説明

信号記録再生装置

【課題】再生信号の被試験受信機へ出力と映像信号の表示装置への出力とを安価な構成で正確に同期させて再生することができる信号記録再生装置を提供する。
【解決手段】データ再生制御装置4により、D/A変換部6でD/A変換された再生信号12を被試験受信機8側に出力して再生を行う際に、映像再生制御装置5は、データ再生制御装置4から入力される制御信号14に基づいて、再生信号12に対応した映像信号15を表示装置7に出力して再生するよう制御するとともに、D/A変換部6から入力される再生タイミング信号16により、再生信号12と映像信号15との同期を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実環境下での電波環境を実験室等の室内で再現性よく再現するための信号記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AM放送やFM放送の放送周波数を含む放送信号を受信する放送受信機を開発する場合、放送受信機の放送受信検証等の性能評価は重要である。
【0003】
特に車載用放送受信機では、移動環境(不安定な受信環境)下での性能評価、いわゆるフィールド試験が重要となる。車載用放送受信機のフィールド試験では、その準備と実施に多大な時間と労力を必要とすることにより、効率よく性能評価を行うことが難しかった。また、同一の移動環境下で繰り返しフィールド試験を行う場合には、多大な時間を要し、かつ、再現性のある受信状態を得ることが難しかった。
【0004】
このため、車載用放送受信機が利用される実環境(フィールド)で放送信号を受信して記録し、記録した放送信号を室内で再生して、実際の電波環境を再現する装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
前記特許文献1の装置(電波環境シミュレータ)を用いることにより、移動環境における実際の電波環境を室内で再現することができ、かつ、何度でも同じ電波環境を再現して車載用放送受信機の性能評価を行うことができる。
【0006】
ところで、前記特許文献1のような装置(電波環境シミュレータ)では、放送信号のみを記録しているだけなので、放送信号を受信しているときの周囲の地形や建物等の環境を把握することができず、車載用放送受信機の性能評価を行うときに、例えば、受信状態の悪化などの様々な現象がどのような地形や建物等の環境で発生したかが分からないという問題があった。
【0007】
そこで、従来より、例えば図3や図4に示すような信号記録再生装置が提案されている。
【0008】
図3に示す信号記録再生装置100は、記録装置101、制御装置102、表示装置103およびD/A(デジタル/アナログ)変換装置104を備えており、記録装置101には、移動環境で受信した放送信号とその受信した受信位置情報とを記録した収録データと、前記放送信号の受信位置の周辺映像を記録した映像データとが記録されている。
【0009】
この信号記録再生装置100の動作について説明する。先ず、記録装置101から記録している収録データ110が制御装置102に読み込まれる。そして、制御装置102から転送データ113としてD/A変換装置104の記録装置105に転送される。
【0010】
記録装置101から全ての収録データ110が、転送データ113としてD/A変換装置104の記録装置105に転送されると、制御装置102は、転送データ113(放送信号データ)の再生をD/A変換装置104に制御信号114として指示する。そして、D/A変換装置104では、D/A変換装置104の記録装置105から再生データ115をD/A変換し、再生信号116として被試験受信機(車載用放送受信機)107へ出力する。
【0011】
そして、被試験受信機107への再生信号116の出力タイミングに合わせて、制御装置102は、記録装置101から映像データ111を読み出し、映像信号112として表示装置103に出力して映像を表示する。
【0012】
一方、図4に示す信号記録再生装置200は、2つの記録装置201,202、高速データ転送部203、制御装置204、D/A変換部205、および表示装置206を備えており、記録装置201には、移動環境で受信した放送信号とその受信した受信位置情報とを記録した収録データが記録され、記録装置202には、前記放送信号の受信位置の周辺映像を記録した映像データが記録されている。
【0013】
この信号記録再生装置200の動作について説明する。先ず、制御装置204は、再生開始指示に合わせて制御信号212を高速データ転送部203とD/A変換部205に出力する。この制御信号212を受け高速データ転送部203は、記録装置201から前記収録データ210を読み出し、再生データ213としてD/A変換部205に出力する。D/A変換部205では、この再生データ213をD/A変換し、再生信号215として被試験受信機(車載用放送受信機)207へ出力する。
【0014】
この際、制御装置204は、前記制御信号212の出力タイミングに合わせて記録装置202から前記映像データ211を読み出し、映像信号214として表示装置206に出力して映像を表示する。
【特許文献1】特開平11−183544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、前記図3に示した従来の信号記録再生装置100では、制御装置102は、記録装置101に記録されている全ての収録データ110を転送データ113としてD/A変換装置104の記録装置105に転送する。そのため、D/A変換装置104の記録装置105は多くのメモリを必要とすることにより、D/A変換装置104の記録装置105は高価なものとなる。また、再生できる放送信号データの量は、D/A変換装置104の記録装置105のメモリの容量によって制限される。
【0016】
また、前記図4に示した従来の信号記録再生装置200では、記憶装置201に記録されている収録データ210を高速に読み出す高速データ転送部203を有している。よって、高速データ転送部203の高速のデータ読み出しに対応するため、記憶装置201は、周知のSCSIのRAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)システムなどで構成される。そのため、高速データ転送部203および記憶装置201が高価なものとなる。また、再生信号215の被試験受信機207へ出力と、映像信号214の表示装置206への出力は正確な同期が取られておらず、長期間の再生では同期にずれが生じてしまう。
【0017】
そこで、本発明は、再生信号の被試験受信機へ出力と映像信号の表示装置への出力とを安価な構成で正確に同期させて再生することができる信号記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明に係る信号記録再生装置は、アナログ/デジタル変換された、実環境で受信された無線周波数信号と該無線周波数信号を受信した受信位置情報とを少なくとも含む収録データを記録する収録データ記録手段と、前記無線周波数信号の受信時に収録された、該無線周波数信号の受信位置周辺の映像データを記録する映像データ記録手段と、前記収録データ記録手段に記録された前記収録データを読み出し、被試験受信機に対して前記無線周波数信号に応じた再生信号を再生させるための制御を行う第1の制御手段と、前記第1の制御手段から出力される、前記収録データに応じた再生データをデジタル/アナログ変換するデジタル/アナログ変換手段と、前記映像データ記録手段に記録された前記映像データを読み出し、該映像データに応じた映像信号を表示手段に出力して再生させるための制御を行う第2の制御手段と、を備え、前記第1の制御手段により、前記デジタル/アナログ変換手段でデジタル/アナログ変換された前記再生信号を前記被試験受信機側に出力して再生を行う際に、前記第2の制御手段は、前記第1の制御手段から入力される制御信号に基づいて、前記再生信号に対応した映像信号を前記表示手段に出力して前記無線周波数信号の受信位置の周辺映像を再生するよう制御するとともに、前記デジタル/アナログ変換手段から入力される再生タイミング信号により、前記再生信号と前記映像信号との同期を制御することを特徴としている。
【0019】
また、前記収録データおよび前記映像データは、実環境で移動する車両により収録されたデータであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る信号記録再生装置によれば、デジタル/アナログ変換手段から被試験受信機に再生信号を出力する際に、デジタル/アナログ変換手段から第2の制御手段に出力される再生タイミング信号に基づいて、第2の制御手段から表示手段に出力される映像信号の出力タイミングを調整(制御)することにより、再生信号の被試験受信機への出力と、映像信号の表示手段への出力を、安価な構成で正確に同期させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る信号記録再生装置を示す概略構成図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る信号記録再生装置1は、収録データ記録装置2、映像データ記録装置3、第1の制御手段としてのデータ再生制御装置4、第2の制御手段としての映像再生制御装置5、D/A変換部6および表示装置7とを主構成部として備えている。
【0023】
収録データ記録装置2には、A/D(アナログ/デジタル)変換された、少なくとも実環境で受信された放送信号(無線周波数信号)とその放送信号を受信した受信位置情報(以下、放送信号と受信位置情報を含むデータを「収録データ」という)が記録され、映像データ記録装置3には、前記放送信号の受信位置の周辺映像を収録した映像データが記録されている。
【0024】
前記放送信号は、例えば移動収録車両(不図示)により実環境(フィールド)で移動しながら受信し記録した、ラジオやテレビの放送局(放送アンテナ)から送信されている無線周波数信号である。また、前記移動収録車両は、不図示の広範囲を撮像可能なカメラとGPS(Global Positioning System)装置を備えており、放送信号の受信、記録と同時に、放送信号の受信位置の周辺映像と、放送信号の受信位置情報などを記録する。
【0025】
このように、移動収録車両で記録したこれらの放送信号と受信位置情報などが収録データ記録装置2に収録データとして記憶され、前記放送信号の受信位置の周辺映像が映像データ記録装置3に映像データとして記憶されている。
【0026】
データ再生制御装置4は、収録データ記録装置2から収録データ10を読み出し、収録データ10に応じた再生データ11をD/A変換部6に出力する。D/A変換部6は、入力される再生データ11をD/A変換し、再生信号(放送信号)12として被試験受信機(車載用放送受信機)8側に出力する。
【0027】
映像再生制御装置5は、映像データ記録装置3から映像データ13を読み出し、データ再生制御装置4から入力される制御信号14に基づき、映像信号15を表示装置7に出力する。また、映像再生制御装置5は、D/A変換部6から入力される再生タイミング信号16に基づいて、映像信号15の表示装置7への出力タイミングを制御し、被試験受信機8への再生信号12と、表示装置7への映像信号15とを同期させる。
【0028】
次に、本実施形態に係る信号記録再生装置1のデータ再生制御装置4、映像再生制御装置5による再生制御を、図2(a),(b)に示したフローチャートを参照して説明する。なお、図2(a)は、データ再生制御装置4の再生制御を示すフローチャート、図2(b)は、映像再生制御装置5の再生制御を示すフローチャートである。
〈データ再生制御装置4の再生制御;図2(a)〉
収録データ記録装置2には、移動収録車両(不図示)により実環境(フィールド)で記録した前記収録データが格納されており、データ再生制御装置4は、収録データ記録装置2から収録データ10を読み出すと、その再生ファイル名を設定し(ステップS1;YES)、再生ファイルの再生開始と終了点を設定する(ステップS2)。なお、再生ファイル名が設定されていない場合(ステップS1;NO)には、ステップS1の前に戻る。
【0029】
ステップS2で、データ再生制御装置4により再生ファイルの再生開始と終了点を設定すると、データ再生制御装置4から映像再生制御装置5に再生開始・終了点の設定信号としての制御信号14を出力するとともに、D/A変換部6に再生データ11を出力する。そして、データ再生制御装置4は、再生データ11がD/A変換部6に入力されて再生を開始できる状態になると(ステップS3;YES)、映像再生制御装置5に再生開始指示信号としての制御信号14を出力する(ステップS4)。
【0030】
そして、D/A変換部6は、入力される再生データ(収録データ)11に基づいて映像再生制御装置5に再生タイミング信号16を出力するとともに、被試験受信機8側に再生信号12を出力して、被試験受信機8で再生を行う(ステップS5、S6)。ステップS6において、設定した再生終了点まで再生を行い(ステップS6;NO)、再生終了点になると再生を終了する(ステップS6;YES)。
〈映像再生制御装置5の再生制御;図2(b)〉
映像データ記録装置3には、映像データ(移動収録車両(不図示)により実環境(フィールド)で記録した放送信号の受信位置の周辺映像)が収録されており、映像再生制御装置5は、データ再生制御装置4から入力される制御信号14(図2(a)のステップS2)に基づいて、前記再生ファイルの再生開始と終了点を受信するとともに、映像ファイル名を受信する(ステップS11)。
【0031】
そして、映像再生制御装置5は、映像ファイル名を設定するとともに、その映像ファイルの再生開始と終了点を設定する(ステップS12)。ステップS12で、映像ファイルの再生開始と終了点が設定されると(ステップS12;YES)、映像データ記録装置3から前記映像ファイル名に対応した映像データ13を読み出し、再生開始点の頭出しを行う(ステップS13)。なお、ステップS12で、映像ファイルの再生開始と終了点が設定されていない場合(ステップS12;NO)には、ステップS11の前に戻る。
【0032】
そして、映像再生制御装置5は、データ再生制御装置4から入力される制御信号14(図2(a)のステップS4)に基づいて、表示装置7に映像信号15を出力して、表示装置7で再生を開始する(ステップS14)。
【0033】
この際、映像再生制御装置5は、D/A変換部6から入力される再生タイミング信号16(図2(a)のステップS5)に基づいて、被試験受信機8側の再生と同期するように再生タイミングを調整(制御)して(ステップS15)、表示装置7に映像を表示する。そして、設定した再生終了点まで再生を行い(ステップS16;NO)、再生終了点になると再生を終了する(ステップS16;YES)。
【0034】
このように、本発明の実施形態に係る信号記録再生装置1によれば、実環境(フィールド)で記録した放送信号(収録データ)は収録データ記録装置2に記録して、そのときの周辺映像を映像データ記録装置3に記録し、データ再生制御装置4により、被試験受信機8に対して収録データ10に応じた再生データ11(再生信号12)を再生させるための制御を行うとともに、映像再生制御装置5により、映像データ13に応じた映像信号15を表示装置7に表示させるための制御を行うことにより、収録データ記録装置2と映像データ記録装置3に、記憶容量の大きい高価な専用の記録装置を用いることなく安価な記録装置を用いることが可能となる。
【0035】
更に、D/A変換部6から被試験受信機8に再生信号12を出力する際に、D/A変換部6から映像再生制御装置5に出力される再生タイミング信号16に基づいて、映像再生制御装置5から表示装置7に出力される映像信号15の出力タイミングを調整(制御)することにより、再生信号12の被試験受信機8への出力と、映像信号15の表示装置7への出力を正確に同期させることが可能となる。
【0036】
これにより、実環境(フィールド)で記録された放送信号に応じた再生信号11を被試験受信機8で再生する際に、前記放送信号と同時に記録した周辺映像の映像データを、安価な構成で正確に同期させて表示装置7で再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る信号記録再生装置を示す概略構成図。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る信号記録再生装置のデータ再生制御装置の再生制御を示すフローチャート、(b)は、映像再生制御装置の再生制御を示すフローチャート。
【図3】従来例における信号記録再生装置の一例を示す概略構成図。
【図4】従来例における信号記録再生装置の一例を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0038】
1 信号記録再生装置
2 収録データ記録装置
3 映像データ記録装置
4 データ再生制御装置(第1の制御手段)
5 映像再生制御装置(第2の制御手段)
6 D/A変換部(デジタル/アナログ変換手段)
7 表示装置(表示手段)
8 被試験受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ/デジタル変換された、実環境で受信された無線周波数信号と該無線周波数信号を受信した受信位置情報とを少なくとも含む収録データを記録する収録データ記録手段と、
前記無線周波数信号の受信時に収録された、該無線周波数信号の受信位置周辺の映像データを記録する映像データ記録手段と、
前記収録データ記録手段に記録された前記収録データを読み出し、被試験受信機に対して前記無線周波数信号に応じた再生信号を再生させるための制御を行う第1の制御手段と、
前記第1の制御手段から出力される、前記収録データに応じた再生データをデジタル/アナログ変換するデジタル/アナログ変換手段と、
前記映像データ記録手段に記録された前記映像データを読み出し、該映像データに応じた映像信号を表示手段に出力して再生させるための制御を行う第2の制御手段と、を備え、
前記第1の制御手段により、前記デジタル/アナログ変換手段でデジタル/アナログ変換された前記再生信号を前記被試験受信機側に出力して再生を行う際に、前記第2の制御手段は、前記第1の制御手段から入力される制御信号に基づいて、前記再生信号に対応した映像信号を前記表示手段に出力して前記無線周波数信号の受信位置の周辺映像を再生するよう制御するとともに、前記デジタル/アナログ変換手段から入力される再生タイミング信号により、前記再生信号と前記映像信号との同期を制御する、
ことを特徴とする信号記録再生装置。
【請求項2】
前記収録データおよび前記映像データは、実環境で移動する車両により収録されたデータである、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−189586(P2007−189586A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7198(P2006−7198)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】