光ファイバカッタ
【課題】光ファイバのカット回数を正確にカウント表示させることができる光ファイバカッタを提供する。
【解決手段】光ファイバカッタ1は、光ファイバ2を保持するファイバホルダ6を位置決めするホルダガイド部7を有するカッタ基体3と、カッタ基体3に開閉可能に取り付けられたカッタ蓋体とを備えている。カッタ基体3には、光ファイバ2に傷を付ける刃部材を有するスライダが幅方向に移動可能に取り付けられている。ホルダガイド部7の一側壁側には、爪部材20が配置されている。また、カッタ基体3には、スライダが初期位置に戻る回数をカウント表示するためのカウント表示機構21が設けられている。光ファイバカッタ1は、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされることで、爪部材20が押されたときのみ、カウント表示機構21によるカウント動作が有効化するように構成されている。
【解決手段】光ファイバカッタ1は、光ファイバ2を保持するファイバホルダ6を位置決めするホルダガイド部7を有するカッタ基体3と、カッタ基体3に開閉可能に取り付けられたカッタ蓋体とを備えている。カッタ基体3には、光ファイバ2に傷を付ける刃部材を有するスライダが幅方向に移動可能に取り付けられている。ホルダガイド部7の一側壁側には、爪部材20が配置されている。また、カッタ基体3には、スライダが初期位置に戻る回数をカウント表示するためのカウント表示機構21が設けられている。光ファイバカッタ1は、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされることで、爪部材20が押されたときのみ、カウント表示機構21によるカウント動作が有効化するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを切断する光ファイバカッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバカッタとしては、例えば特許文献1に記載されているように、光ファイバを保持したファイバホルダを位置決めするファイバ載置部を有する下箱体(カッタ基体)と、この下箱体の一端にヒンジ部材を介して回動自在に連結された上箱体(カッタ蓋体)と、下箱体に移動可能に支持され、光ファイバのガラスファイバ部分に創傷を付ける円板状の刃部材を回転自在に支持する支持枠(スライダ)とを備えたものが知られている。
【0003】
また、光ファイバカッタには、板バネ上で光ファイバをファイバクランプで押さえつけた後、カバーを降ろして刃を光ファイバに押し込むことで、光ファイバに初期傷をつけると共に、カウントボタンを板バネに押し込むことで、刃の累積使用回数をカウンタに表示させるものもある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−203815号公報
【特許文献2】実開平2−62405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、以下の問題点が存在する。即ち、上記特許文献2を上記特許文献1に適用した場合には、スライダの移動回数を刃部材による光ファイバのカット回数としてカウントすることになる。しかし、光ファイバを保持したファイバホルダがファイバ載置部にセットされていない状態で、スライダを移動させたときでも、光ファイバがカットされたものとしてカウントされてしまう。従って、光ファイバのカット回数を正確にカウント表示させることができない。
【0006】
本発明の目的は、光ファイバのカット回数を正確にカウント表示させることができる光ファイバカッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光ファイバを切断する光ファイバカッタにおいて、光ファイバを保持するファイバホルダを位置決めするホルダガイド部を有するカッタ基体と、カッタ基体に移動可能に取り付けられ、光ファイバに傷を付ける刃部材を有するスライダと、カッタ基体に開閉可能に取り付けられ、カッタ基体に対して閉じることでスライダを初期位置に戻すように移動させるカッタ蓋体と、カッタ基体に設けられ、スライダが初期位置に戻る回数をカウント表示するためのカウント表示機構と、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのみ、カウント表示機構によるカウント動作を有効化させるように、カウント表示機構を機械的に制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような本発明の光ファイバカッタを用いて、光ファイバの切断作業を行うときは、スライダを初期位置から押し込んで移動させた後、光ファイバを保持したファイバホルダをカッタ基体のファイバガイド部にセットし、その状態でカッタ蓋体をカッタ基体に対して閉じることで、スライダを初期位置に戻すように移動させる。すると、スライダに設けられた刃部材によって光ファイバに傷が付けられ、光ファイバが切断される。
【0009】
このとき、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのみ、カウント表示機構によるカウント動作を有効化させるように、カウント表示機構を機械的に制御する制御手段を設けることにより、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされていない状態では、スライダを初期位置に戻すように移動させても、スライダが初期位置に戻る回数がカウント表示機構によりカウントされることは無い。これにより、光ファイバのカット回数をカウント表示機構により正確にカウント表示させることができる。
【0010】
好ましくは、制御手段は、ホルダガイド部に設けられ、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされると押される爪部材と、爪部材が押されている状態でスライダが初期位置に戻るときのみ、カウント表示機構を1カウント分に相当する角度だけ回転させる回転駆動手段とを有する。この場合には、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされると、爪部材が押され、その状態でスライダを初期位置に戻すと、カウント表示機構が1カウント分に相当する角度だけ回転する。一方、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされていないときは、爪部材が押されないため、スライダを初期位置に戻しても、カウント表示機構が1カウント分に相当する角度だけ回転することは無い。これにより、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのみ、カウント表示機構によるカウント動作が有効化されることとなる。
【0011】
このとき、好ましくは、回転駆動手段は、スライダに設けられた突起部と、爪部材に連動して回動するようにカッタ基体に設けられ、爪部材が押されたときに突起部と係合する係合部を有する回動部材と、カウント表示機構に取り付けられた補助ギアと、回動部材に設けられ、補助ギアと係合する係合片とを有する。ファイバホルダがホルダガイド部にセットされることで、爪部材が押されると、それに連動して回動部材が回動し、回動部材の係合部がスライダに設けられた突起部と係合する。その状態で、スライダを初期位置に戻すと、回動部材に設けられた係合片が補助ギアと係合して、補助ギアが1カウント分に相当する角度(36度)だけ回転し、これに伴ってカウント表示機構が同じ角度だけ回転するようになる。このように回転駆動手段を簡単な構造で実現することができる。
【0012】
このとき、好ましくは、係合部は、爪部材が押されている状態において、突起部が初期位置に向かうに従って回動部材を回動させるように傾斜した傾斜面を有し、係合片の数は2つであり、2つの係合片は、互いに異なる位置及びタイミングで補助ギアと係合する。この場合には、スライダが初期位置に戻るときに、突起部が係合部の傾斜面を通ることで、回動部材が回動するため、一方の係合片が補助ギアと係合して、補助ギアが所定角度だけ回転し、これに伴ってカウント表示機構が同じ角度だけ回転する。そして、突起部が係合部の傾斜面を通り過ぎると、回動部材が元の状態(爪部材が押されているときの通常状態)になるように反対方向に回動するため、他方の係合片が補助ギアと係合して、補助ギアが同じ方向に所定角度だけ回転し、これに伴ってカウント表示機構が同じ角度だけ回転する。このように係合片を2回補助ギアと係合させることにより、カウント表示機構を確実に1カウント分に相当する角度(36度)だけ回転させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバのカット回数を正確にカウント表示させることができる。これにより、例えばユーザが刃部材の正確な寿命や交換時期を知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係わる光ファイバカッタの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したカッタ基体の前部を除く内部構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示した光ファイバカッタにより光ファイバに傷を付ける様子を示す概念図である。
【図4】図1に示したカッタ蓋体を閉じた状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示したカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図及び側面図である。
【図6】図5に示したカウント表示機構を示す斜視図である。
【図7】図1に示したファイバホルダがホルダガイド部にセットされていないときのカッタ基体の前部を示す斜視図である。
【図8】図1に示したファイバホルダがホルダガイド部にセットされていないときのカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図及び断面図である。
【図9】図1に示したファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図である。
【図10】図1に示したファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのカッタ基体の前部を示す斜視図及び断面図である。
【図11】図2に示したスライダが初期位置に向かって移動したときのカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図である。
【図12】図2に示したスライダが初期位置に向かって更に移動したときのカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図である。
【図13】図2に示したスライダが初期位置に向かって更に移動したときのカッタ基体の前部を示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係わる光ファイバカッタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係わる光ファイバカッタの一実施形態を示す斜視図である。同図において、本実施形態の光ファイバカッタ1は、光ファイバ2の先端部分の被覆を除去して露出されたガラスファイバ2aを切断するものである。
【0017】
光ファイバカッタ1は、カッタ基体3と、このカッタ基体3に開閉可能に取り付けられたカッタ蓋体4とを備えている。カッタ蓋体4は、カッタ基体3の後端部においてカッタ基体3の幅方向に延びる軸部5を介して回動可能に連結されている。カッタ基体3の上面には、切断すべき光ファイバ2を保持するファイバホルダ6を位置決めする略矩形凹状のホルダガイド部7が形成されている。
【0018】
ホルダガイド部7の一側壁側には、爪部材20が配置されている。ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされていない通常状態では、バネ(図示せず)の付勢力により爪部材20が出っ張った状態となっている。ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされると、バネの付勢力に抗して爪部材20が側壁側に押されて引っ込んだ状態となる(図10参照)。
【0019】
カッタ基体3におけるホルダガイド部7の後側(軸部5側)には、スライダ8が取り付けられている。スライダ8は、図2に示すように、カッタ基体3の幅方向に移動可能である。スライダ8の一端部には、押し込み壁部9が設けられている。カッタ基体3の一側壁には、押し込み壁部9を露出させるための開放部3aが形成されている。スライダ8の他端部とカッタ基体3の他側壁との間には、スライダ8を開放部3a側に付勢するバネ10(図3参照)が設けられている。スライダ8は、バネ10の付勢力によって、通常は図2(b)に示すような初期位置にある。
【0020】
スライダ8の支持壁部11には、光ファイバ2のガラスファイバ2aに傷を付ける円板状の刃部材12が回転可能に支持されている。刃部材12には円形のギア13が取り付けられており、刃部材12及びギア13が一体で回転可能となっている。カッタ基体3における開放部3aの反対側の部分には、ギア13と係合するアーム部材14が設けられている。
【0021】
このような光ファイバカッタ1を用いて、光ファイバ2の切断作業を行うときは、まずカッタ基体3に対してカッタ蓋体4が開いた状態で、図3(a)に示すように、スライダ8の押し込み壁部9を押し込む。すると、図2(a)及び図3(b)に示すように、スライダ8がバネ10の付勢力に抗して開放部3aの反対側に移動してカット開始位置に達する。このとき、カッタ基体3に設けられた係止構造(図示せず)によって、スライダ8はカット開始位置に保持された状態となる。
【0022】
また、アーム部材14がギア13と係合することで、ギア13が所定量だけ回転し、これに伴って刃部材12が所定量だけ回転する。このため、スライダ8がカット開始位置に達する度に、刃部材12における光ファイバ2と接触する部分が所定量だけずれることになる。これにより、刃部材12の寿命を長くすることができる。
【0023】
その状態で、図1に示すように、光ファイバ2を保持したファイバホルダ6をカッタ基体3のホルダガイド部7にセットする。これにより、図3(c)に示すように、光ファイバ2がスライダ8に対して位置決めされた状態となる。
【0024】
次いで、図4に示すように、カッタ基体3に対してカッタ蓋体4を閉じる。すると、カッタ蓋体4に設けられた係止解除片(図示せず)によって、カッタ基体3に対するスライダ8の係止状態が解除される。これにより、図2(b)及び図3(d)に示すように、スライダ8がバネ10の付勢力により開放部3a側に移動して初期位置(カット完了位置)に戻るようになる。
【0025】
このとき、刃部材12が開放部3a側に移動することで、刃部材12が光ファイバ2のガラスファイバ2aに接触し、刃部材12によりガラスファイバ2aに傷が付けられて、ガラスファイバ2aがカットされることとなる。
【0026】
また、カッタ基体3の前部には、図5に示すように、スライダ8が初期位置に戻る回数(刃部材12による光ファイバ2のカット回数)をカウント表示するためのカウント表示機構21が設けられている。カッタ基体3の下面には、カウント表示機構21のカウント表示の数字を目視で確認するための表示窓22が形成されている。カウント表示機構21は、カウント数を5ケタの数字で表すようになっている。
【0027】
カウント表示機構21は、図6に示すように、支持体23に回転可能に支持された5つのギア部付きの数字円板24と、支持体23に回転可能に支持され、各数字円板24のギア部と噛み合う5つのギア25とを有している。数字円板24の外周面には、「0」、「1」、「2」…「9」の数字が等間隔(36度間隔)で付されている。カウント表示機構21は、任意の数字円板24が1回転すると、その数字円板24の1つ上の位に相当する数字円板24が1だけカウントアップするように構成されている。これにより、カウント表示機構21は、「00000」から「99999」まで1ずつカウント表示可能となる。なお、カウント表示機構21は、カウント数を「00000」にリセットする機能を有している。
【0028】
一の位に相当する数字円板24のギア部には、補助ギア26が取り付けられている。補助ギア26は、一の位に相当する数字円板24と一緒に回転する。
【0029】
支持体23には、略L字状の回動部材27が回動可能に支持されている。また、支持体23には、回動部材27をカッタ基体3の上面及び下面に対して水平状態となる方向に付勢するための2つの巻きバネ28(図11参照)が取り付けられている。
【0030】
回動部材27におけるスライダ8の反対側の端部には、上記の爪部材20に連動する片部材29(図7参照)と係合する爪側係合部30が設けられている。ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされていないことで、爪部材20が出っ張った状態にあるときは、図7及び図8に示すように、片部材29が爪側係合部30を押し付け、これに伴って回動部材27が水平状態に対して角度α(例えば10.2度)だけ傾いた状態となる。一方、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされることで、爪部材20が側壁側に引っ込んだ状態となると、図9及び図10に示すように、片部材29が軸部(図示せず)を中心として回動し、片部材29による爪側係合部30の押し付けが解除されるため、巻きバネ28の付勢力によって回動部材27が水平状態(傾斜角度がゼロ)となる。
【0031】
回動部材27におけるスライダ8側の部位には、図8及び図10に示すように、カッタ基体3の幅方向に延びるスライダ側係合部31が設けられている。スライダ側係合部31の下面は、スライダ8に取り付けられた突起部32と係合する係合面33となっている。係合面33は、平坦面33aと、この平坦面33aよりも開放部8a(前述)側に位置する傾斜面33bとからなっている。傾斜面33bは、開放部8a側に向かってスライダ側係合部31の厚みが徐々に大きくなるように形成されている。
【0032】
また、回動部材27には、図11に示すように、補助ギア26と係合する上係止片34と、この上係止片34とは異なる位置及びタイミングで補助ギア26と係合する下係止片35とが設けられている。
【0033】
以上において、爪部材20、補助ギア26、回動部材27、巻きバネ28、片部材29、突起部32、上係止片34及び下係止片35は、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされたときのみ、カウント表示機構21によるカウント動作を有効化させるように、カウント表示機構21を機械的に制御する制御手段を構成している。
【0034】
このとき、補助ギア26、回動部材27、巻きバネ28、片部材29、突起部32、上係止片34及び下係止片35は、爪部材20が押されている状態でスライダ8が初期位置に戻るときのみ、カウント表示機構21を1カウント分に相当する角度だけ回転させる回転駆動手段を構成している。
【0035】
以上のように構成した光ファイバカッタ1において、光ファイバ2の切断作業を行う際に、スライダ8を押し込んでカット開始位置に移動させるときは、未だホルダガイド部7にファイバホルダ6がセットされていない。このため、図8に示すように、回動部材27が水平状態に対して角度αだけ傾いた状態となっており、スライダ8の突起部32が回動部材27のスライダ側係合部31に当たることは無い。
【0036】
その後、光ファイバ2を保持したファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされると、上述したように爪部材20が側壁側に押されて引っ込むため、図10に示すように、片部材29と回動部材27の爪側係合部30との係合が解除され、回動部材27が水平状態となる。従って、突起部32がスライダ側係合部31に当たるようになる。
【0037】
その状態で、カッタ蓋体4を閉じると、上述したように、刃部材12を有するスライダ8が初期位置に戻るように移動することで、刃部材12により光ファイバ2がカットされる。
【0038】
このとき、図10及び図11に示すように、スライダ8の突起部32は、スライダ側係合部31の平坦面33aに当たった状態で移動する。そして、突起部32がスライダ側係合部31の傾斜面33bに達すると、巻きバネ28の付勢力に抗して突起部32がスライダ側係合部31を押し上げるように回動部材27を回動させるため、図12及び図13に示すように、再び回動部材27が水平状態に対して角度αだけ傾いた状態となる。このとき、上係止片34が補助ギア26と係合して、補助ギア26が所定角度(18度)だけ回転し、これに伴って一の位に相当する数字円板24が同じ角度だけ回転する。
【0039】
そして、突起部32がスライダ側係合部31の傾斜面33bを通過すると、巻きバネ28の付勢力によって再び回動部材27が水平状態となる。このとき、下係止片35が補助ギア26と係合して、補助ギア26が先と同じ方向に所定角度(18度)だけ回転し、これに伴って一の位に相当する数字円板24が同じ角度だけ回転する。
【0040】
これにより、最終的に一の位に相当する数字円板24が36度回転することになるため、カウント表示機構21が1だけカウントアップされるようになる。つまり、スライダ8が初期位置に戻ることで光ファイバ2がカットされる度に、カウント表示機構21が1だけカウントアップされることとなる。このように上係止片34及び下係止片35を用い、互いに異なる位置及びタイミングで補助ギア26と係合するようにすることで、同じ角度だけ数字円板24を回転させようとした場合、上係止片34及び下係止片35の移動量を少なくすることができるので、最終的に光ファイバカッタ1の小型化が図れる。
【0041】
ただし、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされていないときは、上述したように回動部材27が水平状態に対して角度αだけ傾いているため、スライダ8の突起部32が回動部材27のスライダ側係合部31に当たることは無い。このため、たとえスライダ8を初期位置に戻すように移動させても、上係止片34及び下係止片35が補助ギア26と係合することは無いため、一の位に相当する数字円板24が回転することは無く、結果的にカウント表示機構21がカウントアップされることは無い。
【0042】
以上のように本実施形態にあっては、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされることで、爪部材20が側壁側に押されたときのみ、スライダ8が初期位置に戻る回数をカウント表示機構21によりカウントするようにしたので、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされていないときには、スライダ8が初期位置に戻る回数がカウント表示機構21によりカウントされることは無い。これにより、カウント表示機構21において、刃部材12による光ファイバ2のカット回数を正確にカウント表示させることができる。その結果、刃部材12の交換時期の管理等を容易に行うことが可能となる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、回動部材27に上係止片34及び下係止片35を設け、これらの係止片34,35が補助ギア26と係合すると、補助ギア26が18度ずつ回転するような構成としたが、特にそのような構成には限られず、回動部材27に1つの係止片を設け、この係止片が補助ギア26と係合したときに、補助ギア26が36度回転するような構成としても良い。
【0044】
また、刃部材12の交換時期をユーザに知らせるために、カウント表示機構21のカウント数に応じて表示の色を変えて、刃部材12の交換を促すようにしても良い。例えば、カウント数が「50000」に達するまでは、表示の色を緑とし、カウント数が「50000」に達すると、「万の位」の表示の色をオレンジに変え、更にカウント数が「60000」以上になると、表示の色を赤に変える等といったようにする。
【0045】
また、カウント表示機構21のカウント数が予め設定した上限値に到達したときは、刃部材12の交換を必ず行うようにするために、刃部材12がスライドしないようにストッパがかかる構造を備えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0046】
1…光ファイバカッタ、2…光ファイバ、3…カッタ基体、4…カッタ蓋体、6…ファイバホルダ、7…ホルダガイド部、8…スライダ、12…刃部材、20…爪部材(制御手段)、21…カウント表示機構、26…補助ギア(回転駆動手段、制御手段)、27…回動部材(回転駆動手段、制御手段)、28…巻きバネ(回転駆動手段、制御手段)、29…片部材(回転駆動手段、制御手段)、31…スライダ側係合部、32…突起部(回転駆動手段、制御手段)、33…係合面、33b…傾斜面、34…上係合片(回転駆動手段、制御手段)、35…下係合片(回転駆動手段、制御手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを切断する光ファイバカッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバカッタとしては、例えば特許文献1に記載されているように、光ファイバを保持したファイバホルダを位置決めするファイバ載置部を有する下箱体(カッタ基体)と、この下箱体の一端にヒンジ部材を介して回動自在に連結された上箱体(カッタ蓋体)と、下箱体に移動可能に支持され、光ファイバのガラスファイバ部分に創傷を付ける円板状の刃部材を回転自在に支持する支持枠(スライダ)とを備えたものが知られている。
【0003】
また、光ファイバカッタには、板バネ上で光ファイバをファイバクランプで押さえつけた後、カバーを降ろして刃を光ファイバに押し込むことで、光ファイバに初期傷をつけると共に、カウントボタンを板バネに押し込むことで、刃の累積使用回数をカウンタに表示させるものもある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−203815号公報
【特許文献2】実開平2−62405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、以下の問題点が存在する。即ち、上記特許文献2を上記特許文献1に適用した場合には、スライダの移動回数を刃部材による光ファイバのカット回数としてカウントすることになる。しかし、光ファイバを保持したファイバホルダがファイバ載置部にセットされていない状態で、スライダを移動させたときでも、光ファイバがカットされたものとしてカウントされてしまう。従って、光ファイバのカット回数を正確にカウント表示させることができない。
【0006】
本発明の目的は、光ファイバのカット回数を正確にカウント表示させることができる光ファイバカッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光ファイバを切断する光ファイバカッタにおいて、光ファイバを保持するファイバホルダを位置決めするホルダガイド部を有するカッタ基体と、カッタ基体に移動可能に取り付けられ、光ファイバに傷を付ける刃部材を有するスライダと、カッタ基体に開閉可能に取り付けられ、カッタ基体に対して閉じることでスライダを初期位置に戻すように移動させるカッタ蓋体と、カッタ基体に設けられ、スライダが初期位置に戻る回数をカウント表示するためのカウント表示機構と、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのみ、カウント表示機構によるカウント動作を有効化させるように、カウント表示機構を機械的に制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような本発明の光ファイバカッタを用いて、光ファイバの切断作業を行うときは、スライダを初期位置から押し込んで移動させた後、光ファイバを保持したファイバホルダをカッタ基体のファイバガイド部にセットし、その状態でカッタ蓋体をカッタ基体に対して閉じることで、スライダを初期位置に戻すように移動させる。すると、スライダに設けられた刃部材によって光ファイバに傷が付けられ、光ファイバが切断される。
【0009】
このとき、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのみ、カウント表示機構によるカウント動作を有効化させるように、カウント表示機構を機械的に制御する制御手段を設けることにより、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされていない状態では、スライダを初期位置に戻すように移動させても、スライダが初期位置に戻る回数がカウント表示機構によりカウントされることは無い。これにより、光ファイバのカット回数をカウント表示機構により正確にカウント表示させることができる。
【0010】
好ましくは、制御手段は、ホルダガイド部に設けられ、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされると押される爪部材と、爪部材が押されている状態でスライダが初期位置に戻るときのみ、カウント表示機構を1カウント分に相当する角度だけ回転させる回転駆動手段とを有する。この場合には、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされると、爪部材が押され、その状態でスライダを初期位置に戻すと、カウント表示機構が1カウント分に相当する角度だけ回転する。一方、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされていないときは、爪部材が押されないため、スライダを初期位置に戻しても、カウント表示機構が1カウント分に相当する角度だけ回転することは無い。これにより、ファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのみ、カウント表示機構によるカウント動作が有効化されることとなる。
【0011】
このとき、好ましくは、回転駆動手段は、スライダに設けられた突起部と、爪部材に連動して回動するようにカッタ基体に設けられ、爪部材が押されたときに突起部と係合する係合部を有する回動部材と、カウント表示機構に取り付けられた補助ギアと、回動部材に設けられ、補助ギアと係合する係合片とを有する。ファイバホルダがホルダガイド部にセットされることで、爪部材が押されると、それに連動して回動部材が回動し、回動部材の係合部がスライダに設けられた突起部と係合する。その状態で、スライダを初期位置に戻すと、回動部材に設けられた係合片が補助ギアと係合して、補助ギアが1カウント分に相当する角度(36度)だけ回転し、これに伴ってカウント表示機構が同じ角度だけ回転するようになる。このように回転駆動手段を簡単な構造で実現することができる。
【0012】
このとき、好ましくは、係合部は、爪部材が押されている状態において、突起部が初期位置に向かうに従って回動部材を回動させるように傾斜した傾斜面を有し、係合片の数は2つであり、2つの係合片は、互いに異なる位置及びタイミングで補助ギアと係合する。この場合には、スライダが初期位置に戻るときに、突起部が係合部の傾斜面を通ることで、回動部材が回動するため、一方の係合片が補助ギアと係合して、補助ギアが所定角度だけ回転し、これに伴ってカウント表示機構が同じ角度だけ回転する。そして、突起部が係合部の傾斜面を通り過ぎると、回動部材が元の状態(爪部材が押されているときの通常状態)になるように反対方向に回動するため、他方の係合片が補助ギアと係合して、補助ギアが同じ方向に所定角度だけ回転し、これに伴ってカウント表示機構が同じ角度だけ回転する。このように係合片を2回補助ギアと係合させることにより、カウント表示機構を確実に1カウント分に相当する角度(36度)だけ回転させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバのカット回数を正確にカウント表示させることができる。これにより、例えばユーザが刃部材の正確な寿命や交換時期を知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係わる光ファイバカッタの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したカッタ基体の前部を除く内部構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示した光ファイバカッタにより光ファイバに傷を付ける様子を示す概念図である。
【図4】図1に示したカッタ蓋体を閉じた状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示したカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図及び側面図である。
【図6】図5に示したカウント表示機構を示す斜視図である。
【図7】図1に示したファイバホルダがホルダガイド部にセットされていないときのカッタ基体の前部を示す斜視図である。
【図8】図1に示したファイバホルダがホルダガイド部にセットされていないときのカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図及び断面図である。
【図9】図1に示したファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図である。
【図10】図1に示したファイバホルダがホルダガイド部にセットされたときのカッタ基体の前部を示す斜視図及び断面図である。
【図11】図2に示したスライダが初期位置に向かって移動したときのカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図である。
【図12】図2に示したスライダが初期位置に向かって更に移動したときのカッタ基体の前部の内部構造を示す斜視図である。
【図13】図2に示したスライダが初期位置に向かって更に移動したときのカッタ基体の前部を示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係わる光ファイバカッタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係わる光ファイバカッタの一実施形態を示す斜視図である。同図において、本実施形態の光ファイバカッタ1は、光ファイバ2の先端部分の被覆を除去して露出されたガラスファイバ2aを切断するものである。
【0017】
光ファイバカッタ1は、カッタ基体3と、このカッタ基体3に開閉可能に取り付けられたカッタ蓋体4とを備えている。カッタ蓋体4は、カッタ基体3の後端部においてカッタ基体3の幅方向に延びる軸部5を介して回動可能に連結されている。カッタ基体3の上面には、切断すべき光ファイバ2を保持するファイバホルダ6を位置決めする略矩形凹状のホルダガイド部7が形成されている。
【0018】
ホルダガイド部7の一側壁側には、爪部材20が配置されている。ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされていない通常状態では、バネ(図示せず)の付勢力により爪部材20が出っ張った状態となっている。ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされると、バネの付勢力に抗して爪部材20が側壁側に押されて引っ込んだ状態となる(図10参照)。
【0019】
カッタ基体3におけるホルダガイド部7の後側(軸部5側)には、スライダ8が取り付けられている。スライダ8は、図2に示すように、カッタ基体3の幅方向に移動可能である。スライダ8の一端部には、押し込み壁部9が設けられている。カッタ基体3の一側壁には、押し込み壁部9を露出させるための開放部3aが形成されている。スライダ8の他端部とカッタ基体3の他側壁との間には、スライダ8を開放部3a側に付勢するバネ10(図3参照)が設けられている。スライダ8は、バネ10の付勢力によって、通常は図2(b)に示すような初期位置にある。
【0020】
スライダ8の支持壁部11には、光ファイバ2のガラスファイバ2aに傷を付ける円板状の刃部材12が回転可能に支持されている。刃部材12には円形のギア13が取り付けられており、刃部材12及びギア13が一体で回転可能となっている。カッタ基体3における開放部3aの反対側の部分には、ギア13と係合するアーム部材14が設けられている。
【0021】
このような光ファイバカッタ1を用いて、光ファイバ2の切断作業を行うときは、まずカッタ基体3に対してカッタ蓋体4が開いた状態で、図3(a)に示すように、スライダ8の押し込み壁部9を押し込む。すると、図2(a)及び図3(b)に示すように、スライダ8がバネ10の付勢力に抗して開放部3aの反対側に移動してカット開始位置に達する。このとき、カッタ基体3に設けられた係止構造(図示せず)によって、スライダ8はカット開始位置に保持された状態となる。
【0022】
また、アーム部材14がギア13と係合することで、ギア13が所定量だけ回転し、これに伴って刃部材12が所定量だけ回転する。このため、スライダ8がカット開始位置に達する度に、刃部材12における光ファイバ2と接触する部分が所定量だけずれることになる。これにより、刃部材12の寿命を長くすることができる。
【0023】
その状態で、図1に示すように、光ファイバ2を保持したファイバホルダ6をカッタ基体3のホルダガイド部7にセットする。これにより、図3(c)に示すように、光ファイバ2がスライダ8に対して位置決めされた状態となる。
【0024】
次いで、図4に示すように、カッタ基体3に対してカッタ蓋体4を閉じる。すると、カッタ蓋体4に設けられた係止解除片(図示せず)によって、カッタ基体3に対するスライダ8の係止状態が解除される。これにより、図2(b)及び図3(d)に示すように、スライダ8がバネ10の付勢力により開放部3a側に移動して初期位置(カット完了位置)に戻るようになる。
【0025】
このとき、刃部材12が開放部3a側に移動することで、刃部材12が光ファイバ2のガラスファイバ2aに接触し、刃部材12によりガラスファイバ2aに傷が付けられて、ガラスファイバ2aがカットされることとなる。
【0026】
また、カッタ基体3の前部には、図5に示すように、スライダ8が初期位置に戻る回数(刃部材12による光ファイバ2のカット回数)をカウント表示するためのカウント表示機構21が設けられている。カッタ基体3の下面には、カウント表示機構21のカウント表示の数字を目視で確認するための表示窓22が形成されている。カウント表示機構21は、カウント数を5ケタの数字で表すようになっている。
【0027】
カウント表示機構21は、図6に示すように、支持体23に回転可能に支持された5つのギア部付きの数字円板24と、支持体23に回転可能に支持され、各数字円板24のギア部と噛み合う5つのギア25とを有している。数字円板24の外周面には、「0」、「1」、「2」…「9」の数字が等間隔(36度間隔)で付されている。カウント表示機構21は、任意の数字円板24が1回転すると、その数字円板24の1つ上の位に相当する数字円板24が1だけカウントアップするように構成されている。これにより、カウント表示機構21は、「00000」から「99999」まで1ずつカウント表示可能となる。なお、カウント表示機構21は、カウント数を「00000」にリセットする機能を有している。
【0028】
一の位に相当する数字円板24のギア部には、補助ギア26が取り付けられている。補助ギア26は、一の位に相当する数字円板24と一緒に回転する。
【0029】
支持体23には、略L字状の回動部材27が回動可能に支持されている。また、支持体23には、回動部材27をカッタ基体3の上面及び下面に対して水平状態となる方向に付勢するための2つの巻きバネ28(図11参照)が取り付けられている。
【0030】
回動部材27におけるスライダ8の反対側の端部には、上記の爪部材20に連動する片部材29(図7参照)と係合する爪側係合部30が設けられている。ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされていないことで、爪部材20が出っ張った状態にあるときは、図7及び図8に示すように、片部材29が爪側係合部30を押し付け、これに伴って回動部材27が水平状態に対して角度α(例えば10.2度)だけ傾いた状態となる。一方、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされることで、爪部材20が側壁側に引っ込んだ状態となると、図9及び図10に示すように、片部材29が軸部(図示せず)を中心として回動し、片部材29による爪側係合部30の押し付けが解除されるため、巻きバネ28の付勢力によって回動部材27が水平状態(傾斜角度がゼロ)となる。
【0031】
回動部材27におけるスライダ8側の部位には、図8及び図10に示すように、カッタ基体3の幅方向に延びるスライダ側係合部31が設けられている。スライダ側係合部31の下面は、スライダ8に取り付けられた突起部32と係合する係合面33となっている。係合面33は、平坦面33aと、この平坦面33aよりも開放部8a(前述)側に位置する傾斜面33bとからなっている。傾斜面33bは、開放部8a側に向かってスライダ側係合部31の厚みが徐々に大きくなるように形成されている。
【0032】
また、回動部材27には、図11に示すように、補助ギア26と係合する上係止片34と、この上係止片34とは異なる位置及びタイミングで補助ギア26と係合する下係止片35とが設けられている。
【0033】
以上において、爪部材20、補助ギア26、回動部材27、巻きバネ28、片部材29、突起部32、上係止片34及び下係止片35は、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされたときのみ、カウント表示機構21によるカウント動作を有効化させるように、カウント表示機構21を機械的に制御する制御手段を構成している。
【0034】
このとき、補助ギア26、回動部材27、巻きバネ28、片部材29、突起部32、上係止片34及び下係止片35は、爪部材20が押されている状態でスライダ8が初期位置に戻るときのみ、カウント表示機構21を1カウント分に相当する角度だけ回転させる回転駆動手段を構成している。
【0035】
以上のように構成した光ファイバカッタ1において、光ファイバ2の切断作業を行う際に、スライダ8を押し込んでカット開始位置に移動させるときは、未だホルダガイド部7にファイバホルダ6がセットされていない。このため、図8に示すように、回動部材27が水平状態に対して角度αだけ傾いた状態となっており、スライダ8の突起部32が回動部材27のスライダ側係合部31に当たることは無い。
【0036】
その後、光ファイバ2を保持したファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされると、上述したように爪部材20が側壁側に押されて引っ込むため、図10に示すように、片部材29と回動部材27の爪側係合部30との係合が解除され、回動部材27が水平状態となる。従って、突起部32がスライダ側係合部31に当たるようになる。
【0037】
その状態で、カッタ蓋体4を閉じると、上述したように、刃部材12を有するスライダ8が初期位置に戻るように移動することで、刃部材12により光ファイバ2がカットされる。
【0038】
このとき、図10及び図11に示すように、スライダ8の突起部32は、スライダ側係合部31の平坦面33aに当たった状態で移動する。そして、突起部32がスライダ側係合部31の傾斜面33bに達すると、巻きバネ28の付勢力に抗して突起部32がスライダ側係合部31を押し上げるように回動部材27を回動させるため、図12及び図13に示すように、再び回動部材27が水平状態に対して角度αだけ傾いた状態となる。このとき、上係止片34が補助ギア26と係合して、補助ギア26が所定角度(18度)だけ回転し、これに伴って一の位に相当する数字円板24が同じ角度だけ回転する。
【0039】
そして、突起部32がスライダ側係合部31の傾斜面33bを通過すると、巻きバネ28の付勢力によって再び回動部材27が水平状態となる。このとき、下係止片35が補助ギア26と係合して、補助ギア26が先と同じ方向に所定角度(18度)だけ回転し、これに伴って一の位に相当する数字円板24が同じ角度だけ回転する。
【0040】
これにより、最終的に一の位に相当する数字円板24が36度回転することになるため、カウント表示機構21が1だけカウントアップされるようになる。つまり、スライダ8が初期位置に戻ることで光ファイバ2がカットされる度に、カウント表示機構21が1だけカウントアップされることとなる。このように上係止片34及び下係止片35を用い、互いに異なる位置及びタイミングで補助ギア26と係合するようにすることで、同じ角度だけ数字円板24を回転させようとした場合、上係止片34及び下係止片35の移動量を少なくすることができるので、最終的に光ファイバカッタ1の小型化が図れる。
【0041】
ただし、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされていないときは、上述したように回動部材27が水平状態に対して角度αだけ傾いているため、スライダ8の突起部32が回動部材27のスライダ側係合部31に当たることは無い。このため、たとえスライダ8を初期位置に戻すように移動させても、上係止片34及び下係止片35が補助ギア26と係合することは無いため、一の位に相当する数字円板24が回転することは無く、結果的にカウント表示機構21がカウントアップされることは無い。
【0042】
以上のように本実施形態にあっては、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされることで、爪部材20が側壁側に押されたときのみ、スライダ8が初期位置に戻る回数をカウント表示機構21によりカウントするようにしたので、ファイバホルダ6がホルダガイド部7にセットされていないときには、スライダ8が初期位置に戻る回数がカウント表示機構21によりカウントされることは無い。これにより、カウント表示機構21において、刃部材12による光ファイバ2のカット回数を正確にカウント表示させることができる。その結果、刃部材12の交換時期の管理等を容易に行うことが可能となる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、回動部材27に上係止片34及び下係止片35を設け、これらの係止片34,35が補助ギア26と係合すると、補助ギア26が18度ずつ回転するような構成としたが、特にそのような構成には限られず、回動部材27に1つの係止片を設け、この係止片が補助ギア26と係合したときに、補助ギア26が36度回転するような構成としても良い。
【0044】
また、刃部材12の交換時期をユーザに知らせるために、カウント表示機構21のカウント数に応じて表示の色を変えて、刃部材12の交換を促すようにしても良い。例えば、カウント数が「50000」に達するまでは、表示の色を緑とし、カウント数が「50000」に達すると、「万の位」の表示の色をオレンジに変え、更にカウント数が「60000」以上になると、表示の色を赤に変える等といったようにする。
【0045】
また、カウント表示機構21のカウント数が予め設定した上限値に到達したときは、刃部材12の交換を必ず行うようにするために、刃部材12がスライドしないようにストッパがかかる構造を備えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0046】
1…光ファイバカッタ、2…光ファイバ、3…カッタ基体、4…カッタ蓋体、6…ファイバホルダ、7…ホルダガイド部、8…スライダ、12…刃部材、20…爪部材(制御手段)、21…カウント表示機構、26…補助ギア(回転駆動手段、制御手段)、27…回動部材(回転駆動手段、制御手段)、28…巻きバネ(回転駆動手段、制御手段)、29…片部材(回転駆動手段、制御手段)、31…スライダ側係合部、32…突起部(回転駆動手段、制御手段)、33…係合面、33b…傾斜面、34…上係合片(回転駆動手段、制御手段)、35…下係合片(回転駆動手段、制御手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを切断する光ファイバカッタにおいて、
前記光ファイバを保持するファイバホルダを位置決めするホルダガイド部を有するカッタ基体と、
前記カッタ基体に移動可能に取り付けられ、前記光ファイバに傷を付ける刃部材を有するスライダと、
前記カッタ基体に開閉可能に取り付けられ、前記カッタ基体に対して閉じることで前記スライダを初期位置に戻すように移動させるカッタ蓋体と、
前記カッタ基体に設けられ、前記スライダが前記初期位置に戻る回数をカウント表示するためのカウント表示機構と、
前記ファイバホルダが前記ホルダガイド部にセットされたときのみ、前記カウント表示機構によるカウント動作を有効化させるように、前記カウント表示機構を機械的に制御する制御手段とを備えることを特徴とする光ファイバカッタ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ホルダガイド部に設けられ、前記ファイバホルダが前記ホルダガイド部にセットされると押される爪部材と、前記爪部材が押されている状態で前記スライダが前記初期位置に戻るときのみ、前記カウント表示機構を1カウント分に相当する角度だけ回転させる回転駆動手段とを有することを特徴とする請求項1記載の光ファイバカッタ。
【請求項3】
前記回転駆動手段は、前記スライダに設けられた突起部と、前記爪部材に連動して回動するように前記カッタ基体に設けられ、前記爪部材が押されたときに前記突起部と係合する係合部を有する回動部材と、前記カウント表示機構に取り付けられた補助ギアと、前記回動部材に設けられ、前記補助ギアと係合する係合片とを有することを特徴とする請求項2記載の光ファイバカッタ。
【請求項4】
前記係合部は、前記爪部材が押されている状態において、前記突起部が前記初期位置に向かうに従って前記回動部材を回動させるように傾斜した傾斜面を有し、
前記係合片の数は2つであり、
前記2つの係合片は、互いに異なる位置及びタイミングで前記補助ギアと係合することを特徴とする請求項3記載の光ファイバカッタ。
【請求項1】
光ファイバを切断する光ファイバカッタにおいて、
前記光ファイバを保持するファイバホルダを位置決めするホルダガイド部を有するカッタ基体と、
前記カッタ基体に移動可能に取り付けられ、前記光ファイバに傷を付ける刃部材を有するスライダと、
前記カッタ基体に開閉可能に取り付けられ、前記カッタ基体に対して閉じることで前記スライダを初期位置に戻すように移動させるカッタ蓋体と、
前記カッタ基体に設けられ、前記スライダが前記初期位置に戻る回数をカウント表示するためのカウント表示機構と、
前記ファイバホルダが前記ホルダガイド部にセットされたときのみ、前記カウント表示機構によるカウント動作を有効化させるように、前記カウント表示機構を機械的に制御する制御手段とを備えることを特徴とする光ファイバカッタ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ホルダガイド部に設けられ、前記ファイバホルダが前記ホルダガイド部にセットされると押される爪部材と、前記爪部材が押されている状態で前記スライダが前記初期位置に戻るときのみ、前記カウント表示機構を1カウント分に相当する角度だけ回転させる回転駆動手段とを有することを特徴とする請求項1記載の光ファイバカッタ。
【請求項3】
前記回転駆動手段は、前記スライダに設けられた突起部と、前記爪部材に連動して回動するように前記カッタ基体に設けられ、前記爪部材が押されたときに前記突起部と係合する係合部を有する回動部材と、前記カウント表示機構に取り付けられた補助ギアと、前記回動部材に設けられ、前記補助ギアと係合する係合片とを有することを特徴とする請求項2記載の光ファイバカッタ。
【請求項4】
前記係合部は、前記爪部材が押されている状態において、前記突起部が前記初期位置に向かうに従って前記回動部材を回動させるように傾斜した傾斜面を有し、
前記係合片の数は2つであり、
前記2つの係合片は、互いに異なる位置及びタイミングで前記補助ギアと係合することを特徴とする請求項3記載の光ファイバカッタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−41042(P2013−41042A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176989(P2011−176989)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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