説明

光学機器

【課題】光学部材の駆動状態に応じて生成されるパルスを計測して位置検出を行う場合に、パルスの誤カウントを防止して位置検出精度を高める。
【解決手段】2相カウンタ302は、光学部材の駆動状態に応じて、位相の異なる複数のパルスを発生させるエンコーダからの該パルスを計数し、1相カウンタ304、318は各相のパルスを計数する。モード決定部300は複数のパルスのいずれかを用いて検出される光学部材の駆動速度が閾値を超える場合、1相カウンタ304、318によって各相のパルスをカウントする第1のモードに変更し、また光学部材の駆動速度が閾値以下である場合、2相カウンタ302によって複数のパルスをカウントする第2のモードに変更する。第1のモードにて1相カウンタ304、318の出力から得られる位置検出信号および第2のモードにて2相カウンタ302の出力から得られる位置検出信号に基づいて光学部材が駆動制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の駆動状態に応じて生成されるパルスの計数によって位置を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ズーム駆動装置では、モータの回転速度に比例した周波数の2相アナログ信号を出力するように構成した光検出部(フォトインタラプタ)やパルス板が使用され、2相アナログ信号の位相が90度ずれるように配置される。2値化した、位相差が90度の2相パルスをカウントすることで、ズームレンズの位置を検出できる。2相パルスのカウントにて両パルスのH出力とL出力の組み合せがどのように遷移するかを併せて監視することで、回転方向が検出できる。その反面、位相関係が正しくない場合、パルスの誤カウントが生じる。特に、フォトインタラプタ等の光半導体では個体差によるバラツキや、取り付け誤差に起因する出力のバラツキが問題となる。光検出部の出力とそれを2値化するコンパレータのスレッシュレベルとの関係に支障を来たした場合、所望の位相関係をもつ2相パルスが得られず、パルスを正しくカウントできなくなってしまう。
【0003】
さらに、昨今のデジタルカメラの動向として、動画記録中に光学ズームを駆動するニーズが増しており、そのためにはズーム駆動モータを極力低速で駆動する必要がある。ズームモータにDC(直流)モータを用いて低速で速度制御を行う場合、モータの1回転当たりのパルス数を上げることで制御性が向上する。しかし、1回転当たりのパルス数を増やすと、通常の速度や高速での駆動の場合にエンコーダパルスの周波数が非常に高くなる。これにより、2相パルスの位相関係に支障を来たすおそれが生じる。
特許文献1には、フォトインタラプタ等の出力である、2値化前のアナログ信号の振幅の実効値を元に、2値化のためのスレッシュレベルを決定することでパルスのデューティ比を一定に保つ方法が開示されている。2値化のためのスレッシュレベルをフォトインタラプタ等の出力に応じて変更し、またLED電流を制御して2値化前のアナログ信号の信号レベルを調整することにより、パルスのデューティ比とともに位相差を均一に保つことができる。よってフォトインタラプタの出力のバラツキ等によりパルスの位相関係が狂うことで起こる誤カウントを防止できる。また特許文献2では、高速時に、2値化されたパルスの計数値により制御を行い、低速時や目標位置に近付いた場合、2値化前のアナログ信号をサンプリングし、位置検出精度を細かくする方法が開示されている。これにより位置検出精度や分解能は高まるが、高速駆動時にパルスの誤カウントが起こる可能性が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−245554号公報
【特許文献2】特開平6−168030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、2相パルスの位相関係を確保するためにカメラごとに振幅やスレッシュレベルの調整が必要である。そのため、カメラ動作中にこれらの調整を行うシーケンスや、処理時間が必要となり、起動時間が長引くことや工場での調整工程では作業時間が増加するという問題がある。また、LED電流を可変制御する仕組みを導入する場合、アナログ回路の追加等が必要であるため、コスト面で不利であった。
そこで、本発明の目的は、光学部材の駆動状態に応じて生成されるパルスを計測して位置検出を行う場合に、パルスの誤カウントを防止して位置検出精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、光学部材の位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段による位置検出信号を用いて前記光学部材の駆動手段を制御する駆動制御手段を備えた光学機器であって、前記駆動手段による前記光学部材の駆動状態に応じて、位相の異なる複数のパルスを発生させる信号発生手段と、前記複数のパルスをカウントする多相カウンタと、前記複数のパルスのいずれかをカウントする1相カウンタと、前記複数のパルスのいずれかを用いて検出される前記光学部材の駆動速度が閾値を超える場合、前記1相カウンタによって前記複数のパルスのいずれかをカウントする第1のモードに変更し、前記光学部材の駆動速度が閾値以下である場合、前記多相カウンタによって前記複数のパルスをカウントする第2のモードに変更するモード決定手段を備える。前記位置検出手段は、前記第1のモードにて前記1相カウンタの出力から得られる前記光学部材の位置検出信号および前記第2のモードにて前記多相カウンタの出力から得られる前記光学部材の位置検出信号を前記駆動制御手段に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パルスの誤カウントを防止して位置検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図2乃至7と併せて本発明の第1実施形態を説明するために、ズーム駆動装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】ズームレンズの駆動部を例示する模式図である。
【図3】位相の異なる2つのパルスと周期A1乃至4を示す図である。
【図4】パルスエッジの時間間隔B1乃至4を示す(A)図と、時間間隔B5乃至8を示す(B)図である。
【図5】図1の位置検出部の構成例を示すブロック図である。
【図6】図5の2相カウンタの動作を説明する図である。
【図7】ズーム駆動装置の動作例を説明するフローチャートである。
【図8】第2実施形態における位置検出部の構成例を示すブロック図である。
【図9】第3実施形態における位置検出部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。本発明の実施形態に係る光学機器は撮像装置であり、撮像光学系を構成する光学部材の位置を検出し、位置検出信号を用いて光学部材の駆動手段を制御する。光学部材として、以下ではズームレンズを駆動対象とし、該レンズの移動をモータの駆動によって制御する構成例を説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るズーム駆動装置の構成例を示す。
ズームレンズ100は、図示しない撮像光学系を構成し、変倍動作に使用する。図1には便宜上、ズームレンズ100を単レンズで示すが、複数のレンズ群からなる。駆動部102はズームレンズ100を駆動するためのアクチュエータを備える。
2相エンコーダ120は、ズームレンズ100の駆動状態に応じて、位相の異なる複数のパルスを発生させる信号発生手段である。本例ではフォトインタラプタ204、206が使用され、ズーム駆動用のモータ202の回転速度に比例した周波数で所定の振幅をもつアナログ信号が出力される。
【0011】
図2は駆動部102の構成例を示し、図2(A)は上面図、図2(B)は側面図である。ズームレンズ100を繰り出し方向や繰り込み方向に移動させるモータ202はDCモータを用いる。フォトインタラプタ204、206は位置および速度を検出するセンサである。センサの投光部と受光部の間に遮光板が配置されるようにモータ202の回転軸には、パルス板208が取り付けられている。パルス板208は、センサの投光部から受光部(フォトダイオード)への光を透過する領域208aと、投光部から受光部への光を遮る領域208bが、回転軸の回りに交互に配置されている。モータ202が駆動されると、パルス板208の回転に伴って投光部からの光を受光部が受光する状態と、投光部からの光をパルス板208で遮る状態が繰り返される。それに応じてフォトインタラプタ204、206は、モータ202の回転速度に比例した周波数のアナログ信号を出力する。
【0012】
図1の2値化部108は2相エンコーダ120の出力するアナログ信号をH信号およびL信号に2値化し、速度判定部110、位相差検出部112、位置検出部114にそれぞれ送る。フォトインタラプタ204のアナログ出力を2値化することにより、図3に示す第1のパルス(以下、第1の相のパルスという)が得られる。またフォトインタラプタ206のアナログ出力を2値化することにより、第2のパルス(以下、第2の相のパルスという)が得られる。速度判定部110は、これらのパルスについて各エッジの到来周期(A1乃至A4)を検出する。各周期は以下の通りである。
・第1の周期A1:第1の相のパルスにて、その立下りエッジから次のパルスの立下りエッジまでの時間。
・第2の周期A2:第2の相のパルスにて、その立下りエッジから次のパルスの立下りエッジまでの時間。
・第3の周期A3:第1の相のパルスにて、その立上りエッジから次のパルスの立上りエッジまでの時間。
・第4の周期A4:第2の相のパルスにて、その立上りエッジから次のパルスの立上りエッジまでの時間。
速度判定部110は速度検出情報を駆動制御部104へ出力すると共に、モータ202の現在の駆動速度と、速度判定用の閾値との間で大小比較判定を行い、判定結果を位置検出部114へ出力する。
【0013】
駆動制御部104は、システム制御部106からの信号に従って駆動部102に対して駆動信号を出力する。速度判定部110が出力する速度検出信号を用いたフィードバッグ制御により、ズームレンズ100の駆動速度に係る演算処理が行われて、モータ202への駆動信号が生成される。本例では、目標速度と現在の速度との差分を取得し、比例(P)演算結果と積分(I)演算結果を加算して駆動信号を生成するPI制御によりズームレンズ100の速度制御が行われるものとする。
システム制御部106は駆動制御部104に対して、駆動速度等の駆動信号条件、および駆動開始や駆動終了の指令信号を送出する。
【0014】
位相差検出部112は、図4に示すように、第1の相のパルスと第2の相のパルスとの間の位相差を検出して、位置検出部114に出力する。図4(A)は第1の相のパルスが第2の相のパルスよりも進相である状態を示し、モータ202の回転方向はズームレンズ100の繰り出し方向に対応する。また図4(B)は第2の相のパルスが第1の相のパルスよりも進相である状態を示し、モータ202の回転方向はズームレンズ100の繰り込み方向に対応する。B1乃至8に示す時間間隔は下記の通りである。
・第1の時間間隔B1:第2の相のパルスの立上りエッジから第1の相のパルスの立下りエッジまでの時間。
・第2の時間間隔B2:第1の相のパルスの立下りエッジから第2の相のパルスの立下りエッジまでの時間。
・第3の時間間隔B3:第2の相のパルスの立下りエッジから第1の相のパルスの立上りエッジまでの時間。
・第4の時間間隔B4:第1の相のパルスの立上りエッジから第2の相のパルスの立上りエッジまでの時間。
・第5の時間間隔B5:第2の相のパルスの立上りエッジから第1の相のパルスの立上りエッジまでの時間。
・第6の時間間隔B6:第1の相のパルスの立上りエッジから第2の相のパルスの立下りエッジまでの時間。
・第7の時間間隔B7:第2の相のパルスの立下りエッジから第1の相のパルスの立下りエッジまでの時間。
・第8の時間間隔B8:第1の相のパルスの立下りエッジから第2の相のパルスの立上りエッジまでの時間。
【0015】
位相差検出部112は上記時間間隔B1乃至8を計測する。そしてズームレンズ100が繰り出し方向へ駆動されている場合、第1乃至4の時間間隔B1乃至4の全て、または、いずれかを所定の時間間隔(位相差判定用の閾値であり、以下、第1閾値という)と比較する。また、位相差検出部112は、ズームレンズ100が繰り込み方向へ駆動されている場合、第5乃至8の時間間隔B5乃至8の全て、または、いずれかを所定の時間間隔(以下、第2閾値という)と比較する。そして、これらの閾値との大小関係を示す信号は、位置検出部114に出力される。
位置検出部114は、2値化部108の出力である第1の相のパルス、および第2の相のパルスをカウントすることにより、ズームレンズ100の位置を検出してシステム制御部106へ出力する。
【0016】
図5は位置検出部114の構成例を示し、多相カウンタ(本例では2相カウンタ)と1相カウンタを備える。
速度判定部110からの速度判定信号、位相差検出部112からの位相差判定信号、システム制御部106からの駆動制御信号は、モード決定部300に入力される。モード決定部300はこれらの信号に基づいて、1相カウントモードでパルスをカウントするか、または2相カウントモードでパルスをカウントするかを決定し、決定したモードの指示信号を出力する。またモード決定部300は、2相カウントモードから1相カウントモードへの切替タイミングを示す第1の信号と、1相カウントモードから2相カウントモードへの切替タイミングを示す第2の信号を出力する。以下、第1の信号を第1のモード切替信号といい、第2の信号を第2のモード切替信号という。
【0017】
第1のモード切替信号は、以下の条件(1)乃至(3)のいずれかに従って生成されて1相カウンタ304および318、第1の記憶部308に出力される。
(1)2相カウントモードでのカウントの際に、速度判定部110によって現在のズーム速度が第1の速度閾値を超えたと判定されること。
または、
(2)位相差検出部112によって、ズームレンズ100の繰り出し動作時に、第1乃至4の時間間隔B1乃至4のいずれかが第1閾値未満であると判定されること、もしくは、
(3)位相差検出部112によって、ズームレンズ100の繰り込み動作時に、第5乃至8の時間間隔B5乃至8のいずれかが第2閾値未満である判定されること。
一方、第2のモード切替信号は、以下の条件(4)および(5)もしくは(6)に従って生成されて2相カウンタ302および第2の記憶部312に出力される。
(4)速度判定部110によって、現在のズーム速度が第2の速度閾値未満であると判定されること。
および、
(5)位相差検出部112によって、ズームレンズ100の繰り出し動作時に、時間間隔B1乃至4の全てが第1閾値以上であると判断されること、もしくは、
(6)位相差検出部112によって、ズームレンズ100の繰り込み動作時に、時間間隔B5乃至8の全てが第2閾値以上であると判断されること。
【0018】
2相カウンタ302は、カウントモードが2相カウントモードの場合、第1の相のパルスエッジと第2の相のパルスエッジが図4(A)に示す順序で入力されると、図6(A)に示すカウントアップ動作を行う。つまり2相カウンタ302は、パルスエッジが到来する毎に計数値を1だけ加算して出力する。一方、第1の相のパルスエッジと第2の相のパルスエッジが図4(B)に示す順序で入力された場合、図6(B)に示すカウントダウン動作が行われる。つまり、2相カウンタ302はパルスエッジが到来する毎に計数値を1だけ減算して出力する。2相カウンタ302の出力は第1の記憶部308と第2の加算部314に送られる。なお、2相カウンタ302は、第2のモード切替信号を受信した際、それまでの計数値をゼロに設定(クリア)する。
1相カウンタ304は、モード決定部300からモードの指示信号を受けて第1の相のパルスをカウントして加算部320に出力する。また1相カウンタ318は、モード決定部300からモードの指示信号を受けて第2の相のパルスをカウントして加算部320に出力する。加算部320は1相カウンタ304と318の各出力を加算し、加算結果を第1の加算部310に出力する。
【0019】
第1の記憶部308は第1のモード切替信号を受けて2相カウンタ302の出力する計数値を記憶し、加算部310に出力する。つまり、第1の記憶部308は2相カウントモードでカウントを行っている際、モード決定部300から第1のモード切替信号が通知された場合、そのときの2相カウンタ302の出力を保持する。加算部310は第1の記憶部308の計数値と加算部320の出力する計数値を加算し、加算結果を第2の記憶部312と出力切替部316に出力する。加算部310は、1相カウントモードにおいて、2相カウントモードから1相カウントモードへ切り替る直前での2相カウンタ302の計数値を引き継いで1相カウンタ304、318での計数値に加算する。これにより、加算部310の出力は1相カウントモードでの計数値となる。
第2の記憶部308は第2のモード切替信号を受けて加算部310の出力する計数値を記憶し、加算部314に出力する。つまり、第2の記憶部312は1相カウントモードでカウントを行っている際、モード決定部300から第2のモード切替信号を受信した場合、そのときの加算部310の出力を保持する。加算部314は第2の記憶部312の計数値と2相カウンタ302の計数値を加算し、加算結果を出力切替部316に出力する。加算部314は2相カウントモードにおいて、1相カウントモードから2相カウントモードへ切り替る直前での1相カウンタ304、318の計数値を引き継いで2相カウンタ302での計数値に加算する。これにより、加算部314の出力は2相カウントモードでの計数値となる。出力切替部316はモード決定部300が決定したモードを示す指示信号に従って、加算部310または314の出力を出力する。1相カウントモードの場合、加算部310の出力が位置検出部114の出力として選択され、また、2相カウントモードの場合、加算部314の出力が位置検出部114の出力として選択されるように出力信号の切替が行われる。
【0020】
1相カウントモードから2相カウントモードへの切替時には2相カウンタ302の計数値がゼロに設定される。また、2相カウントモードから1相カウントモードへの切替時には1相カウンタ304および318の計数値がゼロに設定される。モードの切替時点から次の切替時点までの区間でのパルス計数値は加算部310、314で加算される。最終的にズームレンズ100の位置検出信号となるパルス計数値が出力切替部316で選択される。
2相カウントモードにて、前記条件(1)乃至(3)のいずれかを満たす場合、即座に2相カウンタ302の計数値は第1の記憶部308に格納された後に、1相カウントモードへ切り替わる。その際、ズームレンズ100の駆動速度が初めて第1の速度閾値を超えたと判定された直後に、位置検出部114が最初に検出するパルスエッジ、および、それ以降に検出するパルスエッジについては1相カウントモードでカウント動作が行われる。1相カウンタ304および318の計数値と第1の記憶部308に格納された計数値は加算されて位置検出信号が出力される。また、1相カウントモードにて、前記条件(4)および(5)もしくは(6)を満たす場合、即座に加算部310の出力する計数値が第2の記憶部312に格納された後に、2相カウントモードへ切り替わる。その際、時間間隔B1乃至8の全て、または、いずれかが初めて所定の閾値以上と判定された直後に、位置検出部114が最初に検出するパルスエッジ、および、それ以降に検出するパルスエッジにつては2相カウントモードでカウントされる。2相カウンタ302の計数値と第2の記憶部312に格納された計数値は加算されて位置検出信号が出力される。
【0021】
次に図7を参照して、第1実施形態におけるズーム駆動装置の動作例について説明する。図7は主ルーチンの処理例を示すフローチャートであり、主としてシステム制御部106にて実行される。なお、本例では2相カウントモードから1相カウントモードへの切替処理と、その後の2相カウントモードへの切替処理を説明する。
システム制御部106は、駆動制御部104および位置検出部114に対して、ズームレンズ100の駆動方向とその目標速度、目標位置等の駆動条件を設定する(S102)。次に、位置検出部114は、現在のカウントモードを2相カウントモードに設定する(S104)。システム制御部106がズームレンズ100の駆動開始信号を出力すると(S106)、駆動制御部104を介してモータ202が駆動される。2相エンコーダ120が出力するパルスは、位置検出部114にて2相カウントモードでカウントされる。
位置検出部114は、位相差検出部112から位相差判定情報を取得する。図4で説明したパルスエッジの時間間隔B1乃至B8が所定の閾値(図にはαと記す)よりも小さいか否かが判定され(S108)、当該時間間隔が閾値未満の場合、S112へ進む。また当該時間間隔が閾値以上の場合、S110に進む。S108で用いる位相差情報は時間間隔B1乃至8であり、前記のようにズームレンズ100が繰り出し方向に移動する場合、時間間隔B1乃至4のいずれかが閾値未満であるか否かについて判定される。またズームレンズ100が繰り込み方向に移動する場合、時間間隔B5乃至8のいずれかが閾値未満であるか否かについて判定される。
【0022】
S110で位置検出部114は速度判定部110からの速度判定情報を取得する。ズームレンズ100の駆動速度が第1の速度閾値(図にはβと記す)を超えている場合、S112に進む。またズームレンズ100の駆動速度が第1の速度閾値以下の場合、S108に戻る。
S112では、それまで2相カウンタ302がカウントした値を、第1の記憶部308が保持する。そして、1相カウンタ304はリセットされて、その計数値がゼロに設定され(S114)、カウントモードが1相カウントモードに変更される(S116)。次のS118では、ズームレンズ100の駆動速度が第2の速度閾値(図にはγと記す。γ<βである。)と比較される。当該駆動速度がγ未満になった場合、S120に進み、当該駆動速度がγ以上の場合にはS118の判定が繰り返されて待ち処理となる。
S120では、図4で説明したパルスエッジの時間間隔B1乃至B8が所定の閾値α以上であるか否かが判定される。つまり、前記のようにズームレンズ100が繰り出し方向に移動する場合、時間間隔B1乃至4の全てが閾値以上であるか否かについて判定される。またズームレンズ100が繰り込み方向に移動する場合、時間間隔B5乃至8の全てが閾値以上であるか否かについて判定される。これらの時間間隔がα以上の場合、S122に進み、α未満の場合にはS120の判定が繰り返されて待ち処理となる。
【0023】
S122でモード決定部300はカウントモードを2相カウントモードに変更し、S124に進み、ズームレンズ100が停止する(S124)。1相カウントモードから2相カウントモードへの切替処理は、モータ202の停止直前にショートブレーキをかけた後で行われる。そしてリターン処理となり、再び、ズームレンズ100の駆動開始信号の出力待ちの状態となる。
上記のように、モード決定部300は、速度判定信号、位相差判定信号と、駆動制御信号に基いてカウントモードを決定する。速度判定信号はズームレンズ100の駆動速度と速度判定用の閾値との比較結果を示し、位相差判定信号は前記時間間隔B1乃至B8と位相差判定用の閾値との比較結果を示す。ズームレンズ100の駆動速度が閾値βよりも大きいことを判定条件の1つとして(図7のS110参照)、1相カウントモードへの変更が行われる。また当該駆動速度が閾値γよりも小さいことを判定条件の1つとして(図7のS118参照)、2相カウントモードへの変更が行われる。
【0024】
位相差情報については、ズームレンズ100の繰り出し動作時に、前記時間間隔B1乃至4のいずれかが閾値α未満であることを判定条件の1つとして、1相カウントモードへの変更が行われる。また繰り出し動作時にズームレンズ100の駆動速度が閾値γ未満であって、かつ前記時間間隔B5乃至8の全てが閾値α以上であることを判定条件として、2相カウントモードへの変更が行われる。一方、ズームレンズ100の繰り込み動作時には、前記時間間隔B5乃至8のいずれかが閾値α未満であることを判定条件の1つとして、1相カウントモードへの変更が行われる。また繰り込み動作時のズームレンズ100の駆動速度が速度判定用の閾値未満であって、かつ、前記時間間隔B5乃至8の全てが位相差判定用の閾値以上であることを判定条件として、2相モードへの変更が行われる。
レンズを低速で駆動させるときの速度の制御性を向上させるために、モータの1回転当たりのパルス数を増加させた場合、高速駆動時に2相エンコーダの出力信号の周波数が高くなると、2相パルスの位相関係に狂いが生じるおそれがある。このような場合でも、本実施形態に係る上記モード切替処理によって、フォトインタラプタの個体差や機構部の組立のバラツキを考慮することなく、パルスの誤カウントを防止してレンズ位置を正確に検出することができる。
【0025】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態の場合と同様の構成要素については既に使用した符号を用いることで、それらの詳細な説明を省略する。このことは後述する別の実施形態でも同様である。
図8は、位置検出部114の構成例を示すブロック図である。本例では1つの1相カウンタ304を備えており、入力切替部306を介して第1の相のパルスまたは第2の相のパルスが入力される。つまり、入力切替部306は、第1の相のパルスと第2の相のパルスの一方を選択して1相カウンタ304へ送る。2相カウントモードから1相カウントモードへの切替の際、ズームレンズ100の駆動速度が第1の速度閾値を超えたと判定された後で、最初に検出するパルスエッジの相と異なる相のパルスが入力切替部306で選択される。該パルスを1相カウンタ304がカウントする。
【0026】
1相カウンタ304は、1相カウントモードにて、システム制御部106が駆動制御部104に対して出力するズームレンズ100の駆動方向を指示する信号が繰り出し方向を示す場合、入力されるパルスエッジが到来する毎に計数値に2を加算して出力する。すなわち、到来したパルスエッジの数の2倍の値が計数値として加算される。また、システム制御部106が駆動制御部104に対して出力するズームレンズ100の駆動方向を指示する信号が繰り込み方向を示す場合、1相カウンタ304は、入力されるパルスエッジが到来する毎に計数値から2を減算して出力する。すなわち、到来したパルスエッジの数の2倍の値が計数値として減算される。さらに、1相カウンタ304は、第1のモード切替信号によってそれまでの計数値をゼロに設定(クリア)する。1相カウンタ304の出力は加算部310に送られ、第1の記憶部308の出力する計数値と加算される。
第2実施形態では、1相カウンタ304を1つ備えており、第1の相のパルスまたは第2の相のパルスが入力され、到来したパルスエッジの数の2倍の値が計数値として出力される。第2実施形態によれば、第1実施形態に比較して構成を簡素化できるので、コスト低減に寄与する。
【0027】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態を説明する。
図9は位置検出部の構成例を示す。
第1の相のパルスと第2の相のパルスは入力切替部322に入力される(図にはトランスファ接点の記号で示す)。これらの入力信号については、2相カウンタ302と1相カウンタ304との間で排他的に切替制御が行われる。すなわち、入力切替部322はモード決定部300から第1のモード切替信号を受信した場合、第1および第2の相のパルスを入力切替部306に送る。入力切替部306で選択された方のパルスは1相カウンタ304に入力され、そのカウント出力は加算部314に出力される。一方、入力切替部322はモード決定部300から第2のモード切替信号を受信した場合、第1および第2の相のパルスを2相カウンタ302に送る。加算部314は、2相カウンタ302の出力と、1相カウンタ304の出力を単純に加算して出力することで、最終的にズームレンズ100の位置検出信号としてのパルス計数値を出力する。但し、その場合、1相カウントモードから2相カウントモードへの切替を行うタイミング、および2相カウントモードから1相カウントモードへの切替を行うタイミングは、常に所定のパルスエッジの直後となるように規定する必要がある。
第3実施形態では、2相カウンタ302と1相カウンタ304への排他的な入力切替制御を行うことにより、構成を簡単化できるので部品点数の削減およびコスト低減に寄与する。
【符号の説明】
【0028】
100 ズームレンズ
102 駆動部
104 駆動制御部
106 システム制御部
110 速度判定部
112 位相差検出部
114 位置検出部
202 モータ
204,206 フォトインタラプタ
208 パルス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材の位置を検出する位置検出手段と、該位置検出手段による位置検出信号を用いて前記光学部材の駆動手段を制御する駆動制御手段を備えた光学機器であって、
前記駆動手段による前記光学部材の駆動状態に応じて、位相の異なる複数のパルスを発生させる信号発生手段と、
前記複数のパルスをカウントする多相カウンタと、
前記複数のパルスのいずれかをカウントする1相カウンタと、
前記複数のパルスのいずれかを用いて検出される前記光学部材の駆動速度が閾値を超える場合、前記1相カウンタによって前記複数のパルスのいずれかをカウントする第1のモードに変更し、前記光学部材の駆動速度が閾値以下である場合、前記多相カウンタによって前記複数のパルスをカウントする第2のモードに変更するモード決定手段を備え、
前記位置検出手段は、前記第1のモードにて前記1相カウンタの出力から得られる前記光学部材の位置検出信号および前記第2のモードにて前記多相カウンタの出力から得られる前記光学部材の位置検出信号を前記駆動制御手段に出力することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記多相カウンタは前記信号発生手段からの第1のパルスと第2のパルスをカウントする2相カウンタであり、
前記第1のパルスまたは前記第2のパルスの周期、あるいは前記第1のパルスおよび前記第2のパルスの周期を検出することで取得される前記光学部材の駆動速度を閾値と比較して判定結果を前記モード決定手段に出力する速度判定手段を備えており、
前記速度判定手段によって前記光学部材の駆動速度が前記閾値を超えると判定された場合、前記1相カウンタは前記第1のパルスまたは前記第2のパルスをカウントし、前記速度判定手段によって前記光学部材の駆動速度が前記閾値以下であると判定された場合、前記2相カウンタは前記第1のパルスおよび前記第2のパルスをカウントすることを特徴とする請求項1記載の光学機器。
【請求項3】
前記複数のパルスの間の位相差を検出する位相差検出手段をさらに備え、
前記位相差検出手段によって検出される位相差のいずれかが閾値未満である場合、前記モード決定手段は前記第2のモードから前記第1のモードに変更することを特徴とする請求項2記載の光学機器。
【請求項4】
前記複数のパルスの間の位相差を検出する位相差検出手段をさらに備え、
前記モード決定手段は、前記光学部材の駆動速度が速度判定用の閾値以下であって、かつ前記位相差検出手段によって検出される位相差の全てが位相差判定用の閾値以上である場合、前記第1のモードから前記第2のモードに変更することを特徴とする請求項2記載の光学機器。
【請求項5】
前記光学部材は撮像光学系の変倍動作を行うレンズであり、
前記駆動手段は前記レンズを駆動するモータであって該レンズを繰り出し方向および繰り込み方向に移動させることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の光学機器。
【請求項6】
前記位相差検出手段は、
前記第2のパルスの立上りエッジから前記第1のパルスの立下りエッジまでの時間である第1の時間間隔と、
前記第1のパルスの立下りエッジから前記第2のパルスの立下りエッジまでの時間である第2の時間間隔と、
前記第2のパルスの立下りエッジから前記第1のパルスの立上りエッジまでの時間である第3の時間間隔と、
前記第1のパルスの立上りエッジから前記第2のパルスの立上りエッジまでの時間である第4の時間間隔を計測し、
前記第2のモードにて前記レンズが前記モータによって繰り出し方向に移動する場合、前記モード決定手段は、前記第1乃至4の時間間隔のいずれかが閾値未満であると判定すると前記第1のモードに変更することを特徴とする請求項5記載の光学機器。
【請求項7】
前記位相差検出手段は、
前記第2のパルスの立上りエッジから前記第1のパルスの立上りエッジまでの時間である第5の時間間隔と、
前記第1のパルスの立上りエッジから前記第2のパルスの立下りエッジまでの時間である第6の時間間隔と、
前記第2のパルスの立下りエッジから前記第1のパルスの立下りエッジまでの時間である第7の時間間隔と、
前記第1のパルスの立下りエッジから前記第2のパルスの立上りエッジまでの時間である第8の時間間隔を計測し、
前記第2のモードにて前記レンズが前記モータによって繰り込み方向に移動する場合、前記モード決定手段は、前記第5乃至8の時間間隔のいずれかが閾値未満であると判定すると前記第1のモードに変更することを特徴とする請求項5記載の光学機器。
【請求項8】
前記モード決定手段は、前記第1のモードにて前記レンズが前記モータによって繰り出し方向に移動する場合、前記レンズの駆動速度が速度判定用の閾値未満であって、かつ前記第1乃至4の時間間隔の全てが位相差判定用の閾値以上であると判定すると前記第2のモードに変更することを特徴とする請求項6記載の光学機器。
【請求項9】
前記モード決定手段は、前記第1のモードにて前記レンズが前記モータによって繰り込み方向に移動する場合、前記レンズの駆動速度が速度判定用の閾値未満であって、かつ前記第5乃至8の時間間隔の全てが位相差判定用の閾値以上であると判定すると前記第2のモードに変更することを特徴とする請求項7記載の光学機器。
【請求項10】
前記モード決定手段は、前記第2のモードから前記第1のモードに変更する第1のモード切替信号と、前記第1のモードから前記第2のモードに変更する第2のモード切替え信号を出力し、
前記第1のモード切替信号を受けて前記2相カウンタの出力する計数値を記憶する第1の記憶手段と、
前記1相カウンタの出力する計数値と前記第1の記憶手段に記憶された計数値を加算する第1の加算手段と、
前記第2のモード切替信号を受けて前記第1の加算手段の出力する計数値を記憶する第2の記憶手段と、
前記2相カウンタの出力する計数値と前記第2の記憶手段に記憶された計数値を加算する第2の加算手段と、
前記第1のモードでは前記第1の加算手段の出力する計数値を選択し、前記第2のモードでは前記第2の加算手段の出力する計数値を選択して出力する出力切替手段を備えることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項記載の光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−252176(P2012−252176A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124900(P2011−124900)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】