説明

光導波路部品の製造方法および光導波路部品

【課題】光導波路部品の製造方法および光導波路部品を提供する。
【解決手段】支持基材層、熱可塑性樹脂(A)製クラッドを有する光導波路層、熱可塑性樹脂(A)に接着性の熱可塑性樹脂(B)からなる接着層および蓋材層がこの順で積層している光導波路部品の製造方法であって、該支持基材層と該光導波路層を有する部材の熱可塑性樹脂(A)製クラッドの表面に、該接着層と該蓋材層を有する部材の熱可塑性樹脂(B)からなる接着層を熱圧着する光導波路部品の製造方法。支持基材層上に、アンダークラッド層、コア層、オーバークラッド層、接着層および蓋材層がこの順で積層しており、該アンダークラッド層、該コア層、該オーバークラッド層および該接着層が主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体からなる含フッ素樹脂である光導波路部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路部品の製造方法および光導波路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製光導波路(以下、単に光導波路という。)の開発が進展するに伴い、光導波路を光導波路部品に加工する方法も種々検討されている。該方法において、光導波路部品の環境耐性および強度を保持するために、光導波路に蓋材(ガラス製の蓋材等。)を熱反応性または光反応性の硬化性樹脂を用いて接着する場合がある(特許文献1および2参照。)。
【0003】
また、光が伝搬するコア部とコア部の周囲に形成されたクラッド部を具備し、該クラッド部が主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体からなる光導波路が知られている(特許文献3参照。)。該光導波路は、光の伝送損失が小さく配向複屈折に伴う光の散乱が小さい等の物性に優れる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−337850号公報
【特許文献2】特開2004−354651号公報
【特許文献3】特開2000−081519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱または光反応性の硬化性樹脂を用いて光導波路に蓋材を接着する場合、接着強度が不充分である、泡が生じる、光導波路の形状が崩れやすい等の問題があった。特許文献3に記載の光導波路に、該硬化性樹脂を用いて蓋材を接着する場合も、これらの問題があり該光導波路を光導波路部品に効率よく加工できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の熱可塑性樹脂製クラッドを有する光導波路層の表面に、該熱可塑性樹脂に接着性の熱可塑性樹脂からなる接着層を有する蓋材の該接着層を熱圧着すると、光導波路層と蓋材を高強度に接着でき、光導波路を蓋材を有する光導波路部品に効率よく加工できることを見出した。さらに、特定の含フッ素樹脂を光導波路と接着層に用いた光導波路部品は優れた環境耐性と光学特性を有することを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、以下の発明を提供する。
<1>:支持基材層、熱可塑性樹脂(A)製クラッドを有する光導波路層、熱可塑性樹脂(A)に接着性の熱可塑性樹脂(B)からなる接着層および蓋材層がこの順で積層している光導波路部品の製造方法であって、該支持基材層と該光導波路層を有する部材の熱可塑性樹脂(A)製クラッドの表面に、該接着層と該蓋材層を有する部材の熱可塑性樹脂(B)からなる接着層を熱圧着する光導波路部品の製造方法。
【0008】
<2>:熱可塑性樹脂(B)のガラス転移点温度が、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移点温度以下である<1>の光導波路部品の製造方法。
<3>:熱圧着を、(熱可塑性樹脂(A)のガラス転移点温度−10℃)以上の温度にて行う<1>または<2>の光導波路部品の製造方法。
<4>:熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)が、いずれも熱可塑性含フッ素樹脂である<1>〜<3>のいずれかの光導波路部品の製造方法。
<5>:熱可塑性含フッ素樹脂が、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体からなる含フッ素樹脂である<4>の光導波路部品の製造方法。
【0009】
<6>:支持基材層上に、アンダークラッド層、コア層、オーバークラッド層、接着層および蓋材層がこの順で積層しており、該アンダークラッド層、該コア層、該オーバークラッド層および該接着層が主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体からなる含フッ素樹脂である光導波路部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法は、泡の発生と光導波路の形状崩れを抑制して、光導波路と蓋材を高強度に接着できる方法であり、光導波路を蓋材を有する光導波路部品に効率よく加工できる方法である。また本発明の光導波路部品は、光導波路部分が、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体からなる含フッ素樹脂でありかつ蓋材に保護されるため、厳しい環境条件下でも優れた光学特性を発現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。本発明における熱可塑性樹脂とは、実質的に線状の重合体の1種以上からなり、他の添加成分を含んでいてもよいものをいう。また熱可塑性樹脂(A)のガラス転移点温度をTgAと、熱可塑性樹脂(B)のガラス転移点温度をTgBと、記す。
【0012】
本発明の製造方法において、支持基材層と光導波路層を有する部材(以下、部材1という。)の熱可塑性樹脂(A)製クラッドの表面に、熱可塑性樹脂(B)からなる接着層と蓋材層を有する部材(以下、部材2という。)の該接着層を熱圧着することにより、支持基材層、熱可塑性樹脂(A)製クラッドを有する光導波路層、熱可塑性樹脂(B)からなる接着層および蓋材層がこの順で積層された光導波路部品を得る。
熱圧着における圧力は、0.01〜10MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.1〜1MPa(ゲージ圧)が特に好ましい。この範囲において、圧着時の蓋材と光導波路間の泡の発生をより抑制できる。
【0013】
熱圧着は、(TgA−10℃)以上の温度にて行うのが好ましく、TgA〜(TgA+100℃)の温度にて行うのが特に好ましい。この範囲において、熱圧着時の熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の形状変化をより抑制できる。
【0014】
熱圧着の好ましい態様としては、(TgA−10℃)以上の温度(TgA〜(TgA+100℃)がより好ましい。)の部材1と、(TgB−10℃)以上の温度(TgB〜(TgB+100℃)がより好ましい。)の部材2を熱圧着させる方法が挙げられる。この場合、部材1と部材2は、熱源に充分に接触されて、それぞれが前記範囲の温度まで加熱されており、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の温度は、それぞれの熱源の温度に等しいとみなす。
【0015】
本発明における支持基材層および蓋材層は、いずれも光導波路部品の用途によって適切な材料から選択できる。材料としては、ガラス、石英、セラミックス等の無機材料、シリコン系半導体、ガリウムヒ素系半導体等の半導体材料、アルミニウム、チタン等の金属材料、ポリイミド、ポリアミド等の高分子材料、これらの材料を複合化した材料等が挙げられる。
【0016】
本発明における熱可塑性樹脂(A)製クラッドを有する光導波路層は、クラッドよりも屈折率の高い材料からなる光が伝搬するコアと、該コアの周囲に形成された熱可塑性樹脂(A)製クラッドからなる光導波路層が好ましく、アンダークラッド層、コア層および熱可塑性樹脂(A)製オーバークラッド層がこの順で積層している光導波路層が特に好ましい。
【0017】
コアは、樹脂製コアが好ましい。樹脂製コアは、クラッドの熱可塑性樹脂(A)と同じ範疇の樹脂で屈折率がクラッドの熱可塑性樹脂(A)よりも高い熱可塑性樹脂(A)製のコアであってもよく、熱可塑性樹脂(A)以外の樹脂製コアであってもよい。さらに屈折率調整剤を含む熱可塑性樹脂(A)製コアであってもよい。
【0018】
また熱可塑性樹脂(A)製クラッドは、コア直上方向に対して5〜50μmの厚さを有するのが好ましい。この範囲において、熱圧着時の圧力によるコアの形状崩れをより抑制できる。
【0019】
本発明における接着層は、熱可塑性樹脂(A)に接着性の熱可塑性樹脂(B)からなる。熱可塑性樹脂(B)のTgBは、TgA以下であるのが好ましく、(TgA〜TgA−30℃)であるのが特に好ましい。この範囲において、熱圧着時のコアの形状崩れをより抑制できる。
【0020】
熱可塑性樹脂(B)における重合体は、熱可塑性樹脂(A)における重合体と、共通の部分分子構造を有する重合体が好ましく、同一の繰り返し単位を含む重合体が特に好ましい。さらに、両者は実質的に同一の重合体からなる熱可塑性樹脂であるのが好ましい。この場合、圧着時の蓋材層と光導波路層の接着強度をより向上できる。
【0021】
その理由は必ずしも明確でないが、共通の部分分子構造を有する重合体からなる熱可塑性樹脂同士は、SP値が近く樹脂同士の親和性が高く接着しやすいためと考えられる。SP値とは、熱可塑性樹脂の、Smallによるモル引力定数ΔF(Molar Attraction Constant)、分子量Mおよび密度dより、下式(Z)により求められる値である。なお本発明における熱可塑性樹脂(A)のSP値と熱可塑性樹脂(B)のSP値の差は4以下が好ましい。
【0022】
【数1】

【0023】
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)は、いずれも熱可塑性含フッ素樹脂であるのが好ましい。この場合、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)における含フッ素重合体は、同一の繰り返し単位を含む含フッ素重合体であるのが好ましい。ただし熱可塑性含フッ素樹脂は、含フッ素重合体以外の成分(屈折率調整剤、充填剤、シランカップリング剤などの接着性向上剤等。)を含んでいてもよい。
【0024】
含フッ素重合体としては、非結晶性の含フッ素重合体が好ましく、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体(以下、含フッ素環状重合体という。)が特に好ましい。
【0025】
含フッ素環状重合体とは、主鎖が炭素原子の連鎖からなり環を構成する炭素原子の1個以上が主鎖を構成する炭素原子である含フッ素脂肪族環を有する重合体である。主鎖の炭素原子は、1個の重合性二重結合を有するモノエン系単量体を重合させて得た重合体の場合は重合性二重結合の2個の炭素原子に由来し、2個の重合性二重結合を有するジエン系単量体を環化重合させた重合体の場合は2個の重合性二重結合の4個の炭素原子に由来する。
【0026】
含フッ素脂肪族環の環を構成する原子としては、炭素原子以外に酸素原子や窒素原子等を含んでもよい。好ましい含フッ素脂肪族環は1〜2個の酸素原子を有する含フッ素脂肪族環である。含フッ素脂肪族環を構成する原子の数は4〜7個が好ましい。
【0027】
含フッ素環状重合体としては、モノエン系単量体の単独重合体または共重合体、ジエン系単量体を環化重合させて得た単独重合体または共重合体等が挙げられる。
ここでモノエン系単量体とは、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体であるか、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体である。
【0028】
モノエン系単量体とジエン系単量体は、フッ素原子を有する単量体であり、炭素原子に結合した水素原子と炭素原子に結合したフッ素原子の合計数に対する炭素原子に結合したフッ素原子の数の割合が80%以上の単量体が好ましく、ペルフルオロ単量体(該割合が100%の単量体。)がより好ましい。またペルフルオロ単量体のフッ素原子の1〜4個が塩素により置換されたペルハロポリフルオロ単量体であってもよい。
これらと共重合させる単量体もペルフルオロ単量体やペルハロポリフルオロ単量体が好ましい。
【0029】
モノエン系単量体としては、下記化合物(1)または下記化合物(2)が好ましい。
【0030】
【化1】

【0031】
ただし、X、X、RおよびRは、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数が4以下のペルフルオロアルキル基または炭素数4以下のペルフルオロアルコキシ基を示す。Xはフッ素原子が好ましい。Xはフッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のペルフルオロアルコキシ基が好ましい。
およびXは、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を示す。
【0032】
化合物(1)の具体例としては、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(3−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
化合物(2)の具体例としては、ペルフルオロ(2−メチレン−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(2−メチレン−3−メチル−1,3−ジオキソラン)等が挙げられる。
【0033】
これらのモノエン系単量体を重合させることにより、または、これらのモノエン系単量体とCF=CF、CF=CFCl、CF=CFOCF、CF=CFOCFCFCFCOOCH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCSOF等のラジカル重合性単量体とを共重合させることにより、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する繰り返し単位を含む含フッ素重合体が得られる。
【0034】
ジエン系単量体は、式CF=CF−Q−CF=CFで表される単量体が好ましい。ただし、Qは炭素数1〜3のエーテル性酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基を示す。エーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基である場合、該ペルフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の観点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。Qの炭素数は1〜6が好ましい。また、側鎖を除いた炭素原子とエーテル性酸素原子の合計は、1〜4が好ましく、2または3が特に好ましい。
【0035】
該単量体は環化重合により、下記繰り返し単位(A)、下記繰り返し単位(B)および下記繰り返し単位(C)からなる群から選ばれる1以上の繰り返し単位を有する重合体を生成する。このようにジエン系単量体を環化重合させて得た重合体の主鎖の炭素原子は、2個の重合性二重結合の4個の炭素原子に由来する。
【0036】
【化2】

【0037】
これらの単量体を環化重合させることにより、または、これらの単量体とCF=CF、CF=CFCl、CF=CFOCF、CF=CFOCFCFCFCOOCH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCSOF等のラジカル重合性単量体とを共重合させることにより、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する繰り返し単位を含む含フッ素重合体が得られる。
【0038】
ジエン系単量体の具体例としては、CF=CFOCFCF=CF、CF=CFOCF(CF)CF=CF、CF=CFOCFCFCF=CF、CF=CFOCFCF(CF)CF=CF、CF=CFOCF(CF)CFCF=CF、CF=CFOCFOCF=CF、CF=CFOC(CFOCF=CF、CF=CFCFCF=CF、CF=CFCFCFCF=CF等が挙げられる。
【0039】
含フッ素環状重合体は、全繰り返し単位に対して含フッ素脂肪族環構造を有する繰り返し単位の20モル%以上を含むことが好ましく、40モル%以上を含むのがより好ましく、含フッ素脂肪族環状構造を有する繰り返し単位のみからなるのが特に好ましい。含フッ素脂肪族環構造を有する繰り返し単位とは、モノエン系単量体の重合により形成された繰り返し単位およびジエン系単量体の環化重合により形成された繰り返し単位をいう。
【0040】
本発明の製造方法における、部材1と部材2は、公知の方法を用いて製造できる。前記熱可塑性含フッ素樹脂を用いた、部材1と部材2の製造方法の一例を下記方法1および下記方法2に示す。
【0041】
[方法1]部材1の製造方法
平坦な表面を有する支持基材上に、熱可塑性含フッ素樹脂を含む溶液をスピンコートしてから乾燥してアンダークラッド層を形成する。つぎにアンダークラッド層上に該熱可塑性含フッ素樹脂より屈折率の高い熱可塑性含フッ素樹脂を含む溶液をスピンコートし、さらに乾燥してコア形成層を形成する。
【0042】
つづいてコア形成層上に、レジスト塗布、プリベーク、露光、現像およびアフターベークからなる工程をこの順で行って、コア層の形状に対応したパターンを有するレジスト層を得る。これらの工程は特開2000−81519号公報に記載の方法を用いて実施できる。
【0043】
ドライエッチングによりレジスト層に保護されていないコア形成層を除去し、さらに残ったレジスト層をウエットエッチングにより除去してコア層を形成する。アンダークラッド層を形成した方法と同様にして、コア層の周囲に熱可塑性含フッ素樹脂製オーバークラッド層を形成して部材1を得る。
【0044】
[方法2]部材2の製造方法
表面処理した平坦な表面を有する蓋材上に、熱可塑性含フッ素樹脂を含む溶液をスピンコートしてから乾燥して接着層を形成することにより部材2を得る。
【0045】
本発明の製造方法としては、方法1で得た部材1の熱可塑性含フッ素樹脂製オーバークラッド層に、方法2で得た部材2の接着層を熱圧着するのが好ましい。
【0046】
本発明の光導波路部品は、支持基材層上に、アンダークラッド層、コア層、オーバークラッド層、接着層および蓋材層がこの順で積層しており、該アンダークラッド層、該コア層、該オーバークラッド層および該接着層が主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体からなる含フッ素樹脂であることを特徴とする。本発明の光導波路部品は、前記製造方法を用いて製造するのが好ましい。
【0047】
本発明の光導波路部品は、光導波路部分が該含フッ素樹脂であるため光学特性に優れる。また光導波路が支持基材と蓋材にカバーされることから環境耐性に優れる。たとえば、本発明の光導波路部品は高温多湿下においても光学特性が劣化しないため、充分な信頼性を確保できる。
【実施例】
【0048】
本発明を、実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0049】
[例1]組成物Aの調製例
CF=CFCFCFOCF=CFの35g、イオン交換水の150g、メタノールの20gおよび((CHCHOCOO)の90mgを、オートクレーブ(内容積200mL、耐圧ガラス製)に入れ、系内を3回窒素ガスで置換した後、40℃にて22時間、懸濁重合を行って重合体Aの28gを得た。重合体Aを、空気中で300℃にて3時間、熱処理してから水中に浸漬して重合体A1を得た。
【0050】
重合体A1は、0.03ミリモル/gのカルボキシル基を含む、実質的に、下記繰り返し単位(a1)と下記繰り返し単位(a2)からなる含フッ素重合体であった。重合体A1のガラス転移点温度は108℃であり、重合体A1の全光線透過率は95%以上であった。重合体A1の1部とペルフルオロトリブチルアミンの9部からなる組成物Aを調製した。
【0051】
【化3】

【0052】
[例2]組成物Bの調製例
CF=CFCFCFOCF=CFの40g、CF=CFOCFCFCFCOOCHの1.6g、イオン交換水の150gおよび((CHCHOCOO)の90mgを、オートクレーブ(内容積200mL、耐圧ガラス製)に入れ、系内を3回窒素ガスで置換した後、40℃にて24時間、懸濁重合を行って重合体Bの30gを得た。重合体Bを、空気中で300℃にて3時間、熱処理してから水中に浸漬して重合体B1を得た。
【0053】
重合体B1は、0.03ミリモル/gのカルボキシル基を含む、実質的に、繰り返し単位(a1)、繰り返し単位(a2)およびCF=CFOCFCFCFCOOCHに基づく繰り返し単位からなる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体であった。
【0054】
重合体B1の10部、ペルフルオロトリブチルアミンの70部、1H,1H−ペンタフルオロプロパノールの15部、3−アミノプロピルメチルジエトキシシランの0.15部およびテトラメトキシシランの3.0部からなる組成物Bを調製した。
【0055】
[例3]支持基材層と光導波路層を有する部材の製造例
表面が平坦な円形のシリコン基板(直径15.24cm)上にスピンコート法で組成物Aを塗工し、250℃にて60分間、加熱乾燥してアンダークラッド層(厚さ17μm)を形成した。
【0056】
アンダークラッド層上に組成物Bをスピンコートし、250℃にて60分間、加熱乾燥してコア部(厚さ6.5μm)を形成した。つぎに、レジスト塗布、プリベーク、露光、現像、アフターベークをこの順に行って、コア層に対応するパターンを有するレジスト層を得た。ドライエッチングによりレジスト層に保護されていないコア部を除去し、残ったレジスト層をウエットエッチングしてコア層(厚さ6.5μm)を形成した。
【0057】
アンダークラッド層を形成した方法と同様に組成物Aを用いて、コア層の周囲にオーバークラッド層(コアの直上方向に14.5μmの厚さを有する)を形成して、シリコン基板と重合体A1製クラッドを有する光導波路層を具備する部材(以下、単に部材11という。)を得た。
【0058】
部材11のクラッドの屈折率は1.340であり、コアの屈折率は1.348であった。半導体レーザの光源を用いて、部材11の光導波路層の伝搬損失を測定した結果、波長650nmの光で0.1dB/cm以下、波長1300nmの光で0.1dB/cm、波長1550nmの光で0.17dB/cmであった。
【0059】
[例4]接着層と蓋材層を有する部材の製造例
3−アミノプロピルトリエトキシシランで表面処理された平坦な蓋材(ガラス製)に組成物Aを塗布してから熱風乾燥して、重合体A1からなる接着層(厚さ6μm)が蓋材の片面に密着形成された、接着層と蓋材層を有する部材を得た(以下、単に部材21という。)。
【0060】
[例5]光導波路部品の製造例
熱真空装置内で、部材11の光導波路層側と部材21の接着層側を、スペーサを介して対向させた。系内を減圧してから部材11と部材21をそれぞれ毎秒1℃の割合で昇温して100℃まで加熱した。系内をさらに2.67Paまで減圧し、そのまま3分間、保持してからスペーサを外した。
【0061】
つぎに部材11と部材21をそれぞれ毎秒1℃の割合で昇温して160℃まで加熱し、そのまま10分間、保持した。そのまま部材11と部材21を0.3MPa(ゲージ圧)の圧力にて5分間、圧着した。つぎに部材11と部材21をそれぞれ毎秒1℃の割合で降温して80℃まで冷却してから圧力を開放して、部材11と部材21が熱圧着により接着された光導波路部品を得た。
【0062】
光導波路部品の光学特性を、光導波路部品を85℃、相対湿度85%の環境に2000時間曝す試験と、光導波路部品を−40℃と85℃の状態に30分毎に計500回ずつ曝す試験にて評価する。いずれの試験においても、試験後の光導波路部品の光挿入増加量は0.5dB以下である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の製造方法によれば、光導波路に蓋材を高強度に生産効率よく接着できる光導波路部品の製造方法が提供される。また本発明の光導波路部品は、環境耐性と光学特性に優れることから、光合波器、光分波器、光合分波器、光回析器、光増幅器、光減衰器、光干渉器、光フィルター、光スイッチ、光スプリッター、波長変換器、発光素子、受光素子等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材層、熱可塑性樹脂(A)製クラッドを有する光導波路層、熱可塑性樹脂(A)に接着性の熱可塑性樹脂(B)からなる接着層および蓋材層がこの順で積層している光導波路部品の製造方法であって、該支持基材層と該光導波路層を有する部材の熱可塑性樹脂(A)製クラッドの表面に、該接着層と該蓋材層を有する部材の熱可塑性樹脂(B)からなる接着層を熱圧着することを特徴とする光導波路部品の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(B)のガラス転移点温度が、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移点温度以下である請求項1に記載の光導波路部品の製造方法。
【請求項3】
熱圧着を、(熱可塑性樹脂(A)のガラス転移点温度−10℃)以上の温度にて行う請求項1または2に記載の光導波路部品の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)が、いずれも熱可塑性含フッ素樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の光導波路部品の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性含フッ素樹脂が、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体からなる含フッ素樹脂である請求項4に記載の光導波路部品の製造方法。
【請求項6】
支持基材層上に、アンダークラッド層、コア層、オーバークラッド層、接着層および蓋材層がこの順で積層しており、該アンダークラッド層、該コア層、該オーバークラッド層および該接着層が主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体からなる含フッ素樹脂であることを特徴とする光導波路部品。

【公開番号】特開2006−195262(P2006−195262A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7896(P2005−7896)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】