説明

光伝送ユニット及び光ケーブルの検査方法

【課題】 コンテンツ配信の範囲を限定することができる光伝送ユニットを提供する。
【解決手段】 ソース側モジュール3とモニタ側モジュール5は、光ファイバ4を介して、識別信号Sidを送受信し、識別信号Sid送信から受信までの時間ΔTを計測し、計測した時間からソース側モジュール3とモニタ側モジュール5間の伝送距離を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソース機器とモニタ機器との間を光ケーブルにより接続して信号を送受信するための光伝送ユニットに関する。また、ソース機器とモニタ機器との間を繋ぐ光ケーブルを検査する光ケーブルの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク/DVDレコーダや、液晶/プラズマTVなどのディジタルAV機器の普及が急速に伸びている。また、これらのディジタルAV機器間のインターフェースとして、高解像度マルチメディアインターフェース(High Definition Multimedia Interface:HDMI)を実装する機器が出現してきた。さらに、パーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)においてもディジタルビデオ信号のインターフェースであるディジタルビジュアルインターフェース(Digital Visual Interface:DVI)を実装する製品も増えている。
【0003】
HDMI/DVIは機器間のビデオ信号の送受信に電気ケーブルを用いて行うが、伝送する画像の解像度が高くなるにつれて、また色情報が増えるにつれて、伝送すべき信号の帯域は増える。電気ケーブルの場合、伝送すべきビデオ信号の帯域が増大すると、帯域によっては伝送可能な距離は短くなる。今後、解像度や色情報は増加していく傾向があり、要求される伝送帯域は増えていくものと思われる。そこでこのようなディジタルビデオ伝送を実現するために、光ファイバなどの光ケーブルを伝送媒体とした光伝送システムを用いることが考えられている。
【0004】
下記特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、光ケーブルを伝送媒体としたHDMI/DVIによるディジタル映像信号の伝送技術が開示されている。
【0005】
光ファイバは伝送特性に優れており、電気ケーブルに比べて、伝送距離を延ばすことが可能である。伝送帯域やファイバの種類にも依存するが、伝送帯域を10Gbpsとする場合、マルチモードファイバを用いると数百m以上、シングルモードファイバの場合は数十km以上の伝送が可能である。
【0006】
一方でディジタルコンテンツは不正な複製を防止する仕組みが施されている。たとえばHDMIにおいては、高帯域ディジタルコンテンツ保護システム(High-bandwidth Digital Content Protection System:HDCP)という方式を用いており、ソース機器とモニタ機器間で正常に認証できた場合のみ、モニタ機器で画像の表示が可能となる。HDCPを用いればソース機器 ⇔ モニタ機器間の認証は可能である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−073220号公報
【特許文献2】特開2005−167867号公報
【特許文献3】特開2005−295176号公報
【特許文献4】特開2005−311879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、映画制作者、放送局等のコンテンツホルダーは、コンテンツの不正な複製はもちろんのこと、想定以上のコンテンツの長距離伝送も望まないと思われる。しかし、上記HDCPを用いたソース機器 ⇔ モニタ機器間の認証だけでは距離の制限は不可能である。つまり、光伝送システムを用いるとコンテンツの長距離伝送が可能となってしまい、コンテンツホルダーの想定を超えた長距離での、無許可のコンテンツ配信が行われる虞がある。コンテンツホルダーとしては、ソース機器からコンテンツを家庭の外に配信されるような状況は防ぎたい。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、コンテンツ配信の範囲を限定することができる光伝送ユニット及び光ケーブル検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光伝送ユニットは、上記課題を解決するために、ビデオ信号及び/又はオーディオ信号を出力するソース機器と、そのビデオ信号及び/又はオーディオ信号を受信して画像及び/又は音声を再生するモニタ機器との間を光ケーブルにより接続するための光伝送ユニットにおいて、一端を上記ソース機器に接続し、また他端を上記光ケーブルの一端に接続して上記ソース機器からの上記ビデオ信号及び/又はオーディオ信号の上記モニタ機器への送出を制御する第1のモジュールと、一端を上記モニタ機器に接続し、また他端を上記光ケーブルの他端に接続して上記第1のモジュールの制御により送出されてきた上記ビデオ信号及び/又はオーディオ信号の受信を制御する第2のモジュールとを備え、上記第1のモジュールと上記第2のモジュールは、上記光ケーブルを介して識別信号を送受信し、上記識別信号送信から受信までの時間を計測し、計測した時間から上記第1のモジュールと上記第2のモジュール間の伝送距離を測定する。
【0011】
ソース側モジュールがビデオ信号を送出する前に、ソース側モジュールとモニタ側モジュールは識別信号を送受信し、ソース側モジュールの識別信号送出 〜 モニタ側モジュールからの識別信号受信までの時間ΔTを計測し、その時間から「ソース側モジュール ⇔ モニタ側モジュール」間の距離L1を判定する。時間ΔT1と距離L1との関係は、光ファイバの伝送遅延から算出できる。
【0012】
距離L1がある範囲を超えていない場合に限り、ソース側モジュールは、ソース機器からのビデオ信号の送出を許可する。
【0013】
本発明に係る光ケーブルの検査方法は、上記課題を解決するために、ビデオ信号及び/又はオーディオ信号を出力するソース機器と、そのビデオ信号及び/又はオーディオ信号を受信して画像及び/又は音声を再生するモニタ機器との間を繋ぐ光ケーブルを検査する光ケーブルの検査方法において、上記ソース機器側から識別信号を生成して送信し、この送信タイミングにて時間測定を開始する第1のステップと、第1のステップに基づいて光ケーブルにより送信されてきた識別信号をモニタ側にて受信する第2のステップと、上記第2のステップによって受信した識別信号を上記光ケーブルによりソース側に送信する第3のステップと、上記第3のステップにより送信されてきた識別信号をソース側にて受信し、この受信タイミングにて時間測定を終了する第4のステップと、上記第4のステップにより終了された時間測定結果から識別信号の伝送遅延を算出する第5のステップと、上記第5のステップにより算出された遅延時間から上記伝送距離を算出し、この伝送距離と所定の距離とを比較し、比較結果に基づいてソース機器側からのコンテンツの送信を停止/許可する第6のステップとを備える。
【0014】
また、本発明に係る光ケーブルの検査方法は、上記課題を解決するために、ビデオ信号及び/又はオーディオ信号を出力するソース機器と、そのビデオ信号及び/又はオーディオ信号を受信して画像及び/又は音声を再生するモニタ機器との間を繋ぐ光ケーブルを検査する光ケーブルの検査方法において、上記モニタ機器側から識別信号を生成して送信し、この送信タイミングにて時間測定を開始する第1のステップと、第1のステップに基づいて光ケーブルにより送信されてきた識別信号をソース側にて受信する第2のステップと、上記第2のステップによって受信した識別信号を上記光ケーブルによりモニタ側に送信する第3のステップと、上記第3のステップにより送信されてきた識別信号をモニタ側にて受信し、この受信タイミングにて時間測定を終了する第4のステップと、上記第4のステップにより終了された時間測定結果から識別信号の伝送遅延を算出する第5のステップと、上記第5のステップにより算出された遅延時間から上記伝送距離を算出し、この伝送距離と所定の距離とを比較し、比較結果に基づいてソース機器側からのコンテンツの受信を停止/許可する第6のステップとを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンテンツ配信の距離の範囲を限定することができる。また、許容遅延量を最小限とすることにより、コンテンツの配信について、イーサネット(Ethernet;登録商標)ハブのようなLANや、IPネットワーク網のようなネットワークを経由させることを阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。この実施の形態は、図1に示すように、ビデオ信号及び/又はオーディオ信号を出力するソース機器2と、そのビデオ信号及び/又はオーディオ信号を受信して画像及び/又は音声を再生して表示及び/又は発音するモニタ機器6との間を光ケーブル(光ファイバ)4により接続するための光伝送ユニット1である。
【0017】
光伝送ユニット1は、一端3aをソース機器2に接続し、また他端3bを光ファイバ4の一端4aに接続するソース側モジュール(第1のモジュール)3と、一端5aをモニタ機器6に接続し、また他端5bを光ケーブルの他端4bに接続するモニタ側モジュール(第2のモジュール)5とを備えてなる。特に、図1に示す光伝送ユニット1は、ソース側モジュール3及びモニタ側モジュール5をソース機器2及びモニタ機器6に対して外付けする形態である。
【0018】
ソース機器2は、ハードディスク/DVDレコーダ等のディジタルビデオ信号を出力する機器である。モニタ機器6は、液晶/プラズマTV等のディジタルビデオ信号を受信して画像を表示する機器である。
【0019】
ソース側モジュール3は、ソース機器2からのビデオ信号及び/又はオーディオ信号の光ファイバ4を介したモニタ機器5への送出を制御する。また、モニタ側モジュール5は、ソース側モジュール3の制御により送出されてきたビデオ信号及び/又はオーディオ信号の受信を制御する。
【0020】
ソース側モジュール3とモニタ側モジュール5は、光ファイバ4を介して、後述する識別信号Sidを送受信し、識別信号Sid送信から受信までの時間ΔTを計測し、計測した時間からソース側モジュール3とモニタ側モジュール5間の伝送距離L0を測定する。
【0021】
図2にはソース側モジュール3とモニタ側モジュール5の内部構成を示す。ソース側モジュール3は、ソース機器2のRGB I/F21に接続されるRGB I/Fデバイス31と、ソース機器2の制御信号I/F22に接続され、RGB I/Fデバイス31から供給される信号に所定の信号処理を施すロジック部32と、ロジック部32から供給される信号(パラレル信号)をシリアル信号に変換する高速デバイス(SERDES)33と、モニタ側モジュール5との間の識別信号Sidの送受信によりコンテンツの配信を判定するコンテンツ配信判定部34と、電気信号を光信号に変換するE/O変換部35と、光信号を電気信号に変換するO/E変換部36とを備える。
【0022】
モニタ側モジュール5は、光ファイバ4を介してソース側モジュール3から供給された光信号を電気信号に変換するO/E変換部51と、ソース側モジュール3に供給する電気信号を光信号に変換するE/O変換部52と、O/E変換部51、E/O変換部52を介してソース側モジュール3との間で送受信される識別信号Sidによりコンテンツの配信を判定するコンテンツ配信判定部53と、O/E変換部51により変換された信号(シリアル信号)をパラレル信号に変換する高速デバイス(SERDES)54と、高速デバイス54によって変換された信号に所定の信号処理を施すロジック部55と、ロジック部55によって所定の信号処理が施された信号が供給され、RGB I/F信号をモニタ機器6のRGB I/F61に供給するRGB I/Fデバイス56とを備える。ロジック部55は、コンテンツ配信判定部53及びモニタ機器6の制御信号I/F62にも接続されている。
【0023】
ソース側モジュール3及びモニタ側モジュール5では、RGB I/F21及び61、制御信号I/F22及び62、RGB I/Fデバイス31及び56、ロジック部32及び55、高速デバイス33及び54により、ディジタルビデオ信号や制御信号を伝送するための処理を行うが、ここではビデオ信号、オーディオ信号、制御信号等の伝送形態については規定しない。ディジタルビデオ信号、オーディオ信号と制御信号を時分割多重して伝送してもよく、また、それぞれの電気→光変換された信号をそのまま伝送しても良い。
【0024】
光ファイバ4は、E/O変換部35とO/E変換部51を接続する光ファイバ41と、E/O変換部52とO/E変換部36を接続する光ファイバ42とからなる。光ファイバ41は、映像データ、音声データなどの実データの送信や、識別信号の送信に利用される。光ファイバ42は、識別信号の送信に利用される。
【0025】
RGB I/Fデバイス31及び56は、DVI又はHDMI規格などの準拠したデバイスであり、ソース機器2及びモニタ機器6に実装されるRGB I/F部21及び61で送受信される信号をインターフェースする。
【0026】
ロジック部32及び55は、RGB I/Fデバイス31及び56、制御信号I/F22及び62により送受信される信号を、それぞれの方向に対して1本のストリームに時分割多重/分離する機能を有する。また、ロジック部32及び55は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等で実現される。
【0027】
高速デバイス(SERDES)33及び54は、ストリームに多重化されたビデオ信号、オーディオ信号及び制御信号などをシリアライズ又はデシリアライズし、光伝送に適した符号変換(エンコード)又は逆符号(復号)変換(デコード)を行う。また、高速デバイス33及び54は、シリアライズ+8B10Bエンコード/デシリアライズ+8B10Bデコード等の機能を有している。
【0028】
E/O変換部35及び52は、電気信号を光信号に変換する変換器である。図3に示すように、レーザドライバ(LDD)7とレーザダイオード(LD)8とで構成される。LDD7は、例えば、高速デバイス33から供給されたビデオ信号やオーディオ信号などの電気信号をレーザ駆動信号に変換し、LD8を駆動する。LD8はレーザ駆動信号に応じたレーザ光を発生する。E/O変換部35、52により光に変換された信号は、各モジュール間を接続する光ファイバ4を媒体として伝送される。
【0029】
O/E変換部36及び51は、光ファイバ4を媒体として伝送された光信号を電気信号に変換する変換器である。図4に示すように、フォトディテクタ(PD)9、トランスインピーダンスアンプ(TIA)10、リミッティングアンプ(LIA)11で構成される。PD9は、上記光信号を検出する。TIA10、LIA11は、PD9による検出信号をそれぞれ増幅する。
【0030】
コンテンツ配信判定部34及び53は、ソース側モジュール3とモニタ側モジュール5間で識別信号Sidを送受信し、例えばソース側モジュール3からの識別信号送出と、モニタ側モジュール5での識別信号受信までの時間(或いは伝送時間、伝送遅延時間などという)ΔTを計測する。また、コンテンツ配信判定部34及び53は、計測した時間ΔTからソース側モジュールとモニタ側モジュールの間の距離Lを判定する。時間ΔTと距離Lとの関係は、光ファイバ4の伝送遅延から算出できる。さらに、コンテンツ配信判定部34及び53は、距離Lがある範囲を超えていない場合に限り、ソース側モジュール3に、ソース機器2からのビデオ信号及び/又はオーディオ信号の送出を許可させる。
【0031】
以下、光伝送ユニットの動作の一連の流れについて説明する。光伝送ユニット1は、ソース機器2からビデオ信号及び/又はオーディオ信号等のコンテンツをモニタ6に送出する前段階において、ソース機器2とモニタ機器6間の信号送受信の伝送時間を計測する。
【0032】
伝送時間の計測は、コンテンツ送信判定部1及び2によって実現する。伝送時間の計測方法については、詳細を後述する。本発明における構成は、上述したように光ファイバ伝送4を前提としており、光ファイバ4の伝送遅延を計測し、この伝送遅延時間に基づいてソース機器2⇔モニタ機器6間の距離Lを算出する。距離の算出方法については、後述に示す光ファイバの伝送遅延と距離の関係から説明することができる。
【0033】
本実施の形態の光伝送ユニット1では、コンテンツ送信判定部34及び53で計測された伝送時間ΔTによって、ソース機器2⇔モニタ機器6間の距離Lを算出することができ、この距離Lが所定の基準を超えているか否かにより、コンテンツ送出を許可するか、或いは許可しないかを判定する。
【0034】
ここで、ソース機器2とモニタ機器6の間について、どのくらいの「距離」が妥当であるかを考える。本発明が利用されるのは、前述の通りハードディスク/DVDレコーダや液晶/プラズマTVなどのディジタル家電である。これらの機器を使用するユーザの立場に立つと、家庭内は問題なく伝送させたいところである。一方、コンテンツホルダーなどの著作権者の立場に立つと、ソース機器から家庭の外に配信ことは防ぎたいものと思われる。家庭内を問題なく伝送させるための距離は、家の間取りによって異なるが、数十メートル〜百メートル程度あれば良いものと思われる。たとえば、百メートルを伝送制限とすると、後述の「光ファイバの伝送遅延と距離との関係」から、基準遅延時間を算出し、その値を使って判定すればよい。ここで言う「百メートル」という値は実装の一例であり、本発明の請求範囲を限定するものではない。
【0035】
次に、伝送時間の計測について説明する。伝送時間の計測は、コンテンツ送信判定部34および53、E/O変換部35及び52、O/E変換部51及び36にて実現される。
【0036】
以下では、図5に示すように、ソース側モジュール3→モニタ側モジュール6方向を「下り方向」、モニタ側モジュール6→ソース側モジュール3方向を「上り方向」と定義する。
【0037】
まず、ソース側モジュール3のコンテンツ送信判定部34は、識別信号Sidを送信する。E/O変換部35とO/E変換部51はACカップリングされていることが多い。この場合、直流成分は透過できないため、識別信号Sidはある程度高速で常にトグルしている信号が良い。図6に示すように、識別信号Sidを「10MHzの矩形波で、10ms周期で100nsのハイレベルフラット領域を持つ」と定義する。下り方向に送出された識別信号Sidはモニタ側モジュール6のコンテンツ送信判定部53で受信される。コンテンツ送信判定部53は、識別信号Sidを受信したら、10MHzの矩形波を上り方向に送信する。また、100ns幅のハイレベルフラット領域を受信したら、ただちに100ns幅のハイレベルフラット領域を持つ波形(識別信号)を上り方向に送信する。
【0038】
コンテンツ送信判定部53は、上記動作を、「下り方向→上り方向」の折り返し(ループ)動作で実現しても良い。
【0039】
ソース側モジュール3とモニタ側モジュール6が正常に接続され、動作が正常であれば、上記動作により、コンテンツ送信判定部34は、下り方向へ送信した識別信号Sidと同じ波形の識別信号Sid'を受信できるはずである。識別信号Sidと識別信号Sid'は同じ波形の信号であるが、時間差が生じるので、符号には“'”を付けている。
【0040】
コンテンツ送信判定部34は、下り方向に送信した識別信号Sidと上り方向を伝送(返送)してきた識別信号Sid‘との時間差を計測する。時間差の計測は、識別信号の100ns幅のハイレベルフラット領域を利用すればよい。ここでは、図7に示すように、例えば、「100ns幅のフラット領域の送出開始から受信まで」の時間を、伝送遅延ΔTと定義する。
【0041】
次に、光ファイバの伝送遅延と距離の関係について説明する。光ファイバは図8に示すように、石英で出来た高屈折率のコア(直径10〜62.5μm)43を低屈折率のクラッド(直径125μm)44で包んだ2重構造の伝送媒体である。光信号は、光ファイバ4のコア43内を臨界角θ以下の反射角で全反射しながら伝播していくが、ある特定の角度の反射のみが許される。この特定の角度の持つそれぞれの光路をモードと呼ぶ。モードの数は光ファイバ4のコア43とクラッド44の屈折率差、コア径、光波長等で決定され、モード数が複数存在する光ファイバをマルチモードファイバ(図9)、単一のモードのみが存在する場合をシングルモードファイバ(図10)と呼ぶ。図9においてマルチモードファイバでは、クラッド44aで包まれたコア43a内を複数光路が存在している。また、図10においてシングルモードファイバでは、クラッド44bで包まれたコア43b内を単一の光路が存在している。コア43a及び43bの屈折率をn1、クラッド44a及び44bの屈折率をn2と定義する。
【0042】
光の真空中での伝播速度をCとすると、コア43a及び43b内での光信号の速度Vpは、以下の(1)式となる。
Vp=C/n1・・・(1)
次に、光信号が光ファイバのコア内を伝播する光路長について記述する。光信号が光ファイバコア内を臨界角φで全反射しながら伝播した場合、光ファイバ長をL0、光路長をL1とすると、以下の(2)式の関係が成立する。
L1=L0/cosφ・・・(2)
マルチモードファイバの場合、モードが複数存在するが、光信号が光ファイバコア内を伝播する際の反射角は臨界角θ以下であるため、複数存在する光路長は、(2)式で求められる光路長L1以下であると言える。このことは、シングルモードファイバについても同じことが言える。
【0043】
シングルモードファイバおよびマルチモードファイバ、それぞれの臨界角θs、θmがどれくらいなのかを考える。臨界角は、コアとクラッドの屈折率でほぼ決まる。図11及び図12に示すように、シングルモードファイバのコア43bの屈折率をns1とし、クラッド44bの屈折率をns2とする。比屈折率Δは以下の(3)式から求められる。
Δ=(ns1−ns2)/ns1・・・(3)
すると、シングルモードファイバの臨界角θsは(4)式から求められる。
θs=√(2・Δ)・・・(4)
なお、(3)式及び(4)式はマルチモードファイバの臨界角θmの算出にも適用できる。
【0044】
今、シングルモードファイバのコア43bの屈折率ns1、クラッド44bの屈折率ns2を、それぞれ、以下の(5)式、(6)式とする。
ns1=1.466・・・(5)
ns2=1.462・・・(6)
すると、上記(3)式から(7)式が得られる。
比屈折率Δ=(1.466−1.462)/1.466=0.0027・・・(7)
また、上記(7)式の比屈折率Δの値を上記(4)式に代入すると臨界角θsは(8)式のように算出できる。
θs=√(2×0.0027)=0.073[rad]≒4・・・(8)
つまり臨界角θsは約4°となる。
【0045】
光信号は臨界角θs以下の角度φsで全反射するので、光路長L1とファイバ長L0との関係は、(9)式となる。
L1=L0/cosφs<L0/cosθs=L0/cos4°・・・(9)
したがって、光路長L1とファイバ長L0との関係は、(10)式のように置くことができる。
L1≒L0・・・(10)
また、マルチモードファイバのコアとクラッドの屈折率を、それぞれ、以下の(11)式、(12)式とする。
nm1=1.490・・・(11)
nm2=1.475・・・(12)
すると、上記(3)式から(13)式が得られる。
比屈折率Δ=(1.490−1.475)/1.490=0.010・・・(13)
また、上記(13)式の比屈折率Δの値を上記(4)式に代入すると臨界角θmは(14)式のように算出できる。
θm=√(2×0.010)=0.142[rad]≒8・・・(14)
つまり臨界角θsは約8°となる。
【0046】
光信号は臨界角θm以下の角度φmで全反射するので、光路長L1とファイバ長L0との関係は、(15)式となる。
L1=L0/cosφm<L0/cosθm=L0/cos8・・・(15)
したがって、光路長L1とファイバ長L0との関係は、(16)式のように置くことができる。
L1≒L0・・・(16)
ソース側モジュール3が計測した伝送遅延ΔTは、ソース側モジュール3⇔モニタ側モジュール5間の往復の識別信号伝送時間である。したがって、シングルモードファイバにおける伝送遅延ΔTとファイバ長L0との関係は、以下の(17)式より(18)式のように表すことができる。
ΔT/2=L1/vp≒L0・ns1/C・・・(17)
ΔT=2・L0・ns1/C・・・(18)
マルチモードファイバにおける伝送遅延ΔTとファイバ長L0との関係も同様に、以下の(19)式より(20)式のように表すことができる。
ΔT/2=L1/vp≒L0・nm1/C・・・(19)
ΔT=2・L0・nm1/C・・・(20)
具体例として、マルチモードファイバを使用した光伝送モジュールにおいて、「ソース機器2⇔モニタ機器6間の距離が約100mの場合の伝送遅延時間ΔTを算出する。真空中の光の伝送速度C=3.0×10^8[m/s]、マルチモードファイバのコアの屈折率nm1=1.490とすると、上記(20)式に上記数値を代入することにより、以下の(21)の計算式となる。
ΔT=2・L0・nm1/C=(2×100×1.490)/(3.0×10^8)=993[ns]
・・・(21)
ここで、伝送遅延ΔTは厳密には、光ファイバ4中を伝送する際の伝送遅延のほかに、コンテンツ配信判定部34および53における処理上の遅延、E/O変換部35及び52、O/E変換部51及び36の遅延が含まれる。したがって、ソース機器2⇔モニタ機器6間の距離について、たとえば1m単位の厳密な測定をする場合は、各部における遅延の管理を厳密に行わなければならない。しかし、たとえば50m単位程度の測定についてはΔT=光ファイバ伝送遅延と解釈しても全く問題ない。
【0047】
以上に、光ファイバの伝送遅延と距離の関係について説明した。伝送遅延ΔTは、上記図7を参照して説明したように、下り方向に送信した識別信号Sidと上り方向を伝送してきた識別信号Sid'との時間差を計測することにより得られる。よって、上記(21)式を用いればファイバ長L0を求めることができる。
【0048】
なお、本実施の形態の光伝送ユニット1は、ソース側モジュール3とモニタ側モジュール5間の伝送距離となる光ファイバ長L0を測定するだけではなく、その測定した光ファイバ長L0が所定の長さ以上の場合にはコンテンツ配信を許可しないという制御も行う。例えば、家庭内を問題なく伝送させるための距離は、上述したように、数十メートル〜百メートル程度あれば良いものと思われる。そこで、百メートルを伝送制限とする。つまり、百メートルを上記所定の長さとし、光ファイバ長L0が百メートル以上の場合には、ソース機器から家庭の外部にコンテンツを配信していることが想定できるので、その場合はコンテンツの保護の点からコンテンツの配信を許可しない。コンテンツ配信の範囲を限定することで、コンテンツを保護することができる。
【0049】
この場合、コンテンツ配信判定部34及びコンテンツ配信判定部53は、以下に説明するように、3つの構成例を採ることができる。どれを採用するかは選択可能とする。まず、第1の構成例は、ソース側モジュール3からモニタ側モジュール5への下り方向の識別信号Sidの送信と、モニタ側モジュール5からソース側モジュール3への上り方向の識別信号Sid‘の伝送(返送)との時間差を計測して、ソース側モジュール3にてコンテンツ送信可否を判定し、判定結果に基づいて後述のスイッチSWを制御し、コンテンツを光ファイバ4に流さないという構成である。つまり、ソース側モジュール3からコンテンツ送信判定シーケンスを開始し、ソース側モジュール3にコンテンツ送信可否のスイッチSWを実装する構成である。
【0050】
図13は、コンテンツ配信判定部34及びコンテンツ配信判定部53の第1の構成例のブロック図である。コンテンツ配信判定部34は、ソース側モジュール3からモニタ側モジュール5へのデータの伝送時間(或いは伝送遅延時間)を計測するために、識別信号Sidを生成して下り方向に送信する信号生成送信部341と、モニタ側モジュール5からソース側モジュール3への上り方向の識別信号Sid‘を受信する受信部342と、信号生成送信部341による識別信号送信タイミングにて時間測定を開始し、受信部342による識別信号受信タイミングにて時間測定を停止して識別信号の遅延を算出する時間測定部(タイマー)343と、タイマー343により算出された伝送遅延時間(或いは伝送時間)からコンテンツの送信可否を判定する判定部344と、判定部344の判定結果によってコンテンツの送信、或いは停止が切り換え選択されるスイッチ345とを備える。スイッチ345は、識別信号生成送信部341からの識別信号をE/O変換器35に送るためにも切り換え選択される。
【0051】
コンテンツ配信判定部53は、ソース側モジュール34からモニタ側モジュール53へ下り方向に送信されてきた上記識別信号Siを受信する識別信号受信部532と、この識別信号受信部532にて受信された識別信号Siを、モニタ側モジュール53からソース側モジュール34へ上り方向に送信する識別信号送信部531とを備える。
【0052】
図14は、ソース側モジュール3及びモニタ側モジュール5のコンテンツ配信判定部34及びコンテンツ配信判定部53にて行われるコンテンツ送信判定処理の状態遷移図である。ソース側モジュール3にて、例えばHDDレコーダ内のコンテンツ再生が開始されるように、ソース機器側からビデオ信号が出力される状態となると、コンテンツ送信判定処理が開始される。
【0053】
先ず、ステップS1にてコンテンツ配信判定部34の識別信号生成送信部341は、制御信号I/F22からの制御信号の供給に基づいて識別信号を生成して送信する。この送信タイミングにてタイマー343は時間測定を開始する。下り方向に識別信号Sidが伝送されて、モニタ側モジュール5のコンテンツ配信部53の識別信号受信部532がステップS2にて識別信号を受信する。そして、識別信号送信部531がステップS3にて識別信号Sid'を送信し、上り方向に識別信号Sid’が伝送される。
【0054】
次に、ステップS4にてコンテンツ配信測定部34の識別信号受信部342が識別信号を受信し、同時にタイマー343が識別信号受信タイミングにて時間測定を停止する。ステップS5にてタイマー343は識別信号の遅延(伝送時間ΔT)を算出する。
【0055】
判定部344は、タイマー343にて算出された伝送時間ΔTから上記ファイバ長L0を算出し、上記所定の長さ、例えば百メートルと比較し、コンテンツの送信可否を判定する(ステップS6)。ファイバ長L0が上記所定の長さ以下であれば判定部344はスイッチSW345の切り換えを制御して、高速デバイス33から供給されるコンテンツデータを選択し、E/O変換部35に供給する。また、ファイバ長L0が上記所定の長さより大きいのであれば判定部344はスイッチSW345の切り換えを制御して、高速デバイス33から供給されるコンテンツデータをE/O変換部35に供給しない。
【0056】
光ファイバ長L0が百メートル以上の場合には、ソース機器2から家庭の外部にコンテンツを配信していることが想定できるので、その場合はコンテンツの保護の点からコンテンツの配信を許可しない。このように第1の構成例によれば、コンテンツを保護することができる。
【0057】
次に、第2の構成例について説明する。この第2の構成例は、モニタ側モジュール5からソース側モジュール3への上り方向の識別信号Sidの送信と、ソース側モジュール3からモニタ側モジュール5への下り方向の識別信号Sid‘の伝送(返送)との時間差を計測して、モニタ側モジュール5にてコンテンツ受信可否を判定し、判定結果に基づいて後述のスイッチSWを制御し、光ファイバ4から伝送されてきたコンテンツを受信しないという構成である。つまり、モニタ側モジュール5からコンテンツ送信判定シーケンスを開始し、モニタ側モジュール5にコンテンツ送信可否のスイッチSWを実装する構成である。
【0058】
図15は、コンテンツ配信判定部34及びコンテンツ配信判定部53の第2の構成例のブロック図である。コンテンツ配信判定部53は、モニタ側モジュール5からソース側モジュール3へのデータの伝送時間(或いは伝送遅延時間)を計測するために、識別信号Sidを生成して上り方向に送信する信号生成送信部531と、ソース側モジュール3からモニタ側モジュール5への下り方向の識別信号Sid‘を受信する識別信号受信部532と、信号生成送信部531による識別信号送信タイミングにて時間測定を開始し、受信部532による識別信号受信タイミングにて時間測定を停止して識別信号の遅延を算出する時間測定部(タイマー)533と、タイマー533により算出された伝送遅延時間(或いは伝送時間)からコンテンツの送信可否を判定する判定部534と、判定部534の判定結果によってコンテンツの送信、或いは停止が切り換え選択されるスイッチ535とを備える。スイッチ535は、ソース側モジュール34から返送されてきた識別信号Sid’を識別信号受信部532で受信するためにも切り換え選択される。
【0059】
コンテンツ配信判定部34は、モニタ側モジュール53からソース側モジュール34へ上り方向に送信されてきた上記識別信号Siを受信する識別信号受信部342と、この識別信号受信部342にて受信された識別信号Siを、ソース側モジュール34からモニタ側モジュール53へ上り方向に送信する識別信号送信部341とを備える。
【0060】
図16は、ソース側モジュール3及びモニタ側モジュール5のコンテンツ配信判定部34及びコンテンツ配信判定部53にて行われるコンテンツ送信判定処理の状態遷移図である。ソース側モジュール3にて、例えばHDDレコーダ内のコンテンツ再生が開始されるように、ソース機器側からビデオ信号が出力される状態となると、コンテンツ送信判定処理が開始される。
【0061】
先ず、ステップS11にてコンテンツ配信判定部53の識別信号生成送信部531は、制御信号I/F62からの制御信号の供給に基づいて識別信号を生成して送信する。この送信タイミングにてタイマー533は時間測定を開始する。上り方向に識別信号Sidが送信されて、ソース側モジュール3のコンテンツ配信判定部34の識別信号受信部342がステップS12にて識別信号を受信する。そして、識別信号送信部341がステップS12にて識別信号を送信する。すると、下り方向に識別信号Sid’が伝送(返送)される。
【0062】
次に、ステップS14にてコンテンツ配信測定部53の識別信号受信部532が識別信号を受信し、同時にタイマー533が識別信号受信タイミングにて時間測定を停止する。ステップS15にてタイマー533は識別信号の遅延(伝送時間ΔT)を算出する。
【0063】
判定部534は、タイマー533にて算出された伝送時間ΔTから上記ファイバ長L0を算出し、上記所定の長さ、例えば百メートルと比較する。ファイバ長L0が上記所定の長さ以下であれば判定部534はスイッチSW535の切り換えを制御して、ソース側モジュール3からE/O変換部35、光ファイバ41及びO/E変換部51を介して供給されるコンテンツデータを選択し、高速デバイス54に供給する。また、ファイバ長L0が上記所定の長さより大きいのであれば判定部534はスイッチSW535の切り換えを制御して、ソース側モジュール3から供給されるコンテンツデータを高速デバイス54に供給しない。
【0064】
光ファイバ長L0が百メートル以上の場合には、ソース機器2から家庭の外部にコンテンツを配信していることが想定できるので、その場合はコンテンツの保護の点からコンテンツの受信を許可しない。このように第2の構成例によっても、コンテンツを保護することができる。
【0065】
次に、第3の構成例について説明する。この第3の構成例は、ソース側モジュール34とモニタ側モジュール53の両方でコンテンツ送信可否のスイッチを実装する構成である。ソース側モジュール34の主導により下り方向に識別信号Sid-1を送信し、モニタ側モジュール53から上り方向に識別信号Sid'-1が返送されたときの時間差から、ソース側モジュール34にてコンテンツ送信可否を判定する第1処理がある。また、第1処理の後に、モニタ側モジュール53の主導により上り方向に識別信号Sid-2を送信し、ソース側モジュール34から下り方向に識別信号Sid'-2が返送されたときの時間差から、モニタ側モジュール53にてコンテンツ受信可否を判定する第2処理がある。
【0066】
図17は、コンテンツ配信判定部34及びコンテンツ配信判定部53の第3の構成例のブロック図である。コンテンツ配信判定部34は、ソース側モジュール3からモニタ側モジュール5へのデータの伝送時間(或いは伝送遅延時間)を計測するために、識別信号Sid-1を生成して下り方向に送信する信号生成送信部341と、モニタ側モジュール5からソース側モジュール3への上り方向の識別信号Sid'-1を受信する受信部342と、信号生成送信部341による識別信号送信タイミングにて時間測定を開始し、受信部342による識別信号受信タイミングにて時間測定を停止して識別信号の遅延を算出する時間測定部(タイマー)343と、タイマー343により算出された伝送遅延時間(或いは伝送時間)からコンテンツの送信可否を判定する判定部344と、判定部344の判定結果によってコンテンツの送信、或いは停止が切り換え選択されるスイッチ345とを備える。スイッチ345は、識別信号生成送信部341からの識別信号をE/O変換器35に送るためにも切り換え選択される。
【0067】
コンテンツ配信判定部53は、モニタ側モジュール5からソース側モジュール3へのデータの伝送時間(或いは伝送遅延時間)を計測するために、識別信号Sid-2を生成して上り方向に送信する信号生成送信部531と、ソース側モジュール3からモニタ側モジュール5への下り方向の識別信号Sid'-2を受信する識別信号受信部532と、信号生成送信部531による識別信号送信タイミングにて時間測定を開始し、受信部532による識別信号受信タイミングにて時間測定を停止して識別信号の遅延を算出する時間測定部(タイマー)533と、タイマー533により算出された伝送遅延時間(或いは伝送時間)からコンテンツの送信可否を判定する判定部534と、判定部534の判定結果によってコンテンツの送信、或いは停止が切り換え選択されるスイッチ535とを備える。スイッチ535は、ソース側モジュール34から返送されてきた識別信号Sid’-2を識別信号受信部532で受信するためにも切り換え選択される。
【0068】
図18は、ソース側モジュール3及びモニタ側モジュール5のコンテンツ配信判定部34及びコンテンツ配信判定部53にて行われるコンテンツ送信判定処理の状態遷移図である。ソース側モジュール3にて、例えばHDDレコーダ内のコンテンツ再生が開始されるように、ソース機器側からビデオ信号が出力される状態となると、コンテンツ送信判定処理が開始される。
【0069】
先ず、ソース側モジュール3が主導の処理(第1の処理)が行われる。ステップS21にてコンテンツ配信判定部34の識別信号生成送信部341は、制御信号I/F22からの制御信号の供給に基づいて識別信号Sid-1を生成して送信する。この送信タイミングにてタイマー343は時間測定を開始する。下り方向に識別信号Sid-1が伝送されて、モニタ側モジュール5のコンテンツ配信部53の識別信号受信部532がステップS22にて識別信号を受信Sid-1する。そして、識別信号送信部531がステップS23にて識別信号Sid'-1を送信する。すると、上り方向に識別信号Sid'-1が伝送される。
【0070】
次に、ステップS24にてコンテンツ配信測定部34の識別信号受信部342が識別信号Sid'-1を受信し、同時にタイマー343が識別信号受信タイミングにて時間測定を停止する。
【0071】
ステップS25にてタイマー343は識別信号の遅延(伝送時間ΔT)を算出する。
【0072】
判定部344は、タイマー343にて算出された伝送時間ΔTから上記ファイバ長L0を算出し、上記所定の長さ、例えば百メートルと比較し、コンテンツの送信可否を判定する(ステップS26)。
【0073】
上記測定が終了すると、ステップS27にてコンテンツ配信判定部34は、識別信号生成送信部341で測定終了信号Sendを生成し、モニタ側モジュール5に送信する。
【0074】
モニタ側モジュール5の識別信号受信部532はステップS28にて測定終了信号Sendを受信する。これにより、モニタ側モジュール5が主導の処理(第2の処理)に切り替わる。
【0075】
ステップS29にてコンテンツ配信判定部53の識別信号生成送信部531は、制御信号I/F62からの制御信号の供給に基づいて識別信号Sid-2を生成して送信する。この送信タイミングにてタイマー533は時間測定を開始する。上り方向に識別信号Sid-2が送信されて、ソース側モジュール3のコンテンツ配信判定部34の識別信号受信部342がステップS30にて識別信号Sid-2を受信する。そして、識別信号送信部341がステップS31にて識別信号Sid'-2を送信する。すると、下り方向に識別信号Sid’-2が伝送(返送)される。
【0076】
次に、ステップS32にてコンテンツ配信測定部53の識別信号受信部532が識別信号Sid’-2を受信し、同時にタイマー533が識別信号受信タイミングにて時間測定を停止する。ステップS33にてタイマー533は識別信号の遅延(伝送時間ΔT)を算出する。
【0077】
判定部534は、タイマー533にて算出された伝送時間ΔTから上記ファイバ長L0を算出し、上記所定の長さ、例えば百メートルと比較し、コンテンツの送信可否を判定する(ステップS34)。
【0078】
上記測定が終了すると、ステップS35にてコンテンツ配信判定部53は、識別信号生成送信部531で測定終了信号Sendを生成し、ソース側モジュール3に送信する。
【0079】
この第3の構成例では、ソース側モジュール3が主導の第1の処理と、モニター側モジュール5が主導の第2の処理を行っている。これにより、コンテンツの送信側であるソース側モジュール3にて送信を制御することができ、さらにコンテンツの受信側であるモニター側モジュール5にて受信を制御することができる。また、第1の処理の判定結果と第2の処理の判定結果の両方でファイバ長L0が所定の長さより長いというときに、送信、又は受信を制御するようにしてもよい。もちろん、第1の処理の判定結果と第2の処理の判定結果の平均を採ってもよい。
【0080】
なお、この第3の構成例では、コンテンツ送信可否のスイッチをソース側とモニタ側の両方で実装しているが、シーケンスをソース側主導、モニタ側主導の両方で実行させなければならないので、それぞれの識別信号Sid-1、Sid-2は区別が付かなければならない。図19の(A)、図19の(B)には識別信号Sid-1、Sid-2の具体例を示す。また、識別信号Sid-1は、10ms周期で100nsのハイレベルH領域を持つ。また、識別信号Sid-2は、10ms周期で200nsのハイレベル領域を持つ。さらに、図19の(C)には、ソース側主導の第1処理からモニタ側主導の第2処理に遷移させるための測定終了信号Sendを示す。10ms周期で300nsのハイレベル領域を持つ。
【0081】
なお、本実施の形態の光伝送ユニット1は、図1に示したように、ソース側モジュール3及びモニタ側モジュール5をソース機器2及びモニタ機器6に対して外付けする形態として説明したが、図20に示すように、ソース機器2及びモニタ機器6に組み込まれる形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態となる光伝送ユニットとソース機器及びモニタ機器との接続関係を示すブロック図である。
【図2】光伝送ユニットの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】E/O変換部の構成図である。
【図4】O/E変換部の構成図である。
【図5】下り方向及び上り方向の定義を説明するための図である。
【図6】識別信号の波形図である。
【図7】下り方向に送信した識別信号Sidと上り方向を伝送してきた識別信号Sid‘との時間差ΔTを示す波形図である。
【図8】光ファイバの構造を示す図である。
【図9】マルチモードファイバを説明するための図である。
【図10】シングルモードファイバを説明するための図である。
【図11】シングルモードファイバのコアの屈折率と、クラッドの屈折率を示す図である。
【図12】シングルモードファイバの臨界角θsを説明するための図である。
【図13】ソース側モジュールのコンテンツ配信判定部及びモニタ側モジュールのコンテンツ配信判定部の第1の構成例のブロック図である。
【図14】第1の構成例にて行われるコンテンツ送信判定処理の状態遷移図である。
【図15】ソース側モジュールのコンテンツ配信判定部及びモニタ側モジュールのコンテンツ配信判定部の第2の構成例のブロック図である。
【図16】第2の構成例にて行われるコンテンツ送信判定処理の状態遷移図である。
【図17】ソース側モジュールのコンテンツ配信判定部及びモニタ側モジュールのコンテンツ配信判定部の第3の構成例のブロック図である。
【図18】第3の構成例にて行われるコンテンツ送信判定処理の状態遷移図である。
【図19】識別信号Sid-1、Sid-2の具体例と、測定終了信号Sendの具体例を示す波形図である。
【図20】光伝送ユニットとソース機器及びモニタ機器との他の接続関係を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
1 光伝送ユニット、2 ソース機器、3 ソース側モジュール、4 光ファイバ、5 モニタ側モジュール、6 モニタ機器、34 コンテンツ配信部、35 E/O変換部、36 O/E変換部、51 O/E変換部、52 E/O変換部、53 コンテンツ配信判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオ信号及び/又はオーディオ信号を出力するソース機器と、そのビデオ信号及び/又はオーディオ信号を受信して画像及び/又は音声を再生するモニタ機器との間を光ケーブルにより接続するための光伝送ユニットにおいて、
一端を上記ソース機器に接続し、また他端を上記光ケーブルの一端に接続して上記ソース機器からの上記ビデオ信号及び/又はオーディオ信号の上記モニタ機器への送出を制御する第1のモジュールと、
一端を上記モニタ機器に接続し、また他端を上記光ケーブルの他端に接続して上記第1のモジュールの制御により送出されてきた上記ビデオ信号及び/又はオーディオ信号の受信を制御する第2のモジュールとを備え、
上記第1のモジュールと上記第2のモジュールは、上記光ケーブルを介して識別信号を送受信し、上記識別信号送信から受信までの時間を計測し、計測した時間から上記第1のモジュールと上記第2のモジュール間の伝送距離を測定することを特徴とする光伝送ユニット。
【請求項2】
上記第1のモジュールと上記第2のモジュール間の伝送距離が所定範囲を超えていない場合に限り、上記第1のモジュールは上記ソース機器からのビデオ信号及び/又はオーディオ信号の送信を許可することを特徴とする請求1記載の光伝送ユニット。
【請求項3】
上記第1のモジュールは、上記識別信号を送受信し、送信から受信までの伝送時間を計測し、計測した伝送時間から上記伝送距離を算出し、算出した距離が所定の距離以下であると上記ソース機器からのビデオ信号及び/又はオーディオ信号の送信を許可する配信判定部を備えることを特徴とする請求項2記載の光伝送ユニット。
【請求項4】
上記第1のモジュールと上記第2のモジュール間の伝送距離が所定範囲を超えていない場合に限り、上記第2のモジュールは上記ソース機器からのビデオ信号の送信を許可することを特徴とする請求1記載の光伝送ユニット。
【請求項5】
上記第2のモジュールは、上記識別信号を送受信し、送信から受信までの伝送時間を計測し、計測した伝送時間から上記伝送距離を算出し、算出した距離が所定の距離以下であると上記ソース機器からのビデオ信号及び/又はオーディオ信号の受信を許可する配信判定部を備えることを特徴とする請求項4記載の光伝送ユニット。
【請求項6】
ビデオ信号及び/又はオーディオ信号を出力するソース機器と、そのビデオ信号及び/又はオーディオ信号を受信して画像及び/又は音声を再生するモニタ機器との間を繋ぐ光ケーブルを検査する光ケーブルの検査方法において、
上記ソース機器側から識別信号を生成して送信し、この送信タイミングにて時間測定を開始する第1のステップと、
第1のステップに基づいて光ケーブルにより送信されてきた識別信号をモニタ側にて受信する第2のステップと、
上記第2のステップによって受信した識別信号を上記光ケーブルによりソース側に送信する第3のステップと、
上記第3のステップにより送信されてきた識別信号をソース側にて受信し、この受信タイミングにて時間測定を終了する第4のステップと、
上記第4のステップにより終了された時間測定結果から識別信号の伝送遅延を算出する第5のステップと、
上記第5のステップにより算出された遅延時間から上記伝送距離を算出し、この伝送距離と所定の距離とを比較し、比較結果に基づいてソース機器側からのコンテンツの送信を停止/許可する第6のステップと
を備えることを特徴とする光ケーブルの検査方法。
【請求項7】
ビデオ信号及び/又はオーディオ信号を出力するソース機器と、そのビデオ信号及び/又はオーディオ信号を受信して画像及び/又は音声を再生するモニタ機器との間を繋ぐ光ケーブルを検査する光ケーブルの検査方法において、
上記モニタ機器側から識別信号を生成して送信し、この送信タイミングにて時間測定を開始する第1のステップと、
第1のステップに基づいて光ケーブルにより送信されてきた識別信号をソース側にて受信する第2のステップと、
上記第2のステップによって受信した識別信号を上記光ケーブルによりモニタ側に送信する第3のステップと、
上記第3のステップにより送信されてきた識別信号をモニタ側にて受信し、この受信タイミングにて時間測定を終了する第4のステップと、
上記第4のステップにより終了された時間測定結果から識別信号の伝送遅延を算出する第5のステップと、
上記第5のステップにより算出された遅延時間から上記伝送距離を算出し、この伝送距離と所定の距離とを比較し、比較結果に基づいてソース機器側からのコンテンツの受信を停止/許可する第6のステップと
を備えることを特徴とする光ケーブルの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−300487(P2007−300487A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127767(P2006−127767)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】