光学素子、撮像光学系及び撮像装置
【課題】赤色領域における良好な色再現性を実現すると共に小型化を図る。
【解決手段】基材が赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成され、基材の両面に分光特性を調整する多層膜が形成され、以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにした。(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95(2)615<λLT50%<670(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05(4)680≦λLR50%但し、TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率、TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率、λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長、TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率、λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長、とし、波長の単位はnmとする。
【解決手段】基材が赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成され、基材の両面に分光特性を調整する多層膜が形成され、以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにした。(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95(2)615<λLT50%<670(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05(4)680≦λLR50%但し、TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率、TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率、λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長、TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率、λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長、とし、波長の単位はnmとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子、撮像光学系及び撮像装置についての技術分野に関する。詳しくは、撮像素子に入射する光の分光特性を調整して赤色領域における良好な色再現性等の実現を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置において、画像や映像の高画質化を確保した上での小型化の要求が高まっている。
【0003】
この要求に応えるべく、撮像装置の撮像素子として、高密度CCD(Charge Coupled Device)や高密度CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)を搭載した上で、撮像光学系を小型化した撮像装置が提案されている。
【0004】
一般に、撮像素子を用いた撮像光学系において、高画質化を図る手段として高解像度化を実現している技術が多く知られている。一方、高解像度化以外に高画質化を図るために、画像や映像の良好な色再現性を確保することが重要であり、良好な色再現性の確保には光路上に配置される光学素子の分光特性が大きく影響する。
【0005】
例えば、従来の撮像装置として、赤外線の吸収作用を有する光学素子が撮像光学系の光路上に配置されたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような光学素子を有する撮像装置にあっては、上記したように、光学素子の良好な分光特性を確保する必要がある。
【0006】
また、撮像光学系やこれを含むレンズ鏡筒の小型化に伴い、レンズ鏡筒を構成する光学要素、特に、多層膜によって紫外線や赤外線を干渉させる光学素子における光の反射に起因する反射ゴーストが発生し易い状況となっている。従って、反射ゴーストの発生を抑制することが高画質化と小型化を両立させるために重要である。
【0007】
図10乃至図12は、従来の光学素子における分光特性を示すグラフ図である。各図において、上段のグラフ図は波長と分光透過率の関係を示し、下段のグラフ図は波長と各面における分光反射率との関係を示している。下段のグラフ図において、「A面」とあるのは光学素子における物体側を向く面であり、「B面」とあるのは光学素子における像側を向く面である。
【0008】
図10は、基材として白板ガラスが用いられ基材の物体側を向く面に分光調整用の多層膜が形成され基材の像側を向く面に反射防止膜が形成された光学素子についての測定値を示している。
【0009】
図11及び図12は、それぞれ基材として赤外線吸収ガラスが用いられ基材の物体側を向く面に分光調整用の多層膜が形成され基材の像側を向く面に反射防止膜が形成された2種類の光学素子についての測定値を示している。
【0010】
図10に示すように、基材として白板ガラスが用いられた光学素子にあっては、基材が赤外線吸収作用を有していないため、650nm付近において分光透過率が急激に変化している。従って、図11及び図12に示した光学素子に比し、不必要な光が撮像素子に入射されてしまう。
【0011】
また、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域は約600nm乃至約680nmであることが知られているが、図10乃至図12に示した何れの光学素子にあっても、この波長領域において分光反射率が高くされており、赤色の反射ゴーストが発生し易い状況にある。
【0012】
【特許文献1】特開2004−345680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
赤外線の吸収作用を有する光学素子が配置された従来の撮像装置においては、高画質化を実現するための高解像度化は図られているが、上記したように、赤色の反射ゴーストの発生により、色再現性の確保が不十分であると言う問題がある。
【0014】
また、撮像光学系の光路上に配置された光学素子は一定の厚みを有するが、光学素子の厚みにより、撮像装置の十分な小型化を実現することができないと言う問題もあった。
【0015】
そこで、本発明光学素子、撮像光学系及び撮像装置は、上記した問題点を克服し、赤色領域における良好な色再現性を実現すると共に小型化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
光学素子は、上記した課題を解決するために、撮像光学系の光路上に配置され、基材が赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成され、前記基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ分光特性を調整する多層膜が形成され、分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしたものである。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0017】
従って、光学素子にあっては、基材によって赤外線が吸収されると共に多層膜によって分光特性が調整され赤色領域における分光反射率が低下する。
【0018】
上記した光学素子においては、撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置することが望ましい。
【0019】
撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置することにより、主光線と周辺光線の距離が近付く位置に配置される。
【0020】
上記した光学素子においては、前記物体側を向く面と前記像側を向く面における分光反射率が以下の条件式(5)を満足するようにすることが望ましい。
(5)λLR50%[A]≧λLR50%[B]
但し、
λLR50%[A]:物体側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
λLR50%[B]:像側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とする。
【0021】
条件式(5)を満足するようにすることにより、赤色波長領域から近赤外領域の分光反射率及び反射波長領域が、像側を向く面の方が物体側を向く面よりも大きくなる。
【0022】
上記した光学素子においては、前記基材と該基材の両面にそれぞれ形成された多層膜との合計した厚みを120μm以下とすることが望ましい。
【0023】
基材と多層膜との合計した厚みを120μm以下とすることにより、薄型化される。
【0024】
上記した光学素子においては、前記基材をポリオレフィン系樹脂によって形成することが望ましい。
【0025】
基材をポリオレフィン系樹脂によって形成することにより、優れた光学性能、耐熱性及び低吸水性が確保される。
【0026】
上記した光学素子においては、前記基材に赤外線吸収作用を有する着色剤として有機系の色素を少なくとも1種類含有することが望ましい。
【0027】
基材に赤外線吸収作用を有する着色剤として有機系の色素を少なくとも1種類含有することにより、基材に対する着色剤の良好な混合性が確保される。
【0028】
撮像光学系は、上記した課題を解決するために、光路上に少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子が配置され、前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしたものである。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0029】
従って、撮像光学系にあっては、基材によって赤外線が吸収されると共に多層膜によって分光特性が調整され赤色領域における分光反射率が低下する。
【0030】
撮像装置は、上記した課題を解決するために、光路上に配置された少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子を有する撮像光学系を備え、前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしたものである。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0031】
従って、撮像装置にあっては、基材によって赤外線が吸収されると共に多層膜によって分光特性が調整され赤色領域における分光反射率が低下する。
【発明の効果】
【0032】
本発明光学素子は、撮像光学系の光路上に配置され、基材が赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成され、前記基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ分光特性を調整する多層膜が形成され、分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0033】
従って、赤色領域における良好な色再現性を実現することができると共に小型化を図ることができる。
【0034】
請求項2に記載した発明にあっては、撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置されたので、撮像光学系の解像度の劣化を抑制することが可能となる上、製造上や温度変化において懸念があるバックフォーカスのズレ量に関しても小さくすることができる。
【0035】
請求項3に記載した発明にあっては、前記物体側を向く面と前記像側を向く面における分光反射率が以下の条件式(5)を満足する。
(5)λLR50%[A]≧λLR50%[B]
但し、
λLR50%[A]:物体側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
λLR50%[B]:像側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とする。
【0036】
従って、赤色のゴーストの発生を抑制して画質の向上を図ることができる。
【0037】
請求項4に記載した発明にあっては、前記基材と該基材の両面にそれぞれ形成された多層膜との合計した厚みを120μm以下としたので、十分な薄型化を図ることができる。
【0038】
請求項5に記載した発明にあっては、前記基材をポリオレフィン系樹脂によって形成したので、過酷な温度条件や過酷な湿度条件の下で使用された場合においても良好な特性を確保することができる。
【0039】
請求項6に記載した発明にあっては、前記基材に赤外線吸収作用を有する着色剤として有機系の色素を少なくとも1種類含有したので、基材に対する着色剤の良好な混合性が確保され、基材に着色剤を均一に混合することができる。
【0040】
本発明撮像光学系は、光路上に少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子が配置され、前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0041】
従って、赤色領域における良好な色再現性を実現することができると共に小型化を図ることができる。
【0042】
本発明撮像装置は、光路上に配置された少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子を有する撮像光学系を備え、前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0043】
従って、赤色領域における良好な色再現性を実現することができると共に小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、本発明光学素子、撮像光学系及び撮像装置の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0045】
以下に示した実施の形態は、本発明撮像装置をデジタルスチルカメラに適用し、本発明撮像光学系をこのデジタルスチルカメラに備えられた撮像光学系に適用し、本発明光学素子をこの撮像光学系に備えられた光学素子に適用したものである。
【0046】
尚、本発明の適用範囲はデジタルスチルカメラ、これに備えられた撮像光学系及びこれに備えられた光学素子に限られることはない。本発明は、例えば、デジタルビデオカメラ、携帯電話やパーソナルコンピューターやPDA(Personal Digital Assistant)等に組み込まれたカメラ、これらの各種のカメラに備えられた撮像光学系及びこれらの各種の撮像光学系に備えられた光学素子に広く適用することができる。
【0047】
[全体構成]
撮像装置(デジタルスチルカメラ)1は、図1に示すように、例えば、五つのレンズ群2、2、・・・とCCDやCMOS等の撮像素子3が光路上に配置されている。図1には、撮像装置1の例として5群構成のタイプを示しているが、撮像装置1のレンズ群2の数は任意である。最も物体側に位置するレンズ群(第1レンズ群)2には光路を90°折り曲げるプリズム2aが配置されている。
【0048】
撮像素子3は光路上の最も像側に配置されている。
【0049】
最も像側に配置されたレンズ群(第5レンズ群)2における最も像側に位置するレンズ2bと撮像素子3の間には光学素子4が配置されている。
【0050】
光学素子4と撮像素子3の間にはカバーガラス5が配置されている。物体側から像側へ向けて3番目に配置されたレンズ群(第3レンズ群)2の像側には開口絞り6が配置されている。
【0051】
撮像装置1にあっては、上記のようなレンズ群2、2、・・・、撮像素子3、光学素子4、カバーガラス5及び開口絞り6等によって撮像光学系が構成されている。
【0052】
このようなプリズム2aを有する撮像装置1にあっては、プリズム2aによって光路が直角に折り曲げられるため、薄型化を図ることができる。
【0053】
[光学素子の構成]
光学素子4は赤外線吸収作用を有し、図2に示すように、フィルム状の樹脂材料によって形成された基材8と該基材8の物体側を向く面及び像側を向く面の両面にそれぞれ形成された多層膜9、10とから成る。
【0054】
光学素子4にあっては、基材8がフィルム状の材料によって形成されているため、十分な薄型化を図ることができる。従って、撮像光学系及び撮像装置1の小型化を図ることが可能であり、特に、非撮影時にレンズ鏡筒を収納し撮影時にレンズ鏡筒を突出させる所謂沈胴タイプの撮像装置において、非撮影時における薄型化を図ることが可能である。
【0055】
尚、光学素子4の基材8と多層膜9、10の合計の厚みを120μm以下にすると、上記した薄型化の利点が特に顕著になるので好ましい。
【0056】
基材8は赤外線吸収作用を有している。具体的には、赤色波長領域から近赤外線領域(約540nm乃至約700nm)に吸収特性を有している。
【0057】
従って、撮像素子3に入射する光の分光強度のバランス(例えば、青色領域、緑色領域、赤色領域の光強度のバランス)を最適に調整することが可能になり、画像及び映像のホワイトバランス調整や色再現を良好に行うことが可能である。
【0058】
また、過度な電気的色調整を行うことによる色ノイズの発生を防止することも可能となる。
【0059】
さらに、撮像光学系における不要な光の反射により発生し画質の劣化を生じるおそれがある赤色の反射ゴーストの発生を抑制することができるため、高画質化を図ることが可能となる。
【0060】
さらにまた、光学素子4には基材8の両面に分光特性を調整する多層膜9、10が形成されているため、基材8が有する近赤外領域の吸収特性だけでは不十分な分光特性の微調整を行うことができる。従って、画像及び映像における色調整を最適に行うことができる透過分光特性を確保することができる。
【0061】
加えて、基材8の両面に多層膜9、10が形成されているため、基材8を剛性の低いフイルム状の樹脂材料によって形成した場合においても、多層膜9、10による応力を基材8の両面側において均衡させることができる。従って、反りや湾曲の発生を極限まで抑制して光学素子4の平面精度の向上を図ることが可能となり、撮像光学系の光学性能の劣化を防止することができると共に反射ゴーストの発生を抑制することができる。
【0062】
尚、上記した光学素子4の平面精度の向上と言う効果を最大限に発揮させるためには、多層膜9、10の層数を略同じにし、基材8の両面側における応力のバランスを保つことが望ましい。
【0063】
光学素子4は、分光透過率及び物体側を向く面と像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するように構成されている。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0064】
条件式(1)乃至条件式(3)は、光学素子4の赤色波長領域から近赤外領域における分光透過特性を規定する式である。
【0065】
条件式(1)の上限又は下限を超えると、波長600nm付近の光の光量がその領域以外の可視光領域の光量に対して過剰にアンバランスになるため、色再現におけるホワイトバランス調整が困難になる。また、画像処理に伴う過剰な電気信号ゲインにより、色ノイズが大幅に発生し易くなり画質の劣化を来たしてしまう。
【0066】
条件式(2)の上限を超えると、光学素子4において赤外線透過のカットオフ波長が長くなり過ぎてしまい、近赤外領域の光の透過光量及び透過波長領域が多くなり過ぎるため、画像や映像の十分な色調整を行うことができなくなる。例えば、ホワイトバランス調整が困難となったり、目視では認識できない赤外領域の光を撮像素子3が感光してしまうと言う不具合が発生する。
【0067】
逆に、条件式(2)の下限を超えると、光学素子4において赤外線透過のカットオフ波長が短くなり過ぎてしまい、赤色領域の光の透過光量及び透過波長領域が少なくなり過ぎるため、画像や映像の十分な色調整を行うことができなくなる。特に、赤色や紫色の色再現性に悪影響を及ぼし易くなる。
【0068】
条件式(3)の上限を超えると、波長700nm付近の光の光量が多くなり過ぎてしまい、撮像素子3に入射する近赤外領域の光量が多くなり過ぎるため、出力される画像や映像の、特に、赤色や黒色の色再現性に悪影響を及ぼしてしまう。例えば、ホワイトバランス調整が困難となったり、目視では認識できない赤外領域の光を撮像素子3が感光してしまうと言う不具合が発生する。
【0069】
条件式(4)は、光学素子4の赤色波長領域から近赤外領域における分光反射特性を規定する式である。
【0070】
条件式(4)の下限を超えると、光学素子4における赤色領域から赤外線領域の分光反射率及び反射波長領域が大きくなり過ぎてしまい、光学素子4における光の反射に起因する赤色の反射ゴーストが顕著に発生し易くなり、大幅な画質の劣化を来たしてしまう。赤色の反射ゴーストは、例えば、撮像素子3や撮像光学系のレンズと光学素子4との間における反射によって発生する。
【0071】
また、赤色の反射ゴーストは、ゴーストの発生要因となる光の光学素子4に対する入射角が大きくなるに従って多層膜9、10が光学素子4に入射する光に干渉する影響が大きくなるため、発生頻度が高くなってしまう。従って、撮像光学系及び撮像装置1の小型化を図ったときに、ゴーストの発生要因となる光の光学素子4に対する入射角が大きくなったり、光学素子4に入射される光の密度が高くなった場合には、特に、赤色の反射ゴーストが発生し易くなってしまう。
【0072】
以上に記載した通り、光学素子4が条件式(1)乃至条件式(4)を満足することにより、赤色の反射ゴーストの発生の抑制、良好なホワイトバランスの確保及び赤色領域における良好な色再現性の実現を図ることができ、画質の大幅な向上を図ることが可能となる。特に、上記したように、撮像装置1の小型化に起因してゴーストの発生要因となる光の光学素子4に対する入射角が大きくなったり、入射される光の密度が高くなった場合においても、条件式(1)乃至条件式(4)を満足することにより、赤色領域における良好な色再現性を確保することができる。
【0073】
撮像素子1にあっては、光学素子4を撮像光学系の最も像側に配置されたレンズ2bと撮像素子3の間に配置している。
【0074】
このように光学素子4をレンズ2bと撮像素子3の間に配置することにより、主光線と周辺光線の距離が離れる開口絞り6付近に光学素子4を配置する場合に比し、球面収差の乱れや劣化を軽減することができる。従って、撮像光学系の解像度の劣化を抑制することが可能となる上、製造上や温度変化において懸念があるバックフォーカスのズレ量に関しても小さくすることができる。
【0075】
また、一般に、撮像素子を有する撮像装置にあっては、撮像光学系における像面照度を均一にするために、像側テレセントリック系に近付くように設計される。このように像側テレセントリック系に近付くように設計された場合には、撮像光学系の小型化を図る場合に、光学設計上、撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置スペースを形成することが比較的容易である。
【0076】
従って、撮像装置1のように、光学素子4を光路上の最も像側に配置されたレンズ2bと撮像素子3の間に配置することにより、比較的容易に形成可能な配置スペースに光学素子4が配置され、撮像装置1の小型化を容易に図ることができる。
【0077】
撮像装置1にあっては、光学素子4の物体側を向く面と像側を向く面における分光反射率が以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)λLR50%[A]≧λLR50%[B]
但し、
λLR50%[A]:物体側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
λLR50%[B]:像側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とする。
【0078】
条件式(5)は、光学素子4の配置の向きを規定する式である。即ち、赤色波長領域から近赤外領域の分光反射率の高い面が撮像素子3側を向くように光学素子4を配置することを規定している。
【0079】
条件式(5)に反して各面の向きが反対の状態で光学素子4が配置された場合には、赤色波長領域から近赤外領域の分光反射率及び反射波長領域が、物体側を向く面の方が像側を向く面よりも大きくなってしまう。従って、光学素子4よりも物体側に配置されているレンズ2、2、・・・等の光学部材との間の反射による赤色の反射ゴーストの発生頻度が高くなり画質の劣化を来たしてしまう。
【0080】
尚、条件式(5)を満足する向きで光学素子4が配置されている場合においても、光学素子4の像側を向く面と撮像素子3の間での反射ゴーストが発生する可能性がある。しかしながら、条件式(5)に反する向きで光学素子4が配置された場合と比較すると、光を反射する部材の枚数に伴う反射ゴーストのパターンの数、入射光の角度条件、画像や映像に反映されるゴーストの像の大きさや形状を考慮すると、光学素子4が条件式(5)を満足する向きで配置された方が高画質化を図ることができる。
【0081】
また、条件式(5)を満足する向きで光学素子4が配置されたときの反射ゴーストの発生による画質の低下は、光学素子4が条件式(1)乃至条件式(4)を満足することにより防止することが可能である。
【0082】
光学素子4は基材8がフィルム状の樹脂材料によって形成されているが、基材8の材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂を用いることが望ましい。
【0083】
ポリオレフィン系樹脂は、優れた光学性能(高い透過性、低複屈折性、高いアッベ数等)、耐熱性、低吸水性と言う特性を有している。従って、基材8をポリオレフィン系樹脂によって形成することにより、撮像装置1が過酷な温度条件や過酷な湿度条件の下で使用された場合においても、光学素子4の良好な特性を確保することができる。
【0084】
また、ポリオレフィン系樹脂は、従来において基材の材料として用いられていた赤外線吸収ガラスよりも安価である。従って、基材8をポリオレフィン系樹脂によって形成することにより、撮像装置1及び撮像光学系の製造コストの低減を図ることができる。
【0085】
さらに、ポリオレフィン系樹脂は成形性においても優れた特性を有しているため、例えば、基材として赤外線吸収ガラスを用いる場合に比し、光学素子4の薄型化を図ることができ、厚みを、例えば、120μm以下にして撮像装置1及び撮像光学系の小型化を図ることができる。
【0086】
上記のように、光学素子4の基材8としてポリオレフィン系樹脂を用いた場合に、赤外線吸収材料として近赤外領域の光吸収特性を有する有機系の色素である着色材料、例えば、アントシアニン色素やシアニン系色素を混合させることが望ましい。
【0087】
例えば、アントシアニン系色素は、耐熱性、耐光性に関する改善の報告が多くされており(例えば、特開2003−292810号公報)、厳しい温度条件下でも安定した信頼性を期待できる上、天然系着色料であるため、合成着色料では実現が難しい環境への配慮も容易に達成することが可能となる。
【0088】
また、赤外線吸収材料として有機系の色素を用いたときには、ポリオレフィン系樹脂に対する着色剤の良好な混合性を確保することができる。
【0089】
尚、上記には、五つのレンズ群2、2、・・・を有する撮像装置1を例として示したが、光学素子4は、例えば、以下に示すような撮像装置1A又は撮像装置1Bに設けられていてもよい(図3及び図4参照)。
【0090】
撮像装置1Aは、図3に示すように、例えば、三つのレンズ群2A、2A、2AとCCDやCMOS等の撮像素子3が光路上に配置されている。
【0091】
最も像側に配置されたレンズ群(第3レンズ群)2Aにおける最も像側に位置するレンズ2cと撮像素子3の間には光学素子4が配置されている。
【0092】
光学素子4と撮像素子3の間にはカバーガラス5が配置されている。物体側から像側へ向けて2番目に配置されたレンズ群(第2レンズ群)2Aの像側には開口絞り6が配置されている。
【0093】
撮像装置1Aにあっては、上記のようなレンズ群2A、2A、2A、撮像素子3、光学素子4、カバーガラス5及び開口絞り6等によって撮像光学系が構成されている。
【0094】
撮像装置1Bは、図4に示すように、例えば、四つのレンズ群2B、2B、・・・とCCDやCMOS等の撮像素子3が光路上に配置されている。
【0095】
最も像側に配置されたレンズ群(第4レンズ群)2Bにおける最も像側に位置するレンズ2dと撮像素子3の間には光学素子4が配置されている。
【0096】
光学素子4と撮像素子3の間にはローパスフィルター7とカバーガラス5が物体側から順に配置されている。物体側から像側へ向けて3番目に配置されたレンズ群(第3レンズ群)2Bの物体側には開口絞り6が配置されている。
【0097】
撮像装置1Bにあっては、上記のようなレンズ群2B、2B、・・・、撮像素子3、光学素子4、カバーガラス5、開口絞り6及びローパスフィルター7等によって撮像光学系が構成されている。
【0098】
このようなローパスフィルター7を有する撮像装置1Bにあっては、ローパスフィルター7によってモアレ縞の発生を防止することができる。
【0099】
[実施例]
以下に、光学素子4の具体的な実施例について説明する(図5乃至図7参照)。尚、以下に示す第1の実施例、第2の実施例及び第3の実施例における光学素子4は、何れも厚みが100μmとされている。図5乃至図7に示すグラフ図において、上段のグラフ図は波長と分光透過率の関係を示し、下段のグラフ図は波長と各面における分光反射率との関係を示している。下段のグラフ図において、「A面」とあるのは光学素子4における物体側を向く面であり、「B面」とあるのは光学素子4における像側を向く面である。
【0100】
図5は、第1の実施例を示すグラフ図である。
【0101】
第1の実施例においては、
(1)TIRCF(600)/TIRCF(540)=0.906
(2)λLT50%=650nm
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|=0.002
(4)λLR50%=729nm、697nm
(5)λLR50%[A]=729nm、λLR50%[B]=697nm
とされ、条件式(1)、条件式(2)、条件式(3)、条件式(4)及び条件式(5)を満足するようにされている。
【0102】
図5に示すように、第1の実施例においては、赤色領域(波長約600nm乃至約700nm)において、長波長側に近付くに従って分光透過率が緩やかに低下している。
【0103】
また、分光反射率が、A面、B面とも、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域である約600nm乃至約680nmにおいては低く、それより長波長側において高くされている。
【0104】
従って、第1の実施例にあっては、良好なホワイトバランスを確保することができると共に赤色領域における良好な色再現性を実現することができる。
【0105】
図6は、第2の実施例を示すグラフ図である。
【0106】
第2の実施例においては、
(1)TIRCF(600)/TIRCF(540)=0.946
(2)λLT50%=655nm
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|=0.002
(4)λLR50%=729nm、697nm
(5)λLR50%[A]=729nm、λLR50%[B]=697nm
とされ、条件式(1)、条件式(2)、条件式(3)、条件式(4)及び条件式(5)を満足するようにされている。
【0107】
図6に示すように、第2の実施例においては、赤色領域(波長約600nm乃至約700nm)において、長波長側に近付くに従って分光透過率が緩やかに低下している。
【0108】
また、分光反射率が、A面、B面とも、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域である約600nm乃至約680nmにおいては低く、それより長波長側において高くされている。
【0109】
従って、第2の実施例にあっては、良好なホワイトバランスを確保することができると共に赤色領域における良好な色再現性を実現することができる。
【0110】
図7は、第3の実施例を示すグラフ図である。
【0111】
第3の実施例においては、
(1)TIRCF(600)/TIRCF(540)=0.807
(2)λLT50%=622nm
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|=0.0001
(4)λLR50%=739nm、694nm
(5)λLR50%[A]=739nm、λLR50%[B]=694nm
とされ、条件式(1)、条件式(2)、条件式(3)、条件式(4)及び条件式(5)を満足するようにされている。
【0112】
図7に示すように、第3の実施例においては、赤色領域(波長約600nm乃至約700nm)において、長波長側に近付くに従って分光透過率が緩やかに低下している。
【0113】
また、分光反射率が、A面、B面とも、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域である約600nm乃至約680nmにおいては低く、それより長波長側において高くされている。
【0114】
従って、第3の実施例にあっては、良好なホワイトバランスを確保することができると共に赤色領域における良好な色再現性を実現することができる。
【0115】
尚、図8に、一例として、従来の光学素子(図10に示した例)と第1の実施例における光学素子4との分光反射率を比較して示す。
【0116】
図8に示すように、従来の光学素子においては、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域である約600nm乃至約680nm(範囲P)において分光反射率が高くされているが、光学素子4においては、約600nm乃至約680nmより長波長側で分光反射率が高くされている。
【0117】
このように光学素子4を用いることにより、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域より長波長側で分光反射率が高くなるため、赤色の反射ゴーストの発生が抑制され、良好なホワイトバランスを確保することができると共に赤色領域における良好な色再現性を実現することができる。
【0118】
[多層膜の構成例]
表1に多層膜の構成の一例を示す。表中の「面」において、「A」とあるのは、光学素子4における物体側を向く面を示し、「B」とあるのは、光学素子4における像側を向く面を示している。表1に示した光学素子4の多層膜9は層数が19層とされ多層膜10は層数が17層とされている。
【0119】
【表1】
【0120】
[撮像装置の一実施形態]
図9に、本発明撮像装置の一実施形態によるデジタルスチルカメラのブロック図を示す。
【0121】
撮像装置(デジタルスチルカメラ)100は、カメラブロック10、カメラ信号処理部20、画像処理部30、LCD(Liquid Crystal Display)40、R/W(リーダ/ライタ)50、CPU(Central Processing Unit)60、入力部70及びレンズ駆動制御部80を備えている。
【0122】
カメラブロック10は撮像機能を担い、カメラ信号処理部20は撮影された画像信号のアナログ−デジタル変換等の信号処理を行い、画像処理部30は画像信号の記録再生処理を行い、LCD40は撮影された画像等を表示する。R/W50はメモリーカード1000への画像信号の書込及び読出を行い、CPU60は撮像装置100の全体を制御し、入力部70はユーザーによって所要の操作が行われる各種のスイッチ等から成り、レンズ駆動制御部80はカメラブロック10に配置されたレンズの駆動を制御する。
【0123】
カメラブロック10は、ズームレンズ11を含む撮像光学系や、CCDやCMOS等の撮像素子12等とによって構成されている。
【0124】
カメラ信号処理部20は、撮像素子12からの出力信号に対するデジタル信号への変換、ノイズ除去、画質補正、輝度・色差信号への変換等の各種の信号処理を行う。
【0125】
画像処理部30は、所定の画像データーフォーマットに基づく画像信号の圧縮符号化・伸張復号化処理や解像度等のデーター仕様の変換処理等を行う。
【0126】
LCD40はユーザーの入力部70に対する操作状態や撮影した画像等の各種のデーターを表示する機能を有している。
【0127】
R/W50は、画像処理部30によって符号化された画像データーのメモリーカード1000への書込及びメモリーカード1000に記録された画像データーの読出を行う。
【0128】
CPU60は、撮像装置100に設けられた各回路ブロックを制御する制御処理部として機能し、入力部70からの指示入力信号等に基づいて各回路ブロックを制御する。
【0129】
入力部70は、例えば、シャッター操作を行うためのシャッターレリーズボタンや、動作モードを選択するための選択スイッチ等によって構成され、ユーザーによる操作に応じた指示入力信号をCPU60に対して出力する。
【0130】
レンズ駆動制御部80は、CPU60からの制御信号に基づいてズームレンズ11の各レンズを駆動する図示しないモータ等を制御する。
【0131】
メモリーカード1000は、例えば、R/W50に接続されたスロットに対して着脱可能な半導体メモリーである。
【0132】
以下に、撮像装置100における動作を説明する。
【0133】
撮影の待機状態では、CPU60による制御の下で、カメラブロック10において撮影された画像信号が、カメラ信号処理部20を介してLCD40に出力され、カメラスルー画像として表示される。また、入力部70からのズーミングのための指示入力信号が入力されると、CPU60がレンズ駆動制御部80に制御信号を出力し、レンズ駆動制御部80の制御に基づいてズームレンズ11の所定のレンズが移動される。
【0134】
入力部70からの指示入力信号によりカメラブロック10の図示しないシャッターが動作されると、撮影された画像信号がカメラ信号処理部20から画像処理部30に出力されて圧縮符号化処理され、所定のデーターフォーマットのデジタルデーターに変換される。変換されたデーターはR/W50に出力され、メモリーカード1000に書き込まれる。
【0135】
尚、フォーカシングは、例えば、入力部50のシャッターレリーズボタンが半押しされた場合や記録(撮影)のために全押しされた場合等に、CPU60からの制御信号に基づいてレンズ駆動制御部80がズームレンズ11の所定のレンズを移動させることにより行われる。
【0136】
メモリーカード1000に記録された画像データーを再生する場合には、入力部70に対する操作に応じて、R/W50によってメモリーカード1000から所定の画像データーが読み出され、画像処理部30によって伸張復号化処理が行われた後、再生画像信号がLCD40に出力されて再生画像が表示される。
【0137】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図2乃至図9と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、撮像装置の構成を示す概念図である。
【図2】光学素子の構成を示す概念図である。
【図3】別の撮像装置の構成を示す概念図である。
【図4】また別の撮像装置の構成を示す概念図である。
【図5】第1の実施例における光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図6】第2の実施例における光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図7】第3の実施例における光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図8】従来の光学素子と第1の実施例における光学素子とについて、分光反射特性を比較して示すグラフ図である。
【図9】本発明撮像装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図10】従来の光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図11】従来の別の光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図12】従来のまた別の光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0139】
1…撮像装置、2…レンズ群、2b…レンズ、3…撮像素子、4…光学素子、1A…撮像装置、2A…レンズ群、2c…レンズ、1B…撮像装置、2B…レンズ群、2d…レンズ、100…撮像装置、12…撮像素子
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子、撮像光学系及び撮像装置についての技術分野に関する。詳しくは、撮像素子に入射する光の分光特性を調整して赤色領域における良好な色再現性等の実現を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置において、画像や映像の高画質化を確保した上での小型化の要求が高まっている。
【0003】
この要求に応えるべく、撮像装置の撮像素子として、高密度CCD(Charge Coupled Device)や高密度CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)を搭載した上で、撮像光学系を小型化した撮像装置が提案されている。
【0004】
一般に、撮像素子を用いた撮像光学系において、高画質化を図る手段として高解像度化を実現している技術が多く知られている。一方、高解像度化以外に高画質化を図るために、画像や映像の良好な色再現性を確保することが重要であり、良好な色再現性の確保には光路上に配置される光学素子の分光特性が大きく影響する。
【0005】
例えば、従来の撮像装置として、赤外線の吸収作用を有する光学素子が撮像光学系の光路上に配置されたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような光学素子を有する撮像装置にあっては、上記したように、光学素子の良好な分光特性を確保する必要がある。
【0006】
また、撮像光学系やこれを含むレンズ鏡筒の小型化に伴い、レンズ鏡筒を構成する光学要素、特に、多層膜によって紫外線や赤外線を干渉させる光学素子における光の反射に起因する反射ゴーストが発生し易い状況となっている。従って、反射ゴーストの発生を抑制することが高画質化と小型化を両立させるために重要である。
【0007】
図10乃至図12は、従来の光学素子における分光特性を示すグラフ図である。各図において、上段のグラフ図は波長と分光透過率の関係を示し、下段のグラフ図は波長と各面における分光反射率との関係を示している。下段のグラフ図において、「A面」とあるのは光学素子における物体側を向く面であり、「B面」とあるのは光学素子における像側を向く面である。
【0008】
図10は、基材として白板ガラスが用いられ基材の物体側を向く面に分光調整用の多層膜が形成され基材の像側を向く面に反射防止膜が形成された光学素子についての測定値を示している。
【0009】
図11及び図12は、それぞれ基材として赤外線吸収ガラスが用いられ基材の物体側を向く面に分光調整用の多層膜が形成され基材の像側を向く面に反射防止膜が形成された2種類の光学素子についての測定値を示している。
【0010】
図10に示すように、基材として白板ガラスが用いられた光学素子にあっては、基材が赤外線吸収作用を有していないため、650nm付近において分光透過率が急激に変化している。従って、図11及び図12に示した光学素子に比し、不必要な光が撮像素子に入射されてしまう。
【0011】
また、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域は約600nm乃至約680nmであることが知られているが、図10乃至図12に示した何れの光学素子にあっても、この波長領域において分光反射率が高くされており、赤色の反射ゴーストが発生し易い状況にある。
【0012】
【特許文献1】特開2004−345680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
赤外線の吸収作用を有する光学素子が配置された従来の撮像装置においては、高画質化を実現するための高解像度化は図られているが、上記したように、赤色の反射ゴーストの発生により、色再現性の確保が不十分であると言う問題がある。
【0014】
また、撮像光学系の光路上に配置された光学素子は一定の厚みを有するが、光学素子の厚みにより、撮像装置の十分な小型化を実現することができないと言う問題もあった。
【0015】
そこで、本発明光学素子、撮像光学系及び撮像装置は、上記した問題点を克服し、赤色領域における良好な色再現性を実現すると共に小型化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
光学素子は、上記した課題を解決するために、撮像光学系の光路上に配置され、基材が赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成され、前記基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ分光特性を調整する多層膜が形成され、分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしたものである。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0017】
従って、光学素子にあっては、基材によって赤外線が吸収されると共に多層膜によって分光特性が調整され赤色領域における分光反射率が低下する。
【0018】
上記した光学素子においては、撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置することが望ましい。
【0019】
撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置することにより、主光線と周辺光線の距離が近付く位置に配置される。
【0020】
上記した光学素子においては、前記物体側を向く面と前記像側を向く面における分光反射率が以下の条件式(5)を満足するようにすることが望ましい。
(5)λLR50%[A]≧λLR50%[B]
但し、
λLR50%[A]:物体側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
λLR50%[B]:像側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とする。
【0021】
条件式(5)を満足するようにすることにより、赤色波長領域から近赤外領域の分光反射率及び反射波長領域が、像側を向く面の方が物体側を向く面よりも大きくなる。
【0022】
上記した光学素子においては、前記基材と該基材の両面にそれぞれ形成された多層膜との合計した厚みを120μm以下とすることが望ましい。
【0023】
基材と多層膜との合計した厚みを120μm以下とすることにより、薄型化される。
【0024】
上記した光学素子においては、前記基材をポリオレフィン系樹脂によって形成することが望ましい。
【0025】
基材をポリオレフィン系樹脂によって形成することにより、優れた光学性能、耐熱性及び低吸水性が確保される。
【0026】
上記した光学素子においては、前記基材に赤外線吸収作用を有する着色剤として有機系の色素を少なくとも1種類含有することが望ましい。
【0027】
基材に赤外線吸収作用を有する着色剤として有機系の色素を少なくとも1種類含有することにより、基材に対する着色剤の良好な混合性が確保される。
【0028】
撮像光学系は、上記した課題を解決するために、光路上に少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子が配置され、前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしたものである。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0029】
従って、撮像光学系にあっては、基材によって赤外線が吸収されると共に多層膜によって分光特性が調整され赤色領域における分光反射率が低下する。
【0030】
撮像装置は、上記した課題を解決するために、光路上に配置された少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子を有する撮像光学系を備え、前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するようにしたものである。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0031】
従って、撮像装置にあっては、基材によって赤外線が吸収されると共に多層膜によって分光特性が調整され赤色領域における分光反射率が低下する。
【発明の効果】
【0032】
本発明光学素子は、撮像光学系の光路上に配置され、基材が赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成され、前記基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ分光特性を調整する多層膜が形成され、分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0033】
従って、赤色領域における良好な色再現性を実現することができると共に小型化を図ることができる。
【0034】
請求項2に記載した発明にあっては、撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置されたので、撮像光学系の解像度の劣化を抑制することが可能となる上、製造上や温度変化において懸念があるバックフォーカスのズレ量に関しても小さくすることができる。
【0035】
請求項3に記載した発明にあっては、前記物体側を向く面と前記像側を向く面における分光反射率が以下の条件式(5)を満足する。
(5)λLR50%[A]≧λLR50%[B]
但し、
λLR50%[A]:物体側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
λLR50%[B]:像側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とする。
【0036】
従って、赤色のゴーストの発生を抑制して画質の向上を図ることができる。
【0037】
請求項4に記載した発明にあっては、前記基材と該基材の両面にそれぞれ形成された多層膜との合計した厚みを120μm以下としたので、十分な薄型化を図ることができる。
【0038】
請求項5に記載した発明にあっては、前記基材をポリオレフィン系樹脂によって形成したので、過酷な温度条件や過酷な湿度条件の下で使用された場合においても良好な特性を確保することができる。
【0039】
請求項6に記載した発明にあっては、前記基材に赤外線吸収作用を有する着色剤として有機系の色素を少なくとも1種類含有したので、基材に対する着色剤の良好な混合性が確保され、基材に着色剤を均一に混合することができる。
【0040】
本発明撮像光学系は、光路上に少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子が配置され、前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0041】
従って、赤色領域における良好な色再現性を実現することができると共に小型化を図ることができる。
【0042】
本発明撮像装置は、光路上に配置された少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子を有する撮像光学系を備え、前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0043】
従って、赤色領域における良好な色再現性を実現することができると共に小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、本発明光学素子、撮像光学系及び撮像装置の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0045】
以下に示した実施の形態は、本発明撮像装置をデジタルスチルカメラに適用し、本発明撮像光学系をこのデジタルスチルカメラに備えられた撮像光学系に適用し、本発明光学素子をこの撮像光学系に備えられた光学素子に適用したものである。
【0046】
尚、本発明の適用範囲はデジタルスチルカメラ、これに備えられた撮像光学系及びこれに備えられた光学素子に限られることはない。本発明は、例えば、デジタルビデオカメラ、携帯電話やパーソナルコンピューターやPDA(Personal Digital Assistant)等に組み込まれたカメラ、これらの各種のカメラに備えられた撮像光学系及びこれらの各種の撮像光学系に備えられた光学素子に広く適用することができる。
【0047】
[全体構成]
撮像装置(デジタルスチルカメラ)1は、図1に示すように、例えば、五つのレンズ群2、2、・・・とCCDやCMOS等の撮像素子3が光路上に配置されている。図1には、撮像装置1の例として5群構成のタイプを示しているが、撮像装置1のレンズ群2の数は任意である。最も物体側に位置するレンズ群(第1レンズ群)2には光路を90°折り曲げるプリズム2aが配置されている。
【0048】
撮像素子3は光路上の最も像側に配置されている。
【0049】
最も像側に配置されたレンズ群(第5レンズ群)2における最も像側に位置するレンズ2bと撮像素子3の間には光学素子4が配置されている。
【0050】
光学素子4と撮像素子3の間にはカバーガラス5が配置されている。物体側から像側へ向けて3番目に配置されたレンズ群(第3レンズ群)2の像側には開口絞り6が配置されている。
【0051】
撮像装置1にあっては、上記のようなレンズ群2、2、・・・、撮像素子3、光学素子4、カバーガラス5及び開口絞り6等によって撮像光学系が構成されている。
【0052】
このようなプリズム2aを有する撮像装置1にあっては、プリズム2aによって光路が直角に折り曲げられるため、薄型化を図ることができる。
【0053】
[光学素子の構成]
光学素子4は赤外線吸収作用を有し、図2に示すように、フィルム状の樹脂材料によって形成された基材8と該基材8の物体側を向く面及び像側を向く面の両面にそれぞれ形成された多層膜9、10とから成る。
【0054】
光学素子4にあっては、基材8がフィルム状の材料によって形成されているため、十分な薄型化を図ることができる。従って、撮像光学系及び撮像装置1の小型化を図ることが可能であり、特に、非撮影時にレンズ鏡筒を収納し撮影時にレンズ鏡筒を突出させる所謂沈胴タイプの撮像装置において、非撮影時における薄型化を図ることが可能である。
【0055】
尚、光学素子4の基材8と多層膜9、10の合計の厚みを120μm以下にすると、上記した薄型化の利点が特に顕著になるので好ましい。
【0056】
基材8は赤外線吸収作用を有している。具体的には、赤色波長領域から近赤外線領域(約540nm乃至約700nm)に吸収特性を有している。
【0057】
従って、撮像素子3に入射する光の分光強度のバランス(例えば、青色領域、緑色領域、赤色領域の光強度のバランス)を最適に調整することが可能になり、画像及び映像のホワイトバランス調整や色再現を良好に行うことが可能である。
【0058】
また、過度な電気的色調整を行うことによる色ノイズの発生を防止することも可能となる。
【0059】
さらに、撮像光学系における不要な光の反射により発生し画質の劣化を生じるおそれがある赤色の反射ゴーストの発生を抑制することができるため、高画質化を図ることが可能となる。
【0060】
さらにまた、光学素子4には基材8の両面に分光特性を調整する多層膜9、10が形成されているため、基材8が有する近赤外領域の吸収特性だけでは不十分な分光特性の微調整を行うことができる。従って、画像及び映像における色調整を最適に行うことができる透過分光特性を確保することができる。
【0061】
加えて、基材8の両面に多層膜9、10が形成されているため、基材8を剛性の低いフイルム状の樹脂材料によって形成した場合においても、多層膜9、10による応力を基材8の両面側において均衡させることができる。従って、反りや湾曲の発生を極限まで抑制して光学素子4の平面精度の向上を図ることが可能となり、撮像光学系の光学性能の劣化を防止することができると共に反射ゴーストの発生を抑制することができる。
【0062】
尚、上記した光学素子4の平面精度の向上と言う効果を最大限に発揮させるためには、多層膜9、10の層数を略同じにし、基材8の両面側における応力のバランスを保つことが望ましい。
【0063】
光学素子4は、分光透過率及び物体側を向く面と像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足するように構成されている。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【0064】
条件式(1)乃至条件式(3)は、光学素子4の赤色波長領域から近赤外領域における分光透過特性を規定する式である。
【0065】
条件式(1)の上限又は下限を超えると、波長600nm付近の光の光量がその領域以外の可視光領域の光量に対して過剰にアンバランスになるため、色再現におけるホワイトバランス調整が困難になる。また、画像処理に伴う過剰な電気信号ゲインにより、色ノイズが大幅に発生し易くなり画質の劣化を来たしてしまう。
【0066】
条件式(2)の上限を超えると、光学素子4において赤外線透過のカットオフ波長が長くなり過ぎてしまい、近赤外領域の光の透過光量及び透過波長領域が多くなり過ぎるため、画像や映像の十分な色調整を行うことができなくなる。例えば、ホワイトバランス調整が困難となったり、目視では認識できない赤外領域の光を撮像素子3が感光してしまうと言う不具合が発生する。
【0067】
逆に、条件式(2)の下限を超えると、光学素子4において赤外線透過のカットオフ波長が短くなり過ぎてしまい、赤色領域の光の透過光量及び透過波長領域が少なくなり過ぎるため、画像や映像の十分な色調整を行うことができなくなる。特に、赤色や紫色の色再現性に悪影響を及ぼし易くなる。
【0068】
条件式(3)の上限を超えると、波長700nm付近の光の光量が多くなり過ぎてしまい、撮像素子3に入射する近赤外領域の光量が多くなり過ぎるため、出力される画像や映像の、特に、赤色や黒色の色再現性に悪影響を及ぼしてしまう。例えば、ホワイトバランス調整が困難となったり、目視では認識できない赤外領域の光を撮像素子3が感光してしまうと言う不具合が発生する。
【0069】
条件式(4)は、光学素子4の赤色波長領域から近赤外領域における分光反射特性を規定する式である。
【0070】
条件式(4)の下限を超えると、光学素子4における赤色領域から赤外線領域の分光反射率及び反射波長領域が大きくなり過ぎてしまい、光学素子4における光の反射に起因する赤色の反射ゴーストが顕著に発生し易くなり、大幅な画質の劣化を来たしてしまう。赤色の反射ゴーストは、例えば、撮像素子3や撮像光学系のレンズと光学素子4との間における反射によって発生する。
【0071】
また、赤色の反射ゴーストは、ゴーストの発生要因となる光の光学素子4に対する入射角が大きくなるに従って多層膜9、10が光学素子4に入射する光に干渉する影響が大きくなるため、発生頻度が高くなってしまう。従って、撮像光学系及び撮像装置1の小型化を図ったときに、ゴーストの発生要因となる光の光学素子4に対する入射角が大きくなったり、光学素子4に入射される光の密度が高くなった場合には、特に、赤色の反射ゴーストが発生し易くなってしまう。
【0072】
以上に記載した通り、光学素子4が条件式(1)乃至条件式(4)を満足することにより、赤色の反射ゴーストの発生の抑制、良好なホワイトバランスの確保及び赤色領域における良好な色再現性の実現を図ることができ、画質の大幅な向上を図ることが可能となる。特に、上記したように、撮像装置1の小型化に起因してゴーストの発生要因となる光の光学素子4に対する入射角が大きくなったり、入射される光の密度が高くなった場合においても、条件式(1)乃至条件式(4)を満足することにより、赤色領域における良好な色再現性を確保することができる。
【0073】
撮像素子1にあっては、光学素子4を撮像光学系の最も像側に配置されたレンズ2bと撮像素子3の間に配置している。
【0074】
このように光学素子4をレンズ2bと撮像素子3の間に配置することにより、主光線と周辺光線の距離が離れる開口絞り6付近に光学素子4を配置する場合に比し、球面収差の乱れや劣化を軽減することができる。従って、撮像光学系の解像度の劣化を抑制することが可能となる上、製造上や温度変化において懸念があるバックフォーカスのズレ量に関しても小さくすることができる。
【0075】
また、一般に、撮像素子を有する撮像装置にあっては、撮像光学系における像面照度を均一にするために、像側テレセントリック系に近付くように設計される。このように像側テレセントリック系に近付くように設計された場合には、撮像光学系の小型化を図る場合に、光学設計上、撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置スペースを形成することが比較的容易である。
【0076】
従って、撮像装置1のように、光学素子4を光路上の最も像側に配置されたレンズ2bと撮像素子3の間に配置することにより、比較的容易に形成可能な配置スペースに光学素子4が配置され、撮像装置1の小型化を容易に図ることができる。
【0077】
撮像装置1にあっては、光学素子4の物体側を向く面と像側を向く面における分光反射率が以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)λLR50%[A]≧λLR50%[B]
但し、
λLR50%[A]:物体側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
λLR50%[B]:像側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とする。
【0078】
条件式(5)は、光学素子4の配置の向きを規定する式である。即ち、赤色波長領域から近赤外領域の分光反射率の高い面が撮像素子3側を向くように光学素子4を配置することを規定している。
【0079】
条件式(5)に反して各面の向きが反対の状態で光学素子4が配置された場合には、赤色波長領域から近赤外領域の分光反射率及び反射波長領域が、物体側を向く面の方が像側を向く面よりも大きくなってしまう。従って、光学素子4よりも物体側に配置されているレンズ2、2、・・・等の光学部材との間の反射による赤色の反射ゴーストの発生頻度が高くなり画質の劣化を来たしてしまう。
【0080】
尚、条件式(5)を満足する向きで光学素子4が配置されている場合においても、光学素子4の像側を向く面と撮像素子3の間での反射ゴーストが発生する可能性がある。しかしながら、条件式(5)に反する向きで光学素子4が配置された場合と比較すると、光を反射する部材の枚数に伴う反射ゴーストのパターンの数、入射光の角度条件、画像や映像に反映されるゴーストの像の大きさや形状を考慮すると、光学素子4が条件式(5)を満足する向きで配置された方が高画質化を図ることができる。
【0081】
また、条件式(5)を満足する向きで光学素子4が配置されたときの反射ゴーストの発生による画質の低下は、光学素子4が条件式(1)乃至条件式(4)を満足することにより防止することが可能である。
【0082】
光学素子4は基材8がフィルム状の樹脂材料によって形成されているが、基材8の材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂を用いることが望ましい。
【0083】
ポリオレフィン系樹脂は、優れた光学性能(高い透過性、低複屈折性、高いアッベ数等)、耐熱性、低吸水性と言う特性を有している。従って、基材8をポリオレフィン系樹脂によって形成することにより、撮像装置1が過酷な温度条件や過酷な湿度条件の下で使用された場合においても、光学素子4の良好な特性を確保することができる。
【0084】
また、ポリオレフィン系樹脂は、従来において基材の材料として用いられていた赤外線吸収ガラスよりも安価である。従って、基材8をポリオレフィン系樹脂によって形成することにより、撮像装置1及び撮像光学系の製造コストの低減を図ることができる。
【0085】
さらに、ポリオレフィン系樹脂は成形性においても優れた特性を有しているため、例えば、基材として赤外線吸収ガラスを用いる場合に比し、光学素子4の薄型化を図ることができ、厚みを、例えば、120μm以下にして撮像装置1及び撮像光学系の小型化を図ることができる。
【0086】
上記のように、光学素子4の基材8としてポリオレフィン系樹脂を用いた場合に、赤外線吸収材料として近赤外領域の光吸収特性を有する有機系の色素である着色材料、例えば、アントシアニン色素やシアニン系色素を混合させることが望ましい。
【0087】
例えば、アントシアニン系色素は、耐熱性、耐光性に関する改善の報告が多くされており(例えば、特開2003−292810号公報)、厳しい温度条件下でも安定した信頼性を期待できる上、天然系着色料であるため、合成着色料では実現が難しい環境への配慮も容易に達成することが可能となる。
【0088】
また、赤外線吸収材料として有機系の色素を用いたときには、ポリオレフィン系樹脂に対する着色剤の良好な混合性を確保することができる。
【0089】
尚、上記には、五つのレンズ群2、2、・・・を有する撮像装置1を例として示したが、光学素子4は、例えば、以下に示すような撮像装置1A又は撮像装置1Bに設けられていてもよい(図3及び図4参照)。
【0090】
撮像装置1Aは、図3に示すように、例えば、三つのレンズ群2A、2A、2AとCCDやCMOS等の撮像素子3が光路上に配置されている。
【0091】
最も像側に配置されたレンズ群(第3レンズ群)2Aにおける最も像側に位置するレンズ2cと撮像素子3の間には光学素子4が配置されている。
【0092】
光学素子4と撮像素子3の間にはカバーガラス5が配置されている。物体側から像側へ向けて2番目に配置されたレンズ群(第2レンズ群)2Aの像側には開口絞り6が配置されている。
【0093】
撮像装置1Aにあっては、上記のようなレンズ群2A、2A、2A、撮像素子3、光学素子4、カバーガラス5及び開口絞り6等によって撮像光学系が構成されている。
【0094】
撮像装置1Bは、図4に示すように、例えば、四つのレンズ群2B、2B、・・・とCCDやCMOS等の撮像素子3が光路上に配置されている。
【0095】
最も像側に配置されたレンズ群(第4レンズ群)2Bにおける最も像側に位置するレンズ2dと撮像素子3の間には光学素子4が配置されている。
【0096】
光学素子4と撮像素子3の間にはローパスフィルター7とカバーガラス5が物体側から順に配置されている。物体側から像側へ向けて3番目に配置されたレンズ群(第3レンズ群)2Bの物体側には開口絞り6が配置されている。
【0097】
撮像装置1Bにあっては、上記のようなレンズ群2B、2B、・・・、撮像素子3、光学素子4、カバーガラス5、開口絞り6及びローパスフィルター7等によって撮像光学系が構成されている。
【0098】
このようなローパスフィルター7を有する撮像装置1Bにあっては、ローパスフィルター7によってモアレ縞の発生を防止することができる。
【0099】
[実施例]
以下に、光学素子4の具体的な実施例について説明する(図5乃至図7参照)。尚、以下に示す第1の実施例、第2の実施例及び第3の実施例における光学素子4は、何れも厚みが100μmとされている。図5乃至図7に示すグラフ図において、上段のグラフ図は波長と分光透過率の関係を示し、下段のグラフ図は波長と各面における分光反射率との関係を示している。下段のグラフ図において、「A面」とあるのは光学素子4における物体側を向く面であり、「B面」とあるのは光学素子4における像側を向く面である。
【0100】
図5は、第1の実施例を示すグラフ図である。
【0101】
第1の実施例においては、
(1)TIRCF(600)/TIRCF(540)=0.906
(2)λLT50%=650nm
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|=0.002
(4)λLR50%=729nm、697nm
(5)λLR50%[A]=729nm、λLR50%[B]=697nm
とされ、条件式(1)、条件式(2)、条件式(3)、条件式(4)及び条件式(5)を満足するようにされている。
【0102】
図5に示すように、第1の実施例においては、赤色領域(波長約600nm乃至約700nm)において、長波長側に近付くに従って分光透過率が緩やかに低下している。
【0103】
また、分光反射率が、A面、B面とも、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域である約600nm乃至約680nmにおいては低く、それより長波長側において高くされている。
【0104】
従って、第1の実施例にあっては、良好なホワイトバランスを確保することができると共に赤色領域における良好な色再現性を実現することができる。
【0105】
図6は、第2の実施例を示すグラフ図である。
【0106】
第2の実施例においては、
(1)TIRCF(600)/TIRCF(540)=0.946
(2)λLT50%=655nm
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|=0.002
(4)λLR50%=729nm、697nm
(5)λLR50%[A]=729nm、λLR50%[B]=697nm
とされ、条件式(1)、条件式(2)、条件式(3)、条件式(4)及び条件式(5)を満足するようにされている。
【0107】
図6に示すように、第2の実施例においては、赤色領域(波長約600nm乃至約700nm)において、長波長側に近付くに従って分光透過率が緩やかに低下している。
【0108】
また、分光反射率が、A面、B面とも、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域である約600nm乃至約680nmにおいては低く、それより長波長側において高くされている。
【0109】
従って、第2の実施例にあっては、良好なホワイトバランスを確保することができると共に赤色領域における良好な色再現性を実現することができる。
【0110】
図7は、第3の実施例を示すグラフ図である。
【0111】
第3の実施例においては、
(1)TIRCF(600)/TIRCF(540)=0.807
(2)λLT50%=622nm
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|=0.0001
(4)λLR50%=739nm、694nm
(5)λLR50%[A]=739nm、λLR50%[B]=694nm
とされ、条件式(1)、条件式(2)、条件式(3)、条件式(4)及び条件式(5)を満足するようにされている。
【0112】
図7に示すように、第3の実施例においては、赤色領域(波長約600nm乃至約700nm)において、長波長側に近付くに従って分光透過率が緩やかに低下している。
【0113】
また、分光反射率が、A面、B面とも、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域である約600nm乃至約680nmにおいては低く、それより長波長側において高くされている。
【0114】
従って、第3の実施例にあっては、良好なホワイトバランスを確保することができると共に赤色領域における良好な色再現性を実現することができる。
【0115】
尚、図8に、一例として、従来の光学素子(図10に示した例)と第1の実施例における光学素子4との分光反射率を比較して示す。
【0116】
図8に示すように、従来の光学素子においては、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域である約600nm乃至約680nm(範囲P)において分光反射率が高くされているが、光学素子4においては、約600nm乃至約680nmより長波長側で分光反射率が高くされている。
【0117】
このように光学素子4を用いることにより、赤色の反射ゴーストの発生に寄与し易い光の波長領域より長波長側で分光反射率が高くなるため、赤色の反射ゴーストの発生が抑制され、良好なホワイトバランスを確保することができると共に赤色領域における良好な色再現性を実現することができる。
【0118】
[多層膜の構成例]
表1に多層膜の構成の一例を示す。表中の「面」において、「A」とあるのは、光学素子4における物体側を向く面を示し、「B」とあるのは、光学素子4における像側を向く面を示している。表1に示した光学素子4の多層膜9は層数が19層とされ多層膜10は層数が17層とされている。
【0119】
【表1】
【0120】
[撮像装置の一実施形態]
図9に、本発明撮像装置の一実施形態によるデジタルスチルカメラのブロック図を示す。
【0121】
撮像装置(デジタルスチルカメラ)100は、カメラブロック10、カメラ信号処理部20、画像処理部30、LCD(Liquid Crystal Display)40、R/W(リーダ/ライタ)50、CPU(Central Processing Unit)60、入力部70及びレンズ駆動制御部80を備えている。
【0122】
カメラブロック10は撮像機能を担い、カメラ信号処理部20は撮影された画像信号のアナログ−デジタル変換等の信号処理を行い、画像処理部30は画像信号の記録再生処理を行い、LCD40は撮影された画像等を表示する。R/W50はメモリーカード1000への画像信号の書込及び読出を行い、CPU60は撮像装置100の全体を制御し、入力部70はユーザーによって所要の操作が行われる各種のスイッチ等から成り、レンズ駆動制御部80はカメラブロック10に配置されたレンズの駆動を制御する。
【0123】
カメラブロック10は、ズームレンズ11を含む撮像光学系や、CCDやCMOS等の撮像素子12等とによって構成されている。
【0124】
カメラ信号処理部20は、撮像素子12からの出力信号に対するデジタル信号への変換、ノイズ除去、画質補正、輝度・色差信号への変換等の各種の信号処理を行う。
【0125】
画像処理部30は、所定の画像データーフォーマットに基づく画像信号の圧縮符号化・伸張復号化処理や解像度等のデーター仕様の変換処理等を行う。
【0126】
LCD40はユーザーの入力部70に対する操作状態や撮影した画像等の各種のデーターを表示する機能を有している。
【0127】
R/W50は、画像処理部30によって符号化された画像データーのメモリーカード1000への書込及びメモリーカード1000に記録された画像データーの読出を行う。
【0128】
CPU60は、撮像装置100に設けられた各回路ブロックを制御する制御処理部として機能し、入力部70からの指示入力信号等に基づいて各回路ブロックを制御する。
【0129】
入力部70は、例えば、シャッター操作を行うためのシャッターレリーズボタンや、動作モードを選択するための選択スイッチ等によって構成され、ユーザーによる操作に応じた指示入力信号をCPU60に対して出力する。
【0130】
レンズ駆動制御部80は、CPU60からの制御信号に基づいてズームレンズ11の各レンズを駆動する図示しないモータ等を制御する。
【0131】
メモリーカード1000は、例えば、R/W50に接続されたスロットに対して着脱可能な半導体メモリーである。
【0132】
以下に、撮像装置100における動作を説明する。
【0133】
撮影の待機状態では、CPU60による制御の下で、カメラブロック10において撮影された画像信号が、カメラ信号処理部20を介してLCD40に出力され、カメラスルー画像として表示される。また、入力部70からのズーミングのための指示入力信号が入力されると、CPU60がレンズ駆動制御部80に制御信号を出力し、レンズ駆動制御部80の制御に基づいてズームレンズ11の所定のレンズが移動される。
【0134】
入力部70からの指示入力信号によりカメラブロック10の図示しないシャッターが動作されると、撮影された画像信号がカメラ信号処理部20から画像処理部30に出力されて圧縮符号化処理され、所定のデーターフォーマットのデジタルデーターに変換される。変換されたデーターはR/W50に出力され、メモリーカード1000に書き込まれる。
【0135】
尚、フォーカシングは、例えば、入力部50のシャッターレリーズボタンが半押しされた場合や記録(撮影)のために全押しされた場合等に、CPU60からの制御信号に基づいてレンズ駆動制御部80がズームレンズ11の所定のレンズを移動させることにより行われる。
【0136】
メモリーカード1000に記録された画像データーを再生する場合には、入力部70に対する操作に応じて、R/W50によってメモリーカード1000から所定の画像データーが読み出され、画像処理部30によって伸張復号化処理が行われた後、再生画像信号がLCD40に出力されて再生画像が表示される。
【0137】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図2乃至図9と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、撮像装置の構成を示す概念図である。
【図2】光学素子の構成を示す概念図である。
【図3】別の撮像装置の構成を示す概念図である。
【図4】また別の撮像装置の構成を示す概念図である。
【図5】第1の実施例における光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図6】第2の実施例における光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図7】第3の実施例における光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図8】従来の光学素子と第1の実施例における光学素子とについて、分光反射特性を比較して示すグラフ図である。
【図9】本発明撮像装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図10】従来の光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図11】従来の別の光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【図12】従来のまた別の光学素子の分光透過特性及び分光反射特性を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0139】
1…撮像装置、2…レンズ群、2b…レンズ、3…撮像素子、4…光学素子、1A…撮像装置、2A…レンズ群、2c…レンズ、1B…撮像装置、2B…レンズ群、2d…レンズ、100…撮像装置、12…撮像素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系の光路上に配置され、
基材が赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成され、
前記基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ分光特性を調整する多層膜が形成され、
分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する
光学素子。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【請求項2】
撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置された
請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記物体側を向く面と前記像側を向く面における分光反射率が以下の条件式(5)を満足する
請求項1に記載の光学素子。
(5)λLR50%[A]≧λLR50%[B]
但し、
λLR50%[A]:物体側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
λLR50%[B]:像側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とする。
【請求項4】
前記基材と該基材の両面にそれぞれ形成された多層膜との合計した厚みを120μm以下とした
請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記基材をポリオレフィン系樹脂によって形成した
請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記基材に赤外線吸収作用を有する着色剤として有機系の色素を少なくとも1種類含有した
請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
光路上に少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子が配置され、
前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、
前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する
撮像光学系。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【請求項8】
光路上に配置された少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子を有する撮像光学系を備え、
前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、
前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する
撮像装置。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【請求項1】
撮像光学系の光路上に配置され、
基材が赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成され、
前記基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ分光特性を調整する多層膜が形成され、
分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する
光学素子。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【請求項2】
撮像光学系の最も像側に配置されたレンズと撮像素子の間に配置された
請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記物体側を向く面と前記像側を向く面における分光反射率が以下の条件式(5)を満足する
請求項1に記載の光学素子。
(5)λLR50%[A]≧λLR50%[B]
但し、
λLR50%[A]:物体側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
λLR50%[B]:像側を向く面における分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とする。
【請求項4】
前記基材と該基材の両面にそれぞれ形成された多層膜との合計した厚みを120μm以下とした
請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記基材をポリオレフィン系樹脂によって形成した
請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記基材に赤外線吸収作用を有する着色剤として有機系の色素を少なくとも1種類含有した
請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
光路上に少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子が配置され、
前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、
前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する
撮像光学系。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【請求項8】
光路上に配置された少なくとも一つのレンズ又はレンズ群と光学素子と撮像素子を有する撮像光学系を備え、
前記光学素子は、赤外線吸収作用を有するフィルム状の樹脂材料によって形成された基材と、該基材の物体側を向く面と像側を向く面の両面にそれぞれ形成され分光特性を調整する多層膜とから成り、
前記光学素子の分光透過率及び前記物体側を向く面と前記像側を向く面の両面における分光反射率が以下の条件式(1)乃至条件式(4)を満足する
撮像装置。
(1)0.75<TIRCF(600)/TIRCF(540)<0.95
(2)615<λLT50%<670
(3)|TIRCF(700)/TIRCF(540)|<0.05
(4)680≦λLR50%
但し、
TIRCF(600):波長600nmの光の分光透過率
TIRCF(540):波長540nmの光の分光透過率
λLT50%:分光透過率が50%になる近赤外光の波長
TIRCF(700):波長700nmの光の分光透過率
λLR50%:分光反射率が50%になる近赤外光の波長
とし、波長の単位はnmとする。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−48073(P2011−48073A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195506(P2009−195506)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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