説明

光伝送システム

【課題】FTTHシステム、CATVシステムおよびビル共聴システムを1つのシステムとして構築する。
【解決手段】本発明の光伝送システムは、CATVの70〜770MHz帯域の第1の電気信号およびBSアンテナから出力するBS−IF信号やCSアンテナから出力するCS−IF信号の第2の電気信号を第1、第2の光信号に変調する送信部1と、送信部1において第1、第2の光信号が合波され、合波された光信号を伝送する光ファイバから成る光伝送路2と、光伝送路2の途中に設けられ、合波された光信号を増幅する光増幅器3と、光増幅器3から送出される光信号を第1、第2の電気信号に復調する受信部4とを備えている。
送信部1は、第1の電気信号を第1の光信号に変調する光外部変調器11と、第2の電気信号を第2の光信号に変調する光直接変調器12と、光外部変調器11から出力する第1の光信号および光直接変調器12から出力する第2の光信号を合波する光カプラ等から成る光合波器13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムに係り、特に、加入者側に地上波77chと770MHzを超えるBS・CS−IF周波数の変調信号を伝送することができる光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の光伝送システムとして、(イ)光波長として1300nm付近を使用し、地上波77chと70〜770MHzの放送波を周波数分割多重方式により伝送するCATV(Cable Television)光伝送システム、(ロ)光波長として1550nm付近を使用し、各加入者までのアクセス区間を光ファイバ化したFTTH(Fiber To The Home)システム、(ハ)光波長として1300nm付近を使用し、短距離において受信用壁面端子にCATV信号を伝送するビル共聴システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記(イ)の光伝送システムは、CATVセンター局からサブセンター局間を結ぶ高品質の映像信号伝送用に使用され、この光伝送システムにおいては、LD(レーザーダイオード)の電流を放送波の周波数多重分割によって変調し、光信号を出力させる光直接変調器が採用されている。なお、この光伝送システムでは、後述するFTTHシステムで使用する光増幅器は使用されていない。
【0004】
また、(ロ)の光伝送システムにおいては、高速の情報通信環境を整備するという構想でPON(Passive Optical Network)システム、すなわち、光ファイバの途中に受動的な光分岐器(光カプラ)を設けて伝送路を2〜32本に分岐させたスター型ネットワークによる光配線形態が採用され、この光配線形態においては、光増幅器によって光信号が増幅され、この増幅により光カプラによる分岐損失が補填されるように構成されている。また、光送信器としては、波長が1550nm付近の伝送においてCATV波伝送の品質を確保するために、光外部変調器(半導体レーザから発信された光に信号を乗せるため、光を変調する外部機構)が使用されている。
【0005】
さらに、(ハ)の光伝送システムにおいては、CATV用光送信器において、LDが直接変調で駆動されるが、変調波にBS−IF信号やCS−IF信号が入力されると、1〜2GHzの放送波も一緒に変調され、この特性を利用して、CATV波、BS−IF信号およびCS−IF信号を伝送するシステム機器が販売されている。
【0006】
ここで、上記の光外部変調器および光直接変調器の特性について比較すると、先ず、前者の光外部変調器は、光増幅器で増幅できる1550nm波長の光送信器で、多重された映像信号の伝送品質劣化が少ないという特性があるものの、現用の光外部変調器では70〜770MHz程度の周波数帯域しか変調できないという難点がある。
【0007】
また、後者の光直接変調器については、2GHz程度の周波数帯域でも十分な変調を行うことができ、さらにCATVで使用する1330nmの波長では映像信号の劣化が少ないものの、1500nmの波長ではLDによる直接変調では映像信号の劣化が大きくなるという難点がある。
【0008】
次に、高調波変調方式の特性について比較すると、先ず、CATV伝送波(70〜770MHz)については、VSB(残留側波帯:Vestigial Sideband)−AM、64QAM(直交振幅変調:Quadrature Amplitude Modulation)に関し、最近は地上波デジタルOFDM(直交周波数分割多重変調:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が用いられている。このVSB−AMは振幅変調波であり、信号キャリアとノイズや妨害となる2次、3次の歪波の比率が大きいことが求められているため、品質劣化に対して弱い性質がある。また、64QAM、OFDMは再生時にデジタル処理による改善(エラー訂正等の技術)度を有するため、品質劣化には強い性質がある。ただし、CATV帯域に同時に周波数多重しているため、伝送品質はVSB−AMに準ずることになる。
【0009】
また、BS−IF信号やCS−IF信号(1〜2GHz)は、PSK(位相偏移変調方式:Pphase Shift Keying)で再生時にデジタル処理による改善(エラー訂正等の技術)度を有するため、品質劣化には強い性質がある。
【0010】
以上のように、FTTHシステムで使用する光外部変調器によれば、70〜770MHz帯域の光変調を行うことができるものの、770MHzを超えるBS・CS−IF周波数(1〜2GHz)の信号を同時に光変調することができず、このため、光増幅器から光カプラ等で分岐するPONシステムにBS−IF信号やCS−IF信号を伝送することができないという難点があった。
【0011】
また、受信部においては、1台の受信機で70MHz〜2GHz帯域まで受信できるものを用いることが望ましいところ、現状の受信機は高価であるという難点がある。このため、一本の光ファイバでVSB−AM波と、BS−IF、CS−IF帯域の信号を同時に伝送するには、高いCN比が要求される帯域と低いCN比で高いRF周波数の復調が要求される帯域とが混在しており、高いCN比が要求されるVSB−AMの伝送帯域内のNF(雑音指数)を集中的に良くする回路設計を行うため高いRF信号帯域まで帯域を広げることが困難であるという難点があった。
【0012】
【特許文献1】特開2001−78158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、加入者側に地上波77chと770MHzを超えるBS・CS−IF周波数の変調信号を伝送することができ、ひいては、FTTHシステム、CATVシステムおよびビル共聴システムを1つのシステムとして構築することができる光伝送システムを提供することを目的としている
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様である光伝送システムは、70〜770MHz帯域の第1の電気信号および第1の電気信号よりも周波数帯域の高い第2の電気信号を第1、第2の光信号に変調する送信部と、送信部において第1、第2の光信号が合波され、合波された光信号を伝送する光伝送路と、合波された光信号を第1、第2の電気信号に復調する受信部とを備え、送信部は、第1の電気信号を第1の光信号に変調する光外部変調器と、第2の電気信号を第2の光信号に変調する光直接変調器と、光外部変調器から出力する第1の光信号および光直接変調器から出力する第2の光信号を合波する光合波器とを備えるものである。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様である光伝送システムにおいて、受信部は、合波された光信号を第1、第2の光信号に分配する光分岐器と、光分岐器から出力する第1の光信号を第1の電気信号に復調する第1の光受信器と、光分岐器から出力する第2の光信号を第2の電気信号に復調する第2の光受信器とを備えるものである。
【0016】
本発明の第3の態様は、第2の態様である光伝送システムにおいて、光外部変調器から出力する第1の光信号と、光直接変調器から出力する第2の光信号との出力の比率が異なるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の態様乃至第3の態様の光伝送システムによれば、送信部に、第1の電気信号を第1の光信号に変調する光外部変調器と、第2の電気信号を第2の光信号に変調する光直接変調器と、光外部変調器から出力する第1の光信号および光直接変調器から出力する第2の光信号を合波する光合波器とが装備されていることから、加入者側に地上波77chと770MHzを超えるBS・CS−IF周波数の変調信号を伝送することができ、ひいては、FTTHシステム、CATVシステムおよびビル共聴システムを1つのシステムとして構築することができる。また、光増幅器を有効に活用できるため、従来のFTTHシステムの構成で、伝送帯域を大幅に増やすことができる。さらに、光外部変調器から出力する第1の光信号と、光直接変調器から出力する第2の光信号の出力の比率を異ならせることにより、システムで最適なCN比を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の光伝送システムを適用した実施の形態例について、図面を参照して説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の第1の実施例における光伝送システムの構成図を示している。
【0019】
図1において、本発明の光伝送システムは、CATVの70〜770MHz帯域の第1の電気信号およびBSアンテナから出力するBS−IF信号やCSアンテナから出力するCS−IF信号の第2の電気信号を第1、第2の光信号に変調する送信部1と、送信部1において第1、第2の光信号が合波され、合波された光信号を伝送する光ファイバから成る光伝送路2と、光伝送路2の途中に設けられ、合波された光信号を増幅する光増幅器3と、光増幅器3から送出される光信号を第1、第2の電気信号に復調する受信部4とを備えている。
【0020】
送信部1は、第1の電気信号を第1の光信号に変調する光外部変調器11と、第2の電気信号を第2の光信号に変調する光直接変調器12と、光外部変調器11から出力する第1の光信号および光直接変調器12から出力する第2の光信号を合波する光カプラ等から成る光合波器13とを備えている。ここで、光外部変調器11および光直接変調器12は光合波器13に接続され、光合波器13の出力側には光伝送路2が接続されている。
【0021】
受信部4は、光増幅器3から送出される光信号を第1、第2の光信号に分配する光分岐器41と、光分岐器41から出力する第1の光信号を、第1の電気信号に復調する第1の光受信器と、光分岐器41から出力する第2の光信号を第2の電気信号に復調する第2の光受信器とを備えている。ここで、光分岐器41の入力側は光伝送路2に接続され、出力側には第1、第2の光受信器42、43が接続されている。
【0022】
このような構成の伝送システムによれば、CATVの70〜770MHz帯域の第1の電気信号は、VSB−AM変調で光外部変調器11において第1の光信号に変調することができ、770MHzよりも周波数が高いBS−IF信号やCS−IF信号の第2の電気信号はPSK変調で光直接変調器12において第2の光信号に変調することができることから、第1の電気信号としてのCATVの70〜770MHz帯域は伝送品質劣化が少なく、また、第2の電気信号としてのBS−IF信号やCS−IF信号については劣化が生じるものの、1〜2GHz帯域の光変調ができることで、光信号に変調された第1、第2の光信号を同時に伝送することができる。
【0023】
また、高周波変調方式の特徴から第2の電気信号としてのBS−IF信号やCS−IF信号等の伝送品質劣化に対してPSK変調のデジタル改善度により映像品質を良好に保つことができる。
【0024】
ここで、光外部変調器11から出力する第1の光信号と、光直接変調器12から出力する第2の光信号との出力の比率を異ならせた場合には、高いCN比が必要な第1の42光受信機に対して多くの光信号を送り、低いCN比で良い第2の光受信機43に対して少ない光信号を送ることができる。すなわち、2つ以上の光信号を合波して一つの光ファイバで伝送すると、各映像信号の品質特性であるCN比が劣化するという性質があり、一方、地上波77chは高いCN比が必要であり、BS・CS−IF周波数は低いCN比でよいという特性がある。このため、本発明においては、光合波器13への光外部変調器11から出力する第1の光信号と、光直接変調器12から出力する第2の光信号の出力の比率を異ならせることにより、システムで最適なCN比を得ることができる。
【0025】
ここで、光外部変調器11から出力する第1の光信号と、光直接変調器12から出力する第2の光信号の出力の比率は、後述する理由により、1:1〜1:10の間で変えることが望ましい。
【0026】
第1に、例えば、出力の比率を1:2にした場合は光外部変調器11から出力する第1の光信号(VSB−AM)のCN比は約3.6dB低下し、光直接変調器12から出力する第2の光信号(BS・CS−IF)のCN比は約9.5dB低下する。
【0027】
第2に、例えば、出力の比率を1:5にした場合は光外部変調器11から出力する第1の光信号のCN比は約1.6dB低下し、光直接変調器12から出力する第2の光信号のCN比は約13dB低下する。
【0028】
第3に、例えば、出力の比率を1:10にした場合は光外部変調器11から出力する第1の光信号のCN比は約1dB低下し、光直接変調器12から出力する第2の光信号のCN比は約20dB低下する。
【0029】
以上のように、光外部変調器11から出力する第1の光信号に比べて光直接変調器12から出力する第2の光信号のCN比が10〜20dB程度低くても、良質な映像品質が得られるので、この比率をシステムに合わせて1:1〜1:10の間で選ぶことにより最適なシステムを構築することができる。
【0030】
このような構成の光伝送システムによれば、相反する要求を持つ地上波と衛星波のIF伝送を光ファイバと比率の異なる出力をする光分岐器を用いることにより、光受信器として目的に合致する最適な設計を行うことができ、システムの最適化を図ることができる。
[実施例2]
図2は、本発明の光伝送システムをFTTHシステムに適用した構成図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
同図において、この実施例においては、光外部変調器11の出力側にヘッドエンド14が接続され、光分岐器41の出力側に光ネットワーク44が接続されている。
【0032】
この実施例においても、FTTHシステムの一つであるPON方式で使用される映像送信部としてのヘッドエンド14から70〜770MHzの地上波77chの映像信号(第1の電気信号)が出力され、この映像信号(第1の電気信号)が光外部変調器11で第1の光信号に変調され、また、12.0GHz帯域のBS・CS−IF周波数の映像信号(第1の電気信号)が光直接変調器12で第2の光信号に変調され、これらの変調された第1、第2の光信号が光合波器13で合波されて、光伝送路2としての光ファイバへ伝送されることから、加入者側に地上波77chの770MHzを超える周波数の光信号を伝送することができる。また、光増幅器3を有効に活用できるため、従来のFTTHシステム構成で、伝送帯域を大幅に増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施例における光伝送システムの構成図。
【図2】本発明の第2の実施例における光伝送システムの構成図。
【符号の説明】
【0034】
1・・・送信部
11・・・光外部変調器
12・・・光直接変調器
13・・・光合波器
2・・・光伝送路
3・・・光増幅器
4・・・受信部
41・・・光分岐器
42・・・第1の光受信器
43・・・第1の光受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
70〜770MHz帯域の第1の電気信号および第1の電気信号よりも周波数帯域の高い第2の電気信号を第1、第2の光信号に変調する送信部と、前記送信部において前記第1、第2の光信号が合波され、合波された光信号を伝送する光伝送路と、前記合波された光信号を前記第1、第2の電気信号に復調する受信部とを備え、
前記送信部は、前記第1の電気信号を第1の光信号に変調する光外部変調器と、前記第2の電気信号を第2の光信号に変調する光直接変調器と、前記光外部変調器から出力する第1の光信号および前記光直接変調器から出力する第2の光信号を合波する光合波器とを備えることを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
前記受信部は、前記合波された光信号を前記第1、第2の光信号に分配する光分岐器と、前記光分岐器から出力する第1の光信号を前記第1の電気信号に復調する第1の光受信器と、前記光分岐器から出力する第2の光信号を前記第2の電気信号に復調する第2の光受信器とを備えることを特徴とする請求項1記載の光伝送システム。
【請求項3】
前記光外部変調器から出力する第1の光信号と、前記光直接変調器から出力する第2の光信号との出力の比率が異なることを特徴とする請求項2記載の光伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−25165(P2006−25165A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201326(P2004−201326)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【出願人】(591240364)宮崎電線工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】