説明

光受信機

【課題】連続可変減衰部を用いてAGCを行う光受信機と比較してダイナミックレンジを拡大しつつ、光信号の入力レベルの変動に対してRF信号の出力レベルを安定させることができる、光受信機を提供すること。
【解決手段】光受信機1は、入力された光信号をRF信号に変換するPD10と、PD10により変換されたRF信号を利得調整して増幅するアンプ11a、11b、11c、ディジタル可変減衰部12と、光信号の入力レベルを検出する入力レベル検出部13a、13bと、光信号の入力レベルに基づきディジタル可変減衰部12による減衰量を制御する制御部14とを備え、制御部14は、連続する任意の2段階の減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合と、上の段階から下の段階へ減衰量を小さくする場合とで、相互に異なる入力レベルの閾値を基準として減衰量を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムにおいて光信号を受信するための光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、光通信技術の進展に伴い、光ケーブルを用いた光伝送システムが普及している。この光伝送システムによれば、数10km程度の無中継伝送が可能となるため、伝送システムを容易に広域化できる。この光伝送システムは、概略的には、送信者側に配置した光送信機と、受信者側に配置した光受信機(光終端端末装置、ONU:Optical Network Unit)とを、光ケーブルにて構成された長距離伝送路を介して接続して構成されている。このように構成された光伝送システムにおいて、送信側では、テレビ信号や告知放送信号が混合された電気信号を光送信機によって光信号に変換し、この光信号を光ケーブルを介して送信する。一方、受信側では、この光信号を光受信機を介して受信してRF信号に変換し、光受信機の後段側に接続された各種機器(例えばテレビ受像機や告知放送受信機等)に出力する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−236442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述の如き従来の光伝送システムの光受信機では、光ケーブルを介して入力された光信号をRF信号に変換する際、光信号の入力レベルの変動に関わらず光受信機からのRF信号の出力レベルを所定のレベルに制御するために、可変利得増幅器の利得を調整する回路、いわゆるAGC(Automatic Gain Control)回路を備えている。可変利得増幅器には当該RF信号を減衰させる可変減衰部を備え、AGC回路により可変減衰部の減衰量をRF信号のレベルに応じて定めて、RF信号の出力レベルを所定のレベルに調整する。この可変減衰部としては、例えばPINダイオードを備えてPINダイオードの抵抗値を連続可変させていた。しかし、PINダイオードによる連続的な可変減衰部では大きな減衰量を得ることができないため、光受信機のダイナミックレンジを広くすることが困難であった。
【0005】
光受信機のダイナミックレンジを拡大するためには、連続可変減衰部と比較して大きい減衰量を得ることのできるディジタル式の可変減衰部を利用することも考えられる。このディジタル可変減衰部では、様々な減衰量を有する減衰部を組合せて接続することで、所望の減衰量をディジタル的に得ることができる。しかし、ディジタル可変減衰部を利用した場合、ノイズ等の影響により光信号の入力レベルが変動し、AGC回路に入力されるRF信号の入力レベルがディジタル可変減衰部を構成する複数の減衰部の組合せを切り換えるための閾値を跨いで変動すると、当該RF信号の入力レベルの変動に伴ってディジタル可変減衰部の減衰量が頻繁に切り替わってAGC回路の動作が不安定となり、光受信機の出力が不安定となる可能性があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、連続可変減衰部を用いてAGCを行う光受信機と比較してダイナミックレンジを拡大しつつ、光信号の入力レベルの変動に対してRF信号の出力レベルを安定させることができる、光受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の光受信機は、入力された光信号をRF信号に変換する光電変換部と、前記光電変換部により変換されたRF信号を増幅する増幅部と、段階的に減衰量を変化させることができるディジタル可変減衰部であって、前記増幅部により増幅されたRF信号を減衰するディジタル可変減衰部と、前記光信号の入力レベルを検出する入力レベル検出部と、前記入力レベル検出部により検出された前記光信号の入力レベルに基づき前記ディジタル可変減衰部による減衰量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、連続する任意の2段階の前記減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合と、当該上の段階から当該下の段階へ減衰量を小さくする場合とで、相互に異なる前記入力レベルの閾値を基準として当該減衰量を変化させる。
【0008】
また、請求項2に記載の光受信機は、請求項1に記載の光受信機において、前記制御部は、前記入力レベルが小さいほど、連続する任意の2段階の前記減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合の前記入力レベルの閾値と、当該上の段階から当該下の段階へ減衰量を小さくする場合の前記入力レベルの閾値との差分が大きくなるように設定された当該入力レベルの閾値を基準として、前記減衰量を変化させる。
【0009】
また、請求項3に記載の光受信機は、請求項1又は2に記載の光受信機において、複数の前記入力レベル検出部を備え、前記各入力レベル検出部は、当該入力レベル検出部毎に相互に異なるように設定された検出範囲内の前記入力レベルを検出し、当該検出範囲と前記制御部の入力可能範囲とに対応させて当該検出した入力レベルに対応する信号を出力し、前記制御部は、前記入力レベル検出部により出力された信号に基づき前記ディジタル可変減衰部による減衰量を制御する。
【0010】
また、請求項4に記載の光受信機は、請求項3に記載の光受信機において、前記各検出範囲は、隣接する前記検出範囲の一部と相互に重複するように設定されており、前記制御部は、前記複数の入力レベル検出部により、前記相互に重複する検出範囲内の前記入力レベルが検出された場合、当該相互に重複する検出範囲内となる前に前記入力レベルが含まれていた検出範囲に対応する前記入力レベル検出部により出力された信号に基づき、前記ディジタル可変減衰部による減衰量を制御する。
【発明の効果】
【0011】
このように、請求項1に記載の光受信機によれば、光受信機はディジタル可変減衰部を備え、制御部は入力レベル検出部により検出された光信号の入力レベルに基づきディジタル可変減衰部による減衰量を制御するので、連続可変減衰部を用いた光受信機と比較してダイナミックレンジを拡大することができる。さらに、制御部は、連続する任意の2段階の減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合と、上の段階から下の段階へ減衰量を小さくする場合とで、相互に異なる入力レベルの閾値を基準としてディジタル可変減衰部による減衰量を変化させるので、光信号の入力レベルの変動に伴う減衰量の頻繁な切り替えを抑制することができ、光信号の入力レベルの変動に対してRF信号の出力レベルを安定させることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の光受信機によれば、制御部は、光信号の入力レベルが小さいほど、連続する任意の2段階の減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合の入力レベルの閾値と、上の段階から下の段階へ減衰量を小さくする場合の入力レベルの閾値との差分が大きくなるように設定された入力レベルの閾値を基準として、ディジタル可変減衰部による減衰量を変化させるので、光信号の入力レベルが小さい場合であってもノイズ等の影響により減衰量が頻繁に切り替わることを抑制することができ、光受信機の動作を安定させることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の光受信機によれば、光受信機は複数の入力レベル検出部を備え、各入力レベル検出部は、当該入力レベル検出部毎に相互に異なるように設定された検出範囲内の入力レベルを検出し、当該検出範囲と制御部の入力可能範囲とに対応させて検出した入力レベルに対応する信号を出力し、制御部は、入力レベル検出部により出力された信号に基づきディジタル可変減衰部による減衰量を制御するので、光信号の入力レベルが小さい場合であっても光信号の入力レベルに対応する信号の分解能の低下を抑制することができ、光受信機のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0014】
また、請求項4に記載の光受信機によれば、各入力レベル検出部の各検出範囲は、隣接する検出範囲の一部と相互に重複するように設定されており、制御部は、複数の入力レベル検出部により、相互に重複する検出範囲内の入力レベルが検出された場合、当該相互に重複する検出範囲内となる前に入力レベルが含まれていた検出範囲に対応する入力レベル検出部により出力された信号に基づき、ディジタル可変減衰部による減衰量を制御する。すなわち、使用する入力レベル検出部の切り替えにヒステリシス特性を持たせているので、所定の閾値を基準として入力レベル検出部を切り替える場合と比較して、入力レベル検出部の頻繁な切り替えを抑制することができ、光受信機の動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る光受信機の構成図である。
【図2】ディジタル可変減衰部の回路図である。
【図3】PDへの光信号の入力レベルとPDの出力電圧との対応関係を示すグラフである。
【図4】光信号の入力レベルとディジタル可変減衰部による減衰量との関係を示すグラフである。
【図5】光信号の入力レベルとディジタル可変減衰部による減衰量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る光受信機の実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(構成)
図1は、実施の形態に係る光受信機の構成図である。この図1に示すように、光受信機1は、フォトダイオード10(以下、必要に応じて「PD」と表記する)、可変利得増幅部(アンプ11a、11b、11c、ディジタル可変減衰部12で構成される)、入力レベル検出部13a、13b、制御部14、及びRF出力端子15を備えている。これらのアンプ11a、11b、11c、ディジタル可変減衰部12、入力レベル検出部13a、13b、及び制御部14により、AGC回路が構成されている。なお、光受信機1については、基本的には従来と同様に構成することができるので、以下では、特に本実施の形態に関連する構成のみを説明し、その他の詳細な説明は省略する。
【0018】
(構成−PD)
PD10は、光伝送路を介して送信され光受信機1に入力された光信号をRF信号に変換する光電変換手段であり、例えば電力供給部(図示省略)から光受信機1に供給される電力を用いて逆バイアスモードで使用される。
【0019】
(構成−アンプ)
アンプ11a、11b、11cは、PD10により変換されたRF信号を、電力供給部から供給された電力を用いて増幅する増幅器である。図1の例では、ディジタル可変減衰部12の前段側に1個のアンプ11aが接続され、ディジタル可変減衰部12の後段側に2個のアンプ11b、11cが接続されている。
【0020】
(構成−ディジタル可変減衰部)
ディジタル可変減衰部12は、制御部14からの出力に基づいて段階的に減衰量を変化させることができるディジタル可変減衰部12であって、アンプ11aにより増幅されたRF信号を減衰する。図2は、ディジタル可変減衰部12の回路図である。この図2では、6個の減衰部12aを備えた6ビットのディジタル可変減衰部12を示している。ディジタル可変減衰部12を構成する各減衰部12aの減衰量は、0.5dBから16dBまでの間で段階的に設定されている。そして、制御部14からの出力に基づき、これらの6個の減衰部12aを任意に組み合わせて接続することによって、64通りの減衰量の中から任意の減衰量を得ることができる。制御部14からはディジタル可変減衰部12に備える減衰部12aの個数に応じた信号線で接続されており、それぞれ減衰部(ATT)を「1(接続)」又は「0(未接続)」に応じた信号が出力されることで、6個の減衰部12aを任意に組み合わせて接続し減衰量を制御する。例えば減衰量を1.5dBにする場合は、図2の左から「0、0、0、0、1、1」とする減衰量制御信号をディジタル的に出力して、1dBと0.5dBの2つの減衰部12aを接続する。
【0021】
(構成−入力レベル検出部)
図1に戻り、入力レベル検出部13a、13bは、PD10から出力される信号に基づき光入力レベルを検出し、当該検出したレベルに対応する信号を制御部14に出力する。図1に示すように、光受信機1には複数(図1の例では2個)の入力レベル検出部13a、13bが設けられており、各入力レベル検出部13a、13bは、当該入力レベル検出部13a、13b毎に相互に異なるように設定された検出範囲内の入力レベルを検出し、当該検出範囲と制御部14の入力可能範囲に対応させて当該検出した入力レベルに対応する信号を制御部14に出力する。具体的には、各入力レベル検出部13a、13bは、PD10から出力される信号の直流成分付近の信号を取り出して、出力電圧を検出する。そして、当該検出したPD10からの出力電圧を増幅器(図示省略)により増幅し、当該増幅した電圧値を制御部14へ出力する。この入力レベル検出部13a、13bの動作の詳細については後述する。
【0022】
(構成−制御部)
制御部14は、入力レベル検出部13a、13bにより出力された電圧信号をA/D変換して取り込む。制御部14は、このA/D変換した入力値とディジタル可変減衰部12の減衰量を設定するための減衰量制御信号との変換テーブルを入力レベル検出部13a、13bに対応させて予め用意し、変換テーブルに基づき、上述した減衰量制御信号をディジタル可変減衰部12へディジタル的に出力して減衰量を制御する。この制御部14は、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するための内部メモリを備えて構成される。なお、制御部14によって実行される処理の詳細については後述する。
【0023】
(構成−RF出力端子)
RF出力端子15は、PD10によって変換され、可変利得増幅部にてレベル調整されたRF信号を有線で出力する。
【0024】
(動作)
次に、このように構成された光受信機1の動作について説明する。光信号が光伝送路を介して送信され光受信機1に入力されると、入力レベル検出部13a、13bは、光信号の入力レベルに対応したPD10の出力電圧を検出して増幅器により増幅し、当該増幅した電圧値を制御部14に出力する。
【0025】
図3は、PD10への光信号の入力レベルとPD10の出力信号から検出した出力電圧との対応関係を示すグラフである。この図3に示すように、PD10への光信号の入力レベルが大きくなるほど、PD10の出力電圧が大きくなり、且つ、光信号の入力レベルの変化に対する出力電圧の変化率(すなわちグラフの傾き)が大きくなっている。
【0026】
上述のように、入力レベル検出部13a、13bは、PD10の出力電圧を検出して増幅器により増幅して出力する。すなわち、入力レベル検出部13a、13bにより出力される信号の値は、PD10の出力電圧を所定の間隔で離散化した値に対応している。ここで、図3に示すように、PD10への光信号の入力レベルが小さくなるほど光信号の入力レベルの変化に対するPD10の出力電圧の変化率が小さくなる。従って、PD10への光信号の入力レベルが小さくなるほど、光信号の入力レベルに対応する制御部14側の分解能が低下し、光信号の入力レベルの変化を信号の変化で十分に表すことが困難になる可能性がある。すなわち、光受信機1のダイナミックレンジの拡大が実質的に制限される可能性がある。
【0027】
そこで本実施の形態に係る光受信機1は、光信号の入力レベルが小さい場合であっても光信号の入力レベルに対応する制御部14側のディジタル信号の分解能の低下を抑制するため、2個の入力レベル検出部13a、13bを備え、制御部14には入力レベル検出部13a、13bに対応してA/D変換部をそれぞれ備えている。各入力レベル検出部13a、13bは、入力レベル検出部13a、13b毎に相互に異なるように設定された検出範囲内の入力レベルを検出し、当該検出範囲を制御部14のA/D変換の電圧範囲に対応するよう電圧レベルを変換して出力する。制御部14の各A/D変換部が出力するディジタル値の範囲は、本実施形態においては0〜255であり、入力レベル検出部13a、13bが出力する信号レベルの検出範囲が制御部14のディジタル値の出力範囲(0〜255)に対応するように設定することで、入力レベル検出部13a、13b毎の分解能を高くするようにしている。図3の例では、入力レベル検出部13aは、p[dBm]からr[dBm]までの検出範囲内の入力レベルに対応するP[V]からR[V]までのPD10の出力電圧を検出して増幅器により増幅する。制御部14はP[V]からR[V]までをA/D変換することにより、「57」から「255」までのディジタル信号に変換される。また、入力レベル検出部13bは、q[dBm]以下の検出範囲内の入力レベルに対応するQ[V]以下のPD10の出力電圧を検出して増幅器により増幅する。制御部14は当該増幅した電圧値をA/D変換することにより「252」以下のディジタル信号に変換される。これにより、光受信機1が1個の入力レベル検出部のみを備える場合と比較して、光信号の入力レベルが小さい場合であっても光信号の入力レベルに対応するディジタル信号の分解能の低下を抑制することができ、光受信機1のダイナミックレンジを拡大することができる。ここで、入力レベル検出部13aの検出範囲と入力レベル検出部13bの検出範囲とは、一部(p[dBm]からq[dBm]までの範囲)が相互に重複するように設定されている。
【0028】
制御部14は、複数の入力レベル検出部13a、13bにより、相互に重複する検出範囲内(すなわちp[dBm]からq[dBm]までの範囲)の入力レベルが検出された場合、当該相互に重複する検出範囲内となる前に光信号の入力レベルが含まれていた検出範囲に対応する入力レベル検出部13a、13bにより出力された信号に基づき、ディジタル可変減衰部12による減衰量を決定し、ディジタル可変減衰部12へディジタルの減衰制御信号を出力する。すなわち、相互に重複する検出範囲内となる前に光信号の入力レベルが含まれていた検出範囲がq[dBm]からr[dBm]までの検出範囲であった場合には、当該範囲に対応する入力レベル検出部13aにより出力された信号に基づき、ディジタル可変減衰部12による減衰量を制御する。一方、相互に重複する検出範囲内となる前に光信号の入力レベルが含まれていた検出範囲がp[dBm]以下の検出範囲であった場合には、当該範囲に対応する入力レベル検出部13bにより出力された信号に基づき、ディジタル可変減衰部12による減衰量を制御する。このように、光信号の入力レベルに応じて選択的に使用する入力レベル検出部13a、13bの切り替えにヒステリシス特性を持たせることにより、同一の閾値を基準として入力レベル検出部13a、13bを切り替える場合と比較して、入力レベル検出部13a、13bの頻繁な切り替えを抑制することができ、光受信機1の動作を安定させることができる。
【0029】
図1に戻り、光信号が光伝送路を介して送信され光受信機1に入力されると、PD10は当該入力された光信号をRF信号に光電変換する。PD10から出力されたRF信号はアンプ11a、ディジタル可変減衰部12、アンプ11b及びアンプ11cで構成される可変利得増幅部により所定の信号レベルに調整される。制御部14は、入力レベル検出部13a、13bにより出力された信号を入力し、A/D変換し、変換テーブルに基づき減衰量制御信号を出力し、ディジタル可変減衰部12による減衰量を制御する。ディジタル可変減衰部12は、アンプ11aから入力されたRF信号を制御部14からの出力に応じた減衰量で減衰させ、後段側のアンプ11b、11cに入力されるRF信号のレベルを調整して、最終的にRF出力端子15から出力する信号レベルを所定のレベルに調整する。
【0030】
図4及び図5は、光信号の入力レベルと、ディジタル可変減衰部12による減衰量との関係を示すグラフである。なお、図4及び図5における各黒丸は、光信号の入力レベルに対応して入力レベル検出部13a、13bにより出力された信号が制御部14によりA/D変換されるディジタル値のポイントを示している。図4に示すように、制御部14は、A/D変換して取り込んだディジタル値から、変換テーブルに基づき決定される連続する任意の2段階の減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を1段階大きくする場合と、上の段階から下の段階へ減衰量を1段階小さくする場合とで、相互に異なる入力レベルの閾値を基準として減衰量を変化させる。図4では、例えば連続する2段階の減衰量A[dB]及びB[dB]の相互間において、下の段階の減衰量A[dB]から上の段階の減衰量B[dB]へ減衰量を1段階大きくする場合に基準となるディジタル値の閾値b[dBm]と、上の段階の減衰量B[dB]から下の段階の減衰量A[dB]へ減衰量を1段階小さくする場合に基準となるディジタル値の閾値a[dBm]とが異なっている。このように、光信号の入力レベルに応じたディジタル可変減衰部12による減衰量の切り替えにヒステリシス特性を持たせることにより、下の段階から上の段階へ減衰量を1段階大きくする場合と、上の段階から下の段階へ減衰量を1段階小さくする場合とで、同一の入力レベルを閾値として減衰量を変化させる場合と比較して、減衰量の頻繁な切り替えを抑制することができ、光受信機1の動作を安定させることができる。
【0031】
さらに、図5に示すように、制御部14が、光信号の入力レベルが小さいほど、連続する任意の2段階の減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を1段階大きくする場合の入力レベルの閾値と、上の段階から下の段階へ減衰量を1段階小さくする場合の入力レベルの閾値との差分が大きくなるように設定された入力レベルの閾値を基準として、減衰量を変化させるようにしてもよい。上述のように、PD10への光信号の入力レベルが小さくなるほど、光信号の入力レベルに対応するディジタル信号の分解能が低下することから、ノイズ等の影響により入力レベル検出部13a、13bから出力される信号が閾値を跨いで変動し、減衰量が頻繁に変化してしまう可能性がある。そこで図5に示すように、光信号の入力レベルが小さいほど、下の段階から上の段階へ減衰量を1段階大きくする場合の入力レベルの閾値と、上の段階から下の段階へ減衰量を1段階小さくする場合の入力レベルの閾値との差分を大きくすることで、ノイズ等の影響により減衰量が頻繁に切り替わることを抑制し、光信号の入力レベルが小さい場合であっても光受信機1の動作を安定させることができる。
【0032】
(効果)
このように実施の形態によれば、光受信機1はディジタル可変減衰部12を備え、制御部14は入力レベル検出部13a、13bにより検出された光信号の入力レベルに基づきディジタル可変減衰部12による減衰量を制御するので、連続可変減衰部を用いてAGCを行う光受信機と比較してダイナミックレンジを拡大することができる。さらに、制御部14は、連続する任意の2段階の減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合と、上の段階から下の段階へ減衰量を小さくする場合とで、相互に異なる入力レベルの閾値を基準としてディジタル可変減衰部12による減衰量を変化させるので、光信号の入力レベルの変動に伴う減衰量の頻繁な切り替えを抑制することができ、光信号の入力レベルの変動に対してRF信号の出力レベルを安定させることができる。
【0033】
特に、制御部14は、光信号の入力レベルが小さいほど、連続する任意の2段階の減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合の入力レベルの閾値と、上の段階から下の段階へ減衰量を小さくする場合の入力レベルの閾値との差分が大きくなるように設定された入力レベルの閾値を基準として、ディジタル可変減衰部12による減衰量を変化させるので、光信号の入力レベルが小さい場合であってもノイズ等の影響により減衰量が頻繁に切り替わることを抑制することができ、光受信機1の動作を安定させることができる。
【0034】
また、光受信機1は複数の入力レベル検出部13a、13bを備え、各入力レベル検出部13a、13bは、当該入力レベル検出部13a、13b毎に相互に異なるように設定された検出範囲内の入力レベルを検出し、検出した入力レベルに対応する信号を出力し、制御部14は、入力レベル検出部13a、13bにより出力された信号に基づきディジタル可変減衰部12による減衰量を制御するので、光信号の入力レベルが小さい場合であっても光信号の入力レベルに対応する信号の分解能の低下を抑制することができ、光受信機1のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0035】
特に、各入力レベル検出部13a、13bの各検出範囲は、隣接する検出範囲の一部と相互に重複するように設定されており、制御部14は、複数の入力レベル検出部13a、13bにより、相互に重複する検出範囲内の入力レベルが検出された場合、当該相互に重複する検出範囲内となる前に入力レベルが含まれていた検出範囲に対応する入力レベル検出部13a、13bにより出力された信号レベルに基づき、ディジタル可変減衰部12による減衰量を制御する。すなわち、光信号の入力レベルに応じて選択的に使用する入力レベル検出部13a、13bの切り替えにヒステリシス特性を持たせているので、所定の閾値を基準として入力レベル検出部13a、13bを切り替える場合と比較して、入力レベル検出部13a、13bの頻繁な切り替えを抑制することができ、光受信機1の動作を安定させることができる。
【0036】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0037】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0038】
(具体的な回路構成について)
光受信機1の具体的な回路構成としては、上記説明したこれらの機能を奏することができる限りにおいて、実施の形態で例示した回路構成以外にも、公知の回路構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 光受信機
10 フォトダイオード(PD)
11a、11b、11c アンプ
12 ディジタル可変減衰部
12a 減衰部
13a、13b 入力レベル検出部
14 制御部
15 RF出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された光信号をRF信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部により変換されたRF信号を増幅する増幅部と、
段階的に減衰量を変化させることができるディジタル可変減衰部であって、前記増幅部により増幅されたRF信号を減衰するディジタル可変減衰部と、
前記光信号の入力レベルを検出する入力レベル検出部と、
前記入力レベル検出部により検出された前記光信号の入力レベルに基づき前記ディジタル可変減衰部による減衰量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、連続する任意の2段階の前記減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合と、当該上の段階から当該下の段階へ減衰量を小さくする場合とで、相互に異なる前記入力レベルの閾値を基準として当該減衰量を変化させることを特徴とする、
光受信機。
【請求項2】
前記制御部は、前記入力レベルが小さいほど、連続する任意の2段階の前記減衰量の相互間において、下の段階から上の段階へ減衰量を大きくする場合の前記入力レベルの閾値と、当該上の段階から当該下の段階へ減衰量を小さくする場合の前記入力レベルの閾値との差分が大きくなるように設定された当該入力レベルの閾値を基準として、前記減衰量を変化させる、
請求項1に記載の光受信機。
【請求項3】
複数の前記入力レベル検出部を備え、
前記各入力レベル検出部は、当該入力レベル検出部毎に相互に異なるように設定された検出範囲内の前記入力レベルを検出し、当該検出範囲と前記制御部の入力可能範囲に対応させて当該検出した入力レベルに対応する信号を出力し、
前記制御部は、前記入力レベル検出部により出力された信号に基づき前記ディジタル可変減衰部による減衰量を制御する、
請求項1又は2に記載の光受信機。
【請求項4】
前記各検出範囲は、隣接する前記検出範囲の一部と相互に重複するように設定されており、
前記制御部は、前記複数の入力レベル検出部により、前記相互に重複する検出範囲内の前記入力レベルが検出された場合、当該相互に重複する検出範囲内となる前に前記入力レベルが含まれていた検出範囲に対応する前記入力レベル検出部により出力された信号に基づき、前記ディジタル可変減衰部による減衰量を制御する、
請求項3に記載の光受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−26636(P2013−26636A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156091(P2011−156091)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】