説明

光ファイバーケーブル入り水底送水管

【課題】内的要因のみならず、外的要因からも光ファイバーを適切に保護できるようにした光ファイバーケーブル入り水底送水管を提供する。
【解決手段】樹脂製の通水導管2の外周側に順に、樹脂層2aと、テープ状布を螺旋状に巻回して形成した緩衝層3と、テープ状鉛を螺旋状に巻回して形成した重量付加層4と、テープ状ステンレス鋼を螺旋状に巻回して形成した補強層5とを積層し、防錆紙6を外周面に積層した補強層5の外周側に波付き鋼管からなる可撓性金属管7を配置するとともに最外周に樹脂製の防食層8を設け、通水導管2に螺旋状に巻回するように光ファイバーケーブル9を樹脂層2aに埋設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーケーブル入り水底送水管に関し、さらに詳しくは、内的要因のみならず、外的要因からも光ファイバーを適切に保護できるようにした光ファイバーケーブル入り水底送水管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、離島等に水等を供給する海底送水管に光ファイバーケーブルを内設したものが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1で提案されている海底送水管は、樹脂製の中空管の外周側に複数本の引き揃えられた鎧装線が螺旋状に巻き付けられたものの内、その鎧装線の1本を溝形の金属ケーシング条にして、この金属ケーシング条の溝に光ファイバーケーブルを収納し、鎧装線の外周側に樹脂製の防食層を被覆した構造にしている。この構造により海底送水管が屈曲した場合等には、金属ケーシング条が光ファイバーケーブルと隣接する鎧装線との直接の接触を防止して光ファイバーケーブルのいわゆる内的要因による損傷を防止するようにしている。
【0003】
海底送水管は、海底の土壌中に埋設されるが、その敷設場所の海上は漁船、プレジャーボート、砂利運搬船等が頻繁に往来する沿岸部であることが多い。そのため、これらの船から投下された錨が海底送水管に衝突、接触して損傷を与えるという外的要因による損傷があり、上記した内的要因による損傷よりもむしろ大きな問題となっている。
【0004】
特許文献1等に開示されている従来の海底送水管は、上記のように内的要因による光ファイバーケーブルの損傷のみを考慮したものであるため、投下された錨が接触した場合には、光ファイバーケーブルの外周側の十分な衝撃強度を有していない樹脂製の防食層が保護するだけである。そのため、外的要因による光ファイバーケーブルの損傷に対しては、ほとんど保護されていなかった。また、海底だけでなく、河川や湖沼の底に敷設される送水管も上記と同様の問題を抱えている。
【特許文献1】実公平6−4151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、内的要因のみならず、外的要因からも光ファイバーを適切に保護できるようにした光ファイバーケーブル入り水底送水管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の光ファイバーケーブル入り水底送水管は、樹脂製の通水導管と該通水導管の外周側に蛇腹状に波付け加工された可撓性金属管を設け、さらにその外周側に樹脂製の防食層を被覆した水底送水管であって、前記通水導管と可撓性金属管との間に樹脂層を介在させ、ファイバー芯線を金属保護管に内挿して構成した光ファイバーケーブルを、管長手方向に延長するように前記樹脂層に埋設したことを特徴とするものである。
【0007】
ここで、前記光ファイバーケーブルを前記通水導管の周りに同一方向に螺旋状に巻回するように配置することもでき、その際に、前記光ファイバーケーブルの螺旋状の巻回角度を、水底送水管の軸方向に対して5°以上30°以下に設定することもできる。
【0008】
また、前記光ファイバーケーブルを前記通水導管の周りに巻回方向を交互に反転させるように螺旋状に配置することもでき、その際に、前記光ファイバーケーブルの配置数を2本にするとともに、前記通水導管の横断面で互いに対向する位置に配置し、かつ互いの配置範囲を非重複にすることもできる。
【0009】
また、本発明では、前記樹脂層と可撓性金属管との間に、前記樹脂層側から順に、テープ状布を螺旋状に巻回して形成した緩衝層と、テープ状鉛を前記テープ状布とは反対方向の螺旋状に巻回して形成した重量付加層と、テープ状ステンレス鋼を前記テープ状鉛とは反対方向の螺旋状に巻回して形成した補強層とを積層することもでき、前記通水導管と樹脂層との間に互いの密着を防止する密着防止緩衝層を設けることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ファイバーケーブル入り水底送水管によれば、通水導管とその外周側に設けた防食層との間に蛇腹状に波付け加工された可撓性金属管を設けた海水送水管を使用し、その可撓性金属管の内周側に配置される樹脂層に、ファイバー芯線を金属保護管に内挿して構成した光ファイバーケーブルを埋設して管長手方向に延長するようにしたので、船からの投錨などによる外的要因に対して光ファイバーケーブルの損傷を可撓性金属管によって防止することができる。
【0011】
また、光ファイバーケーブルを、ファイバー芯線を金属保護管に内挿した構成にしているので、水底送水管が屈曲して光ファイバーケーブルに張力の変化が発生するような状況であっても、ファイバー芯線が金属保護管の内部で自由に変位できるので内的要因による損傷も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の光ファイバーケーブル入り水底送水管を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1、2に示すように、この光ファイバーケーブル入り水底送水管1(以下、水底送水管1という)は、水が流通する樹脂製の通水導管2の外周側に順に、樹脂層2a、緩衝層3、重量付加層4、補強層5を積層している。
【0014】
通水導管2は、種々の樹脂管を用いることができるが、例えば、押出し成形された高密度ポリエチレン製の中空管を用いることができる。樹脂層2aは、後述する光ファイバーケーブル9を埋設するものであり、例えば、低密度ポリエチレン製の中空管を用いる。緩衝層3は、樹脂層2aと重量付加層4と間の緩衝材となるものであれば、特に限定されないが、例えば、樹脂層2aの外周面に、テープ状布3aを螺旋状に巻回して形成する。
【0015】
重量付加層4は、水底送水管1を浮力に対抗して海底に沈めることができるものを用い、材質としては比重の大きい鉛が好ましい。例えば、緩衝層3の外周面に、テープ状鉛4aをテープ状布3aとは反対方向の螺旋状に巻回して重力付加層4を形成する。補強層5は、水底送水管1の内圧および外圧に対して耐え得るように補強できるものを用い、例えば、重力付加層4の外周面に、テープ状のステンレス鋼5aをテープ状鉛4aとは反対方向の螺旋状に巻回して補強層5を形成する。補強層5の外周面には防錆紙6が積層されている。
【0016】
上記のように、テープ状布3a、テープ状鉛4a、テープ状ステンレス鋼5aを順に、反対方向に螺旋状に巻回することにより、それぞれの層を緩みにくく強固に形成できる。また、通水導管2の外周側の構成は、上記で示した実施形態の構成に限定されず、同様の効果を有する構成部材を用いることができ、また構成部材を省略し、或いは新たな構成部材を付加した構成であってもよい。
【0017】
防錆紙6が積層された補強層5の外周側を、通水導管2と同軸上に配置した可撓性金属管7が覆っている。可撓性金属管7の外周面には、防食層8を設け、この最外周の防食層8が内周側の構成部材の海水による腐食を防止する。防食層8としては、例えば、防食性および屈曲性に優れた低密度ポリエチレン製の中空管を用いる。
【0018】
可撓性金属管7は、水底送水管1の敷設作業の際や、凹凸のある海底に敷設した場合でも支障が生じない屈曲性を有し、錨等との衝突や接触により容易に変形しないように構成されている。例えば、図1に示したような波付き鋼管を用いることができ、この波付き形状によって優れた可撓性および衝撃強度を持たせることができる。波付き鋼管は、平鋼板を筒状に巻いて対向する端部どうしを溶接して形成した筒状体を外側から型押しして蛇腹状に波付き加工をすることにより製造することができる。
【0019】
可撓性金属管7に波付き鋼管を用いる場合、その仕様は使用条件等により異なるが、例えば、縮径部の内径が50mm〜400mm程度、拡径部の内径が60mm〜450mm程度で、壁厚が0.5mm〜210mm程度である。可撓性金属管7の縮径部を防錆紙6に当接させるようにするのが好ましい。
【0020】
通水導管2の外周面に沿うように樹脂層2aに埋設される光ファイバーケーブル9は、図3に例示するように、ファイバー芯線10を金属保護管11に内挿した構成になっている。ここで、ファイバー芯線10は、金属保護管11に対して余長を有して内挿されている。
【0021】
金属保護管11としては、例えば、鋼管、アルミニウム管など、種々の金属管を用いることができるが、強度および耐久性に優れたステンレス鋼管が好ましい。金属保護管11にステンレス鋼管を用いる場合、その仕様は使用条件等により異なるが、例えば、内径が1mm〜5mm程度で、壁厚が0.1mm〜0.5mm程度である。このとき、樹脂層2aの層厚は、金属保護管11の外径よりも大きくなるようにしつつ、例えば、2.5mm〜10.0mm程度に設定する。
【0022】
本発明では、光ファイバーケーブル9が、通水導管2の外周側の樹脂層2aに埋設されて、水底送水管1の長手方向に延長するように配置されている。したがって、光ファイバーケーブル9の外周側が可撓性金属管7で覆われた構造となり、海、河川、湖沼等の水底の表面に露出状態に敷設された水底送水管1に、船等から投下された錨が衝突、接触した場合であっても、外傷は可撓性金属管7で阻止され、光ファイバーケーブル9へ達することがない。このように、光ファイバーケーブル9を外的要因による損傷から十分に保護することができる。
【0023】
さらに、可撓性金属管7が大きく損傷した場合であっても、金属保護管11によって、ガラス繊維等からなる損傷し易いファイバー芯線10を保護することができるので、一段と安全性が向上することになる。
【0024】
また、水底送水管1は敷設作業にあたり、準備のため水底送水管1を巻取りリールに巻回する際、巻取りリールから繰出して海、河川、湖沼等の水底に敷設する際、凹凸のある水底に敷設された状態になった場合など、頻繁に屈曲した状態になる。このような屈曲によって光ファイバーケーブル9に作用する張力に変化が生じても、光ファイバーケーブル9のファイバー芯線10は、金属保護管11の内部で自由に変位して過大な張力を受けることがない。
【0025】
また、屈曲によって光ファイバーケーブル9の周辺にある水底送水管1の他の構成部材が変形等しても、光ファイバーケーブル9は緩衝材となる樹脂層2aに埋設されているので、過度な摩擦や圧縮を受けることがない。このように、内的要因による損傷からも光ファイバーケーブル9(ファイバー芯線10)を十分に保護することができる。
【0026】
光ファイバーケーブル9は、例えば、図4に示すように通水導管2の周りに同一方向に螺旋状に巻回して配置する。この配置形態によれば、光ファイバーケーブル9の巻回作業を比較的容易に行なうことができるとともに、通水導管2を軸にして安定して配置することができる。
【0027】
この際に、光ファイバーケーブル9の螺旋状の巻回角度Aを、水底送水管1の軸方向に対して側面視で5°以上30°以下に設定することが好ましい。巻回角度Aが5°未満であると余長が少なくなり、水底送水管1が屈曲した際に、その屈曲に追従しようとする光ファイバーケーブル9(金属保護管11)に生じる応力が高くなるためである。一方、巻回角度Aが30°を超えると高価な光ファイバーケーブル9の余長が大きくなりすぎて不経済になるためである。
【0028】
また、図5(a)、(b)に例示するように、光ファイバーケーブル9を通水導管2の周りに巻回方向を交互に反転させるように螺旋状に配置するようにもできる。このように、光ファイバーケーブル9を通水導管2に対して巻回した状態にしないで周方向で途中で折り返し、波状やジグザク状に通水導管2の周りに配置する折り返し巻きにして、通水導管2の長さに対して余長を有するように配置することもできる。
【0029】
このような、折り返し巻きの配置形態によれば、図4のように通水導管2を軸にして巻回していないので、任意の位置に光ファイバーケーブル9を配置することが可能になる。光ファイバーケーブル9の余長は、水底送水管1の想定される屈曲程度により適宜決定し、特に限定されるものではないが、例えば、光ファイバーケーブル9の長さを水底送水管1の長さの101%〜106%とする。
【0030】
上記した種々の実施形態では、水底送水管1に内設する光ファイバーケーブル9の数が1本であるが、複数本にすることもできる。例えば、予備の光ファイバーケーブル9を配置することにより、メインの光ファイバーケーブル9が故障した場合のリスクを低減することができる。
【0031】
光ファイバーケーブル9の配置数を2本にする場合、図6、7に例示するように、それぞれの光ファイバーケーブル9a、9bを上述したような折り返し巻きにするとともに、通水導管2の横断面で対向する位置に配置し、かつそれぞれの光ファイバーケーブル9a、9bの配置範囲が重ならないようにするとよい。この配置形態では通水導管2の横断面において、2本の光ファイバーケーブル9a、9bが間隔をあけて明確に分離されるとともに、それぞれの配置範囲が特定範囲に偏在するので、2本の光ファイバーケーブル9a、9bが投錨等により一度に損傷するような不具合を回避でき、著しく安全性が向上する。
【0032】
尚、通水導管2の周りに周方向に十分な間隔をあけて複数の光ファイバーケーブル9をそれぞれの配置範囲を非重複状態で配置できるのであれば、図6、7に例示した実施形態を、光ファイバーケーブル9の配置数を3本以上にした場合にも適用することが可能である。
【0033】
また、図8に例示するように、通水導管2と樹脂層2aとの間に密着防止緩衝層2bを設けて、通水導管2と樹脂層2aとの密着を防止する構造にすることもできる。密着防止緩衝層2bとしては、互いの密着を防止できるものであればよく、例えば、ポリエステル不織布を用いる。このように密着防止緩衝層2bを設けた構造にすることにより、互いの動きが拘束されにくくなり、光ファイバーケーブル9に生じる応力を一段と軽減させることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の光ファイバーケーブル入り水底送水管を切開して例示する側面図である。
【図2】図1の光ファイバーケーブル入り水底送水管の横断面図である。
【図3】図1の光ファイバーバーケーブルを切開して例示する斜視図である。
【図4】光ファイバーケーブルの配置形態を例示する側面図である。
【図5】光ファイバーケーブルの別の配置形態を例示する側面図である。
【図6】光ファイバーケーブルのさらに別の配置形態を例示する側面図である。
【図7】図6の正面図である。
【図8】本発明の光ファイバーケーブル入り水底送水管の変形例を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 光ファイバーケーブル入り水底送水管
2 通水導管
2a 樹脂層
2b 密着防止緩衝層
3 緩衝層
3a テープ状布
4 重量付加層
4a テープ状鉛
5 補強層
5a テープ状ステンレス鋼
6 防錆紙
7 可撓性金属管
8 外周防食層
9、9a、9b 光ファイバーケーブル
10 ファイバー芯線
11 金属保護管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の通水導管と該通水導管の外周側に蛇腹状に波付け加工された可撓性金属管を設け、さらにその外周側に樹脂製の防食層を被覆した水底送水管であって、前記通水導管と可撓性金属管との間に樹脂層を介在させ、ファイバー芯線を金属保護管に内挿して構成した光ファイバーケーブルを、管長手方向に延長するように前記樹脂層に埋設した光ファイバーケーブル入り水底送水管。
【請求項2】
前記光ファイバーケーブルを前記通水導管の周りに同一方向に螺旋状に巻回するように配置した請求項1に記載の光ファイバー入り水底送水管。
【請求項3】
前記光ファイバーケーブルの螺旋状の巻回角度を、水底送水管の軸方向に対して5°以上30°以下に設定した請求項2に記載の光ファイバー入り水底送水管。
【請求項4】
前記光ファイバーケーブルを前記通水導管の周りに巻回方向を交互に反転させるように螺旋状に配置した請求項1に記載の光ファイバー入り水底送水管。
【請求項5】
前記光ファイバーケーブルの配置数を2本にするとともに、前記通水導管の横断面で互いに対向する位置に配置し、かつ互いの配置範囲を非重複にした請求項4に記載の光ファイバーケーブル入り水底送水管。
【請求項6】
前記樹脂層と可撓性金属管との間に、前記樹脂層側から順に、テープ状布を螺旋状に巻回して形成した緩衝層と、テープ状鉛を前記テープ状布とは反対方向の螺旋状に巻回して形成した重量付加層と、テープ状ステンレス鋼を前記テープ状鉛とは反対方向の螺旋状に巻回して形成した補強層とを積層した請求項1〜5のいずれかに記載の光ファイバーケーブル入り水底送水管。
【請求項7】
前記通水導管と樹脂層との間に互いの密着を防止する密着防止緩衝層を設けた請求項1〜6のいずれかに記載の光ファイバーケーブル入り水底送水管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−267461(P2008−267461A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109528(P2007−109528)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000174909)三井金属エンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】