が計測される。一定の質量(定量)の原料が計量ホッパに供給されると、原料ホッパから計量ホッパへの原料の供給が停止される。その後、計量ホッパ内の原料が成形機などに送られる。
【0004】
原料ホッパには、たとえば、原料を計量ホッパに供給するためのスクリューフィーダが設けられている。スクリューフィーダは、ほぼ水平に延びる供給管と、供給管内に配置されるオーガスクリューと、オーガスクリューを回転させるためのフィードモータとを備えている。原料ホッパ内の原料は、供給管に流入する。フィードモータがオンされると、オーガスクリューが回転し、オーガスクリューにより、原料が供給管内を先端開口に向けて送られる。供給管の先端開口に達した原料は、先端開口から落下して、計量ホッパに供給される。
【0005】
原料ホッパから計量ホッパに定量の原料を短時間で高精度に供給する手法として、たとえば、原料の供給を複数の段階に分けて、各段階が進むにつれて原料の供給速度が小さくなるように、オーガスクリュー(フィードモータ)の回転を制御する手法が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−47000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記した特許文献1に記載の提案に係る手法では、各段における原料の供給量および供給速度を手動で設定しなければならず、計量供給装置の操作のための入力作業に手間がかかる。また、供給速度に適合した供給量が設定されないと、供給能力および供給精度が低下し、短時間での高精度な原料の供給が達成されない。
【0008】
本発明の目的は、入力作業の手間を軽減でき、かつ、供給能力および供給精度の低下を防止できる、供給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、複数段の各段で供給目標量の被供給物を供給対象機に供給することにより、全体として定量の被供給物を前記供給対象機に供給する多段供給方式の供給機において、トルクを出力する駆動源と、前記駆動源からのトルクによって動作し、被供給物を前記供給対象機に供給する供給手段と、前記駆動源の駆動速度と落差量との関係を定めた検量線を記憶する検量線記憶手段と、各段における前記駆動源の駆動速度を記憶する駆動速度記憶手段と、各段における前記供給対象機への被供給物の供給に費やすべき時間を入力するための供給時間入力手段と、少なくとも1つの段について、前記検量線記憶手段に記憶されている前記検量線に基づいて、前記駆動速度記憶手段に記憶されている駆動速度に応じた落差量を取得し、当該落差量から前記供給手段による被供給物の供給速度を演算して、当該供給速度と前記供給時間入力手段から入力された時間との乗算値に当該落差量を加算して得られる値を、供給目標量として設定する供給目標量設定手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
多段供給方式の供給機では、複数段の各段で供給目標量の被供給物が供給対象機に供給されることにより、全体として定量の被供給物が供給対象機に供給される。各段における供給対象機への被供給物の供給は、供給手段の動作により達成される。
【0011】
そして、供給機は、検量線記憶手段および駆動速度記憶手段を備えている。検量線記憶手段には、供給手段の動作のためのトルクを出力する駆動源の駆動速度と被供給物の供給が停止されたときに慣性で供給対象機に供給される被供給物の量である落差量との関係を定めた検量線が記憶されている。駆動速度記憶手段には、各段における駆動源の駆動速度が記憶されている。また、供給機は、各段における供給対象機への被供給物の供給に費やすべき時間である供給時間を入力するための供給時間入力手段を備えている。
【0012】
供給時間入力手段によって各段の供給時間が入力されると、少なくとも1つの段について、駆動速度記憶手段に記憶されている駆動速度に応じた落差量が取得され、当該落差量から供給手段による被供給物の供給速度が演算される。そして、当該供給速度と供給時間入力手段から入力された供給時間との乗算値に当該落差量が加算され、この加算値が供給目標量として自動的に設定される。
【0013】
これにより、供給機の操作のための入力作業の軽減を図ることができる。また、供給時間入力手段から入力された時間および供給手段による被供給物の供給速度に応じた供給目標量が設定されるので、供給機の供給能力および供給精度の低下を防止することができる。
【0014】
複数段の各段について、供給時間入力手段によって各段の供給時間が入力されると、前述の手法に従って、供給目標量が自動的に設定されることが好ましい。
【0015】
この場合、各段における供給目標量が自動的に設定されるので、供給機の操作のための入力作業の軽減を図ることができる。
【0016】
供給手段は、駆動源からのトルクによって軸を中心に回転し、その回転によって被供給物を軸方向の一方側に送るスクリューを備えていてもよい。この場合、検量線に基づいて取得された落差量がスクリューに対して定められた係数で除されることにより、供給手段による被供給物の供給速度が算出されることが好ましい。
【0017】
これにより、供給手段がスクリューを備える構成において、供給手段による実際の供給速度に近似した供給速度を算出することができる。
【0018】
供給手段は、駆動源からのトルクによって前記流出口を開閉するゲートを備えていてもよい。この場合、検量線に基づいて取得された落差量がゲートに対して定められた係数で除されることにより、供給手段による被供給物の供給速度が算出されることが好ましい。
【0019】
これにより、供給手段がゲートを備える構成において、供給手段による実際の供給速度に近似した供給速度を算出することができる。
【0020】
また、供給機は、複数段の各段における被供給物の供給が停止されたときに実際に生じる落差量を検出する実落差量検出手段と、実落差量検出手段によって検出される実際の落差量を累積して記憶する実落差量記憶手段とを備えていることが好ましい。この場合、実落差量記憶手段に記憶されている実際の落差量の二乗平均平方根が求められて、当該二乗平均平方根に所定の信頼度を乗じて得られる値が供給目標量の設定に用いられる落差量で除することにより、落差安定度が演算され、この落差安定度が所定のしきい値以上である場合に、供給目標量の設定に用いられる落差量が補正されることが好ましい。
【0021】
供給目標量の設定に用いられる落差量が補正されるので、供給手段による実際の供給速度に一層近似した供給速度を算出することができ、ひいては、より好適な目標供給量を設定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、供給機の操作のための入力作業の軽減を図ることができる。また、供給時間入力手段から入力された時間および供給手段による被供給物の供給速度に応じた供給目標量が設定されるので、供給機の供給能力および供給精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る供給機を備える計量供給装置の図解的な断面図である。
【図2】図2は、計量供給装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、供給機による計量ホッパへの原料の供給量の時間変化を示すグラフである。
【図4】図4は、制御部の実質的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る供給機を備える計量供給装置の図解的な断面図である。
【0026】
計量供給装置1は、たとえば、図示されない成形機に接続されている。計量供給装置1では、樹脂成形品の原料が計量され、定量の原料が用意される。そして、計量供給装置1から成形機に定量の原料が供給(輸送)されて、成形機において、その原料からなる樹脂成形品が製造される。
【0027】
計量供給装置1には、供給機2と、供給機2から被供給物である原料の供給を受ける計量ホッパ3とが設けられている。
【0028】
供給機2は、供給ホッパ4を備えている。供給ホッパ4は、容器状をなし、内部に原料を貯留することができる。供給ホッパ4の下部は、下方に先細りとなる円錐状に形成されている。供給ホッパ4の底部には、流出口41が形成されている。
【0029】
流出口41には、スクリューフィーダ5が接続されている。スクリューフィーダ5は、供給管6、オーガスクリュー7およびフィードモータ8を備えている。
【0030】
供給管6は、供給ホッパ4の下方で、略水平方向に延びている。供給管6の一端部は、供給ホッパ4の下端部に接続されて、供給管6内は、供給ホッパ4内と連通している。そのため、供給ホッパ4内に貯留されている原料は、その自重により、供給ホッパ4内から供給管6内に流入する。供給管6の他端部は、下方に屈曲し、その下方を向いた他端面には、落下口9が形成されている。
【0031】
オーガスクリュー7は、供給管6の中心軸線上を延びるオーガ軸の周囲に螺旋状の羽根が形成された構成を有している。
【0032】
フィードモータ8の出力軸は、オーガスクリュー7の一端部に連結されている。
【0033】
フィードモータ8の駆動力により、オーガスクリュー7が回転する。このオーガスクリュー7の回転により、原料が供給管6内を落下口9に向けて送られる。供給管6の他端部に到達した原料は、落下口9から落下する。
【0034】
落下口9から落下する原料は、計量ホッパ3に受け取られる。計量ホッパ3の下部は、下方に先細りとなる円錐状に形成されている。
【0035】
計量ホッパ3の下端部には、ゲートシャッタ10が設けられている。ゲートシャッタ10が開かれると、計量ホッパ3内から原料が排出され、ゲートシャッタ10が閉じられると、その計量ホッパ3内からの原料の排出が停止される。ゲートシャッタ10が閉じられた状態で、落下口9から落下する原料が計量ホッパ3に受け取られることにより、計量ホッパ3内に原料が貯留される。
【0036】
また、計量ホッパ3には、計量ホッパ3内に貯留されている原料の質量を計測するためのロードセル11が設けられている。
【0037】
図2は、計量供給装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0038】
計量供給装置1(供給機2)は、CPU21およびメモリ22を含むマイクロコンピュータからなる制御部23を備えている。
【0039】
制御部23には、ロードセル11の検出信号が入力されるようになっている。
【0040】
また、計量供給装置1(供給機2)は、操作パネル24を備えている。操作パネル24には、テンキーなどの操作ボタンおよび操作ボタンの押下によって入力された内容などを表示するディスプレイが設けられている。
【0041】
制御部23には、操作パネル24が電気的に接続されている。
【0042】
制御部23にはさらに、給電回路25を介して、フィードモータ8が制御対象として接続されている。給電回路25は、複数のスイッチング素子を含むインバータ回路からなる。制御部23により、給電回路25(インバータ回路)のスイッチング素子のオン/オフが制御される。そして、そのオン/オフの割合(デューティ)に応じた駆動電流がフィードモータ8に供給されることにより、フィードモータ8がデューティに応じた回転速度で駆動される。
【0043】
図3は、供給機による計量ホッパへの原料の供給量の時間変化を示すグラフである。
【0044】
計量供給装置1では、供給機2により、全目標供給量WIの原料が3段階に分けて計量ホッパ3に供給される。
【0045】
1段目の供給動作では、フィードモータ8(オーガスクリュー7)が第1駆動速度で第1供給時間TF(1)にわたって駆動される。この第1供給時間TF(1)において、計量ホッパ3に第1供給実行量WIs(1)の原料が供給される。第1供給時間TF(1)が経過すると(計量ホッパ3に第1供給実行量WIs(1)の原料が供給されると)、フィードモータ8が停止される。フィードモータ8の停止後、供給管6内の原料が落下口9からこぼれ落ちる。このこぼれ落ちる原料の質量(落差量)を第1落差量WF(1)として、1段目の供給動作では、第1供給実行量WIs(1)と第1落差量WF(1)とを合わせた第1目標供給量WI(1)の原料が計量ホッパ3に供給される。
【0046】
2段目の供給動作では、フィードモータ8(オーガスクリュー7)が第2駆動速度で第2供給時間TF(2)にわたって駆動される。この第2供給時間TF(2)において、計量ホッパ3に第2供給実行量WIs(2)の原料が供給される。第2供給時間TF(2)が経過すると(計量ホッパ3に第2供給実行量WIs(2)の原料が供給されると)、フィードモータ8が停止される。フィードモータ8の停止後、供給管6内の原料が落下口9からこぼれ落ちる。このこぼれ落ちる原料の質量(落差量)を第2落差量WF(2)として、2段目の供給動作では、第2供給実行量WIs(2)と第2落差量WF(2)とを合わせた第2目標供給量WI(2)の原料が計量ホッパ3に供給される。
【0047】
3段目の供給動作では、フィードモータ8(オーガスクリュー7)が第3駆動速度で第3供給時間TF(3)にわたって駆動される。この第3供給時間TF(3)において、計量ホッパ3に第3供給実行量WIs(3)の原料が供給される。第3供給時間TF(3)が経過すると(計量ホッパ3に第3供給実行量WIs(3)の原料が供給されると)、フィードモータ8が停止される。フィードモータ8の停止後、供給管6内の原料が落下口9からこぼれ落ちる。このこぼれ落ちる原料の質量(落差量)を第3落差量WF(3)として、3段目の供給動作では、第3供給実行量WIs(3)と第3落差量WF(3)とを合わせた第3目標供給量WI(3)の原料が計量ホッパ3に供給される。
【0048】
そして、以上の3段階の供給動作により、全目標供給量WI=WI(1)+WI(2)+WI(3)の原料が計量ホッパ3に供給される。
【0049】
図4は、制御部の実質的な構成を示すブロック図である。
【0050】
制御部23は、検量線記憶部31、駆動速度記憶部32、落差量取得部33、実落差量取得部34、実落差量記憶部35、落差安定度演算部36、落差量補正部37および供給目標量設定部38を実質的に備えている。
【0051】
検量線記憶部31、駆動速度記憶部32および実落差量記憶部35は、メモリ22の一部の記憶領域からなる。
【0052】
落差量取得部33、実落差量取得部34、落差安定度演算部36、落差量補正部37および供給目標量設定部38は、CPU21がメモリ22に格納されているプログラムを実行することにより実現される機能処理部である。
【0053】
検量線記憶部31には、フィードモータ8の駆動速度(モータ回転速度)と落差量との関係を定めた検量線が記憶されている。フィードモータ8の駆動速度をパラメータとして変化させ、フィードモータ8を各駆動速度から停止させたときの落差量を実測し、検量線は、その実測結果に基づいて、落差量がフィードモータ8の駆動速度の一次関数で表されるように作成されている。
【0054】
駆動速度記憶部32には、原料供給の各段階(各供給動作)におけるフィードモータ8の駆動速度が記憶されている。
【0055】
落差量取得部33は、検量線記憶部31に記憶されている検量線および駆動速度記憶部32に記憶されているフィードモータ8の駆動速度に基づいて、原料供給の各段階で生じる落差量、つまり第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)を取得する。
【0056】
実落差量取得部34は、ロードセル11の出力(検出信号)に基づいて、原料供給の各段階において、フィードモータ8の停止後に計量ホッパ3に実際に供給される原料の質量である第1実落差量dWF(1)、第2実落差量dWF(2)および第3実落差量dWF(3)を取得する。
【0057】
実落差量取得部34によって取得された第1実落差量dWF(1)、第2実落差量dWF(2)および第3実落差量dWF(3)は、実落差量記憶部35に記憶される。具体的には、供給機2から計量ホッパ3に全目標供給量WIの原料が供給される一連の動作を1バッチ動作として、バッチ動作ごとに実落差量取得部34によって取得される第1実落差量dWF(1)、第2実落差量dWF(2)および第3実落差量dWF(3)が時系列で記憶される。たとえば、過去に5バッチ動作が行われた場合、それぞれ5つの第1実落差量dWF(1)、第2実落差量dWF(2)および第3実落差量dWF(3)が実落差量記憶部35に記憶されている。
【0058】
落差安定度演算部36は、第1実落差量dWF(1)の二乗平均平方根δ(1)を求め、当該二乗平均平方根δ(1)に所定の信頼度KT(1)を乗じて得られる値を第1落差量WF(1)で除することにより、第1落差量WF(1)に関する落差安定度STf(1)を演算する。すなわち、下記式(1),(2)の演算を行う。
【0059】
【数1】


また、第2実落差量dWF(2)の二乗平均平方根δ(2)を求め、当該二乗平均平方根δ(2)に所定の信頼度KT(2)を乗じて得られる値を第2落差量WF(2)で除することにより、第2落差量WF(2)に関する落差安定度STf(2)を演算する。すなわち、下記式(3),(4)の演算を行う。
【0060】
【数2】


さらに、第3実落差量dWF(3)の二乗平均平方根δ(3)を求め、当該二乗平均平方根δ(3)に所定の信頼度KT(3)を乗じて得られる値を第3落差量WF(3)で除することにより、第3落差量WF(3)に関する落差安定度STf(3)を演算する。すなわち、下記式(5),(6)の演算を行う。
【0061】
【数3】


落差量補正部37は、落差安定度演算部36によって演算される落差安定度STf(1),STf(2),STf(3)がそれぞれ安定しきい値Df(1),Df(2),Df(3)未満であるか否かを判断する。
【0062】
落差安定度STf(1),STf(2),STf(3)がそれぞれ安定しきい値Df(1),Df(2),Df(3)以上であれば、落差量取得部33によって取得される第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)にそれぞれ落差調整量KF(1),KF(2),KF(3)が乗じられる。そして、それらの乗算値(すなわち、WF(1)×KF(1),WF(2)×KF(2),WF(3)×KF(3))がそれぞれ補正後の第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)として、次に述べる供給目標量設定部38に入力される。
【0063】
一方、落差安定度STf(1),STf(2),STf(3)がそれぞれ安定しきい値Df(1),Df(2),Df(3)未満であれば、落差量取得部33によって取得される第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)の補正は行われず、その第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)がそのまま供給目標量設定部38に入力される。
【0064】
供給目標量設定部38は、第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)を設定する。
【0065】
具体的には、落差量補正部37から入力される第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)を速度換算定数Ksiで除することにより、原料供給の各段階におけるスクリューフィーダ5(オーガスクリュー7)による原料の供給速度SI(1),SI(2),SI(3)が求められる。速度換算定数Ksiは、たとえば、0.5に設定されている。
【0066】
一方、ユーザによって操作パネル24が操作されて、原料供給の各段階におけるフィードモータ8の駆動時間TF(1),TF(2),TF(3)が入力される。
【0067】
そして、供給速度SI(1),SI(2),SI(3)とそれぞれ駆動時間TF(1),TF(2),TF(3)とが乗算され、各乗算値に第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)を加算して得られる値が第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)として設定される。すなわち、下記式(7),(8),(9)の演算が行われる。
【0068】
WI(1)=SI(1)×TF(1)+WF(1) ・・・(7)
WI(2)=SI(2)×TF(2)+WF(2) ・・・(8)
WI(3)=SI(3)×TF(3)+WF(3) ・・・(9)
なお、こうして設定される第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)の総和が全目標供給量WIに満たない場合、たとえば、3段目の供給動作におけるフィードモータ8の駆動時間TF(3)が延長される。また、第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)の総和が全目標供給量WIを超える場合、たとえば、2段目の供給動作がスキップされて、3段目の供給動作におけるフィードモータ8の駆動時間TF(3)が調整されてもよいし、3段目の供給動作におけるフィードモータ8の駆動時間TF(3)の調整のみが行われてもよい。
【0069】
以上のように、供給機2は、検量線記憶部31および駆動速度記憶部32を備えている。検量線記憶部31には、スクリューフィーダ5(オーガスクリュー7)の動作のためのトルクを出力するフィードモータ8の駆動速度と原料の供給が停止されたときに慣性で計量ホッパ3に供給される原料の質量である落差量との関係を定めた検量線が記憶されている。駆動速度記憶部32には、供給動作の各段におけるフィードモータ8の駆動速度が記憶されている。また、供給機2は、各段における計量ホッパ3への原料の供給に費やすべき時間である供給時間を入力するための操作パネル24を備えている。
【0070】
操作パネル24から各段の供給時間(駆動時間)TF(1),TF(2),TF(3)が入力されると、各段について、駆動速度記憶部32に記憶されている駆動速度に応じた第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)が取得され、当該第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)からスクリューフィーダ5による原料の供給速度SI(1),SI(2),SI(3)が演算される。そして、当該供給速度SI(1),SI(2),SI(3)と操作パネル24から入力された供給時間(駆動時間)TF(1),TF(2),TF(3)との乗算値にそれぞれ第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)が加算され、これらの加算値が第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)として自動的に設定される。
【0071】
これにより、供給機2の操作のための入力作業の軽減を図ることができる。また、操作パネル24から入力された時間およびスクリューフィーダ5による原料の供給速度に応じた第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)が設定されるので、供給機2の供給能力および供給精度の低下を防止することができる。
【0072】
スクリューフィーダ5は、フィードモータ8からのトルクによって軸を中心に回転し、その回転によって原料を軸方向の一方側に送るオーガスクリュー7を備えていてもよい。この場合、検量線に基づいて取得された第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)がオーガスクリュー7に対して定められた速度換算定数Ksiで除されることにより、スクリューフィーダ5による原料の供給速度SI(1),SI(2),SI(3)が算出されることが好ましい。
【0073】
これにより、スクリューフィーダ5において、スクリューフィーダ5による実際の供給速度に近似した供給速度SI(1),SI(2),SI(3)を算出することができる。
【0074】
また、供給機2は、複数段の各段における原料の供給が停止されたときに実際に生じる落差量を検出する実落差量取得部34と、実落差量取得部34によって検出される実際の落差量を累積して記憶する実落差量記憶部35とを備えていることが好ましい。この場合、実落差量記憶部35に記憶されている実際の落差量の二乗平均平方根δ(1),δ(2),δ(3)が求められて、当該二乗平均平方根δ(1),δ(2),δ(3)に所定の信頼度KT(1),KT(2),KT(3)を乗じて得られる値が第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)の設定に用いられる第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)で除することにより、落差安定度STf(1),STf(2),STf(3)が演算され、この落差安定度が所定の安定しきい値Df(1),Df(2),Df(3)以上である場合に、第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)の設定に用いられる第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)が補正されることが好ましい。
【0075】
第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)の設定に用いられる第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)が補正されるので、スクリューフィーダ5による実際の供給速度に一層近似した供給速度SI(1),SI(2),SI(3)を算出することができ、ひいては、より好適な第1目標供給量WI(1)、第2目標供給量WI(2)および第3目標供給量WI(3)を設定することができる。
【0076】
なお、供給機2には、スクリューフィーダ5に代えて、モータからのトルクによって流出口41を開閉するゲートが備えられていてもよい。この場合、検量線に基づいて取得された第1落差量WF(1)、第2落差量WF(2)および第3落差量WF(3)がゲートに対して定められた速度換算定数Ksi(たとえば、Ksi=0.75)で除されることにより、スクリューフィーダ5による原料の供給速度SI(1),SI(2),SI(3)が算出されることが好ましい。
【0077】
これにより、ゲートを備える構成において、実際の供給速度に近似した供給速度SI(1),SI(2),SI(3)を算出することができる。
【0078】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0079】
2 供給機
3 計量ホッパ(供給対象機)
5 スクリューフィーダ(供給手段)
8 フィードモータ(駆動源)
24 操作パネル(供給時間入力手段)
31 検量線記憶部
32 駆動速度記憶部
34 実落差量取得部
35 実落差量記憶部
38 供給目標量設定部(供給目標量設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の各段で供給目標量の被供給物を供給対象機に供給することにより、全体として定量の被供給物を前記供給対象機に供給する多段供給方式の供給機であって、
トルクを出力する駆動源と、
前記駆動源からのトルクによって動作し、被供給物を前記供給対象機に供給する供給手段と、
前記駆動源の駆動速度と落差量との関係を定めた検量線を記憶する検量線記憶手段と、
各段における前記駆動源の駆動速度を記憶する駆動速度記憶手段と、
各段における前記供給対象機への被供給物の供給に費やすべき時間を入力するための供給時間入力手段と、
少なくとも1つの段について、前記検量線記憶手段に記憶されている前記検量線に基づいて、前記駆動速度記憶手段に記憶されている駆動速度に応じた落差量を取得し、当該落差量から前記供給手段による被供給物の供給速度を演算して、当該供給速度と前記供給時間入力手段から入力された時間との乗算値に当該落差量を加算して得られる値を、供給目標量として設定する供給目標量設定手段とを含む、供給機。
【請求項2】
前記供給目標量設定手段は、複数段の各段について、前記検量線記憶手段に記憶されている前記検量線に基づいて、前記駆動速度記憶手段に記憶されている駆動速度に応じた落差量を取得し、当該落差量から前記供給手段による被供給物の供給速度を演算して、当該供給速度と前記供給時間入力手段から入力された時間との乗算値に当該落差量を加算して得られる値を、供給目標量として設定する、請求項1に記載の供給機。
【請求項3】
前記供給手段は、前記駆動源からのトルクによって軸を中心に回転し、その回転によって被供給物を軸方向の一方側に送るスクリューを備え、
前記供給目標量設定手段は、前記検量線に基づいて取得した落差量を前記スクリューに対して定められた係数で除することにより、前記供給手段による被供給物の供給速度を算出する、請求項1または2に記載の供給機。
【請求項4】
前記供給手段は、前記駆動源からのトルクによって前記流出口を開閉するゲートを備え、
前記供給目標量設定手段は、前記検量線に基づいて取得した落差量を前記ゲートに対して定められた係数で除することにより、前記供給手段による被供給物の供給速度を算出する、請求項1または2に記載の供給機。
【請求項5】
複数段の各段における被供給物の供給が停止されたときに実際に生じる実落差量を検出する実落差量検出手段と、
前記実落差量検出手段によって時系列で検出される複数の実落差量を記憶する実落差量記憶手段と、
前記実落差量記憶手段に記憶されている実落差量の二乗平均平方根を求め、当該二乗平均平方根に所定の信頼度を乗じて得られる値を前記供給目標量設定手段による供給目標量の設定に用いられる落差量で除することにより、落差安定度を演算する落差安定度演算手段と、
前記落差安定度演算手段によって演算された落差安定度が所定のしきい値以上である場合に、前記供給目標量設定手段による供給目標量の設定に用いられる落差量を補正する落差量補正手段とをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の供給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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