説明

光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物及び光拡散フィルム又はシート

【課題】硬化物の光拡散性に優れ、透過光の色度座標は白色光領域であり、透過光に波長依存性がほとんどなく、耐光性試験後の黄変度が小さい光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物、及び当該組成物から得られた光拡散フィルム又はシートの提供。
【解決手段】エチレン性不飽和基含有化合物(A)と(A)成分に溶解しない粒状物質(B)とを含有する組成物であって、(A)成分を単独で硬化させた硬化物の屈折率に対する(B)成分の屈折率の差が0.03以上0.18以下である光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散フィルム又はシート形成用に使用される電子線硬化型組成物、当該組成物を基材に塗布・電子線照射して得られる光拡散フィルム又はシートに関し、これら技術分野に属する。
尚、下記においては、便宜上、特に断りがない場合は、「光拡散フィルム又はシート」を「光拡散シート」と記載する。又、アクリレート又はメタクリレートを、(メタ)アクリレートと表す。又、本発明における屈折率とは、ナトリウムD線を用いて25℃で測定した値を意味する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、テレビ及び携帯電話等の液晶表示装置においては、視認性を高める目的で、バックライトユニットに光拡散シートが用いられている。又、LED照明等の照明器具においては、照度を均一化する目的で、照明器具カバーとして光拡散シートが用いられている。光拡散シートに要求される最も基本的な光学特性としては、可視光線に対して全光線透過率が90%以上で、ヘイズ値が70%以上であるということが挙げられる。
【0003】
光拡散シートとしては、フィルム表面に拡散層を形成させた光拡散シートやシート内部に光拡散材を分散させた光拡散シートがある。
【0004】
フィルム表面に拡散層を形成させた光拡散シートとしては、紫外線硬化型組成物にプラスチック粒子を光拡散材として分散させた組成物を透明フィルムに塗布し、紫外線照射して組成物を硬化させて製造する方法が提案されている。
【0005】
特許文献1によれば、紫外線硬化型組成物の硬化物の屈折率が1.50程度と低いため、光拡散効果を発揮させるには、紫外線硬化型組成物の硬化物と拡散材との屈折率差を十分に大きくする必要があり、光拡散材としては、メラミンビーズのような屈折率が高いものを使用せざるを得ないが、耐光性が問題となることがある。
【0006】
特許文献2によれば、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物の屈折率が1.56〜1.58程度と高いため、光拡散効果を発揮させるには、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物と拡散材との屈折率差を十分に大きくするために、拡散材としては、光拡散シートで通常使用される、屈折率の低いガラスビーズやシリカ粒子等の無機粒子やメタクリレート系ビーズ等が使用できる。しかしながら、活性エネルギー線硬化型組成物が紫外線硬化型組成物である場合は、光重合開始剤を含有させる必要があり、硬化物の耐光性が問題となることがある。
【0007】
一方、シート内部に光拡散材を分散させた光拡散シートとしては、透明樹脂シートに、炭酸カルシウム、酸化チタン、ガラスビーズ、シリカ粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン樹脂粒子及び架橋ポリマー粒子等の光拡散材を分散させたものが知られているが、これまでに、透明樹脂シートとして電子線硬化により得られた樹脂シートが検討されたことはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4101339号公報
【特許文献2】国際公開第WO2006/093075号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した通り、従来からの紫外線硬化型組成物にプラスチック粒子を光拡散材として分散させた組成物を透明フィルムに塗布した光拡散シートは、紫外線硬化型組成物は光重合開始剤を含有するため、耐光性が問題となることがあった。
【0010】
本発明は、硬化物の光拡散性に優れ、透過光の色度座標は白色光領域であり、透過光に波長依存性がほとんどなく、耐光性試験後の黄変度が小さい光拡散シート形成用電子線硬化型組成物、当該組成物から得られた光拡散シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン性不飽和基含有化合物とこれに溶解しない粒状物質とを含み、エチレン性不飽和基含有化合物の硬化物と粒状物質の屈折率の差が特定値を有する組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書では、組成物に電子線照射して得られる架橋物及び硬化物を、まとめて「硬化物」と表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物によれば、硬化物の光拡散性に優れ、透過光の色度座標は白色光領域であり、透過光に波長依存性がほとんどなく、耐光性試験後の黄変度が小さい。
従って、本発明の組成物から得られる光拡散シートは、種々の光学用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、エチレン性不飽和基含有化合物(A)〔以下、「(A)成分」という〕と(A)成分に溶解しない粒状物質(B)〔以下、「(B)成分」という〕とを含有する組成物であって、(A)成分を単独で硬化させた硬化物の屈折率に対する(B)成分の屈折率の差が0.03以上0.18以下である光拡散シート形成用電子線硬化型組成物に関する。
以下、(A)成分及び(B)成分について説明する。
【0014】
1.(A)成分
(A)成分は、エチレン性不飽和基含有化合物である。
(A)成分としては、種々の化合物を使用でき、(メタ)アクリロイル基含有化合物、ビニル化合物及びビニルエーテル等を挙げることができる。
(A)成分としては、電子線硬化性に優れるという理由で(メタ)アクリロイル基含有化合物が好ましい。
【0015】
(A)成分が(メタ)アクリロイル基含有化合物である場合、目的や使用する(B)成分に応じて、芳香環を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(A-1)〔以下、「(A-1)成分」という〕を必須成分として含んでいても、芳香環を有しない(メタ)アクリロイル基含有化合物(A-2)〔以下、「(A-2)成分」という〕を必須成分として含んでいても良い。
尚、(A)成分を単独で硬化させた硬化物の屈折率に対する(B)成分の屈折率の差が0.03以上0.18以下であれば、(A-1)成分と(A-2)成分を併用しても差し支えない。
【0016】
1-1.(A-1)成分
(A-1)成分は、芳香環を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物である。
(A-1)成分において、芳香環としては、下記で表される3種の基、フェニル基、クミル基及びビフェニル基等が挙げられる。これら芳香環としては、ハロゲン原子で置換されたものも使用できる。
【0017】
【化1】

【0018】
芳香環を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、ジ(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
1-1-1.芳香環を有するジ(メタ)アクリレート
芳香環を有するジ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、チオビスフェノール又はビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性のジオール及びビスフェノールAプロピレンオキサイド変性のジオールを原料としたウレタン(メタ)アクリレート、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分からなるポリエステルジオールを原料としたウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、硬化物の屈折率の調整が容易である点で、チオビスフェノール又はビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0021】
1-1-2.芳香環を有するモノ(メタ)アクリレート
芳香環を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、о−フェニルフェノールEO変性(n=1〜4)(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールEO変性(n=1〜4)(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、о−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート及びトリブロモフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
尚、上記においてEO変性とは、エチレンオキサイド変性を意味し、nはアルキレンオキサイド単位の繰返し数を意味する。
【0022】
当該モノ(メタ)アクリレートの中でも、組成物の硬化物に高屈折率を付与することができるという点で、о−フェニルフェニル(メタ)アクリレート及びp−クミルフェニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0023】
1-2.(A-2)成分
(A-2)成分は、芳香環を有しない(メタ)アクリロイル基含有化合物である。
(A-2)成分としては、ポリ(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
1-2-1.芳香環を有しないポリ(メタ)アクリレート
芳香環を有しないポリ(メタ)アクリレートとしては、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール又はポリエーテルジオール(以下、これらをまとめて「ジオールa」という)、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=5〜14)ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=5〜14)ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=3〜16)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(1−メチルブチレングリコール)(n=5〜20)ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
芳香環を有しないポリ(メタ)アクリレートとしては、光拡散シートの柔軟性に優れるという点で、ジオールa、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート〔以下、「(A-2-1)成分」という〕が好ましく、他のウレタン(メタ)アクリレートと比較して、耐光性試験後の黄変度が小さいものとなる。
【0026】
(A-2-1)成分としては、ジオールaと無黄変型有機ジイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有化合物を製造し、これとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた化合物(以下、「化合物UA1」という)、及びジオールa、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを同時に反応させた化合物(以下、「化合物UA2」という)等が挙げられ、分子量を制御しやすいという理由でUA1が好ましい。
(A-2-1)成分としては、オリゴマー及びポリマーのいずれも使用可能であり、重量平均分子量1,000〜5万のものが好ましく、より好ましくは3,000〜3万である。
尚、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0027】
ジオールaにおいて、ポリカーボネートジオールとしては、低分子量ジオール又は/及びポリエーテルジオール等とエチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
ここで、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、並びにポリエチレンポリプロポキシブロックポリマージオール等のブロック又はランダムポリマーのジオール等が挙げられる。
【0028】
ジオールaにおいて、ポリエステルジオールとしては、前記低分子量ジオール又は/及び前記ポリエーテルジオールと、アジピン酸、コハク酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。
【0029】
ジオールaにおいて、ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、並びにポリエチレンポリプロポキシブロックポリマージオール等のブロック又はランダムポリマーのジオール等が挙げられる。
【0030】
これらのジオールaは、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0031】
無黄変型有機ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」という)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、「H12MDI」という)及びω,ω′−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
これらの有機ジイソシアネート化合物は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0033】
前記した化合物の中でも、硬化物に耐光性(耐候性)が要求される場合には、IPDI及びH12MDIが好ましい。
【0034】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記した化合物の中でも、光拡散シートの柔軟性に優れるという点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0035】
(A-2-1)成分は、常法に従い製造されたもので良い。
化合物UA1を製造する場合は、ジブチルスズジラウレート等のウレタン化触媒存在下、使用するジオールa及び無黄変型有機ジイソシアネートを加熱攪拌し付加反応させ、さらにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加し、加熱攪拌し付加反応させる方法等が挙げられ、化合物UA2を製造する場合は、前記と同様の触媒の存在下に、ジオールa、無黄変型有機ジイソシアネート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを同時に添加して加熱攪拌する方法等が挙げられる。
【0036】
1-2-2.芳香環を有しないモノ(メタ)アクリレート
芳香環を有しないモノ(メタ)アクリレート〔以下、「(A-2-2)成分」という〕は、組成物全体の粘度を低下させる目的や、その他の物性を調整する目的で必要に応じて配合する成分である。
【0037】
(A-2-2)成分としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクトン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド等のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
(A-2-2)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0039】
2.(B)成分
(B)成分は、(A)成分に溶解しない粒状物質である。
(B)成分としては、(A)成分には溶解しないものであれば種々のものが使用できる。
具体的には、(メタ)アクリル重合体、(メタ)アクリル−スチレン重合体、ポリスチレン及びポリエチレン等のプラスチック粒子、並びにシリカ、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン及びガラス等の無機物質等が挙げられる。
これら中でも、組成物中に沈降しにくく、安定性に優れる点で、プラスチック粒子が好ましい。
【0040】
(B)成分の平均粒径としては1〜10μmが好ましい。(B)成分の平均粒径が1μmに満たない場合は、組成物の色付きの問題が発生することがあり、一方10μmを超えると、組成物中への拡散性が不充分となることがある。必要に応じて、平均粒径が異なる(B)成分を組み合わせて使用することもできる。(B)成分の形状としては、ほぼ完全に球状であれば良い。(B)成分の表面は、平滑なものでも、多孔質でも良い。
本発明において、平均粒径とは、レーザ回折・散乱式粒度分布計で測定されたメジアン径を意味する。
【0041】
本発明では、(A)成分を単独で硬化させた硬化物の屈折率(以下、単に「(A)成分屈折率」という)が高いものであるか、低いものであるかに応じて(B)成分を選択すれば良い。
(A)成分屈折率が高いものを使用する場合は、(B)成分として、(A)成分屈折率より低く、かつその屈折率差が0.03以上0.18以下である低屈折率粒状物質(B-1)(以下、「(B-1)成分」という)を使用し、(A)成分屈折率が低いものを使用する場合は、(B)成分として、(A)成分屈折率より高くかつその屈折率差が0.03以上0.18以下である高屈折率粒状物質(B-2)(以下、「(B-2)成分」という)を使用する。
以下、(B-1)及び(B-2)成分について説明する。
【0042】
2-1.(B-1)成分
(B-1)成分は、低屈折率粒状物質である。
(B-1) 成分としては、(A-1)成分とのなじみが良く、なおかつ比較的屈折率が低いことから、アクリル重合体及びアクリル−スチレン重合体がより好ましく、さらに、高硬度で、高ガラス転移温度を有するという理由で、メタクリル重合体及びメタクリル−スチレン重合体が特に好ましい。
(メタ)アクリル重合体、(メタ)アクリル−スチレン重合体を構成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート及びトリフルオロエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、耐熱性や硬度に優れる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の架橋性の(メタ)アクリレートを併用して製造されたものが好ましい。
【0043】
2-2.(B-2)成分
(B-2)成分は、高屈折率粒状物質である。
(B-2) 成分としては、(A-2)成分とのなじみが良く、なおかつ比較的屈折率が高いことから、芳香環含有(メタ)アクリル重合体及びスチレン重合体がより好ましい。芳香環含有(メタ)アクリル重合体を構成する単量体としては、о−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート、о−フェニルフェニルEO変性(メタ)アクリレート、p−クミルフェニルEO変性(メタ)アクリレート及びスチレン等が挙げられ、耐熱性や硬度に優れる点で、ジビニルベンゼン等の架橋性化合物を併用して製造されたものが好ましい。
【0044】
3.光拡散シート形成用電子線硬化型組成物
本発明は、前記(A)成分及び(B)成分を必須成分として含む光拡散シート形成用電子線硬化型組成物である。
組成物の製造方法としては、常法に従えばよく、(A)成分及び(B)成分を使用し、必要に応じてその他の成分をさらに使用し、これらを攪拌・混合して得ることができる。
各成分の撹拌・混合する場合、必要に応じて加温又は加熱することができる。
【0045】
この場合、(A)成分屈折率に対する(B)成分の屈折率の差が0.03以上0.18以下である必要がある。
この値が、0.03に満たないとヘイズが低いものとなり、所望の拡散性が得られなくなってしまい、一方、0.18を超えると透過光の波長依存性が強くなり、例えば透過光が赤みがかったり、黄みがかったりして白色光とならなくなってしまう。
【0046】
又、本発明の組成物では、(A)成分屈折率に対する(B)成分の屈折率の差を前記とすることに加え、(B)成分の平均粒子経が1〜10μmとすることにより、拡散シートに求められる光拡散性に優れ、さらには透過光が特定波長に偏りがなく白色光から外れるということがないため、光拡散シートとして好適である。
【0047】
(A)成分及び(B)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として(A)成分50〜99重量%及び(B)成分1〜50重量%が好ましく、より好ましくは(A)成分70〜95重量%及び(B)成分5〜30重量%である。
(B)成分の割合が1重量%に満たないと充分な拡散性能を得ることができない場合があり、他方50重量%を超えると、拡散性能は向上するものの、光線透過率が大きく低下してしまい光学用途に使用することができない。
【0048】
本発明の組成物は、電子線硬化型組成物であり、必要に応じて従来公知の光重合開始剤を配合できるが、光重合開始剤を含まないものが好ましい。光重合開始剤を含まないことにより、得られる硬化物の耐熱性や耐光性に優れるものとすることができる。
【0049】
本発明の組成物は、前記(A)成分及び(B)成分を必須とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
具体的には、(A)及び(B)成分以外の有機溶剤〔以下、(C)成分という〕、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤等を挙げることができる。
以下これらの成分について説明する。
【0050】
●(C)成分
本発明の組成物は、基材への塗工性を改善する等の目的で、(C)成分の有機溶剤を含むものが好ましい。
【0051】
(C)成分の具体例としては、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール及び1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶剤;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル及びビス(2−ブトキシエチル)エーテル等のエーテル系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤が挙げられる。
【0052】
(C)成分としては、前記した化合物の1種又は2種以上用いることができる。
【0053】
(C)成分の割合としては、適宜設定すれば良いが、好ましくは組成物中に10〜90重量%が好ましく、より好ましくは40〜80重量%である。
【0054】
●重合禁止剤又は/及び酸化防止剤
本発明の組成物には、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤を添加することが、本発明の組成物の保存安定性を向上させことができ、好ましい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤等を添加することもできる。
これら重合禁止剤又は/及び酸化防止剤の総配合割合は、(A)成分の100重量部に対して、0.001〜3重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0055】
●耐光性向上剤
本発明の組成物には、紫外線吸収剤や光安定剤の耐光性向上剤を添加しても良い。
紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアジン化合物;
2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4'−メチルベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、4、4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、又は2、2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物等を挙げることができる。
光安定性剤としては、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,6,6−)ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等の低分子量ヒンダードアミン化合物;N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等の高分子量ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
耐光性向上剤の配合割合は、(A)成分の100重量部に対して、0〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜1重量%である。
【0056】
4.使用方法
本発明の組成物は、光拡散シート形成の目的に応じて種々の使用方法を採用することができる。
具体的には、基材に組成物を塗工し電子線を照射して硬化させる方法、基材に組成物を塗工し別の基材と貼り合せた後さらに電子線を照射して硬化させる方法、凹部を有する型枠に組成物を流し込み、電子線を照射して硬化させる方法等が挙げられる。
【0057】
基材としては、剥離可能な基材及び離型性を有しない基材(以下、「非離型性基材」という)のいずれも使用することができる。
非離型性基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリアクリルニトリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリメチルペンテン等のプラスチック・フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。又、必要であれば、ガラス系基材を使用することができる。
【0058】
基材は透明もしくは半透明(例えば、乳白色)のものが好ましい。又、片面又は両面に、あらかじめエンボスやサンドブラスト加工あるいはマット加工を施して微細な凹凸を形成させたフィルムを使用した場合は透過する光の拡散性をより高めるという利点がある。基材の厚さとしては20〜100μmが好ましい。
【0059】
剥離可能な基材としては、離型処理されたフィルム又は表面未処理フィルム(以下、まとめて離型材という)等を使用しても良く、この場合、離型材を剥離したシートを光拡散シートとして使用できる。
離型材としては、シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面未処理シクロオレフィンポリマーフィルム及び表面未処理OPPフィルム(ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0060】
塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、従来公知のバーコート、アプリケーター、ドクターブレード、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
【0061】
電子線照射における、線量等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
電子線の吸収線量としては1〜100kGyが好ましく、より好ましくは10〜80kGyである。
電子線の加速電圧としては、組成物の膜厚に応じて80〜300kVの範囲で適宜設定すれば良く、膜厚100μmであれば200kVが好ましい。
電子線照射雰囲気の酸素濃度としては、500ppm以下が好ましく、より好ましくは300ppm以下である。
【0062】
5.光拡散シート
本発明の組成物は、光拡散シートの製造のために使用する。
以下、光拡散シートについて説明する。
尚、以下においては、図1及び図2に基づき一部説明する。
【0063】
5−1.光拡散シートの製造方法
光拡散シートの製造方法としては常法に従えば良く、例えば、組成物を基材に塗布した後、電子線を照射して製造することができる。
【0064】
図1は、離型材/硬化物から構成される光拡散シートの好ましい製造方法の一例を示す。
図1において、(1)は離型材を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図1:F1)は、組成物を離型材〔図1:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図1:F2)は、組成物を離型材〔図1:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図1:1−1)。
離型材に組成物層(2)が形成されてなるシートに対して電子線を照射することで、離型材/硬化物から構成される光拡散シートが得られる。電子線の照射は、通常、組成物層側から照射するが、離型材側からも照射できる。
上記において、基材(1)として離型材を使用すれば、離型材/硬化物から構成される光拡散シートを製造することができる。
【0065】
本発明の組成物の塗工量としては、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、有機溶剤等を乾燥した後の膜厚が10〜200μmとなるよう塗工するのが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。
【0066】
高い全光腺透過率を得るためには膜厚はできるだけ薄い方が良いが、薄くすればするほど結果的にヘイズ値が低下してしまう。
この場合は、10μm程度の薄膜領域でも高い全光線透過率とヘイズ値を両立させるために、後記する方法で、硬化物表面に微小な凹凸部を多数形成させれば良い。凸部の形状や数は、目的に応じて選択すればよい。凸部の形状としては、台形状や半円状等が挙げられる。
【0067】
組成物が有機溶剤等を含む場合は、塗布後に乾燥させ、有機溶剤等を蒸発させる。
乾燥条件は、使用する有機溶剤等に応じて適宜設定すれば良く、40〜150℃の温度に加熱する方法等が挙げられる。
【0068】
電子線照射における、線量等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
【0069】
図2は、離型材/硬化物/離型材から構成される光拡散シートの好ましい製造方法の一例を示す。
図2において、(1)、(3)、(4)は離型材を意味する。
組成物が無溶剤型の場合(図2:F1)は、組成物を離型材〔図2:(1)〕に塗工する。組成物が有機溶剤等を含む場合(図2:F2)は、組成物を離型材〔図2:(1)〕に塗工した後に、乾燥させて有機溶剤等を蒸発させる(図2:2−1)。組成物層(2)には離型材(3)をラミネートした後電子線照射したり、電子線照射した後に離型材をラミネートすることで、離型材、硬化物及び離型材が、この順に形成されてなる光拡散シートが得られる。
【0070】
上記図1及び2では基材として離型材を使用した例を記載したが、非離型性基材を使用して、光拡散シートを製造することもできる。
例えば、図1において、(1)の離型材に代え非離型性基材を使用し、前記と同様に電子線照射して硬化させ、非離型性基材/硬化物から構成される光拡散シートを製造することもできる。
又、図2において、(1)、(3)及び(4)のいずれかの離型材として、非離型性基材を使用し、前記と同様の方法で電子線照射して硬化させ、離型材/硬化物/非離型性基材から構成される光拡散シートフィルムを製造することもできる。
【0071】
又、前記の例では、組成物を基材に塗工して光拡散シートを製造する例を挙げたが、膜厚が大きい光拡散シートを製造する場合は、特定の凹部を有する型枠等に組成物を流し込み、前記と同様にして電子線を照射して組成物を硬化させ光拡散シートを製造することもできる。
又、前記した硬化物表面に微小な凹凸部を有する光拡散シートを製造する場合は、型枠として、この中に所定の形状を有する凹凸部を多数有するものを使用すれば良い。
【0072】
5−2.光拡散シートの用途
本発明の組成物から形成される光拡散シートの用途としては、液晶表示装置やLED照明等が挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、重量部を意味する。
【0074】
(1)実施例1〜同4、比較例1〜同4(組成物の製造)
後記表1に示す成分を表1に示す割合でステンレス製容器に投入し、加温しながらマグネチックスターラーで均一になるまで撹拌し、組成物を得た。
【0075】
【表1】

【0076】
・M211B:ビスフェノールAエチレンオキサイド4モル変性ジアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−211B
・M106:o−フェニルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−106
・UCA002:ポリカーボネート系無黄変型ウレタンアクリレート、根上工業(株)製アートレジンUCA−002〔重量平均分子量(以下、「Mw」と略):7,000〕
・IBXA:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製IBXA
・TMX5:ポリメチルメタクリレート系架橋微粒子(屈折率1.497、粒子径5.0μm:日機装(株)製商品名MT3000レーザ回折・散乱式粒度分布計で測定されたメジアン径により測定された結果)、東亞合成(株)製TM−X−5
・PST005:ポリスチレン系架橋微粒子(屈折率1.590、粒子径2.6μm)、東亞合成(株)製PST−005
・Dc1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、BASFジャパン(株)製DAROCUR−1173
【0077】
(2)実施例5〜8(電子線硬化による光拡散シートの製造)
幅300mm×長さ300mmの東レ(株)製フィルム「ルミラー50−T60」(表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ50μm)に、実施例1〜4で得られた組成物を加温し、膜厚が100μmになるようアプリケーターで塗工した。
その後、組成物層に、幅300mm×長さ300mmのルミラー50−T60をラミネートした後、(株)NHVコーポレーション製の電子線照射装置により、加速電圧200kV、線量50kGy(ビーム電流及び搬送速度により調整)、酸素濃度300ppm以下の条件下で電子線照射を行い、光拡散シートを得た。
硬化後、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離し、後記する全光線透過率、ヘイズ、xy色度及び耐光性試験の評価に用いた。
【0078】
(3)比較例5〜8(紫外線硬化による光拡散シートの製造)
幅300mm×長さ300mmのルミラー50−T60に、比較例1〜4で得られた紫外線硬化型組成物を加温し、膜厚が100μmになるようアプリケーターで塗工した。
その後、組成物層に、幅300mm×長さ300mmのルミラー50−T60をラミネートした後、アイグラフィックス(株)製のコンベア式紫外線照射装置(高圧水銀灯、ランプ高さ12cm、365nmの照射強度400mW/cm2〔フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UV POWER PUCKの測定値〕によりコンベア速度を調整して、積算光量1,000mJ/cm2の紫外線照射を行い、紫外線硬化光拡散シートを得た。
硬化後、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離し、後記する評価に用いた。
【0079】
〔全光線透過率及びヘイズ〕
実施例及び比較例で得られた光拡散シートについて、ヘイズメーター〔日本電色工業(株)製NDH2000〕を用いて全光線透過率及びヘイズを測定した。それらの結果を表2に示す。
【0080】
〔xy色度〕
実施例及び比較例で得られた光拡散シートについて、高速積分球式分光透過率測定器〔(株)村上色彩技術研究所製SPECTROPHOTOMETER DOT−3C〕を用いてxy色度を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0081】
〔耐光性試験〕
実施例及び比較例で得られた光拡散シートの初期YI(Yellowing Index)及び、紫外線フェードメーター〔スガ試験機(株)製紫外線ロングライフフェードメーターFAL−5H型〕に500時間放置した後のYI変化(△YI)を測定することで、樹脂シートの耐光性を評価した。それらの結果を表2に示す。
尚、YI値は、高速積分球式分光透過率測定器を用いて測定した。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例5〜8は、本発明の組成物である実施例1〜4の組成物を電子線照射して得られた光拡散シートであり、光拡散性に優れ、さらには透過光が特定波長に偏りがなく白色光から外れるということがなかった。又、光開始剤を含まない組成物から製造された光拡散シートであるため、耐光性試験後の黄変度が小さかった。
これに対して、比較例5〜8は、(A)及び(B)成分を含むものの、さらに光開始剤を含む比較例1〜同4の組成物を、紫外線照射して製造された光拡散シートであり、透過光が特定波長に偏りがなく白色光から外れるということがなかったものの、光拡散性に劣り、光開始剤を使用した組成物から製造された光拡散シートであるため、耐光性試験後の黄変度が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の電子線硬化型組成物は、光拡散シートの製造に好適に使用することができる。
さらに、本発明の光拡散シートは、液晶表示装置やLED照明等の用途において好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の組成物を使用した光拡散シートの製造の1例を示す。
【図2】図2は、本発明の組成物を使用した光拡散シートの製造の1例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和基含有化合物(A)と(A)成分に溶解しない粒状物質(B)とを含有する組成物であって、(A)成分を単独で硬化させた硬化物の屈折率に対する(B)成分の屈折率の差が0.03以上0.18以下である光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物。
【請求項2】
(A)成分が芳香環を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(A-1)を必須成分として含み、(B)成分が低屈折率粒状物質(B-1)であり、(A)成分を単独で硬化させた硬化物の屈折率が(B-1)成分の屈折率より大きい請求項1記載の光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物。
【請求項3】
(A)成分が芳香環を有しない(メタ)アクリロイル基含有化合物(A-2)を必須成分として含み、(B)成分が高屈折率粒状物質(B-2)であり、(A)成分を単独で硬化させた硬化物の屈折率が(B-2)成分の屈折率より小さい請求項1記載の光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物。
【請求項4】
(B)成分が、平均粒子経が1〜10μmの粒状物質である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物。
【請求項5】
(A)成分及び(B)成分の合計量を基準として、(A)成分50〜99重量%及び(B)成分1〜50重量を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物。
【請求項6】
前記組成物が光重合開始剤を含まない請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光拡散フィルム又はシート形成用電子線硬化型組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物の電子線照射硬化物が、フィルム状又はシート状基材(以下、これらをまとめて「シート状基材」という)に形成されてなる光拡散フィルム又はシート。
【請求項8】
シート状基材に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物を塗布した後、塗工面側又はシート状基材側から電子線を照射する光拡散フィルム又はシートの製造方法。
【請求項9】
シート状基材が剥離可能な基材である請求項8記載の光拡散フィルム又はシートの製造方法。
【請求項10】
シート状基材に、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物を塗布し、組成物の塗工面に他のシート状基材を貼合した後、前記シート状基材のいずれかの側から電子線を照射する光拡散フィルム又はシートの製造方法。
【請求項11】
シート状基材のいずれか一方又は両方が剥離可能な基材である請求項10記載の光拡散フィルム又はシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−225957(P2012−225957A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90512(P2011−90512)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】