説明

充放電電源装置

【課題】電源と電池間のインピーダンスを最小にすることができ、出力電力のロスを低減することができる充放電電源装置を提供する。
【解決手段】充放電電源装置1は、複数の充放電可能な電池2を収納できる電池トレー3と、交流電圧を直流電圧に変換して出力するAC/DCコンバータ4と、AC/DCコンバータ4に対して並列に接続され、各電池2への充放電を1対1で制御する複数の高集積コンバータ6とを備えている。そして、電池トレー3に収納された各電池の電極端子が、各高集積コンバータ6の電極端子に当接して接続されており、電池トレー3と複数の高集積コンバータ6とが一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電池の充放電電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、リチウムイオン充電池やニッケル水素充電池などの二次電池では、製造後の二次電池の検査や化学反応の活性化などのため、電池の充放電処理が施される。
このような製造後の二次電池の充放電処理では、個別に二次電池を選別する必要のあることから、充電池毎に独立した充放電電源を設け、充放電処理を実行している。
特に、リチウムイオン二次電池では、満充電するために定電流充電だけでなく定電圧充電も実行する必要があり、電池毎に充電電流や充電電圧を制御できる個別充電方式が用いられている。
【0003】
このような充放電処理を実行する充放電電源としては、従来、図4に示すような充放電電源装置101がある。
この充放電電源装置101は、複数の充放電可能な電池102を収納できる電池トレー103と、交流電源109からの交流電圧を直流電圧に変換して出力するAC/DCコンバータ104と、AC/DCコンバータ104から出力された直流電圧を所望の直流電圧に変換して出力するDC/DCコンバータ105と、DC/DCコンバータ105に対して並列に接続され、各電池102への充放電を制御する複数の高集積コンバータ106とを備え、電池トレー103に収納された各電池102は、各高集積コンバータ106に接続された構成をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−7950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記充放電電源装置では、一般に、電池トレーに収納された各電池と各高集積コンバータとがケーブルにより電気的に接続されている(図4のケーブル107参照)。
従来、電池トレー内に、電池の充放電回路を高集積化することはスペース的に困難であったため、通常は、コンバータ回路を電池トレー内ではなく電池トレーの外部に設け、電池との接触を行うプローブとをケーブルで接続する必要があった。
しかしながら、このケーブルを介した電池への電力供給においては、ケーブルインピーダンスにより電圧降下が起こるため、当該電圧降下を考慮した電力を交流電源から供給する必要があり、その分交流電源からの出力電力を増大させてしまい、電力的にロスを発生させている。
【0006】
なお、特許文献1には、DC/DCコンバータに接続された、バッテリパック内に4個のリチウムイオンバッテリセルが直列接続して使用され、セル電圧監視回路によりリチウムイオンバッテリのセル電圧異常を判定し、急速充電を停止して、リチウムイオンバッテリの過充電による劣化を防止する回路(特許文献1の図3、4)が記載されているが、この回路は電源の出力端子と電池間のインピーダンスを下げるものではない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高集積化の進んだコンバータを使用することを前提に、電源と電池間のインピーダンスを最小にすることができ、出力電力のロスを低減することができる充放電電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明に係る充放電電源装置は、複数の充放電可能な電池を収納できる電池トレーと、交流電圧を直流電圧に変換して出力するコンバータと、前記コンバータに対して並列に接続され、前記複数の電池の各々への充放電を1対1で制御する複数の高集積コンバータとを備え、前記電池トレーに収納された各電池の電極端子が、各高集積コンバータの電極端子に当接して接続されており、前記電池トレーと前記複数の高集積コンバータとが一体化されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、電池トレーと複数の高集積コンバータとが一体化されていることから、従来のように、電池トレーに収納された電池と高集積コンバータとをケーブルにより接続する必要がなくなる。
これにより、電池トレーに収納された電池への電力供給において、ケーブルを使用した場合のようなケーブルインピーダンスによる電圧降下がなく、電源からケーブルインピーダンスによる電圧降下を考慮した電力を供給する必要もないため、出力電力のロスを低減することができる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明に係る充放電電源装置において、前記複数の高集積コンバータからなる高集積コンバータ集合体が、前記電池トレーから着脱自在であることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、複数の高集積コンバータ集合体が、電池トレーから着脱自在であることにより、高集積コンバータ集合体の交換を容易に行うことができる。
【0012】
さらに、第3の発明は、前記複数の高集積コンバータの各々が、前記高集積コンバータ集合体に対し、着脱自在とされ、各高集積コンバータが個々に前記電池トレーから着脱自在であることを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、複数の高集積コンバータが、電池トレーから着脱自在であることにより、たとえ複数の高集積コンバータのうち、1以上が故障した場合でも、高集積コンバータの交換を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
上記のとおり本発明では、電源と電池間のインピーダンスを最小にすることができ、出力電力のロスを低減することができる充放電電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る充放電電源装置の構成図である。
【図2】本実施形態に係る充放電電源装置のブロック図である。
【図3】本実施形態に係る電池トレーを高集積コンバータ集合体に装着する時の説明図である。
【図4】従来の充放電電源装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係る充放電電源装置1の構成図である。図2は、本実施形態に係る充放電電源装置1のブロック図である。図3は、本実施形態に係る電池トレー3を高集積コンバータ集合体21に装着する時の説明図である。
【0017】
(充放電電源装置1のブロック図)
充放電電源装置1は、図2に示すように、交流電源9と、AC/DCコンバータ4と、AC/DCコンバータ4に対して並列に接続された複数の高集積コンバータ6と、複数の高集積コンバータ6に制御指令を出力する制御指令器8と、複数の充放電可能な電池2を収納できる電池トレー3とを備えた構成をしており、電池トレー3に収納された各電池2は、各高集積コンバータ6に直接接続されている。
【0018】
(充放電電源装置1の構成)
より詳細に、充放電電源装置1の構成を、図1を参照して説明する。
【0019】
AC/DCコンバータ4は、交流電源9からの交流電圧を直流電圧に変換して直流電力として出力する。
【0020】
制御指令器8は、予め設定された充電情報および放電情報に基づき、各高集積コンバータ6に制御指令を出す。
ここで、充電情報とは、AC/DCコンバータ4から供給された直流電力を、適正に電池2に充電するための充電電圧および充電電流の適正値に関する情報である。
また、放電情報とは、電池トレー3に収納された電池2から放電される電力を、適正に放電するための放電電圧および放電電流の適正値に関する情報である。
【0021】
高集積コンバータ6は、電圧センシング6cを備えている。そして、図3に示すように、複数の高集積コンバータ6が集まって1つの高集積コンバータ集合体21を形成している。
高集積コンバータ6は、制御指令器8から制御指令された充電情報および電圧センシング6cで検出した電圧に基づき、AC/DCコンバータ4から供給された直流電力を、電池2を充電するために適正な充電電圧および充電電流に変換し、電池トレー3に収納された電池2に出力する。
【0022】
また、高集積コンバータ6は、制御指令器8から制御指令された放電情報および電圧センシング6cで検出した電圧に基づき、電池トレー3に収納された電池2から放電される電力を、適正な放電電圧および放電電流に変換する。
なお、適正な放電電圧および放電電流に変換された電力は、図示しない負荷に供給されて消費される。
【0023】
また、高集積コンバータ集合体21は、図3に示すように、後述する電池トレー3が載置される載置スペース21aを有している。
また、高集積コンバータ集合体21の載置スペース21a側には、図3に示すように、後述する電池トレー3から張り出した外部端子(+)3a、(−)3bと各高集積コンバータ6との接続を可能とする端子(+)6a、(−)6bが複数設けられている。
なお、各高集積コンバータ6には、図示しないが、AC/DCコンバータ4からの電気的接続を可能とする端子も設けられており、AC/DCコンバータ4と各高集積コンバータ6とは電気的に接続される。
【0024】
電池トレー3は、図3に示すように、複数の電池2を収納可能である。
電池トレー3は、例えば、箱状の筐体でもよいし、アルミニウム等を用いたラミネートフィルムを被覆したものでもよい。
なお、充放電可能な電池2としては、リチウムイオン充電池やニッケル水素充電池が挙げられる。
【0025】
また、電池トレー3には、図3に示すように、2つの外部端子(+)3a、(−)3bを一組とする端子部が複数組み込まれており、各高集積コンバータ6には、図3に示すように、2つの接続端子、すなわち、(+)端子6aと、(−)端子6bとを一組とする端子部が、内方に凹むように設けられている。
【0026】
これにより、図3に示すように、電池トレー3が高集積コンバータ集合体21の載置スペース21aに載置された場合に、電池トレー3から張り出した外部端子3a(+)、3b(−)がそれぞれ高集積コンバータ集合体21の各高集積コンバータ6に設けられた端子(+)6a、(−)6bに対して直接接触することで接続可能とされている。
すなわち、電池トレー3が高集積コンバータ集合体21に装着された場合、電池トレー3に収納された各電池2は、各高集積コンバータ6に直接接続され、電池トレー3と各高集積コンバータ6とが一体化された状態となる。
【0027】
(動作)
次に、充放電電源装置1を用いた充放電試験時の動作について説明する。
【0028】
まず、上記のように構成された充放電電源装置1において、図3に示すように、電池トレー3に複数の電池2を収納する。
その後、図3に示すように、高集積コンバータ集合体21上に電池トレー3を載置して、電池トレー3から張り出した各外部端子(+)3a、(−)3bと高集積コンバータ6の各端子(+)6a、(−)6bとを直接接触(凹凸嵌合)させることにより接続する。このとき、高集積コンバータ6の各端子(+)6a、(−)6bには、電池トレー3の各外部端子(+)3a、(−)3bと接触可能なプローブピン(図示しない)が取り付けられており、プローブピンによる弾性力が付与される結果、各外部端子(+)3a、(−)3bと高集積コンバータ6の各端子(+)6a、(−)6bとの接触が十分なものとなる。
また、高集積コンバータ6と、接続される電池2とはその接続面の形状、寸法が同一となるように配列されている。
これにより、電池トレー3と高集積コンバータ集合体21に設けられた各高集積コンバータ6とは一体化された状態となる。
【0029】
そして、交流電源9からの交流電圧をAC/DCコンバータ4で直流電圧に変換して直流電力として各高集積コンバータ6に出力する。
【0030】
次いで、高集積コンバータ6は、制御指令器8から制御指令された充電情報および電圧センシング6cで検出した電圧に基づき、AC/DCコンバータ4から出力された直流電力を、各電池2を充電するために適正な充電電圧および充電電流に変換し、電池トレー3に収納された電池2に出力する。
これにより、各電池2に充電がなされる。
【0031】
その後、各電池2の充放電試験が完了したら、高集積コンバータ集合体21に装着されている電池トレー3を載置スペース21aから脱離して、電池トレー3から電池2を取り出すことになる。
【0032】
上記の構成によれば、電池トレー3と複数の高集積コンバータ6が集合した高集積コンバータ集合体21とが一体化されていることから、従来のように、電池トレー3に収納された電池2と高集積コンバータ6とをケーブルにより接続する必要がなくなる。
これにより、電池トレー3に収納された電池2への電力供給において、ケーブルを使用した場合のようなケーブルインピーダンスによる電圧降下がなく、交流電源9からケーブルインピーダンスによる電圧降下を考慮した電力を供給する必要もないため、出力電力のロスを低減することができる。
【0033】
また、複数の高集積コンバータ6が集合した高集積コンバータ集合体21が、電池トレー3とは着脱自在であることにより、たとえ、高集積コンバータ集合体21に設けられた高集積コンバータ6が故障した場合でも、高集積コンバータ6の交換を容易に行うことができる。
なお、上記実施例の図3では、角形、一方向端子引出型のリチウム電池を一例として挙げたが、円筒形、双方向端子引出型の電池も使用することもでき、その形態は限定されるものではない。
【0034】
(変形例)
上記実施形態では、複数の高集積コンバータ6を設けた高集積コンバータ集合体21が、電池トレー3から着脱自在である場合を説明したが、更に、各高集積コンバータ6が、高集積コンバータ集合体21から着脱自在であってもよい。
【0035】
上記の構成によれば、各高集積コンバータ6が、高集積コンバータ集合体21から着脱自在であることにより、たとえ複数の高集積コンバータ6のうち、1つの高集積コンバータ6が故障した場合でも、高集積コンバータ集合体21から故障した高集積コンバータ6だけの交換を容易に行うことができる。
【0036】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
1 充放電電源装置
2 電池
2a (+)極
2b (−)極
3 電池トレー
3a 外部端子(+)
3b 外部端子(−)
4 AC/DCコンバータ
6 高集積コンバータ
6a 端子(+)
6b 端子(−)
6c 電圧センシング
8 制御指令器
9 交流電源
21 高集積コンバータ集合体
21a 載置スペース
101 充放電電源装置
102 電池
103 電池トレー
104 AC/DCコンバータ
105 DC/DCコンバータ
106 高集積コンバータ
107 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の充放電可能な電池を収納できる電池トレーと、
交流電圧を直流電圧に変換して出力するコンバータと、
前記コンバータに対して並列に接続され、前記複数の電池の各々への充放電を1対1で制御する複数の高集積コンバータと、
を備え、
前記電池トレーに収納された各電池の電極端子が、各高集積コンバータの電極端子に当接して接続されており、前記電池トレーと前記複数の高集積コンバータとが一体化されていることを特徴とする充放電電源装置。
【請求項2】
前記複数の高集積コンバータからなる高集積コンバータ集合体が、前記電池トレーから着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の充放電電源装置。
【請求項3】
前記複数の高集積コンバータの各々が、前記高集積コンバータ集合体に対し、着脱自在とされ、各高集積コンバータが個々に前記電池トレーから着脱自在であることを特徴とする請求項1または2に記載の充放電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−244742(P2012−244742A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111691(P2011−111691)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】