説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク装置において、データの信頼性を向上させる。
【解決手段】光ディスク10を内周エリアと外周エリアに分割し、内周エリアにデータ100を記録する際に、外周エリアにデータ100のバックアップデータ200を記録する。内周エリアのデータ100を読み出すことができない場合、外周エリアのバックアップデータ200を読み出す。また、バックアップデータ200で内周エリアのデータ100を上書きしてデータ100を修復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置、特にバックアップデータの記録に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスクに生じたディフェクトによりデータが読み出せないことを防止すべく、データを記録する際にバックアップデータをディスクの異なる位置に記録することが提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、バックアップデータを同一ディスクの所定回転角度、例えば180度の角度だけ離間した位置に記録することが開示されている。図6に、この従来技術によるバックアップデータの記録位置を示す。本来のデータ100に対し、180度だけ離間した位置にバックアップデータ200が記録される。バックデータ200を本来のデータ100からできるだけ離間させることで、本来のデータ消失時にバックアップデータ200も同時に消失してしまう事態を防止できるとしている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、一つのトラックを半分に分け、一方にはセクタA〜L、他方には冗長セクタAr〜Lrが記録されることが開示されている。冗長セクタは180度の位相差を有するとしている。
【0005】
【特許文献1】特開平4−178975号公報
【特許文献2】特許第2858528号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バックアップデータあるいは冗長トラックを180度の角度だけ離間した位置に形成する場合、本来であれば内周側から順にデータを記録すべきところ、これと異なる順序ないし位置にデータが記録されるため、既存のファイルシステムを変更する必要が生じる。
【0007】
本発明の目的は、既存のファイルシステムに影響を与えることなく、かつ、同一ディスクの異なる位置にバックアップデータを記録することでデータの信頼性を向上できる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光ディスクにデータを記録する際に、前記データと同一内容のバックアップデータを前記光ディスクの異なる位置に記録する光ディスク装置であって、前記光ディスクを少なくとも内周エリアと外周エリアに分割し、内周エリアに前記データを記録し、外周エリアに前記バックアップデータを記録する記録手段を有する。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記記録手段は、前記光ディスクのセクタ数をEとした場合に、前記データをセクタ番号n(n=1,2,・・・,E/2−1)に記録し、前記バックアップデータをセクタ番号n+E/2に記録する。
【0010】
また、本発明の他の実施形態では、前記内周エリアのデータが再生できない場合に、前記外周エリアのバックアップデータを再生する再生手段を有し、前記バックアップデータで前記内周エリアのデータを上書きすることで修復する修復手段を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内周側から順次データを記録するというファイルシステムに影響を与えることなく、かつ、データの信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。本実施形態の光ディスク装置は、データの信頼性が重視される医療画像の記録管理システム等に適用される。
【0013】
図1に、本実施形態における光ディスク装置の全体構成を示す。DVD―RWやDVD―RAM等の光ディスク10はスピンドルモータ(SPM)12により駆動される。スピンドルモータSPM12は、ドライバ14で駆動され、ドライバ14はサーボプロセッサ30により所望の回転速度となるようにサーボ制御される。
【0014】
光ピックアップ16は、レーザ光を光ディスク10に照射するためのレーザダイオード(LD)や光ディスク10からの反射光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタ(PD)を含み、光ディスク10に対向配置される。光ピックアップ16はステッピングモータで構成されるスレッドモータ18により光ディスク10の半径方向に駆動され、スレッドモータ18はドライバ20で駆動される。ドライバ20は、ドライバ14と同様にサーボプロセッサ30によりサーボ制御される。また、光ピックアップ16のLDはドライバ22により駆動され、ドライバ22は、オートパワーコントロール回路(APC)24により、駆動電流が所望の値となるように制御される。APC24及びドライバ22は、システムコントローラ32からの指令によりLDの発光量を制御する。図1ではドライバ22は光ピックアップ16と別個に設けられているが、ドライバ22を光ピックアップ16に搭載してもよい。
【0015】
光ディスク10に記録されたデータを再生する際には、光ピックアップ16のLDから再生パワーのレーザ光が照射され、その反射光がPDで電気信号に変換されて出力される。光ピックアップ16からの再生信号はRF回路26に供給される。RF回路26は、再生信号からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成し、サーボプロセッサ30に供給する。サーボプロセッサ30は、これらのエラー信号に基づいて光ピックアップ16をサーボ制御し、光ピックアップ16をオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持する。また、RF回路26は、再生信号に含まれるアドレス信号をアドレスデコード回路28に供給する。アドレスデコード回路28はアドレス信号から光ディスク10のアドレスデータを復調し、サーボプロセッサ30やシステムコントローラ32に供給する。また、RF回路26は、再生RF信号を2値化回路34に供給する。2値化回路34は、再生信号を2値化し、得られた信号をエンコード/デコード回路36に供給する。エンコード/デコード回路36では、2値化信号を復調及びエラー訂正して再生データを得、当該再生データをインタフェースI/F40を介してパーソナルコンピュータなどのホスト装置に出力する。なお、再生データをホスト装置に出力する際には、エンコード/デコード回路36はバッファメモリ38に再生データを一旦蓄積した後に出力する。
【0016】
光ディスク10にデータを記録する際には、ホスト装置からの記録すべきデータはインタフェースI/F40を介してエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、記録すべきデータをバッファメモリ38に格納し、当該記録すべきデータをエンコードして変調データとしてライトストラテジ回路42に供給する。ライトストラテジ回路42は、変調データを所定の記録ストラテジに従ってマルチパルス(パルストレーン)に変換し、記録データとしてドライバ22に供給する。記録ストラテジは記録品質に影響することから、データ記録に先立って最適化が行われる。記録データによりパワー変調されたレーザ光は光ピックアップ16のLDから照射されて光ディスク10にデータが記録される。データ記録時の記録パワーは、OPC(Optical Power Control)により光ディスク10の内周側に形成されたPCA(Power Calibration Area:パワー較正領域)を用いてテストデータを試し書きすることで最適化される。データを記録した後、光ピックアップ16は再生パワーのレーザ光を照射して当該記録データを再生し、RF回路26に供給する。RF回路26は再生信号を2値化回路34に供給し、2値化されたデータはエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、変調データをデコードし、バッファメモリ38に格納されている記録データと照合する。ベリファイの結果はシステムコントローラ32に供給される。システムコントローラ32はベリファイの結果に応じて引き続きデータを記録するか、あるいは交替処理を実行するかを決定する。システムコントローラ32は、システム全体の動作を制御し、サーボプロセッサ30を介してスレッドモータ18を駆動し、光ピックアップ16の位置を制御する。また、システムコントローラ32は、OPCを制御して記録パワーを最適化する。
【0017】
このような構成において、システムコントローラ32は、データを記録する際に、光ディスク10を内周エリアと外周エリアに2分割し、内周エリアにデータを記録するとともに、外周エリアにそのデータと同一内容のバックアップデータを記録する。具体的には、光ディスク10のセクタ単位にデータを記録する際に、最初のセクタ番号を1とし最後のセクタ番号をE、中央のセクタ番号をE/2とすると、セクタ1からセクタE/2−1までを通常使用するデータ記録領域として本来のデータを記録する。一方、セクタE/2からセクタEまでをバックアップデータ記録領域としてバックアップデータを記録する。例えば、セクタ100にデータを記録する際には、セクタ100にデータを記録した後に、セクタE/2+100にバックアップデータを記録する。
【0018】
図2に、本実施形態における光ディスク10のデータ記録方式を示す。内周エリアの特定セクタにデータ100を記録する際に、外周エリアの該当セクタにデータ100のバックアップデータ200を記録する。データ100のセクタとバックアップデータ200のセクタはE/2だけオフセットがある。データ100を内周エリア、バックアップデータ200を外周エリアに記録することで、光ディスク10のディフェクトによりデータ100とデータ200とが同時に消失する事態を防ぐことができる。
【0019】
このように、データ100を記録する際に、併せてE/2のオフセットを有するセクタにもバックアップデータ200を記録することで、データの二重化を図り信頼性を向上する。本実施形態では、バックアップデータ200はセクタE/2からセクタEまでの外周エリアのみに記録され、本来のデータ100は光ディスク10のセクタ1からセクタE/2―1までの内周エリアのみに順番に記録されるため、既存のファイルシステムに影響はない。すなわち、データ100を読み出す際には、従来通り内周側から順番に読み出せばよい。
【0020】
図3及び図4に、データ記録時の処理フローチャートを示す。図3は、データ記録前の準備段階の処理である。システムコントローラ32は、装着された光ディスク10のセクタ数を取得する(S101)。そして、半分のセクタを算出する(S102)。セクタ数をEとすると半分のセクタはE/2であり、データ100を記録するセクタは内周エリアのセクタ1〜セクタE/2−1であり、バックアップデータ200を記録するセクタは外周エリアのセクタE/2〜セクタEである。
【0021】
図4は、データ記録時の処理である。システムコントローラ32は、パソコン等のホスト装置からライトコマンドを受信すると、光ディスク10の記録済みセクタ(ライトセクタ)を取得する(S201)。そして、記録済みセクタ数が全セクタ数の半分以下であるか否かを判定する(S202)。記録済みセクタが全セクタ数の半分以下でない場合、データ100を記録すべきエリアがないと判定する。本実施形態では、光ディスク10の全セクタのうち、内周エリアにある半分のセクタを用いてデータ100を記録するからである。そして、記録済みセクタが半分以下である場合、内周エリアの未記録セクタにデータ100を記録する(S203)。データ100を記録した後、記録したデータ100を読み出してベリファイし、記録すべきデータと読み出したデータが一致するか否かを確認する(S204)。ベリファイの結果、両データが一致する場合にはデータ100の記録が正常に完了したことを意味するから、次に外周エリアの該当セクタ、すなわちデータ100を記録したセクタに対しE/2だけオフセットしたセクタにバックアップデータ200を記録する(S205)。バックアップデータ200も、本来のデータ100と同様にベリファイする(S206)。本来のデータ100あるいはバックアップデータ200のベリファイの結果、データが一致しない場合には、それぞれ所定の交替記録セクタに交替記録を行う(S207、S208)。
【0022】
図5に、データ再生時の処理フローチャートを示す。まず、システムコントローラ32は、ホスト装置からリードコマンドを受信してリードセクタを取得すると(S301)、内周エリアのセクタからデータ100を読み出す(S302)。データ100を読み出せた場合(S303でYES)にはホスト装置に読み出したデータ100を送信して処理を終了する。一方、光ディスク10に何らかのディフェクトが生じてデータ100を読み出すことができない場合(S303でNO)、システムコントローラ32は次にE/2だけオフセットした外周エリアのセクタを読み出す(S304)。すなわち、読み出すべきセクタがAである場合、セクタがA+E/2のセクタを読み出す。そして、バックアップデータ200を読み出すことができた場合(S305でYES)、当該バックアップデータ200をホスト装置に送信する。また、内周エリアのデータ100、つまりセクタAに記録されているデータ(読み出し不可のデータ)100をバックアップデータ200で上書きしてデータ100を修復する(S306)。一方、バックアップデータ200を読み出すことができない場合(S305でNO)、リードエラーとして処理を終了する。
【0023】
このように、本実施形態では、内周エリアにデータ100を記録し、外周エリアにバックアップデータ200を記録するように構成したので、データを二重化してデータの信頼性を向上することができる。また、既存のファイルシステムをそのまま用いることができ、データを再生する場合にも従来通り内周エリア側から順次読み出せばよい。また、本実施形態では、内周エリアのデータ100を読み出すことができず、外周エリアのバックアップデータ200を読み出すことができた場合に、内周エリアのデータ100をそのバックアップデータ200で修復することができるため、データ100の信頼性がさらに向上する。もちろん、内周エリアのデータ100を修復するためには、光ディスク10はDVD−RWやDVD−RAM等の書き換え可能な光ディスクが前提となる。
【0024】
本実施形態において、光ディスク10を内周エリアと外周エリアに2分割し、外周エリアをバックアップデータ200の記録領域としているが、特に重要なデータであって信頼性が重視される場合には、光ディスク10を内周エリア、中周エリア、外周エリアに3分割し、中周エリア及び外周エリアをバックアップデータ200の記録領域としてデータを3重化することもできる。
【0025】
また、本実施形態では、内周エリアのデータ100を読み出せず、外周エリアのバックアップデータ200を読み出すことができた場合に、当該バックアップデータ200で内周エリアのデータ100を修復しているが、修復するか否かをユーザが選択できるように構成してもよい。
【0026】
また、本実施形態では、内周エリアのデータ記録、及び外周エリアのバックアップデータ記録のいずれにおいてもベリファイを実行しているが、内周エリアのデータ記録のみベリファイを実施し、外周エリアのバックアップデータ記録ではベリファイを実行しないことも可能である。
【0027】
また、本実施形態では、内周エリアのデータをベリファイした結果、記録すべきデータと読み出したデータとが一致しない場合に所定の交替記録セクタに交替記録しているが、交替記録することなく、外周エリアにバックアップデータ200を記録してもよい。
【0028】
また、本実施形態では、図5のS303で内周セクタのデータ100を読み出すことができたか否かを判定しているが、この判定を所定のリトライ回数だけ繰り返してもよい。但し、本実施形態では外周エリアにバックアップデータ200が記録されているため、このリトライ回数は従来より低減することができる。例えば、通常、データ再生時においてリトライ回数を3回としているところ、本実施形態では1回あるいは2回に低減することができる。もちろん、リトライを実行しないことも可能であり、リトライを実行しないことで迅速なデータ再生が可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、内周エリアと外周エリアに2分割する場合に、内周エリアをセクタ1〜セクタE/2−1、外周エリアをセクタE/2〜セクタEとしているが、例えば内周エリアをセクタ1〜セクタ3E/5−1、外周エリアを3E/5〜セクタEとして、データ記録領域をバックアップデータ領域よりも大きく設定してもよい。この場合、データ100のうち特に重要なデータであって、バックアップデータ200を同時に記録すべきデータを選択しておく。そして、選択したデータのみ外周エリアにバックアップデータ200を記録し、選択されなかったデータはバックアップデータ200を記録しない。これにより、少ないバックアップデータ領域を有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態の構成ブロック図である。
【図2】実施形態のデータとバックアップデータの関係を示す説明図である。
【図3】実施形態の処理フローチャート(その1)である。
【図4】実施形態の処理フローチャート(その2)である。
【図5】実施形態の処理フローチャート(その3)である。
【図6】従来技術のデータとバックアップデータの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 光ディスク、32 システムコントローラ、100 データ、200 バックアップデータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにデータを記録する際に、前記データと同一内容のバックアップデータを前記光ディスクの異なる位置に記録する光ディスク装置であって、
前記光ディスクを少なくとも内周エリアと外周エリアに分割し、内周エリアに前記データを記録し、外周エリアに前記バックアップデータを記録する記録手段
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記記録手段は、前記光ディスクのセクタ数をEとした場合に、前記データをセクタ番号n(n=1,2,・・・,E/2−1)に記録し、前記バックアップデータをセクタ番号n+E/2に記録することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記内周エリアのデータが再生できない場合に、前記外周エリアのバックアップデータを再生する再生手段
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記バックアップデータで前記内周エリアのデータを上書きすることで修復する修復手段
を有することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−55663(P2010−55663A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217241(P2008−217241)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】