説明

充放電試験装置

【課題】コンデンサやバッテリーを被試験試料とした充放電試験装置に関し、直流の充電電流又は放電電流に、バランスのとれたリップル電流を重畳して試験を行う。
【解決手段】充放電回路3から被試験試料のコンデンサ又はバッテリーに対する直流の充放電電流に、所望の周期のリップル電流を重畳して供給する充放電試験装置1であって、被試験試料2に対する直流の充電又は放電を行う充放電回路3と、リップル重畳回路4とを含み、リップル重畳回路4は、交流信号発生部6からのリップル電流の周期の交流信号に従って内部インピーダンスを制御する電子負荷回路5と、この電子負荷回路5に直接又は電源7を介して並列に接続したコイル8と、電子負荷回路5に直接又は電源7を介して直列に接続したコンデンサ9とを含む構成を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサやバッテリーを被試験試料として、直流電流にリップル電流を重畳して充放電試験を行う充放電試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサやバッテリーを被試験試料として、直流定電流で充電と放電とを繰り返すことにより試験を行う充放電試験装置で、各種の使用条件に即した試験及び加速試験の必要性から、直流定電流に対して、数Hz〜数10kHzの周波数のリップル電流を重畳して充放電試験を行う充放電試験装置が知られている。例えば、図3に示すように、充放電試験装置11の充放電回路13から被試験試料としてバッテリー(BATT)12に対して定電流で充放電を行い、リップル重畳回路14からのリップル電流を被試験試料のバッテリー12に供給するもので、リップル重畳回路14は、電子負荷回路15と、リップル電流の周波数の交流信号を電子負荷回路15に入力する交流信号発生部16と、バイアス電源17とを含む構成を備えている。
【0003】
電子負荷回路15は、例えば、図4に示すように、制御回路21と、オペアンプ(演算増幅器)22と、バイアス電源23と、トランジスタQ1と、抵抗R1,R2とを含む構成を有するもので、バイアス電源23は、図3に於けるバイアス電源17と同一の作用を行うものであるから、何れか一方を省略することができる。或いは、バイアス電源17,23を省略した構成とすることができる。又制御回路21は、交流信号発生部16からの交流信号に対応した周期で且つ所定のレベルとなる信号をオペアンプ22の一方に入力し、オペアンプ22の他方の入力は、トランジスタQ1を介して流れる電流に対応した抵抗R2の両端の電圧Vとする。それにより、バッテリー12の放電電流を、交流信号発生部16からの交流信号の周波数で、制御回路21に設定した最大値に対応して、0〜最大値の電流をバッテリー12から電子負荷回路15に流すことができる。
【0004】
又図3に於いて、充放電回路13からバッテリー12を充電している場合、電子負荷回路14には、交流信号発生部16からの交流信号に従った電流が、バッテリー12に対してはバイパスされることになり、従って、バッテリー12に対しては、交流信号の周波数に従った放電が繰り返し行われることになり、直流の充放電電流に対して、交流信号発生部16からの交流信号の周波数に従ったリップル電流が重畳されることになる。そして、被試験試料のバッテリー12の端子電圧を、図示を省略した電圧測定部により測定し、流れる電流を、図示を省略した電流測定部により測定し、リップル電流に対応したピーク・トー・ピークの電圧及び電流を基に、被試験試料のバッテリー12のインピーダンスを求め、予め求めておいた寿命等との関連情報を基に、被試験試料のバッテリー12の劣化状況及び寿命判定も可能となる。
【0005】
又定電流充電回路と定電流放電回路とに、それぞれ交流信号を入力する構成とし、被試験試料のバッテリーに対して、交流信号の周期で充放電を行う構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。又複数周波数の交流信号に従った電流を、ハイパスフィルタを介して被試験試料のバッテリーに入力し、そのバッテリーの端子電圧を、ハイパスフィルタを介して検出し、バッテリーの内部インピーダンス測定を行って、バッテリーの寿命判定を行う手段も提案されている(例えば、特許文献2参照)。又直流の充放電回路と、100Hz〜200kHzの交流電圧の出力部とにより、被試験試料のバッテリーの充放電試験を行う構成も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平7−128418号公報
【特許文献2】特開平8−273705号公報
【特許文献3】特開2006−258424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の例えば図3に示す充放電装置に於いて、電子負荷回路15は、被試験資料のバッテリー12に対しては、電流を減少させる方向の制御を行うものであり、図5の(A)に示すように、交流信号発生部17からの交流信号に従った周期で、最小の0Aから最大の電流までのリップル電流Ip−pが流れるように制御することになる。それにより、被試験試料のバッテリー12には、図5の(B)に示すように、最大電流Iのリップル電流Ip−pが流れることになる。しかし、被試験試料のバッテリー12に対してのリップル電流は、直流充電による充電電力量又は直流放電による放電電力量の増加や減少が生じないようにすることが必要である。その為、図3に示す充放電装置の充放電回路13にオフセットを入力し、例えば、図5の(C)に示すように、I+1/2・Ip−p=I’としてリップル電流による充電電力量又は放電電力量の変化が生じないように制御する。しかし、オフセット調整が正確でないと、リップル電流による充電電力量又は放電電力量の変化が発生することになる。例えば、図5の(D)に示すように、最大電流I’が(1/2・Ip−p)以下の値となった場合、(1/2・Ip−p)−I’=Iaの電流による放電が継続することになる。反対に、I’>(1/2・Ip−p)の関係の場合は、Iaの電流による充電が継続することになる。従って、充放電回路13のオフセット調整は簡単ではない問題がある。
【0007】
又前述の特許文献1に示す従来例の構成に於いては、定電流充電回路と定電流放電回路とを別個に設けるものであるから、充放電試験装置の構成が複雑となると共にコストアップとなる問題がある。又前述の特許文献2に示す従来例の構成に於いては、交流複合波信号をコンデンサを介して被試験試料のバッテリーに供給してインピーダンス測定を行うものであり、直流による充電及び放電の試験を含まない構成を示し、又前述の特許文献3に示す従来例の構成に於いては、バッテリーのインピーダンス測定を目的としたもので、直流による充電又は放電の試験については明記されていない。
【0008】
本発明は、前述の従来例の問題点を解決するもので、比較的簡単な構成により、被試験試料に対する直流の充電及び放電の試験時に、直流成分に影響しないように、バランスのとれたリップル電流を供給可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の充放電試験装置は、充放電回路から被試験試料のコンデンサ又はバッテリーに対する直流の充放電電流に、リップル電流を重畳して供給する充放電試験装置であって、前記被試験試料に対する直流の充電又は放電を行う充放電回路と、リップル重畳回路とを含み、前記リップル重畳回路は、前記リップル電流の周期に従って内部インピーダンスを制御する電子負荷回路と、該電子負荷回路に直接又はバイアス電源を介して並列に接続したコイルと、該電子負荷回路に直接又はバイアス電源を介して直列に接続したコンデンサとを含む構成を備えている。
【0010】
又リップル重畳回路のコンデンサを、単一又は複数並列接続の電解コンデンサにより構成し、比較的低い周期のリップル電流をローコストで重畳可能とする。
【発明の効果】
【0011】
電子負荷回路は、リップル電流の周期に従って内部インピーダンスを制御し、リップル電流の直流分をコイルに流し、交流分をコンデンサを介して流すことにより、被試験試料に対する充放電回路による充電又は放電を行う場合に、正負のバランスがとれたリップル電流を流すことが可能となり、オフセット調整等を行うことなく、被試験試料に対する充電又は放電の試験を行う場合のリップル電流を重畳して試験を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の充放電試験装置は、図1を参照して説明すると、充放電回路3から被試験試料のコンデンサ又はバッテリーに対する直流の充放電電流に、リップル電流を重畳して供給する充放電試験装置1であって、被試験試料2に対する直流の充電又は放電を行う充放電回路3と、リップル重畳回路4とを含み、リップル重畳回路4は、交流信号発生部6からのリップル電流の周期の交流信号に従って内部インピーダンスを制御する電子負荷回路5と、この電子負荷回路5に直接又は電源7を介して並列に接続したコイル8と、電子負荷回路5に直接又は直流の電源7を介して直列に接続したコンデンサ9とを含む構成を備えている。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1の説明図であり、1は充放電試験装置、2は被試験試料のバッテリーBATT、3は充放電回路、4はリップル重畳回路、5は電子負荷回路、6は交流信号発生部、7は直流の電源、8はコイル、9はコンデンサを示す。コンデンサ9は、DCカット用のコンデンサであり、交流信号発生部6は、通常100Hz〜10kHz程度の周波数とするものであるが、被試験試料の特性測定の為に、例えば、0.1Hz程度の低周波数とすることも可能である。又コンデンサ9は、比較的大きなリップル電流を流すことができる比較的大容量のコンデンサを用いるものである。例えば、比較的廉価で大容量化が容易な電解コンデンサを用いることが可能であり、又所望の静電容量を得る為に複数のコンデンサを並列接続して構成することができる。又被試験試料としてバッテリー2に替えてコンデンサとすることもできる。又電源7は省略した構成とすることも可能である。
【0014】
電子負荷回路5は、交流信号発生部6からの交流信号に応じて内部インピーダンスを変化させるものであり、例えば、図4に示す従来の電子負荷回路と同様な構成を適用することができる。この電子負荷回路5は、充放電回路3と共に被試験試料のバッテリー2に対して並列接続の状態となるから、被試験試料のバッテリー2に流れる充電電流又は放電電流は、電子負荷回路5の内部インピーダンスの変化の交流成分に従って変化することになる。従って、充電電流又は放電電流に交流成分であるリップル成分が重畳されて、被試験試料のバッテリー2に流れることになる。
【0015】
図2は、リップル電流の説明図であり、(A)は電子負荷回路5に流れるリップル成分を示し、0AからIp−pの振幅の電流が流れる。この電流の直流成分は、図2の(B)に示すように、1/2・Ip−pの電流となる。それにより、コンデンサ9を介して流れる電流は、図2の(C)に示すように、0Aを中心とした正負の1/2・Ip−pの電流となり、リップル電流が重畳されても、オフセット調整が必要ではなくなる。即ち、交流信号発生部6からの交流信号の周期に従ったリップル電流を、充放電回路3による充電電流又は放電電流に重畳し、リップル成分の正負のバランスをとる為のオフセット調整を行うことなく、被試験試料に対する充電電流及び放電電流のリップル電流を重畳することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1の説明図である。
【図2】本発明の実施例1のリップル電流の説明図である。
【図3】従来例の説明図である。
【図4】電子負荷回路の説明図である。
【図5】従来例のリップル電流の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 充放電試験装置
2 被試験試料のバッテリー
3 充放電回路
4 リップル重畳回路
5 電子負荷回路
6 交流信号発生部
7 電源
8 コイル
9 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電回路から被試験試料のコンデンサ又はバッテリーに対する直流の充放電電流に、リップル電流を重畳して供給する充放電試験装置に於いて、
前記被試験試料に対する直流の充電又は放電を行う充放電回路と、リップル重畳回路とを含み、
前記リップル重畳回路は、前記リップル電流の周期に従って内部インピーダンスを制御する電子負荷回路と、該電子負荷回路に直接又は電源を介して並列に接続したコイルと、該電子負荷回路に直接又は電源を介して直列に接続したコンデンサとを含む構成を備えた
ことを特徴とする充放電試験装置。
【請求項2】
前記リップル重畳回路の前記コンデンサを単一又は並列接続の複数の電解コンデンサにより構成したことを特徴とする請求項1記載の充放電試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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