説明

光ファイバの融着接続方法

【課題】撮像視野内に収まることのない大口径(外径)の光ファイバや、低触点や細径の光ファイバを容易にかつ正確に調心(光軸合わせ)し、良好に融着接続する。
【解決手段】光ファイバの融着接続方法は、既知の同一外径を有する2本の裸光ファイバ7,9を撮像し、この撮像した画像により前記2本の裸光ファイバ7,9を調心してから前記2本の裸光ファイバ7,9に対して直交して相対する1対の放電電極で融着接続する際に、前記2本の裸光ファイバ7,9が撮像視野39内に収まらない場合、前記2本の裸光ファイバ7,9の外周の上辺同士XL2,XR2又は下辺同士XL1,XR1を撮像視野39内に収めて、前記上辺同士XL2,XR2又は下辺同士XL1,XR1を位置合わせすることにより、前記2本の裸光ファイバ7,9の調心を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバの融着接続方法に関し、特に光ファイバ融着接続機を用いて光ファイバを調心してから融着接続する光ファイバの融着接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバの融着接続方法においては、図8(A),(B)に示されているように、左右の光ファイバ101,103の先端部をその長手方向に渡って被覆除去した左右の裸光ファイバ105,107を突き合わせて、相対する1対の放電電極による放電で融着接続する際に、左右の裸光ファイバ105,107の突き合わせ部分を撮像手段としての例えばCCDカメラで撮像し、この撮像された画像に基づいて調心が行われている。
【0003】
このとき、図8(A)に示されているように、上記の左右の裸光ファイバ105,107の外径の全体が画面109(撮像エリア)内に映っている。この状態を前提にソフトウェアが作成されており、左右の裸光ファイバ105,107の画像において上辺と下辺を観察し、この上辺と下辺の間の中心が各裸光ファイバ105,107の中心として調心が行われている。
【0004】
より詳しく説明すると、図8(C)は図8(A)の中に示した左の裸光ファイバ105の直線A−Aにおける輝度分布を表しており、左の裸光ファイバ105の外周側が暗く、裸光ファイバ105の中心部が明るくなる。このスレッシュホールドレベルとの交点aとbが左の裸光ファイバ105の外周の上辺XL2と下辺XL1になる。上記の輝度分布は、右の裸光ファイバ107においても同様である。
【0005】
したがって、図8(A),(B)に示されているように、左の裸光ファイバ105の光軸位置XL0は、画像において左の裸光ファイバ105の外周の下辺位置XL1と上辺位置XL2の平均植、すなわちXL0=(XL1+XL2)/2で示される。一方、右の裸光ファイバ107の光軸位置XR0は、画像において右の裸光ファイバ107の外周の下辺位置XR1と上辺位置XR2の平均植、すなわちXR0=(XR1+XR2)/2で示される。
【0006】
なお、大口径の左の裸光ファイバ105(LDF:Large Diameter Fiber)を調心・接続する場合、光ファイバ融着接続機はカメラ、レンズや鏡筒などの光学系の倍率を落として大口径の左の裸光ファイバ105の外径幅が撮像エリア109に収まるように設計されている。
【0007】
また、通常の光ファイバ融着接続機は125μm(SMF:Single Mode Fiber)の裸光ファイバに与える熱量が最適になる位置に調心する機構になっている。
【0008】
また、従来の光ファイバ融着接続機において、上述したように左右の裸光ファイバ105,107を融着接続時に観察する方法に関しては、例えば特許文献1〜特許文献3があり、低倍率と高倍率の2系統の光学系を併用して、融着接続する全光ファイバを光学系の観察視野に収めるものである。
【0009】
また、特許文献4では、倍率変更画像をモニタ内の小さいウィンドーに表示するものであり、X軸方向画像、Y軸方向画像の各表示倍率や、X軸方向画像表示窓、Y軸方向画像表示窓の各窓の大きさを自由に設定可能とする。また、表示倍率変更した倍率変更後画像を倍率変更後画像表示窓に表示する。また、特定の画像領域のみを抽出画像表示窓に表示する。
【0010】
また、特許文献5では、大径と小径の異径の光ファイバを融着接続する際に、大径の光ファイバのみを加熱エリアで第1予備加熱を行った後に、小径の光ファイバを前進させて大径と小径の光ファイバを共に加熱エリアで第2予備加熱を行い、さらに小径の光ファイバを前進させてその端面を大径の光ファイバの端面に圧接させて本加熱工程を行うものである。
【0011】
また、特許文献6では、外径Aのシングルモード光ファイバと前記外径Aより小さい外径Bの光ファイバを融着接続する際に、シングルモード光ファイバの一端部を延伸して外径B±2μm以内の外径の接続端面を形成し、当該接続端面と外径Bの光ファイバの端面とを融着接続することによって、低損失で接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−43447号公報
【特許文献2】特開平9−61661号公報
【特許文献3】特開平11−167039号公報
【特許文献4】特開2006−47817号公報
【特許文献5】特開2004−325990号公報
【特許文献6】特開2005−189813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、従来の光ファイバの融着接続方法においては、大口径の左の裸光ファイバ105の外径幅が撮像エリア109に収まるような光学系であると、観察倍率が低くなるために分解能(1画素あたりの長さ)が落ちる。その結果、観察倍率を低くすると、図8(A)に示されているように、大口径の左の裸光ファイバ105の外周の下辺位置XL1、上辺位置XL2が検出可能であるが、調心楕度が落ちるという問題点があった。さらに、観察倍率が低くなると、細径の右の裸光ファイバ107のコア観察ができなくなることがあり、接続性能自体が落ちる可能性があるという問題点があった。
【0014】
一方、観察倍率を高くすると、図8(B)に示されているように、大口径の左の裸光ファイバ105の外周の下辺位置XL1、上辺位置XL2が撮像エリア109から外れて、検出不可能となるので、左右の裸光ファイバ105,107の位置合わせが不可能になるという問題点があった。
【0015】
以上の問題点に関しては、特許文献1〜特許文献4においても、単に観察倍率を変化させているので同様であった。
【0016】
また、通常の光ファイバ融着接続機は、125μm(SMF)の裸光ファイバに与える熱量が最適になる位置に調心する機構になっているため、細径や低融点の裸光ファイバを上記の125μm(SMF)の裸光ファイバと同じ調心位置で調心してから放電すると、弱い放電電流で放電しても溶けて無くなってしまうという問題点があった。そのため、電極棒のオフセットや特別な放電回路を使用するために、ハードウェアの変更が必要となるという問題点があった。
【0017】
また、特許文献5では、大径と小径の異径の光ファイバを融着接続するために、段階的に加熱工程を行う必要があるので、加熱温度や加熱時間等の条件を設定し、管理する難しさが生じてくるという問題点があった。また、特許文献6では、大径と小径の異径の光ファイバを融着接続するために、大径のシングルモード光ファイバの一端部を延伸して小径の光ファイバの外径B±2μm以内の外径の接続端面を形成する手間が生じるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の光ファイバの融着接続方法は、既知の同一外径を有する2本の裸光ファイバを撮像し、この撮像した画像により前記2本の裸光ファイバを調心してから前記2本の裸光ファイバに対して直交して相対する1対の放電電極で融着接続する際に、
前記2本の裸光ファイバが撮像視野内に収まらない場合、前記2本の裸光ファイバの外周の上辺同士又は下辺同士を撮像視野内に収めて、前記上辺同士又は下辺同士を位置合わせすることにより、前記2本の裸光ファイバの調心を行うことを特徴とするものである。
【0019】
また、この発明の光ファイバの融着接続方法は、既知の外径を有する2本の裸光ファイバを撮像し、この撮像した画像により前記2本の裸光ファイバを調心してから前記2本の裸光ファイバに対して直交するX軸方向に相対する1対の放電電極で融着接続する際に、
前記2本の第1,第2の裸光ファイバの外周の上辺同士又は下辺同士を撮像視野内に収めるように、前記2本の裸光ファイバを前記1対の放電電極による放電路の中央位置から一方の電極側のX軸方向にシフト距離S分だけ平行移動し、この平行移動するときに、前記第1の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置を前記中央位置から(シフト距離S−第1の裸光ファイバの半径)までの距離に合わせると共に、前記第2の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置を前記中央位置から(シフト距離S−第2の裸光ファイバの半径)までの距離に合わせることにより、前記2本の裸光ファイバの調心を行うことを特徴とするものである。
【0020】
また、この発明の光ファイバの融着接続方法は、既知の大口径と細径の外径を有する2本の裸光ファイバを撮像し、この撮像した画像により前記2本の裸光ファイバを調心してから前記2本の裸光ファイバに対して直交するX軸方向に相対する1対の放電電極で融着接続する際に、
前記大口径の裸光ファイバが撮像視野内に収まらない場合、前記2本の裸光ファイバの外周の上辺同士又は下辺同士を撮像視野内に収めて、前記細径の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置が、前記大口径の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置に対して前記2本の裸光ファイバの外径差の1/2だけずれるように前記細径の裸光ファイバをX軸方向に移動することにより、前記2本の裸光ファイバの調心を行うことを特徴とするものである。
【0021】
また、この発明の光ファイバの融着接続方法は、一方あるいは両方が未知の外径を有する2本の裸光ファイバを撮像し、この撮像した画像により前記2本の裸光ファイバを調心してから前記2本の裸光ファイバに対して直交するX軸方向に相対する1対の放電電極で融着接続する際に、
前記2本の裸光ファイバの一方あるいは両方が撮像視野内に収まらない場合、前記2本の裸光ファイバの外周の上辺同士又は下辺同士を撮像視野内に収めて前記上辺同士又は下辺同士を位置合わせし、
次に、前記2本の裸光ファイバの外周の前記位置合わせと反対側の下辺同士又は上辺同士を撮像視野内に収めるように、前記2本の裸光ファイバをX軸方向にシフト距離S分だけ平行移動してから前記2本の裸光ファイバの外周の下辺同士又は上辺同士の位置を検出すると共に、この検出した下辺同士又は上辺同士の位置の差で前記2本の裸光ファイバの外周の外径差を計算し、
次に、外径が小さい方の裸光ファイバを、前記外径差の1/2だけX軸方向の上辺側又は下辺側に戻す方向に移動することにより、前記2本の裸光ファイバの調心を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の光ファイバの融着接続方法によれば、融着接続する2本の裸光ファイバが既知の同一外径を有するもので、撮像視野内に収まらない場合であっても、前記2本の裸光ファイバの外周の上辺同士又は下辺同士を撮像視野内に収めて、前記上辺同士又は下辺同士を位置合わせするだけで、前記2本の裸光ファイバを容易に調心できる。また、光学系の倍率を落とさずに済むので、前記2本の裸光ファイバの調心精度や性能を落とすことがない。
【0023】
また、この発明の光ファイバの融着接続方法によれば、融着接続する2本の裸光ファイバが、例えば低融点や細径である場合は、調心精度を落とさずに、前記2本の裸光ファイバを前記1対の放電電極による放電路の中央位置から一方の電極側のX軸方向にシフト距離S分だけ平行移動して遠ざけることができ、低い熱量で融着接続することができる。
【0024】
しかも、前記第1の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置を前記中央位置から(シフト距離S−第1の裸光ファイバの半径)までの距離に合わせると共に、前記第2の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置を前記中央位置から(シフト距離S−第2の裸光ファイバの半径)までの距離に合わせるように移動するだけで、前記2本の裸光ファイバを容易に調心できる。また、光学系の倍率を落とさずに済むので、前記2本の裸光ファイバの調心精度や性能を落とすことがない。
【0025】
また、この発明の光ファイバの融着接続方法によれば、融着接続する2本の裸光ファイバが既知の大口径と細径の外径を有し、大口径の裸光ファイバが撮像視野内に収まらない場合であっても、前記2本の裸光ファイバの外周の上辺同士又は下辺同士を撮像視野内に収めて、前記細径の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置が、前記大口径の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置に対して前記2本の裸光ファイバの外径差の1/2だけずれるように前記細径の裸光ファイバをX軸方向に移動するだけで、前記2本の裸光ファイバを容易に調心できる。また、光学系の倍率を落とさずに済むので、前記2本の裸光ファイバの調心精度や性能を落とすことがない。
【0026】
また、この発明の光ファイバの融着接続方法によれば、融着接続する2本の裸光ファイバの一方あるいは両方が撮像視野内に収まらない未知の外径の大口径の裸光ファイバである場合であっても、前記2本の裸光ファイバを容易に調心できる。また、光学系の倍率を落とさずに済むので、前記2本の裸光ファイバの調心精度や性能を落とすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A),(B)は、この発明の第1の実施の形態に係る光ファイバの融着接続方法を示す概略説明図である。
【図2】(A),(B)は、この発明の第2の実施の形態に係る光ファイバの融着接続方法を示す概略説明図である。
【図3】この発明の第3の実施の形態に係る光ファイバの融着接続方法を示す概略説明図である。
【図4】(A),(B)は、この発明の第4の実施の形態に係る光ファイバの融着接続方法の各工程を示す概略説明図である。
【図5】この発明の第4の実施の形態に係る光ファイバの融着接続方法の工程を示す概略説明図である。
【図6】この発明の実施の形態に係る光ファイバ融着接続装置の概略的な正面図である。
【図7】この発明の実施の形態に係る光ファイバ融着接続装置の概略的な平面図である。
【図8】(A),(B)は、従来の光ファイバ融着接続方法の各工程を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
なお、この発明に適用される光ファイバとは、光ファイバ素線、光ファイバ心線などをいうものである。以下、この明細書では単に「光ファイバ」と称している。
【0030】
この実施の形態に係る光ファイバ融着接続方法で用いられる光ファイバ融着接続装置1について説明する。
【0031】
図6及び図7を参照するに、この光ファイバ融着接続装置1は、前もって、一方側の第1の光ファイバ3と他方側の第2の光ファイバ5の先端部をその長手方向に渡って被覆除去しており、前記第1の光ファイバ3の第1の裸光ファイバ7(図6,図7において左側)と、前記第2の光ファイバ5の第2の裸光ファイバ9(図6,図7において右側)を突き合わせて融着接続するものである。
【0032】
また、光ファイバ融着接続装置1には、前記第1,第2の光ファイバ3,5の先端を互いに突合わせるために位置決めすべく収めるための突合わせ用V溝11を有する突合わせ部13,15と、この突合わせ部13,15の後方側に一体的に設けられて、前記第1,第2の光ファイバ3,5の後方側を把持する光ファイバホルダ17,19が設けられている。
【0033】
より詳しくは、光ファイバホルダ17は、第1の光ファイバ3を載置するホルダベース部17Aと、このホルダベース部17Aの前記第1の光ファイバ3を押さえるためのクランプ部17Bで構成されている。一方、光ファイバホルダ19は、第2の光ファイバ5を載置するホルダベース部19Aと、このホルダベース部19Aの前記第2の光ファイバ5を押さえるためのクランプ部19Bで構成されている。
【0034】
上記の突合わせ部13,15はほぼ四角形状のブロックで、このブロックの図6及び図7において左右方向の間には幅方向(図7において上下方向)に向けて間隔21が設けられている。また、前述した突合わせ用V溝11は突合わせ部13,15のブロック上面に前後方向(図7において左右方向)に向けて設けられている。なお、両側のブロック上面の互いに対向する各V溝11の中心は、一直線上に配置されている。
【0035】
また、上記の光ファイバホルダ17,19は、図示しないホルダ可動装置により、装置本体部23の上にガイド部を介して第1,第2の裸光ファイバ7,9の長手方向(図7において左右方向)に直交するX軸方向、すなわち図7において上下方向に可動するように設けられている。
【0036】
また、突合わせ部13,15の間隔21の図7において上下方向の両側には突合わせ部13,15で互いに突き合わされた第1,第2の光ファイバ3,5を融着して接続するための放電加熱装置25が設けられている。
【0037】
この放電加熱装置25は、突き合わせる第1,第2の裸光ファイバ7,9に対して直交して相対する1対の放電電極27,29と、この1対の放電電極27,29の間に電圧を印加して放電(アーク発生)させて、前記第1,第2の裸光ファイバ7,9の先端部を放電するための放電用電源装置31と、から構成されている。なお、前記放電用電源装置31は突き合わせる第1,第2の裸光ファイバ7,9に対する放電パワーや加熱時間などを最適な状態に制御するために制御装置33に接続されている。
【0038】
また、上記の突合わせ部13,15の上方には、突き合わせる第1,第2の裸光ファイバ7,9の先端位置を観察し、撮像するための撮像手段としての例えばCCDカメラ35が設けられており、CCDカメラ35は撮像された画像を処理するための画像処理手段としての例えば画像処理装置37を介して制御装置33に接続されている。
【0039】
なお、上記の画像処理装置37では、CCDカメラ35で撮像された画像から上記の第1,第2の裸光ファイバ7,9の先端位置を判断するものである。例えば、第1の裸光ファイバ7の先端位置、第2の裸光ファイバ9の先端位置が位置座標で判断される。
【0040】
制御装置33には、第1,第2の裸光ファイバ7,9の先端位置座標を計算するための図示しない演算装置と、光ファイバ融着接続方法に対応した指令を、それぞれ該当する手段に与えるための図示しない指令部と、が備えられている。
【0041】
次に、この発明の実施の形態に係る光ファイバ融着接続方法について、上記の光ファイバ融着接続装置1を用いて説明する。
【0042】
図1(A)を参照するに、第1の実施の形態の光ファイバ融着接続方法は、前述した光ファイバ融着接続装置1で説明したように、前もって、一方側の第1の光ファイバ3と他方側の第2の光ファイバ5の先端部をその長手方向に渡って被覆除去しており、前記第1の光ファイバ3の第1の裸光ファイバ7(図6において左側)と、前記第2の光ファイバ5の第2の裸光ファイバ9(図6において右側)を突き合わせる。この第1,第2の裸光ファイバ7,9に対して直交して相対する1対の放電電極27,29で融着接続するものである。
【0043】
上記の2本の第1,第2の裸光ファイバ7,9を融着接続するには、第1,第2の裸光ファイバ7,9をCCDカメラ35で撮像し、この撮像した画像により第1,第2の裸光ファイバ7,9を調心する。
【0044】
この実施の形態では第1,第2の光ファイバ3,5としては光ファイバ心線が用いられており、第1,第2の裸光ファイバ7,9は、既知の同一外径を有する大口径である。したがって、大口径の第1,第2の裸光ファイバ7,9が撮像エリア39(撮像視野;モニタ範囲、位置検出範囲)内に収まらない場合の方法を示している。
【0045】
なお、画像において左の第1の裸光ファイバ7の光軸位置XL0は、第1の裸光ファイバ7の外周の下辺位置XL1と上辺位置XL2の平均植、すなわちXL0=(XL1+XL2)/2で示される。一方、画像において右の第2の裸光ファイバ9の光軸位置XR0は、第2の裸光ファイバ9の外周の下辺位置XR1と上辺位置XR2の平均植、すなわちXR0=(XR1+XR2)/2で示される。
【0046】
図1(A)では、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の下辺同士XL1,XR1を撮像エリア39内に収めて、制御装置33の演算装置により前記下辺同士XL1,XR1の位置座標を計算し、この位置座標に基づいて制御装置33の指令部から与えられる指令により、図示しないホルダ可動装置で前記下辺同士XL1,XR1を位置合わせするように第1,第2の裸光ファイバ7,9を移動する。その結果、第1,第2の裸光ファイバ7,9が既知の同一外径であるので、必然的に第1の裸光ファイバ7の光軸位置XL0と第2の裸光ファイバ9の光軸位置XR0が一致して第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心が行われることになる。
【0047】
あるいは、図1(B)に示されているように、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の上辺同士XL2,XR2を撮像エリア39内に収めて、制御装置33の演算装置により上辺同士XL2,XR2の位置座標を計算し、この位置座標に基づいて制御装置33の指令部から与えられる指令により、図示しないホルダ可動装置で前記上辺同士XL2,XR2を位置合わせするように第1,第2の裸光ファイバ7,9を移動する。その結果、上述した図1(A)と同様に、必然的に第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心が行われることになる。
【0048】
上記のように調心された第1,第2の裸光ファイバ7,9は、放電電極27,29から放電されるアークにより融着接続される。
【0049】
以上のことから、第1,第2の裸光ファイバ7,9が既知の同一外径を有するもので、大口径の第1,第2の裸光ファイバ7,9が撮像エリア39内に収まらない場合であっても、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の下辺同士XL1,XR1(あるいは上辺同士XL2,XR2)を撮像エリア39内に収めてから前記下辺同士XL1,XR1(あるいは上辺同士XL2,XR2)を位置合わせするだけで、容易に第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心ができる。また、光学系の倍率を落とさずに済むので、第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心精度や性能を落とすことがない。
【0050】
次に、この第2の実施の形態に係る光ファイバ融着接続方法について説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同様の構成は同じ符号を付して説明する。
【0051】
また、前述した第1の実施の形態と同様に、第1,第2の裸光ファイバ7,9をCCDカメラ35で撮像し、この撮像した画像により第1,第2の裸光ファイバ7,9を調心してから、放電電極27,29で融着接続するものである。
【0052】
図2(A),(B)を参照するに、第2の実施の形態の光ファイバ融着接続方法が前述した第1の実施の形態と異なる点としては、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外径が既知であるが、低融点あるいは細径の裸光ファイバである。また、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外径が同じか、あるいは異なる場合でも適用可能である。なお、図2(B)では、第1,第2の裸光ファイバ7,9が異径の場合を示している。
【0053】
上記の2本の第1,第2の裸光ファイバ7,9が1対の放電電極27,29による放電路の中央位置O−O’からX軸方向の図2(B)の撮像エリア39において下方にシフト距離S分だけ移動されていると、光ファイバは図2(A)においてS/COSθ分だけ下方にシフトする。θはカメラの光軸と放電路O−O’とのなす角度である。
【0054】
なお、上記の中央位置O−O’から遠ざかるにつれて低熱量となる。図2(A),(B)では、2本の第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の上辺同士XL1,XR1を撮像エリア39内に収めるように移動される。
【0055】
すなわち、図2(B)では、制御装置33の演算装置により第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の上辺同士XL1,XR1の位置座標が計算される。この位置に基づいて制御装置33の指令部から与えられる指令により、図示しないホルダ可動装置で、上記の第1の裸光ファイバ7がその外周の上辺位置XL1を前記中央位置O−O’から(シフト距離S−第1の裸光ファイバ7の半径)までの距離に合わせるように移動される。一方、上記の第2の裸光ファイバ9がその外周の上辺位置XR1を前記中央位置O−O’から(シフト距離S−第2の裸光ファイバ9の半径)までの距離に合わせるように移動される。
【0056】
その結果、必然的に第1の裸光ファイバ7の光軸位置XL0と第2の裸光ファイバ9の光軸位置XR0が一致して第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心が行われることになる。
【0057】
上記のように調心された第1,第2の裸光ファイバ7,9は、放電電極27,29から放電されるアークにより融着接続される。
【0058】
以上のことから、第1,第2の裸光ファイバ7,9が低融点や細径である場合は、調心精度を落とさずに、第1,第2の裸光ファイバ7,9を放電路の中央位置O−O’からシフト距離S/COSθ分だけ、下方に移動して遠ざけることができ、低い熱量で融着接続することができる。
【0059】
しかも、第1の裸光ファイバ7の外周の上辺位置XL1を中央位置O−O’から(シフト距離S−第1の裸光ファイバ7の半径)までの距離に合わせるように移動する。一方、第2の裸光ファイバ9の外周の上辺位置XR1を中央位置O−O’から(シフト距離S−第2の裸光ファイバ9の半径)までの距離に合わせるように移動するだけで、容易に第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心ができる。また、光学系の倍率を落とさずに済むので、第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心精度や性能を落とすことがない。
【0060】
次に、この第3の実施の形態に係る光ファイバ融着接続方法について説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同様の構成は同じ符号を付して説明する。また、前述した第1の実施の形態と同様に、第1,第2の裸光ファイバ7,9を調心してから、放電電極27,29で融着接続するものである。
【0061】
例えば、図3では第1の裸光ファイバ7の外径が大口径であり、第2の裸光ファイバ9の外径が細径である場合で説明すると、大口径の第1の裸光ファイバ7が撮像エリア39内に収まらない場合、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の下辺同士が撮像エリア39内に収まるように配置される。
【0062】
次いで、図3では、制御装置33の演算装置により第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の下辺同士XL1,XR1の位置座標が計算される。この位置座標に基づいて制御装置33の指令部から与えられる指令により、細径の第2の裸光ファイバ9の外周の下辺位置XR1が、大口径の第1の裸光ファイバ7の外周の下辺位置XL1に対して第1,第2の裸光ファイバ7,9の外径差の1/2だけずれるように細径の第2の裸光ファイバ9をX軸方向に移動する。
【0063】
例えば、大口径の第1の裸光ファイバ7の外径DLが例えば400μmで、細径の第2の裸光ファイバ9の外径DRが80μmとすると、1/2外径差△Dは(DL−DR)/2=(400−80)/2=160μmとなる。したがって、細径の第2の裸光ファイバ9の外周の下辺位置XR1が大口径の第1の裸光ファイバ7の外周の下辺位置XL1に対して160μmだけX軸方向で図3において上方に移動されることになる。なお、第1,第2の裸光ファイバ7,9における通常径は125μmで、細径は80μmで、大口径は140μm、250μm、300μm、400μmなどがある。
【0064】
その結果、必然的に第1の裸光ファイバ7の光軸位置XL0と第2の裸光ファイバ9の光軸位置XR0が一致して第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心が行われることになる。
【0065】
あるいは、上記の2本の第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の上辺同士XL2,XR2を撮像エリア39内に収めるように配置されてから、前記細径の第2の裸光ファイバ9の外周の上辺位置XR2が、前記大口径の第1の裸光ファイバ7の外周の上辺位置XL2に対して第1,第2の裸光ファイバ7,9の外径差の1/2だけずれるように前記細径の第2の裸光ファイバ9をX軸方向に移動しても良い。
【0066】
上記のように調心された第1,第2の裸光ファイバ7,9は、放電電極27,29から放電されるアークにより融着接続される。
【0067】
以上のことから、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外径が既知であるが、大口径の第1の裸光ファイバ7と細径の第2の裸光ファイバ9の異径であって、大口径の第1裸光ファイバ7が撮像エリア39内に収まらない場合であっても、容易に第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心ができる。また、光学系の倍率を落とさずに済むので、第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心精度や性能を落とすことがない。
【0068】
次に、この第4の実施の形態に係る光ファイバ融着接続方法について説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同様の構成は同じ符号を付して説明する。また、前述した第1の実施の形態と同様に、第1,第2の裸光ファイバ7,9をCCDカメラ35で撮像し、この撮像した画像により第1,第2の裸光ファイバ7,9を調心してから、放電電極27,29で融着接続するものである。
【0069】
図4(A)を参照するに、第4の実施の形態の光ファイバ融着接続方法が前述した第1,第2,第3の実施の形態と異なる点としては、第1,第2の裸光ファイバ7,9の一方あるいは両方が撮像エリア39内に収まらない未知の外径の大口径の裸光ファイバである場合に適用される。
【0070】
例えば、図4(A)では第1,第2の裸光ファイバ7,9の外径が両方とも未知の大口径であるが、第1の裸光ファイバ7の外径が第2の裸光ファイバ9の外径より大きい異径である場合で説明すると、ステップ1としては、大口径の第1,第2の裸光ファイバ7,9が撮像エリア39内に収まらない場合、図示しないホルダ可動装置で第1,第2の裸光ファイバ7,9が図4(A)において上方へ移動されることにより、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の下辺同士XL1,XR1が撮像エリア39内に収まるように配置される。
【0071】
次いで、図4(A)では、制御装置33の演算装置により第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の下辺同士XL1,XR1の位置座標が計算される。この位置座標に基づいて制御装置33の指令部から与えられる指令により、前記下辺同士XL1,XR1を位置合わせするように第1,第2の裸光ファイバ7,9を移動する。すなわち、図4(A)では、第2の裸光ファイバ9が下方へ移動されて、前記下辺同士XL1,XR1が位置合わせされる。
【0072】
次に、ステップ2としては、図4(B)に示されているように、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の各上辺XL2’,XR2’が撮像エリア39内に収まるように、前記第1,第2の裸光ファイバ7,9をX軸方向で図4(B)において下方に、すなわち二点鎖線の位置から実線の位置へシフト距離S分だけ平行移動し、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の各上辺位置XL2’,XR2’が検出される。つまり、制御装置33の演算装置により前記各上辺位置XL2’,XR2’の位置座標が計算される。この検出した各上辺位置XL2’,XR2’の差で第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の外径差ΔDが計算される。
【0073】
上記の例に基づいた計算方法を示すと、前記第1,第2の裸光ファイバ7,9の各外径は以下の式で表すことができる。
【0074】
左側の第1の光ファイバ7の外径DL=(XL2’−XL1)+S
右側の第2の光ファイバ9の外径DR=(XR2’−XR1)+S
ここから外径差△D(=DL−DR)を算出する。
【0075】
XL1=XR1であるので、
外径差△D=DL−DR=XL2’−XR2’となる。
【0076】
仮に、未知である大口径の第1の裸光ファイバ7の外径DLが例えば400μmで、大口径の第2の裸光ファイバ9の外径DRが300μmであったとすると、前記各上辺位置XL2’,XR2’の位置座標から、外径差ΔDは(DL−DR)=(400−300)=100μmが計算される。
【0077】
次に、ステップ3としては、図5に示されているように、外径が小さい方の第2の裸光ファイバ9が、前記外径差ΔDの1/2だけX軸方向の上辺側に移動される。
【0078】
上記の例では、外径差△Dの1/2が50μmとなるので、大口径の第2の裸光ファイバ9の外周の上辺位置XR2”が大口径の第1の裸光ファイバ7の外周の上辺位置XL2’に対して50μm(=△D/2)だけX軸方向で図5において上方に移動されることになる。
【0079】
あるいは、上記とは移動方向が逆で、上記の2本の第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の上辺同士XL2,XR2を撮像エリア39内に収めるように配置されてから、前記上辺同士XL2,XR2を位置合わせするように第1,第2の裸光ファイバ7,9を移動し、次に、第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の各下辺XL1,XR1を撮像エリア39内に収めるように、シフト距離S分だけ平行移動して前記各下辺XL1’,XR1’を検出し、この下辺位置XL1’,XR1’の差で第1,第2の裸光ファイバ7,9の外周の外径差ΔDを計算し、外径が小さい方の第2の裸光ファイバ9を外径差ΔDの1/2だけX軸方向の下辺側に移動しても良い。
【0080】
その結果、必然的に第1の裸光ファイバ7の光軸位置XL0と第2の裸光ファイバ9の光軸位置XR0が一致して第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心が行われることになる。
【0081】
上記のように調心された第1,第2の裸光ファイバ7,9は、放電電極27,29から放電されるアークにより融着接続される。
【0082】
以上のことから、第1,第2の裸光ファイバ7,9が一方あるいは両方が撮像エリア39内に収まらない未知の外径の大口径の裸光ファイバである場合であっても、容易に第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心ができる。また、光学系の倍率を落とさずに済むので、第1,第2の裸光ファイバ7,9の調心精度や性能を落とすことがない。
【符号の説明】
【0083】
1 光ファイバ融着接続装置
3 第1の光ファイバ
5 第2の光ファイバ
7 第1の裸光ファイバ
9 第2の裸光ファイバ
11 突合わせ用V溝
13,15 突合わせ部
17,19 光ファイバホルダ
17A,19A ホルダベース部
17B,19B クランプ部
21 間隔
23 装置本体部
25 放電加熱装置
27,29 放電電極
31 放電用電源装置
33 制御装置
35 CCDカメラ(撮像手段)
37 画像処理装置(画像処理手段)
39 撮像エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の外径を有する2本の裸光ファイバを撮像し、この撮像した画像により前記2本の裸光ファイバを調心してから前記2本の裸光ファイバに対して直交するX軸方向に相対する1対の放電電極で融着接続する際に、
前記2本の第1,第2の裸光ファイバの外周の上辺同士又は下辺同士を撮像視野内に収めるように、前記2本の裸光ファイバを前記1対の放電電極による放電路の中央位置から一方の電極側のX軸方向にシフト距離S分だけ平行移動し、この平行移動するときに、前記第1の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置を前記中央位置から(シフト距離S−第1の裸光ファイバの半径)までの距離に合わせると共に、前記第2の裸光ファイバの外周の上辺又は下辺の位置を前記中央位置から(シフト距離S−第2の裸光ファイバの半径)までの距離に合わせることにより、前記2本の裸光ファイバの調心を行うことを特徴とする光ファイバの融着接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−209761(P2011−209761A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161864(P2011−161864)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2007−35171(P2007−35171)の分割
【原出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】