説明

光ファイバ心線

【課題】オーバコート層として設けた紫外線硬化型樹脂からなる被覆のみを選択的に容易に除去することができる光ファイバ心線を提供する。
【解決手段】光ファイバ11外周に、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ250μmの第1の被覆12を設け、その上に、脂肪酸系滑剤を0.5重量%〜5重量%含有する紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ500μmの第2の被覆13を設けた光ファイバ心線10であり、また、光ファイバ外周に、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ250μmの第1の被覆を設け、その上に、液状潤滑剤の塗布層を介して、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ500μmの第2の被覆を設けた光ファイバ心線である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコードや光ドロップケーブルなどに用いられる光ファイバ心線に係り、さらに詳しくは、光ファイバ上に外径がほぼ250μmの第1の被覆および外径がほぼ500μmの第2の被覆を順に設けた光ファイバ心線で、第2の被覆の選択的被覆除去性に優れた光ファイバ心線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ファイバコードや光ドロップケーブルなどに用いる光ファイバ心線として、石英ガラスを主成分とする外径125μmの光ファイバ上に、紫外線硬化型樹脂による被覆を施して外径を約250μmとした光ファイバ心線が、光ファイバコードや光ドロップケーブルなどの用途に広く用いられている。この光ファイバ心線は、細径で、曲がりやすく、かつ、折れやすいため、現場における配線作業や接続作業の際に、その取扱いに細心の注意を払う必要がある。
【0003】
そこで、作業時の取扱い性を改善するため、従来の外径約250μmの光ファイバ心線上に、さらに、紫外線硬化型樹脂を外径が約500μmとなるようにオーバコートしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。大径化することによって、剛性を増大させ、その取扱い性を高めようとしたものである。
【0004】
しかしながら、このような外径約500μmの光ファイバ心線は、大径化によって、作業時の取扱い性が改善された反面、次のような問題が生じてきている。
【0005】
すなわち、近年、光ファイバ心線を接続するにあたって、光ファイバを突き合わせ、機械的に接続するだけの、いわゆるメカニカルスプライスと称する方法が、簡便かつ安価な接続方法として用いられるようになってきた。このような方法を上記のような外径約500μmの光ファイバ心線に適用しようとすると、使用する接続装置や工具などの制約もあって、外側のオーバコート層のみを選択的に除去する必要がある。つまり、接続は、光ファイバ上に外径約250μmの被覆のみを残した状態で行われる。
【0006】
しかしながら、これまで、外径約500μmの光ファイバ心線において、外側のオーバコート層のみの選択的除去性を考慮したものはなく、被覆を加熱して除去する加熱式被覆除去装置はもとより、マイクロストリッパと称する汎用の非加熱式被覆除去工具をもってしても、オーバコート層の選択除去は困難であった。
【0007】
すなわち、加熱式被覆除去装置では、光ファイバまでの被覆がすべて除去されてしまう。一方、マイクロストリッパは、上下に2枚の刃を備えた汎用非加熱式被覆除去工具で、2枚の刃の刃先には半円状の凹みが設けられており、2枚の刃を光ファイバ心線の被覆に上下両方向より食い込ませ、この状態で、2枚の刃を光ファイバ心線の長さ方向に移動させることにより、被覆を切断し、除去するものであり、除去しようとする被覆径に応じて刃先の凹みの径を適宜変更することができるようになっている。しかしながら、上述した外径約500μmの光ファイバ心線においては、光ファイバ上の紫外線硬化型樹脂被覆とオーバコート層との密着性が強いため、刃先の凹みの径を変更してオーバコート層のみを選択的に除去しようとしても、内側の紫外線硬化型樹脂被覆がオーバコート層とともに除去されてしまう。
【特許文献1】特開2003−241033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、光ファイバ上に紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ250μmの被覆を設け、その上に、さらにオーバコート層として紫外線硬化型樹脂からなる被覆を設けて外径約500μmとした光ファイバ心線において、オーバコート層として設けた紫外線硬化型樹脂からなる被覆のみを選択的に容易に除去することができる光ファイバ心線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明の光ファイバ心線は、光ファイバ外周に、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ250μmの第1の被覆を設け、その上に、脂肪酸系滑剤を0.5重量%〜5重量%含有する紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ500μmの第2の被覆を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光ファイバ心線において、脂肪酸系滑剤は、ステアリン酸ブチル、飽和脂肪酸エステルおよび芳香族アルコール脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の光ファイバ心線において、第2の被覆は、23℃におけるヤング率が30MPa〜300MPaの紫外線硬化型樹脂からなることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明の光ファイバ心線は、光ファイバ外周に、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ250μmの第1の被覆を設け、その上に、液状潤滑剤の塗布層を介して、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ500μmの第2の被覆を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の光ファイバ心線において、液状潤滑剤は、シリコーンオイルであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5記載の光ファイバ心線において、第2の被覆は、23℃におけるヤング率が30MPa〜800MPaの紫外線硬化型樹脂からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光ファイバ心線によれば、光ファイバ外周に、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ250μmの第1の被覆を設け、その上に、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ500μmの第2の被覆を設けた光ファイバ心線において、第2の被覆のみをマイクロストリッパなどを用いて選択的に容易に除去することが可能となり、いわゆるメカニカルスプライスによる心線接続の適用が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の光ファイバ心線の第1の実施形態を示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の光ファイバ心線10は、石英ガラス系光ファイバなどの光ファイバ11の外周に、第1の被覆12および第2の被覆13を順に設けた構造となっている。光ファイバ11の外径は125μmであり、第1の被覆12および第2の被覆13の外径は、それぞれ250μmおよび500μである。
【0019】
第1の被覆12は、主として、光ファイバ11の保護および強化のためのもので、内側よりプライマリ層12a、セカンダリ層12bおよび着色層12cを順に形成した3層構造を有している。これらの第1の被覆12の各層を構成する紫外線硬化型樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。
【0020】
このような第1の被覆12に対し、第2の被覆13は、主に取扱い性の向上および環境からの保護を目的としたものである。本発明においては、このような目的に加え、マイクロストリッパなどの被覆除去工具を用いて第2の被覆13のみを選択的に除去することができるようにするために、第2の被覆13を、脂肪酸系滑剤を0.5重量%〜5重量%含有する紫外線硬化型樹脂で構成している。紫外線硬化型樹脂の種類としては、ウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。また、脂肪酸系滑剤としては、例えば、ステアリン酸ブチル、飽和脂肪酸エステル、芳香族アルコール脂肪酸エステル、これらの混合系などの脂肪酸エステル系滑剤が挙げられる。これらの滑剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
本発明において、脂肪酸系滑剤の含有量が0.5重量%未満では、第1の被覆12と第2の被覆13との密着力が大きくなり、第2の被覆13の選択的除去性の改善効果が小さくなる。逆に、含有量が5重量%を超えると、第1の被覆12と第2の被覆13との密着力が小さくなりすぎて、第1の被覆12が被覆された光ファイバ11の第2の被覆13からの突き出しが発生するおそれがある。脂肪酸系滑剤の含有量の好ましい範囲は2重量%〜3重量%である。
【0022】
本実施形態においては、第2の被覆13を構成する紫外線硬化型樹脂は、23℃におけるヤング率(JIS K 7113)が30MPa〜300MPaであることが好ましく、100MPa〜300MPaであることがより好ましい。200MPa〜300MPaであるとよりいっそう好ましい。第2の被覆13を構成する紫外線硬化型樹脂の23℃におけるヤング率(JIS K 7113)が30MPa未満では、被覆除去作業中に被覆が切れたり、被覆除去端面にバリが発生するおそれがある。また、表面のべとつきやわずかな外力で被覆が剥がれるといった問題が生じ、取扱い性が低下する。一方、ヤング率が300MPaを超えると、第2の被覆13の被覆除去性が低下する。
【0023】
この光ファイバ心線10を製造するには、例えば、光ファイバ母材を溶融紡糸して得られる光ファイバ11に、上述したようなプライマリ層12a用、セカンダリ層12b用、着色層12c用および第2の被覆13用の各紫外線硬化型樹脂を順に塗布し、紫外線を照射して硬化させるようにすればよい。
【0024】
このように構成される光ファイバ心線10においては、紫外線硬化型樹脂からなる外径250μmの第1の被覆12の上に、脂肪酸系滑剤を所定濃度で含有する紫外線硬化型樹脂からなる外径500μmの第2の被覆13を設けたことにより、マイクロストリッパなどの被覆除去工具を用いて、第2の被覆13のみを選択的にかつ容易に除去することが可能となり、いわゆるメカニカルスプライスによる光ファイバの接続が容易となる。なお、被覆除去径の異なる被覆除去工具を使用することにより、必要に応じて、第1の被覆12を、単独で、あるいは第2の被覆13とともに、除去することも可能である。
【0025】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
【0026】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る断面図であり、図1に共通する部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
本実施形態に係る光ファイバ心線20は、第1の被覆12上に、液状潤滑剤の塗布層14を介して、脂肪酸系滑剤未配合の紫外線硬化型樹脂からなる第2の被覆131が設けられている点を除いて、図1に示す第1の実施形態と同様に構成されている。
【0028】
すなわち、石英ガラス系光ファイバなどからなる外径125μmの光ファイバ11の外周に、内側よりプライマリ層12a、セカンダリ層12bおよび着色層12cを順に形成した3層構造を有する外径250μmの第1の被覆12を設け、この上に、液状潤滑剤の塗布層14を介して、脂肪酸系滑剤未配合で紫外線硬化型樹脂からなる外径500μmの第2の被覆131を設けた構造となっている。
【0029】
このように構成される光ファイバ心線20においても、紫外線硬化型樹脂からなる外径250μmの第1の被覆12と、紫外線硬化型樹脂からなる外径500μmの第2の被覆131との間に液状潤滑剤の塗布層14を介在させたことにより、マイクロストリッパなどの被覆除去工具を用いて、第2の被覆131のみを選択的にかつ容易に除去することが可能となり、いわゆるメカニカルスプライスによる光ファイバの接続が容易となる。また、被覆除去径の異なる被覆除去工具を使用することにより、必要に応じて、第1の被覆12を、単独で、あるいは第2の被覆131とともに、除去することも可能である。
【0030】
この光ファイバ心線20を製造するには、例えば、光ファイバ母材を溶融紡糸して得られる光ファイバ11に、上述したようなプライマリ層12a用、セカンダリ層12b用および着色層12c用の各紫外線硬化型樹脂を順に塗布し、紫外線を照射して硬化させて3層からなる第1の被覆12を形成した後、その上に、液状潤滑剤を均一に、第1の被覆12の全周方向に均一になるように塗布しながら、第2の被覆131用紫外線硬化型樹脂をさらに塗布し、紫外線を照射して硬化させるようにすればよい。
【0031】
液状潤滑剤の塗布層14の形成に用いる液状潤滑剤としては、シリコーンオイルが適しており、特に、長期信頼性の点から、無極性でかつ不揮発性のジメチルシリコーンなどのシリコーンオイルの使用が好ましい。また、その動粘度(25℃)は10cm/s以上であることが好ましく、動粘度(25℃)が10cm/s未満では、第2の被覆131を安定して被覆することが困難になる。
【0032】
また、この実施形態においては、第2の被覆131を構成する紫外線硬化型樹脂は、23℃におけるヤング率(JIS K 7113)が30MPa〜800MPaであることが好ましく、100MPa〜800MPaであることがより好ましい。200MPa〜800MPaであるとよりいっそう好ましい。第2の被覆131を構成する紫外線硬化型樹脂の23℃におけるヤング率(JIS K 7113)が30MPa未満では、被覆除去作業中に被覆が切れたり、被覆除去端面にバリが発生するおそれがある。また、表面のべとつきやわずかな外力で被覆が剥がれるといった問題が生じ、取扱い性が低下する。一方、23℃におけるヤング率が800MPaを超えると、第2の被覆131の被覆除去性が低下する。
【0033】
なお、以上説明した各実施形態では、いずれも第1の被覆12がプライマリ層12a、セカンダリ層12b、着色層12cの3層構造とされているが、本発明において、第1の被覆12は単層構造であってもよく2層構造であってもよい。また、4層またはそれ以上であってもよい。
【0034】
図3は、本発明の光ファイバ心線を用いた光ファイバコードの一例を示す断面図である。
【0035】
図3において、この光ファイバコードは、1本もしくは複数本(図面の例では、2本)の光ファイバ心線31と、この光ファイバ心線31とともに集合されたアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリエステル系繊維、ナイロン繊維などの抗張力繊維32と、これらの外周にポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂をパイプ状に押出すことにより形成された外被33とから構成されている。そして、光ファイバ心線31には、上述したような本発明の光ファイバ心線が使用されている。このような光ファイバコードは、光ファイバ心線31の取扱い性に優れているのみならず、接続に際しては、マイクロストリッパなどの被覆除去工具を用いて、光ファイバ心線31の第2の被覆のみを選択的にかつ容易に除去することができ、いわゆるメカニカルスプライスにより容易に光ファイバの接続を行うことができる。
【0036】
図4は、本発明の光ファイバ心線を用いた光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【0037】
この光ファイバケーブルは、いわゆる架空光ドロップケーブルとしての使用に適した光ファイバケーブルであり、同図に示すように、支持線部41とケーブル部42とこれらを連結する連結部43とから構成されている。支持線部41は、鋼線などからなる支持線44と、その外周に設けられた外被45とから構成されている。また、ケーブル部42は、1本乃至複数本(図面の例では、1本)の光ファイバ心線46と、この光ファイバ心線46の上下に間隔をおいて並行に配置された鋼線、G−FRP(ガラス繊維強化プラスチック)、抗張力繊維(アラミド繊維、ポリエステル繊維など)強化プラスチックなどからなる抗張力体47と、これらの外側に設けられた外被48とから構成されている。
【0038】
支持線部41の外被45、ケーブル部42の外被48および連結部43は、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂の一括押出により形成されており、また、ケーブル部42の外被48の両側部のほぼ中央、光ファイバ心線46が位置する部分には、引き裂き用のノッチ48aが設けられている。ケーブル接続作業の際に、これらの引き裂き用ノッチ48aを起点に外被48を引き裂くことにより、被覆された光ファイバ心線46を容易に取り出すことができる。そして、光ファイバ心線46に、前述したような本発明の光ファイバ心線が使用されている。
【0039】
このような光ファイバケーブルは、光ファイバ心線46の取扱い性に優れているのみならず、接続に際しては、マイクロストリッパなどの被覆除去工具を用いて、光ファイバ心線46の第2の被覆のみを選択的にかつ容易に除去することができ、いわゆるメカニカルスプライスにより容易に光ファイバの接続を行うことができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
実施例1〜6
図1に示す構造の光ファイバ心線を製造した。
すなわち、外径125μmの石英ガラス系SM光ファイバ11上に、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂を用いて、内側より順にプライマリ層12a、セカンダリ層12b、および着色層12cからなる3層構造の第1の被覆12(外径250μm)を形成し、さらに、その上に、滑剤としてLoxiol G71(複合エステル系滑剤の商品名、Henkel社製)を表1に示す割合で含有する、ヤング率(23℃)が250MPaのウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂(A)またはヤング率(23℃)が700MPaのウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂(B)を用いて、外径500μmの第2の被覆13を形成した。
【0042】
比較例1〜4
第2の被覆13の形成材料を表1に示すように変えた以外は上記実施例と同様にして光ファイバ心線を製造した。
【0043】
実施例7、8
図2に示す構造の光ファイバ心線を製造した。
すなわち、外径125μmの石英ガラス系SM光ファイバ11上に、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂を用いて、内側より順にプライマリ層12a、セカンダリ層12b、および着色層12cからなる3層構造の第1の被覆12(外径250μm)を形成した後、その表面に、液状潤滑剤としてKF−96−20CS(シリコーンオイルの商品名、信越化学工業社製;粘度20cm/s)を薄く塗布しながら、ヤング率(23℃)が250MPaのウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂(A)またはヤング率(23℃)が700MPaのウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂(B)を被覆し、紫外線照射により硬化させて、外径500μmの第2の被覆131を形成した。
【0044】
上記各実施例および各比較例で得られた光ファイバ心線に対し、MICRO ELECTRONICS社製のMICRO−STRIP(登録商標)を用い、除去長50mm、引張速度500mm/minの条件で第2の被覆13、131の除去を試み、その除去性を評価した。また、長さ1mに切り出した光ファイバ心線を−30℃〜+70℃の温度範囲にて3サイクル保持後、第2の被覆13、131からの光ファイバ11(第1の被覆12を被覆した状態)の突出し量を測定した。これらの測定結果を第2の被覆13、131を構成する材料のヤング率などとともに表1および表2に併せ示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
上記の結果から明らかなように、特に、脂肪酸系滑剤を0.5重量%〜5重量%含有し、かつ、ヤング率(23℃)が300MPa以下の紫外線硬化型樹脂を用いて第2の被覆を形成した実施例1〜3、並びに、第1の被覆上にシリコーンオイルを塗布し、その上に第2の被覆を設けた実施例7、8の光ファイバ心線は、第2の被覆の選択的除去性に非常に優れるうえ、光ファイバの突出し量が1mm未満で、良好な特性を有していた。これに対し、脂肪酸系滑剤の含有量が過少である比較例2や、脂肪酸系滑剤の含有量が未配合でシリコーンオイルの塗布処理もなされていない比較例3、4では被覆除去性が不良で、また、脂肪酸系滑剤の含有量が過剰な比較例1では被覆除去性が良好なものの光ファイバの突出し量の増大が認められ、実用上問題がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の光ファイバ心線の一実施形態を示す断面図。
【図2】本発明の光ファイバ心線の他の実施形態を示す断面図。
【図3】本発明の光ファイバ心線を用いた光ファイバコードの一例を示す断面図。
【図4】本発明の光ファイバ心線を用いた光ファイバケーブルの一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0049】
10,20,31,46…光ファイバ心線、11…光ファイバ、12…第1の被覆、12a…プライマリ層、12b…セカンダリ層、12c…着色層、13、131…第2の被覆、14…液状潤滑剤の塗布層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ外周に、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ250μmの第1の被覆を設け、その上に、脂肪酸系滑剤を0.5重量%〜5重量%含有する紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ500μmの第2の被覆を設けたことを特徴とする光ファイバ心線。
【請求項2】
脂肪酸系滑剤は、ステアリン酸ブチル、飽和脂肪酸エステルおよび芳香族アルコール脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ心線。
【請求項3】
第2の被覆は、23℃におけるヤング率が30MPa〜300MPaの紫外線硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバ心線。
【請求項4】
光ファイバ外周に、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ250μmの第1の被覆を設け、その上に、液状潤滑剤の塗布層を介して、紫外線硬化型樹脂からなる外径がほぼ500μmの第2の被覆を設けたことを特徴とする光ファイバ心線。
【請求項5】
液状潤滑剤は、シリコーンオイルであることを特徴とする請求項4記載の光ファイバ心線。
【請求項6】
第2の被覆は、23℃におけるヤング率が30MPa〜800MPaの紫外線硬化型樹脂からなることを特徴とする請求項4または5記載の光ファイバ心線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−145847(P2006−145847A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335934(P2004−335934)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】