説明

光ファイバの終端構造および光ファイバ機器

【課題】より高強度の放出光を処理することができる光ファイバの終端構造およびこれを用いた光ファイバ機器を提供する。
【解決手段】光ファイバの終端構造200は、光ファイバ11及び21を伝搬した光を放出する光出力部22と、光を吸収する内側面23aaと底面23baとによって筒状の内部空間23cが形成されており、前記光出力部から前記内部空間に放出された光が前記内側面と底面とに照射されるように構成された光吸収部23と、を備える。好ましくは、前記底面は、前記放出される光の光軸に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの終端構造および光ファイバ機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバレーザや光ファイバ増幅器などの光ファイバ機器において、他の光ファイバに接続されておらず解放された光ファイバの端部から高強度の光が放出される場合がある。従来、この放出光を安全に処理する技術が開示されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−341183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の光ファイバレーザ等では、光ファイバ端部からの放出光はきわめて高強度となる場合がある。したがって、より高強度の放出光を処理することが強く要求されている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、より高強度の放出光を処理することができる光ファイバの終端構造およびこれを用いた光ファイバ機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバの終端構造は、光ファイバを伝搬した光を放出する光出力部と、光を吸収する内側面と底面とによって筒状の内部空間が形成されており、前記光出力部から前記内部空間に放出された光が前記内側面と底面とに照射されるように構成された光吸収部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記底面は、前記放出される光の光軸に対して傾斜していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記光吸収部は、前記内部空間において前記放出された光のうち最大広がり角で伝搬する光が4回以上反射するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記内側面または前記底面は、凹凸状の加工が施されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記内側面に突起部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記光吸収部は、互いに連結された複数の環状部材によって構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記光出力部は、前記光ファイバのコア径よりも大きいコア径を有する大コア径光ファイバを介して前記光を放出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記光ファイバはシングルモード光ファイバであり、前記大コア径光ファイバはマルチモード光ファイバであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記光が放出される前記大コア径光ファイバの端面は、前記光の光軸と垂直であり、かつ平坦であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記内側面または前記底面は、黒アルマイト処理されたアルミニウムからなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光ファイバの終端構造は、上記発明において、前記光吸収部は、前記内部空間において前記放出された光が99.8%以上吸収されるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光ファイバ機器は、上記発明のいずれか一つに記載の光ファイバの終端構造を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内側面と底面とに放出光を照射して放出光を反射させながら吸収するので、より高強度の放出光を処理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施の形態1に係る終端構造を適用した光ファイバ機器の構成図である。
【図2】図2は、図1に示す終端構造の模式的な一部断面図である。
【図3】図3は、図2に示す終端構造の内部空間を広がりながら伝搬する放出光の光路を模式的に示す図である。
【図4】図4は、図2に示す終端構造の内部空間を直進しながら伝搬する放出光の光路を模式的に示す図である。
【図5】図5は、図2に示すマルチモード光ファイバとシングルモード光ファイバとの融着接続点の模式的な断面図である。
【図6】図6は、実施の形態2に係る終端構造の模式的な一部断面図である。
【図7】図7は、実施の形態3に係る終端構造の模式的な一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバの終端構造および光ファイバ機器の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各層の厚みや厚みの比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。したがって、具体的な寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る終端構造200を適用した光ファイバ機器100の構成図である。図1に示すように、光ファイバレーザである光ファイバ機器100は、光検出器1と、光カプラ2と、LED(Light Emitting Diode)3と、光バンドパスフィルタ4と、WDM(Wavelength Division Multiplexing)光カプラ5と、光合波器6aと、複数の半導体励起レーザ7aと、光ファイバブラッググレーティング(FBG)8aと、増幅用光ファイバ9aと、FBG8bと、光合波器6bと、複数の半導体励起レーザ7bと、増幅用光ファイバ9bと、出力側光ファイバ10とを備えている。各要素は適宜光ファイバで接続されている。また、図中「×」の記号は光ファイバ同士の融着接続点を示している。終端構造200は、光ファイバ機器100の光カプラ2に接続したシングルモード光ファイバ11の一端部に接続している。
【0022】
はじめに、光ファイバ機器100の構成を説明する。光カプラ2は、WDM光カプラ5側から伝搬してきた光の一部(たとえば0.1%〜1%)を分岐して光検出器1に導入する。光検出器1はたとえばフォトダイオードである。LED3は、例えば赤色である可視光を出力する。光バンドパスフィルタ4は、LED3からの可視光の波長を透過帯域に含み、後述するレーザ光L1の波長を阻止帯域に含む透過特性を有する。WDM光カプラ5は、LED13からの可視光を光合波器6aに出力するとともに、光合波器6a側から伝搬してきたレーザ光L1の波長の光を光カプラ2側に透過する機能を有する。
【0023】
光合波器6aは、たとえばTFB(Tapered Fiber Bundle)で構成されている。光合波器6aは、複数の半導体励起レーザ7aから出力された、波長が例えば915nmの励起光を合波し、増幅用光ファイバ9aへ出力する。
【0024】
増幅用光ファイバ9aは、石英系ガラスからなるコア部に増幅物質であるイッテルビウム(Yb)イオンが添加され、コア部の外周には石英系ガラスからなる内側クラッド層と樹脂等からなる外側クラッド層とが順次形成されたダブルクラッド型の光ファイバである。なお、増幅用光ファイバ9aのコア部は開口数NA(Numerical Aperture)がたとえば0.08であり、波長1084nmの光をシングルモードで伝搬するように構成されている。増幅用光ファイバ9aの長さはたとえば25mである。増幅用光ファイバ9aのコア部の吸収係数は、たとえば波長1084nmにおいて200dB/mである。また、コア部に入力された励起光から発振するレーザ光へのパワー変換効率はたとえば70%である。
【0025】
FBG8aは、中心波長が例えば1084nmであり、中心波長およびその周辺の約2nmの幅の波長帯域における反射率が約100%であり、波長915nmの光はほとんど透過する。また、FBG8bは、中心波長がFBG8aと略同じである例えば1084nmであり、中心波長における反射率が10%〜30%程度であり、反射波長帯域の半値全幅が約1nmであり、波長915nmの光はほとんど透過する。
【0026】
したがって、FBG8a、8bは、波長1084nmの光に対して、増幅用光ファイバ9aを挟んで光ファイバ共振器を構成する。
【0027】
光合波器6bも、たとえばTFBで構成されており、複数の半導体励起レーザ7bから出力された、波長が例えば915nmの励起光を合波し、増幅用光ファイバ9bへ出力する。
【0028】
増幅用光ファイバ9bも、増幅用光ファイバ9aと同様の構成および長さを有するダブルクラッド型の光ファイバである。
【0029】
つぎに、光ファイバ機器100の動作について説明する。まず、半導体励起レーザ7aは励起光を出力する。光合波器6aは、半導体励起レーザ7aから出力された励起光を合波し、増幅用光ファイバ9aへ出力する。
【0030】
増幅用光ファイバ9aでは、励起光によってコア部のYbイオンが励起され、波長1084nmを含む帯域の光を発光する。波長1084nmの発光は、増幅用光ファイバ9aの光増幅作用とFBG8a、8bによって構成される光共振器の作用とによってレーザ発振する。
【0031】
つぎに、増幅用光ファイバ9bは、光合波器6bによって、発振したレーザ光と半導体励起レーザ7bからの励起光とが入力されて、レーザ光を増幅する。増幅されたレーザ光はレーザ光L1として光ファイバ機器100の出力側光ファイバ10から出力する。レーザ光L1のパワーはたとえば500W以上である。
【0032】
このように、光ファイバ機器100はMOPA(Master Oscillator Power-Amplifier)構造を有する光ファイバレーザである。
【0033】
また、光ファイバ機器100において、シングルモード光ファイバ11から出力側光ファイバ10までの直列的に接続した光ファイバは、波長1084nmのレーザ光をシングルモードで伝搬するように構成されている。
【0034】
出力側光ファイバ10は不図示のデリバリ光ファイバに接続している。レーザ光L1はデリバリ光ファイバによって使用すべき場所まで伝搬される。
【0035】
なお、LED3は、レーザ光L1を出力する前に、デリバリ光ファイバの先端に設けられた光コネクタから可視光を出力して加工対象にマーカとして照射する。これによって、レーザ加工等を行う際のレーザ光L1の照射位置が決定される。また、LED3は、光バンドパスフィルタ4によって、余分な戻り光が入力されて破損することから保護されている。
【0036】
ここで、光ファイバ機器100の内部、デリバリ光ファイバ、または光コネクタ等においてレーザ光L1の反射光L2が発生する。反射光L2は光ファイバ機器100内をレーザ光L1とは反対の方向に伝搬する。この反射光L2の一部のパワーは光カプラ2によって分岐されて光検出器1に導入される。これによって、反射光L2のパワーがモニタされる。
【0037】
上述したように、光カプラ2は、反射光L2の一部(たとえば0.1%〜1%)を分岐するので、残りの反射光L2はシングルモード光ファイバ11を伝搬する。反射光L2は例えば1W以上ときわめて高い強度を有する。
【0038】
この光ファイバ機器100では、シングルモード光ファイバ11の一端部に終端構造200が接続されている。これによって、シングルモード光ファイバ11を伝搬する高強度の反射光L2は安全に処理される。
【0039】
つぎに、終端構造200の構成について説明する。図2は、図1に示す終端構造200の模式的な一部断面図である。図2に示すように、終端構造200は、マルチモード光ファイバ21と、光出力部22と、光吸収部23と、ヒートシンク24とを備えている。
【0040】
マルチモード光ファイバ21はシングルモード光ファイバ11に接続している。マルチモード光ファイバ21は、シングルモード光ファイバ11よりもコア径が大きいものである。この終端構造200では、マルチモード光ファイバ21としてたとえばコア径が62.5μmのGI(Grated Index)型の光ファイバを用いているが、コア径が100μmのSI(Step Index)型の光ファイバを用いてもよい。なお、マルチモード光ファイバ21の代わりに、シングルモード光ファイバ11よりもコア径が大きいシングルモード光ファイバを用いても良い。
【0041】
光出力部22は、マルチモード光ファイバ21の先端にフェルール22aを取り付けて構成した光コネクタである。マルチモード光ファイバ21の端面とフェルール22aの端面とは同一平面上を構成している。この終端構造200では、光コネクタとしてFCコネクタを用いているが、SCコネクタ等の公知の光コネクタを用いてもよい。また、フェルール22aとしてジルコニアからなるものを用いているが、他のセラミックスや金属からなるものを用いてもよい。
【0042】
光吸収部23は、円筒状または角筒状の中空部を有する筒部23aと、断面楔型の底部23bとを備えている。筒部23aの内側面23aaと底部23bの表面である底面23baとによって内部空間23cが形成されている。筒部23aと底部23bはたとえば表面に光吸収のための黒色アルマイト処理を施したアルミニウム等の金属からなる。黒色アルマイト処理によってたとえば約80%以上の吸収率を実現できる。光出力部22は光吸収部23の底部23bとは反対側において内部空間23cにフェルール22aが向かうように接続されている。
【0043】
ヒートシンク24は、たとえばアルミニウムなどの熱伝導率が高い材料からなり、光吸収部23を載置している。なお、ヒートシンク24は自然空冷を行う構造であるが、強制空冷や水冷を行う構造を付加してもよい。
【0044】
つぎに、図2を用いて終端構造200の動作について説明する。シングルモード光ファイバ11を伝搬してきた反射光L2が終端構造200に入力すると、マルチモード光ファイバ21はこの反射光L2を光出力部22に伝搬する。光出力部22は、フェルール22aの端面から反射光L2を内部空間23cへの放出光L3として放出する。ここで、放出光L3は、内側面23aaと底面23baとに照射されるようにビーム径が広がる。その結果、放出光L3は内側面23aaと底面23baとで一部が吸収され、一部が反射される。反射された放出光L3はさらに内側面23aaでの吸収と反射、または底面23baでの吸収と反射を受け、その光強度がきわめて減衰される。なお、反射光L2の吸収によって光吸収部23内で発生した熱はヒートシンク24によって放熱される。
【0045】
このように、終端構造200は、底面23baだけでなく、筒部23aの内側面23aaにおける吸収および反射を利用することによって、より高強度の反射光L2を安全に処理することができる。
【0046】
つぎに、終端構造200の構造についてより具体的に説明する。図3は、図2に示す終端構造200の光吸収部23の内部空間23cを広がりながら伝搬する放出光の光路を模式的に示す図である。ここで、筒部23aの内側面23aaは放出光の光軸Xに対して平行に延びており、かつ底面23baは光軸Xに対して60度だけ傾斜しているとする。また、内部空間23cの断面形状を正方形とし、そのサイズを25mm×25mmとする。光軸Xの位置における内部空間23cの長さを75mmとする。
【0047】
波長1084nmでのマルチモード光ファイバ21の開口数(NA)を2.75とすると、光出力部22のフェルール22aから放出光は、光軸Xに対して最大16度の広がり角で内部空間23cを伝搬する。この最大広がり角の放出光は、光路L31で示すように、内側面23aaで2回反射され、底面23baで1回反射され、その後さらに内側面23aaで2回反射されてフェルール22aに到達する。この5回の反射とそれに伴う吸収によって、最大広がり角の放出光の強度は大きく減衰する。
【0048】
つぎに、図4は、図2に示す終端構造200の光吸収部23の内部空間23cを直進しながら伝搬する放出光の光路を模式的に示す図である。このように光軸Xにそって広がり角0度で直進する放出光は、光路L32で示すように、底面23baで1回反射された後、内側面23aaで10回以上反射されるので、フェルール22aに到達するまえに殆ど減衰される。このように、底面23baを光軸Xに対して傾斜させると、反射回数を多くすることができる、または所定の反射回数を実現するための光吸収部23の長さを短くでき小型化できるので好ましい。
【0049】
放出光が光吸収部23において図3、4に示すような反射を受ける場合、1回の反射あたりの光の吸収率を80%とすると、フェルール22aに戻る光の強度はたとえば放出光の0.2%以下となる。つまり、光吸収部23においてたとえば放出光の99.8%以上が吸収される。なお、放出光の最大広がり角の光を光吸収部23内で4回以上反射されるようにすれば、放出光全体を99.8%以上吸収し、フェルール22aに戻る光の強度を0.2%以下に減衰させることが容易にできるので好ましい。このような好ましい光の強度の吸収率、減衰率や反射回数は、使用するマルチモード光ファイバ21のNAに合わせて、筒部23aの長さ、内部空間23cの内径や長さ、底面23baの傾斜角度、および1回の反射あたりの光の吸収率を勘案して設計することができる。
【0050】
なお、終端構造200では、コア径の大きいマルチモード光ファイバ21を用いているので、光出力部22のフェルール22aの端面における光のエネルギー密度を下げることができる。その結果、フェルール22aから高強度の放出光L3を放出した場合にも端面の破損が発生することが防止される。
【0051】
また、フェルール22aの端面、すなわちマルチモード光ファイバ21の端面が平坦でないか、または光軸Xに対して垂直ではない場合は、マルチモード光ファイバ21を伝搬してきた反射光L2が端面でわずかに反射されて内部反射光が発生する。この内部反射光は、マルチモード光ファイバ21のコアに対して傾斜して進行する。その結果、内部反射光がフェルール22a内のある点に集中してフェルール22aの破損を引き起こす場合がる。
【0052】
これに対して、フェルール22aの端面が平坦であり、かつ光軸Xに対して垂直である場合は、内部反射光はマルチモード光ファイバ21のコア部を伝搬するので、上記のように特定の点へ内部反射光が集中することが防止される。このため、フェルール22aはたとえばフラット研磨を施したものが好ましい。
【0053】
また、終端構造200では、以下に説明する構成によって、上記のような内部反射光、および放出光L3のうち光吸収部23によって吸収されずにマルチモード光ファイバ21に結合した残留反射光を処理している。
【0054】
図5は、図2に示すマルチモード光ファイバ21とシングルモード光ファイバ11との融着接続点の模式的な断面図である。図5に示すように、マルチモード光ファイバ21は、コア部21aと、コア部21aの周囲に順次形成されたクラッド部21b、被覆部21cとを備えている。シングルモード光ファイバ11は、コア部11aと、コア部11aの周囲に順次形成されたクラッド部11b、被覆部11cとを備えている。コア部11a、21a、クラッド部11b、21bは石英系ガラスからなる。また、被覆部11c、21cは樹脂からなる。
【0055】
マルチモード光ファイバ21とシングルモード光ファイバ11とは、端面付近の被覆部21c、11cがそれぞれ除去されて、各端面をつき合わせた点である接続点Cにおいて融着接続されている。また、被覆部11c、21cが除去された部分を覆うように、クラッド部11b、21bよりも屈折率が高い樹脂被覆25が形成されている。
【0056】
ここで、内部反射光および残留反射光を含む反射光L4は、マルチモード光ファイバ21をマルチモードで伝搬する。そのため、反射光L4は、接続点Cにおいてシングルモード光ファイバ11とは十分に光結合せず、その多くのパワーは樹脂被覆25に放射される。これによって、反射光L4が光ファイバ機器100に到達することを防止することができる。
【0057】
つぎに、本発明の実施例として、本実施の形態に基づいて終端構造を作製した。そして、マルチモード光ファイバから波長が1084nmで強度が36Wのレーザ光を入力させる実験を行った。
【0058】
はじめに、光出力部である光コネクタを光吸収部から取り外した状態で、36Wのレーザ光が出力される光コネクタを赤外線カメラで観察した。このとき、フェルールやその端面、または光コネクタの金属部材等に顕著な温度上昇は観測されなかった。
【0059】
つぎに、光コネクタに光吸収部を取り付けてヒートシンクに載置した状態で、マルチモード光ファイバから波長が1084nmで強度が36Wのレーザ光を3分間入力させた後に、終端構造を赤外線カメラで観察した。このとき、光吸収部の温度上昇は30℃以下であった。すなわち、本実施例の終端構造によって36Wもの強度のレーザ光を安全に処理できることが確認された。また、光吸収部において温度が高い部分は、底部だけでなく筒部にも広がっていることが確認された。すなわち、実施例の終端構造では、底部だけでなく、筒部を含めたより広い部分において光が吸収されていることが確認された。
【0060】
また、上記実施例では、光吸収部の底部については、楔型の底面側がヒートシングに接触するようにして載置した。これに対して、楔型の頂点側がヒートシングに接触するようにして載置して、実施例と同様の実験を行ったところ、実施例よりも2℃だけ光吸収部の温度が高かった。この結果から、上記実施例のように、光吸収部の底部の楔型の底面側がヒートシングに接触するようにして載置するほうが、放熱効果が高く好ましいことが確認された。
【0061】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2に係る光ファイバの終端構造について説明する。本実施の形態2に係る終端構造は、実施の形態1に係る終端構造200と同様に、光ファイバ機器100のシングルモード光ファイバ11の一端部に接続されるものである。
【0062】
図6は、実施の形態2に係る終端構造の模式的な一部断面図である。図6に示すように、終端構造300は、マルチモード光ファイバ21と、光出力部22と、光吸収部33と、ヒートシンク24とを備えている。マルチモード光ファイバ21、光出力部22、およびヒートシンク24は図2に示すものと同じなので、以下では光吸収部33について具体的に説明する。
【0063】
光吸収部33は、円筒状または角筒状の中空部を有する筒部33aと、底部33bとを備えている。筒部33aの内側面33aaと底部33bの表面である底面33baとによって内部空間33cが形成されている。光出力部22は光吸収部33の底部33bとは反対側において内部空間33cにフェルール22aが向かうように接続されている。
【0064】
ここで、筒部33aおよび底部33bはたとえば表面に光吸収のための黒色アルマイト処理を施したアルミニウム等の金属からなる。さらに、筒部33aの内側面33aaおよび底面33baは凹凸状になるように加工が施されている。これによって、フェルール22aの端面からの放出光L3は内側面33aaおよび底面33baで拡散し、光の吸収がより促進されるので、その光強度はより一層減衰される。これによって、終端構造300は、より高強度の反射光L2を安全に処理することができる。なお、凹凸の具体的な形状は特に限定されないが、紙面奥行き側に延伸した三角柱状、または三角錘状などの形状が、光または熱吸収性上好ましい。
【0065】
(実施の形態3)
つぎに、実施の形態3に係る光ファイバの終端構造について説明する。本実施の形態3に係る終端構造も、上記の各実施の形態に係る終端構造と同様に、光ファイバ機器100のシングルモード光ファイバ11の一端部に接続されるものである。
【0066】
図7は、実施の形態3に係る終端構造の模式的な一部断面図である。図7に示すように、終端構造400は、マルチモード光ファイバ21と、光出力部22と、光吸収部43と、ヒートシンク24とを備えている。マルチモード光ファイバ21、光出力部22、およびヒートシンク24は図2に示すものと同じなので、以下では光吸収部43について具体的に説明する。
【0067】
光吸収部43は、円筒状または角筒状の中空部を有する筒部43aと、底部43bとを備えている。内側面43aaと底面43baとによって内部空間43cが形成されている。光出力部22は光吸収部43の底部43bとは反対側において内部空間43cにフェルール22aが向かうように接続されている。
【0068】
ここで、筒部43aと底部43bはたとえば表面に光吸収のための黒色アルマイト処理を施したアルミニウム等の金属からなる。また、筒部43aは、複数の環状部材43abが互いに嵌合し、連結して構成されている。各環状部材43abの内側には突起部43acが形成されている。この突起部43acは各環状部材43abの内周に沿って内周の一部または全周にわたって形成されている。
【0069】
この終端構造400では、フェルール22aの端面からの放出光L3は、光吸収部43の長手方向に沿って突起部43acによって徐々に吸収、拡散されて減衰され、さらに底面43baによって反射、吸収される。これによって、終端構造400は、より高強度の反射光L2を安全に処理することができる。
【0070】
この終端構造400においては、連結させる環状部材43abの数を増減することによって、その処理能力を調整できる。たとえば、反射光L2が高強度の場合は、環状部材43abの数を増やして処理能力を増大させることができる。これによって、処理すべき反射光L2の強度に応じた処理能力およびサイズの終端構造400を容易に形成することができる。
【0071】
なお、上記実施の形態では、光ファイバ機器としての光ファイバレーザに適用した光ファイバの終端構造を説明したが、本発明に係る光ファイバの終端構造は、光ファイバレーザに限らず、光増幅器に適用しても良い。さらに、本発明に係る光ファイバの終端構造は、光受動部品などにおいて、未使用の光ファイバポートが存在し、そこから高強度の光が放出されるおそれがある場合に、放出光の処理のために用いても良い。このように、本発明に係る光ファイバの終端構造は、高強度の光が放出されるおそれがある光ファイバを備える光ファイバ機器に特に制限無く使用することができる。
【0072】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施の形態2、3において、実施の形態1のように放出光の光軸に対して底部の表面を傾斜させるようにしてもよい。また、実施の形態1、2においても、光吸収部を実施の形態3のように複数の環状部材によって構成しても良い。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 光検出器
2 光カプラ
3 LED
4 光バンドパスフィルタ
5 WDM光カプラ
6a、6b 光合波器
7a、7b 半導体励起レーザ
8a、8b FBG
9a、9b 増幅用光ファイバ
10 出力側光ファイバ
11 シングルモード光ファイバ
11a、21a コア部
11b、21b クラッド部
11c、21c 被覆部
21 マルチモード光ファイバ
22 光出力部
22a フェルール
23、33、43 光吸収部
23a、33a、43a 筒部
23aa、33aa、43aa 内側面
23b、33b、43b 底部
23ba、33ba、43ba 底面
23c、33c、43c 内部空間
24 ヒートシンク
25 樹脂被覆
43ab 環状部材
43ac 突起部
100 光ファイバレーザ
200、300、400 終端構造
C 接続点
L1 レーザ光
L2、L4 反射光
L3 放出光
L31、L32 光路
X 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを伝搬した光を放出する光出力部と、
光を吸収する内側面と底面とによって筒状の内部空間が形成されており、前記光出力部から前記内部空間に放出された光が前記内側面と底面とに照射されるように構成された光吸収部と、
を備えることを特徴とする光ファイバの終端構造。
【請求項2】
前記底面は、前記放出される光の光軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの終端構造。
【請求項3】
前記光吸収部は、前記内部空間において前記放出された光のうち最大広がり角で伝搬する光が4回以上反射するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの終端構造。
【請求項4】
前記内側面または前記底面は、凹凸状の加工が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光ファイバの終端構造。
【請求項5】
前記内側面に突起部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光ファイバの終端構造。
【請求項6】
前記光吸収部は、互いに連結された複数の環状部材によって構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の光ファイバの終端構造。
【請求項7】
前記光出力部は、前記光ファイバのコア径よりも大きいコア径を有する大コア径光ファイバを介して前記光を放出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光ファイバの終端構造。
【請求項8】
前記光ファイバはシングルモード光ファイバであり、前記大コア径光ファイバはマルチモード光ファイバであることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバの終端構造。
【請求項9】
前記光が放出される前記大コア径光ファイバの端面は、前記光の光軸と垂直であり、かつ平坦であることを特徴とする請求項7または8に記載の光ファイバの終端構造。
【請求項10】
前記内側面または前記底面は、黒アルマイト処理されたアルミニウムからなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の光ファイバの終端構造。
【請求項11】
前記光吸収部は、前記内部空間において前記放出された光が99.8%以上吸収されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の光ファイバの終端構造。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一つに記載の光ファイバの終端構造を備えたことを特徴とする光ファイバ機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−20086(P2013−20086A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153165(P2011−153165)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】