説明

光学スキャナ、並びに光学スキャナを用いた構成およびシステム

【課題】スキャン速度が速く、光線偏光の制御が可能であり、および/または高出力のレーザ光線を処理する能力を備える光学スキャナを提供すること。
【解決手段】光学スキャナは、受光した光線を反射する少なくとも1つの鏡210を備え、反射した光線の方向を、鏡210の移動によって制御する光学スキャナであって、メインの回転軸216の回転経路に沿って鏡210を動かす手段341a〜348aを有し、鏡210の鏡面214、214a〜214dと回転軸216との角度は、鏡面214の位置に応じて変化し、鏡210は、鏡210が変化した角度に基づき、その回転経路の位置に応じた反射角で、光線234a〜234dを偏向するように構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学スキャナに関する。特に、レーザ技術分野における、コールドアブレーション技術によるコーティングおよび機械加工での光学スキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ技術の多大な発展は、半導体構造に基づく高性能のレーザシステムを製作する手段を提供し、いわゆるコールドアブレーション方法の発展を支えている。コールドアブレーションは、例えば、ピコ秒の範囲で、ターゲット材の表面にパルスを導くような、短期間での高エネルギー・レーザパルスの生成を基礎とする。そして、プラズマのプルームは、レーザ光線がターゲット材に照射した範囲を溶発する。
コールドアブレーションの適用例には、例えば、コーティングおよび機械加工を含む。
このような適用例においては、ターゲット材の正確な位置に照射できるように、レーザ光線の位置を制御する必要がある。レーザ光線は、通常、ターゲット材表面の予め定められた範囲を処理するために、ターゲット材料の表面をスキャンする。これを目的として、光学スキャナを使用することは、一般的である。
【0003】
従来技術のレーザ処理システムには、多くの場合、振動する鏡をベースとした光学スキャナが含まれる。このような光学スキャナは、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の振動する鏡は、鏡と平行する軸に対して2つの決められた角度の間で揺動する。レーザ光線は、鏡の方向に導かれると、その瞬間における鏡の位置によって決まる角度で反射される。振動する鏡は、このようにターゲット材料の表面のある線上に、レーザ光線を反射するか、または「スキャン」する。
【0004】
しかしながら、特に、レーザコールドアブレーションの適用例で使用されるとき、従来技術の光学スキャナにはいくつかの課題がある。振動する鏡は、その端位置で角運動の方向を変えるが、慣性モーメントに起因し、端位置の近傍では鏡の角速度が一定にならない。これによって、ターゲット材料におけるスキャン範囲の端では、不規則な処理が生ずる。
【0005】
工業用途において、高いレーザ効率処理を成し得ることは、重要である。コールドアブレーションにおいて、レーザパルスの強さは、コールドアブレーション現象を促進するために、予め定められた閾値を上回らなければならない。この閾値は、ターゲット材によって決まる。高い処理効率を成し得るために、パルスの繰返し数は、数MHzのように、高くなければならない。
一方では、レーザパルスが、ターゲット表面の同じ位置に、複数回連続して入射してしまうと、作用が重複するので、このようなことがないようにするのは、有益である。レーザパルスが、ターゲット表面の同じ位置に、複数回連続して入射してしまうと、ターゲット材料を加熱することとなり、ターゲット材料から粒子が放出し、プラズマにならない。これでは、コールドアブレーションの効果は、失われる。従って、処理の高効率を達成するためには、レーザ光線によるスキャン速度が速いことも必要である。ターゲットの表面のレーザ光線によるスキャン速度は、通常、効果的に処理するには10m/s以上でなければならないが、50m/s以上が好ましく、100m/s以上であれば、さらに好ましい。
しかしながら、振動する鏡による光学スキャナでは、慣性モーメントにより、鏡が十分に速い角速度に達するのを妨げる。その結果、ターゲットの表面のレーザ光線によるスキャン速度は、略数m/sとなる。
【0006】
光学スキャナの振動する鏡は、鏡の振動サイクル全体の中における一定の狭い範囲で、レーザ光線を受ける。レーザ光線は、部分的に鏡に吸収される。そして、高いレーザエネルギーを使うと、部分的に吸収されたレーザ光線は、かなり鏡を加熱する。熱が鏡の狭範囲の中に吸収されるにつれて、十分に効率的な方法で熱を取り除くことが困難となり、結果として、鏡はオーバーヒートや破損することになる。
【0007】
特許文献2には、鏡がターゲットの表面に沿って、前後に直線移動するスキャナ装置が示されている。しかしながら、この装置には振動する鏡を備えるスキャナと同じ不利な点があり、得られるスキャン速度は振動する鏡を備えるスキャナと比べさらに遅い。
【0008】
いくつかのレーザの適用例における光学スキャナとして、回転する鏡や多角形の鏡を使用することも知られている。このような光学スキャナは、例えば、特許文献3において開示されている。ポリゴン・スキャナのスキャン速度より速いスキャン速度を達成することは可能である。しかしながら、高出力のコールドアブレーションにおいて、ポリゴン・スキャナを使用するには、いくつかの課題もある。ポリゴン・スキャナは、少なくとも3つの端を備え、これらはそれぞれレーザ光線の不連続域を形成する。これにより、レーザ光線は、機器の内外であって、おそらくは不必要で有害な範囲に、反射されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許第10343080号明細書
【特許文献2】米国特許第6063455号明細書
【特許文献3】特開平7−035996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光学スキャナをさまざまな適用例に提供することである。これにより、従来技術における不利益は、回避、または減らせる。すなわち、本発明の目的は、スキャン速度が速く、光線偏光の制御が可能であり、および/または高出力のレーザ光線を処理する能力を備える光学スキャナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、回転する鏡を備え、この鏡の反射面が回転軸線に対して角度を有し、この角度が鏡の位置に応じて変化する光学スキャナを提供する。
【0012】
より詳しくは、本発明の目的は、受光した光線を反射する少なくとも1つの鏡を備え、反射した光線の方向を、前記鏡の移動によって制御する光学スキャナであって、メインの回転軸の回転経路に沿って前記鏡を動かす手段を有し、前記鏡の鏡面と前記回転軸との角度は、前記鏡面の位置に応じて変化し、前記光学スキャナの前記鏡において、前記鏡の前記変化角度は、前記鏡のその回転経路の位置に応じた反射角で、光線を偏向するように構成されたことを特徴とする光学スキャナを提供する。
【0013】
さらに、本発明によれば、レーザアブレーションにより、材料を処理するシステムであって、材料を処理する構成と、アブレーションターゲット本体、および/または基板製品の投入、動作、および/またはシステムからの移動を処理する自動化された手段とを備えることを特徴とするシステムを提供する。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記鏡面と前記回転軸との前記角度の前記変化は、ターゲットに向かうラインを経路とする反射光線を形成する。
前記ラインの方向は、例えば、前記鏡の前記回転軸の方向と略同方向である。
前記ラインと前記回転軸の方向は、例えば、略平行でもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記鏡は、円筒の形状であり、前記円筒が前記回転軸に対して傾斜している。
本発明の他の実施形態によれば、光学スキャナは、回転中における重量のバランスをとる複数の手段を備える。
【0016】
本発明の他の実施形態によれば、前記鏡は、前記鏡の前記回転軸に直交する断面に沿った表面に、端部、又は不連続端部を備えない。
本発明の他の実施形態によれば、前記鏡は、前記鏡の前記回転軸に直交する断面に沿った表面に、一つの端部および/または不連続端部を備える。
本発明の他の実施形態によれば、前記鏡は、前記鏡の前記回転軸に直交する断面に沿った表面に、少なくとも2つの端部および/または不連続端部を備える。
【0017】
一方の本発明の実施形態によれば、光学スキャナは、一方向性スキャナである。
他方の本発明の実施形態によれば、光学スキャナは、双方向性スキャナである。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、構成は、アブレーションターゲットを冷間加工するように構成された。
別実施形態によれば、構成は、基板をアブレーションターゲットからのプラズマ・プルームでコーティングするように構成された。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、システムは、アブレーションプルームを維持するために、ターゲット材料の供給を構成する自動化された手段を備える。
本発明の他の実施形態によれば、システムは、アブレーションターゲットから溶発したアブレーションマテリアルのプルームと接触するように基板をセットし、および/または保つ手段を備える。
基板本体を供給して、コーティング/機械加工された基板本体を取り外すための自動手段を備えることもできる。
【0020】
いくつかの更なる実施形態は、従属クレームに記載されているとおりである。
【0021】
本発明は、従来技術の解決手段に対して、実質的な利点を有する。鏡の不連続端部がない光学スキャナを提供することが可能である。これにより、反射レーザ光線の方向を、継続的に制御することが可能となる。また、必要に応じて、1箇所、2箇所、またはいくつかの不連続端部を提供することも可能である。
【0022】
本発明によれば、処理されるターゲットの範囲全体にわたって一定のスキャン速度を提供することも可能である。スキャンされるターゲットの位置に応じて、変化するスキャン速度を提供することも可能である。このように、例えば、スキャン手順または光路のいかなる不規則性に対しても補正することが可能である。このような様々なスキャン速度は、回転する鏡の適切な外形を提供することによって可能となる。したがって、鏡をデザインすることで、ターゲットにおける多様なスキャニング経路の形状を形成することも可能となる。
スキャニング経路は、直線、曲線、または他の決定された形状でもよい。ターゲットにおける線形の経路は、通常、ターゲットの表面において線を形成するドットとして現れるレーザパルスが連続したものである。
【0023】
本発明によれば、光学スキャナにおいて、速いスキャン速度を得ることが可能となる。良好な重量の釣合が得られれば、速い回転速度が達成される。スキャン速度は、100m/sを容易に超える場合がある。
【0024】
本発明によれば、一方向性スキャナ、双方向性スキャナのいずれもを提供することが可能となる。光学スキャナは、交換可能な鏡を備えることも可能である。これにより、関連適用例に応じて、スキャン・タイプやスキャン形状を選択することができる。
【0025】
本発明の光学スキャナの鏡は、回転しているので、レーザ光線を鏡の広範囲に照射する。したがって、レーザ光線の吸収によって熱を発生させる部分も、広範囲にも広げられる。鏡/回転経路の直径を大きくすることで、上記範囲を広げることも可能である。更に、鏡の中央を中空に設計できれば、鏡は、空冷されるようにアレンジすることが容易となる。鏡は、流れる液体により冷却するようにアレンジすることも可能である。冷却液は、鏡を回転させる軸としての中空管の内面に導くことができる。冷却液は、例えば、回転チューブによって導くことや、鏡の内面を循環させることができる。
【0026】
本発明の光学スキャナは、均一な表面が必要とされ、および/または広範囲が処理されるレーザアブレーション・コーティングに好適である。本発明の光学スキャナは、レーザ処理のトレースが正確に制御される、高品質および/または効果的な機械加工にも好適である。
【0027】
この特許出願の用語において、「光」は、反射可能ないかなる電磁放射も意味する。そして、「レーザ」は、整合された光、または発光体から発せられた光源を意味する。このように、「光」または「レーザ」は、いかなる形であっても、可視光線の周波数域に制限されない。
【0028】
この特許出願の用語において、「一方向性」光学スキャナは、スキャナの鏡が一定の方向に回転して、反射光線が実質的に一方向にスキャンを実行することを意味する。
【0029】
この特許出願の用語において、「双方向性」光学スキャナは、スキャナの鏡が一定の方向に回転して、反射光線が順次、実質的に2つの反対方向のスキャンを実行することを意味する。
【0030】
この特許出願の用語において、回転する鏡の「内面」は、回転軸線に面している表面を意味する。回転する鏡の「外面」は、鏡の内面から反対側にある表面を意味する。
【0031】
この特許出願の用語において、光学スキャナの鏡の「活性表面」は、光線をスキャンして特に提供される表面を意味する。
【0032】
この特許出願の用語において、鏡のある位置の「鏡面および回転軸線の間の角度」は、回転軸線と、鏡の当該ある位置でイメージされる正接面との間に形成される角度を意味する。正接面が回転軸線と平行のとき、この角度の値は0度となる。
【0033】
この特許出願の用語において、「コーティング」は、基板の上で、あらゆる厚みで形成される材料を意味する。このように、コーティングは、例えば、1μm以下の厚みとなる薄膜を生成することも意味する場合がある。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、スキャン速度が速く、光線偏光の制御が可能であり、および/または高出力のレーザ光線を処理する能力を備える光学スキャナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】aは、本発明の一例である双方向性光学スキャナを示す図である。bは本発明の一例である双方向性光学スキャナの鏡が90度回転したあとを示す図である。
【図2】aは、本発明の一例である光学スキャナの鏡の角度が0度の場合における光線の反射を示す図である。bは、本発明の一例である光学スキャナの鏡の角度が90度の場合における光線の反射を示す図である。cは、本発明の一例である光学スキャナの鏡の角度が180度の場合における光線の反射を示す図である。dは、本発明の一例である光学スキャナの鏡の角度が270度の場合における光線の反射を示す図である。
【図3】aは、本発明の一例であるバランス補正用の重りを備えた光学スキャナの端面図である。bは、aで例示した光学スキャナを他の端からの視た図である。
【図4】aは、本発明の更なる一例である光学スキャナの鏡の角度が0度の場合における光線の反射を示す図である。bは、本発明の更なる一例である光学スキャナの鏡の角度が90度の場合における光線の反射を示す図である。cは、本発明の更なる一例である光学スキャナの鏡の角度が180度の場合における光線の反射を示す図である。dは、本発明の更なる一例である光学スキャナの鏡の角度が270度の場合における光線の反射を示す図である。eは、本発明の更なる一例である光学スキャナの鏡の角度が360度であり光線が端部を越えない場合における光線の反射を示す図である。
【図5】コーティングの適用例におけるレーザアブレーションにより材料を処理する構成を示す図である。
【図6】aは、双方向性光学スキャナを用いたときに、ターゲットの表面でスキャンするレーザ光線のトレースの一例を示す図である。bは、一方向性光学スキャナを用いたときに、ターゲットの表面でスキャンするレーザ光線のトレースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1aおよび図1bは、本発明の一例である光学スキャナの回転する鏡110を示す。
回転する鏡110は、回転軸116のまわりを回転するように配置される。
図1bは、図1aと比較して90度回された回転する鏡110を示す。
図1aおよび図1bは、いずれも、回転する鏡110の側面図および端面図を示す。
回転する鏡110は、円筒の形状を有し、この円筒が回転軸116に対してわずかに傾けられている。回転する鏡110は、その形がよく見えるように、傾けられた円筒形状として示さている。このように、回転する鏡110の端部は傾斜している。しかしながら、回転する鏡110の端部を回転軸116に対して垂直にすることも可能である。光学スキャナは、回転軸116に駆動軸を備え、回転する鏡110はこの駆動軸に接続される。回転する鏡110は、例えば、せき板またはスポーク(図示無し)を備える回転駆動軸に接続することができる。
【0037】
図2a、図2b、図2c、および図2dには、図1a、および図1bに示した光学スキャナと同様の光学スキャナにおける、反射レーザ光線の偏向を例示する。
図2aは、基本的な位置の鏡210を示す。
図2bは、図2aの基本的な位置から90度回転した鏡210を示す。
図2cは、図2aの基本的な位置から180度回転した鏡210を示す。
そして、図2dは図2aの基本的な位置から270度回転した鏡210を示す。これらの図は、回転軸216に対して垂直方向からみた鏡210を示す。
【0038】
図2aにおいて、反射する鏡面214は、回転軸216方向に、レーザ光線が反射される位置214aを備える。レーザ光線232aが回転軸216に対して垂直な方向から入射する場合、反射光線234aは、入射したレーザ光線232aと同じであるが、レーザ光線232aが入射した方向と反対方向に向かう。
【0039】
図2bにおいて、鏡面214の位置214bに、入射したレーザ光線232bが当たり、鏡210は、回転軸216に対してその最大角度に傾けられている。これにより、反射光線234bの反射角度も最大となる。
【0040】
図2cにおいて、鏡面214は、再び回転軸216方向に、位置214cを有し、位置214cでレーザ光線は反射される。反射光線234cは、入射したレーザ光線232cと同じであるが、レーザ光線232cが入射した方向と反対方向に向かう。
【0041】
図2dにおいて、鏡面214の位置214dに、入射したレーザ光線232dが当たり、鏡210は、回転軸216に対してその最大角度に傾けられている。しかしながら、鏡210の角度は、現状、図2aに対して対向する。このようにまた、反射光線234dの角度は、最大となる。
【0042】
図2a〜図2dは、回転する鏡210が、角度を変更する際に、レーザ光線をどのように反射するかについて示す。この光学スキャナは、双方向性である。すなわち、回転する鏡210が一定の方向に回転する際に、反射光の角度は、前後に変化する。
【0043】
図3aおよび図3bは、回転駆動軸への回転する鏡310の取り付け部を示す。
図3aおよび図3bは、反対端からの鏡310の端面図を示す。
8つの取付けスポーク341a〜348aは、鏡310の第1端部と第2端部にある。円筒状の鏡310は、回転軸に対して非対称である。よって、釣合い重りは、回転する鏡310のバランスをとるために使われる。最大の釣合い重り322aおよび322bは、最も短い取付けスポーク341aおよび345bの端部に配置される。最大の釣合い重り322aおよび322bより小さい釣合い重り323a、323b、324a、および、324bは、最も短い取付けスポーク341aおよび345bの隣にあるスポーク348a、346b、342a、および、344bの端部に配置される。釣合い重りの重さは、使用される回転数における遠心力を基礎として算出できる。
鏡310自体は、当然、釣合い重りの補助なしでバランスが保たれるような暑さの材料を使用して設計できる。
【0044】
図4a、図4b、図4c、図4dおよび図4eは、本発明による光学スキャナの第2実施形態を例示する。
この光学スキャナは、一方向性である。すなわち、回転する鏡が一定の方向に回転する際に、反射光線は、一方向をスキャンする。よって、反射光線は、実際にはスキャン作用がない出発点に戻る。
図4aは、基本的な位置の回転する鏡410を示す。
図4bは、90度回転した回転する鏡を示す。
図4cは、180度回転した回転する鏡を示す。
図4dは、270度回転した回転する鏡を示す。そして、図4eは、図4aの位置から360度回転した回転する鏡を示す。
【0045】
図4aは、不連続端部415を示す。
回転する鏡は、入射するレーザ光線432aが、傾けられた表面の位置414aで反射されるように位置する。反射角は、第1の最大角である。
図4bにおいて、90度回転後、反射角は、基本的な位置と比較して半分に減少する。更に、図4cにおいて、鏡面は、回転軸416の方向に、光線が反射される位置414cを備える。
レーザ光線434cは、このように、入射するレーザ光線432cと反対方向に反射される。
図4dにおいて、鏡面は、図4bと比較して反対方向にわずかに傾けられている。最後に、図4eにおいて、鏡面のレーザ光線が反射される場所414eは、第2の最大角に傾けられている。この場所は、不連続端部415の直前にある。レーザ光線が不連続端部415を通り過ぎると、回転する鏡は図4aの位置から再びスキャンを開始する。
【0046】
図4a〜図4eに示した実施形態では、ちょうど1つの不連続端部を備える回転する鏡を示す。しかしながら、1つに限らず、2つまたはいくつかの不連続端部を形成することもできる。このように、1回転の間に、2箇所またはいくつかのラインをスキャンすることが可能である。そして、これにより、スキャン速度を上げることができる。
不連続端部は、本発明による双方向性の光学スキャナに形成することもできる。このように、1回転の間に、2箇所またはいくつかの前後のラインをスキャンすることが可能である。そして、これにより、双方向性の光学スキャナにおいても、スキャン速度を上げることができる。
【0047】
図5は、材料をレーザアブレーションで扱うためのシステムの一例を示す。
レーザ光線は、レーザ源44によって形成され、光学スキャナ10によってターゲットをスキャンする。ターゲット47は、バンド形状であり、フィードロール48から排出ロール46にスプールされる。ターゲット47は、アブレーションされる位置となる開口部52を備える支持板51に支持される。
スキャナから受光したレーザ光線49がターゲットを照射すると、材料が溶発し、そして、プラズマ・プルームが形成される。コーティングへの適用例において、被覆される製品50は、プラズマ・プルームの中に供給される。このように、製品50は、ターゲット材料で被覆される。
機械加工、または、「冷間加工」の応用分野において、ターゲット材料は、通常、コーティングで、溶発させるプラズマを利用せずに処理される。機械加工の応用分野において、ターゲットとは、通常、レーザアブレーションによって、切られるか、さもなければ機械加工される製品である。
【0048】
本発明による光学スキャナは、通常、凸面、または、凹面の反射面を備える。したがって、光線を拡散、または焦束させる鏡を使用することも可能である。しかしながら、レーザ源および光学スキャナとの間に、調節用の光学部品(例えば、光線の光路のに配置されるレンズ)を備えることもできる。
【0049】
この特許明細書において、レーザアブレーション構成の他の各種要素の構造について、記載されていない更なる詳細は、上記説明に当業者の一般知識を用いてして行うことができる。
【0050】
図6aおよび図6bは、矢印の方向に移動するターゲット材料の表面における、レーザ光線のスキャントレースを例示する。
図6aは、双方向性の光学スキャナが用いられたときの、スキャントレースを例示する。
図6bは、一方向性の光学スキャナが用いられたときの、スキャントレースを例示する。
これらの図において、隣接するスキャントレース間に隙間があるが、スキャン速度を上げたり、ターゲット材料の移動を遅くすることによって、隣接するスキャントレースを重複させることは、当然に可能である。
【0051】
上記記載は、本発明による解決手段のいくつかの実施形態にすぎない。本発明による原理は、当然に上記実施形態に限られず、特許請求の範囲で定義された枠組みの範囲内で変更できる(例えば、実施や好適な範囲の細部における変更)。
【0052】
例えば、本発明の実施形態では、光学スキャナは1つの同一の鏡を備えているが、いくつかの別々の鏡を用いて、必要な反射パターンを形成することも可能である。
【0053】
また、記載された実施形態が円形状の回転経路を示していたとしても、他の種類の回転経路を使用することも可能である。
【0054】
更に、前記記載の実施形態は、回転軸に対して斜めに配置された円筒形状の鏡を備える。しかしながら、斜錐面のような、さまざまな他の形状とすることは、当然に可能である。
【0055】
前記記載の実施形態は、動作し、一般的な凸形状に形成された外面に反射面を備える鏡を含んでいる。しかしながら、鏡の内面を動作する反射面とし、一般的な凹形状に形成することも可能である。この場合、好ましくは、レーザ光線は、回転する鏡の一端から鏡に入射し、回転する鏡の他の端に反射光線を導くように構成される。
このような光学スキャナでは、回転軸で回転シャフトを用いる代わりに、外側から鏡を支持して、回転させる必要もある。
【0056】
レーザアブレーションに基づく、コーティングや冷間加工は、本実施形態の光学スキャナの典型的な適用例として述べてきた。しかしながら、他の目的、例えば、ターゲット材料のプラズマにより新物質生成のために、レーザアブレーションを使用することも可能である。また、本発明の光学スキャナは、レーザアブレーション以外に、多数の応用例がある。
【0057】
この様な応用例としては、例えば、レーザプリンタ、レーザ・コピー機およびバーコード・リーダを含むことができる。
【符号の説明】
【0058】
210 鏡
214 鏡面
216 回転軸
234a〜234d 反射光線
341a〜348a スポーク
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図3a】

【図3b】

【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図4d】

【図4e】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した光線を反射する少なくとも1つの鏡(210)を備え、
反射した光線の方向を、前記少なくとも1つの鏡の移動によって制御する光学スキャナであって、
メインの回転軸(216)の回転経路に沿って前記鏡を動かす手段(341a〜348a)を有し、
前記鏡の鏡面(214、214a〜214d)と前記回転軸(216)との角度は、前記鏡面の位置に応じて変化し、
前記光学スキャナの前記鏡において、前記鏡の前記変化角度は、前記鏡のその回転経路の位置に応じた反射角で、光線(234a〜234d)を偏向するように構成されたことを特徴とする光学スキャナ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学スキャナであって、
前記鏡面と前記回転軸との前記角度の前記変化は、ターゲットに向かうラインを経路とする反射光線を形成することを特徴とする光学スキャナ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学スキャナであって、
前記ラインの方向は、前記鏡の前記回転軸の方向と略同方向であることを特徴とする光学スキャナ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
前記鏡は、円筒の形状であり、前記円筒が前記回転軸に対して傾斜していることを特徴とする光学スキャナ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
回転中における重量のバランスをとる複数の手段(322a〜324a、322b〜324b)を備えることを特徴とする光学スキャナ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
前記鏡は、前記鏡の前記回転軸に直交する断面に沿った表面に、端部、又は不連続端部を備えないことを特徴とする光学スキャナ。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
前記鏡は、前記鏡の前記回転軸に直交する断面に沿った表面に、一つの端部および/または不連続端部(415)を備えることを特徴とする光学スキャナ。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
前記鏡は、前記鏡の前記回転軸に直交する断面に沿った表面に、少なくとも2つの端部および/または不連続端部(415)を備えることを特徴とする光学スキャナ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
前記鏡を冷却する手段を備えることを特徴とする光学スキャナ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
回転する鏡の外面が光線を反射することを特徴とする光学スキャナ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
回転する鏡の内面が光線を反射することを特徴とする光学スキャナ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
一方向性スキャナ(410)であることを特徴とする光学スキャナ。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の光学スキャナであって、
双方向性スキャナ(210)であることを特徴とする光学スキャナ。
【請求項14】
材料を処理する構成であって、
レーザ光線をアブレーションのために供給するレーザ源(44)と、
請求項1から13のいずれか1項に記載の光学スキャナと、を備え、
前記光学スキャナは、レーザ光線の光路に配置され、レーザ光線がアブレーションターゲット(47)のヒットポイントに導かれるように位置することを特徴とする構成。
【請求項15】
請求項14に記載の構成であって、
アブレーションターゲットを冷間加工するように構成されたことを特徴とする構成。
【請求項16】
請求項14に記載の構成であって、
基板をアブレーションターゲットからのプラズマ・プルームでコーティングするように構成されたことを特徴とする構成。
【請求項17】
レーザアブレーションにより、材料を処理するシステムであって、
請求項14から16のいずれか1項に記載の材料を処理する構成と、
アブレーションターゲット本体、および/または基板製品の投入、動作、および/またはシステムからの移動を処理する自動化された手段とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、
基板(50)のコーティングにおいて、アブレーションプルームを維持するために、ターゲット材料の供給を構成する自動化された手段を備えることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項17または18に記載のシステムであって、
アブレーションターゲットから溶発したアブレーションマテリアルのプルームと接触するように基板をセットし、および/または保つ手段を備えることを特徴とするシステム。

【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2010−515093(P2010−515093A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543490(P2009−543490)
【出願日】平成19年12月31日(2007.12.31)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050724
【国際公開番号】WO2008/081081
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(507283908)ピコデオン エルティーディー オイ (8)
【Fターム(参考)】