説明

光学シートの製造方法

【課題】 本発明は、表面に直線状の配列パターンの精度に優れた光学シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の光学シートの製造方法は、押出機1から押出される溶融状態の熱可塑性樹脂シートAを成形ロール2と冷却ロール3との間に送り込んでこれらの両ロール2、3により挟圧して冷却しながら、上記熱可塑性樹脂シートAの一面に直線状の配列パターンを形成した後、上記熱可塑性樹脂シートAを上記成形ロール2の周面温度に載せた状態で搬送し、上記成形ロール2の後方に配設されたアニールロール4に供給してアニーリング処理を施す光学シートの製造方法であって、上記成形ロール2と上記アニールロール4との間の上記熱可塑性樹脂シートAの張力がシート断面積1cm2当り150〜250Nであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から映画などにおいて立体映像が提供されており、この映像の立体表示効果は、人間の左右の眼に別々の画像を見せて立体視させることによって得られる。このような立体効果を得るために透明なレンチキュラーシートが用いられている。
【0003】
そして、レンチキュラーシートの表面に形成されている凸条レンズの幅寸法精度及び凸条レンズの直線性の精度が求められる。レンチキュラーシートの製造方法としては、射出成形方法、押圧成形方法などが挙げられ、その他に、高精度のレンチキュラーシートの製造方法として特許文献1、特許文献2などが提案されている。
【0004】
上記製造方法の中でも押出成形方法が生産性やコスト面において有利であるが、溶融状態の熱可塑性樹脂シートの表面に直線状の凸条レンズをシート幅方向に精度良く形成することが難しいという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−88311号公報
【特許文献2】特開2003−71860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面に形成された直線状の配列パターンの精度に優れた光学シート、特に、直線性及び幅寸法精度に優れた凸条レンズをシート幅方向に連続的に形成して光学精度に優れたレンチキュラーシートを製造することができる光学シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学シートの製造方法は、押出機から押出される溶融状態の熱可塑性樹脂シートを成形ロールと冷却ロールとの間に送り込んでこれらの両ロールにより挟圧して冷却しながら、上記熱可塑性樹脂シートの一面に直線状の配列パターンを形成した後、上記熱可塑性樹脂シートを上記成形ロールの周面に載せた状態で搬送し、上記成形ロールの後方に配設されたアニールロールに供給してアニーリング処理を施す光学シートの製造方法であって、上記成形ロールの周速度と上記アニールロールの周速度との比(アニールロールの周速度/成形ロールの周速度)が1.01〜1.04であることを特徴とする。
【0008】
又、上記光学シートの製造方法において、熱可塑性樹脂シートと接触している成形ロールの周面温度において、最高温度と最低温度との差が5℃以内であることを特徴とする。
【0009】
そして、上記光学シートの製造方法において、熱可塑性樹脂シートがポリカーボネート樹脂シートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学シートの製造方法によれば、上述のように、成形ロールの周速度とアニールロールの周速度との比(アニールロールの周速度/成形ロールの周速度)が1.01〜1.04となるように調整しているので、熱可塑性樹脂シートの表面に形成される直線状の配列パターンの精度に優れており、光学精度の高い光学シート、特に、レンチキュラーシートを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】光学シートを製造する装置の概略図である。
【図2】熱可塑性樹脂シートの表面に形成される直線状の配列パターンの一例を示した斜視図である。
【図3】熱可塑性樹脂シートの表面に形成される直線状の配列パターンの一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光学シートの製造方法を図面を参照しつつ説明する。図1は、光学シートを製造する装置の概略図であって、押出機のTダイ1の下方に、熱可塑性樹脂シートAの一面に直線状の配列パターンを形成するための凹凸部が周面に形成されている成形ロール2とこの成形ロール2の前側周面に後側周面を当接させている冷却ロール3とを配設してあり、これらの成形ロール2と冷却ロール3との接触面の垂直上方に上記Tダイ1を配設してその下向きに開口している押出口1aをこれらのロール2、3間に臨ませている。なお、熱可塑性樹脂シートAとしては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂シート、ポリエチレンテレフタレート樹脂シートなどが挙げられ、ポリカーボネート樹脂シートが好ましい。
【0013】
更に、成形ロール2の後方には、第一アニールロール4と第二アニールロール5とが所定間隔を存してこの順序で配設されており、第二アニールロール5の後方にはガイドロール6が配設されており、このガイドロール6の後方にはピンチロール7、8が配設されている。なお、成形ロール2と第一アニールロール4との間にはロールは配設されていない。ピンチロール7、8の後方には図示しない巻取りロールが配設されており、製造された光学シートは巻取りロールに連続的に巻き取られる。成形ロール2及び冷却ロール3は、熱可塑性樹脂シートAの搬送方向に同一周速度で回転している。同様に、ピンチロール7、8も熱可塑性樹脂シートAの搬送方向に同一周速度で回転している。なお、冷却ロール3及びピンチロール8には駆動モータなどの駆動部が接続されて自ら回転しているが、成形ロール2とピンチロール7はそれぞれ、冷却ロール3とピンチロール8につれ回りしている。
【0014】
次に、上記光学シートの製造装置を用いて光学シートを製造する要領について説明する。先ず、熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたTダイ1の押出口1aから熱可塑性樹脂シートを押出して溶融状態の熱可塑性樹脂シートAを成形ロール2と冷却ロール3との間に送り込んで両ロール2、3によって挟圧して冷却しながら、成形ロールの周面温度に形成された凹凸部によって熱可塑性樹脂シートの一面に直線状の配列パターンBを形成する。
【0015】
なお、直線状の配列パターンBとしては、例えば、図2及び図3に示したように、断面半円形状で且つ熱可塑性樹脂シートAの長さ方向に延びる直線状の凸条部B1、B1・・・が熱可塑性樹脂シートAの幅方向に連続的に繰り返して形成されてなる配列パターンBが挙げられる。
【0016】
この際、成形ロール2の周面温度にばらつきがあると、成形温度差に起因して熱可塑性樹脂シートAに収縮率の差が生じ、或いは、成形ロール2からの熱可塑性樹脂シートの剥離性が不均一となり、熱可塑性樹脂シートAの一面に形成した直線状の配線パターンBの精度が低下する虞れがある。そこで、本発明では、熱可塑性樹脂シートAに接触している成形ロール2の周面部分において、最高温度と最低温度との差が5℃以下となるように調整することが好ましい。なお、成形ロール2の周面温度は、接触式温度を用いて測定した。
【0017】
熱可塑性樹脂シートAに接触している成形ロール2の周面部分において、最高温度と最低温度との差が5℃以下となるように調整する方法としては、特に限定されず、例えば、成形ロール2内に所望温度に加熱された油や水などの加熱媒体を循環させる方法などが挙げられる。
【0018】
次に、熱可塑性樹脂シートAを成形ロール2と冷却ロール3との間から下方に離脱させることなく成形ロール2の下側周面上に載せた状態で搬送し、成形ロール2から第一アニールロール4に送り出され、更に、熱可塑性樹脂シートAは、第一アニールロール4の上側周面上に載せられた状態で搬送されながらアニーリング処理が施された後、第二アニールロール5に送り出される。なお、第一、第二アニールロール4、5には駆動部が接続されて自ら回転している。
【0019】
この際、成形ロール2の周速度と第一アニールロール4の周速度の比(アニールロールの周速度/成形ロールの周速度)は、小さいと、熱可塑性樹脂シートの張力が不安定となり、熱可塑性樹脂シートの張力の変動が成形ロール上における熱可塑性樹脂シートへの配列パターンの形成工程に影響を及ぼし、熱可塑性樹脂シートの一面に形成される配列パターンの精度低下を生じ、或いは、熱可塑性樹脂シートの成形ロールからの剥離も不安定となり、大きいと、得られる光学シートにカール又は皺が発生して光学シートの表面平滑性が低下するので、1.01〜1.04に限定される。
【0020】
成形ロール2の周速度は、小さいと、成形ロールに形成されている凹凸部によって熱可塑性樹脂シートの一面に直線状の配列パターンを形成することが困難となることがあり、大きいと、熱可塑性樹脂シートが成形ロールに巻きつく虞れがあるので、5〜25m/分が好ましい。
【0021】
そして、熱可塑性樹脂シートAは第二アニールロールに送り出されて第二アニールロール5の下側周面上に載せられた状態で搬送されながらアニーリング処理が施されて光学シートCとされた後、この光学シートCは、ガイドロール6を介してピンチロール7、8に供給され、ピンチロール7、8の後方に配設された図示しない巻取りロールに連続的に巻き取られる。
【0022】
このようにして得られた光学シートCは、その一面に直線状の配列パターンBが精度良く形成されている。特に、断面半円形状で且つ熱可塑性樹脂シートAの長さ方向に延びる直線状の凸条部B1、B1・・・が光学シートBの幅方向に連続的に繰り返して形成されてなる配列パターンBを一面に形成してなる光学シートCはレンチキュラーシートとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
図1に示した製造装置を用いた。成形ロール2の周面には、その周方向に延びる半円形状の凸部が成形ロール2の幅方向に連続的に形成されていた。冷却ロール3、第一アニールロール4及び第二アニールロール5は全てそれらの直径が250mmであった。冷却ロール3はポリカーボネート樹脂シートAの搬送方向に駆動モータによって自ら回転しており、成形ロール2は冷却ロール3に同一周速度でつれ回りしており、表1に示した周速度で回転していた。
【0024】
ポリカーボネート樹脂を押出機に供給して260℃にて溶融混練してTダイ1の押出口1aから吐出量95kg/時間にてポリカーボネート樹脂シートAを押出し、溶融状態のポリカーボネート樹脂シートAを成形ロール2と冷却ロール3との間に送り込んで成形ロール2と冷却ロール3によって挟圧して、ポリカーボネート樹脂シートAに冷却処理を施しながら、ポリカーボネート樹脂シートAの一面に、図2及び図3に示したような断面半円形状で且つ熱可塑性樹脂シートAの長さ方向に延びる直線状の凸条部B1、B1・・・が熱可塑性樹脂シートAの幅方向に連続的に形成されてなる直線状の配列パターンBを形成した。なお、成形ロール2の周面温度は、成形ロール2内部に油を循環させることによって制御されており、ポリカーボネート樹脂シートAに接触している成形ロール2の周面温度において、最高温度、最低温度、及び、最高温度と最低温度との差を表1に示した。表1では、最高温度と最低温度との差を単に「温度差」と記載した。又、冷却ロール3の周面温度は、冷却ロール3の内部に冷却水を循環させることによって制御されていた。
【0025】
そして、ポリカーボネート樹脂シートAを成形ロール2と冷却ロール3との間から下方に離脱させることなく成形ロール2の下側周面上に載せた状態で搬送し、成形ロール2から第一アニールロール4に送り出した。
【0026】
しかる後、ポリカーボネート樹脂シートAを第一アニールロール4に供給して、ポリカーボネート樹脂シートAを第一アニールロール4の上側周面上に載せた状態で搬送し、ポリカーボネート樹脂シートAに第一アニールロール4によってアニーリング処理を施した。第一アニールロール4は、ポリカーボネート樹脂シートAの搬送方向に駆動モータによって表1に示した周速度にて自ら回転していた。
【0027】
続いて、ポリカーボネート樹脂シートAを第一アニールロール4から第二アニールロール5に送り出し、ポリカーボネート樹脂シートAを第二アニールロール5の下側周面上に載せられた状態で搬送して、ポリカーボネート樹脂シートAに第二アニールロール5によってアニーリング処理を施して表1に示した厚みを有する幅600mmの光学シートCを製造し、この光学シートCをガイドロール6、ピンチロール7、8を介して連続的に巻取りロールに巻き取った。なお、第二アニールロール5及びピンチロール8は、ポリカーボネート樹脂シートAの搬送方向に駆動モータによって第一アニールロール4と同一の周速度で自ら回転していた。
【0028】
得られた光学シートCの一面に形成された配列パターンBについて、凸条部のピッチ及び蛇行幅、並びに、光学シートCの外観を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0029】
(凸条部のピッチ)
得られた光学シートCの一面に形成された配列パターンBにおいて、光学シートCの幅方向に連続する100本の凸条部B1、B1・・・を任意に選択し、これら凸条部B1を二次元測定機(中村製作所社製)で撮影して、撮影された写真から各凸条部B1の幅寸法を測定し、凸条部B1の幅寸法の平均値をピッチ平均値とした。なお、測定対象となる凸条部B1とこの凸条部に隣接する両側の凸条部との間に形成された溝部のそれぞれの最も深い部分間の光学シートCの幅方向(押出方向に直交する方向)の距離を凸条部B1の幅寸法とした。溝部が一定の深さを有している場合には、光学シートCの幅方向における溝部の中間点を溝部の最も深い部分とする。
【0030】
次に、得られた光学シートCの一面に形成された配列パターンBにおいて、光学シートCの幅方向に連続的に形成された凸条部B1、B1・・・を100本ごとに凸条部群として11組の凸条部群に区分した。凸条部群ごとに上述と同様の要領でピッチ平均値を測定し、最大のピッチ平均値と最小のピッチ平均値との差Rを算出した。
【0031】
続いて、光学シートCの一面に形成された配列パターンBにおいて、光学シートCの長さ方向に異なる3個所にて、上述と同様の要領で差Rを算出し、3個の差Rのうち、最大の差RをRmaxとし、3個の差Rの平均値をRavとして下記式に基づいてピッチ精度を算出した。
ピッチ精度(%)=100×Rmax/Rav
【0032】
(凸条部の蛇行幅)
光学シートの凸条部B1を二次元測定器(中村製作所社製)を用いて撮影した。得られた写真において、光学シートCの凸条部B1、B1間に形成された溝部における最も深い部分を任意に基準点として抽出した。
【0033】
次に、基準点から光学シートCの押出方向に平行に基準線を描いた。この基準線上において基準点から100mm間隔毎に五個の測定点を特定した。そして、各測定点と、この測定点が存在する溝部部分における最も深い部分との間の光学シートCの幅方向における距離(ズレ寸法)を測定し、各測定点におけるズレ寸法の相加平均値を凸条部の蛇行幅とした。
【0034】
(光学シートCの外観)
得られた光学シートCの表面を目視観察して下記基準に基づいて評価した。
○・・光学シートにカール及び皺はなかった。
×・・光学シートにカール又は皺が生じていた。
【0035】
【表1】

【符号の説明】
【0036】
2 成形ロール
3 冷却ロール
4 第一アニールロール
5 第二アニールロール
A ポリカーボネート樹脂シート
B 配列パターン
C 光学シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から押出される溶融状態の熱可塑性樹脂シートを成形ロールと冷却ロールとの間に送り込んでこれらの両ロールにより挟圧して冷却しながら、上記熱可塑性樹脂シートの一面に直線状の配列パターンを形成した後、上記熱可塑性樹脂シートを上記成形ロールの周面に載せた状態で搬送し、上記成形ロールの後方に配設されたアニールロールに供給してアニーリング処理を施す光学シートの製造方法であって、上記成形ロールの周速度と上記アニールロールの周速度との比(アニールロールの周速度/成形ロールの周速度)が1.01〜1.04であることを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂シートと接触している成形ロールの周面温度において、最高温度と最低温度との差が5℃以内であることを特徴とする請求項1に記載の光学シートの製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂シートがポリカーボネート樹脂シートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−235512(P2011−235512A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108049(P2010−108049)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】