説明

光学機器、制御プログラムおよび制御方法

【課題】光学機器が落下した場合に光学部材を保護する。
【解決手段】光学機器であって、本体と、本体に対して移動可能に支持された光学部材と、光学部材を本体に対して駆動する駆動部と、落下を検知する落下検知部と、落下検知部による落下を検知した場合に、光学部材と機械的に係合して光学部材の本体に対する移動を規制する規制部材とを備える。上記光学機器において、駆動部は、落下検知部が本体の振動を検出した場合に、当該振動を打ち消すべく光学部材を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器、制御プログラムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
落下を検出した場合にアクチュエータを駆動してレンズの衝突を防止することが提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1 特開2008−039458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、過渡特性を重視して設けられたアクチュエータでは、落下の衝撃に抗してレンズを支持することができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一態様として、本体と、本体に対して移動可能に支持された光学部材と、光学部材を本体に対して駆動する駆動部と、落下を検知する落下検知部と、落下検知部による落下を検知した場合に、光学部材と機械的に係合して光学部材の本体に対する移動を規制する規制部材とを備える光学機器が提供される。
【0005】
本発明の第二態様として、本体と、本体内に収容された複数の光学部材と、複数の光学部材のうちの少なくとも一つを本体に対して駆動する駆動部と、落下を検知する落下検知部と、落下検知部による落下を検知した場合に、少なくとも一つの光学部材を他の光学部材から離間した位置に保持すべく駆動部を制御する制御部とを備える光学機器が提供される。
【0006】
本発明の第三態様として、本体と、本体に対して移動可能に支持された光学部材と、光学部材を本体に対して駆動する駆動部と、本体の落下を検知する落下検知部と、光学部材と機械的に係合して光学部材の本体に対する移動を規制する規制部材とを備える光学機器を制御する制御方法であって、落下検知部が本体の落下を検知した場合に、規制部材に光学部材の移動を規制させる制御方法が提供される。
【0007】
本発明の第四態様として、本体と、本体に対して移動可能に支持された光学部材と、光学部材を本体に対して駆動する駆動部と、本体の落下を検知する落下検知部と、光学部材と機械的に係合して光学部材の本体に対する移動を規制する規制部材とを備える光学機器を制御する制御プログラムであって、落下検知部が本体の落下を検知した場合に、規制部材に光学部材の移動を規制させる制御プログラムが提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】撮像装置100の模式的断面図である。
【図2】レンズユニット200の部分的な断面図である。
【図3】防振装置270の断面図である。
【図4】防振装置270の部分的な断面図である。
【図5】防振装置270の部分的な断面図である。
【図6】撮像装置100のブロック図である。
【図7】制御手順を示す流れ図である。
【図8】制御手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、撮像装置100の模式的断面図である。撮像装置100は、レンズユニット200およびカメラボディ300を含む。
【0012】
なお、以降の記載では、レンズユニット200において、物体側を「前側」、像側を「後側」と記載する。また、カメラボディ300において、レンズユニット200が装着される側を「前側」、その反対側で、ファインダ350、表示部340等が配置される側を「後側」または「背面側」と記載する。
【0013】
レンズユニット200は、固定筒210、鏡筒CPU250、複数のレンズ220、230、240、レンズマウント260、防振装置270および合焦アクチュエータ280を有する。複数のレンズ220、230、240は、共通の光軸X上に配列されて光学系をなす。なお、レンズ220、230、240の各々は、それぞれが複数のレンズを重ね合わせたレンズ群であり得る。
【0014】
複数のレンズ220、230、240の一部を光軸X方向に移動させることにより、この光学系の倍率および焦点位置は変化する。光学系を合焦させる場合は、合焦アクチュエータ280により、レンズ220、230、240の一部を光軸Xに沿って移動させる。
【0015】
合焦アクチュエータ280としては、超音波モータ、ボイスコイルモータ等の他の駆動方式が与えられる場合がある。また、他のレンズ220、230、240の一部は、カム構造、スライド構造等の操作により手動で移動させる機構を有する場合がある。
【0016】
固定筒210の一端は、レンズマウント260を介して、カメラボディ300のボディマウント360に結合される。レンズマウント260およびボディマウント360の結合は一定の操作で解除できる。これにより、カメラボディ300には、同じ規格のレンズマウント260を有する他のレンズユニット200を装着できる。
【0017】
鏡筒CPU250は、レンズユニット200の各部の制御を司ると共に、カメラボディ300との通信も担う。これにより、カメラボディ300に装着されたレンズユニット200はカメラボディ300と連携して動作する。
【0018】
防振装置270は、防振アクチュエータ272、変位センサ274および係止環276を有する。防振アクチュエータ272は、レンズ240を、光軸Xに対して交差する2つの方向に移動させる。これにより、レンズ240は、光軸Xに交差する面内で二次元的に変位する。
【0019】
レンズユニット200の光学系において、光軸Xと交差する方向にレンズ240が移動した場合、レンズユニット200の光学系により形成される被写体像の位置も、光軸Xと交差する方向に移動する。なお、防振アクチュエータ272としては、ボイスコイルモータを使用できる。
【0020】
変位センサ274は、レンズユニット200のヨー方向およびピッチ方向の角速度を検出するジャイロセンサを含む。変位センサ274が検出したレンズユニット200のヨー方向およびピッチ方向の角速度に基づいて、鏡筒CPU250は、レンズユニット200の振れ角を算出する。更に鏡筒CPU250は、算出した振れ角による被写体像の変位を打ち消すように、防振アクチュエータ272を駆動する。
【0021】
防振装置270は、上記のような一連の処理を十Hzから数十Hz程度の間隔で繰り返し実行する。これにより、手振れ等でレンズユニット200に生じた振動が補償され、レンズユニット200が形成する被写体像のぶれが防止される。なお、変位センサ274またはその一部は、カメラボディ300に配されてもよい。
【0022】
カメラボディ300は、レンズユニット200に結合されたボディマウント360の背後に配されたミラーユニット370を備える。ミラーユニット370の下方には合焦光学系380が配される。また、ミラーユニット370の上方にはフォーカシングスクリーン352が、それぞれ配される。
【0023】
フォーカシングスクリーン352の更に上方にはペンタプリズム354が配され、ペンタプリズム354の後方にはファインダ光学系356が配される。ファインダ光学系356の後端は、ファインダ350としてカメラボディ300の背面に露出する。
【0024】
ミラーユニット370の後方には、シャッタ装置400、ローパスフィルタ332、撮像素子330、主基板320および表示部340が順次配される。液晶表示板等により形成される表示部340は、カメラボディ300の背面に現れる。主基板320には、本体CPU322および画像処理回路324等の電子部品の一部が実装される。
【0025】
ミラーユニット370は、メインミラー371およびサブミラー374を含む。メインミラー371は、メインミラー回動軸373により軸支されたメインミラー保持枠372に支持される。サブミラー374は、サブミラー回動軸376により軸支されたサブミラー保持枠375に支持される。サブミラー保持枠375は、メインミラー保持枠372に対して回動する。よって、メインミラー保持枠372が回動した場合、サブミラー保持枠375もメインミラー保持枠372と共に変位する。
【0026】
メインミラー保持枠372の前端が降下した場合、メインミラー371は、レンズユニット200から入射した入射光束上に斜めに位置する。メインミラー保持枠372が上昇した場合、メインミラー371は、入射光束を避けた位置に退避する。
【0027】
メインミラー371が入射光束上に位置する場合、レンズユニット200を通じて入射した入射光束は、メインミラー371に反射され、フォーカシングスクリーン352に導かれる。フォーカシングスクリーン352は、レンズユニット200の光学系と共役な位置に配されているので光学系が形成した被写体像が結ばれる。
【0028】
フォーカシングスクリーン352に結像された像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から観察される。被写体像の光束は、ペンタプリズム354を通過しているので、フォーカシングスクリーン352上の被写体像はファインダ350から正立正像として観察される。
【0029】
測光センサ390は、ファインダ光学系356の上方に配され、ペンタプリズム354において分岐されさた入射光束の一部を受光する。測光センサ390は、被写体輝度を検出して、本体CPU322に撮影条件の一部である露出条件を算出させる。また、入射光束の一部を三原色毎に測光して、オートホワイトバランスの算出にも与する。
【0030】
メインミラー371は、入射した入射光束の一部を透過するハーフミラー領域を有する。サブミラー374は、ハーフミラー領域から入射した入射光束の一部を、合焦光学系380に向かって反射する。合焦光学系380は、入射した入射光束の一部を焦点検出センサ382に導く。これにより、本体CPU322は、レンズユニット200の光学系を合焦させる場合のレンズ230の目標位置を決定する。
【0031】
上記のような撮像装置100においてレリーズボタンが半押しされると、焦点検出センサ382および測光センサ390が有効になり、被写体像を適切な撮影条件で撮影できる状態になる。次いで、レリーズボタンが全押しされると、メインミラー371およびサブミラー374が退避位置に移動して、シャッタ装置400が開く。これにより、レンズユニット200から入射した入射光束は、ローパスフィルタ332を通過して、撮像素子330に入射する。
【0032】
撮像素子330は、CCDセンサ(Charge Coupled Device)、CMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの光電変換素子により形成され、受光した被写体像を電気信号に変換して出力する。撮像素子330から出力された電気信号は画像処理回路324において撮影画像データに変換される。
【0033】
図2は、レンズユニット200の部分的な断面図である。図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0034】
図示のように、このレンズユニット200において光学系を合焦させる場合に移動するレンズ230は、前玉であるレンズ220の直後に配置される。また、レンズユニット200には、更に他のレンズ232、234を備える場合もある。また更に、レンズ220、230、232、234、240の各々は、それぞれが複数の光学部品を含むレンズ群である場合もある。
【0035】
いうまでもなく、このような配置は、個々のレンズユニット200の設計仕様により異なる。しかしながら、複数のレンズ220、230、232、234、240を備えるレンズユニット200では、レンズ220、230、232、234、240の一部は、往々にして接近して配置される。更に、合焦、変倍または近接撮影モードへの切り替えにより移動した場合に更に接近する場合がある。
【0036】
図3は、防振装置270単独の断面図である。図1および図2と共通の要素には同じ参照番号を付す。防振装置270は、レンズ240、保持枠242、係止アクチュエータ271、弾性部材275、係止環276および固定部材278を有する。
【0037】
レンズ240は保持枠242に保持される。保持枠242は、固定筒210に対して固定された固定部材278から支持される。
【0038】
固定部材278は、保持枠242の一面に当接する突起279を有する。また、保持枠242において突起279に当接する面の裏面と、固定部材278との間には、弾性部材275が配される。よって、保持枠242は、弾性部材275により突起279に向かって押し付けられた状態となる。
【0039】
しかしながら、保持枠242と突起279との接触面積は僅かなので、保持枠242が光軸Xと直交する方向に変位することは妨げられない。よって、防振アクチュエータ272が動作した場合、保持枠242は、光軸Xと交差する方向に円滑に移動する。
【0040】
保持枠242が移動した場合、保持枠242に保持されたレンズ240も光軸Xに交差する方向に移動する。これにより、レンズユニット200の光学系が形成する被写体像は光軸Xと交差する方向に移動する。
【0041】
また、保持枠242は、レンズ240の周囲に環状に形成された係止溝243を有する。係止溝243は、一対の斜面により形成されたV字型の断面形状を有する。
【0042】
係止環276は、固定部材278の内側に形成されたねじに噛み合い、光軸Xの回りに回転可能に固定部材278から支持される。係止アクチュエータ271は、係止環276の外周の一部に噛み合い、係止環276を光軸Xの回りに回転させる。
【0043】
係止環276は、係止アクチュエータ271に回転駆動された場合、固定部材278の内側で回転して、光軸X方向に変位する。これにより、係止環276は、保持枠242に対して接近または離間する。また、係止環276は、保持枠242に対向する面に、光軸Xと平行な方向に突出した突起277を有する。
【0044】
図4は、係止環276の突起277と保持枠242の係止溝243の近傍を拡大して示す部分拡大断面図である。図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0045】
図示の状態では、突起277は、係止溝243に対向する位置にある。しかしながら、保持枠242は、レンズ240の径方向に変位しており、突起277の中心と係止溝243の中心とは、レンズ240の径方向にずれている。また、図示の状態では、係止溝243の内面と突起277は離間している。
【0046】
図5は、防振装置270の部分拡大断面図である。図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0047】
図5は、係止環276が回転駆動されて光軸Xの回りを回転し、固定部材278の内側で係止環276が後退した状態を示す。これにより、係止環276は、保持枠242に向かって接近する。また、突起277は、レンズ240の周方向について図4と異なる位置にある。
【0048】
これにより、突起277は、係止溝243の一対の内壁に接している。保持枠242の裏面は、固定部材278の突起279に当接しているので後退できない。よって、保持枠242は、一対の突起277、279に挟まれて固定される。
【0049】
また、図示の状態に至る過程で、係止溝243の一対の内壁のいずれか一方が突起277に接した場合、保持枠242は、突起277の中心と係止溝243の中心とが一致する方向に向かって移動される。これにより、係止溝243の一対の内壁の両方に突起277が接した状態では、レンズ240の中心が光軸X上に位置する。
【0050】
このように、防振装置270において、係止環276は、レンズ240を中心位置に戻す復帰作用と、中心位置に戻った保持枠242を固定する移動規制作用とを有する。係止環276の作用により保持枠242が固定されると、レンズユニット200に外部から衝撃が加わった場合であっても保持枠242が変位しない。よって、防振装置270の耐衝撃性が向上される。
【0051】
図6は、撮像装置100のブロック図である。撮像装置100は、本体CPU322と、本体CPU322に直接または間接に接続された要素により形成される。
【0052】
本体CPU322には、システムメモリ110およびメインメモリ112が接続される。システムメモリ110は、不揮発性記録媒体および読出専用記録媒体の少なくとも一方を含み、本体CPU322が実行するファームウエア等を、電力の供給なしに保持する。メインメモリ112はRAMを含み、本体CPU322の作業領域として使用される。
【0053】
本体CPU322には、撮像部120も接続される。撮像部120は、撮像素子駆動部122、撮像素子330、アナログデジタル変換回路124および画像処理回路324を含む。撮像素子330は、撮像素子駆動部122に特定のタイミングで駆動され、被写体像を光電変換して画像信号を出力する。
【0054】
撮像素子330から出力された画像信号は、アナログデジタル変換回路124により離散化され、画像処理回路324において画像データに変換される。画像処理回路324は、画像データを生成する過程で、画像のホワイトバランス、シャープネス、ガンマ、階調補正、圧縮等を調整する。
【0055】
画像処理回路324において生成された画像データは、二次記憶媒体130に格納して保存される。二次記憶媒体130としては、フラッシュメモリカード等の不揮発性記憶素子を備えた媒体が使用される。二次記憶媒体130の少なくとも一部は、カメラボディ300から着脱して交換できる。
【0056】
表示部340は、撮像した画像を表示する他、ライブビューモード、プレビューモード等では、レンズユニット200を通じて形成された被写体像を画像として表示する。また、ユーザの指示した設定値等を表示する場合もある。
【0057】
また、本体CPU322には、鏡筒CPU250、焦点検出センサ382および測光センサ390が接続される。焦点検出センサ382は、レンズユニット200の光学系が形成した被写体像から合焦位置を検出し、撮像素子330上に入射光束が結像するように、鏡筒CPU250に指示をする。測光センサ390は、入射光束の一部を受光して被写体輝度を検出し、適切な絞り開度、シャッタ速度等を算出する。
【0058】
一方、レンズユニット200においては、鏡筒CPU250に対して、変位センサ274の出力が接続される。また、鏡筒CPU250が、合焦アクチュエータ駆動部252、防振アクチュエータ駆動部254および係止アクチュエータ駆動部256を制御する。更に、鏡筒CPU250は、本体CPU322と通信して、本体CPU322と協働する。
【0059】
合焦アクチュエータ駆動部252は、合焦アクチュエータ280に駆動電流を供給してレンズ230等を光軸X方向に起動させる。また、レンズ230と連動するエンコーダを参照して、レンズ230の移動量も管理する。
【0060】
防振アクチュエータ駆動部254は、防振アクチュエータ272に駆動電流を供給して、レンズユニット200の変位を打ち消すべくレンズ240を移動させる。更に、係止アクチュエータ駆動部256は、係止アクチュエータ271に駆動電流を供給して、保持枠242を固定または解放する。
【0061】
図7は、レンズユニット200における係止アクチュエータ駆動部256の制御手順の一部を示す流れ図である。レンズユニット200およびカメラボディ300を含む撮像装置100の電源が投入された場合、鏡筒CPU250は、撮像装置100が撮影モードに設定されているか否かを調べる(ステップS101)。
【0062】
撮像装置100が撮影モードに設定されていない場合(ステップS101:NO)、レンズユニット200は動作しないので、鏡筒CPU250は待機する。この場合、係止環276は、保持枠242を係止している。よって、防振装置270は、耐衝撃性が高い状態にある。
【0063】
一方、撮像装置100が撮影モードに設定されている場合(ステップS101:YES)、鏡筒CPU250は、カメラボディ300のレリーズボタンが押されたか否かを監視して、レリーズボタンが半押し状態になるまで待機する(ステップS102:NO)。レリーズボタンが半押し状態になったことが通知されると(ステップS102:YES)、鏡筒CPU250は、係止アクチュエータ駆動部256に指示して係止アクチュエータ271を逆転させ、係止環276による保持枠242の係止を解く(ステップS103)。
【0064】
続いて、鏡筒CPU250は、変位センサ274の出力を参照しつつ防振アクチュエータ駆動部254を起動させ、防振アクチュエータ272により保持枠242を移動させる防振制御を開始する(ステップS104)。次いで、鏡筒CPU250は、レリーズボタンが全押し状態になるまで防振制御を継続する(ステップS105:NO)。これにより、撮像装置100は防振制御下で撮影を実行できる。
【0065】
また、鏡筒CPU250は、レリーズボタンが半押し状態になると、本体CPU322との通信を通じて焦点検出センサ382の検出結果を獲得し、合焦アクチュエータ駆動部252を通じて合焦アクチュエータ280を動作させる。これにより、レンズユニット200の光学系が合焦する。
【0066】
レリーズボタンが全押しされると(ステップS105:YES)、鏡筒CPU250は、本体CPU322からその旨を通知される。撮影完了を検知した鏡筒CPU250は、予め定められた待機時間を撮影完了から計測し(ステップS106:NO)、待機時間が経過すると(ステップS106:YES)係止アクチュエータ駆動部256に指示を出して、係止アクチュエータ271を動作させる。これにより、保持枠242は、再び係止環276により固定される(ステップS107)。
【0067】
こうして、保持枠242を固定した鏡筒CPU250は、撮像装置100の電源が遮断されているか否かを調べる(ステップS108)。撮像装置100の電源が依然として投入されており(ステップS108:NO)、撮像装置100の稼働状態が継続している場合、鏡筒CPU250は、再びステップS101に戻り、撮像装置100に撮影モードが設定されているか否かを調べる。一方、撮像装置100の電源が遮断されている場合は(ステップS108:YES)、保持枠242を固定したまま制御を終了する。
【0068】
図8は、鏡筒CPU250による他の制御手順を示す流れ図である。図示の制御手順は、図7に示した制御と並列的に実行される。
【0069】
撮像装置100が稼働状態になると、鏡筒CPU250は、保持枠242が係止環276による固定から解放されているか否かの監視を継続する(ステップS201:NO)。保持枠242が係止環276から解放されて移動可能な状態にある場合(ステップS201:YES)、鏡筒CPU250は、防振制御のために参照している変位センサ274の出力から、レンズユニット200が落下しているか否かを監視し続ける(ステップS202:NO)。
【0070】
レンズユニット200の落下が検出された場合(ステップS202:YES)、鏡筒CPU250は、合焦アクチュエータ駆動部252および防振アクチュエータ駆動部254への指令に優先して、係止アクチュエータ駆動部256に、保持枠242を即座に固定することを指示する(ステップS203)。
【0071】
これにより、保持枠242は、係止環276により固定部材278に固定され、耐衝撃性が高い状態で落下する。よって、地面、床等に衝突した場合にレンズ240が他の部材に衝突して損傷することが防止される。
【0072】
なお、レンズユニット200の落下は、変位センサ274の出力から検出することができる。即ち、防振装置270が動作している場合、変位センサ274の出力は刻々と変化する。また、変位センサ274が検出する角速度は、ヨー方向およびピッチ方向について、それぞれ独立して変化する。
【0073】
しかしながら、レンズユニット200およびそれを含む撮像装置100が落下した場合は、両方の角速度が連続して一方向に振れる。よって、予め定めた閾値以上の角速度が連続して検出された場合に、その連続時間に対して予め設定した閾値により、落下が生じたか否かを判断できる。
【0074】
落下を検出した鏡筒CPU250は、合焦アクチュエータ280に指示して、レンズ230を、レンズ220から遠ざける(ステップS204)。これにより、落下の衝撃でレンズ220、230どうしが接触することが防止される。
【0075】
なお、図7を参照して説明したように、ステップS106において待機時間が経過した後に、保持枠242は係止され、レンズ240は固定される。よって、上記のように落下の検出(ステップS202)からレンズ240の固定およびレンズ220、230の離間(ステップS203、S204)が完了するまでの時間は、ステップS106における待機時間よりも短い。
【0076】
上記のようにレンズユニット200の落下を検出した場合、鏡筒CPU250による制御は、上記ステップS204で終了する。よって、保持枠242は固定されたままになる。また、レンズ230は、レンズ220から離間した状態になり、合焦しない。これは、撮像装置100の電源を投入しなおす等、撮像装置100全体、あるいは、レンズユニット200をリセットするまで維持される。
【0077】
このように、撮像装置100におけるレンズユニット200は、落下を検出した場合に防振装置270のレンズ240を機械的に固定すると共に、レンズ220、230相互の間隔を広くして落下耐性を向上させている。なお、上記の例では、図8に係る一連の制御(ステップS201〜204)を鏡筒CPU250が制御すると記載したが、これらの処理の一部または全部を本体CPU322が実行してもよい。
【0078】
また、上記のような制御手順を、記録媒体または通信回線を通じてソフトウエアとして提供することにより、防振装置270を備えた既存のハードウェアにおいて一連の処理を実行させることもできる。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0081】
100 撮像装置、110 システムメモリ、112 メインメモリ、120 撮像部、122 撮像素子駆動部、124 アナログデジタル変換回路、130 二次記憶媒体、200 レンズユニット、210 固定筒、220、230、232、234、240 レンズ、242 保持枠、243 係止溝、250 鏡筒CPU、252 合焦アクチュエータ駆動部、254 防振アクチュエータ駆動部、256 係止アクチュエータ駆動部、260 レンズマウント、270 防振装置、271 係止アクチュエータ、272 防振アクチュエータ、274 変位センサ、275 弾性部材、276 係止環、277、279 突起、278 固定部材、280 合焦アクチュエータ、300 カメラボディ、320 主基板、322 本体CPU、324 画像処理回路、330 撮像素子、332 ローパスフィルタ、340 表示部、350 ファインダ、352 フォーカシングスクリーン、354 ペンタプリズム、356 ファインダ光学系、360 ボディマウント、370 ミラーユニット、371 メインミラー、372 メインミラー保持枠、373 メインミラー回動軸、374 サブミラー、375 サブミラー保持枠、376 サブミラー回動軸、380 合焦光学系、382 焦点検出センサ、390 測光センサ、400 シャッタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に対して移動可能に支持された光学部材と、
前記光学部材を前記本体に対して駆動する駆動部と、
前記本体の落下を検知する落下検知部と、
前記落下検知部が前記本体の落下を検知した場合に、前記光学部材と機械的に係合して前記光学部材の前記本体に対する移動を規制する規制部材と
を備える光学機器。
【請求項2】
前記駆動部は、前記落下検知部が前記本体の振動を検出した場合に、当該振動を打ち消すべく前記光学部材を駆動する請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記規制部材は、前記光学部材の非稼働待機期間に前記光学部材を機械的に係止する係止部材で前記光学部材を係止して移動を規制する請求項2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記係止部材は、前記光学部材を移動可能な範囲の中央に向かって移動させた後に前記光学部材を係止する請求項3に記載の光学機器。
【請求項5】
前記規制部は、前記落下検知部が前記本体の落下を検知した場合に、前記光学部材が前記非稼働待機期間に係止されるよりも早く前記光学部材を係止する請求項3または請求項4に記載の光学機器。
【請求項6】
前記光学部材とは異なる他の光学部材を更に備え、
前記駆動部は、前記落下検知部が前記本体の落下を検知した場合に、前記光学部材および前記他の光学部材を相互に離間させるべく前記光学部材を駆動する請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項7】
本体と、
前記本体内に収容された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材のうちの少なくとも一つを前記本体に対して駆動する駆動部と、
落下を検知する落下検知部と、
前記落下検知部による落下を検知した場合に、前記少なくとも一つの光学部材を他の光学部材から離間した位置に保持すべく前記駆動部を制御する制御部と
を備える光学機器。
【請求項8】
本体と、
前記本体に対して移動可能に支持された光学部材と、
前記光学部材を前記本体に対して駆動する駆動部と、
前記本体の落下を検知する落下検知部と、
前記光学部材と機械的に係合して前記光学部材の前記本体に対する移動を規制する規制部材と
を備える光学機器を制御する制御方法であって、
前記落下検知部が前記本体の落下を検知した場合に、前記規制部材に前記光学部材の移動を規制させる制御方法。
【請求項9】
本体と、
前記本体に対して移動可能に支持された光学部材と、
前記光学部材を前記本体に対して駆動する駆動部と、
前記本体の落下を検知する落下検知部と、
前記光学部材と機械的に係合して前記光学部材の前記本体に対する移動を規制する規制部材と
を備える光学機器を制御する制御プログラムであって、
前記落下検知部が前記本体の落下を検知した場合に、前記規制部材に前記光学部材の移動を規制させる制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−220865(P2012−220865A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88941(P2011−88941)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】