説明

健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法

【課題】フコキサンチン、フコステロール、タンパク質等の健康機能性成分を健康食品、化粧品、医薬品等への産業利用するために、それらを簡便且つ効率的に取得する技術を提供すること。
【解決手段】褐藻類の藻体を、少なくとも窒素およびリンを添加した培地中、光合成有効光量子束密度が450μmol・m−2・s−1以下の条件で培養することを特徴とする健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康機能性成分の含有量を高めた褐藻類の製造方法に関し、更に詳細には、天然または養殖した褐藻類に通常含まれるよりも、フコキサンチン、フコステロール、タンパク質等の健康機能性成分の含量を高めた褐藻類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
褐藻類には、健康機能性成分として硫酸化多糖類であるフコイダン、カロテノイド類のフコキサンチン、ステロール類のフコステロール、各種タンパク質等が含まれている。これらのうち、フコキサンチンは抗酸化作用、抗肥満作用、抗ガン作用等を示し、フコステロールは血中コレステロール低下作用等が期待されている。また、各種タンパク質は消化酵素により消化されることで、血圧上昇抑制作用に関わるACE阻害作用を示すことが知られている。これらの健康機能性成分は、健康食品、化粧品、医薬品等への配合が検討されている。
【0003】
これまで、上記の健康機能性成分のうち、フコキサンチンおよびフコステロールは、褐藻類の藻体から抽出されていたが、褐藻類の藻体を原料とする場合には、フコキサンチンおよびフコステロールの含有量が産地、天候等により大きく影響を受け、変動することがあり、安定にフコキサンチンやフコステロールを抽出、供給できにくいという問題があった。
【0004】
また、フコキサンチンやフコステロールを、褐藻類の盤状体および糸状体から抽出する方法も報告されているが(特許文献1)、この技術を利用するためには高度な培養技術と大規模な培養装置が要求される。
【特許文献1】特開2004−35528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、フコキサンチン、フコステロール、タンパク質等の健康機能性成分を健康食品、化粧品、医薬品等への産業利用するために、それらを簡便且つ効率的に取得する技術が求められており、本発明はこのような技術の提供をその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、褐藻類の藻体を、特定の条件下で更に培養することにより、藻体中のフコキサンチン、フコステロール、タンパク質等の健康機能性成分の含有量が著しく高められることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は褐藻類の藻体を、少なくとも窒素およびリンを添加した培地中、光合成有効光量子束密度が450μmol・m−2・s−1以下の条件で培養することを特徴とする健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法である。
【0008】
また、本発明は湿重量1gあたり、80〜500μgのフコキサンチン、50〜500μgのフコステロールおよび6〜60mgのタンパク質からなる群から選ばれる健康機能性成分の1種以上を含有することを特徴とする健康機能性成分高含有オキナワモズクである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、簡便且つ効率的に、フコキサンチン、フコステロール、タンパク質等の健康機能性成分を高含有する褐藻類を製造することができる。
【0010】
従って、この製造方法により得られる健康機能性成分高含有褐藻類は、フコキサンチン、フコステロール、タンパク質等の抽出原料に好ましいものである。
【0011】
また、この健康機能性成分高含有褐藻類は、そのまま健康食品(生食用)として、あるいは乾燥、粉砕等の処理の後、フコキサンチン、フコステロール、タンパク質等の健康機能性を期待した健康食品、化粧品等の原料としても利用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法(以下、単に「本発明製法」という)は、褐藻類の藻体を、少なくとも窒素およびリンを添加した培地において、光合成有効光量子束密度が450μmol・m−2・s−1以下の条件で培養することを特徴とするものである。なお、本明細書に記載の光合成有効光量子束密度はいずれも球面光量計で測定された値である。
【0013】
本発明製法に使用される褐藻類としては、フコキサンチン、フコステロールおよびタンパク質からなる群から選ばれる健康機能性成分の1種以上を含有するものであれば特に種類は限定されない。このような褐藻類としては、オキナワモズク、モズク、フトモズク等のモズク類、ヒジキ、ホンダワラ、アカモク等のホンダワラ類、ワカメ、ナンブワカメ等のワカメ類、マコンブ、ガゴメコンブ等のコンブ類等が挙げられる。本発明製法においてはこれらの褐藻類の天然由来の藻体または養殖で得られた藻体のいずれも使用することができる。なお、本明細書において藻体とは、肉眼で確認可能な程度まで生育した褐藻類の胞子体または配偶体をいう。
【0014】
上記褐藻類の藻体が培養される、少なくとも窒素およびリンを添加した培地は、褐藻類が生育できるものであれば特に限定されないが、例えば、滅菌されていてもよい海水または人工海水に、窒素およびリンを添加したものが好ましい。また、前記培地に含まれる窒素およびリンの量としては、培地1Lに対して、窒素が100〜5000μmol、好ましくは500〜3000μmolおよびリンが0.1〜200μmol、好ましくは0.1〜100μmolとなる量である。
【0015】
上記培地を用いた褐藻類の藻体の培養は、光合成有効光量子束密度(PPFD)が450μmol・m−2・s−1以下の条件で行えばよい。本発明製法においては、光合成有効光量子束密度以外の条件(明暗周期、培養温度、培養期間等)については従来の褐藻類の培養等の条件を用いることができる。より具体的な培養条件としては、光合成有効光量子束密度を450μmol・m−2・s−1以下、好ましくは2〜250μmol・m−2・s−1、より好ましくは5〜58μmol・m−2・s−1、明暗周期を12時間、培養温度を20〜25℃、培養期間を1日〜1ヶ月程度で行えばよい。
【0016】
本発明製法の好ましい一態様を示せば次の通りである。オキナワモズクの藻体20gを、滅菌海水1Lに窒素を1500〜5000μmolおよびリンを0.1〜200μmol添加した、水温23℃程度の培地において、光合成有効光量子束密度を5〜450μmol・m−2・s−1とし、明暗周期を12時間とし、5日間程度培養する。
【0017】
上記培地で培養されて得られる褐藻類の藻体は、フコキサンチン、フコステロールおよびタンパク質からなる群から選ばれる健康機能性成分の1種以上の含有量が高くなっているものである。具体的には、本発明製法で処理した褐藻類のフコキサンチン含量は、採取直後の藻体に比べ、2〜100倍程度に増加する。また、フコステロール含量は、同じく2〜150倍程度に増加する。更に、タンパク質は、同じく2〜15倍程度に増加する。従って、例えば、オキナワモズクの場合、本発明方法により藻体の湿重量1gあたり、フコキサンチンを80〜500μg、フコステロールを50〜500μgおよびタンパク質を6〜60mg含有するものを得ることができる。
【0018】
斯くして製造される健康機能性成分高含有褐藻類は、そのまま健康食品(生食用)として、あるいはフコキサンチン、フコステロールおよびタンパク質等の健康機能性成分の抽出原料に好適である。また、健康機能性成分高含有褐藻類は、そのままあるいは乾燥、粉砕等の処理の後、フコキサンチン、フコステロールおよびタンパク質等の健康機能性を期待した健康食品、化粧品等の原料として利用することもできる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
【0020】
実 施 例 1
健康機能性成分高含有褐藻類の製造(1):
沖縄県南城市の養殖漁場から採取したオキナワモズク藻体を実験藻体とし、その20g(湿重量)を1000mlの滅菌海水の入った1Lフラスコに入れ、以下の条件で5日間培養を行った(各試験区n=3)。培養後、藻体を取り出し、湿重量測定、フコキサンチン定量分析(HPLC法)、フコステロール定量分析(GC−MS法)およびタンパク質量分析(ケルダール法)を行った。各条件における藻体重量の変化を表1に、各条件下での培養後のフコキサンチン量を表2に、培養後のフコステロール量を表3に、培養後のタンパク質量を表4に示した。なお、培養前の藻体のフコキサンチン量は15.5±6.1(μg/g湿重量、Mean±S.D.)であり、フコステロール量は15.3±4.5(μg/g湿重量、Mean±S.D.)、タンパク質量は0.41±0.01(g/100g湿重量、Mean±S.D.)であった。
【0021】
(培養条件)
培養温度:23℃(22.0−24.1)℃
明暗周期:12時間
照度(光合成有効光量子束密度(球面光量子計):PPFD):
5、58、447μmol・m−2・s−1
施肥量:
窒素濃度:0、1500、3000μmol/L
リン濃度:窒素濃度の1/30量
(フコキサンチン定量分析方法)
褐藻類5gを細切し、アセトン50mLを加え、室温で2時間抽出した。抽出液をろ過し、50mLに定容した。定容した抽出液のうち、1mLをODSカラムに通液し、そのメタノール溶出部についてHPLCによるフコキサンチン定量分析を行った。
HPLC条件:
カラム : Hypersil ODS 4x125mm(agilent社製)
移動相 : メタノール:水=70:30(0分)−メタノール(25分)
流速 : 0.4mL/min
検出波長: 440nm
注入量 : 10μL
(フコステロール定量分析方法)
褐藻類5gを細切し、アセトン50mLを加え、室温で18時間抽出した。抽出液をろ過し、50mLに定容した。定容した抽出液のうち、0.5mLを濃縮し、1Mの水酸化ナトリウム−メタノール溶液を1mL加え、60℃で30分加熱して加水分解を行った。反応後、ヘキサン1mLで3回抽出し、ヘキサン抽出液についてGC−MSによるフコステロール定量分析を行った。
GC−MS条件:
カラム : DB−5ms0.25mmx30m(膜厚0.25μm)
(J&W Scientific社製)
キャリアーガス:ヘリウム
カラム流速 : 2mL/分
カラム温度 : 50℃(ホールド1分)− 150℃(20℃/分)−290℃
(7℃/分、ホールド14分)
気化室温度 : 290℃
注入量 : 1μL
【0022】
(湿重量測定結果)
【表1】

【0023】
表1に示すように、培養後のオキナワモズク藻体重量は、高施肥量になるに従って減少が認められた。また、低照度になるほど藻体重量の減少傾向が認められ、特に高施肥量群で照度の影響が大きくなる傾向が見られた。
【0024】
(フコキサンチン定量分析結果)
【表2】

【0025】
表2に示すように、培養後のオキナワモズク藻体中のフコキサンチン含有量は、高施肥量になるに従って増加が認められた。また、低照度になるほどフコキサンチン含有量の増加傾向が認められ、特に高施肥量群で照度の影響が大きくなる傾向が見られた。
【0026】
(フコステロール定量分析結果)
【表3】

【0027】
表3に示すように、培養後のオキナワモズク藻体中のフコステロール含有量は、高施肥量になるに従って増加が認められた。また、低照度になるほど含量の増加傾向が認められ、特に高施肥量群で照度の影響が大きくなる傾向が見られた。
【0028】
(タンパク質分析の結果)
【表4】

【0029】
表4に示すように、培養後のオキナワモズク藻体中のタンパク質量は、高施肥量になるに従って増加が認められた。
【0030】
以上の結果(表1〜4)から、施肥量を多く、照度を低くするほど藻体重量は減少する一方、藻体中のフコキサンチン、フコステロールおよびタンパク質の含有量が増加することが判明した。また、最高施肥量・最低照度区(施肥量:3000μmol、照度:5μmolm−2−1)においてフコキサンチンおよびフコステロールの含有量は最大となり、それぞれ121μg/g(湿重量)および197μg/g(湿重量)であった。
【0031】
実 施 例 2
健康機能性成分高含有褐藻類の製造(2):
沖縄県伊是名村の養殖漁場から採取したオキナワモズク藻体を実験藻体とし、その20gを1000mlの滅菌海水の入った1Lフラスコに入れ、以下の条件で5日間培養を行った(各試験区n=3)。培養後の藻体について実施例1と同様にして湿重量測定(表5)、フコキサンチン定量分析およびフコステロール定量分析を行った。結果を各条件における藻体重量の変化を表5に、各条件下での培養後のフコキサンチン量を表6に、培養後のフコステロール量を表7に、培養後のタンパク質量を表8示した。なお、培養前の藻体のフコキサンチン量は、2.9±0.4(μg/g湿重量、Mean±S.D.)であり、フコステロール量は、3.7±0.7(μg/g湿重量、Mean±S.D.)、タンパク質量は、0.29±0.01(g/100g湿重量、Mean±S.D.)であった。
【0032】
(培養条件)
培養温度:23℃(22.0−24.1)℃
明暗周期:12時間
照度(光合成有効光量子束密度:PPFD):5、58μmolm−2−1
施肥量:
窒素濃度:0、100、500、1500μmol/L
リン濃度:窒素の濃度の1/30量
(フコキサンチンおよびフコステロール定量分析)
褐藻類5gを細切し、アセトン50mLを加え、室温で2回抽出(各2時間)した。抽出液をろ過し、100mLに定容した。以降の操作は実施例1と同様に行った。
【0033】
(湿重量測定結果)
【表5】

【0034】
表5に示すように、培養後のモズク藻体重量は、高施肥量になるに従って減少が認められた。また、実施例1で行った高施肥・高照度の条件を採用しなかったので、照度の影響は顕著ではなく、各施肥量群の藻体重量は、低照度区および中照度区で大きな差は見られなかった。
【0035】
(フコキサンチン定量分析結果)
【表6】

【0036】
表6に示すように、培養後のオキナワモズク藻体中のフコキサンチン含有量は、高施肥量になるに従って含量の増加が認められた。この実施例においては実施例1に示した高施肥・高照度の条件を採用しなかったので、照度の影響は顕著ではなかったが。施肥量1500μmol、低、中照度の条件においてフコキサンチンが90〜100μg/g(湿重量)の濃度まで上昇した。
【0037】
(フコステロール定量分析結果)
【表7】

【0038】
表7に示すように、培養後のオキナワモズク藻体中のフコステロール含有量は、高施肥量になるに従って増加が認められた。この実施例においては実施例1に示した高施肥・高照度の条件を採用しなかったので、照度の影響は顕著ではなかったが、施肥量1500μmol、低、中照度の条件においてフコステロールが170〜200μg/g(湿重量)の濃度まで上昇した。
【0039】
(タンパク質分析の結果)
【表8】

【0040】
表8に示すように、培養後のオキナワモズク藻体中のタンパク質量は、高施肥量になるに従って増加が認められた。また、施肥量500μmol以上の群では、高照度の区で増加傾向を示した。実施例1と対応する条件(表4、施肥量1500μmol、低、中照度区)においてタンパク質量が同程度まで増加し、再現性が認められた。
【0041】
以上の結果(表5〜8)から、施肥量を多くするほど藻体重量は減少する一方、藻体中のフコキサンチン、フコステロールおよびタンパク質の含有量が増加することが判明した。
【0042】
実施例2では、最高施肥量区(施肥量:1500μmol)においてフコキサンチンおよびフコステロールの含有量が最大となった。フコキサンチンは101μg/g(湿重量)、フコステロールは205μg/g(湿重量)であった。
【0043】
実施例1および実施例2では異なる養殖漁場から採取したオキナワモズク藻体を試料としたため、産地によってフコキサンチンおよびフコステロールの含有量が異なっており、量も少なかった。しかし、これらの藻体を高施肥量条件で培養した結果、フコキサンチンは100〜120μg/g(湿重量)、フコステロールは170〜200μg/g(湿重量)まで大きく増加させることができた。
【0044】
藻体中のフコキサンチンおよびフコステロールの含有量が増加する高施肥量条件においては、藻体中のタンパク質量も同時に増加することが判明した(1.10〜1.64g/100g(湿重量))。これにより、本発明製法で製造される藻体は、タンパク質も豊富に含む栄養価の高い食品となることが示された。
【0045】
また、オキナワモズクに含まれるタンパク質は、消化酵素により消化されることで、血圧上昇抑制作用に関わるACE阻害作用を示すことが判明している。本発明製法で製造される藻体はフコキサンチンおよびフコステロールだけでなく、タンパク質も豊富に含むため、ACE阻害作用による血圧上昇抑制作用も期待できる。
【0046】
実 施 例 3
健康機能性成分高含有褐藻類の製造(3):
沖縄県宜野座沿岸に自生するホンダワラ属海藻を実験藻体とし、その20gを1000mlの滅菌海水の入った1Lフラスコに入れ、以下の条件で5日間培養を行った(各試験区n=3)。培養後の藻体について実施例1と同様にして湿重量測定、フコキサンチン定量分析を行った。各条件における藻体重量の変化を表9に、各条件下での培養後のフコキサンチン量を表10に示した。なお、培養前の藻体のフコキサンチン量は、73.0±5.9(μg/g湿重量、Mean±S.D.)であった。
【0047】
(培養条件)
培養温度:23℃(22.0−24.1)℃
明暗周期:12時間
照度(光合成有効光量子束密度:PPFD):5μmolm−2−1
施肥量:
窒素濃度:3000、4500μmol/L
リン濃度:窒素の濃度の1/30量
(フコキサンチン定量分析)
褐藻類5gを細切し、アセトン50mLを加え、室温で2回抽出(各2時間)した。抽出液をろ過し、100mLに定容した。以降の操作は実施例1と同様に行った。
【0048】
(湿重量測定結果)
【表9】

【0049】
表9に示すように、培養後のホンダワラ藻体重量は、培養前と大きな差は見られなかった。
【0050】
(フコキサンチン定量分析結果)
【表10】

【0051】
表10に示すように、培養後のホンダワラ藻体中のフコキサンチン量は、高施肥量条件で培養することで、培養前の22〜28%程度増加した。
上記の実施例3の結果から、オキナワモズク以外のホンダワラなどの褐藻類についても、本発明製法により健康機能性成分高含有褐藻類を製造することが可能であることが示された。
【0052】
実 施 例 4
健康機能性成分高含有褐藻類の製造(4):
沖縄県宜野座沿岸に自生するホンダワラ属海藻を実験藻体とし、その20gを1000mlの滅菌海水の入った1Lフラスコに入れ、以下の条件で1〜5日間培養を行った(各試験区n=3)。培養後の藻体について実施例1と同様にして湿重量測定、フコキサンチン定量分析を行った。各条件における藻体重量の変化を表11に、各条件下での培養後のフコキサンチン量を表12に示した。なお、培養前の藻体のフコキサンチン量は、73.0±5.9(μg/g湿重量、Mean±S.D.)であった。
【0053】
(培養条件)
培養温度:23℃(22.0−24.1)℃
照度(光合成有効光量子束密度:PPFD):0μmolm−2−1(完全遮光)
施肥量:
窒素濃度:3000μmol/L
リン濃度:窒素の濃度の1/30量
(フコキサンチン定量分析)
褐藻類5gを細切し、アセトン50mLを加え、室温で2回抽出(各2時間)した。抽出液をろ過し、100mLに定容した。以降の操作は実施例1と同様に行った。
【0054】
(湿重量測定結果)
【表11】

【0055】
表11に示すように、培養後のホンダワラ藻体重量は、培養前と大きな差は見られなかった。
【0056】
(フコキサンチン定量分析結果)
【表12】

表12に示すように、培養後のホンダワラ藻体中のフコキサンチン量は、高施肥量条件で培養することで、培養前の23〜40%程度増加した。
【0057】
上記の実施例4の結果から、光を完全遮光した条件(0μmolm-2s-1)においても、フコキサンチン量が増加し、本発明製法の効果が示された。また、培養日数は1日程度の短期間であっても効果が示された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、抗酸化作用、抗肥満作用、抗がん作用等を有するフコキサンチン、血中コレステロール低下作用等を有するフコステロール、血圧上昇抑制作用(ACE阻害作用)等を有するタンパク質等の健康機能性成分の含有量を著しく高めた褐藻類を簡便かつ効率的に得ることができる。
【0059】
これらの褐藻類は、上記健康機能性成分の抽出原料や健康食品、化粧品、医薬品等への応用が期待される。

以 上



【特許請求の範囲】
【請求項1】
褐藻類の藻体を、少なくとも窒素およびリンを添加した培地中、光合成有効光量子束密度が450μmol・m−2・s−1以下の条件で培養することを特徴とする健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法。
【請求項2】
健康機能性成分が、フコキサンチン、フコステロールおよびタンパク質からなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載の健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法。
【請求項3】
培地が、1L当たり窒素を100〜5000μmolおよびリンを0.1〜200μmol含有する海水または人工海水である請求項1または2に記載の健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法。
【請求項4】
褐藻類が、モズク類、ホンダワラ類、ワカメ類またはコンブ類である請求項1ないし3の何れかに記載の健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法。
【請求項5】
褐藻類が、オキナワモズクである請求項1ないし4の何れかに記載の健康機能性成分高含有褐藻類の製造方法。
【請求項6】
湿重量1gあたり、80〜500μgのフコキサンチン、50〜500μgのフコステロールおよび6〜60mgのタンパク質からなる群から選ばれる健康機能性成分の1種以上を含有することを特徴とする健康機能性成分高含有オキナワモズク。



【公開番号】特開2009−72132(P2009−72132A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244867(P2007−244867)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(595102178)沖縄県 (36)
【出願人】(592234908)株式会社トロピカルテクノセンター (14)
【Fターム(参考)】