説明

光ファイバユニット及び光ファイバケーブル

【課題】光ファイバユニット毎の識別性が良く、また、その光ファイバユニット内の光ファイバテープ心線毎の識別性の良い光ファイバユニットを提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバテープ心線2A〜2Eを2本の識別糸3A、3Bで束ねた光ファイバユニット。光ファイバテープ心線には、該光ファイバテープ心線同士をそれぞれ識別するためのマーキング8がテープ長手方向に所定ピッチP2で形成されている。2本の識別糸3A、3Bは、複数本纏めた光ファイバテープ心線の心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿ってその巻き付け方向を逆にして巻き付け、それら2本の識別糸が交差する交点から次の交点までの1ピッチP1間に、前記マーキング8が少なくとも1つ以上設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバテープ心線を、少なくとも1本の識別糸で束ねた光ファイバユニット及び光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、複数本の光ファイバ心線を2本の糸状繊維で巻き付けて一体化し、その糸状繊維に設けた結び目で、該糸状繊維を光ファイバ心線から識別し、さらに該糸状繊維の色によって光ファイバユニット相互の識別を図る技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−10919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、光ファイバユニット相互間の識別を図ることはできても、光ファイバユニット内の光ファイバテープ心線同士の識別をすることは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、光ファイバユニット毎の識別性が良く、また、その光ファイバユニット内の光ファイバテープ心線毎の識別性の良い光ファイバユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、複数本の光ファイバテープ心線を、2本の識別糸で束ねた光ファイバユニットであって、前記光ファイバテープ心線には、該光ファイバテープ心線同士をそれぞれ識別するためのマーキングがテープ長手方向に所定ピッチで形成されており、一方の前記識別糸は、複数本纏めた前記光ファイバテープ心線の心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられ、他方の前記識別糸は、一方の前記識別糸の巻き付け方向とは逆向きとして前記心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられた構成とされ、2本の前記識別糸が交差する交点から次の交点までの1ピッチ間に、前記マーキングが少なくとも1つ以上設けられていることを特徴としている。
【0007】
第2の発明は、複数本の光ファイバテープ心線を、少なくとも1本の識別糸で束ねた光ファイバユニットであって、前記光ファイバテープ心線のそれぞれには、該光ファイバテープ心線同士を識別するための異なる種類のマーキングがテープ長手方向に所定ピッチで形成されており、前記識別糸は、複数本纏めた前記光ファイバテープ心線の心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられた構成とされ、前記識別糸が螺旋状に巻かれる1ピッチ間に、前記マーキングが少なくとも1つ以上設けられていることを特徴としている。
【0008】
第3の発明は、第1または2の発明において、前記光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバ素線が並列され、各光ファイバ素線に設けられたマーキングの位置がテープ長手方向で同一位置に揃えられていることを特徴としている。
【0009】
第4の発明は、第1から第3の何れか1つの発明において、光ファイバユニットの複数本をシースで被覆した光ファイバケーブルであって、前記光ファイバユニットに巻き付けられた識別糸の色を、各光ファイバユニット毎で異なるようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、マーキングの種類違いで光ファイバテープ心線毎の識別ができる。特に、複数本の光ファイバユニットをシースで被覆した光ファイバケーブルを中間後分岐した場合、シースを剥ぎ取った部位において識別糸の色によって光ファイバユニット毎の識別をすることができ、また、2本の識別糸の交点間の1ピッチ間に必ずマーキングが現れることで、このマーキングの種類違いによって光ファイバテープ心線毎の識別をすることができる。
【0011】
第2の発明によれば、第1の発明と同様、中間後分岐作業において、1本の識別糸が巻かれる1ピッチ間に必ずマーキングが現れることで、このマーキングの種類違いによって光ファイバテープ心線毎の識別をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は第1実施形態の光ファイバユニットの斜視図である。
【図2】図2は図1の光ファイバユニットから任意の光ファイバテープ心線を取り出した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は図1の光ファイバユニットから各光ファイバテープ心線をばらばらにした状態を示す斜視図である。
【図4】図4は図1の光ファイバユニットを構成する光ファイバテープ心線の平面図である。
【図5】図5は図4のA−A線における拡大断面図である。
【図6】図6(A)は図4の光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線の平面図、図6(B)はその拡大断面図の一例、図6(C)はその拡大断面図の他の例である。
【図7】図7は光ファイバテープ心線に設けたマーキングの種類を示す図である。
【図8】図8は第1実施形態の光ファイバユニットの複数本をシースで被覆した光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図9】図9は第2実施形態の光ファイバユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
[第1実施形態]
本実施形態の光ファイバユニット1は、図1乃至図3に示すように、複数本の光ファイバテープ心線2(2A〜2E)を2本の識別糸3(3A、3B)で束ねた構造とされている。この実施形態では、5本の光ファイバテープ心線2A〜2Eを、2本の識別糸3A、3Bで束ねている。
【0015】
光ファイバテープ心線2は、例えば図4及び図5に示すように、複数本の光ファイバ素線4(4A〜4D)を並列し、紫外線硬化樹脂などによるテープ化材5で被覆することにより形成されている。光ファイバ素線4は、図6に示すように、中心に設けられる石英ガラスファイバ6と、その石英ガラスファイバ6の周囲に紫外線硬化型樹脂を被覆して形成される被覆層7と、その被覆層7に光ファイバ素線長手方向に所定ピッチPで設けられたマーキング8と、このマーキング8の上から被覆された透明な着色層9とから構成されている。マーキング8は、図6(B)のように光ファイバ素線4の全周にリング状に形成されていても良く、或いは、図6(C)のように光ファイバ素線4の周面の一部に形成されていても良い。
【0016】
そして、この光ファイバテープ心線2では、各光ファイバ素線4に設けられたマーキング8の位置がテープ長手方向で同一位置に揃えられている。そのため、各マーキング8は、何れもテープ幅方向で一直線上に配置されている。この例では、光ファイバテープ心線2として、4本の光ファイバ心線4を並列してテープ化材5で一体化したが、隣り合う光ファイバ素線4同士を紫外線硬化樹脂による連結部でテープ長手方向及びテープ幅方向に間欠的に結合した、いわゆる間欠構造の光ファイバテープ心線も本発明に含む。
【0017】
5本の光ファイバテープ心線2(2A〜2E)には、図7に示すように、光ファイバテープ心線2同士を識別するための異なる種類のマーキング8が設けられている。図7(A)では一つのマーキング8とされ、図7(B)では2つのマーキング8とされ、図7(C)では3つのマーキング8とされ、図7(D)では4つのマーキング8とされ、図7(E)では他のマーキングに比べて長さの長いマーキング8とされている。これらマーキング8の種類違いで、目視により簡単に光ファイバテープ心線2毎の識別を図ることができる。
【0018】
このように構成された5本の光ファイバテープ心線2(2A〜2E)は、図1に示すように上下に重ねられた後、2本の識別糸3(3A、3B)で束ねられる。一方の識別糸3Aは、複数本纏めた光ファイバテープ心線2の心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられている。他方の識別糸3Bは、一方の識別糸3Aの巻き付け方向とは逆向きとして前記心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられている。一方の識別糸3Aは、例えば時計回りに巻かれ、他方の識別糸3Bはこれとは逆の反時計回りに巻かれている。
【0019】
前記識別糸3には、光ファイバユニット1毎で異なる色が使用される。この識別糸3の色違いにより、光ファイバユニット1毎の識別を図ることが可能となる。そして、この実施形態では、2本の識別糸3A、3Bが交差する交点と次の交点までの1ピッチ(バンチングピッチP1)間に、全ての光ファイバテープ心線2(2A〜2D)に設けられたマーキング8が少なくとも1つ以上設けられている。この識別糸3のバンチングピッチP1間に必ずマーキング8が少なくとも1つ入るように、前記マーキング8のリングマークピッチP2を設定する必要がある。
【0020】
前記構成の光ファイバユニット1では、2本の識別糸3A、3Bが交差する交点から次の交点までのバンチングピッチP1間には、必ず各光ファイバテープ心線2A〜2Eに設けたマーキング8が設けられることになるから、そのマーキング8の種類を見分けるだけで、どの光ファイバテープ心線2A〜2Eかを識別することができる。マーキング8が1つのものは第1光ファイバテープ心線2A、マーキング8が2つのものは第2光ファイバテープ心線2B、マーキング8が3つのものは第3光ファイバテープ心線2C、マーキング8が4つのものは第4光ファイバテープ心線2D、マーキング8が長いものは第5光ファイバテープ心線2Eであると判る。
【0021】
図8には、前記した光ファイバユニット1の複数本をシースで被覆した光ファイバケーブル10を示す。この光ファイバケーブル10は、ケーブル部11と支持線部12とこれらを連結する首部13とから構成された、いわゆるスロットレス型光ファイバーケーブルである。ケーブル部11は、5本の光ファイバユニット1(1A〜1E)が緩衝材であるプラスチックヤーン14を介在させてシース15で被覆されることで形成されている。
【0022】
ケーブル部11には、2本の抗張力体16と同じく2本の引き裂き紐17がシース15に埋め込まれるようにしてケーブル長手方向に設けられている。支持線部12には、支持線18がケーブル長手方向に設けられてその周囲を覆うようにシース15で被覆されている。首部13は、ケーブル部11と支持線部12とを連結している。
【0023】
5本の光ファイバユニット1A〜1Eは、各ユニット毎に識別可能なように識別糸3の色を変えてある。例えば、一つ目の光ファイバユニット1Aの識別糸3を青色、2つ目の光ファイバユニット1Bの識別糸3を黄色、3つ目の光ファイバユニット1Cの識別糸3を緑色、4つ目の光ファイバユニット1Dの識別糸3を赤色、5つ目の光ファイバユニット1Eの識別糸3を紫色といったように何れも異なった色としている。
【0024】
また、各光ファイバユニット1A〜1Eの4本の光ファイバ素線4(4A〜4D)の色は、各光ファイバ素線4同士を識別するためにそれぞれ異なる色とされている。
【0025】
前記構造の光ファイバーケーブル10を、ケーブル途中からシース15を切り裂いて特定の光ファイバ素線4を取り出す中間後分岐作業をした場合、識別糸3の色違によって特定の光ファイバユニット1A〜1Eを見つけることができる。そして、特定した光ファイバユニット1A〜1Eから今度は特定の光ファイバテープ心線2A〜2Dを取り出すには、各光ファイバテープ心線2A〜2Eに設けられたマーキング8の種類で判断する。
【0026】
このとき、図3に示すように、特定した光ファイバユニット1を手に持って各光ファイバテープ心線2A〜2Dをばらすことで、マーキング8の種別が判別し易くなる。そして、取り出した光ファイバテープ心線2A〜2Dから特定の光ファイバ素線4A〜4Dを取り出すには、光ファイバ素線4の着色違いで特定する。
【実施例】
【0027】
以下の条件の下に光ファイバユニットを製造して光ファイバテープ心線の識別性を調べた。250ミクロン径の光ファイバ被覆上にリングマークピッチ100mmでマーキングを長手方向に間欠的に施し、その上から識別のための着色を施した光ファイバ素線を4本並べ、そのマーキングの位置をテープ長手方向で同一位置に揃え、紫外線硬化樹脂で被覆することで光ファイバテープ心線を得た。そして、この4本の光ファイバテープ心線を5本毎に識別糸を用いて束ねることで、光ファイバユニットとした。このとき、識別糸のバンチングピッチP1を150mmとした。
【0028】
前記条件で得られた光ファイバユニットでは、識別糸の1バンチングピッチ間に必ず1つのマーキングが設けられた。このマーキングにより、光ファイバテープ心線毎の識別性は良好となった。なお、マーキングピッチP2を150mmとし、識別糸のバンチングピッチP1を100mmとした場合、識別糸の1バンチングピッチ間にマーキングが現れない光ファイバテープ心線があり、識別性は困難となった。
【0029】
なお、識別糸と光ファイバテープ心線のトレーサ色に同系色を使用することで、例えば、1番光ファイバユニットはひと目で青ユニットとして認識することができる。
本実施形態の光ファイバユニットによれば、識別糸の色違いで光ファイバユニット毎の識別が図れ、また、マーキング8の種類違いによって光ファイバテープ心線2毎の識別も図れる。そして、着色層9の色違いによって光ファイバ素線4毎の識別を図ることができる。特に、複数本の光ファイバユニット1A〜1Eをシース15で被覆した光ファイバケーブル10を中間後分岐する場合、シース15を引き裂いた部分に露出する2本の識別糸3が交差する交点から次の交点までの1ピッチ間にマーキング8が設けられることで、中間後分岐作業を容易に行うことが可能となる。
【0030】
[第2実施形態]
第2実施形態では、1本の識別糸3で複数本の光ファイバテープ心線2を束ねた例である。2本の識別糸3(3A、3B)で束ねた第1実施形態と共通する部分については、その説明は省略するものとし、第1実施形態の光ファイバユニットと異なる部分についてのみ説明するものとする。
【0031】
第2実施形態の光ファイバユニット100は、複数本の光ファイバテープ心線2(2A〜2E)を、1本の識別糸3で束ねた構造であり、識別糸3は、複数本纏めた光ファイバテープ心線2の心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられた構成とされている。そして、識別糸3が螺旋状に巻かれる1ピッチP1間に、前記マーキング8が少なくとも1つ以上設けられている構造となっている。
【0032】
第2実施形態の光ファイバユニット100によれば、第1実施形態と同様、中間後分岐作業において、1本の識別糸3が巻かれる1ピッチP1間に必ずマーキング8が現れることで、このマーキング8の種類違いによって光ファイバテープ心線2毎の識別をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、複数本の光ファイバテープ心線を、少なくとも1本の識別糸で束ねた光ファイバユニットに利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1、100 光ファイバユニット
2(2A〜2E) 光ファイバテープ心線
3(3A、3B) 識別糸
4(4A〜4D) 光ファイバ素線
8 マーキング
9 着色層
10 光ファイバーケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバテープ心線を、2本の識別糸で束ねた光ファイバユニットであって、
前記光ファイバテープ心線には、該光ファイバテープ心線同士をそれぞれ識別するためのマーキングがテープ長手方向に所定ピッチで形成されており、
一方の前記識別糸は、複数本纏めた前記光ファイバテープ心線の心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられ、他方の前記識別糸は、一方の前記識別糸の巻き付け方向とは逆向きとして前記心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられた構成とされ、
2本の前記識別糸が交差する交点から次の交点までの1ピッチ間に、前記マーキングが少なくとも1つ以上設けられている
ことを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項2】
複数本の光ファイバテープ心線を、少なくとも1本の識別糸で束ねた光ファイバユニットであって、
前記光ファイバテープ心線のそれぞれには、該光ファイバテープ心線同士を識別するための異なる種類のマーキングがテープ長手方向に所定ピッチで形成されており、
前記識別糸は、複数本纏めた前記光ファイバテープ心線の心線束の周面に螺旋状にその長手方向に沿って巻き付けられた構成とされ、
前記識別糸が螺旋状に巻かれる1ピッチ間に、前記マーキングが少なくとも1つ以上設けられている
ことを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバユニットであって、
前記光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバ素線が並列され、各光ファイバ素線に設けられたマーキングの位置がテープ長手方向で同一位置に揃えられている
ことを特徴とする光ファイバユニット。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の光ファイバユニットの複数本をシースで被覆した光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバユニットに巻き付けられた識別糸の色を、各光ファイバユニット毎で異なるようにした
ことを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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