光ピックアップ装置に搭載されるBD用対物レンズ
【課題】光スポット径を確保しつつ、レンズ面全体の透過率が高く、レンズ中央部とレンズ外周部の両方の透過率を確保する事で、ジッターや信号振幅が十分に確保されたBD用対物レンズを提供する。
【解決手段】BD用対物レンズのレーザー入射側レンズ面には60度以上の接線角が存在し、レーザー入射側レンズ面には反射防止膜が設けられ、反射防止膜は、レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射するときに、波長400〜420nmの範囲内の波長において光の反射率の第一の極小値を示し、更に、波長420nmよりも長波長側の波長556〜712nmの範囲内において光の反射率の第二の極小値を示す。
【解決手段】BD用対物レンズのレーザー入射側レンズ面には60度以上の接線角が存在し、レーザー入射側レンズ面には反射防止膜が設けられ、反射防止膜は、レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射するときに、波長400〜420nmの範囲内の波長において光の反射率の第一の極小値を示し、更に、波長420nmよりも長波長側の波長556〜712nmの範囲内において光の反射率の第二の極小値を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体への情報の記録と、光記録媒体に記録された情報の記録と再生との少なくとも一方を行える適切な反射防止膜が施された光ピックアップ用対物レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体への情報の記録や、光記録媒体に記録された情報の再生を行う光ピックアップ装置が知られている。光ピックアップ装置においては半導体レーザーから出た光を対物レンズにより集光することで、光記録媒体に対する情報の記録・再生を行う。
【0003】
近年では情報の記録容量の増大の為に、青紫色レーザーを使った記録容量25GBの高密度光ディスク、いわゆるブルーレイディスク(Blu−ray disc:登録商標)が開発されている。また、コスト削減のためにプラスチック材料によるBD用対物レンズの開発が行われている。
【0004】
光記録媒体に対する情報の記録・再生を行う場合にはBD用対物レンズの波面収差の他に、透過率、光利用効率の問題がある。特に情報の記録を行う場合にはハイパワーの光検出が重要になっており、信号レベルを確保する事が重要な課題の一つとなっている。
【0005】
これら、透過率、光利用効率、信号レベルの問題を解決する為の手段として、BD用対物レンズ面に反射防止膜を施している事が多い。
【0006】
開口数NA0.84のような高NAレンズで反射防止膜を設けない場合には、透過率は87%程度になる。また、一般的にBD用対物レンズは中央部から周辺部へ行くほど、光の入射角が大きくなる。例えばNA0.85のBD用対物レンズでは周辺部の接線角は60度以上になる場合もある。その為、レンズの中央部に比べ外周部での透過率は低くなる。
また、高いNAレンズを集光するために、BD用対物レンズには高い屈折率を持つ材料が使用されている。
【0007】
光が面に垂直に入射した場合の光の反射率は(式1)で示される通りであり、高い屈折率を持った材料では光の反射率が大きくなる為、更に透過率の条件が厳しくなる。
【数1】
【0008】
以上の事から、近年の高NAレンズではBD用対物レンズを透過する光が減る傾向にあり、さらに接線角が大きい為、レンズの中央部に比べ、外周部で著しく透過率が低いレンズとなる。透過率の低いレンズでは、光利用効率が低くなり、必要な光強度を得る事が出来ない。また、外周部の透過率が低いレンズではスポット径が大きくなり、情報記録層にある記録面の情報が読み取れなくなる原因となる。
【0009】
以上のような問題を解決するため、特許文献1では、BD用対物レンズの周辺部が高くなるように厚さを設定した反射防止膜が提案されている。これはレンズの中央部の透過率を犠牲にする事により外周部の透過率を上げて、スポットサイズを良好にするというものである。
【0010】
すなわち、特許文献1では、低屈折率材料と高屈折率材料の2層の構成とし、同文献の図5に示すように、高屈折率材料として酸化セリウム(1層目)、低屈折率材料として酸化シリコン(2層目)のそれぞれの膜厚を変化させることにより、垂直(角度0度)で入射・出射する光の反射率を極小とする波長λを変化させている。(同文献の図5、明細書[0161]の記載参照。)
【0011】
したがって、特許文献1においては、反射防止膜の反射率の極小値は、たとえば波長350〜800nmの範囲の帯域においていずれか一つの波長において存在することができるに過ぎず、極小値を2つ以上持つことはありえない。したがって、特許文献1においては極小値を一つしかとり得ないために、極小値を中央部でなく外周部にシフトさせて外周部の透過率を上げるようにするのであるが、そのため、中央部の透過率は下がるので、スポットのパワー強度にばらつきが起こり、ジッターや信号レベルの低下を招き、情報の記録・再生に影響が起こっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005-11494号公報
【特許文献2】特開2001−100008号公報
【特許文献3】特開2000−147209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、光スポット径を確保しつつ、レンズ面全体の透過率が高く、レンズ中央部とレンズ外周部の両方の透過率を確保する事で、ジッターや信号振幅が十分に確保されたBD用対物レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するため、本発明のBD用対物レンズは、波長400〜420nmの範囲内の波長のレーザー光源から出た単色のレーザー光を、光記録媒体上に集光することにより、前記光記録媒体への情報の記録、または、前記光記録媒体からの情報の再生を行う光ピックアップ装置に搭載されるBD用対物レンズであって、前記BD用対物レンズのレーザー入射側レンズ面には60度以上の接線角が存在し、前記レーザー入射側レンズ面には反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、前記レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射するときに、波長400〜420nmの範囲内の波長において光の反射率の第一の極小値を示し、更に、波長420nmよりも長波長側の波長において光の反射率の第二の極小値を示すことを特徴とする。
【0015】
本発明では、レーザー入射側レンズ面において、レンズ面の中心部に光が垂直に入射する光と平行な光線と、レーザー入射側レンズ面のなす角度(接線角)が、レンズ面の非球面の存在する範囲の中で、60度以上となる角度が存在するBD用対物レンズに適用すると、発明の効果が特に有効に発揮される。0.84以上の高NAレンズにおいて透過率の確保が難しくなる理由として、レーザー入射側レンズ面において、レンズ面の中心部に光が垂直に入射する光と平行な光線と、レーザー入射側レンズ面のなす角度が大きくなる事が原因としてあげられるからである。
【0016】
本発明では、このようなBD用対物レンズに対して適切な透過率を確保するようになっており、レーザー入射側レンズ面において、レンズ面の中心部に光が垂直に入射する光と平行な光線と、レーザー入射側レンズ面のなす角度が、レンズ面の非球面の存在する範囲の中で、60度以上、さらには63度以上、となる角度が存在している場合に有効である。
【0017】
レーザー入射側レンズ面とは光がレーザーから発した時に、レーザーからの光がBD用対物レンズ面を最初に通るレンズ面の事である。以下、この面を対物レンズ第一面とも呼ぶこととする。
【0018】
この対物レンズ第一面はレーザーの光がレンズ面に対して垂直になるように取り付けられる。従って、対物レンズ第一面の中心部には光は垂直に通る事になる。このように光とレンズ面が垂直に交わるような光に関しての反射率の波長依存性を表した図をここでは分光特性の反射率と呼ぶ事とする。
【0019】
従って分光特性の反射率が波長400〜420nmの範囲内に極小値を示した時、BD用対物レンズの中心部の反射率は極小の値を示し、逆に言えば透過率が高いレンズとする事が可能となる。
【0020】
更にBD用対物レンズ等に使われる高NAレンズでは、レンズ面の中心部から離れたレンズ形状は、レンズ面に対する光の入射角度が垂直ではなく角度を持つことになる。レンズ面に対し角度を持った光はレンズ面に垂直に入射する光に比べ透過率が下がる。反射防止膜をつけていないBD用対物レンズの透過率と相対瞳座標の関係を図1に示す。
【0021】
なお、図1は後に出てくる実施の形態1に示したレンズ面形状での透過率である。このように高いNAレンズにおいては外周部の透過率が下がりやすい為、レンズ中央部の透過率をいくら高くしても周辺部の透過率を犠牲にした反射防止膜ではレンズ面全体での透過率を上げる事は出来ない。
【0022】
ところで、反射防止膜においては、入射角が大きい所の反射率は長波長側にシフトされる事が知られている。そこで波長420nmよりも長波長側に極小値を示すような反射防止膜構成としておく。
【0023】
この事により、中央部の透過率を確保した上で、周辺部の透過率も十分に上げる事が出来、レンズ面全体の透過率が上がる事になる。また、レンズ中心部から周辺部にかけての透過率を確保できるので、ジッターや信号振幅も良好に確保する事が出来る。
【0024】
また、レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射する時、波長400〜420nmに位置する光の反射率の第一の極小値が、420nmよりも長波長側に位置する光の反射率の第二の極小値よりも小さくなるように膜構成と膜厚が設定されていることが望ましい。
【0025】
レンズ中心部の透過率をコントロールしている波長400〜420nmの透過率が、周辺部をコントロールしている外周部の透過率よりも低くなると、レンズ中心部の透過率が確保しにくくなるからである。
【0026】
420nmよりも長波長側に位置する反射率の第二の極小値は、波長556〜712nmの範囲内にある事が望ましい。
【0027】
更に、レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射する時、光の反射率が波長350〜800nmの範囲内に極小値を2つ以上持つ事ができ、2つのみである必要はない。
【0028】
波長400〜420nmの範囲内の波長と波長556〜712nmの範囲内の波長に極小値があれば透過率は確保されるのであって、その他の波長に極小値が存在する場合もある。
【0029】
レーザー入射側レンズ面にある反射防止膜は異なる3種類以下の材料からなっており、3層から成り立っている事がより好ましい。
【0030】
反射防止膜の層数が多くなると、膜厚が厚くなりがちになり、膜割れを起こしやすくなる。また、膜の層数が多くなると、製造誤差が起こりやすくなり、製造が難しくなる。一方で、分光特性の反射率の極小値は、反射防止膜の層数が多くなると設計がしやすくなるメリットがある。このような状況から、反射防止膜の層数は3層である事がより好ましい。
【0031】
さらに、本発明は屈折率が1.53以下のBD用対物レンズに適用する場合により効果が発揮されやすい。
【0032】
屈折率が低いBD用対物レンズにおいて、レンズ面形状を決めた際には接線角が大きくなる。反射防止膜においては接線角が大きくなると、反射率が高くなる為、設計が困難になる為である。
【0033】
本発明では、入射側レンズ面の反射防止膜がレーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射するときに、光の反射率が波長400〜420nmの範囲内に第一の極小値を示し、更に、波長420nmよりも長波長側に第二の極小値を示すとともに、BD用対物レンズのレーザー射出側にも、 レンズ面の中心部における光の反射率の唯一の極小値が400nm〜500nmにある 反射防止膜を設ける事により、BD用対物レンズの光が当たる領域(有効径)での透過率が91%以上とすることができ、スポット径も0.4μm以下とすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光スポット径を確保しつつ、透過率が高く、製造が容易なBD用対物レンズを設計する事が出来る。また、スポットの形状が崩れる事がない為、ジッターや、信号レベルを良好にする事が出来、情報の記録・再生が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、実施の形態1に示したレンズ面形状で、反射防止膜がない場合の透過率を示した図である。
【図2】図2は、ブルーレイディスク(BD)7に対して適切に情報の記録、再生をおこなえる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、レンズ有効径φ2.4mmの時の光ピックアップ対物レンズの例であり、
【図4】図4は、実施例1にかかる反射防止膜の膜厚を示した図である。各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【図5】図5は、実施例1にかかるレーザー入社側面(レンズ第一面)の分光特性の図である。
【図6】図6は、実施例1にかかるレーザー射出側面(レンズ第二面)の分光特性の図である。
【図7】図7は、実施例1にかかるレンズ面全体の透過率分布に関する図である。
【図8】図8は、図3とはレンズの大きさが異なり、レンズ有効径φ2.0mmの時の光ピックアップ対物レンズの例となっている。
【図9】図9は、実施例2にかかる反射防止膜の膜厚を示した図である。各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【図10】図10は、実施例2にかかるレーザー入射側面(レンズ第一面)の分光特性の図である。
【図11】図11は、実施例2にかかるレーザー射出側面(レンズ第二面)の分光特性の図である。
【図12】図12は、実施例2にかかるレンズ面全体の透過率分布に関する図である。
【図13】図13は、例えば、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の例である。
【図14】図14は、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の実施の形態3のレンズの第一面の輪帯番号NO1〜5までを分割して示す図である。
【図15】図15は、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の実施の形態3の図14と同一のレンズの第一面の輪帯番号NO6〜9までを分割して示す図である。
【図16】図16は、例えば、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の第二面を示す図である。
【図17】図17は実施例3にかかる反射防止膜の膜厚を示した図である。各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【図18】図18は、実施例3にかかるレーザー入射側面(レンズ第一面)の分光特性の図である。
【図19】図19は、実施例3にかかるレーザー射出側面(レンズ第二面)の分光特性の図である。
【図20】図20は、実施例3にかかるレンズ面全体の透過率分布に関する図である。
【図21】図21は実施例4にかかる反射防止膜の膜厚を示した図である。各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【図22】図22は、実施例4にかかるレーザー入射側面(レンズ第一面)の分光特性の図である。
【図23】図23は、実施例4にかかるレーザー射出側面(レンズ第二面)の分光特性の図である。
【図24】図24は、実施例4にかかるレンズ面全体の透過率分布に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の光学レンズは、光情報媒体への記録や、再生に使用されるものであって、光ピックアップ装置(光情報記録再生装置)のBD用対物レンズとして使用されているものである。
【0037】
図2に、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置の概略図を示す。なお本発明で使用される光ピックアップ装置はこれに限ったものではない。
【0038】
図2は、ブルーレイディスク(BD)7に対して適切に情報の記録、再生を行える本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、光情報記録再生装置に搭載できる。
【0039】
光ピックアップ装置PU1は、ブルーレイディスク(BD)7に対して情報の記録再生を行う場合に使用され380nm以上のレーザー光束を発光する。レーザー光の光路上にビームスプリッタ2が設けられている。ビームスプリッタ2及び1/4波長板3を透過することにより、レーザー光は円偏光に変換される。
【0040】
1/4波長板3から出射されたレーザー光の光路上にカップリングレンズ4が設けられている。カップリングレンズ4は、プラスチック素材またはガラス素材から形成され、カップリングレンズ4がアクチュエータにより光軸方向を動く事でレーザー光が平行光となり、絞り5を通過した後、光ピックアップ対物レンズ6に入射される。
【0041】
この光ピックアップ対物レンズ6は、情報の記録や再生に必要な光量を確保するため、少なくとも光入射側面の1面、または光入射側面と光射出側面の両面に反射防止膜が設定されている。
【0042】
この光ピックアップ対物レンズ6を透過した光は情報記録面に入射する事になる。情報記録面を反射した光は再び光ピックアップ対物レンズ6を介して光検出器8に入射し、検出される。光検出器8は、当該レーザー光を検出し、光電変換して出力信号を出力する。そして、光検出器8の出力信号に基づいて、フォーカスエラー信号、トラックエラー信号、再生信号などを生成する。また、当該フォーカスエラー信号、トラックエラー信号、再生信号などを用いて、ブルーレイディスク(BD)7に対する情報の記録及び/又は再生を行う。
【0043】
ところで、光ピックアップ対物レンズ6は情報記録量を大きくするようスポットサイズは0.39μm程度となっている。これを実現するためにはNAが0.85となるよう設定されているレンズとなっている。これらの光ピックアップ対物レンズ6の一例を図3と図8と図13に示す。
【0044】
[実施の形態1]
図3は、レンズ有効径φ2.4mmの時の光ピックアップ対物レンズ6の例であり、中心厚、輪帯9の幅、輪帯9の段差量、非球面係数、曲率を示している。また、Zjは非球面形状、hは光軸からの光線の高さ、Cは曲率、Kはコーニック係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16はそれぞれ、4次から16次までの非球面係数である。なお、C=1/R(Rは曲率半径)である。これらの式は数式(2)で示した式により規定されている。
【数2】
【0045】
[実施の形態2]
図8は、図3とはレンズの大きさが異なり、レンズ有効径φ2.0mmの時の光ピックアップ対物レンズ6の例となっており、中心厚、輪帯9の幅、輪帯9の段差量、非球面係数、曲率を示している。また、Zjは非球面形状、hは光軸からの光線の高さ、Cは曲率、Kはコーニック係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16はそれぞれ、4次から16次までの非球面係数である。なお、C=1/R(Rは曲率半径)である。これらの式は数式(2)で示した式により規定されている。
【0046】
[実施の形態3]
図13〜16は、例えば、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の例であり、中心厚、輪帯9の幅、輪帯9の段差量、非球面係数、曲率を示している。また、Zjは非球面形状、hは光軸からの光線の高さ、Cは曲率、Kはコーニック係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16はそれぞれ、4次から16次までの非球面係数である。なお、C=1/R(Rは曲率半径)である。これらの式は数式(2)で示した式により規定されている。図14は、第一面の輪帯NO1〜5を示し、図15は、第一面の輪帯NO6〜9を示し、図16は、第二面をしている。
【0047】
ここで、本発明は、図3、図8、図13に示されるプラスチックレンズに限定されるものではない。本発明は、例えば近年開発されている多層用ディスク対応の光ピックアップ対物レンズや、2波長対応レンズ、更には3波長対応レンズにも適用可能である。
【0048】
さらに、反射防止膜は、例えば、真空蒸着法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法(特許文献2、特許文献3等を参照。)などの、従来から周知の反射防止膜の製膜方法により、積層状に製膜することができる。
【0049】
また、反射防止膜に用いられる高屈折率材料としては、例えば、酸化セリウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニューム、酸化アルミニューム、窒化シリコン、酸素含有窒化シリコンなどが挙げられる。反射防止膜に用いられる低屈折率材料としては、例えば、酸化シリコン、フッ化マグネシュームなどが挙げられる。
【0050】
本発明の反射防止膜は、上述の高屈折率材料、低屈折率材料のうちの一種類から構成されていても良いし、複数の種類の材料を混合して構成されていても良い。
【実施例1】
【0051】
図4に、本発明の実施例1の光ピックアップ対物レンズ6の反射防止膜の膜厚を示す。光ピックアップ対物レンズ6の形状は図2で示される物を使用している。反射防止膜の各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【0052】
図5はレーザー入射側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図である。分光特性の最小の極小値は415nmの位置にあり、第二に小さい極小値は590nmの位置にある。
【0053】
また、図6はレーザー射出側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図となっている。極小値は443nmの位置にあり極小値は1つしか存在していない。
【0054】
この時のスポット径は0.3816μmであり、レンズの光が当たる領域(有効径)での透過率は91.64%である。レンズ面全体の透過率は図6に示すとおりであり、レンズ中央部の透過率は98.19%となっており、レンズ中心部の透過率を犠牲にすることなく、スポット径を確保したレンズとなっている事が分かる。よって、中心部の透過率を犠牲とすることなく周辺部の透過率も確保されているので、適切なスポット径を確保し、良好なジッターと信号レベルを得る事が出来る。
【実施例2】
【0055】
図9に、本発明の実施例2の光ピックアップ対物レンズ6の反射防止膜の膜厚を示す。光ピックアップ対物レンズ6の形状は図8で示される物を使用している。反射防止膜の各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【0056】
図10は、レーザー入射側レンズ面の光軸の対する分光特性を表した図である。分光特性の最小の極小値は413nmの位置にあり、第二に小さい極小値は579nmの位置にある。
【0057】
また、図11はレーザー射出側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図となっている。極小値は401nmの位置にあり極小値は1つしか存在していない。
【0058】
この時のスポット径は0.3974μmであり、光ピックアップ対物レンズ6の光が当たる領域(有効径)での透過率は91.96%である。レンズ面全体の透過率は図12に示すとおりであり、レンズ中央部の透過率は98.88%となっており、レンズ中心部の透過率を犠牲にすることなく、スポット径を確保したレンズとなっている事が分かる。よって、中心部の透過率を犠牲とすることなく周辺部の透過率も確保されているので、適切なスポット径を確保し、良好なジッターと信号レベルを得る事が出来る。
【実施例3】
【0059】
図17に、本発明の実施例3の光ピックアップ対物レンズ6の反射防止膜の膜厚を示す。光ピックアップ対物レンズ6の形状は図13で示される物を使用している。反射防止膜の各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【0060】
図18はレーザー入射側レンズ面の光軸の対する分光特性を表した図である。分光特性の最小の極小値は414nmの位置にあり、第二に小さい極小値は556nmの位置にある。また、図19はレーザー射出側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図となっている。極小値は416nmの位置にあり極小値は1つしか存在していない。
【0061】
この時のスポット径は0.39448μmであり、光ピックアップ対物レンズ6の光が当たる領域(有効径)での透過率は92.07%である。レンズ面全体の透過率は図20に示すとおりであり、レンズ中央部の透過率は98.56%となっており、レンズ中心部の透過率を犠牲にすることなく、スポット径を確保したレンズとなっている事が分かる。よって、中心部の透過率を犠牲とすることなく周辺部の透過率も確保されているので、適切なスポット径を確保し、良好なジッターと信号レベルを得る事が出来る。
【実施例4】
【0062】
図21に、本発明の実施例4の光ピックアップ対物レンズ6の反射防止膜の膜厚を示す。光ピックアップ対物レンズ6の形状は図3で示される物を使用している。反射防止膜の各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【0063】
図22は、レーザー入射側レンズ面の光軸の対する分光特性を表した図である。分光特性の最小の極小値は405nmの位置にあり、第二に小さい極小値は712nmの位置にある。
【0064】
また、図23は、レーザー射出側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図となっている。極小値は440nmの位置にあり極小値は1つしか存在していない。
【0065】
この時のスポット径は0.39624μmであり、光ピックアップ対物レンズ6の光が当たる領域(有効径)での透過率は91.41%である。レンズ面全体の透過率は図24に示すとおりであり、レンズ中央部の透過率は97.80%となっており、レンズ中心部の透過率を犠牲にすることなく、スポット径を確保したレンズとなっている事が分かる。よって、中心部の透過率を犠牲とすることなく周辺部の透過率も確保されているので、適切なスポット径を確保し、良好なジッターと信号レベルを得る事が出来る。
【符号の説明】
【0066】
1 光ピックアップ装置PU
2 ビームスプリッタ
3 1/4波長板
4 カップリングレンズ
5 絞り
6 光ピックアップ対物レンズ
7 ブルーレイディスク(BD)
8 光検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体への情報の記録と、光記録媒体に記録された情報の記録と再生との少なくとも一方を行える適切な反射防止膜が施された光ピックアップ用対物レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体への情報の記録や、光記録媒体に記録された情報の再生を行う光ピックアップ装置が知られている。光ピックアップ装置においては半導体レーザーから出た光を対物レンズにより集光することで、光記録媒体に対する情報の記録・再生を行う。
【0003】
近年では情報の記録容量の増大の為に、青紫色レーザーを使った記録容量25GBの高密度光ディスク、いわゆるブルーレイディスク(Blu−ray disc:登録商標)が開発されている。また、コスト削減のためにプラスチック材料によるBD用対物レンズの開発が行われている。
【0004】
光記録媒体に対する情報の記録・再生を行う場合にはBD用対物レンズの波面収差の他に、透過率、光利用効率の問題がある。特に情報の記録を行う場合にはハイパワーの光検出が重要になっており、信号レベルを確保する事が重要な課題の一つとなっている。
【0005】
これら、透過率、光利用効率、信号レベルの問題を解決する為の手段として、BD用対物レンズ面に反射防止膜を施している事が多い。
【0006】
開口数NA0.84のような高NAレンズで反射防止膜を設けない場合には、透過率は87%程度になる。また、一般的にBD用対物レンズは中央部から周辺部へ行くほど、光の入射角が大きくなる。例えばNA0.85のBD用対物レンズでは周辺部の接線角は60度以上になる場合もある。その為、レンズの中央部に比べ外周部での透過率は低くなる。
また、高いNAレンズを集光するために、BD用対物レンズには高い屈折率を持つ材料が使用されている。
【0007】
光が面に垂直に入射した場合の光の反射率は(式1)で示される通りであり、高い屈折率を持った材料では光の反射率が大きくなる為、更に透過率の条件が厳しくなる。
【数1】
【0008】
以上の事から、近年の高NAレンズではBD用対物レンズを透過する光が減る傾向にあり、さらに接線角が大きい為、レンズの中央部に比べ、外周部で著しく透過率が低いレンズとなる。透過率の低いレンズでは、光利用効率が低くなり、必要な光強度を得る事が出来ない。また、外周部の透過率が低いレンズではスポット径が大きくなり、情報記録層にある記録面の情報が読み取れなくなる原因となる。
【0009】
以上のような問題を解決するため、特許文献1では、BD用対物レンズの周辺部が高くなるように厚さを設定した反射防止膜が提案されている。これはレンズの中央部の透過率を犠牲にする事により外周部の透過率を上げて、スポットサイズを良好にするというものである。
【0010】
すなわち、特許文献1では、低屈折率材料と高屈折率材料の2層の構成とし、同文献の図5に示すように、高屈折率材料として酸化セリウム(1層目)、低屈折率材料として酸化シリコン(2層目)のそれぞれの膜厚を変化させることにより、垂直(角度0度)で入射・出射する光の反射率を極小とする波長λを変化させている。(同文献の図5、明細書[0161]の記載参照。)
【0011】
したがって、特許文献1においては、反射防止膜の反射率の極小値は、たとえば波長350〜800nmの範囲の帯域においていずれか一つの波長において存在することができるに過ぎず、極小値を2つ以上持つことはありえない。したがって、特許文献1においては極小値を一つしかとり得ないために、極小値を中央部でなく外周部にシフトさせて外周部の透過率を上げるようにするのであるが、そのため、中央部の透過率は下がるので、スポットのパワー強度にばらつきが起こり、ジッターや信号レベルの低下を招き、情報の記録・再生に影響が起こっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005-11494号公報
【特許文献2】特開2001−100008号公報
【特許文献3】特開2000−147209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、光スポット径を確保しつつ、レンズ面全体の透過率が高く、レンズ中央部とレンズ外周部の両方の透過率を確保する事で、ジッターや信号振幅が十分に確保されたBD用対物レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するため、本発明のBD用対物レンズは、波長400〜420nmの範囲内の波長のレーザー光源から出た単色のレーザー光を、光記録媒体上に集光することにより、前記光記録媒体への情報の記録、または、前記光記録媒体からの情報の再生を行う光ピックアップ装置に搭載されるBD用対物レンズであって、前記BD用対物レンズのレーザー入射側レンズ面には60度以上の接線角が存在し、前記レーザー入射側レンズ面には反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、前記レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射するときに、波長400〜420nmの範囲内の波長において光の反射率の第一の極小値を示し、更に、波長420nmよりも長波長側の波長において光の反射率の第二の極小値を示すことを特徴とする。
【0015】
本発明では、レーザー入射側レンズ面において、レンズ面の中心部に光が垂直に入射する光と平行な光線と、レーザー入射側レンズ面のなす角度(接線角)が、レンズ面の非球面の存在する範囲の中で、60度以上となる角度が存在するBD用対物レンズに適用すると、発明の効果が特に有効に発揮される。0.84以上の高NAレンズにおいて透過率の確保が難しくなる理由として、レーザー入射側レンズ面において、レンズ面の中心部に光が垂直に入射する光と平行な光線と、レーザー入射側レンズ面のなす角度が大きくなる事が原因としてあげられるからである。
【0016】
本発明では、このようなBD用対物レンズに対して適切な透過率を確保するようになっており、レーザー入射側レンズ面において、レンズ面の中心部に光が垂直に入射する光と平行な光線と、レーザー入射側レンズ面のなす角度が、レンズ面の非球面の存在する範囲の中で、60度以上、さらには63度以上、となる角度が存在している場合に有効である。
【0017】
レーザー入射側レンズ面とは光がレーザーから発した時に、レーザーからの光がBD用対物レンズ面を最初に通るレンズ面の事である。以下、この面を対物レンズ第一面とも呼ぶこととする。
【0018】
この対物レンズ第一面はレーザーの光がレンズ面に対して垂直になるように取り付けられる。従って、対物レンズ第一面の中心部には光は垂直に通る事になる。このように光とレンズ面が垂直に交わるような光に関しての反射率の波長依存性を表した図をここでは分光特性の反射率と呼ぶ事とする。
【0019】
従って分光特性の反射率が波長400〜420nmの範囲内に極小値を示した時、BD用対物レンズの中心部の反射率は極小の値を示し、逆に言えば透過率が高いレンズとする事が可能となる。
【0020】
更にBD用対物レンズ等に使われる高NAレンズでは、レンズ面の中心部から離れたレンズ形状は、レンズ面に対する光の入射角度が垂直ではなく角度を持つことになる。レンズ面に対し角度を持った光はレンズ面に垂直に入射する光に比べ透過率が下がる。反射防止膜をつけていないBD用対物レンズの透過率と相対瞳座標の関係を図1に示す。
【0021】
なお、図1は後に出てくる実施の形態1に示したレンズ面形状での透過率である。このように高いNAレンズにおいては外周部の透過率が下がりやすい為、レンズ中央部の透過率をいくら高くしても周辺部の透過率を犠牲にした反射防止膜ではレンズ面全体での透過率を上げる事は出来ない。
【0022】
ところで、反射防止膜においては、入射角が大きい所の反射率は長波長側にシフトされる事が知られている。そこで波長420nmよりも長波長側に極小値を示すような反射防止膜構成としておく。
【0023】
この事により、中央部の透過率を確保した上で、周辺部の透過率も十分に上げる事が出来、レンズ面全体の透過率が上がる事になる。また、レンズ中心部から周辺部にかけての透過率を確保できるので、ジッターや信号振幅も良好に確保する事が出来る。
【0024】
また、レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射する時、波長400〜420nmに位置する光の反射率の第一の極小値が、420nmよりも長波長側に位置する光の反射率の第二の極小値よりも小さくなるように膜構成と膜厚が設定されていることが望ましい。
【0025】
レンズ中心部の透過率をコントロールしている波長400〜420nmの透過率が、周辺部をコントロールしている外周部の透過率よりも低くなると、レンズ中心部の透過率が確保しにくくなるからである。
【0026】
420nmよりも長波長側に位置する反射率の第二の極小値は、波長556〜712nmの範囲内にある事が望ましい。
【0027】
更に、レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射する時、光の反射率が波長350〜800nmの範囲内に極小値を2つ以上持つ事ができ、2つのみである必要はない。
【0028】
波長400〜420nmの範囲内の波長と波長556〜712nmの範囲内の波長に極小値があれば透過率は確保されるのであって、その他の波長に極小値が存在する場合もある。
【0029】
レーザー入射側レンズ面にある反射防止膜は異なる3種類以下の材料からなっており、3層から成り立っている事がより好ましい。
【0030】
反射防止膜の層数が多くなると、膜厚が厚くなりがちになり、膜割れを起こしやすくなる。また、膜の層数が多くなると、製造誤差が起こりやすくなり、製造が難しくなる。一方で、分光特性の反射率の極小値は、反射防止膜の層数が多くなると設計がしやすくなるメリットがある。このような状況から、反射防止膜の層数は3層である事がより好ましい。
【0031】
さらに、本発明は屈折率が1.53以下のBD用対物レンズに適用する場合により効果が発揮されやすい。
【0032】
屈折率が低いBD用対物レンズにおいて、レンズ面形状を決めた際には接線角が大きくなる。反射防止膜においては接線角が大きくなると、反射率が高くなる為、設計が困難になる為である。
【0033】
本発明では、入射側レンズ面の反射防止膜がレーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射するときに、光の反射率が波長400〜420nmの範囲内に第一の極小値を示し、更に、波長420nmよりも長波長側に第二の極小値を示すとともに、BD用対物レンズのレーザー射出側にも、 レンズ面の中心部における光の反射率の唯一の極小値が400nm〜500nmにある 反射防止膜を設ける事により、BD用対物レンズの光が当たる領域(有効径)での透過率が91%以上とすることができ、スポット径も0.4μm以下とすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光スポット径を確保しつつ、透過率が高く、製造が容易なBD用対物レンズを設計する事が出来る。また、スポットの形状が崩れる事がない為、ジッターや、信号レベルを良好にする事が出来、情報の記録・再生が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、実施の形態1に示したレンズ面形状で、反射防止膜がない場合の透過率を示した図である。
【図2】図2は、ブルーレイディスク(BD)7に対して適切に情報の記録、再生をおこなえる本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、レンズ有効径φ2.4mmの時の光ピックアップ対物レンズの例であり、
【図4】図4は、実施例1にかかる反射防止膜の膜厚を示した図である。各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【図5】図5は、実施例1にかかるレーザー入社側面(レンズ第一面)の分光特性の図である。
【図6】図6は、実施例1にかかるレーザー射出側面(レンズ第二面)の分光特性の図である。
【図7】図7は、実施例1にかかるレンズ面全体の透過率分布に関する図である。
【図8】図8は、図3とはレンズの大きさが異なり、レンズ有効径φ2.0mmの時の光ピックアップ対物レンズの例となっている。
【図9】図9は、実施例2にかかる反射防止膜の膜厚を示した図である。各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【図10】図10は、実施例2にかかるレーザー入射側面(レンズ第一面)の分光特性の図である。
【図11】図11は、実施例2にかかるレーザー射出側面(レンズ第二面)の分光特性の図である。
【図12】図12は、実施例2にかかるレンズ面全体の透過率分布に関する図である。
【図13】図13は、例えば、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の例である。
【図14】図14は、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の実施の形態3のレンズの第一面の輪帯番号NO1〜5までを分割して示す図である。
【図15】図15は、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の実施の形態3の図14と同一のレンズの第一面の輪帯番号NO6〜9までを分割して示す図である。
【図16】図16は、例えば、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の第二面を示す図である。
【図17】図17は実施例3にかかる反射防止膜の膜厚を示した図である。各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【図18】図18は、実施例3にかかるレーザー入射側面(レンズ第一面)の分光特性の図である。
【図19】図19は、実施例3にかかるレーザー射出側面(レンズ第二面)の分光特性の図である。
【図20】図20は、実施例3にかかるレンズ面全体の透過率分布に関する図である。
【図21】図21は実施例4にかかる反射防止膜の膜厚を示した図である。各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【図22】図22は、実施例4にかかるレーザー入射側面(レンズ第一面)の分光特性の図である。
【図23】図23は、実施例4にかかるレーザー射出側面(レンズ第二面)の分光特性の図である。
【図24】図24は、実施例4にかかるレンズ面全体の透過率分布に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の光学レンズは、光情報媒体への記録や、再生に使用されるものであって、光ピックアップ装置(光情報記録再生装置)のBD用対物レンズとして使用されているものである。
【0037】
図2に、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置の概略図を示す。なお本発明で使用される光ピックアップ装置はこれに限ったものではない。
【0038】
図2は、ブルーレイディスク(BD)7に対して適切に情報の記録、再生を行える本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、光情報記録再生装置に搭載できる。
【0039】
光ピックアップ装置PU1は、ブルーレイディスク(BD)7に対して情報の記録再生を行う場合に使用され380nm以上のレーザー光束を発光する。レーザー光の光路上にビームスプリッタ2が設けられている。ビームスプリッタ2及び1/4波長板3を透過することにより、レーザー光は円偏光に変換される。
【0040】
1/4波長板3から出射されたレーザー光の光路上にカップリングレンズ4が設けられている。カップリングレンズ4は、プラスチック素材またはガラス素材から形成され、カップリングレンズ4がアクチュエータにより光軸方向を動く事でレーザー光が平行光となり、絞り5を通過した後、光ピックアップ対物レンズ6に入射される。
【0041】
この光ピックアップ対物レンズ6は、情報の記録や再生に必要な光量を確保するため、少なくとも光入射側面の1面、または光入射側面と光射出側面の両面に反射防止膜が設定されている。
【0042】
この光ピックアップ対物レンズ6を透過した光は情報記録面に入射する事になる。情報記録面を反射した光は再び光ピックアップ対物レンズ6を介して光検出器8に入射し、検出される。光検出器8は、当該レーザー光を検出し、光電変換して出力信号を出力する。そして、光検出器8の出力信号に基づいて、フォーカスエラー信号、トラックエラー信号、再生信号などを生成する。また、当該フォーカスエラー信号、トラックエラー信号、再生信号などを用いて、ブルーレイディスク(BD)7に対する情報の記録及び/又は再生を行う。
【0043】
ところで、光ピックアップ対物レンズ6は情報記録量を大きくするようスポットサイズは0.39μm程度となっている。これを実現するためにはNAが0.85となるよう設定されているレンズとなっている。これらの光ピックアップ対物レンズ6の一例を図3と図8と図13に示す。
【0044】
[実施の形態1]
図3は、レンズ有効径φ2.4mmの時の光ピックアップ対物レンズ6の例であり、中心厚、輪帯9の幅、輪帯9の段差量、非球面係数、曲率を示している。また、Zjは非球面形状、hは光軸からの光線の高さ、Cは曲率、Kはコーニック係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16はそれぞれ、4次から16次までの非球面係数である。なお、C=1/R(Rは曲率半径)である。これらの式は数式(2)で示した式により規定されている。
【数2】
【0045】
[実施の形態2]
図8は、図3とはレンズの大きさが異なり、レンズ有効径φ2.0mmの時の光ピックアップ対物レンズ6の例となっており、中心厚、輪帯9の幅、輪帯9の段差量、非球面係数、曲率を示している。また、Zjは非球面形状、hは光軸からの光線の高さ、Cは曲率、Kはコーニック係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16はそれぞれ、4次から16次までの非球面係数である。なお、C=1/R(Rは曲率半径)である。これらの式は数式(2)で示した式により規定されている。
【0046】
[実施の形態3]
図13〜16は、例えば、プラスチックレンズで発生しやすい、温度の変化による波面収差の発生を抑制するために設けられた輪帯の段差がある場合の例であり、中心厚、輪帯9の幅、輪帯9の段差量、非球面係数、曲率を示している。また、Zjは非球面形状、hは光軸からの光線の高さ、Cは曲率、Kはコーニック係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16はそれぞれ、4次から16次までの非球面係数である。なお、C=1/R(Rは曲率半径)である。これらの式は数式(2)で示した式により規定されている。図14は、第一面の輪帯NO1〜5を示し、図15は、第一面の輪帯NO6〜9を示し、図16は、第二面をしている。
【0047】
ここで、本発明は、図3、図8、図13に示されるプラスチックレンズに限定されるものではない。本発明は、例えば近年開発されている多層用ディスク対応の光ピックアップ対物レンズや、2波長対応レンズ、更には3波長対応レンズにも適用可能である。
【0048】
さらに、反射防止膜は、例えば、真空蒸着法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法(特許文献2、特許文献3等を参照。)などの、従来から周知の反射防止膜の製膜方法により、積層状に製膜することができる。
【0049】
また、反射防止膜に用いられる高屈折率材料としては、例えば、酸化セリウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニューム、酸化アルミニューム、窒化シリコン、酸素含有窒化シリコンなどが挙げられる。反射防止膜に用いられる低屈折率材料としては、例えば、酸化シリコン、フッ化マグネシュームなどが挙げられる。
【0050】
本発明の反射防止膜は、上述の高屈折率材料、低屈折率材料のうちの一種類から構成されていても良いし、複数の種類の材料を混合して構成されていても良い。
【実施例1】
【0051】
図4に、本発明の実施例1の光ピックアップ対物レンズ6の反射防止膜の膜厚を示す。光ピックアップ対物レンズ6の形状は図2で示される物を使用している。反射防止膜の各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【0052】
図5はレーザー入射側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図である。分光特性の最小の極小値は415nmの位置にあり、第二に小さい極小値は590nmの位置にある。
【0053】
また、図6はレーザー射出側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図となっている。極小値は443nmの位置にあり極小値は1つしか存在していない。
【0054】
この時のスポット径は0.3816μmであり、レンズの光が当たる領域(有効径)での透過率は91.64%である。レンズ面全体の透過率は図6に示すとおりであり、レンズ中央部の透過率は98.19%となっており、レンズ中心部の透過率を犠牲にすることなく、スポット径を確保したレンズとなっている事が分かる。よって、中心部の透過率を犠牲とすることなく周辺部の透過率も確保されているので、適切なスポット径を確保し、良好なジッターと信号レベルを得る事が出来る。
【実施例2】
【0055】
図9に、本発明の実施例2の光ピックアップ対物レンズ6の反射防止膜の膜厚を示す。光ピックアップ対物レンズ6の形状は図8で示される物を使用している。反射防止膜の各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【0056】
図10は、レーザー入射側レンズ面の光軸の対する分光特性を表した図である。分光特性の最小の極小値は413nmの位置にあり、第二に小さい極小値は579nmの位置にある。
【0057】
また、図11はレーザー射出側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図となっている。極小値は401nmの位置にあり極小値は1つしか存在していない。
【0058】
この時のスポット径は0.3974μmであり、光ピックアップ対物レンズ6の光が当たる領域(有効径)での透過率は91.96%である。レンズ面全体の透過率は図12に示すとおりであり、レンズ中央部の透過率は98.88%となっており、レンズ中心部の透過率を犠牲にすることなく、スポット径を確保したレンズとなっている事が分かる。よって、中心部の透過率を犠牲とすることなく周辺部の透過率も確保されているので、適切なスポット径を確保し、良好なジッターと信号レベルを得る事が出来る。
【実施例3】
【0059】
図17に、本発明の実施例3の光ピックアップ対物レンズ6の反射防止膜の膜厚を示す。光ピックアップ対物レンズ6の形状は図13で示される物を使用している。反射防止膜の各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【0060】
図18はレーザー入射側レンズ面の光軸の対する分光特性を表した図である。分光特性の最小の極小値は414nmの位置にあり、第二に小さい極小値は556nmの位置にある。また、図19はレーザー射出側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図となっている。極小値は416nmの位置にあり極小値は1つしか存在していない。
【0061】
この時のスポット径は0.39448μmであり、光ピックアップ対物レンズ6の光が当たる領域(有効径)での透過率は92.07%である。レンズ面全体の透過率は図20に示すとおりであり、レンズ中央部の透過率は98.56%となっており、レンズ中心部の透過率を犠牲にすることなく、スポット径を確保したレンズとなっている事が分かる。よって、中心部の透過率を犠牲とすることなく周辺部の透過率も確保されているので、適切なスポット径を確保し、良好なジッターと信号レベルを得る事が出来る。
【実施例4】
【0062】
図21に、本発明の実施例4の光ピックアップ対物レンズ6の反射防止膜の膜厚を示す。光ピックアップ対物レンズ6の形状は図3で示される物を使用している。反射防止膜の各層の膜厚は物理膜厚であり、レンズ面に対して、光軸方向に一定となるように設定されている。
【0063】
図22は、レーザー入射側レンズ面の光軸の対する分光特性を表した図である。分光特性の最小の極小値は405nmの位置にあり、第二に小さい極小値は712nmの位置にある。
【0064】
また、図23は、レーザー射出側レンズ面の光軸に対する分光特性を表した図となっている。極小値は440nmの位置にあり極小値は1つしか存在していない。
【0065】
この時のスポット径は0.39624μmであり、光ピックアップ対物レンズ6の光が当たる領域(有効径)での透過率は91.41%である。レンズ面全体の透過率は図24に示すとおりであり、レンズ中央部の透過率は97.80%となっており、レンズ中心部の透過率を犠牲にすることなく、スポット径を確保したレンズとなっている事が分かる。よって、中心部の透過率を犠牲とすることなく周辺部の透過率も確保されているので、適切なスポット径を確保し、良好なジッターと信号レベルを得る事が出来る。
【符号の説明】
【0066】
1 光ピックアップ装置PU
2 ビームスプリッタ
3 1/4波長板
4 カップリングレンズ
5 絞り
6 光ピックアップ対物レンズ
7 ブルーレイディスク(BD)
8 光検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長400〜420nmの範囲内の波長のレーザー光源から出た単色のレーザー光を、光記録媒体上に集光することにより、前記光記録媒体への情報の記録、または、前記光記録媒体からの情報の再生を行う光ピックアップ装置に搭載されるBD用対物レンズであって、
前記BD用対物レンズのレーザー入射側レンズ面には60度以上の接線角が存在し、前記レーザー入射側レンズ面には反射防止膜が設けられ、
前記反射防止膜は、前記レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射するときに、波長400〜420nmの範囲内の波長において光の反射率の第一の極小値を示し、更に、波長420nmよりも長波長側の波長において光の反射率の第二の極小値を示すことを特徴とするBD用対物レンズ。
【請求項2】
前記波長420nmよりも長波長側に位置する光の反射率の前記第二の極小値を示す波長が、波長556〜712nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項3】
前記波長400〜420nmの範囲内の光の反射率の前記第一の極小値が、前記420nmよりも長波長側に位置する光の反射率の前記第二の極小値よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項4】
波長350〜800nmの範囲内の波長において光の反射率の極小値を2つ以上持つことを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項5】
前記レーザー入射側レンズ面に設けられた反射防止膜は、層毎に異なる3種類以下の材料からなっており、3層の積層体から成り立っていることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項6】
前記BD用対物レンズの屈折率が使用するレーザー光源に対して1.53以下であることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項7】
前記BD用対物レンズのレーザー射出側レンズ面に、 前記レーザー射出側レンズ面の中心部における光の反射率の唯一の極小値が400nm〜500nmの範囲内の波長にある反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項8】
前記レーザー光のスポット径が0.4μm以下であり、かつ、前記BD用対物レンズの前記レーザー光が当たる領域である有効径における光の透過率が91%以上であることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項9】
前記接線角が63度以上であることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項1】
波長400〜420nmの範囲内の波長のレーザー光源から出た単色のレーザー光を、光記録媒体上に集光することにより、前記光記録媒体への情報の記録、または、前記光記録媒体からの情報の再生を行う光ピックアップ装置に搭載されるBD用対物レンズであって、
前記BD用対物レンズのレーザー入射側レンズ面には60度以上の接線角が存在し、前記レーザー入射側レンズ面には反射防止膜が設けられ、
前記反射防止膜は、前記レーザー入射側レンズ面の中心部に光が垂直に入射するときに、波長400〜420nmの範囲内の波長において光の反射率の第一の極小値を示し、更に、波長420nmよりも長波長側の波長において光の反射率の第二の極小値を示すことを特徴とするBD用対物レンズ。
【請求項2】
前記波長420nmよりも長波長側に位置する光の反射率の前記第二の極小値を示す波長が、波長556〜712nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項3】
前記波長400〜420nmの範囲内の光の反射率の前記第一の極小値が、前記420nmよりも長波長側に位置する光の反射率の前記第二の極小値よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項4】
波長350〜800nmの範囲内の波長において光の反射率の極小値を2つ以上持つことを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項5】
前記レーザー入射側レンズ面に設けられた反射防止膜は、層毎に異なる3種類以下の材料からなっており、3層の積層体から成り立っていることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項6】
前記BD用対物レンズの屈折率が使用するレーザー光源に対して1.53以下であることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項7】
前記BD用対物レンズのレーザー射出側レンズ面に、 前記レーザー射出側レンズ面の中心部における光の反射率の唯一の極小値が400nm〜500nmの範囲内の波長にある反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項8】
前記レーザー光のスポット径が0.4μm以下であり、かつ、前記BD用対物レンズの前記レーザー光が当たる領域である有効径における光の透過率が91%以上であることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【請求項9】
前記接線角が63度以上であることを特徴とする請求項1に記載のBD用対物レンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−4137(P2013−4137A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133424(P2011−133424)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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