説明

光導波路部材

【課題】 光導波路部材において、外部の光学部品との接続作業に際し、光信号の劣化を抑制しつつ、光を出射する外表面領域の高精度の仕上工程を省略できるようにする。
【解決手段】 光導波路部材10は、互いに積層して接合される第1クラッド層12及び第2クラッド層14と、それら第1及び第2クラッド層12、14の間に形成されるコア層16とを備える。光Lを出射するコア層16の出力端面20は、第1クラッド層12と第2クラッド層14との接合面22に隣接配置されて、第1クラッド層12により被覆される。第1クラッド層12は、コア層16の出力端面20から出射された光Lを透過させ、その外表面には、透過光Lを外部に出射する出射面24が形成される。第1及び第2クラッド層の接合面22は、出力端面20から出射された透過光Lに交差しない位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光導波路部材は、光通信技術において、光スイッチ、光カプラ等の機能を付加し得る光伝搬素子として知られており、近年、高分子材料から作製されるいわゆるポリマー光導波路部材が開発されている。従来のポリマー光導波路部材は、一般に、ガラス等の基板上に形成した第1クラッド層の表面に、光導波路となるコア層を所要の線状パターンで成形した後、コア層を覆うように第1クラッド層に第2クラッド層を積層して接合することにより作製される。
【0003】
この種の光導波路部材に、他の光導波路部材、光ファイバ、フォトダイオード、レンズ等の光学部品を接続する際には、通常、第1及び第2クラッド層の端縁の所要領域を機械的に除去してコア層の端面を露出させ、この露出したコア端面から出射された光を受ける位置に光学部品を配置する。これに対し、例えば特許文献1に開示されるように、コア層から出射された光を、クラッド層を透過させてクラッド層の外表面から出射するようにした光導波路部材も知られている。特許文献1の光導波路部材では、コア層の端面が第1及び第2クラッド層と共にコア層の主延長方向に対し45度の角度で切削されており、この傾斜したコア端面で反射した光が、その側方に位置する第1クラッド層を透過して、第1クラッド層の側面から出射される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−172837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来の光導波路部材では一般に、その使用に際し、クラッド層の端縁の所要領域を機械的に除去してコア層の端面を露出させる作業を行なっていた。このような作業は、出射の際に光信号を劣化させないようにするために、コア端面を研磨により高精度に仕上げる工程を必然的に伴うものであり、この研磨工程に起因して作業コストが著しく嵩む傾向があった。この点で、特許文献1に記載の技術は、コア層の端面から周囲環境へ直接的に光を出射するものではないが、コア層に反射面を正確に形成する目的で、やはり高精度の切削端面仕上工程を必要としている。
【0006】
本発明の目的は、光導波路部材において、光信号の劣化を抑制しつつ外部の光学部品に接続でき、しかも、光を出射する外表面領域の高精度の仕上工程を必要とせずに、接続作業を安価に実施できる光導波路部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、互いに積層して接合される第1クラッド層及び第2クラッド層と、第1及び第2クラッド層の間に形成されるコア層とを備える光導波路部材において、光を出射するコア層の出力端面が、第1クラッド層と第2クラッド層との接合面に隣接配置されて、第1クラッド層により被覆され、第1クラッド層が、コア層の出力端面から出射された光を透過させるとともに、この光を外部に出射する出射面を有し、第1及び第2クラッド層の接合面が、出力端面から出射された光に交差しない位置に配置されることを特徴とする光導波路部材を提供する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光導波路部材において、第1及び第2クラッド層の接合面が、コア層の出力端面から出射された光の進行方向に見て末広がりに配置される傾斜面である光導波路部材を提供する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光導波路部材において、第1クラッド層の出射面が凸レンズ形状を有する光導波路部材を提供する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光導波路部材において、第1クラッド層は、接合面から実質的同一平面を成して第2クラッド層の外側に延長される張出面を有する光導波路部材を提供する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光導波路部材において、第1クラッド層は、接合面と出射面との間に、それら接合面及び出射面に対し外方へ突出するように配置される仕切壁を有する光導波路部材を提供する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路部材において、光が入射するコア層の入力端面が、第1クラッド層と第2クラッド層との接合面に隣接配置されて、第1クラッド層により被覆され、第1クラッド層が、コア層の入力端面に入射される光を透過させるとともに、光を外部から受ける入射面を有し、第1及び第2クラッド層の接合面が、入力端面に入射される光に交差しない位置に配置される光導波路部材を提供する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、コア層を伝搬する光を、コア層の出力端面から第1クラッド層に出射し、さらに第1クラッド層を直進透過させて出射面から外部に出射するようにしたから、光導波路部材の出力端に他の光学部品を接続する際にも、第1及び第2クラッド層の端縁領域を除去してコア層の端面を露出させる作業が不要となる。したがって、研磨工程も不要となるので、光導波路部材と光学部品との接続作業を安価かつ迅速に実施することができる。しかも、第1及び第2クラッド層の接合面が第1クラッド層内の透過光に影響を及ぼさない位置に配置されているから、光信号の劣化を可及的に抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第1クラッド層内を徐々に広がりながら伝搬する光に交差しない位置に、接合面を容易に形成することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、別部品としての凸レンズを用意することなく、出射面から出射される光の広がり角度を、接続対象の光学部品の構成に合わせて最適化することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、光導波路部材の作製中に、コア層の材料が接合面から外部に食み出た場合にも、そのような余剰の材料を出射面まで到達させずに、出射面の汚損による光損失を防止できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、光導波路部材の作製中に、コア層の材料が接合面から外部に食み出た場合にも、そのような余剰の材料を出射面まで到達させずに、出射面の汚損による光損失を防止できる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、入力端に他の光学部品を接続する際にも、第1及び第2クラッド層の端縁領域を除去してコア層の端面を露出させる作業が不要となる。したがって、光導波路部材と光学部品との接続作業を安価かつ迅速に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図面を参照すると、図1は、本発明の一実施形態による光導波路部材10の主要部を示す斜視図、図2は、一部変形した光導波路部材10の主要部の断面図である。
【0020】
光導波路部材10は、互いに積層して接合される第1クラッド層12及び第2クラッド層14と、それら第1及び第2クラッド層12、14の間に形成されるコア層16とを備える。光導波路部材10は、図示しない入力端と出力端10aとを両端に有する平板状の光伝搬素子であり、入力端からコア層16に入射した光を、所要の伸長形状を有するコア層16内でその延長方向に伝搬させて、出力端10aから外部に出射する。
【0021】
光導波路部材10は、高分子材料から金型成形工程を経て作製できる。この場合、まず第1クラッド層12を、金型内で、所望の樹脂材料から平板状に成形するとともに、その表面12a(図1)の所定位置に局所的に、コア層16を形成するための凹所18(図2)を所要の線状パターンで形成する。このようにして成形した第1クラッド層12に対し、第1クラッド層12の樹脂材料とは異なるコア層16の樹脂材料を、凹所18に十分に充填する。また別途、第1クラッド層12と同一の樹脂材料から、第2クラッド層14をシート状に成形する。次にこの第2クラッド層14を、コア層16の全体を覆うようにして、第1クラッド層12の表面12aに積層して接合する。この状態で、コア層16が完全に固化することにより、光導波路部材10が作製される。
【0022】
光導波路部材10では、光Lを出射するコア層16の出力端面20が、出力端10a側で、第1クラッド層12と第2クラッド層14との間の接合面22に隣接配置されて、第1クラッド層12により被覆されている。したがって、コア層16の出力端面20から出射された光Lは、第1クラッド層12を直進透過して、第1クラッド層12の外表面から外部に出射される。第1クラッド層12の外表面には、この透過光Lを外部に出射する位置に、出射面24が形成される。
【0023】
上記構成においては、コア層16の出力端面20から出射された透過光Lは、図示のように第1クラッド層12内を徐々に広がりながら伝搬する。また、接合面22は、同一樹脂材料からなる第1及び第2クラッド層12、14の境界面であるが、前述したようにシート状の第2クラッド層14を第1クラッド層12に積層する製造工程に起因して、接合面22で光の反射、屈折が生じる惧れがある。そこで光導波路部材10では、上記透過光Lを、光損失を可及的に抑制した状態で外部の光学部品26(図2)に対し出力できるようにするために、第1及び第2クラッド層12、14の接合面22が、特にコア層16の出力端面20と第1クラッド層12の出射面24との間の領域で、出力端面20から出射された透過光Lに交差しない位置に配置されている。
【0024】
上記構成を有する光導波路部材10によれば、コア層16を伝搬する光を、コア層16の出力端面20から第1クラッド層12に出射し、さらに第1クラッド層12を直進透過させて出射面24から外部に出射するようにしたから、光導波路部材10の出力端10aに他の光学部品26(光導波路部材、光ファイバ、フォトダイオード、レンズ等)を接続する際にも、第1及び第2クラッド層12、14の端縁領域を除去してコア層16の端面を露出させる作業は不要である。したがって、研磨工程も不要となるので、光導波路部材10と光学部品26との接続作業を安価かつ迅速に実施することができる。
【0025】
ここで、コア層16の出力端面20及び第1クラッド層16の出射面24は、従来の金型成形工程(好ましくは射出成形工程)により、光損失が問題にならないレベルまで高精度に成形することができる。しかも、第1及び第2クラッド層12、14の接合面22が第1クラッド層12内の透過光Lに影響を及ぼさない位置に配置されているから、光信号の劣化を可及的に抑制しつつ、光導波路部材10を外部の光学部品26に接続することができる。
【0026】
上記構成において、第1及び第2クラッド層12、14の接合面22は、コア層16の出力端面20と第1クラッド層12の出射面24との間の領域で、出力端面20からの透過光Lの進行方向に見て、図示のように末広がりに配置される傾斜面として形成されることが有利である。コア層16の延長方向に対する接合面22の傾斜角度は、透過光Lの広がり角度以上であればよい。このような構成によれば、第1クラッド層12内を徐々に広がりながら伝搬する透過光Lに交差しない位置に、接合面22を容易に形成することができる。
【0027】
また、図2に変形例として示すように、第1クラッド層12は、コア層16の出力端面20と第1クラッド層12の出射面24との間の領域で、接合面22から実質的同一平面を成して第2クラッド層14の外側に延長される張出面28を有することができる。張出面28は、光導波路部材10の作製中に、第1クラッド層12の凹所18に充填したコア層16の樹脂材料が固化前に接合面22から漏出した場合にも、そのような余剰の樹脂材料を出射面24まで到達させずに、張出面28上で固化させるように作用する。その結果、出射面24の汚損による光損失を防止することができる。
【0028】
図3は、本発明の他の実施形態による光導波路部材30を示す。光導波路部材30は、第1クラッド層の構成以外は、前述した光導波路部材10と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0029】
光導波路部材30の第1クラッド層32は、コア層16の出力端面20から出射された光Lを直進透過させるように構成される。また、第1クラッド層32と第2クラッド層14との間の接合面22は、コア層16の出力端面20から出射された透過光Lに交差しない位置に配置される。さらに、第1クラッド層32の外表面には、この透過光Lを外部に出射する位置に、外方へ膨出する凸レンズ形状の出射面34が形成されている。したがって、第1クラッド層12内を広がりながら伝搬する透過光Lは、出射面34で適当に集束されて、外部の光学部品26に対し出力される。
【0030】
出射面34による光の曲げ(集束)角度は、接続対象の光学部品26の構成に依存して決められる。例えば光学部品26が、フォトダイオード等の、受光面積が比較的大きい光学素子である場合は、出射面34による曲げ角度を小さくすることができ、場合によっては、図1に示す平坦な出射面24を採用することもできる。これに対し、光学部品26が、他の光導波路部材等の、受光面積が比較的小さい光学素子である場合は、その光学部品26に光を低損失で入力するために、曲げ角度の大きな出射面34を形成することが有利である。
【0031】
上記構成を有する光導波路部材30によっても、前述した光導波路部材10と同等の作用効果が奏されることは理解されよう。さらに光導波路部材30によれば、別部品としての凸レンズを用意することなく、出射面34から出射される光の広がり角度を、接続対象の光学部品26の構成に合わせて最適化することができる。なお、コア層16の出力端面20を、出射面34と同様の凸レンズ状に形成することにより、コア層16の出力端面20から出射された透過光Lを、第1クラッド層32内で広がらせずに伝搬させることもできる。この場合は、平坦な出射面24を採用できるだけでなく、接合面22の傾斜角度を零にする(すなわち第1クラッド層の表面全体を平坦にする)ことができる。
【0032】
光導波路部材30では、第1クラッド層32に、前述した張出面28(図2)に加えて(又はその代わりに)、接合面22と出射面34との間で、それら接合面22及び出射面34に対し外方へ突出するように配置される仕切壁36が形成される。仕切壁36は、張出面28と同様に、光導波路部材10の作製中に接合面22から漏出したコア層16の余剰樹脂材料を、出射面34まで到達させないようにするためのものである。仕切壁36によれば、そのような余剰樹脂材料の量が多い場合にも、出射面34の汚損による光損失を確実に防止することができる。
【0033】
本発明に係る光導波路部材は、図4に示すように、入力端と出力端とが同一の構成を有することが有利である。図4に示す光導波路部材40は、前述した光導波路部材10の出力端10aと実質的同一構造の出力端40a及び入力端40bを備える。入力端40bの構成を説明すると、光が入射するコア層16の入力端面42は、第1クラッド層12と第2クラッド層14との接合面22に隣接配置されて、第1クラッド層12により被覆される。第1クラッド層12は、その外表面に、外部の光学部品(図示せず)から出力される光Lを受ける入射面44を備え、入射面44に入射した光Lを直進透過させて、コア層16の入力端面42に入射させる。そして、第1及び第2クラッド層12、14の接合面22は、コア層16の入力端面42に入射される光Lに交差しない位置に配置される。なお、出力端40aの説明は省略する。
【0034】
上記構成を有する光導波路部材40によれば、入力端40bに他の光学部品を接続する際にも、第1及び第2クラッド層12、14の端縁領域を除去してコア層16の端面を露出させる作業が不要となる。したがって、光導波路部材40と光学部品との接続作業を安価かつ迅速に実施することができる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は、図示実施形態に限定されず、様々な修正を施すことができる。例えば、コア層は、光導波路部材に要求される機能(光スイッチ、光カプラ等)に応じて、様々な構造を有することができる。また、第1クラッド層には、出射面(及び入射面)又はその周辺に、光接続において有効な種々の機能要素(例えば位置決め孔等)を一体的に設けることができる。それにより、光学系を構築する部品点数及び構築コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態による光導波路部材の主要部を示す斜視図である。
【図2】変形例による光導波路部材の主要部を示す縦断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による光導波路部材の主要部を示す縦断面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態による光導波路部材の主要部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10、30、40…光導波路部材
12、32…第1クラッド層
14…第2クラッド層
16…コア層
20…出力端面
22…接合面
24、34…出射面
26…光学部品
28…張出面
36…仕切壁
42…入力端面
44…入射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層して接合される第1クラッド層及び第2クラッド層と、該第1及び第2クラッド層の間に形成されるコア層とを備える光導波路部材において、
光を出射する前記コア層の出力端面が、前記第1クラッド層と前記第2クラッド層との接合面に隣接配置されて、該第1クラッド層により被覆され、
前記第1クラッド層が、前記コア層の前記出力端面から出射された光を透過させるとともに、該光を外部に出射する出射面を有し、
前記第1及び第2クラッド層の前記接合面が、前記出力端面から出射された前記光に交差しない位置に配置されること、
を特徴とする光導波路部材。
【請求項2】
前記第1及び第2クラッド層の前記接合面が、前記コア層の前記出力端面から出射された前記光の進行方向に見て末広がりに配置される傾斜面である、請求項1に記載の光導波路部材。
【請求項3】
前記第1クラッド層の前記出射面が凸レンズ形状を有する、請求項1又は2に記載の光導波路部材。
【請求項4】
前記第1クラッド層は、前記接合面から実質的同一平面を成して前記第2クラッド層の外側に延長される張出面を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光導波路部材。
【請求項5】
前記第1クラッド層は、前記接合面と前記出射面との間に、それら接合面及び出射面に対し外方へ突出するように配置される仕切壁を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光導波路部材。
【請求項6】
光が入射する前記コア層の入力端面が、前記第1クラッド層と前記第2クラッド層との接合面に隣接配置されて、該第1クラッド層により被覆され、前記第1クラッド層が、前記コア層の前記入力端面に入射される光を透過させるとともに、該光を外部から受ける入射面を有し、前記第1及び第2クラッド層の前記接合面が、前記入力端面に入射される光に交差しない位置に配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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