説明

光学調整部材および照明装置、液晶表示装置

【課題】本発明は、液晶表示装置のバックライトユニットなどの照明装置において、光学調整部材の密着を防止して、損失の少ない均一な発光輝度が得られ、製造工程を減らしコストを低減することが可能な照明措置に用いられる光学調整部材を提供することを目的とする。
【解決手段】基材と、基材の少なくとも片面に形成された光学調整層を有する光学調整部材であって、光学調整層の厚さが周期的に変動していることを特徴とする光学調整部材を提供する。この構造を採ることにより、該光学調整部材と当接する導光板やほかの光学調整部材との接触部分が点となり、部材間の密着を防ぐことができるようになり、該密着によって引き起こされる輝度の不均一などをなくすることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、電飾看板、施設照明などに用いられる照明装置に用いる光学調整部材、及びそれを用いた照明装置、液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられる背面照明装置(バックライト)や各種の照明装置においては、光源からの光線の広がりや明るさを調整する機能を有する。このため多くの照明装置においては、その光路中に光の指向性を制御したりあるいは拡散させる働きをする、シート状の光学部材などが設置される。このような光学部材の代表的な例としては、プリズムシートがある。プリズムシートは典型的には、三角柱形状のプリズムや半球形状のレンズが連続的に形成されたシートであり、プリズム効果もしくはレンズ効果によって光線の進行方向を制御する。
【0003】
プリズムシートを用いた液晶表示装置用のバックライトの一例について概略を図6に示す。バックライトユニットは、光源と、光源から放射された光を面光源に変える導光板と、導光板の下部に構成された反射シートと、導光板の上部に構成された多数の機能性光学シート群とで構成される。機能性光学シート群は、下部拡散シート(図視せず)、プリズムシート、上部拡散シートなどから構成される。
【0004】
このバックライトユニットにおいて、光源から導光板に入射した光線は、導光板の上面から右斜め上方の特定の方向に分布のピークを示す光線として出射され、下部拡散シートに入射する。そして、下部拡散シートに入射した光線は、該下部拡散シートを伝わる際の拡散によって、より上方に近い方向にピークを示す分布の光線としてその上面より出射され、プリズムシートに入射する。プリズムシートは光を屈折及び集光させて輝度を高める役割をし、それによってより真上に近い方向にピークを示す分布の光線としてその上面より出射される。これにより、プリズムシートの上面を出射した光線が上方の液晶表示装置の画面に照射される。
【0005】
また、従来のバックライトユニットについて、上記プリズムシートを、そのプリズム部が互いに直交するようにして二枚重ねて組み込み、液晶表示装置の画面正面への集光をより図るようにされる場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし従来においては、プリズムシートと導光板、または光学シート同士が直接接触する様に配すると、両者が部分的に密着を起こし、その部分だけが異常に明るく光ったり、干渉模様を生じたりして、輝度が不均一になり、表示画面の品位を著しく劣化する欠点があった。
【0007】
その対策として基材の裏面(光学構造体のない方の面)を非平滑面に加工するなど、密着防止加工や密着防止のための層を形成する構造も開示されている(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特表平10−506500号公報
【特許文献2】特許第2705868号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような対策であると、非平滑構造のために入射光が散乱されて輝度が低下する、あるいは製造工程が増えてしまいコストが高くなる、などの問題を有していた。
【0009】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みなされたもので、液晶表示装置のバックライトユニットなどの照明装置において、光学調整部材の密着を防止して輝点などの発生を防ぎ、損失の少ない均一な発光輝度が得られ、かつ製造工程を減らしコストを低減することが可能な照明装置に用いられる光学調整部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するため、基材と、基材の少なくとも片面に形成された光学調整層を有する光学調整部材であって、光学調整層の厚さが周期的に変動していることを特徴とする光学調整部材を提供する。この構造を採ることにより、該光学調整部材と当接する導光板やほかの光学調整部材との接触部分を点状あるいは線状とし、部材間の密着を防ぐ。これにより、該密着によって引き起こされる輝点などの輝度の不均一などをなくすることができた。さらにこの構造を採るにあたり、光学調整層の厚さを周期的に変動させることにより、基材と光学調整層の界面層を波打たせる構造とすることができる。この構造を採ることにより、基材と光学調整層の界面層における入射光線の屈折方向が該波打により揺らぎを持ち、拡散作用を付与する効果もある。
【0011】
また、本発明は、少なくとも片面に形成された光学構造を有する板状の光学調整部材であって、上記光学調整部材は、その厚みが周期的に変動することによる波型形状を有しており、上記光学構造は、単位構造が周期的に繰り返される構造であり、上記光学調整部材の厚さ変動の周期は、前記光学構造の繰り返しの周期と比較して十分に大きいことを特徴とする光学調整部材を提供する。該厚さ変動が該光学構造体の単位構造の周期より十分に大きい構造としたので、平滑面に比して輝度の低下など光学特性に対する影響をほとんどなくすることができた。
【0012】
ここで、「十分おおきい構造」とは、該光学構造体の光学特性に影響を与えない大きさの構造で、おおよそ光学構造体の大きさの3倍から500倍の範囲、好ましくは5倍から15倍である。このような「十分大きい構造」であれば、入射光が散乱されて輝度が低下するという現象を防ぐことができる。
【0013】
更に、基材の表面に紫外線硬化型の樹脂などで、表面に光学構造を有した光学調整層を形成した光学調整部材においては、該光学調整層を台座部と本体部から構成し、該台座部の厚さを変動させ、該変動が該光学構造体の単位構造の周期より十分に大きい構造とすることができ、本発明の実施の形態として最適である。
【0014】
「台座部」とは、図1に示すように、基材表面から、光学調整層表面に形成された光学構造体の間に存在する部分をさす。光学調整層の一部分であり、文字通り、光学構造体の下でその台座となる部分である。
【0015】
「本体部」とは、同じく図1に示すように、光学調整層表面に形成された光学構造体部分をさす。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構造を採ることにより、該光学調整部材と当接する導光板やほかの光学調整部材との接触部分が点状あるいは線状となり、部材間の密着を防ぐことができるようになり、該密着によって引き起こされる輝度の不均一などをなくすることができた。また該光学調整層の厚さ変動が該光学構造体の単位構造の周期より十分に大きい構造としたので、平滑面に比して輝度の低下など光学特性に対する影響をほとんどなくすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(作製方法)
本発明の光学調整部材は基材と光学調整層からなり、該光学調整層の厚さを変動させ、その変動が該光学調整層に設けられた光学構造体の単位構造の周期より十分に大きい構造とすることにより、該光学調整部材と当接する導光板やほかの光学調整部材との密着を防ぐ。その光学調整部材の作製方法について図4に沿って説明する。
【0018】
基材の上に光学調整層を形成する際に、厚さの変動を与えるが、その製造装置の基本的な構造は従来の紫外線硬化型樹脂による転写成形法と同様の方法を採ることができる。すなわち、たとえば所定の形状を切削加工により金型を作製し(ステップ(a))、基材と金型の間に紫外線硬化樹脂を充填し(ステップ(b))紫外線を照射し硬化させたのち(ステップ(d))、金型から該基材シートを剥離する(ステップ(e))。そのステップ(b)の充填プロセスからステップ(d)の硬化プロセスに際し、基材を押圧部材により押圧する(ステップ(c))。この押圧部材は紫外線を透過しうる材料で形成することが好ましい。その押圧部材の表面に、該光学構造体の大きさや周期よりも十分に大きい周期で、波型形状を形成しておく。この部材を押圧すると、基材と光学構造体の間に残留する樹脂成分により形成される台座部が、その押圧部材の波型形状の影響を受ける。すなわち、該台座部の厚さが押圧部材の波型形状に従って、その厚さが変動した構造となる。押圧部材により基材と紫外線硬化樹脂を金型に押圧した状態で、該押圧部材を透過する形態で紫外線を照射し、該紫外線硬化樹脂を硬化させる。押圧時には圧力をかけることが好ましく、5〜20kg/cm2の範囲が好適である。また必要に応じて加熱しながら押圧すると基材が変形しやすく作製しやすい。しかる後に押圧部材をはずし、金型から剥離して該光学調整部材は作製される。
【0019】
基材は任意の透明材質を用いることが可能であるが、基材を変形させて波状形状を形成させるので押圧により変形可能な材料を用いることが必要で、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、セルロースアセテートなど、上記押圧による変形が可能な任意の光透過性の材料をもちいることができる。基材の厚さも押圧による変形の制御に大きく関わることを考慮すると、10〜500μmの範囲が好適である。
【0020】
以上のようにして作製した光学調整部材は、該押圧部材の波型形状に従って基材表面に波型形状を有する。するとこのような部材を、特に平面部を含んで構成される導光板や他の光学部材と接触させると、波型形状の頂点のみが点あるいは線で接触する構造となる。これによって従来のように面と面で接触することにより両者が密着し、これに起因する輝度の不均一の発生を抑制することができる。
【0021】
該波型形状は、接触点を最小限にするべくその配置と間隔を設定する。当接する光学部材が平面である場合、該波状形状の頂点は線状よりも点在させるほうが、接触部分が小さくなるためより好適である。点在させた場合、その配列は格子状、六方最密状など任意に配置できる。また、当接する光学部材がその表面に凹凸の形状を有する場合、該波状形状の頂点は点在するよりも線状に配置させ、当接する光学部材の表面形状と交差させるほうが、接触部分がより小さくなる場合もあり、適宜選択することが好適である。
【0022】
また該波型形状の大きさおよび深さは、当接する光学部材と密着が生じない値であることが必要であるとともに、該光学構造体の光学特性に影響を与えない値であることが必要である。概して該波型形状の頂点の間隔は、該光学構造体の大きさに対して十分大きくとることが好適である。該波型形状が該光学構造体の大きさの3倍から500倍の範囲、更に好ましくは5倍から15倍であると、該光学構造体の光学的作用に対する影響をできるだけ小さくすることができ好適である。また該光学構造体の周期に対して整数倍でない周期であることが、モアレによる不均一発生を抑制することができて好適である。さらに該波型形状の周期は一定である必要はなく、さまざまパターンを取り混ぜたり、ランダムにすることも可能である。
【0023】
図5は本発明の光学調整部材をロール状の金型(金型ロール)を用いて作製する装置の例である。金型ロールの表面にはプリズムや半円形レンズなど、任意の光学構造体をなす凸部に対応して反転した凹部が形成される。一方の押圧ロールの表面にも波状の凹凸を形成する。これによって上述の波型形状を形成する。この波型形状のパターンも切削加工で形成することが可能であるが、そのほかに、鏡面上のロールの表面に、所定の凸状の突起物を装着する方法やブラスト処理によって凹凸を形成する方法も採りうる。
【0024】
このように表面に波型形状を施した押圧ロールを、該光学構造体の金型ロールと対向させて配置する。金型ロールの表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、回転させる。そして該二つのロールの間に該基材を送通する。紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、ロール金型から剥離する。このようにして光学調整部材を作製すると、該押圧ロールの波型形状の凸部で押圧された部分では光学調整層の台座部が薄くなり、一方該押圧ロールの凹部で押圧された部分では光学調整層の台座部が厚くなる。結果として、送り出される部材はその光学調整層を波型形状に形成することができる。以上のようにして本発明の光学調整部材を形成することができる。
【0025】
また、本発明の光学調整部材は、一枚のシート状の基材から製造する事も可能である。たとえば熱可塑性の樹脂を溶解延伸ないし溶融樹脂をシート状に押出して、その表面に所定の形状を有する金型を加熱押圧し形状を転写することが可能である。このような熱転写法により作製する場合なども、光学構造体を形成するロール金型に対向して配置される送りローラーの表面に該波型形状を形成しておき押圧ロールとし、光学構造体を形成するのと同時にこれを両面から加熱押圧して該シート状基材自身を変形して、該光学調整部材の厚さ変動を形成することも可能である。
【0026】
また、本発明の光学調整部材の波型形状は、上記の押圧部材や押圧ロールの形状のほか、基材の材料および、厚さ、そして光学構造体の材料、厚さのバランスにより、その変形の発生形態が異なるので適宜調整することが好ましい。たとえば相対的に基材の剛性が低い場合あるいは厚さが薄い場合は図1、2の(a)のように、波型の変形は主に基材に発生する。一方、相対的に基材の剛性が高い場合あるいは厚さが厚い場合は図1、2の(b)のように基材は変形せず、光学構造体側が変形する。よって押圧部材や押圧ロールの形状のほか、基材の材料および、厚さ、そして光学構造体の材料、厚さのバランスを調整することで基材、光学構造体、その両者の変形を適宜制御することが可能である。また、押圧部材のみならず、光学構造体の金型自体に波型形状を施しておくことで、両面に波状形状を持つ光学調整部材を構成することも可能である。前記光学調整部材の下面のみならず、上面、または上面及び下面の両方に波型形状を有するように形成すると、光学調整部材の両側に配置された他の光学部材に対して適宜それらとの接触部分を低減して、密着を防止することができる。また、光学構造体は入射面であっても出射面であってもよい。
【0027】
(拡散シート)
本発明は図2に図示された拡散シートにも適用可能である。これは基材に拡散体を塗布した構成であり、拡散体が本発明の光学調整層に該当する。拡散体の形成材料は、バインダー樹脂の中にそれとは屈折率の異なるビーズを分散させた材料を用いた。拡散体においては、ビーズの粒径やバインダー樹脂へのビーズの配合割合、あるいはバインダー樹脂およびビーズを構成する材質の組み合わせを選択することによって、光拡散特性を調整することが可能である。ビーズおよびバインダー樹脂はともに透明な樹脂などから構成されることが好ましい。バインダー樹脂を構成する材質としては光透過性、加工性に優れた樹脂製の材料、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂等を用いることができる。また、ビーズの材質は、バインダー樹脂の屈折率と異なる屈折率となるように選択する。このビーズを構成する材質としてはシリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニアなどの酸化物や窒化物などの透光性の無機物や、アクリル樹脂、スチレン樹脂等の樹脂製の材料を用いるのが好ましい。また、ビーズの粒径は、光拡散性を考慮して5〜50μm程度であることが好ましく、その形状は例えば球形が好適であるが、これに限定されることなく、拡散性の制御に応じて適宜選択することが好ましい。
【0028】
またバインダー樹脂と分散材料たるビーズとの混合割合は、光拡散性、光透過性等を考慮して、100重量部のバインダー樹脂に対してビーズを10〜300重量部とすることが好ましい。ビーズの分散には、周知のディゾルバー方式を用いることができる。
【0029】
(照明装置、液晶表示装置)
以下、図面を参照して、本発明の望ましい実施形態による光学調整部材およびこれを有する照明装置、液晶表示装置の構成をより詳細に説明する。
【0030】
図3は、本発明の光学調整部材を用いた液晶表示装置のバックライトを示した図である。本発明に従う液晶表示装置用のバックライトは、光源、導光板、反射板、導光板の上面にはプリズムシート、拡散シートが順次に積層される。前記拡散シートの上面に液晶表示素子が配置される。
【0031】
前記導光板の一側面にLEDなどの光源が設置され、前記導光板は光源出射光を面状に導波させる。該導光板の基底面には微細パターンが形成され、該導光板内を導波する光を液晶表示素子の方向に出射させる。前記反射板は前記導光板の下方側に漏洩した光を前記導光板側に反射させ光の損失を低減する。プリズムシートは典型的には断面形状が三角形であるプリズムが形成されており、導光板からの出射光を液晶表示素子の方向に集光して正面輝度を上昇させる。その上部に配置した拡散シートは光を分散して分布を均一にする。このように光源から出射された光は液晶表示素子を効果的に照射する。
【実施例1】
【0032】
(プリズムシート)
本実施例では、図1に示すプリズムシートを、図5に示すロール金型および押圧ロールを用いた方法により作製した。基材として厚み30μmのPETフィルムを用い、光学調整層を形成する樹脂に芳香族系アクリレートの紫外線硬化型樹脂を使用した。光学構造体のロール金型および押圧ロールは、ともに切削加工により作製したものを用いた。紫外線硬化の条件は、波長340〜420nmの紫外線を約5秒照射した。
【0033】
作製した光学調整部材の形状は、(本体部)として断面形状が、底辺30μm、高さ15μm、頂角90度の直角二等辺三角形である、一方向に延在する三角柱状の単位部材が延在直交方向に配列したもの(ピッチ:30μm)とした。また(台座部)は、本体部と同じ材料で平均厚さ10μmの波型形状とし、その振幅は±5μm、X方向の厚みの変動周期を317μm、Y方向の厚みの変動周期を317μmとし、X方向、Y方向ともに正弦波形状とした。この例の場合には、基材が変形する図1(a)の型の光学調整部材となった。
【0034】
作製した光学調整部材の厚みの変動周期は、X方向の波長317μm、Y方向の波長317μmであり、光学構造体(本体部、三角プリズム)の周期(ピッチ)30μmと比較して、十分大きい周期とした。また該光学調整部材の厚みの変動周期は、該光学構造体の周期に対して整数倍でない周期とした。
【実施例2】
【0035】
(レンチキュラーシート)
本実施例では、ポリカーボネート(PC)を押出成型することにより、レンチキュラーレンズを搭載した光学調整部材を作製した。押出成型法により作製し、全材質ともポリカーボネートとしたので、基材と台座部の区分はない。
【0036】
本実施例の光学調整部材の作製方法としては、まず加熱溶解したPCを70μmの厚さでスリットから押出し、シート状の部材とした。そしてレンチキュラーレンズの形状の凹型を施したロール金型、および波型形状を施した押圧ロールを用い、該シート状のPC部材を加熱押圧した。該シート状のPC部材がシート状に押出された直後、180度に加熱した光学構造体のロール金型および押圧ロールの間に送り込み加熱押圧し、ロール金型表面の形状を転写した。以上のように本実施例の該光学調整部材を作製した。光学構造体のロール金型、押圧ロールはともに切削加工により作製したものを用いた。
【0037】
作成した光学調整部材の形状は、ポリカーボネート樹脂材の平均押出厚70μm、光学構造体(本体部)として断面形状が底辺40μm、高さ20μmの半円形であり、一方向に延在する、いわゆる“かまぼこ状”の単位部材が延在直交方向に配列する構造とした。そのピッチは45μmとした。波型形状としては、該レンチキュラーレンズの単位部材が延在する方向へ変動する正弦波形状として設けた。その振幅は±5μm、厚みの変動周期を519μmとした。この例の場合、光学構造体の両面が変形する、図1(c)の型の光学調整部材となった。作製した光学調整部材の厚みの変動周期は、波長519μmであり、光学構造(レンチキュラー)の周期(ピッチ)45μmと比較して、十分大きい周期とした。また該光学調整部材の厚みの変動周期は、該光学構造体の周期に対して整数倍でない周期とした。
【実施例3】
【0038】
(拡散シート)
本実施例では、図2に示す拡散シートを、図5に示すロール金型および押圧ロールを用いた方法により作製した。ただし本実施例の場合、ロール金型の表面には形状加工は施さず、鏡面状態のロール金型を用いた。基材としては厚み50μmのPETフィルムを用いた。拡散体は、分散材料として平均粒径 3μm 平均屈折率1.60のガラスビーズを用い、バインダー樹脂として屈折率1.53の紫外線硬化型アクリル樹脂を用い、該ガラスビーズを該アクリル樹脂に分散させたものを用いた。ビーズの配合量は60重量部とした。この拡散体をロール金型上に均一に塗布した。ロール金型は波型形状を施した押圧ロールと所定の距離をあけて対向させた。そしてその間に基材を導き、該基材の表面に上述の拡散体を塗布した。その状態で、紫外線を照射して該バインダー樹脂を硬化させた。このプロセスにより、バインダー樹脂中にビーズが分散された拡散体が基材に保持されて固定される。その際に押圧ロール表面に施された波型形状により、拡散体の塗布厚が変動する。これにより該拡散シート全体の厚さが変動する。作製した拡散シート(光学調整部材)の形状は、光学調整層(拡散体)の平均厚さが15μmとした。また、波型形状は、振幅±5μmとし、X方向の厚みの変動周期を317μm、Y方向の厚みの変動周期を317μmとした。その形状はX方向、Y方向ともに略三角形状とした。この例の場合、光学構造体が変形する図2(b)の型の光学調整部材となった。光学構造体の金型および押圧ロールはともに切削加工により作製したものを用いた。紫外線硬化条件は、波長340〜420nmの紫外線を約5秒照射して硬化させた。
【0039】
また、バインダー樹脂に溶剤を混合しておき、硬化後に乾燥させて溶剤を揮発させることにより、該分散材料であるビーズがバインダー樹脂の表面から突出した状態とさせることも可能である。この構造により透過光の拡散性能をより高めることも可能である。
【実施例4】
【0040】
(照明装置及びそれを用いた液晶表示装置)
本実施例では、図3に示す照明装置及びそれを用いた液晶表示装置を作製した。照明装置の構成は、導光板上に本発明のプリズムシート(実施例1)、本発明の拡散シート(実施例3)を順に積層したものである。その上に液晶表示素子を設置して液晶表示装置を作製した。
【0041】
(比較例)
本比較例では、図6に示す従来の光学調整部材(光学シート)を用いた液晶用照明装置を作製した。照明装置の構成は、導光板上に従来のプリズムシート(下面が平坦)、従来の拡散シート(下面が平坦)を順に積層したものである。その上に液晶表示素子を設置して液晶表示装置を作製した。
【0042】
本発明の各実施例及び比較例の光学調整部材を装着した照明装置の光学特性を評価した。
正面輝度:照明装置の法線方向の輝度を測定し、その平均値を求めた。
密着による不均一:目視により均一性を評価した。
【0043】
上記実施例及び比較例を評価した結果、正面輝度は両者で同じ値を示した。一方、目視により均一性を評価したところ、比較例では密着による縞状の明るさの不均一が観察されたのに対して、本発明の光学調整部材を用いた照明装置ではそのような不均一はなく、均一な発光が確認できた。また、モアレによる不均一の発生もないことが確認できた。以上の結果は、作製した光学調整部材の厚みの変動周期を光学構造体の周期(ピッチ)と比較して十分大きい周期としたため、輝度の低下など光学特性に対する影響なく部材間の密着によって引き起こされる輝度の不均一などをなくすることができた。また該光学調整部材の厚みの変動周期を該光学構造体の周期に対して整数倍でない周期としたので、モアレによる不均一発生も抑制することができた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の光学調整部材の例(その1)
【図2】本発明の光学調整部材の例(その2)
【図3】本発明の光学調整部材を用いて構成した照明装置及びそれを用いた液晶表示装置の例
【図4】本発明の光学調整部材の製造方法(その1)
【図5】本発明の光学調整部材の製造方法(その2)
【図6】従来の光学シートを用いた液晶用照明装置の例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と
前記基材の少なくとも片面に形成された光学調整層を有する光学調整部材であって、
前記光学調整層の厚さが周期的に変動していることを特徴とする光学調整部材。
【請求項2】
前記光学調整層には、光学構造の単位構造が周期的に形成され、
前記光学調整層の厚さの変動周期は、前記光学構造の周期と比較して十分大きいことを特徴とする請求項1記載の光学調整部材
【請求項3】
前記光学調整層は、台座部と、その上に形成された光学構造からなる本体部で構成されており、
前記光学調整層の厚さの周期的変動は、前記台座部の厚さの変動により生じていることを特徴とする請求項1記載の光学調整部材。

【請求項4】
前記光学構造の断面形状は、多角形であることを特徴とする請求項2又は3記載の光学調整部材。
【請求項5】
前記光学構造の断面形状は、略半円形であることを特徴とする請求項2又は3記載の光学調整部材。
【請求項6】
前記光学構造は、プリズムアレイまたは、レンチキュラーアレイであることを特徴とする請求項2又は3記載の光学調整部材。
【請求項7】
前記光学調整層は、拡散作用を有することを特徴とする請求項1記載の光学調整部材。
【請求項8】
少なくとも片面に形成された光学構造を有する板状の光学調整部材であって、
上記光学調整部材は、その厚みが周期的に変動することによる波型形状を有しており、
上記光学構造は、単位構造が周期的に繰り返される構造であり、
上記光学調整部材の厚み変動の周期は、前記光学構造の繰り返しの周期と比較して十分に大きいことを特徴とする光学調整部材。
【請求項9】
光源と、
請求項1から8いずれか記載の光学調整部材を用いて構成されることを特徴とする照明装置。
【請求項10】
光源と、
請求項1から8いずれか記載の光学調整部材と、
液晶表示素子を用いて構成されることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−109796(P2009−109796A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282811(P2007−282811)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】