説明

光学フィルムおよびその製造方法

【課題】巻きズレを抑制しながらも、フィルム同士の貼り付き、巻き緩み、シワおよび折れの発生を十分に抑制する光学フィルムを提供すること。
【解決手段】幅手方向(TD)両端のエンボス領域10はそれぞれ独立して、凸領域2の面積率が20〜80%であり、かつ、以下に示す(I)または(II)の要件を満たす光学フィルム;(I)エンボス領域10が凸領域2を搬送方向で間欠的に形成してなる間欠的凸列1のみを2列以上で有し、巻き込みエアの抜けを阻害するように、各間欠的凸列1の凸領域ユニット2の配置を、搬送方向で隣り合う任意の2つの凸領域ユニット間および幅手方向で隣り合う任意の2列の凸列間について制御する;(II)エンボス領域が凸領域を搬送方向で連続的に形成してなる連続的凸例を1列以上で有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムをロール状に巻き取る際に、幅手方向の端部にエンボス(ナール)領域を形成することは広く知られている。エンボス領域は巻き取りの際にフィルムが巻きズレを起こすことのないようにするための滑り止めの役目を果たす。たとえば、特許文献1の技術ではエンボスを一定面積で付与することで巻きずれやテープの転写跡を抑制するものである。
【0003】
しかしながら、生産の高速化、広幅化が進むことにより、フィルム巻き取り時の巻き込みエアにより、フィルムにシワおよび折れが発生するという新たな問題が生じていた。フィルム巻き取り時にエアが巻き込まれると、エアが時間の経過と共に抜けるため、フィルム同士が張り付きが起こったり、巻き緩みが起こったりした。さらに、フィルムのたるみ部分でシワおよび折れが発生した。そのような問題を解決するために、巻き取り条件を変更する試みがなされているが、フィルム同士の貼り付き、巻き緩み、シワおよび折れを十分に抑制することはできなかった。
【0004】
そこで、特許文献2では、フィルムの巻取りの際にゴムロールによってフィルムをフィルムロールに対して押さえつけることでエアの巻き込みを抑制する技術が報告されている。しかしながら、そのような技術では、エアの発生は抑制できたが、フィルム同士の貼り付きが増加した。
【0005】
従来から知られているエンボスの形状は、幅手方向に対する垂直断面において、凸領域ユニット間の搬送方向距離が、凸領域ユニットの搬送方向長さに対して略同等以上である。
【特許文献1】特開2007-70514号公報
【特許文献2】特開2006-193327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術は、フィルム巻き取り時にエアを巻き込まないようにする技術に関するものであるため、フィルム同士の貼り付き、巻き緩み、シワおよび折れを十分に抑制できなかった。
【0007】
本発明は、フィルム巻き取り時に巻き込まれたエアを逃がさない技術に関するものであり、これによって、巻きズレを抑制しながらも、フィルム同士の貼り付き、巻き緩み、シワおよび折れの発生を十分に抑制する光学フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリマーフィルムの幅手方向の両端にエンボス領域を有し、各エンボス領域において、搬送方向について略平行に、凸領域が間欠的または連続的に形成されてなる凸列を1列以上有する光学フィルムであって、
該両端のエンボス領域はそれぞれ独立して、凸領域の面積率が20〜80%であり、かつ、以下に示す(I)または(II)の要件を満たすことを特徴とする光学フィルム;
(I)エンボス領域が凸領域を搬送方向で間欠的に形成してなる間欠的凸列のみを2列以上で有し、各凸列において搬送方向で隣り合う任意の2つの凸領域ユニット間の搬送方向距離x(mm)が、凸領域ユニットの搬送方向長さy(mm)に対して0.4以下であり、幅手方向で隣り合う任意の2列の凸列について、一方の凸列における任意の1つの凸領域ユニットが、幅手方向に対する垂直断面透視図において、その搬送方向上流側および下流側で、他方の凸列において搬送方向で隣り合う2つの凸領域ユニットと重なり、搬送方向上流側の重なり部分の搬送方向長さz1(mm)および搬送方向下流側の重なり部分の搬送方向長さz2(mm)のうち小さい方の長さが凸領域ユニットの搬送方向長さy(mm)に対して0.3以上である;
(II)エンボス領域が凸領域を搬送方向で連続的に形成してなる連続的凸例を1列以上で有する。
【0009】
本発明はまた、上記光学フィルムを製造するための方法であって、ポリマーフィルムの幅手方向両端に、前記エンボス領域を形成するエンボス処理工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学フィルムは、フィルム巻き取り時に巻き込まれたエアが、時間の経過によってもフィルムロールに有効に保持される。そのため、本発明の光学フィルムは、ロール形態での保管時においてエア層によって、フィルム同士の貼り付き、巻き緩み、シワおよび折れの発生を十分に抑制できる。しかも巻きズレも抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(光学フィルム)
本発明に係る光学フィルムは、ポリマーフィルムの幅手方向の両端にエンボス領域を有するものであり、各エンボス領域において、搬送方向について略平行に凸列を1列以上で有している。凸列とは、凸領域が搬送方向において間欠的または連続的に形成されたものである。本明細書中、凸領域が搬送方向において間欠的に形成された凸列を間欠的凸列と呼ぶものとし、凸領域が搬送方向において連続的に形成された凸列を連続的凸列と呼ぶものとする。凸列が間欠的凸列である場合、当該凸列を間欠的に構成する個々の凸領域を凸領域ユニットと呼ぶものとする。
【0012】
本発明の光学フィルムが有する幅手方向両端のエンボス領域はそれぞれ独立して、以下に示す(I)または(II)の要件を満たすものである。すなわち、両端のエンボス領域は共通して(I)の要件を満たしてもよいし、(II)の要件を満たしてもよいし、または一端のエンボス領域が(I)の要件を満たし、かつ他端のエンボス領域が(II)の要件を満たしてもよい。両端のエンボス領域が共通して(I)の要件を満たすか、または(II)の要件を満たす場合、両端のエンボス領域は、幅手方向の中央線について対称性を有してもよいし、または所定の範囲内において互いに異なっていてもよい。両端のエンボス領域は好ましくは、共通して(I)の要件を満たすか、または(II)の要件を満たし、かつ幅手方向の中央線について対称性を有する。以下、(I)および(II)の要件について詳しく説明するが、これらの要件についての説明は一端分のエンボス領域を対象とするものである。本明細書中、光学フィルム面に対して垂直方向から見たとき、エンボス領域が有する凸領域のパターン形状をエンボスパターンということがある。
【0013】
(I)エンボス領域が間欠的凸列のみを2列以上で有する場合、巻き込みエアの抜けを阻害するように、各間欠的凸列の凸領域ユニットの配置を、搬送方向で隣り合う任意の2つの凸領域ユニット間および幅手方向で隣り合う任意の2列の凸列間について制御する。要件(I)においてエンボス領域は間欠的凸列を好ましくは2〜7列、より好ましくは3〜5列で有する。具体的には、例えば図1(A)において光学フィルムは、幅手方向一端におけるエンボス領域10において、搬送方向(MD方向)について平行に間欠的凸列1を3列で有している。凸列がこのように間欠的凸列である場合、当該間欠的凸列を構成する個々の凸領域を凸領域ユニットと呼ぶものとし、図1(A)中、2で示すものとする。全ての間欠的凸列1における全ての凸領域ユニット2は通常、同じ寸法を有し、かつ一定の間隔で搬送方向に繰り返し形成される。
【0014】
要件(I)では、まず、凸領域ユニットの配置を、搬送方向で隣り合う任意の2つの凸領域ユニット間において制御する。詳しくは、各間欠的凸列1において搬送方向で隣り合う任意の2つの凸領域ユニット2間の搬送方向距離x(mm)(図1(A)参照)を、凸領域ユニット2の搬送方向長さy(mm)に対して0.4以下、特に0.01〜0.4、好ましくは0.01〜0.25にする。当該割合が大きすぎると、フィルムロールの巻き込みエアが経時的に有効に保持されないため、フィルム同士の貼り付き、巻き緩み、シワおよび折れを十分に抑制できず、また巻きズレも十分に抑制できない。
【0015】
凸領域ユニット2間の搬送方向距離x(mm)は、上記割合が達成される限り特に制限されず、通常は0.5〜3mmであり、好ましくは1〜2mmである。
凸領域ユニット2の搬送方向長さy(mm)は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は3〜20mmであり、好ましくは5〜10mmである。
【0016】
要件(I)では、さらに、凸領域ユニットの配置を、幅手方向で隣り合う任意の2列の凸列間において制御する。詳しくは、幅手方向で隣り合う任意の2列の凸列について、一方の凸列における任意の1つの凸領域ユニットが、幅手方向に対する垂直断面透視図上、他方の凸列において搬送方向で隣り合う2つの凸領域ユニットと重なるように配置する。具体的には、図1(B)に示すように、任意の1つの凸領域ユニット2aは、その搬送方向上流側および下流側で、隣り合う凸列において搬送方向で隣り合う2つの凸領域ユニット2b、2cと重なるように配置される。図1(B)は、図1(A)の光学フィルムにおいて1つの凸領域ユニット2aに注目したときに、隣り合う凸列1において当該凸領域ユニット2aと最も近い凸領域ユニット2cおよび2番目に近い凸領域ユニット2bとの関係を示す幅手方向に対する垂直断面透視図である。そのような垂直断面透視図において、任意の1つの凸領域ユニットが、隣り合う間欠的凸列の1つの凸領域ユニットとしか重ならない場合、フィルムロールの巻き込みエアが経時的に有効に保持されないため、フィルム同士の貼り付き、巻き緩み、シワおよび折れを十分に抑制できず、また巻きズレも十分に抑制できない。
【0017】
幅手方向に対する垂直断面透視図において、凸領域ユニット2aにおける搬送方向上流側の凸領域ユニット2bとの重なり部分の搬送方向長さz1(mm)および搬送方向下流側の凸領域ユニット2cとの重なり部分の搬送方向長さz2(mm)のうち小さい方の長さは凸領域ユニットの搬送方向長さy(mm)に対して0.3以上、特に0.3〜0.5である。当該割合が小さすぎると、フィルムロールの巻き込みエアが経時的に有効に保持されないため、フィルム同士の貼り付き、巻き緩み、シワおよび折れを十分に抑制できず、また巻きズレも十分に抑制できない。
【0018】
凸領域ユニット2aが搬送方向上流側および下流側でそれぞれ凸領域ユニット2b、2cと重なり合う上記関係は、本発明においては任意の凸列における任意の1つの凸領域ユニットと、隣り合う凸列において該凸領域ユニットと最も近い凸領域ユニットおよび2番目に近い凸領域ユニットとの間において満たすものである。
【0019】
凸列1を構成する凸領域ユニット2は、凸領域が形成されていない領域から所定の高さで浮き上がっている。例えば、図1(B)において、凸領域ユニット2(2a、2b、2c)は、凸領域が形成されていない領域の表面3から所定の高さhで浮き上がっている。高さhは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は平均で3〜30μmであり、好ましくは5〜20μmである。
【0020】
エンボス領域10において、凸領域の面積率は20〜80%である。凸領域の面積率が小さすぎると、フィルムロールの巻き込みエアが有効に保持されないので、巻き緩みや張り付きを抑止する効果が得られない。凸領域の面積率が大きすぎると、フィルムロールの巻き込みエアが多くなりすぎるため、巻き緩みが悪化する。
【0021】
凸領域の面積率は、エンボス領域10の全体面積に対する凸領域2の総面積の割合である。エンボス領域10とは、フィルムの幅手方向一端における全ての凸領域を含むように、搬送方向に平行な直線で区切られる最小な領域であり、例えば図1(C)において斜線で示される領域である。
【0022】
エンボス領域10と光学フィルムの端面との距離a(図1(C)参照)、エンボス領域10の幅手方向長さb(図1(C)参照)、および幅手方向で隣り合う凸列の間の距離c(図1(C)参照)は、本発明の目的が達成される限り特に制限されない。
距離aは通常、10mm以下であり、5mm以下が好ましい。
長さbは通常、5〜30mmであり、10〜20mmが好ましい。
凸列間距離cは、上記凸領域の面積率が達成される限り特に制限されず、通常、0.1〜5mmであり、0.5〜2mmが好ましい。
【0023】
本発明の光学フィルムにおいて、幅手方向の長さ、搬送方向の長さ、および幅手方向について中央の非エンボス領域5における膜厚は特に制限されない。
幅手方向の長さは通常は1000〜4000mmであり、好ましくは1300〜3000mmであり、より好ましくは1500〜3000mmである。従来では、当該長さが長いほど、巻き込まれたエアが抜け難い一方で、時間の経過と共にエアは抜けるため、巻き緩み、シワおよび折れ等の問題が発生し易いが、本発明においてはそのような長さであっても、それらの問題を有効に抑制できるためである。
搬送方向の長さは通常は500〜10000mであり、好ましくは3000〜7000mであり、より好ましくは4000〜7000mである。従来では、当該長さが長いほど、巻き込まれるエア量が増大する一方で、時間の経過と共にエアは抜けるため、巻き緩み、シワおよび折れ等の問題が発生し易いが、本発明においてはそのような長さであっても、それらの問題を有効に抑制できるためである。
非エンボス領域5における膜厚は通常は20〜200μmであり、好ましくは20〜80μmである。当該厚みが薄いほど、光学フィルムが変形しやすいため、巻き緩み、シワおよび折れ等の問題が発生し易いが、本発明においてはそのような厚みであっても、それらの問題を有効に抑制できるためである。
【0024】
図1(A)に示すエンボスパターンおいて凸領域ユニット2は、長方形形状を有しているが、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、菱形形状、W字(M字)形状、六角形状、十字形状等を有していてもよい。
【0025】
凸領域ユニット2が菱形形状を有する場合のエンボスパターンの具体例を図2(A)〜図2(C)に示す。
図2(A)〜図2(C)はそれぞれ、凸領域ユニット2が菱形形状を有すること以外、図1(A)〜図1(C)と同様であるため、それらの説明を省略する。図2(A)〜図2(C)における図1(A)〜図1(C)と同じ符号は、凸領域ユニット2の形状が異なること以外、図1(A)〜図1(C)と同じ意味内容を示すものとする。
【0026】
凸領域ユニット2がW字形状を有する場合のエンボスパターンの具体例を図3(A)〜図3(C)に示す。
図3(A)〜図3(C)はそれぞれ、凸領域ユニット2がW字形状を有すること以外、図1(A)〜図1(C)と同様であるため、それらの説明を省略する。図3(A)〜図3(C)における図1(A)〜図1(C)と同じ符号は、凸領域ユニット2の形状が異なること以外、図1(A)〜図1(C)と同じ意味内容を示すものとする。
【0027】
図2(C)および図3(C)において斜線で示される領域がエンボス領域10である。
【0028】
(II)エンボス領域が連続的凸列を1列以上で有する場合、エンボス領域はさらに間欠的凸列を有しても、または有さなくてもよい。すなわち、エンボス領域が有する全ての凸列は1列以上、好ましくは2〜7列の連続的凸例のみからなっていてもよいし、または1列以上、好ましくは1〜7列の連続的凸列と、1列以上、好ましくは1〜7列の間欠的凸列とからなっていてもよい。前者の場合の具体例として、例えば、図4(A)〜図4(C)に示すエンボスパターンが例示できる。後者の場合の実施形態として、例えば、図5(A)〜図5(C)に示すエンボスパターンが例示できる。
【0029】
図4(A)〜図4(C)はそれぞれ、全ての凸列が連続的凸列であること以外、図1(A)〜図1(C)と同様であるため、それらの説明を省略する。図4(A)〜図4(C)における図1(A)〜図1(C)と同じ符号は、凸列が連続的であること以外、図1(A)〜図1(C)と同じ意味内容を示すものとする。
【0030】
図5(A)〜図5(C)はそれぞれ、エンボス領域が1列の連続的凸列と1列の間欠的凸列とを有すること以外、図1(A)〜図1(C)と同様であるため、それらの説明を省略する。図5(A)〜図5(C)における図1(A)〜図1(C)と同じ符号は、凸列の数が異なること、および1つの凸列が連続的凸列であること以外、図1(A)〜図1(C)と同じ意味内容を示すものとする。
【0031】
特に要件(II)においては、要件(I)においてと同様に、エンボス領域10における凸領域の面積率は20〜80%であり、好ましくは30〜60%である。凸領域の面積率が小さすぎると、フィルムロールの巻き込みエアが有効に保持されないので、巻き緩みや張り付を抑止する効果が得られない。凸領域の面積率が大きすぎると、フィルムロールの巻き込みエアが多くなりすぎるため、巻き緩みが悪化する。
【0032】
凸領域の面積率は、エンボス領域10の全体面積に対する凸領域2の総面積の割合である。エンボス領域10は、フィルムの幅手方向一端における全ての凸領域を含むように、搬送方向に平行な直線で区切られる最小な領域であり、例えば図4(C)および図5(C)において斜線で示される領域である。
【0033】
要件(II)において、エンボス領域が有し得る間欠的凸列は、特に制限されず、例えば、要件(I)においてと同様の間欠的凸列であってもよいし、または当該間欠的凸列以外の間欠的凸列であってもよい。
【0034】
本発明の光学フィルムは、上記した(I)および(II)の要件において、搬送方向に略平行に形成された間欠的凸列および/または連続的凸列以外に、他のエンボスパターンで形成された凸領域やランダム(不規則)に形成された凸領域をエンボス領域に有することを妨げるものではない。
【0035】
(光学フィルムの製造方法)
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、ポリマーフィルムの幅手方向両端に、前記した光学フィルムが有するエンボス領域を形成するエンボス処理工程を有するものである。
【0036】
エンボス処理工程に使用されるポリマーフィルムは、光学フィルムの分野で従来より使用されている公知の樹脂からなるフィルムが使用可能であり、具体的には、セルロース樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ノルボルネン、ポリオレフィン等が挙げられる。好ましくはセルロース樹脂からなるフィルムが使用される。
【0037】
セルロース樹脂は、セルロースエステルの構造を有するものであり、具体例として、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレート等が挙げられる。これらの中で特に好ましいセルロース樹脂として、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。セルロース樹脂は1種を単独で使用してもよいし、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0038】
ポリマーフィルムには紫外線吸収剤、可塑剤、無機金属酸化物、滑り性を付与するための微粒子等の添加剤が含有されていてもよい。
【0039】
ポリマーフィルムの厚みは、前記した光学フィルムにおける非エンボス領域の膜厚と同様の範囲内が好適である。
【0040】
ポリマーフィルムは公知のいかなる方法によって製造されてよく、例えば、いわゆる溶液流延法や溶融流延法等によって製造可能である。
【0041】
ポリマーフィルムは収縮処理や延伸処理されていてよく、例えば、搬送方向および幅手方向それぞれの方向で0.8〜1.5倍に収縮または延伸させたものを使用してもよい。
【0042】
ポリマーフィルムは上記樹脂からなる単層構造を有していてもよいし、または上記樹脂からなる表面層を基材層上に有してなる多層構造を有していてもよい。
【0043】
本発明においてエンボス処理工程に使用されるポリマーフィルムは、いわゆる溶液流延法や溶融流延法等の従来から既知の光学フィルムの製造方法における製造途中のものであってもよいし、または従来から既知の光学フィルムの製造方法における最終製品としてのフィルムであってもよい。
【0044】
ポリマーフィルムが従来から既知の光学フィルムの製造方法における製造途中のものである場合、本発明で実施されるエンボス処理工程は、対象としてのポリマーフィルムがフィルム形態を有する限り、従来から既知の光学フィルムの製造方法において、いかなる工程間において実施されてもよい。
【0045】
例えば、いわゆる流延工程、乾燥工程、剥離工程、延伸工程および巻き取り工程を含む溶液流延法が採用される場合、エンボス処理工程は、剥離工程−延伸工程間で実施されてもよいし、または延伸工程−巻き取り工程間で実施されてもよい。この場合、本発明の光学フィルムの製造方法は、以下の順序で実施される各工程を有し得る。
順序(x1);流延工程−乾燥工程−剥離工程−エンボス処理工程−延伸工程−巻き取り工程;
順序(x2);流延工程−乾燥工程−剥離工程−延伸工程−エンボス処理工程−巻き取り工程。
上記の場合、乾燥工程がさらに、剥離工程−エンボス処理工程間、エンボス処理工程−延伸工程間、延伸工程−巻き取り工程間、剥離工程−延伸工程間、延伸工程−エンボス処理工程間、またはエンボス処理工程−巻き取り工程間において実施されてもよい。
【0046】
また例えば、いわゆる流延工程、冷却工程、剥離工程、延伸工程および巻き取り工程を含む溶融流延法が採用される場合、エンボス処理工程は、剥離工程−延伸工程間で実施されてもよいし、または延伸工程−巻き取り工程間で実施されてもよい。この場合、本発明の光学フィルムの製造方法は、以下の順序で実施される各工程を有し得る。
順序(y1);流延工程−冷却工程−剥離工程−エンボス処理工程−延伸工程−巻き取り工程;
順序(y2);流延工程−冷却工程−剥離工程−延伸工程−エンボス処理工程−巻き取り工程。
上記の場合、冷却工程がさらに、剥離工程−エンボス処理工程、エンボス処理工程−延伸工程間、延伸工程−巻き取り工程間、剥離工程−延伸工程間、延伸工程−エンボス処理工程間、またはエンボス処理工程−巻き取り工程間において実施されてもよい。
【0047】
上記した溶液流延法または溶融流延法のいずれの方法を採用する場合においても、エンボス処理工程は、最終工程として実施される巻き取り工程の直前に実施されることが好ましい。
【0048】
(エンボス処理工程)
本工程で採用するエンボス処理方法は、前記した凸領域を所定のエンボスパターンで付与できる限り特に制限されず、例えば、ローラで押圧成形する方法や、特開2007−119181号公報に記載のようなレーザー照射法等が挙げられる。好ましくはレーザー照射法が採用される。レーザー照射法によると、凸領域、特に間欠的凸列における凸領域ユニットの形状が変形し難いためである。
【0049】
本発明の光学フィルムの製造方法においては、光学フィルムの巻き取り速度は通常、15m/min以上であり、好ましくは60m/min以上、特に80〜120m/minである。従来では、当該速度が速いほど、巻き込まれるエア量が増大する一方で、時間の経過と共にエアは抜けるため、巻き緩み、シワおよび折れ等の問題が発生し易いが、本発明においてはそのような速度であっても、それらの問題を有効に抑制できるためである。
【0050】
(用途)
以上の方法で製造された光学フィルム、例えば、視野角拡大フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム等としての使用に特に適している。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
[ドープの調製]
各種成分を以下のような割合で配合し、ドープの調製を行った。
セルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 440重量部
エタノール 40重量部
チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.5重量部
アエロジル972V(日本アエロジル株式会社製) 0.2重量部
上記の材料を、順次密閉容器中に投入し、容器内の温度を20℃から80℃まで昇温した後、温度を80℃に保ったままで3時間攪拌を行って、セルローストリアセテートを完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げた。このドープを濾紙(安積濾紙株式会社製、安積濾紙No.244)を使用して濾過し、ドープを得た。
【0052】
[光学フィルムの作製]
前記ドープをダイから、鏡面処理されたステンレス製支持体ベルトに流延した。ドープ温度は35℃、支持体温度は25℃であった。ウェブを支持体から剥離し、テンターを用いてウェブの両端をクリップで把持しながらフィルムの幅手方向へ30%延伸することによりポリマーフィルムを作製した。このとき、延伸温度は140℃であった。作製したフィルムは120℃の乾燥風にて乾燥させた。膜厚は60μmであった。
【0053】
次いで、ポリマーフィルムの表面に対して以下に示すエンボス処理を行った後、ポリマーフィルムを巻き取り、光学フィルムロールを得た。
エンボス処理工程において詳しくは、ポリマーフィルムの幅手方向の両端に対して、凸領域を、表および図1に示す寸法およびエンボスパターンで、COレーザー照射装置により波長10.6μm、出力60Wのレーザー光を照射して付与した。凸領域の平均高さは12μmであった。両端のエンボス領域は、幅手方向の中央線について対称性を有していた。
【0054】
(実施例2〜46/比較例1〜24)
エンボス処理工程において凸領域を所定の寸法およびエンボスパターンで付与したこと、所定膜厚のポリマーフィルムを用いたこと、所定の幅手方向長さ、および搬送方向長さを有する光学フィルムを所定の巻き取り速度で巻き取ったこと以外、実施例1と同様の方法により、光学フィルムロールを得た。
【0055】
(評価)
<巻きズレ>
図6に示す光学フィルムロール100において、ズレの寸法sをJIS1級金尺により測定した。
【0056】
<巻き緩み>
図6に示す光学フィルムロール100において、ロールの上部厚みr1および下部厚みr2をJIS1級金尺により測定し、緩み寸法として「r2−r1」を算出した。
【0057】
<張り付き>
光学フィルムロールを40℃、80%湿度条件で1週間保管した後、巻きをほぐして評価した。詳しくは、500m毎に1周あたりの張り付き箇所を数えた。張り付きはJIS1級金尺で寸法が0.5cm以上のものを数え、最多の個数を示した。
【0058】
<総合>
上記項目の評価結果を総合的に評価した。詳しくは、比較例18で得られた現行品としての光学フィルムロールを基準にして評価した。
◎:現行品より2以上の項目で優れる;
○:現行品より1の項目で優れる;
△:現行品と同等で効果なし;
×:現行品より劣る。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(A)は本発明の光学フィルムが有し得るエンボス領域の一例の概略模式図であり、(B)は(A)の光学フィルムの幅手方向に対する垂直断面透視図であり、(C)は(A)の光学フィルムにおけるエンボス領域を説明するための概略模式図である。
【図2】(A)は本発明の光学フィルムが有し得るエンボス領域の一例の概略模式図であり、(B)は(A)の光学フィルムの幅手方向に対する垂直断面透視図であり、(C)は(A)の光学フィルムにおけるエンボス領域を説明するための概略模式図である。
【図3】(A)は本発明の光学フィルムが有し得るエンボス領域の一例の概略模式図であり、(B)は(A)の光学フィルムの幅手方向に対する垂直断面透視図であり、(C)は(A)の光学フィルムにおけるエンボス領域を説明するための概略模式図である。
【図4】(A)は本発明の光学フィルムが有し得るエンボス領域の一例の概略模式図であり、(B)は(A)の光学フィルムの幅手方向に対する垂直断面透視図であり、(C)は(A)の光学フィルムにおけるエンボス領域を説明するための概略模式図である。
【図5】(A)は本発明の光学フィルムが有し得るエンボス領域の一例の概略模式図であり、(B)は(A)の光学フィルムの幅手方向に対する垂直断面透視図であり、(C)は(A)の光学フィルムにおけるエンボス領域を説明するための概略模式図である。
【図6】評価方法を説明するための光学フィルムロールの概略断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1:間欠的または連続的凸列、2:2a:2b:2c:凸領域(凸領域ユニット)、3:凸領域が形成されていない領域の表面、5:非エンボス領域、10:エンボス領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフィルムの幅手方向の両端にエンボス領域を有し、各エンボス領域において、搬送方向について略平行に、凸領域が間欠的または連続的に形成されてなる凸列を1列以上有する光学フィルムであって、
該両端のエンボス領域はそれぞれ独立して、凸領域の面積率が20〜80%であり、かつ、以下に示す(I)または(II)の要件を満たすことを特徴とする光学フィルム;
(I)エンボス領域が凸領域を搬送方向で間欠的に形成してなる間欠的凸列のみを2列以上で有し、各凸列において搬送方向で隣り合う任意の2つの凸領域ユニット間の搬送方向距離x(mm)が、凸領域ユニットの搬送方向長さy(mm)に対して0.4以下であり、幅手方向で隣り合う任意の2列の凸列について、一方の凸列における任意の1つの凸領域ユニットが、幅手方向に対する垂直断面透視図において、その搬送方向上流側および下流側で、他方の凸列において搬送方向で隣り合う2つの凸領域ユニットと重なり、搬送方向上流側の重なり部分の搬送方向長さz1(mm)および搬送方向下流側の重なり部分の搬送方向長さz2(mm)のうち小さい方の長さが凸領域ユニットの搬送方向長さy(mm)に対して0.3以上である;
(II)エンボス領域が凸領域を搬送方向で連続的に形成してなる連続的凸例を1列以上で有する。
【請求項2】
幅手方向について中央の非エンボス領域における膜厚が20〜80μmである請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
幅手方向の長さが1300〜3000mmである請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
搬送方向の長さが3000〜7000mである請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
セルロース樹脂を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルムを製造するための方法であって、ポリマーフィルムの幅手方向両端に、前記エンボス領域を形成するエンボス処理工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
光学フィルムを速度60m/min以上で巻き取ることを特徴とする請求項6に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
エンボス処理工程において凸領域をレーザー照射法により形成することを特徴とする請求項6または7に記載の光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120325(P2010−120325A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297751(P2008−297751)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】