説明

光ファイバケーブル製造装置

【課題】光ファイバの光学的特性に影響を与えることなく、テープ心線をスペーサ上のSZ溝へ確実に嵌め込んだかたちで光ファイバケーブルを製造する。
【解決手段】光ファイバケーブル製造装置1は、スペーサ挿通部材6が矢印S1、S2方向へ回転自在に支持されているとともに、テープ心線3をスプリング10の引張力によりスペーサ2のSZ溝2a側へ押し付ける各紐状部材12、14、15、16が、スペーサ挿通部材6上に係止されている。これにより、スペーサ2の長手方向X1への移送に伴うSZ溝2aの蛇行に対応させて、スペーサ2と、紐状部材12、14、15、16と、スペーサ挿通部材6とのそれぞれを一体で、スペーサ2の外周面に沿った矢印S1、S2方向へ揺動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサの外周面に形成された溝に光ファイバを収容してスロット型の光ファイバケーブルを製造する光ファイバケーブル製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロット(スペーサ)型の光ファイバケーブルは、スペーサの外周面に設けられた複数の溝に対し、光ファイバテープなどを複数積層しつつ収容し、その外周に粗巻を施すとともに、さらにその外周側に外被を設けることなどで形成される。スペーサの周面に形成される溝のタイプとしては、所定方向に螺旋溝が周回して行くS撚り/Z撚りタイプの溝や、また、所定周期で螺旋方向が反転しスペーサの長手方向に蛇行しつつ延びるSZ溝などが知られている。
【0003】
後者のSZ溝は、光ファイバケーブルの長手方向の適宜の箇所で光ファイバを容易に取り出させるので、前者のS撚り/Z撚りタイプの溝に比べ、ケーブルの敷設時やメンテナンス時などの作業性に優れている。ここで、このようなSZ溝を有するスペーサをその長手方向に搬送しつつこのSZ溝に光ファイバテープなどを連続的に嵌め込んで行く光ファイバケーブル製造装置が多数開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許番号,特許第2583797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の装置の共通の課題としては、光ファイバテープを嵌め込むべきSZ溝の位置が、スペーサの長手方向への搬送に伴って蛇行するため、光ファイバテープをSZ溝に確実に嵌め込むこと自体が困難となる。そこで、光ファイバテープのSZ溝への嵌め込み部分において、いわゆるダイスなどを配置し、SZ溝からの光ファイバテープの飛び出しを防止している装置などもある。
【0005】
ここで、ダイスの内周面とスペーサの外周面とのクリアランスは、極力小さい方が光ファイバテープの飛び出し防止のためには効果的であるが、光ファイバテープとダイスとの摩擦力も高くなってしまうことになる。このため、光ファイバテープを例えば複数積層しつつ嵌め込んで行く過程において、SZ溝の溝幅方向に光ファイバテープが積層崩れを起こってしまうなどといった課題が生じる。また、一方で、上記したダイスとの摩擦力が上昇したことなどによる影響で、光ファイバにおける光学的性能の低下(例えば伝送損失の増加)などが懸念される。
【0006】
そこで本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、光ファイバの所要の光学的特性に影響を与えることなく、光ファイバをスペーサ上の溝へ確実に収容して、光ファイバケーブルを製造することができる光ファイバケーブル製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る光ファイバケーブル製造装置は、蛇行しつつ長手方向に延びている蛇行溝が外周面に形成された円柱状のスペーサの挿通穴が設けられたスペーサ挿通部材と、前記スペーサ挿通部材の前記挿通穴に挿通された前記スペーサをその長手方向に移送するスペーサ移送機構と、前記スペーサの移送方向における前記スペーサ挿通部材の前記挿通穴の手前で、前記スペーサの外周面に巻き付けられた紐状部材と、前記スペーサの移送方向における前記スペーサ挿通部材よりも上流側で且つ前記スペーサの外周部分より離間した所定の送出位置から、前記スペーサ上の前記蛇行溝と前記紐状部材との間を通すようにして、光ファイバを連続的に送り出す光ファイバ送出機構と、前記スペーサ上の前記蛇行溝と前記紐状部材との間を送り出される前記光ファイバを該蛇行溝側へ押し込む所定のテンションを前記紐状部材に付与するように該紐状部材の一部を保持しつつ前記スペーサ挿通部材上に係止された付勢部材と、前記光ファイバ送出機構により前記紐状部材と前記スペーサ上の前記蛇行溝との間に向けて送り出される前記光ファイバの長手方向と、前記スペーサ移送機構の前記スペーサの移送により前記紐状部材の内側を通過する前記蛇行溝の接線方向とのねじれが逐次補正されるように前記スペーサ挿通部材を前記挿通穴を中心に回動自在に支持する軸受機構とを具備することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、スペーサの長手方向への移送に伴う蛇行溝の蛇行に対応させて、スペーサと、蛇行溝側へ光ファイバを押え込むための紐状部材と、付勢部材を介して紐状部材が係止されたスペーサ挿通部材とを一体で回動(スペーサの外周面に沿った方向へ揺動)させることができる。これにより、光ファイバと、これを蛇行溝側へ押え込む紐状部材との間に、スペーサの外周面に沿った方向への滑りが生じることなどを抑制しつつ光ファイバを蛇行溝内へ確実に嵌め込んで行くことができる。また、この発明によれば、光ファイバの蛇行溝内への嵌め込み時に、意図しない大きな応力が光ファイバに加わってしまうおそれなどもないため、光ファイバの所要の光学的特性を確保しつつ光ファイバケーブルを製造することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記紐状部材が、複数設けられているとともに各々が前記スペーサの外周面に少なくとも半周以上巻き付けられ、前記付勢部材が、前記紐状部材の数に対応して複数設けられているとともに、個々の紐状部材の両端部を束ねた部位を、それぞれ、前記スペーサの外周面から放射状に拡がる方向へ引っ張る引張力を付与する構成などを例示できる。
【0010】
また、本発明に係る光ファイバケーブル製造装置は、所定の周期で蛇行しつつ長手方向に延びている蛇行溝が外周面に形成された円柱状のスペーサの該蛇行溝との間で、光ファイバを押え込むことの可能な所定のクリアランスを空けて、該スペーサを挿通させる挿通穴が設けられた光ファイバ押込み部材と、前記光ファイバ整位部材の前記挿通穴に挿通された前記スペーサをその長手方向に移送するスペーサ移送機構と、前記スペーサの移送方向における前記スペーサ挿通部材よりも上流側で且つ前記スペーサの外周部分より離間した所定の送出位置から、前記スペーサ上の前記蛇行溝と前記光ファイバ押込み部材の前記挿通穴との間を通すようにして、前記光ファイバを連続的に送り出す光ファイバ送出機構と、前記スペーサの長手方向に所定の間隔を空けて該スペーサの前記蛇行溝に係合する係合突起をそれぞれ有し、該スペーサに対して摺動自在に設けられた複数の蛇行溝追従部材と、前記蛇行溝の蛇行の周期に対応させるようにして予め設定された基準の回動速度で前記光ファイバ押込み部材を、前記スペーサの外周面に沿った方向に回動させる回動機構と、前記スペーサ移送機構を通じての前記スペーサの移送に伴う前記蛇行溝の蛇行に対応した前記各蛇行溝追従部材の各係合突起間のピッチ変動を検出するピッチ変動検出手段と、前記ピッチ変動検出手段による検出結果に基づいて、前記回動機構の駆動によって動作する前記光ファイバ押込み部材の回動速度を補正する回動速度補正機構とを具備することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、スペーサの長手方向への移送に伴う蛇行溝の実際の蛇行に対応させて、スペーサの外周面に沿った方向に光ファイバ押込み部材を高精度に回動(スペーサの外周面に沿った方向へ揺動)させることができるので、光ファイバと、光ファイバ押込み部材との間に生じ得る滑りなどを極力押えつつ、光ファイバをスペーサ上の蛇行溝内に確実に嵌め込んで行くことができる。また、この発明においても、光ファイバの蛇行溝内への嵌め込み時に、光ファイバに不要な外力が加わってしまうことなどを防止しつつ、所要の光学的特性を有する光ファイバケーブルを製造することができる。
【0012】
また、上記発明において、前記複数の蛇行溝追従部材の各係合突起を、前記蛇行溝の蛇行の周期に対応するピッチ、又はこの周期に対応するピッチの整数倍のピッチを空けて各々配置することで、光ファイバ押込み部材の回動速度の補正を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、光ファイバの所要の光学的特性に影響を与えることなく、光ファイバをスペーサ上の溝へ確実に収容して、光ファイバケーブルを製造することが可能な光ファイバケーブル製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光ファイバケーブル製造装置を一部断面で示す正面図、図2は、この光ファイバケーブル製造装置を一部断面で示す側面図、図3は、スペーサのSZ溝に収容されるべきテープ心線に積層崩れが生じている光ファイバケーブルの断面図、図4は、図1の光ファイバケーブル製造装置によりスペーサのSZ溝にテープ心線が収容される際の作用を説明するための斜視図である。
【0015】
図1ないし図4に示すように、この実施形態に係る光ファイバケーブル製造装置1は、スロット(スペーサ)型の光ファイバケーブルを製造するためのものであって、スペーサ2のSZ溝2aに光ファイバテープ心線(以下「テープ心線」と称する)3を連続的に嵌め込んで行く装置である。テープ心線3は、例えば4心や8心などの複数心の光ファイバテープ心線である。スロットとも称する長尺のスペーサ2は、図3などに示すように、芯材が鋼線やFRP(ガラス強化プラスチック)などテンションメンバ17で構成され、本体部分がポリエチレンなどの樹脂材料より円柱状に形成されている。スペーサ2の外周面には所定周期で蛇行しつつ長手方向に延びる蛇行溝としての複数のSZ溝2aが形成されている。つまり、SZ溝2aは、1回の蛇行(前記所定周期)の半周期ごとに螺旋方向(撚り方向)が交互に反転し、スペーサ2の長手方向に延びている。また、SZ溝2aには、複数のテープ心線3が順次積層される。
【0016】
このようなSZ溝2aにテープ心線3を連続的に嵌め込むための光ファイバケーブル製造装置1は、スペーサ挿通部材6と、図示しないスペーサ移送機構と、複数、例えば4本の紐状部材12、14、15、16と、光ファイバ送出機構と、上記紐状部材と同数設けられた付勢部材としてのスプリング10と、スペーサ挿通部材6を支持する軸受機構7とから主に構成される。
【0017】
スペーサ挿通部材6は、円板状に形成されており、その中央に、スペーサ2を挿通させる挿通穴6aが穿孔されている。スペーサ移送機構は、スペーサ挿通部材6の挿通穴6aに挿通されたスペーサ2をその長手方向(矢印X1方向)に移送する。軸受機構7は、光ファイバケーブル製造装置1のフレームに固定された保持部材7aによって保持されている。さらに、挿通穴6aは、軸受機構7の内部の貫通穴7bと連通しており、スペーサ2は、スペーサ挿通部材6と軸受機構7との内部を挿通される。また、軸受機構7は、ベアリング8を介しスペーサ挿通部材6を、挿通穴6aを中心として(図1、図2の矢印S1、S2方向に)回動自在(揺動自在)に支持する。
【0018】
紐状部材12、14、15、16は、スペーサ2の移送方向X1におけるスペーサ挿通部材6の挿通穴6aの手前で、スペーサ2の外周面に例えば半周以上巻き付けられている。紐状部材の数に対応する4つのスプリング10は、図1、図2、図3に示すように、スペーサ2上のSZ溝2aと紐状部材12、14、15、16との間を送り出されるテープ心線3をSZ溝2a側へ押し込む所定のテンションを上記紐状部材に付与するように該紐状部材の一部を保持しつつスペーサ挿通部材6上に係止部9を通じて係止されている。詳細には、各スプリング10は、紐状部材12、14、15、16の両端部を束ねた部位11を、それぞれスペーサ2の外周面から放射状に拡がる、各々異なる方向(図2中おける12時の方向T1、6時の方向T2、3時の方向T3、9時の方向T4、)へ引っ張る引張力を付与する。
【0019】
光ファイバ送出機構は、スペーサ2の移送方向X1におけるスペーサ挿通部材6よりも上流側で且つスペーサ2の外周部分より離間した所定の光ファイバ送出位置にサプライボビン5を備えている。なお、サプライボビン5は、スペーサ2の外周面のSZ溝2aの数に対応した台数だけ設けられているが、その図示を省略している。さらに、光ファイバ送出機構は、サプライボビン5から、スペーサ2上のSZ溝2aと紐状部材12、14、15、16との間を通すようにしてテープ心線3を矢印F1方向に連続的に送り出す。サプライボビン5から送り出されるテープ心線3は、スペーサ挿通部材6の挿通穴6a及び軸受機構7の貫通穴7bと、スペーサ2上のSZ溝2aとの間を通り、スペーサ2の移送方向X1における軸受機構7よりもさらに下流側の位置に設けられた巻き取り装置などによって巻き取られる。
【0020】
また、上述した軸受機構7は、図1、図4に示すように、サプライボビン5より紐状部材12、14、15、16とスペーサ2上のSZ溝2aとの間に送り出されるテープ心線3の長手方向(テープ心線3の送出方向F1)と、スペーサ2の矢印X1方向への移送により紐状部材12、14、15、16の内側を通過するSZ溝2aの接線方向U1とのねじれを逐次補正するように機能する。ここで、図4に示すように、テープ心線3を嵌め込むべきSZ溝2aの位置が、スペーサの長手方向X1への搬送に伴って蛇行することになるが、同図4や図2において例えばSZ溝2aとテープ心線3とにねじれが生じようとする場合、すなわち、テープ心線3の外形の側面がSZ溝2aの側壁を押す例えば矢印S1方向へのモーメントが働こうとする場合には、スペーサ2と、紐状部材14と、紐状部材14を係止するスペーサ挿通部材6とがそれぞれ同期して一体で矢印S1方向へ回動することになる。
【0021】
次に、このように構成された光ファイバケーブル製造装置1により、実際に光ファイバケーブルが製造される場合の動作について説明する。
まず、図1に示すように、サプライボビン5からテープ心線3を引き出して、スペーサ2上のSZ溝2aと紐状部材12、14、15、16との間を通し、さらにスペーサ挿通部材6の挿通穴6a及び軸受機構7の貫通穴7bと、スペーサ2上のSZ溝2aとの間を通して、当該テープ心線3の先端側を巻き取り装置側にセットする。
【0022】
この状態において、サプライボビン5からの矢印F1方向へのテープ心線3の送り出しを開始させるとともに、矢印X1方向へのスペーサ2の移送を開始させる。これにより、図1、図4に示すように、紐状部材12、14、15、16の内側を通過するSZ溝2aの位置が、スペーサの長手方向X1への搬送に伴って蛇行することになる。つまり、各紐状部材の内側を通過するSZ溝2aの位置は、その瞬間瞬間では、矢印S1、S2方向へ振られることになる。ここで、SZ溝2aに嵌め込むべきテープ心線3の紐状部材側との接触部分3aも、SZ溝2aの蛇行に倣って矢印S1、S2方向へ振られるようとする力が働くことになる。この際、スペーサ挿通部材6が矢印S1、S2方向へ回動(揺動)自在に支持されているとともに、テープ心線3の上記接触部分3aをスプリング10の引張力により押し付ける各紐状部材が、スペーサ挿通部材6上に係止されていることから、スペーサ2、紐状部材14及びスペーサ挿通部材6がそれぞれ一体となって、SZ溝2aの蛇行に倣って矢印S1、S2方向へ揺動することになる。
【0023】
これにより、図4に示すように、テープ心線3における紐状部材側との接触部分3aと、紐状部材(14)におけるテープ心線3側との接触部分(14a)との間で、矢印S1、S2方向への滑りが生じてしまうことが防止される。つまり、各紐状部材12、14、15、16の内側面とテープ心線3の外側面とに滑りが発生することなどが防止される。この場合、図3に示したように、テープ心線3に積層崩れが発生してしまうことなども抑制される。このようにして、スペーサ上のSZ溝2a内へテープ心線3が確実に嵌め込まれた後、スペーサ2の移送方向におけるスペーサ挿通部材6のさらに下流側で、スペーサ2の外周面に粗巻用のテープが巻回され、さらにその外周部分をシースなどで覆うことにより光ファイバケーブルが作製される。
【0024】
したがって、本実施形態に係る光ファイバケーブル製造装置1によれば、スペーサ2の長手方向X1への移送に伴うSZ溝2aの蛇行に対応させて、スペーサ2と、SZ溝2a側へテープ心線3を押え込むための紐状部材12、14、15、16と、スプリング10を介して紐状部材が係止されたスペーサ挿通部材6とを一体でスペーサ2の外周面に沿った方向S1、S2方向へ揺動させることができる。これにより、テープ心線3と、これをSZ溝2aへ押え込む紐状部材との間に、スペーサの外周面に沿った方向への滑りが生じることなどを抑制しつつテープ心線3をSZ溝2a内へ確実に嵌め込んで行くことができる。また、本実施形態の光ファイバケーブル製造装置1によれば、テープ心線3のSZ溝2a内への嵌め込み時に、意図しない大きな応力がテープ心線3に加わってしまうおそれなどもないため、光ファイバの所要の光学的特性を確保しつつ光ファイバケーブルを製造することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図5及び図6に基づき説明する。ここで、図5は、本発明の第2の実施形態に係る光ファイバケーブル製造装置31を一部断面で示す正面図、図6は、この光ファイバケーブル製造装置を側面からみた断面図である。なお、第1の実施形態で説明した部材などと同様の機能を有するものについては、同一の符号を付与しその説明を省略する。
【0026】
すなわち、同図5、図6に示すように、この実施形態に係る光ファイバケーブル製造装置31は、光ファイバ押込み部材34と、スペーサ移送機構と、光ファイバ送出機構と、複数、例えば一対の蛇行溝追従部材32、33と、回転角検出部38と、光ファイバ押込み部材34を回動させる回動機構と、光ファイバ押込み部材34の回動速度を補正する回動速度補正機構とを備える。
【0027】
フランジ付きの略円筒形状に形成された光ファイバ押込み部材34は、スペーサ2のSZ溝2aとの間で、テープ心線3を押え込むことの可能な所定のクリアランスを空けて、該スペーサを挿通させる挿通穴34bが設けられている。光ファイバ送出機構は、サプライボビン5側から引き出されたテープ心線3をスペーサ2上のSZ溝2aと光ファイバ押込み部材34の挿通穴34bとの間を通すようにして、該テープ心線3を連続的に矢印F1方向へ送り出す。
【0028】
光ファイバ押込み部材34を矢印S1、S2方向へ回動させる回動機構は、モータ36と、モータ36の出力軸36aに取り付けられたモータギア37と、光ファイバ押込み部材34本体のフランジ部の外周部に形成されて上記モータギア37と噛合するギア34aと、光ファイバ押込み部材34を、スペーサ2の外周面に沿った矢印S1、S2方向に対して回動可能に支持する軸受35と、SZ溝2aの蛇行の周期に対応させるようにして予め設定された基準の回動速度(及び回動方向)で光ファイバ押込み部材34を動作、つまりモータ36を駆動制御する制御部39とから構成される。
【0029】
蛇行溝追従部材32、33は、スペーサ2の長手方向において、SZ溝2aの蛇行の1周期に対応するピッチL1を空けて、当該SZ溝2aに係合する係合ピン32a、33aをそれぞれ有し、さらに、該スペーサ2の外周面に対して摺動自在に設けられたリング状の部材である。つまり、係合ピン32a、33aを有する蛇行溝追従部材32、33は、スペーサ2の長手方向への移送に伴って、スペーサ2の周りをそれぞれ回転する。また、上記ピッチL1の整数倍のピッチを空けて係合ピン32a、33aが各々配置されるように蛇行溝追従部材32、33を取り付けもよい。
【0030】
回転角検出部38は、例えばポテンショメータなどを備え、蛇行溝追従部材32、33の回転速度又は単位時間当りの回転角度の変動の差分値を検出する。この差分値信号は、制御部39によって演算処理され、さらに、蛇行溝追従部材32、33の係合ピン32a、33a間のピッチが正確に算出される。すなわち、回転角検出部38及び制御部39は、スペーサ2のX1方向への移送に伴うSZ溝2aの蛇行に対応した蛇行溝追従部材32、33の係合ピン32a、33a間のピッチ(ピッチ変動)を検出するピッチ変動検出手段として機能する。
【0031】
詳細には、例えば、SZ溝2aの蛇行の1周期に対応するピッチL1が200mmであって、検出した係合ピン32a、33a間のピッチが190mmに変動した場合、係合ピン32a、33aどうしに回転角度差が生じ、この角度差は、(200−190)÷200×360度=18度となる。このようにして得られたピッチ変動に基づいて、回動速度補正機構としても機能する制御部39は、モータ36の駆動力により実質的に動作する光ファイバ押込み部材34の回動速度を補正する。
【0032】
このように構成された光ファイバケーブル製造装置31では、スペーサ2のSZ溝2aへテープ心線3が嵌め込まれる際の動作において、スペーサの長手方向X1への搬送に伴って、光ファイバ押込み部材34の挿通穴34bを通過するSZ溝2aの位置が、蛇行することになる。つまり、光ファイバ押込み部材34の挿通穴34bを通過するSZ溝2aの位置は、その瞬間瞬間では、矢印S1、S2方向へ振られることになる。ここで、図6に示すように、SZ溝2aに嵌め込むべきテープ心線3における光ファイバ押込み部材34側との接触部分3aも、SZ溝2aの蛇行に倣って矢印S1、S2方向へ振られることになる。この際、当該光ファイバケーブル製造装置31が上述した光ファイバ押込み部材34の回動速度の補正機能を備えていることで、SZ溝2aの蛇行に倣って矢印S1、S2方向へ振られるテープ心線3の揺動に精度良く連動(追従)して、光ファイバ押込み部材34も矢印S1、S2方向へ揺動する。
【0033】
したがって、本実施形態に係る光ファイバケーブル製造装置31によれば、図5、図6に示すように、テープ心線3における光ファイバ押込み部材34側との接触部分3aと、光ファイバ押込み部材34におけるテープ心線3側との接触部分34cとの間に生じる滑りなどを極力押えつつ、テープ心線3をスペーサ2上のSZ溝2a内に確実に嵌め込んで行くことができる。また、光ファイバケーブル製造装置31では、テープ心線3のSZ溝2a内への嵌め込み時に、光ファイバに不要な外力が加わってしまうことなどを防止でき、これにより、所要の光学的特性を有する光ファイバケーブルを製造することができる。
【0034】
以上、本発明を各実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施形態は、外周面にSZ溝2aが形成されたスペーサ2に対しテープ心線3を嵌め込んで行くものであったが、S撚り/Z撚りタイプの溝が形成されたスペーサに対しても、例えば第1の実施形態で説明した光ファイバケーブル製造装置1を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバケーブル製造装置を一部断面で示す正面図。
【図2】図1の光ファイバケーブル製造装置を一部断面で示す側面図。
【図3】スペーサのSZ溝に収容されるべきテープ心線に積層崩れが生じている光ファイバケーブルの断面図。
【図4】図1の光ファイバケーブル製造装置によりスペーサのSZ溝にテープ心線が収容される際の作用を説明するための斜視図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバケーブル製造装置を一部断面で示す正面図。
【図6】図5の光ファイバケーブル製造装置を側面からみた断面図。
【符号の説明】
【0036】
1,31…光ファイバケーブル製造装置、2…スペーサ、2a…SZ溝、3…テープ心線、5…サプライボビン、6…スペーサ挿通部材、6a,34b…挿通穴、7…軸受機構、8…ベアリング、9…係止部、10…スプリング、12,14,15,16…紐状部材、32,33…蛇行溝追従部材、32a,33a…係合ピン、34…光ファイバ押込み部材、38…回転角検出部、39…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行しつつ長手方向に延びている蛇行溝が外周面に形成された円柱状のスペーサの挿通穴が設けられたスペーサ挿通部材と、
前記スペーサ挿通部材の前記挿通穴に挿通された前記スペーサをその長手方向に移送するスペーサ移送機構と、
前記スペーサの移送方向における前記スペーサ挿通部材の前記挿通穴の手前で、前記スペーサの外周面に巻き付けられた紐状部材と、
前記スペーサの移送方向における前記スペーサ挿通部材よりも上流側で且つ前記スペーサの外周部分より離間した所定の送出位置から、前記スペーサ上の前記蛇行溝と前記紐状部材との間を通すようにして、光ファイバを連続的に送り出す光ファイバ送出機構と、
前記スペーサ上の前記蛇行溝と前記紐状部材との間を送り出される前記光ファイバを該蛇行溝側へ押し込む所定のテンションを前記紐状部材に付与するように該紐状部材の一部を保持しつつ前記スペーサ挿通部材上に係止された付勢部材と、
前記光ファイバ送出機構により前記紐状部材と前記スペーサ上の前記蛇行溝との間に向けて送り出される前記光ファイバの長手方向と、前記スペーサ移送機構の前記スペーサの移送により前記紐状部材の内側を通過する前記蛇行溝の接線方向とのねじれが逐次補正されるように前記スペーサ挿通部材を前記挿通穴を中心に回動自在に支持する軸受機構と
を具備することを特徴とする光ファイバケーブル製造装置。
【請求項2】
前記紐状部材は、複数設けられているとともに、各々が前記スペーサの外周面に少なくとも半周以上巻き付けられ、
前記付勢部材は、前記紐状部材の数に対応して複数設けられているとともに、個々の紐状部材の両端部を束ねた部位を、それぞれ、前記スペーサの外周面から放射状に拡がる方向へ引っ張る引張力を付与していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル製造装置。
【請求項3】
所定の周期で蛇行しつつ長手方向に延びている蛇行溝が外周面に形成された円柱状のスペーサの該蛇行溝との間で、光ファイバを押え込むことの可能な所定のクリアランスを空けて、該スペーサを挿通させる挿通穴が設けられた光ファイバ押込み部材と、
前記光ファイバ整位部材の前記挿通穴に挿通された前記スペーサをその長手方向に移送するスペーサ移送機構と、
前記スペーサの移送方向における前記スペーサ挿通部材よりも上流側で且つ前記スペーサの外周部分より離間した所定の送出位置から、前記スペーサ上の前記蛇行溝と前記光ファイバ押込み部材の前記挿通穴との間を通すようにして、前記光ファイバを連続的に送り出す光ファイバ送出機構と、
前記スペーサの長手方向に所定の間隔を空けて該スペーサの前記蛇行溝に係合する係合突起をそれぞれ有し、該スペーサに対して摺動自在に設けられた複数の蛇行溝追従部材と、
前記蛇行溝の蛇行の周期に対応させるようにして予め設定された基準の回動速度で前記光ファイバ押込み部材を、前記スペーサの外周面に沿った方向に回動させる回動機構と、
前記スペーサ移送機構を通じての前記スペーサの移送に伴う前記蛇行溝の蛇行に対応した前記各蛇行溝追従部材の各係合突起間のピッチ変動を検出するピッチ変動検出手段と、
前記ピッチ変動検出手段による検出結果に基づいて、前記回動機構の駆動によって動作する前記光ファイバ押込み部材の回動速度を補正する回動速度補正機構と
を具備することを特徴とする光ファイバケーブル製造装置。
【請求項4】
前記複数の蛇行溝追従部材の各係合突起は、前記蛇行溝の蛇行の周期に対応するピッチ、又はこの周期に対応するピッチの整数倍のピッチを空けて各々配置されていることを特徴とする請求項3記載の光ファイバケーブル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−65216(P2006−65216A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250482(P2004−250482)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】