説明

光ディスク再生装置

【課題】 光ディスクに保持されるCD規格から外れたアドレスであっても、ユーザが指定した目標アドレスへピックアップを移動させること。
【解決手段】 ピックアップ30が現在アクセスしている場所から取得した現在アドレスが異常であると判断した際、ピックアップ30がアクセスする位置を所定量移動させる制御信号をサーボコントローラ50に生成させ、ピックアップ30が制御信号により移動した場所から取得した現在アドレスを用いて目標アドレスを算出し、目標アドレスへピックアップ30を移動させる制御信号をサーボコントローラ50に生成させるコントロールマイコン80を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDなどの光ディスクに保持されているアドレス情報を用いて、ユーザが指定した場所から再生する光ディスク再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD(Compact Disk)やMD(Mini Disk)、あるいはDVD(Digital Versatile Disk)やBD(Blu-ray Disk)などの、螺旋状のトラックを有する光ディスクに対して、データの記録あるいは再生を行う光ディスク装置が広く普及している。そして、CDに保持されているアドレス情報を用いて、ユーザが指定した場所へアクセスするCDプレイヤーが実現されている(例えば、特許文献1参照)。なお、アドレス情報とは時間情報のことである。
【0003】
ここで、ユーザが指定した場所へアクセスする従来のCDプレイヤーにおける手順を、アドレス情報を示す図4およびアクセス手順を示す図5のフローチャートを用いて説明する。
【0004】
図4は、ディスクに保持されるCD規格に適合したアドレスの一例を示している。ここで、相対アドレスは、Track Nの曲などそれぞれの曲開始からの時間を示し、絶対アドレスは、ディスク全体の最初からの時間を示す。次に、Track Nの指定曲のアドレスEへのアクセス手順は、図5に示すように、まず粗アクセスにより指定曲へのアクセスを行う(ステップS61)。目標曲内に到達したと判定すると(ステップS62)、図4に示す目標曲内の相対アドレスAと絶対アドレスBより、指定曲の正確な曲開始アドレスC(絶対アドレス)を算出する(ステップS63)。そして、曲開始アドレスC+目標相対アドレスDより目標絶対アドレスEを算出し(ステップS64)、目標絶対アドレスEに従い精アクセス(ステップS65)を行う。こうすることにより、光ピックアップの移動量が算出でき、指定場所へアクセスすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平8−34055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パーソナルコンピュータなどを用いて、一般ユーザが作成したディスク(CD-R(RW)など)には、時間情報であるアドレス情報がCD規格から外れたものも存在する(図6参照)。このようなディスクを従来の技術を用いて再生すると、正しいアドレスを取得できず、ユーザが指定した曲へアクセスできない状態が発生する。
【0007】
具体的に説明すると、図6において、読み取った現在の相対アドレスSが異常な値(規格違反)である場合、従来の技術では、正しい曲開始アドレスUを算出できず目標絶対アドレスWへもアクセスすることができない。例えば、別の誤った曲へジャンプしてしまうなど不具合が生じる。
【0008】
そこで本発明では、光ディスクに記録された相対アドレスなどが異常な値であっても、ユーザが指定した曲へのアクセス可能性を向上させることのできる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、光ディスクに保持されるアドレスを用いて、ユーザが指定した目標アドレスへピックアップを移動させる光ディスク再生装置であって、ピックアップが現在アクセスしている場所から取得した現在アドレスが異常であると判断した際、ピックアップがアクセスする位置を所定量移動させる制御信号をサーボコントローラに生成させ、ピックアップが制御信号により移動した場所から取得した現在アドレスを用いて目標アドレスを算出し、目標アドレスへピックアップを移動させる制御信号をサーボコントローラに生成させるコントロールマイコンを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ディスク装置によれば、読み取ったアドレスが異常な値かどうかを判断し、別のアドレスを再度読み取るので、CD規格から外れたアドレス情報が保持されたCDであっても、ユーザが指定した場所へのアクセス可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態における光ディスク再生装置100の構成を説明するためのブロック図
【図2】本発明の実施の形態におけるアクセス処理(イ)を示すフローチャート
【図3】本発明の実施の形態におけるアクセス処理(ロ)を示すフローチャート
【図4】CD規格に適合したアドレス情報の一例を示す図
【図5】従来技術における指定した曲へアクセスする手順を示すフローチャート
【図6】CD規格から外れたアドレス情報の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の光ディスク再生装置100について、図1を用いて説明する。
【0013】
光ディスク再生装置100は、光ディスク10を回転させるスピンドルモータ20と、光ディスク10から信号を取得するピックアップ30を有する。ピックアップ30が取得した信号をRFアンプ40が増幅し、信号処理回路70で復調する。また、RFアンプ40で増幅された信号は、サーボコントローラ50へ送られる。サーボコントローラ50からの信号は、ドライバ60へ送られ、スピンドルモータ20とピックアップ30を駆動する。そして、これらの構成および機器全体を制御するコントロールマイコン80とから構成される。
【0014】
光ディスク10は、CD(Compact Disk)やMD(Mini Disk)、あるいはDVD(Digital Versatile Disk)やBD(Blu-ray Disk)などであり、螺旋状のトラックに再生対象となるデータが保持されている。
【0015】
スピンドルモータ20は、ドライバ60の駆動信号により、光ディスク10を回転させる。
【0016】
ピックアップ30は、光ディスク10から信号を取得し、RFアンプ40へ送る。また、ドライバ60の駆動信号により光ディスク10の中心から外周の間を移動し、光ディスク10の螺旋状のトラックに保持されるデータを取得する。
【0017】
RFアンプ40は、ピックアップ30が取得した光ディスク10の微少信号を増幅する。
【0018】
サーボコントローラ50は、RFアンプ40、信号処理回路70、コントロールマイコン80からの制御指令により、トラッキングサーボ、フォーカスサーボおよびスピンドルサ
ーボの制御信号を生成する。
【0019】
ドライバ60は、サーボコントローラ50からの制御信号をスピンドルモータ20の駆動信号および、ピックアップ30の駆動信号に増幅する。
【0020】
信号処理回路70は、PLL(phase locked loop)およびRFアンプ40により増幅された信号の復調、誤り訂正等の信号処理を行う。また、信号処理したオーディオ信号は、図示しないDAコンバーターやアンプ、およびスピーカを通してユーザへ音楽を提供する。
【0021】
コントロールマイコン80は、サーボコントローラ50、信号処理回路70への各種指令、および機器全体を制御する。
【0022】
次に、図4と図6とに示す光ディスク10に記録されるアドレス情報について詳しく説明する。
【0023】
まず、図4はCDなどの規格に基づき正しく記録されたアドレス情報である。光ディスク10は、CDに限定されないが、本実施の形態では、CDを代表として説明する。
【0024】
CDのアドレス情報は相対時間アドレスと絶対時間アドレスで記録されており、相対時間アドレスは各トラックの曲エリアの先頭より00分00秒00フレームからスタートし、絶対時間アドレスはCDのプログラムエリア開始位置より00分00秒00フレームからスタートする。また、各トラックの曲エリアの前には曲間エリアが存在し、曲間エリアの相対時間アドレスは、曲間の長さ分の値からスタートし00分00秒00フレームで終了する。
【0025】
次に、図6に示す規格違反(ユーザが家庭で作成したCD等)のアドレス情報について説明する。
【0026】
ユーザがパソコンなどでCD-R等に音楽データをコピーした際、パソコンで使用するディスク書き込みソフトによってはCD規格を守らないものがある。例えば、図6のTrack N曲間エリアのように、相対時間アドレスの情報を99分59秒74フレームからスタートし曲間の長さ分の値で終了するものがある。
【0027】
以上の構成を有する光ディスク再生装置100について、ユーザが指定した場所へピックアップ30を移動させるアクセス処理手順について説明する。
【0028】
最初に、従来の技術における、規格を守ったアドレス情報をもつCDのアクセス処理(イ)の手順について、図2と図4を用いて説明する。
【0029】
まず、ユーザが再生する場所を指定すると、コントロールマイコン80にその情報が入力され、指定された場所から目標Track番号が一義に決まる(ステップS20)。そして、信号処理回路70は、ピックアップ30で読み取った信号を復調したデータに含まれる現在Track番号をコントロールマイコン80に知らせる(ステップS21)。コントロールマイコン80は、ユーザが指定した場所に対応する目標Track番号と、ピックアップ30で読み取った信号を復調したデータに含まれる現在Track番号とを比較し、目標Track番号に到達したか判断する(ステップS22)。目標Track番号に到達したと判断するとステップS23へ進み、そうでなければ、ステップS21へ戻り、本処理を繰り返す。
【0030】
ステップS21からステップS22を繰り返す処理は、コントロールマイコン80がサーボコントローラ50に制御信号を生成させ、ドライバ60により増幅された制御信号に
従って、ユーザが指定した場所に対応する曲(目標Track番号)にピックアップ30を移動させる処理である。
【0031】
ステップS23は、図4に示す曲開始アドレスCを算出する処理である。この処理は、CDのTOC(Table of Contents)情報に記録されている各曲の開始時間アドレスが、実際の開始時間アドレスと異なるCDが存在しており、曲開始アドレスCを補正するためである。コントロールマイコン80は、信号処理回路70で復調したサブコードより読み取った現在の絶対アドレスBと相対アドレスAの差分から曲開始アドレスCを算出し、ステップS24へ進む。
【0032】
ステップS24では、コントロールマイコン80は、曲開始アドレスCに目標相対アドレスD(曲先頭は00分00秒)を加算し、目標絶対アドレスEを算出する(ステップS24)。
【0033】
ステップS25は、コントロールマイコン80が、ユーザが指定した場所に対応する目標絶対アドレスEと、ピックアップ30で読み取った信号を復調したデータに含まれる現在アドレス番号とを比較し、目標絶対アドレスEに到達したか判断する処理である。コントロールマイコン80は、目標絶対アドレスEに到達したと判断するとアクセス処理(イ)を終了する。目標絶対アドレスEに到達していない場合は、ステップS24へ戻る。
【0034】
ステップS24からステップS25を繰り返す処理は、コントロールマイコン80がサーボコントローラ50に制御信号を生成させ、ドライバ60により増幅された制御信号に従って、ユーザが指定した場所に対応する目標絶対アドレスEにピックアップ30を移動させる処理である。
【0035】
次に、規格違反のアドレス情報をもつCDのアクセス処理(ロ)の手順について図3と図6を用いて説明する。
【0036】
まず、ユーザが再生する曲を指定すると、コントロールマイコン80にその情報が入力され、指定された曲から目標Track番号が一義に決まる(ステップS30)。信号処理回路70は、ピックアップ30で読み取った信号を復調したデータに含まれる現在Track番号をコントロールマイコン80に知らせる(ステップS31)。コントロールマイコン80は、ユーザが指定した場所に対応する目標Track番号と、ピックアップ30で読み取った信号を復調したデータに含まれる現在Track番号とを比較し、目標Track番号に到達したか判断する(ステップS32)。目標Track番号に到達したと判断するとステップS33へ進み、そうでなければ、ステップS31へ戻り、本処理を繰り返す。
【0037】
ステップS33は、図6に示す曲開始アドレスUを算出する処理である。コントロールマイコン80は、信号処理回路70で復調したサブコードより読み取った現在の絶対アドレスTと相対アドレスSの差分から曲開始アドレスUを算出し、ステップS34へ進む。なお、ここまでの処理は、アクセス処理(イ)のステップS20からステップS23と同じである。
【0038】
ステップS34では、コントロールマイコン80が、曲開始アドレスUと信号処理回路70で復調したTOC情報より読み取ったリードアウト開始アドレスFを比較する。コントロールマイコン80は、曲開始アドレスUの値がリードアウト開始アドレスFの値以下と判断すると、目標絶対アドレスWを算出(ステップS35)する。そして、ステップS36へ進む。なお、リードアウト開始アドレスFは、データの最後であることを示すアドレスである。
【0039】
一方、コントロールマイコン80は、曲開始アドレスUの値がリードアウト開始アドレスFの値を超えていたら、現在の相対アドレスSは異常と判断し、目標絶対アドレスWを現在の絶対アドレスTに1秒分加算し(ステップS37)、ステップS301へ戻る。なお、加算する1秒は、一例であり適宜設定することが可能である。
【0040】
ステップS36では、コントロールマイコン80は、ユーザが指定した場所に対応する目標絶対アドレスWと、ピックアップ30で読み取った信号を信号処理回路70が復調したデータに含まれる現在アドレス番号とを比較し、目標絶対アドレスWに到達したかを判断する処理である。コントロールマイコン80は、目標絶対アドレスWに到達したと判断するとアクセス処理(ロ)を終了する。目標絶対アドレスWに到達していない場合は、ステップS35へ戻る。
【0041】
このように、本実施の形態によれば、コントロールマイコン80が曲開始アドレスUを算出し、信号処理回路70で復調したTOC情報から読み取ったリードアウト開始時間Fと比較するので、光ディスク10に記録された相対アドレスSが異常な値であることを検出できる。なお、本実施の形態では、リードアウト開始時間Fを用いてアドレスの異常を検出したが、アドレス前後の連続性を確認するなどでもよい。
【0042】
さらに、光ディスク10に記録された相対アドレスSが異常な値であっても、図3のステップS37の処理により、異常な値である相対アドレスS以外からアクセス処理を継続することができるので、目標絶対アドレスWへのアクセス可能性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、光ディスクなどに保持されたアドレス情報を用いて、ユーザが指定した場所へアクセスする光ディスク再生装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 光ディスク
20 スピンドルモータ
30 ピックアップ
40 RFアンプ
50 サーボコントローラ
60 ドライバ
70 信号処理回路
80 コントロールマイコン
100 光ディスク再生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに保持されるアドレスを用いて、ユーザが指定した目標アドレスへピックアップを移動させる光ディスク再生装置であって、
前記ピックアップがアクセスする位置を制御する制御信号を生成するサーボコントローラと、
前記ピックアップが現在アクセスしている場所から取得した現在アドレスが異常であると判断した際、前記ピックアップがアクセスする位置を所定量移動させる制御信号を前記サーボコントローラに生成させ、前記ピックアップが前記制御信号により移動した場所から取得した現在アドレスを用いて前記目標アドレスを算出し、前記目標アドレスへ前記ピックアップを移動させる制御信号を前記サーボコントローラに生成させるコントロールマイコンと、
を有する光ディスク再生装置。
【請求項2】
前記コントロールマイコンは、前記現在アドレスと前記光ディスクに保持されるデータの最後を示すリードアウト開始時間を比較し、異常であると判断することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−170934(P2011−170934A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35577(P2010−35577)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】