説明

光拡散素子、光拡散素子付偏光板、偏光素子、およびこれらを用いた液晶表示装置

【課題】低後方散乱かつ高ヘイズを実現し得る薄膜の光拡散素子を提供すること。
【解決手段】本発明の光拡散素子は、第1の屈折率n1を有する第1の領域と;第1の領域を包囲する実質的に球殻状の屈折率変調領域と;屈折率変調領域の第1の領域と反対側に位置し、第2の屈折率n2を有する第2の領域と;を有し、下記の式(1)および(2)を満足する:
0.0006≦Δn/L ・・・(1)
10≦(Δn)×A×B≦100 ・・・(2)
ここで、Δnは第1の屈折率n1と第2の屈折率n2との差の絶対値|n1−n2|であり、L(nm)は屈折率変調領域の平均厚みであり、Δn/Lの単位は(nm−1)であり、Aは光拡散素子全体を100重量部としたときの第1の領域を構成する材料の重量部数であり、Bは光拡散素子全体を100重量部としたときの第2の領域を構成する材料の重量部数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散素子、光拡散素子付偏光板、偏光素子、およびこれらを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光拡散素子は、照明カバー、プロジェクションテレビのスクリーン、面発光装置(例えば、液晶表示装置)などに広く利用されている。近年では、光拡散素子は、液晶表示装置などの表示品位の向上、視野角特性の改善等への利用が進んでいる。光拡散素子としては、微粒子を樹脂シートなどのマトリクス中に分散させたものなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような光拡散素子においては、入射した光の大部分は前方(出射面側)に散乱するが、一部は後方(入射面側)に散乱する。微粒子とマトリクスとの屈折率差が大きいほど拡散性(例えば、ヘイズ値)は大きくなるが、屈折率差が大きいと後方散乱が増大してしまう。より具体的には、例えば液晶表示装置の表示品位向上のために光拡散素子を液晶表示装置の最表面に配置する技術が提案されているが、このような光拡散素子は十分な光拡散性を有しておらず(例えば、ヘイズ値が90%未満であり)、表示品位の改善効果は不十分である。一方、表示品位を向上させるために光拡散性が大きい(例えば、ヘイズ値が90%以上である)光拡散素子を液晶表示装置に用いると、液晶表示装置に外光が入射したときに画面が白っぽくなってしまい、明所においてコントラストの高い映像や画像の表示が困難であるという問題がある。これは、光拡散素子中の微粒子が入射光を前方のみならず後方にまで散乱させてしまうからである。従来の光拡散素子によれば、ヘイズ値が大きくなればなるほど後方散乱は大きくなるので、光拡散性の増大と後方散乱の抑制とを両立させることはきわめて困難である。さらに、照明用途においても、ヘイズ値が大きくなると後方散乱が増大し、全光線透過率が低下するので、光利用効率が低下してしまう。
【0003】
上記のような問題を解決する手段として、微粒子とマトリクスとの界面での反射を抑えるというコンセプトに基づき、コアとシェルとの屈折率が異なるコアシェル微粒子や、微粒子の中心部から外側に向かって連続的に屈折率が変化するいわゆるGRIN(gradient index)微粒子などの屈折率傾斜微粒子を樹脂中に分散させることが提案されている(例えば、特許文献2〜8参照)。しかし、これらのいずれの技術によっても、薄く、かつ、ヘイズが高い光拡散素子を得ることはできない。例えば、特許文献8のGRIN微粒子によれば、屈折率変化部分の厚みをL(nm)、屈折率変化部分の屈折率変化量をΔnとすると、Δn/Lが0.00053(nm−1)という急峻な屈折率変化部分が形成されている。しかし、特許文献8のGRIN微粒子を用いた光拡散フィルムは、膜厚を20μmと分厚くしても、86.5%のヘイズしか得られない。以上のように、薄く、かつ、ヘイズが高い(優れた光拡散性を有する)光拡散素子が強く望まれている。
【0004】
ところで、近年の液晶表示装置の用途の拡大に伴い、種々の新たな問題が生じている。例えば、携帯電話では、耐久性および意匠性を付与するために、液晶表示部の上にプラスチック基板(一般に、アクリル板)が配置されている。また、カーナビゲーションなどの車載用ディスプレイや、工業用に多く用いられるタブレットPC、パブリックディスプレイ、および多機能携帯電話においては、表示部の表面にタッチパネルが配置されている(例えば、特許文献9参照)。このようなフロント基板(例えば、プラスチック基板、タッチパネル)と偏光板は、通常、偏光板の縁部に貼られた両面テープにより固定化される。両面テープの厚みは、一般に120μm程度であるため、液晶表示装置全体の厚みが増加するという問題がある。タッチパネルに用いる場合には、できるだけ衝撃を防ぐために、両面テープとともに、約1000μmのスポンジも使用されるので、厚みがさらに増加する。また、両面テープで接着されるのは、縁部のみであるため、偏光板とフロント基板との間には、空気層が形成される。空気の屈折率がおよそ1.0であるのに対し、ポリマーやガラスといったフロント基板を形成する部材の屈折率は1.4〜1.7程度である。したがって、空気層とフロント基板の間の屈折率差が大きくなるため、外光の界面反射により、明環境下での視認性が低下するという問題がある。さらに、液晶表示装置においては、通常、液晶セルのカラーフィルタ層が、スクリーンとして機能する。フロント基板としてタッチパネルを用いる場合には、その入力打点はフロント基板の表面である。この場合、スクリーンとなる液晶セルの表面との間に距離があるため、視差が生じるという問題がある。
【0005】
フロント基板を用いた液晶表示装置において、外光の映り込みや表示の画面のぎらつきを抑えるために、光拡散機能を有する粘着層を介してフロント基板と偏光板またはディスプレイを貼り合せた液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献10および11参照)。しかし、光拡散粘着層は、ヘイズを高くする(光拡散性を付与する)ためには分厚くする必要があり、薄型化の実現が困難である。
【0006】
さらに、近年、液晶表示装置の消費電力を抑える取り組みがなされている。液晶表示装置は、通常、パネル部とバックライト部とに分けて開発されており、消費電力を抑える取り組みは、バックライト部を中心になされている。図23に、一般的な直下型のバックライトユニットの基本構造を示す。光源551は、内面に反射フィルムが取り付けられたランプハウス550に所定の間隔で配列されている。拡散板552は、ランプハウスの形状保持や、ランプイメージを解消すること等を目的としてランプハウス550上に配置されている。通常、拡散板552だけでランプイメージを消すことが難しいので、拡散シート(拡散フィルム)570が数枚配置されている。また、輝度向上を目的として、反射型偏光子等の輝度向上シート110が配置されている。バックライト光源から発せられる光は有限であることから、その利用効率の向上が望まれている。そこで、例えば、ワイヤーグリッド上に配列された金属格子を含む反射型偏光分離素子を用いたバックライトユニットが提案されている(例えば、特許文献12参照)。しかし、さらなる利用効率の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3071538号
【特許文献2】特開平6−347617号公報
【特許文献3】特開2003−262710号公報
【特許文献4】特開2002−212245号公報
【特許文献5】特開2002−214408号公報
【特許文献6】特開2002−328207号公報
【特許文献7】特開2010−077243号公報
【特許文献8】特開2010−107616号公報
【特許文献9】特開2001−201741号公報
【特許文献10】特開2004−127243号公報
【特許文献11】特開2010−008475号公報
【特許文献12】特開2006−324107号公報
【特許文献13】特表2009−516902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、低後方散乱かつ高ヘイズを実現し得る薄膜の光拡散素子を提供することにある。本発明の別の目的は、明環境下での視認性に優れ、視差を低減することができ、薄型化が可能な、フロント基板を有する液晶表示装置を得ることができる光拡散素子を提供することにある。本発明のさらに別の目的は、ランプイメージ等の輝度ムラを良好に解消し、かつ、光の利用効率の向上に寄与するバックライト側偏光素子を得ることができる光拡散素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの実施形態による光拡散素子は、第1の屈折率n1を有する第1の領域と;該第1の領域を包囲する実質的に球殻状の屈折率変調領域と;該屈折率変調領域の該第1の領域と反対側に位置し、第2の屈折率n2を有する第2の領域と;を有し、下記の式(1)および(2)を満足する:
0.0006≦Δn/L ・・・(1)
10≦(Δn)×A×B≦100 ・・・(2)
ここで、Δnは第1の屈折率n1と第2の屈折率n2との差の絶対値|n1−n2|であり、L(nm)は屈折率変調領域の平均厚みであり、Δn/Lの単位は(nm−1)であり、Aは光拡散素子全体を100重量部としたときの第1の領域を構成する材料の重量部数であり、Bは光拡散素子全体を100重量部としたときの第2の領域を構成する材料の重量部数である。
本発明の別の実施形態による光拡散素子は、マトリクスと該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有し、該光拡散性微粒子の表面近傍外部に、屈折率が実質的に連続的に変化する屈折率変調領域が形成され、かつ、下記の式(1)および(2)を満足する:
0.0006≦Δn/L ・・・(1)
10≦(Δn)×A×B≦100 ・・・(2)
ここで、Δnはマトリクスの平均屈折率nと光拡散性微粒子の屈折率nとの差の絶対値|n−n|であり、L(nm)は屈折率変調領域の平均厚みであり、Δn/Lの単位は(nm−1)であり、Aは光拡散素子全体を100重量部としたときの光拡散性微粒子の重量部数であり、Bは光拡散素子全体を100重量部としたときのマトリクスの重量部数である。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子においてn>nである。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、式(3)を満足する:
0.005≦L/r≦0.40 ・・・(3)
ここで、rは前記光拡散性微粒子の半径(nm)である。
好ましい実施形態においては、上記マトリクスは樹脂成分および超微粒子成分を含み、上記屈折率変調領域は、該マトリクス中の該超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配により形成されている。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、式(4)を満足する:
|n−n|<|n−n|・・・(4)
ここで、nはマトリクスの樹脂成分の屈折率を表し、nはマトリクスの超微粒子成分の屈折率を表す。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、ヘイズが90%〜99.9%である。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、厚みが4μm〜50μmである。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は、光拡散半値角が10°〜150°である。
本発明の別の局面によれば、光拡散素子付偏光板が提供される。この光拡散素子付偏光板は、上記の光拡散素子と偏光子とを有する。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子付偏光板は、液晶セル、フロント基板および平行光光源装置を含む液晶表示装置に用いられ、その際、該光拡散素子と該フロント基板が対向するように配置される。
本発明のさらに別の局面によれば、偏光素子が提供される。この偏光素子は、上記の光拡散素子と反射型偏光子とを有し、液晶表示装置の液晶セルのバックライト側に配置される。
好ましい実施形態においては、上記光拡散素子は上記反射型偏光子に直接形成されている。
好ましい実施形態においては、上記偏光素子は、吸収型偏光子をさらに備える。
本発明のさらに別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルに向かってコリメート光を出射する平行光光源装置と、該液晶セルを通過したコリメート光を透過および拡散させる上記の光拡散素子と、を備える。
本発明の別の実施形態による液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルに向かってコリメート光を出射する平行光光源装置と、該液晶セルを通過したコリメート光を透過および拡散させる上記の光拡散素子と、該光拡散素子のさらに視認側に配置されたフロント基板と、を備える。
好ましい実施形態においては、上記フロント基板は透明保護板またはタッチパネルである。
本発明のさらに別の実施形態による液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルの両側に配置された偏光板と、視認側に配置された偏光板のさらに視認側に該偏光板と対向するように配置されたタッチパネルと、該タッチパネルのガラス板と導電性薄膜との間に配置された上記の光拡散素子と、視認側と反対に配置された偏光板の外側に配置された、コリメート光を出射する平行光光源装置と、を備える。
本発明のさらに別の実施形態による液晶表示装置は、液晶セルと、バックライト部と、該液晶セルと該バックライト部との間に配置された上記の偏光素子と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の屈折率n1を有する第1の領域と、第1の領域を包囲する実質的に球殻状の屈折率変調領域と、屈折率変調領域の第1の領域と反対側に位置し、第2の屈折率n2を有する第2の領域と、を形成し、かつ、上記式(1)および(2)を満足するように第1の領域、第2の領域および屈折率変調領域を最適化することにより、低後方散乱かつ高ヘイズを実現し得る薄膜の光拡散素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明の好ましい実施形態による光拡散素子の概略断面図である。
【図1B】図1Aの光拡散素子における光拡散微粒子近傍を拡大して説明する模式図である。
【図2】図1Aの光拡散素子における光拡散性微粒子中心部からマトリクスまでの屈折率変化を説明するための概念図である。
【図3】マトリクス中の超微粒子成分の面積比率を説明するための透過型電子顕微鏡画像である。
【図4】(a)は、マトリクスの平均屈折率n>光拡散性微粒子の屈折率nである場合の後方散乱発生のメカニズムを説明するための概念図であり、(b)はn<nである場合の後方散乱発生のメカニズムを説明するための概念図である。
【図5】本発明の別の実施形態による光拡散素子の概略断面図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による光拡散素子付偏光板の概略断面図である。
【図7】本発明の光拡散素子付偏光板の製造方法の一例を説明する模式図である。
【図8】本発明の好ましい実施形態による偏光素子の概略断面図である。
【図9】本発明の別の好ましい実施形態による偏光素子の概略断面図である。
【図10】本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。
【図11A】本発明で用いられる平行光光源装置の概略図である。
【図11B】本発明で用いられる平行光光源装置の別の形態の概略図である。
【図12】本発明において半値角を算出する方法を説明するための模式図である。
【図13】本発明の別の実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。
【図14】本発明のさらに別の実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。
【図15】光拡散半値角を算出する方法を説明するための模式図である。
【図16】光拡散照度の測定における方位角および極角を説明する模式図である。
【図17A】実施例1の光拡散素子についてマトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍の超微粒子成分の分散濃度(存在比率)の算出方法を説明するための図である。
【図17B】実施例1の光拡散素子について光拡散性微粒子表面からの距離と超微粒子成分の分散濃度(存在比率)との関係を示すグラフである。
【図18】(a)〜(c)は、マトリクスの平均屈折率および光拡散性微粒子の屈折率と後方散乱との関係を示すシミュレーションのグラフである。
【図19】(a)〜(b)は、マトリクスの平均屈折率および光拡散性微粒子の屈折率と拡散性および後方散乱との関係を示すシミュレーションのグラフである。
【図20】(a)〜(b)は、マトリクスの平均屈折率および光拡散性微粒子の屈折率と拡散性および後方散乱との関係を示すシミュレーションのグラフである。
【図21】(a)〜(b)は、マトリクスの平均屈折率および光拡散性微粒子の屈折率と拡散性および後方散乱との関係を示すシミュレーションのグラフである。
【図22】Δn/Lと拡散性との関係を示すシミュレーションのグラフである。
【図23】一般的な直下型のバックライトユニットの基本構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態には限定されない。
【0013】
A.光拡散素子
A−1.全体構成
本発明の光拡散素子は、第1の屈折率n1を有する第1の領域と第2の屈折率n2を有する第2の領域とを有する。本発明の光拡散素子は、第1の領域と第2の領域との屈折率差により、光拡散機能を発現する。本発明においては、第1の領域は、実質的に球殻状の屈折率変調領域によって包囲され、第2の領域は、屈折率変調領域の第1の領域と反対側に位置するよう構成されている。したがって、本発明の光拡散素子においては、外見的には、屈折率変調領域で包囲された第1の領域が、第2の領域に分散した状態となっている。屈折率変調領域においては、屈折率は実質的に連続的に変化する。本明細書において「屈折率が実質的に連続的に変化する」とは、屈折率変調領域において屈折率が実質的に連続的に変化すればよいことを意味する。したがって、例えば、第1の領域と屈折率変調領域との界面、および/または、屈折率変調領域と第2の領域との界面において所定の範囲内(例えば、屈折率差が0.05以下)の屈折率ギャップが存在しても、当該ギャップは許容され得る。
【0014】
本発明においては、光拡散素子は、下記の式(1)および(2)を満足する:
0.0006≦Δn/L ・・・(1)
10≦(Δn)×A×B≦100 ・・・(2)
ここで、Δnは第1の屈折率n1と第2の屈折率n2との差の絶対値|n1−n2|であり、L(nm)は屈折率変調領域の平均厚みであり、Δn/Lの単位は(nm−1)であり、Aは光拡散素子全体を100重量部としたときの第1の領域を構成する材料の重量部数であり、Bは光拡散素子全体を100重量部としたときの第2の領域を構成する材料の重量部数である。本発明によれば、式(1)および(2)を満足させるよう第1の領域および第2の領域ならびに屈折率変調領域を最適化することにより、低後方散乱かつ高ヘイズを実現し得る薄膜の光拡散素子を得ることができる。より具体的には、Δn/Lを所定値以上として(屈折率変化が急峻な屈折率変調領域を形成して)屈折率変調領域が占める空間を小さくし、それにより、第1の領域の存在比率を高めることにより、散乱効率を向上させ、薄膜であっても高いヘイズ(優れた光拡散性)を実現することができる。さらに、屈折率変調領域による後方散乱の抑制との相乗的な効果により、低後方散乱かつ高ヘイズを実現し得る薄膜の光拡散素子を得ることができる。
【0015】
Δnは、好ましくは0.08以上であり、より好ましくは0.10以上である。Δnの上限は、例えば0.30である。Δnが0.08未満であると、十分な大きさの(Δn)×A×Bが得られないので、薄膜で強い光拡散性を有する光拡散素子が得られない(例えば、ヘイズが90%以下となる)場合が多く、その結果、液晶表示装置に組み込んだ場合に光源からの光を十分に拡散できず、視野角が狭くなるおそれがある。Δnが0.30を超えると、屈折率変調領域が形成されても後方散乱を十分に抑制することができず、後方散乱が増大するおそれがある。また、第1の領域および第2の領域を構成する材料の選定が困難となる場合がある。このようなΔn/Lを実現し得る屈折率変調領域の平均厚みLは、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは12nm〜400nm、さらに好ましくは15nm〜300nmである。平均厚みLが5nm未満であると、後方散乱が大きくなる場合がある。平均厚みLが500nmを超えると、第1の領域または第2の領域が減少し、結果として十分な(Δn)×A×Bを得ることができず、薄膜で強い光拡散性を有する光拡散素子が得られない場合がある。
【0016】
Δn/Lは、好ましくは0.0006〜0.01である。Δn/Lが0.0006未満である場合には、Δnが0.08未満であるかLが500nmを超える場合が多いので、後方散乱が増大したり、薄膜で強い光拡散性を有する光拡散素子が得られない場合が多い。Δn/Lが0.01を超えると、屈折率変調領域において屈折率を実質的に連続的に変化させることが困難となる場合がある。
【0017】
(Δn)×A×Bは、式(2)で表されるとおり10〜100であり、好ましくは20〜50である。(Δn)×A×Bが10未満では、薄膜かつ強い光拡散性を有する光拡散素子が得られない場合が多い。(Δn)×A×Bが100を超える場合にはΔnが0.3を超える場合が多く、結果として、後方散乱を有効に抑制できない場合がある。(Δn)×A×Bの値を式(2)の範囲で最適化する技術的意味について以下に説明する。本発明の光拡散素子においては、光拡散性微粒子の好ましい直径は後述するように1μm〜10μmである。このような粒子径の範囲で起こる光散乱はMie散乱の領域であり、Mie散乱の領域では光拡散の強さは、Δnの2乗に比例することが知られている。一方、光に限らず一般的な電磁波の散乱理論によると、体積分率φの電子密度(光の場合は屈折率)の揺らぎがマトリクス内に存在するときの物体の散乱の強さは、φ×(1−φ)に比例する。φが50%を超えると、マトリクスの成分の方が少数成分になり、マトリクスの方が散乱成分に逆転するためである。同様にして、第1の屈折率を有する材料(第1の領域を構成する材料)の重量部数をA、第2の屈折率を有する材料(第1の領域を構成する材料)の重量部数をBとすると、光拡散の強さはA×Bに比例する。すなわち、十分な量の第1の領域(例えば、光拡散性微粒子)が第2の領域(例えば、マトリクス)中に存在するだけでなく、その第1の領域の周りに十分な量の第2の領域が存在する必要がある。ここで、第1の屈折率から第2の屈折率に変化する屈折率変調領域が、第1の領域と第2の領域との境界に存在する場合、この屈折率変調領域は後方散乱の抑制には作用する一方で、光拡散の強さには寄与しない。すなわち、この屈折率変調領域(すなわち、AでもBでもない領域)が光拡散素子の中に多量に存在すると、第1の領域または第2の領域が減少するので、後方散乱を抑制することはできても、薄くてかつ強い光拡散性を有する光拡散素子を得ることは困難である。本発明によれば、Δn/Lが式(1)を満足するよう最適化し、かつ、(Δn)×A×Bが式(2)を満足するよう最適化することにより、強い光拡散性(高いヘイズ)を有し、かつ、後方散乱が少ない、薄膜の光拡散素子を得ることができる。
【0018】
光拡散素子全体を100重量部としたときの第1の領域を構成する材料の重量部数Aは、好ましくは10重量部〜60重量部であり、より好ましくは15重量部〜50重量部である。光拡散素子全体を100重量部としたときの第2の領域を構成する材料の重量部数Bは、好ましくは40重量部〜90重量部であり、より好ましくは50重量部〜85重量部である。重量部数AまたはBがこのような好適範囲から外れる場合には、十分な大きさのΔn×A×Bを得ることができず、薄膜かつ強い光拡散性を有する光拡散素子を得ることができないおそれがある。さらに、重量部数Aが60重量部を超えるまたは重量部数Bが40重量部未満である場合には、光拡散素子の表面が光拡散性微粒子の形状に起因にして凹凸を形成し、光拡散素子の表面から強い後方散乱が発生するおそれがある。本発明によれば、第1の領域(例えば光拡散性微粒子)と第2の領域(例えばマトリクス)の間に存在する屈折率変調領域の屈折率勾配が十分に急峻であるため、光拡散素子中に占める屈折率変調領域の割合が少なくて済むので、薄膜でありながら強い光拡散性を得るに十分な第1の領域および第2の領域を確保することができる。本発明の光拡散素子において屈折率変調領域が占める重量部数Cは、光拡散素子全体を100重量部としたとき、好ましくは1重量部〜20重量部であり、より好ましくは1重量部〜5重量部である。さらに、重量部数Cの重量部数Aに対する割合(C/A)は、好ましくは5%〜100%である。
【0019】
第1の領域、第2の領域および屈折率変調領域は、任意の適切な手段により形成され得る。例えば、以下のような手段が挙げられる:(1)微粒子の中心部から外側に向かって連続的に屈折率が変化するいわゆるGRIN微粒子などの屈折率傾斜微粒子を樹脂中に分散させ、屈折率傾斜部分を屈折率変調領域として利用すること;(2)マトリクスに樹脂成分と超微粒子成分とを用い、超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配により、マトリクスと光拡散性微粒子との界面またはその近傍に屈折率変調領域を形成すること。以下、マトリクスに樹脂成分と超微粒子成分とを用いる実施形態について主に説明し、屈折率傾斜微粒子を用いる実施形態については、その特徴的な部分のみを簡単に説明する。
【0020】
1つの実施形態においては、本発明の光拡散素子は、マトリクスと該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有し、該光拡散性微粒子の表面近傍外部に、屈折率が実質的に連続的に変化する屈折率変調領域が形成されている。すなわち、光拡散性微粒子が第1の領域に対応し、マトリクスが第2の領域に対応する。本実施形態の光拡散素子は、マトリクスと光拡散性微粒子の屈折率差により、光拡散機能を発現する。上記の通り、光拡散性微粒子の表面近傍外部に屈折率変調領域が形成されているので、マトリクスは、該光拡散性微粒子の表面近傍外部の屈折率変調領域と、当該屈折率変調領域の外側(光拡散性微粒子から離れた側)の屈折率一定領域とを有する。好ましくは、マトリクスにおける屈折率変調領域以外の部分は、実質的には屈折率一定領域である。上記の通り、本明細書において「屈折率が実質的に連続的に変化する」とは、屈折率変調領域において少なくとも光拡散性微粒子表面から屈折率一定領域まで屈折率が実質的に連続的に変化すればよいことを意味する。したがって、例えば、光拡散性微粒子と屈折率変調領域との界面、および/または、屈折率変調領域と屈折率一定領域との界面において所定の範囲内(例えば、屈折率差が0.05以下)の屈折率ギャップが存在しても、当該ギャップは許容され得る。
【0021】
本実施形態においては、上記式(1)および(2)におけるΔnはマトリクスの平均屈折率nと光拡散性微粒子の屈折率nとの差の絶対値|n−n|であり、L(nm)は屈折率変調領域の平均厚みであり、Δn/Lの単位は(nm−1)であり、Aは光拡散素子全体を100重量部としたときの光拡散性微粒子の重量部数であり、Bは光拡散素子全体を100重量部としたときのマトリクスの重量部数である。好ましくは、n>nである。なお、本実施形態において式(2)に関して言及する場合のみ、マトリクスは、光拡散素子から光拡散性微粒子および屈折率変調領域を除いた部分(すなわち、屈折率一定領域)を意味する。
【0022】
図1Aは、本実施形態による光拡散素子の概略断面図であり、図1Bは図1Aの光拡散素子における光拡散微粒子近傍を拡大して説明する模式図である。マトリクスは、好ましくは、樹脂成分および超微粒子成分を含む。図1Aの光拡散素子100は、樹脂成分11および超微粒子成分12を含むマトリクス10と、マトリクス10中に分散された光拡散性微粒子20とを有する。図1Aにおいては、光拡散性微粒子20の表面近傍外部に屈折率変調領域30が形成されている。屈折率変調領域30においては、上記のように、屈折率が実質的に連続的に変化する。
【0023】
好ましくは、屈折率変調領域30においては、屈折率が実質的に連続的に変化することに加えて、上記屈折率変調領域の最外部の屈折率と上記屈折率一定領域の屈折率とが実質的に同一である。言い換えれば、本実施形態の光拡散素子においては、屈折率変調領域から屈折率一定領域にかけて屈折率が連続的に変化し、好ましくは光拡散性微粒子から屈折率一定領域にかけて屈折率が連続的に変化する(図2)。好ましくは、当該屈折率変化は、図2に示すように滑らかである。すなわち、屈折率変調領域と屈折率一定領域との境界において、屈折率変化曲線に接線が引けるような形状で変化する。好ましくは、屈折率変調領域において、屈折率変化の勾配は、上記光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて大きくなる。本実施形態によれば、後述するように、光拡散性微粒子とマトリクスの樹脂成分と超微粒子成分とを適切に選択することにより、実質的に連続的な屈折率変化を実現することができる。上記のように急峻で(Δn/Lが非常に大きく)、かつ、このような実質的に連続的な屈折率変化を実現したことが本発明の特徴の1つである。その結果、マトリクス10(実質的には、屈折率一定領域)と光拡散性微粒子20との屈折率差を大きくしても、マトリクス10と光拡散性微粒子20との界面の反射を抑えることができ、後方散乱を抑制することができる。さらに、屈折率一定領域では、光拡散性微粒子20とは屈折率が大きく異なる超微粒子成分12の重量濃度が相対的に高くなるので、マトリクス10(実質的には、屈折率一定領域)と光拡散性微粒子20との屈折率差を大きくすることができる。加えて、本実施形態の光拡散素子においては、上記式(1)を満足することにより、光拡散性微粒子の存在比率を高くして、散乱効率を向上させることができる。その結果、薄膜であっても高いヘイズ(強い拡散性)を実現することができる。したがって、本実施形態の光拡散素子によれば、薄膜でありながら、屈折率差を大きくして高ヘイズを実現し、かつ、後方散乱を顕著に抑制することができる。このような特徴は、コリメートバックライトフロント拡散システムに使用される光拡散素子のように強い拡散性(ヘイズが90%以上)が要求される用途において特に好適である。一方、屈折率変調領域が形成されない従来の光拡散素子によれば、屈折率差を大きくすることにより強い拡散性(高ヘイズ値)を付与しようとすると、界面での屈折率のギャップを解消することができない。その結果、光拡散性微粒子とマトリクスとの界面での反射による後方散乱が大きくなってしまうので、外光の存在下で黒表示が十分に黒くならない(いわゆる黒が浮いてしまう)場合が多い。本発明によれば、上記式(1)および(2)を満足し、かつ屈折率が実質的に連続的に変化する屈折率変調領域を形成することにより、上記従来技術の問題を解決し、ヘイズ値が高く、強い拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制された薄膜の光拡散素子を得ることができる。
【0024】
好ましくは、上記光拡散素子100は、式(3)を満足する:
0.005≦L/r≦0.40 ・・・(3)
ここで、rは上記光拡散性微粒子の半径(nm)である。L/rは、より好ましくは0.02〜0.15である。L/rが0.005未満である場合、十分な厚みの屈折率変調領域が形成されないので、後方散乱を良好に抑制することができない場合が多い。L/rが0.40を超える場合、十分な大きさのΔn×A×Bが得られない場合が多く、しかもΔn/Lが小さくなるので、薄膜でかつ強い光拡散性を有する光拡散素子を得ることができない場合がある。本発明によれば、上記のように屈折率変調領域の平均厚みLを非常に薄くすることができるので、L/rを非常に小さくすることができる。その結果、上記光拡散性微粒子の散乱能を十分に維持しつつ、後方散乱を良好に抑制することができる。したがって、薄膜であっても高いヘイズ(強い拡散性)を実現することができる。
【0025】
上記屈折率変調領域30の厚み(屈折率変調領域最内部から屈折率変調領域最外部までの距離)は、一定であってもよく(すなわち、屈折率変調領域が光拡散性微粒子の周囲に同心球状に拡がってもよく)、光拡散性微粒子表面の位置によって厚みが異なっていてもよい(例えば、金平糖の外郭形状のようになっていてもよい)。好ましくは、屈折率変調領域30の厚みは、光拡散性微粒子表面の位置によって異なっている。このような構成であれば、屈折率変調領域30において、屈折率をより滑らかに連続的に変化させることができる。上記平均厚みLは、屈折率変調領域30の厚みが光拡散性微粒子表面の位置によって異なる場合の平均厚みであり、厚みが一定である場合にはその厚みである。
【0026】
上記のように、マトリクス10は、好ましくは樹脂成分11および超微粒子成分12を含む。好ましくは、上記屈折率変調領域30は、マトリクス10中の超微粒子成分12の分散濃度の実質的な勾配により形成されている。具体的には、屈折率変調領域30においては、光拡散性微粒子20から遠ざかるにつれて、超微粒子成分12の分散濃度(代表的には、重量濃度で規定される)が高くなる(必然的に、樹脂成分11の重量濃度が低くなる)。言い換えれば、屈折率変調領域30における光拡散性微粒子20の最近接領域には、超微粒子成分12が相対的に低濃度で分散しており、光拡散性微粒子20から遠ざかるにつれて超微粒子成分12の濃度が増大する。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)画像によるマトリクス10中の超微粒子成分12の面積比率は、光拡散性微粒子20に近接する側では小さく、マトリクス10に近接する側では大きく、当該面積比率は光拡散性微粒子側からマトリクス側(屈折率一定領域側)に実質的な勾配を形成しながら変化する。その代表的な分散状態を表すTEM画像を図3に示す。本明細書において、「透過型電子顕微鏡画像によるマトリクス中の超微粒子成分の面積比率」とは、光拡散性微粒子の直径を含む断面の透過型電子顕微鏡画像において、所定範囲(所定面積)のマトリクスに占める超微粒子成分の面積の比率をいう。当該面積比率は、超微粒子成分の3次元的な分散濃度(実際の分散濃度)に対応する。例えば、上記のような面積比率であれば、超微粒子成分12の分散濃度は、その濃度変化の勾配が光拡散性微粒子20に近接する側では小さく、屈折率一定領域に近接する側では大きく、光拡散微粒子側から屈折率一定領域側に実質的な勾配を形成しながら変化する。言い換えれば、超微粒子成分12の分散濃度は、その濃度変化の勾配が光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて大きくなる。当該超微粒子成分の面積比率は、任意の適切な画像解析ソフトにより求めることができる。なお、上記面積比率は、代表的には、超微粒子成分の各粒子間の平均最短距離に対応する。具体的には、超微粒子成分の各粒子間の平均最短距離は、屈折率変調領域においては光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて短くなり、屈折率一定領域において一定となる(例えば、平均最短距離は、光拡散性微粒子の最近接領域では3nm〜100nm程度であり、屈折率一定領域においては1nm〜20nmである)。平均最短距離は、図3のような分散状態のTEM画像を二値化し、例えば画像解析ソフト「A像くん」(旭化成エンジニアリング社製)の重心間距離法を用いて算出することができる。以上のように、本実施形態によれば、超微粒子成分12の分散濃度の実質的な勾配を利用してマトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に屈折率変調領域30を形成することができるので、簡便な手順で、かつ、低コストで光拡散素子を製造することができる。さらに、超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配を利用して屈折率変調領域を形成することにより、屈折率変調領域30と屈折率一定領域との境界において屈折率を滑らかに変化させることができる。さらに、樹脂成分および光拡散性微粒子と屈折率が大きく異なる超微粒子成分を用いることにより、光拡散性微粒子とマトリクス(実質的には、屈折率一定領域)との屈折率差を大きく、かつ、屈折率変調領域の屈折率勾配を急峻にすることができる。
【0027】
上記屈折率変調領域(実質的には、上記のような超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配)は、マトリクスの樹脂成分および超微粒子成分ならびに光拡散性微粒子の構成材料、ならびに化学的および熱力学的特性を適切に選択することにより形成することができる。例えば、樹脂成分および光拡散性微粒子を同系の材料(例えば有機化合物同士)で構成し、超微粒子成分を樹脂成分および光拡散性微粒子とは異なる系の材料(例えば無機化合物)で構成することにより、屈折率変調領域を良好に形成することができる。さらに、例えば、樹脂成分および光拡散性微粒子を同系材料の中でも相溶性の高い材料同士で構成することが好ましい。屈折率変調領域の厚みおよび屈折率勾配は、マトリクスの樹脂成分および超微粒子成分ならびに光拡散性微粒子の化学的および熱力学的特性を調整することにより制御することができる。なお、本明細書において「同系」とは、化学構造や特性が同等または類似であることをいい、「異なる系」とは、同系以外のものをいう。同系か否かは、基準の選択の仕方によって異なり得る。例えば、有機か無機かを基準にした場合、有機化合物同士は同系の化合物であり、有機化合物と無機化合物とは異なる系の化合物である。ポリマーの繰り返し単位を基準にした場合、例えばアクリル系ポリマーとエポキシ系ポリマーとは有機化合物同士であるにもかかわらず異なる系の化合物であり、周期律表を基準にした場合、アルカリ金属と遷移金属とは無機元素同士であるにもかかわらず異なる系の元素である。
【0028】
より具体的には、上記のような超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配は、以下の(1)〜(2)またはそれらの適切な組み合わせにより実現され得る:(1)マトリクス中の超微粒子成分の分散濃度を調整すること。例えば、超微粒子成分の分散濃度を大きくすることにより、超微粒子成分同士の電気的な反発が大きくなり、結果として、光拡散微粒子近傍まで超微粒子成分が存在することになり、屈折率変調領域において急峻な屈折率勾配を形成することができる(屈折率変調領域の厚みが小さくなる)。(2)光拡散性微粒子の架橋度を調整すること。例えば、架橋度が低い光拡散性微粒子では、微粒子表面の構成ポリマー分子の自由度が高くなるので、超微粒子成分が近寄りにくくなる。その結果、屈折率変調領域において緩やかな屈折率勾配を形成することができる(屈折率変調領域の厚みが大きくなる)。好ましくは、上記(1)および(2)を適切に組み合わせることにより、上記のような超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配が実現され得る。例えば、ジルコニアの超微粒子成分とPMMAの光拡散性微粒子とを用い、当該超微粒子成分の分散濃度をマトリクス100重量部に対して30重量部〜70重量部に設定し、かつ、後述の樹脂成分前駆体に対する膨潤度が100%〜200%である光拡散性微粒子を用いることにより、マトリクス10中の超微粒子成分12の分散濃度が、光拡散性微粒子20に近接する側では小さく、屈折率一定領域に近接する側では大きく、光拡散微粒子側から屈折率一定領域側に実質的な勾配を形成しながら変化するような、分散濃度勾配を実現することができる。さらに、光拡散性微粒子表面の位置によって厚みが異なる(例えば、金平糖の外郭形状のような)屈折率変調領域を形成することができる。ここで、「膨潤度」とは、膨潤前の粒子の平均粒径に対する膨潤状態の粒子の平均粒径の比率をいう。
【0029】
上記のとおり、本実施形態の光拡散素子100においては、好ましくはn>nである。図4(a)および図4(b)に比較して示すように、n>nである場合には、n<nである場合に比べて、屈折率変調領域の屈折率勾配が急峻であっても後方散乱をより良好に抑制することができる。
【0030】
本発明の光拡散素子の光拡散特性は、代表的にはヘイズと光拡散半値角によって表される。ヘイズとは、光の拡散の強さ、すなわち入射光の拡散度合いを示すものである。一方、光拡散半値角とは、拡散光の質、すなわち拡散させる光の角度範囲を示すものである。本発明の光拡散素子は、ヘイズが高い場合にその効果が十分に発揮される。光拡散素子のヘイズは、好ましくは90%以上であり、より好ましくは90%〜99.9%であり、さらに好ましくは92%〜99.9%であり、特に好ましくは95%〜99.9%であり、とりわけ好ましくは96%〜99.9%であり、最も好ましくは97%〜99.9%である。ヘイズが90%以上であることにより、コリメートバックライトフロント拡散システムにおけるフロント光拡散素子として好適に用いることができる。また、光拡散素子をバックライト側の偏光素子に用いた場合に、ランプイメージ等の輝度ムラを良好に解消することができる。さらに、フロント基板(例えば、タッチパネル)を有する液晶表示装置に光拡散素子を用いた場合に、光拡散素子がスクリーンとして十分に機能するので、視差を低減し得る。特に平行光光源装置を用いる液晶表示装置においては、正面コントラスト比の向上と視差の低減を両立できるという点で好適である。本発明によれば、このような非常に高いヘイズを有し、かつ、後方散乱が抑制された光拡散素子が得られ得る。なお、コリメートバックライトフロント拡散システムとは、液晶表示装置において、コリメートバックライト光(一定方向に集光された、輝度半値幅の狭い(例えば、3°〜35°もしくは±1.5°〜±17.5°の)バックライト光)を用い、上側偏光板の視認側にフロント光拡散素子を設けたシステムをいう。ヘイズは、JIS 7136に準じて求めることができる。
【0031】
上記光拡散素子の光拡散特性は、光拡散半値角で示すならば、好ましくは10°〜150°(片側5°〜75°)であり、より好ましくは10°〜100°(片側5°〜50°)であり、さらに好ましくは30°〜80°(片側15°〜40°)である。光拡散半値角が小さすぎると、斜めの視野角(例えば、白輝度)が狭くなる場合がある。光拡散半値角が大きすぎると、後方散乱が大きくなる場合がある。光拡散素子をバックライト側の偏光素子に用いる場合には、光拡散半値角は、好ましくは25°(片側12.5°)以上であり、より好ましくは30°〜140°(片側15°〜70°)であり、さらに好ましくは50°〜120°(片側25°〜60°)である。
【0032】
光拡散素子は、後方散乱率が低ければ低いほど好ましい。具体的には、後方散乱率は、好ましくは0.5%以下である。なお、光拡散素子をバックライト側偏光素子に用いる場合には、後方散乱率は3%以下程度であればよく、より好ましくは2%以下である。
【0033】
上記光拡散素子の厚みは、目的や所望の拡散特性に応じて適切に設定され得る。具体的には、上記光拡散素子の厚みは、好ましくは3μm〜50μm、より好ましくは4μm〜50μm、さらにより好ましくは4μm〜30μm、特に好ましくは4μm〜20μmである。本発明によれば、このように非常に薄い厚みにもかかわらず、上記のような非常に高いヘイズ(優れた光拡散性)を有する光拡散素子が得られ得る。さらに、このような薄い厚みであれば折り曲げても割れたりせず、ロール状での保管が可能となる。加えて、後述するように、本発明の光拡散素子は塗工により形成され得るので、例えば、光拡散素子の製造と偏光板への貼り合わせとをいわゆるロール・トゥ・ロールで連続的に行うことができる。したがって、本発明の光拡散素子は、光拡散素子自体の生産性が非常に優れ、かつ、偏光板のような他の光学部材との貼り合わせの製造効率もきわめて高い。なお、ロール・トゥ・ロールとは、長尺のフィルム同士をロール搬送しながら、その長手方向を揃えて連続的に貼り合わせる方法をいう。
【0034】
上記光拡散素子は、液晶表示装置に好適に用いられ、コリメートバックライトフロント拡散システム、フロント基板を有する液晶表示装置に特に好適に用いられる。光拡散素子は、単独でフィルム状または板状部材として提供してもよく、任意の適切な基材や偏光板に貼り付けて複合部材として提供してもよい。光拡散素子の上に反射防止層が積層されてもよい。また、光拡散素子は、液晶表示装置のバックライト部にも好適に用いられ得る。
【0035】
A−2.マトリクス
上記のとおり、マトリクス10は、好ましくは樹脂成分11および超微粒子成分12を含む。上記のように、ならびに、図1Aおよび図1Bに示すように、超微粒子成分12は、マトリクス10と光拡散性微粒子20との界面近傍に屈折率変調領域30を形成するようにして、樹脂成分11に分散している。
【0036】
A−2−1.樹脂成分
樹脂成分11は、上記屈折率変調領域が形成される限りにおいて、任意の適切な材料で構成される。好ましくは、上記のように、樹脂成分11は、光拡散性微粒子と同系の化合物であってかつ超微粒子成分とは異なる系の化合物で構成される。これにより、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍(光拡散性微粒子の表面近傍)に屈折率変調領域を良好に形成することができる。さらに好ましくは、樹脂成分11は、光拡散性微粒子と同系の中でも相溶性の高い化合物で構成される。これにより、所望の屈折率勾配を有する屈折率変調領域を形成することができる。より詳細には、樹脂成分は、光拡散性微粒子の近傍においては、局所的には、超微粒子成分と均一溶解もしくは分散している状態よりも、むしろ、樹脂成分のみで光拡散性微粒子を取り囲む方が、系全体のエネルギーが安定する場合が多い。その結果、樹脂成分の重量濃度は、光拡散性微粒子の最近接領域において、マトリクス全体における樹脂成分の平均重量濃度よりも高く、光拡散性微粒子から遠ざかるにつれて低くなる。したがって、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍(光拡散性微粒子の表面近傍)に屈折率変調領域を良好に形成することができる。
【0037】
上記樹脂成分は、好ましくは有機化合物で構成され、より好ましくは電離線硬化型樹脂で構成される。電離線硬化型樹脂は、塗膜の硬度に優れているため、後述する超微粒子成分の弱点である機械強度を補いやすい。また、光拡散素子をバックライト側の偏光素子に用いる場合には、得られる偏光素子にハードコート性を付与することができる。電離線としては、例えば、紫外線、可視光、赤外線、電子線が挙げられる。好ましくは紫外線であり、したがって、樹脂成分は、特に好ましくは紫外線硬化型樹脂で構成される。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート樹脂(エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリルアクリレート、エーテルアクリレート)などのラジカル重合型モノマーおよび/またはオリゴマーから形成される樹脂が挙げられる。アクリレート樹脂を構成するモノマー成分(前駆体)の分子量は、好ましくは200〜700である。アクリレート樹脂を構成するモノマー成分(前駆体)の具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA:分子量298)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA:分子量212)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:分子量632)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA:分子量578)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA:分子量296)が挙げられる。前駆体には、必要に応じて、開始剤を添加してもよい。開始剤としては、例えば、UVラジカル発生剤(BASFジャパン社製イルガキュア907、同127、同192など)、過酸化ベンゾイルが挙げられる。上記樹脂成分は、上記電離線硬化型樹脂以外に別の樹脂成分を含んでいてもよい。別の樹脂成分は、電離線硬化型樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。別の樹脂成分の代表例としては、脂肪族系(例えば、ポリオレフィン)樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。別の樹脂成分を用いる場合、その種類や配合量は、上記屈折率変調領域が良好に形成されるよう調整される。
【0038】
上記樹脂成分は、代表的には、下記式(4)を満足する:
|n−n|<|n−n|・・・(4)
式(4)中、nはマトリクスの樹脂成分の屈折率を表し、nはマトリクスの超微粒子成分の屈折率を表し、nは光拡散性微粒子の屈折率を表す。さらに、樹脂成分は下記式(5)も満足し得る:
|n−n|<|n−n|・・・(5)
樹脂成分の屈折率は、好ましくは1.40〜1.60である。
【0039】
上記樹脂成分の配合量は、マトリクス100重量部に対して、好ましくは10重量部〜80重量部であり、より好ましくは20重量部〜80重量部であり、さらに好ましくは20重量部〜65重量部であり、特に好ましくは45重量部〜65重量部である。このような配合量であれば、式(2)を満足することができる。
【0040】
A−2−2.超微粒子成分
超微粒子成分12は、上記のように、好ましくは上記樹脂成分および後述の光拡散性微粒子とは異なる系の化合物で構成され、より好ましくは無機化合物で構成される。好ましい無機化合物としては、例えば、金属酸化物、金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(ジルコニア)(屈折率:2.19)、酸化アルミニウム(屈折率:1.56〜2.62)、酸化チタン(屈折率:2.49〜2.74)、酸化ケイ素(屈折率:1.25〜1.46)が挙げられる。金属フッ化物の具体例としては、フッ化マグネシウム(屈折率:1.37)、フッ化カルシウム(屈折率:1.40〜1.43)が挙げられる。これらの金属酸化物および金属フッ化物は、光の吸収が少ない上に、電離線硬化型樹脂や熱可塑性樹脂などの有機化合物では発現が難しい屈折率を有しているので、光拡散性微粒子との界面から離れるにつれて超微粒子成分の重量濃度が相対的に高くなることにより、屈折率を大きく変調させることができる。光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差を大きくすることにより、薄膜であっても高ヘイズ(高い光拡散性)を実現でき、かつ、屈折率変調領域が形成されるので後方散乱防止の効果も大きい。特に好ましい無機化合物は、酸化ジルコニウムである。
【0041】
上記超微粒子成分もまた、上記式(4)および(5)を満足し得る。上記超微粒子成分の屈折率は、好ましくは1.40以下または1.60以上であり、さらに好ましくは1.40以下または1.70〜2.80であり、特に好ましくは1.40以下または2.00〜2.80である。屈折率が1.40を超えまたは1.60未満であると、光拡散性微粒子とマトリクスとの屈折率差が不十分となり、十分な光拡散性が得られないおそれがあり、また、光拡散素子がコリメートバックライトフロント拡散システムを採用する液晶表示装置に用いられた場合に、コリメートバックライトからの光を十分に拡散できず視野角が狭くなるおそれがある。
【0042】
上記超微粒子成分の平均1次粒子径は、屈折率変調領域の平均厚みLに比べて小さいことが好ましい。より具体的には、平均1次粒子径は、平均厚みLに対して好ましくは1/50〜1/2、より好ましくは1/25〜1/3である。平均1次粒子径が平均厚みLに対して1/2を超えると、屈折率変調領域における屈折率変化が実質的に連続的にならない場合がある。1/50未満である場合、屈折率変調領域の形成が困難になる場合がある。上記平均1次粒子径は、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは1nm〜50nmである。超微粒子成分は2次凝集していてもよく、その場合の平均粒子径(凝集体の平均粒子径)は、好ましくは10nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜80nmであり、さらに好ましくは20nm〜70nmである。このように、光の波長より小さい平均粒径の超微粒子成分を用いることにより、超微粒子成分と樹脂成分との間に幾何光学的な反射、屈折、散乱が生じず、光学的に均一なマトリクスを得ることができる。その結果、光学的に均一な光拡散素子を得ることができる。
【0043】
上記超微粒子成分は、上記樹脂成分との分散性が良好であることが好ましい。本明細書において「分散性が良好」とは、上記樹脂成分と超微粒子成分と(必要に応じて少量のUV開始剤と)揮発溶剤とを混合して得られた塗工液を塗布し、溶剤を乾燥除去して得られた塗膜が透明であることをいう。
【0044】
好ましくは、上記超微粒子成分は、表面改質がなされている。表面改質を行うことにより、超微粒子成分を樹脂成分中に良好に分散させることができ、かつ、上記屈折率変調領域を良好に形成することができる。表面改質手段としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な手段が採用され得る。代表的には、表面改質は、超微粒子成分の表面に表面改質剤を塗布して表面改質剤層を形成することにより行われる。好ましい表面改質剤の具体例としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤、脂肪酸系界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。このような表面改質剤を用いることにより、樹脂成分と超微粒子成分との濡れ性を向上させ、樹脂成分と超微粒子成分との界面を安定化させ、超微粒子成分を樹脂成分中に良好に分散させ、かつ、屈折率変調領域を良好に形成することができる。
【0045】
上記超微粒子成分の配合量は、マトリクス100重量部に対して、好ましくは15重量部〜80重量部であり、より好ましくは20重量部〜70重量部である。光拡散素子をバックライト側の偏光素子に用いる場合には、超微粒子成分の配合量は、マトリクス100重量部に対して、好ましくは10重量部〜70重量部であり、より好ましくは35重量部〜55重量部である.このような配合量であれば、式(2)を満足することができる。
【0046】
A−3.光拡散性微粒子
光拡散性微粒子20もまた、上記屈折率変調領域が良好に形成される限りにおいて、任意の適切な材料で構成される。好ましくは、上記のように、光拡散性微粒子20は、上記マトリクスの樹脂成分と同系の化合物で構成される。例えば、マトリクスの樹脂成分を構成する電離線硬化型樹脂がアクリレート系樹脂である場合には、光拡散性微粒子もまたアクリレート系樹脂で構成されることが好ましい。より具体的には、マトリクスの樹脂成分を構成するアクリレート系樹脂のモノマー成分が例えば上記のようなPETA、NPGDA、DPHA、DPPAおよび/またはTMPTAである場合には、光拡散性微粒子を構成するアクリレート系樹脂は、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、およびこれらの共重合体、ならびにそれらの架橋物である。PMMAおよびPMAとの共重合成分としては、ポリウレタン、ポリスチレン(PS)、メラミン樹脂が挙げられる。特に好ましくは、光拡散性微粒子は、PMMAで構成される。マトリクスの樹脂成分および超微粒子成分との屈折率や熱力学的特性の関係が適切であるからである。さらに、好ましくは、光拡散性微粒子は、架橋構造(三次元網目構造)を有する。架橋構造の粗密(架橋度)を調整することにより、光拡散性微粒子表面において微粒子を構成するポリマー分子の自由度を制御することができるので、超微粒子成分の分散状態を制御することができ、結果として、所望の屈折率勾配を有する屈折率変調領域を形成することができる。例えば、後述の塗工液を塗布する際の光拡散性微粒子の樹脂成分前駆体(溶媒を含んでいてもよい)に対する膨潤度は、好ましくは100%〜200%である。ここで、「膨潤度」とは、架橋度の指標であり、膨潤前の粒子の平均粒径に対する膨潤状態の粒子の平均粒径の比率をいう。
【0047】
上記光拡散性微粒子は、平均粒径(直径)が、好ましくは1μm〜10μmであり、より好ましくは2μm〜5μmである。光拡散性微粒子の平均粒径は、好ましくは、光拡散素子の厚みの1/2以下(例えば、1/2〜1/20)である。光拡散素子の厚みに対してこのような比率を有する平均粒径であれば、光拡散性微粒子を光拡散素子の厚み方向に複数配列することができるので、入射光が光拡散素子を通過する間に当該光を多重に拡散させることができ、その結果、十分な光拡散性が得られ得る。
【0048】
光拡散性微粒子の重量平均粒径分布の標準偏差は、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。重量平均粒径に対して粒径の小さい光拡散性微粒子が多数混在していると、光拡散性が増大しすぎて後方散乱を良好に抑制できない場合がある。重量平均粒径に対して粒径の大きい光拡散性微粒子が多数混在していると、光拡散素子の厚み方向に複数配列することができず、多重拡散が得られない場合があり、その結果、光拡散性が不十分となる場合がある。
【0049】
上記光拡散性微粒子の形状としては、目的に応じて任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、真球状、燐片状、板状、楕円球状、不定形が挙げられる。多くの場合、上記光拡散性微粒子として真球状微粒子が用いられ得る。
【0050】
上記光拡散性微粒子もまた、上記式(4)および(5)を満足し得る。上記光拡散性微粒子の屈折率は、好ましくは1.30〜1.70であり、より好ましくは1.40〜1.60である。
【0051】
上記光拡散性微粒子の配合量は、マトリクス100重量部に対して、好ましくは10重量部〜100重量部であり、より好ましくは10重量部〜40重量部、さらに好ましくは10重量部〜35重量部である。このような配合量であれば、式(2)を満足することができる。例えばこのような配合量で上記好適範囲の平均粒径を有する光拡散性微粒子を含有させることにより、薄膜でかつ非常に優れた光拡散性を有する光拡散素子が得られ得る。光拡散素子をバックライト側の偏光素子に用いる場合には、光拡散性微粒子の配合量は、マトリクス100重量部に対して、好ましくは10重量部〜100重量部であり、より好ましくは15重量部〜40重量部である。
【0052】
A−4.光拡散素子の製造方法
本実施形態の光拡散素子の製造方法は、マトリクスの樹脂成分またはその前駆体と超微粒子成分と光拡散性微粒子とを揮発性溶剤中に溶解または分散させた塗工液を基材に塗布する工程(工程Aとする)と、該基材に塗布された塗工液を乾燥させる工程(工程Bとする)と、を含む。
【0053】
(工程A)
樹脂成分またはその前駆体、超微粒子成分、および光拡散性微粒子については、それぞれ、上記A−2−1項、A−2−2項およびA−3項で説明したとおりである。代表的には、上記塗工液は前駆体および揮発性溶剤中に超微粒子成分および光拡散性微粒子が分散した分散体である。超微粒子成分および光拡散性微粒子を分散させる手段としては、任意の適切な手段(例えば、超音波処理、攪拌機による分散処理)が採用され得る。
【0054】
上記揮発性溶剤としては、上記各成分を溶解または均一に分散し得る限りにおいて、任意の適切な溶剤が採用され得る。揮発性溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、トルエン、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、シクロペンタン、水が挙げられる。
【0055】
上記塗工液は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。例えば、超微粒子成分を良好に分散させるために、分散剤が好適に用いられ得る。添加剤の他の具体例としては、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤が挙げられる。
【0056】
上記塗工液における上記各成分の配合量は、上記A−2項〜A−3項で説明したとおりである。塗工液の固形分濃度は、好ましくは10重量%〜70重量%程度となるように調整され得る。このような固形分濃度であれば、塗工容易な粘度を有する塗工液が得られ得る。
【0057】
上記基材としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切なフィルムが採用され得る。具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、ラクトン変性アクリルフィルムなどが挙げられる。上記基材は、必要に応じて、易接着処理などの表面改質がなされていてもよく、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていてもよい。当該基材は、後述の光拡散素子付偏光板において、保護層として機能し得る場合がある。
【0058】
上記塗工液の基材への塗布方法としては、任意の適切なコーターを用いた方法が採用され得る。コーターの具体例としては、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターが挙げられる。
【0059】
(工程B)
上記塗工液の乾燥方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥が挙げられる。好ましくは、加熱乾燥である。加熱温度は、例えば60℃〜150℃であり、加熱時間は、例えば30秒〜5分である。
【0060】
(工程C)
好ましくは、上記製造方法は、上記塗布工程の後に上記前駆体を重合させる工程(工程C)をさらに含む。重合方法は、樹脂成分(したがって、その前駆体)の種類に応じて任意の適切な方法が採用され得る。例えば、樹脂成分が電離線硬化型樹脂である場合には、電離線を照射することにより前駆体を重合する。電離線として紫外線を用いる場合には、その積算光量は、好ましくは50mJ/cm〜1000mJ/cmであり、より好ましくは200mJ/cm〜400mJ/cmである。電離線の光拡散性微粒子に対する透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。また例えば、樹脂成分が熱硬化型樹脂である場合には、加熱することにより前駆体を重合する。加熱温度および加熱時間は、樹脂成分の種類に応じて適切に設定され得る。好ましくは、重合は電離線を照射することにより行われる。電離線照射であれば、屈折率変調領域を良好に保持したまま塗膜を硬化させることができるので、良好な拡散特性の光拡散素子を作製することができる。前駆体を重合することにより、屈折率変調領域30と屈折率一定領域とを有するマトリクス10が形成される。
【0061】
上記重合工程(工程C)は、上記乾燥工程(工程B)の前に行ってもよく、工程Bの後で行ってもよい。
【0062】
以上のようにして、基材上に、図1Aおよび図1Bに示すような光拡散素子が形成される。
【0063】
本実施形態の光拡散素子の製造方法が、上記工程A〜工程Cに加えて、任意の適切な時点で任意の適切な工程、処理および/または操作を含み得ることは言うまでもない。そのような工程等の種類およびそのような工程等が行われる時点は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0064】
以上のようにして、上記A−1項〜A−3項で説明したような光拡散素子が基材上に形成される。
【0065】
A−5.別の実施形態
図5は、本発明の別の実施形態による光拡散素子の概略断面図である。図5の光拡散素子100’は、マトリクス10と、マトリクス10中に分散された光拡散性微粒子20とを有する。光拡散性微粒子20は、中心部から外側に向かって屈折率が変化する屈折率傾斜粒子(例えば、GRIN微粒子)であり、屈折率傾斜部分が屈折率変調領域30を構成する。代表的には、屈折率傾斜粒子は、中心部と当該中心部を覆う表層部とからなるポリマー粒子である。このようなポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、ビニル系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーが挙げられる。ポリマーを適切に選択することにより、屈折率傾斜を制御することができる。このようなポリマー粒子は、例えば、屈折率の異なる複数のモノマーを用い、それらの共重合において、重合の進行にしたがってモノマー量を変化させることにより、屈折率を段階的にまたは連続的に変化させることができる。このようなポリマー粒子およびその製造方法の詳細は、例えば、特開2006−227279号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。マトリクス10は、例えば、超微粒子成分を用いる形態の樹脂成分に関して上記A−2−1項に記載したような樹脂で構成され得る。マトリクス10は、超微粒子成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。本実施形態においては、光拡散性微粒子20の中心部が第1の領域を構成し、マトリクス10が第2の領域を構成する。屈折率変調領域30においては、好ましくは、屈折率が実質的に連続的に変化する。
【0066】
本実施形態については、構造の特徴的な部分についてのみ簡単に説明した。本実施形態の光拡散素子の全体的な特徴は、樹脂成分および超微粒子成分を含むマトリクスを用いる実施形態に関して上記したとおりである。
【0067】
本発明の光拡散素子は、基材から剥離して単一部材として用いてもよく、基材付光拡散素子として用いてもよく、基材から偏光板等に転写して複合部材(例えば、光拡散素子付偏光板)として用いてもよく、基材ごと偏光板等に貼り付けて複合部材(例えば、光拡散素子付偏光板)として用いてもよい。基材ごと偏光板等に貼り付けて複合部材(例えば、光拡散素子付偏光板)として用いる場合には、当該基材は偏光板の保護層として機能し得る。本発明の光拡散素子は、上記で説明したコリメートバックライトフロント拡散システムを採用した液晶表示装置の視認側拡散素子以外に、例えば、液晶表示装置のバックライト用部材(例えば、バックライト側の偏光素子)、照明器具(例えば、有機EL、LED)用拡散部材として用いられ得る。光拡散素子をバックライト側の偏光素子に用いる場合には、上記の製造方法における基材の代わりに反射型偏光子を用いて、光拡散素子を反射型偏光子に直接形成することができる。
【0068】
ここまで本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されず、第1の屈折率n1を有する第1の領域と;第1の領域を包囲する実質的に球殻状の屈折率変調領域と;屈折率変調領域の第1の領域と反対側に位置し、第2の屈折率n2を有する第2の領域と;を有し、上記式(1)および(2)を満足する光拡散素子を包含する。
【0069】
B.光拡散素子付偏光板
B−1.光拡散素子付偏光板の全体構成
本発明の光拡散素子付偏光板は、1つの実施形態においては、液晶表示装置の視認側に配置される。図6は、本発明の好ましい実施形態による光拡散素子付偏光板の概略断面図である。この光拡散素子付偏光板200は、光拡散素子100と偏光子110とを有する。光拡散素子100は、上記A−1項〜A−5項に記載した本発明の光拡散素子である。光拡散素子100は、光拡散素子付偏光板が液晶表示装置の視認側に配置された場合に最も視認側となるように配置されている。1つの実施形態においては、光拡散素子100の視認側に低反射層または反射防止処理層(アンチリフレクション処理層)が配置されている(図示せず)。図示例においては、光拡散素子付偏光板200は、偏光子の両側に保護層120および130を有する。偏光子および保護層は、任意の適切な接着剤層または粘着剤層を介して貼り付けられている。光拡散素子は、好ましくは保護層または偏光子に直接形成されている。保護層120および130の少なくとも1つは、目的、偏光板の構成および液晶表示装置の構成に応じて省略されてもよい。例えば、光拡散素子を形成する際に用いられる基材が保護層として機能し得る場合には、保護層120が省略され得る。本発明の光拡散素子付偏光板は、コリメートバックライトフロント拡散システムを採用した液晶表示装置およびフロント基板(例えば、タッチパネル、透明保護板)を有する液晶表示装置における視認側偏光板として特に好適に用いられ得る。
【0070】
B−2.偏光子
本明細書において「偏光子」とは、自然光または偏光を直線偏光に変換するものをいう。好ましくは、入射する光を直交する2つの偏光成分に分離し、一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を、吸収、反射および/または散乱させる機能を有する。1つの実施形態においては、上記偏光子110は吸収型偏光子である。吸収型偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
【0071】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。
【0072】
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0073】
B−3.保護層
上記保護層120および130は、偏光板の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0074】
上記保護層(特に、液晶セル側に配置される保護層:内側保護層130)は、光学的に等方性を有することが好ましい。具体的には、内側保護層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは−20nm〜+20nm、さらに好ましくは−10nm〜+10nm、特に好ましくは−6nm〜+6nm、最も好ましくは−3nm〜+3nmである。内側保護層の面内位相差Re(550)は、好ましくは0nm以上10nm以下、さらに好ましくは0nm以上6nm以下、特に好ましくは0nm以上3nm以下である。このような光学的に等方性を有する保護層を形成し得るフィルムの詳細は、特開2008−180961号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。保護層の厚みは、代表的には10μm〜200μmである。
【0075】
B−4.光拡散素子付偏光板の製造方法
図7を参照して、本発明の光拡散素子付偏光板の製造方法の一例について簡単に説明する。図7において、符号111および112は、それぞれ、偏光板および光拡散素子/基材の積層体を巻回するロールであり、符号122は搬送ロールである。図示例では、偏光板(保護層130/偏光子110/保護層120)と、光拡散素子100/基材101の積層体とを矢印方向に送り出し、それぞれの長手方向を揃えた状態で貼り合わせる。その際、光拡散素子100と偏光板の保護層120とが隣接するように貼り合わせる。その後、必要に応じて基材101を剥離することにより、図6に示すような光拡散素子付偏光板200が得られ得る。図示しないが、例えば、偏光板(保護層130/偏光子110)と光拡散素子100/基材101の積層体とを、基材101と偏光子110とが隣接するように貼り合わせ、基材が保護層として機能する光拡散素子付偏光板を作製することもできる。このように、本発明によれば、いわゆるロール・トゥ・ロールを採用することができるので、光拡散素子付偏光板を非常に高い製造効率で製造することができる。さらに、このロール・トゥ・ロール工程は、上記A−4項に記載の光拡散素子の製造工程から連続して行うことができるので、このような手順を採用すれば、光拡散素子付偏光板の製造効率をさらに向上させることができる。
【0076】
C.偏光素子
C−1.偏光素子の全体構成
本発明の偏光素子は、少なくとも1つの偏光子と光拡散素子とを備える。図8は、本発明の好ましい実施形態による偏光素子300の概略断面図であり、図9は、本発明の別の好ましい実施形態による偏光素子300’の概略断面図である。偏光素子300は、反射型偏光子110と、反射型偏光子110の片側に配置された光拡散素子100とを備える。偏光素子300’は、反射型偏光子110と、反射型偏光子110の片側に配置された光拡散素子100と、反射型偏光子110のもう片側に配置された吸収型偏光子120とを備える。光拡散素子100は、上記A−1項〜A−5項に記載した本発明の光拡散素子である。好ましくは、光拡散素子は、反射型偏光子に直接形成されている。図示しないが、本発明の偏光素子は、偏光子および光拡散素子以外に、その他の部材を備え得る。その他の部材としては、例えば、保護層が挙げられる。本発明の偏光素子の厚みは、その構成により異なるが、代表的には20μm〜300μmである。
【0077】
好ましい実施形態においては、上記偏光素子は、液晶表示装置の液晶セルのバックライト側に配置される。反射型偏光子と本発明の光拡散素子とを組み合わせることにより、輝度向上機能と光拡散機能とを兼ね備えた光学部材を提供することができる。好ましくは、光拡散素子がリア側(バックライト側)となるように配置される。本発明の光拡散素子は後方散乱が極めて低く、反射型偏光子から反射された反射光をリア側(バックライト側)に効率的に拡散し得る。その結果、反射型偏光子からの反射光を有効利用することができる。光拡散素子が反射型偏光子に直接形成されている場合、空気層が排除されて反射光をさらに有効利用することができる。さらに、図9の形態においては、光拡散素子付反射型偏光子と吸収型偏光子とを組み合わせることにより、輝度向上機能と光拡散機能とを兼ね備えた液晶パネルのリア側(バックライト側)の偏光素子として利用することができる。また、吸収型偏光子(偏光板)と組み合わせることにより、反射型偏光子のシートとしての自立性を考慮する必要がなく、より薄型(例えば、25μm〜100μm)の反射型偏光子を用いることができる。その結果、液晶表示装置の薄型化および軽量化にさらに寄与する。
【0078】
C−2.反射型偏光子
反射型偏光子としては、自然光から直線偏光を、直交する軸方向で反射/透過することで、分離させる機能を有するものであれば、任意の適切なものが採用され得る。例えば、グリッド型偏光子(ワイヤーグリッド偏光子)、屈折率差を有する2種類以上の材料による2層以上の多層薄膜積層体、ビームスプリッターなどに用いられる屈折率の異なる蒸着多層薄膜、屈折率差を有する2種以上の材料による2層以上の複屈折層多層薄膜積層体、屈折率差を有する2種以上の樹脂を用いた2層以上の樹脂積層体を延伸したものが挙げられる。具体的には、延伸により位相差を発現する材料(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート)またはアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)と、位相差発現量の少ない樹脂(例えば、JSR社製のアートンのようなノルボルネン系樹脂)とを交互に積層した多層積層体を一軸延伸して得られるものを用いることができる。市販品としては、例えば、日東電工社製の商品名「ニポックスAPCF」、3M社製の商品名「DBEF」が挙げられる。反射型偏光子の厚みは、代表的には25μm〜200μm程度である。
【0079】
C−3.吸収型偏光子
吸収型偏光子としては、例えば、B−2項に記載の偏光子が挙げられる。実用的には、吸収型偏光子は、その少なくとも片側に保護層が配置された構成、すなわち偏光板の形態で、本発明の偏光素子に組み込まれる。保護層としては、例えば、B−3項に記載のフィルムが挙げられる。
【0080】
D.液晶表示装置
図10は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。液晶表示装置500は、液晶セル510と、液晶セルの両側に配置された偏光板520および530と、偏光板530の外側に設けられたバックライトユニット540と、偏光板520の外側(視認側)に設けられた光拡散素子100とを備える。バックライトユニット540は、液晶セル510に向かってコリメート光を出射する平行光光源装置である。目的に応じて任意の適切な光学補償板(位相差板)が、液晶セル510と偏光板520および/または530との間に配置され得る。液晶セル510は、一対の基板(代表的には、ガラス基板)511および512と、基板511および512間に配された、表示媒体としての液晶を含む液晶層513とを有する。
【0081】
光拡散素子100は、上記A−1項〜A−5項に記載した本発明の光拡散素子である。あるいは、光拡散素子100および視認側偏光板520の代わりに、上記B項に記載した本発明の光拡散素子付偏光板200を配置してもよい。光拡散素子は、液晶セルを通過した光(代表的には、後述のようなコリメート光)を透過および拡散させる。本発明の液晶表示装置によれば、コリメート光を出射するバックライトユニットを用い、かつ、本発明の光拡散素子を視認側に配置することにより、優れた視野角特性を有し、かつ、階調反転が抑制された液晶表示装置を得ることができる。さらに、平行光光源装置による正面コントラスト比の向上効果が格段に向上する。
【0082】
上記バックライトユニットは、コリメート光を出射し得る任意の適切な構成を有し得る。例えば、バックライトユニットは、光源と、光源から出射された光をコリメートする集光素子とを有する(いずれも図示せず)。この場合、集光素子としては、光源から出射された光をコリメートし得る任意の適切な集光素子が採用され得る。光源自体がコリメート光を出射し得る場合には、集光素子は省略され得る。バックライトユニット(平行光光源装置)の具体的構成としては、例えば、以下のようなものが挙げられる:(1)レンチキュラーレンズまたは砲弾型レンズの平坦面側のレンズの焦点以外の部分に遮光層または反射層を設けた集光素子を、光源(例えば、冷陰極蛍光ランプ)の液晶セル側に配置した構成(例えば、特開2008−262012号公報);(2)サイドライト型LED光源と、その導光板と、導光板側に凸面が形成され、該導光板の液晶セル側に配置された変角プリズムとを有する構成(本構成においては、必要に応じて異方性拡散素子がさらに用いられ得る;例えば、特許第3442247号);(3)光吸収性樹脂と透明性樹脂が交互にストライプ状に形成されたルーバー層をバックライトとバックライト側偏光板との間に配置した構成(例えば、特開2007−279424号公報);(4)光源として砲弾型LEDを用いた構成(例えば、特開平6−130255号公報);(5)フレネルレンズと必要に応じて拡散板とを用いた構成(例えば、特開平1−126627号公報)。これらの詳細な構成を記載した上記公報は、本明細書に参考として援用される。以下、一例として、(5)の構成について説明する。
【0083】
図11Aは、上記(5)の平行光光源装置の概略図である。該平行光光源装置7は、光源1、プロジェクションレンズ2、レンチキュラーレンズ3、反射板4、およびフレネルレンズ5を備える。光源1から照射された光線は、プロジェクションレンズ2およびレンチキュラレンズ3を透過し、反射板4の鏡面で反射される。反射された光線は、フレネルレンズ5を透過し、平行光として照射される。
【0084】
上記(5)の形態の平行光光源装置は、投影型バックライトユニットのフレネルレンズの光源側もしくは液晶セル側に所望の拡散性を付与する拡散板を配置するのが好ましい。図11Bは、拡散板6がフレネルレンズ5の液晶セル側に配置された形態を示す。光源1から照射された光線は、プロジェクションレンズ2およびレンチキュラレンズ3を透過し、反射板4の鏡面で反射される。反射された光線は、フレネルレンズ5を透過し、平行光として照射される。照射された平行光は、さらに拡散板6を透過し、拡散照射される。
【0085】
上記拡散板の拡散性は、ヘイズとしては、好ましくは2%〜92%であり、より好ましくは30%〜80%である。また、該拡散板の拡散性は、光拡散半値角としては、好ましくは1°〜30°であり、より好ましくは5°〜20°である。ただし、拡散板は、直進透過成分があってもよく、その場合の光拡散半値角は、直進透過成分を除いた拡散光について半値角が1°〜30°であることが好ましい。
【0086】
このような性質を有する拡散板としては、任意の適切なものを用いることができる。具体的には、透明基板フィルム上に微粒子を含むバインダーを塗工した表面凹凸型拡散フィルムもしくは内部拡散フィルム;非相溶の樹脂を配合し押成形した相分離押出シート;エンボスロールにて表面に凹凸パターンを形成したエンボスシート;フレネルレンズの片面または両面に、微粒子を含むバインダーを塗工するなどして微細凹凸形状を付与した、レンズと拡散板との一体構造が挙げられる。
【0087】
バックライトユニット540の拡散性能は、半値角が好ましくは1°〜40°であり、より好ましくは2°〜30°であり、さらに好ましくは2.5°〜20°である。半値角が1°未満であると、光拡散素子の拡散性能を向上させても、グレア(眩しさ)を低減することができないおそれがある。半値角が40°を超えると、黒表示で、完全に補償されない斜め光が発生し、それが光拡散素子により正面にも拡散するため、黒輝度が上昇し、正面コントラスト比を低下させるおそれがある。なお、本発明において、半値角とは、図12に示すように、輝度が極大となる方向から、角度を振ったときの輝度が1/2となる角度の半値全幅のことをいう。ただし、半値角が1°未満であっても、拡散の裾が広がっているようであれば、1°以上であるのと同じ効果が得られる場合がある。例えば、以下の式で示される平均拡散角度θdが1°以上であれば、多重拡散する光拡散素子との組み合わせにより、グレア(眩しさ)を低減することができる。
【数1】

【0088】
好ましくは、液晶層513は、黒表示時に垂直配向した液晶分子を含む。このような液晶層を有する液晶セルの駆動モードとしては、例えば、VA(垂直配向)モード、MVA(マルチドメイン垂直配向)モード、PVA(パターンVA)モード、TN(ツイスティッドネマティック)モード、ECB(電界制御複屈折)モード、OCB(光学補償ベンド)モードが挙げられる。また、液晶セルの駆動モードは、IPS(インプレーンスイッチング)モードであってもよい。
【0089】
図13は、本発明の別の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。この液晶表示装置500’は、図10の液晶表示装置における光拡散素子100の視認側にフロント基板560をさらに備える。光拡散素子100とフロント基板560との間には、接着剤層、粘着剤層または両面テープ(いずれも図示せず)が配置される。
【0090】
フロント基板560は、液晶表示装置の視認側表面に設けられる基板である限り、任意の適切なものを用いることができる。好ましくは、フロント基板は、液晶セルを保護する透明保護板、または、タッチパネルである。透明保護板としては、任意の適切なものを用いることができる。具体的には、ガラス板やプラスチック基板等が挙げられ、好ましくはアクリル板などのプラスチック基板である。タッチパネルとしては特に制限はなく、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式など種々のものを用いることができる。
【0091】
上記抵抗膜方式のタッチパネルは、可動電極部、固定電極部および、可動電極部と固定電極部との間に配置されるスペーサーを有する。可動電極部および固定電極部は、透明導電性薄膜とガラス板や透明樹脂フィルム等の透明支持体との積層体である。抵抗膜方式のタッチパネルでは、可動電極部の導電性薄膜と、固定電極部の導電性薄膜がスペーサーを介して対向するように配置される。抵抗膜式タッチパネルは、可動電極部が視認側になるように配置される。可動電極部は、入力時には指やペン等により押圧を受けることにより、固定電極部と接触して通電し、それにより接触部の位置が検出される。
【0092】
光拡散素子100とフロント基板560との間に配置される接着剤層または粘着剤層を形成する材料としては、被着体の種類や用途に応じて、任意の適切な材料を用いることができる。好ましくは、上記接着剤層または粘着剤層を形成する材料は、アクリル系重合体をベースポリマーとする感圧性接着剤(アクリル系粘着剤ともいう)である。透明性、接着性、耐候性、および耐熱性に優れるからである。上記アクリル系粘着剤層の厚みは、被着体の材質や用途に応じて適切に調整され得、通常、5μm〜50μmである。
【0093】
本実施形態の液晶表示装置に用いられる本発明の光拡散素子は厚みが薄いため、貼り合せ手段として両面テープを用いた場合であっても、空気層の影響が小さく、視差の低減効果が得られ得る。両面テープとしては、液晶表示装置に用いられ得るものであれば、任意の適切なものを用いることができる。両面テープは、市販品を用いてもよい。好適に用いることができる市販品としては、日東電工社製、商品名「No.532」等が挙げられる。両面テープの厚みは好ましくは、10μm〜100μmであり、より好ましくは30μm〜80μmである。両面テープの厚みを上記の範囲内に設定することにより、形成される空気層の影響が小さくなり、光拡散素子を用いることによる視差の低減効果がより一層発揮され得る。なお、本明細書において、両面テープの厚みとは両側の剥離紙を剥離した後の粘着面の厚みをいう。
【0094】
本発明の液晶表示装置は、図13の液晶表示装置と光学的に同等な構成を有していてもよい。すなわち、フロント基板がタッチパネルである場合、光拡散素子は、タッチパネルのガラス板と導電性薄膜との間に配置されてもよい。より具体的には、光拡散素子は、可動電極部のガラス板と導電性薄膜との間に配置されてもよく、固定電極部のガラス板と導電性薄膜との間に配置されてもよい。また、光拡散素子は、タッチパネルの上部(視認側)に配置されるガラス板と導電性薄膜との間に配置されていてもよく、タッチパネルの下部(液晶セル側)に配置されるガラス板と導電性薄膜との間に配置されていてもよい。
【0095】
本発明のさらに別の実施形態による液晶表示装置は、液晶セルと、バックライト部と、該液晶セルと該バックライト部との間に配置された上記C項に記載の本発明の偏光素子と、を備える。図14は、本発明のさらに別の実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。この液晶表示装置500”は、液晶セル510と、光源551が配列されたランプハウス550と、液晶セル510の両側に配置された偏光板520および530と、偏光板530のバックライト側に配置された反射型偏光子110と、反射型偏光子110のバックライト側に設けられた光拡散素子100と、光拡散素子100とランプハウス550との間に配置された拡散板552とを備える。本実施形態では、ランプハウスおよび拡散板がバックライト部を構成する。1つの実施形態においては、反射型偏光子110と光拡散素子100とは一体化されて、本発明の偏光素子として提供され得る。光源551(ランプハウス550)は、液晶セル510と対向して配置されている(直下型方式)。図示しないが、目的に応じて任意の適切な光学補償板(位相差板)が、液晶セル510と偏光板520および/または530との間に配置され得る。液晶セル510については、上記の通りである。
【0096】
直下型方式について説明したが、バックライト部は、エッジライト方式であってもよい。エッジライト方式では、通常、直下型方式の構成に加え、導光板およびプリズムシートをさらに含む。導光板は液晶セルと対向して設けられ、光源は導光板の側面に配置される。また、プリズムシートは、導光板の主面上に敷設される。一般的に、直下型方式は高い輝度が得られるという利点を有し、エッジライト方式は液晶表示装置をより薄くできるという利点を有する。
【0097】
光源551としては、通常、冷陰極管(CCFL)、LED等の棒状光源が使用される。これらの光源は拡散光を発し、表示に必要な輝度や光量、所望の消費電力等との関係で、所定の高さに、一定の間隔をもってランプハウス550に配列されている。(光源から拡散板までの距離)/(隣接する光源の間隔)の比率は、好ましくは、0.7以上である。このような比においても、上記光拡散素子を有する偏光素子を用いることで、ランプイメージを良好に解消し得る。なお、比率が0.7を下回る場合であっても、例えば、光拡散性を有する層を、適切な位置(例えば、液晶パネルの視認側)に設けることで、ランプイメージを解消し得る。
【0098】
例えば、上記比率が2.0を超える場合、拡散板540を透明板(例えば、アクリル板)にかえても、パネル部による若干の光拡散性まで含めることで、ランプイメージを良好に解消し得る。その結果、光の利用効率をさらに向上させることができる。
【0099】
従来の液晶表示装置においては、拡散フィルムおよび拡散シートが据え置きされている。この場合、拡散フィルムおよび拡散シートと他の光学部材との間に空気層が存在する。屈折率差の大きい空気層との界面では、光をロスしやすく、光利用効率が低下する。拡散フィルムおよび拡散シートが複数枚用いられれば、その分、空気層が増加して光利用効率がさらに低下する。一方、本実施形態の液晶表示装置に用いられる光拡散素子(本発明の光拡散素子)は、非常に薄く、かつ、光学部材(偏光子)に直接形成することができ、空気層を排除することができる。その結果、光利用効率の向上に寄与する。さらに、本発明の光拡散素子は、通常用いられている拡散フィルムおよび拡散シート(代表的には、100μm〜300μm)に比べて非常に薄く、従来の拡散フィルムおよび拡散シート複数枚と同等もしくはそれ以上の光拡散性を有している。その結果、本実施形態の液晶表示装置は、非常に優れた薄型化および軽量化を達成することができる。また、本発明の光拡散素子は光学部材への通常の表面処理と同様の方法で形成することができる上に、得られる偏光素子は直接液晶パネル(液晶セル)に貼り合わせることができる。その結果、本実施形態の液晶表示装置は、部材(特に、バックライト部の部材)を低減させることができ、生産性、コストの面でも非常に優れる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は下記の通りである。また、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0101】
(1)光拡散素子の厚み
マイクロゲージ式厚み計(ミツトヨ社製)にて基材と光拡散素子との合計厚みを測定し、当該合計厚みから基材の厚みを差し引き、光拡散素子の厚みを算出した。
(2)屈折率変調領域の厚み
実施例および比較例で得られた光拡散素子と基材との積層体を液体窒素で冷却しながら、ミクロトームにて0.1μmの厚さにスライスし、測定試料とした。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、当該測定試料の光拡散素子部分の微粒子の状態および当該微粒子とマトリクスとの界面の状態を観察し、微粒子とマトリクスとの界面が不明瞭な部分を屈折率変調領域と認定し、その平均厚みLをTEM画像から画像解析ソフトを用いて算出した。より具体的には、広視野(倍率300倍)の断面TEM画像で観察された範囲の中で一番大きい微粒子を選択し、選択した微粒子とマトリクスとの界面の拡大画像(倍率12000倍)で観察された厚みを画像解析ソフトで算出した。この解析を任意の5ヶ所で行い、その平均厚みを屈折率変調領域の厚みとした。微粒子とマトリクスとの界面が明瞭な場合は屈折率変調領域が形成されていないと認定した。
(3)ヘイズおよび全光線透過率
JIS 7136で定める方法により、ヘイズメーター(村上色彩科学研究所社製、商品名「HN−150」)を用いて測定した。
(4)光拡散半値角
光拡散素子の正面からレーザー光を照射し、拡散した光の拡散角度に対する拡散輝度を、ゴニオフォトメーターで1°おきに測定し、図15に示すように、レーザーの直進透過光を除く光拡散輝度の最大値から半分の輝度となる拡散角度を、拡散の両側で測定し、当該両側の角度を足したもの(図15の角度A+角度A’)を光拡散半値角とした。
(5)後方散乱率
実施例および比較例で得られた光拡散素子と基材との積層体を、透明粘着剤を介して黒アクリル板(住友化学社製、商品名「SUMIPEX」(登録商標)、厚み2mm)の上に貼り合わせ、測定試料とした。この測定試料の積分反射率を分光光度計(日立計測器社製、商品名「U4100」)にて測定した。一方、上記光拡散素子用塗工液から微粒子を除去した塗工液を用いて、基材と透明塗工層との積層体を作製して対照試料とし、上記と同様にして積分反射率(すなわち、表面反射率)を測定した。上記測定試料の積分反射率から上記対照試料の積分反射率(表面反射率)を差し引くことにより、光拡散素子の後方散乱率を算出した。
(6)重量部数AおよびB
式(2)における第1の領域を構成する材料(本実施例では光拡散性微粒子)の重量部数Aおよび第2の領域を構成する材料(本実施例ではマトリクス)の重量部数Bを以下のようにして測定した:第1の領域、第2の領域および屈折率変調領域を、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察により区別することができる。さらに、TEMの3次元化解析(3D−TEM)を用いて、光拡散素子中の第1の領域、第2の領域、および屈折率変調領域の体積部数を測定することができる。そこで、実施例および比較例で得られた光拡散素子を光学顕微鏡で観察しながら、当該光拡散素子から第1の領域または第2の領域のいずれかのみをSAICAS法によりスライスして試料とした。この試料を、柴山科学機器製作所の密度勾配管法密度測定機を用いた密度勾配管法に供し、当該試料中の第1の領域または第2の領域の密度を測定した。次いで、光拡散素子全体を基材から剥離し、上記と同様にして密度を測定した。このようにして測定された第1の領域または第2の領域の密度と光拡散素子全体の密度、ならびに、3D−TEMにより測定された第1の領域または第2の領域の体積部数から、重量部数AまたはBを算出した。なお、屈折率変調領域の密度は、第1の領域および第2の領域の密度の平均密度として計算した。
(7)第1の領域および第2の領域の屈折率
上記(6)のようにして得られた試料をマッチングオイルに投入し観察することにより、マッチング屈折率を測定した。
(8)平行光光源装置の半値角
平行光光源装置の半値角は、図12に示すように、出射プロファイルに対して、輝度の最大値(通常は出射角度0°の輝度)の半分の輝度に当たる出射角度の半値全幅を半値角とした。
(9)正面白輝度および正面黒輝度
出射光が液晶表示装置の鉛直方向となす角度が30°で入射するように、蛍光ランプ(200lx:照度計IM−5での測定値)を配置し、照射した。測定装置として、輝度計(トプコン社製、商品名「SR−UL1」、測定距離:500mm、測定角:1°)を配置し、正面白輝度および正面黒輝度を測定した。
(10)視差
明室環境下で、距離300mm、タッチペンでポイントした際の表示部とのズレを液晶表示装置の画面鉛直方向に対して20°の位置より目視観察した。表示部とのズレがないものは○、表示部とのズレがあるものは×とした。
(11)光拡散照度
光拡散照度は、全光線の透過強度を示す指標である。バックライト上に配置された偏光素子から上方に所定の間隔をあけてコノスコープ(Autronic−Melchers製、Conoscope)を設置し、図16に示すように、全方位(極角θ:0°〜80°、方位角φ:0°〜360°)1°おきに輝度L(θ,φ)を測定した。測定した輝度を以下の式で積分し、光拡散照度(単位:Lx)を算出した。
【数2】

(12)ランプイメージ
目視によりランプイメージを観察した。
(評価基準)
◎:バックライト側偏光素子/バックライト構成においてランプイメージが確認されなかった。
○:バックライト側偏光素子/バックライト構成においてランプイメージが若干確認されたが、液晶パネル/バックライト側偏光素子/バックライト構成においてランプイメージが確認されなかった。
×:液晶パネル/バックライト側偏光素子/バックライト構成においてランプイメージが確認された。
【0102】
<実施例1:光拡散素子の作製>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子(平均1次粒子径10nm、平均粒子径60nm、屈折率2.19)を62%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部に、樹脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52)の50%メチルエチルケトン(MEK)溶液を11部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名「イルガキュア907」)を0.5部、レベリング剤(DIC社製、商品名「GRANDIC PC 4100」)を0.5部、および、光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品工業社製、商品名「SAX−102」、平均粒径2.5μm、屈折率1.495)を15部添加した。ディスパーを用いてこの混合物を分散処理し、上記の各成分が均一に分散した塗工液を調製した。この塗工液の固形分濃度は55%であった。当該塗工液を調製後ただちに、バーコーターを用いてTACフィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック」、厚み40μm)からなる基材上に塗工し、100℃にて1分間乾燥後、積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、厚み11μmの光拡散素子を得た。TEM観察により、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に屈折率変調領域が形成されていることを確認した。得られた光拡散素子におけるマトリクスの平均屈折率nと光拡散性微粒子の屈折率nとの差は0.12(n>n)であった。得られた光拡散素子を上記(1)〜(7)の評価に供した。さらに、(Δn)×A×Bの値を求めた。結果を、後述の実施例2〜10および比較例1〜4の結果と併せて表1に示す。加えて、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍部分のTEM画像から3次元像を再構成し、当該3次元再構成像を二値化した。この二値化した像を図17Aに示す。図17Aのマトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍部分を5つの解析エリアに分けて、5つの解析エリアそれぞれについて画像処理を行い、それぞれの解析エリアにおける光拡散性微粒子表面からの距離と超微粒子成分の分散濃度(存在比率)との関係を算出した。5つの解析エリアについて算出したものを平均し、光拡散性微粒子表面からの距離と超微粒子成分の分散濃度(存在比率:5つの解析エリアの平均)との関係をグラフ化した。当該グラフを図17Bに示す。このグラフから、超微粒子成分の分散濃度の勾配が形成されていることがわかる。
【0103】
【表1】

【0104】
<実施例2:光拡散素子の作製>
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(積水化成品工業社製、商品名「XX−131AA」、平均粒径2.5μm、屈折率1.495)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0105】
<実施例3:光拡散素子の作製>
光拡散性微粒子としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(根上工業社製、商品名「アートパールJ4P」、平均粒径2.1μm、屈折率1.495)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0106】
<実施例4:光拡散素子の作製>
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(総研化学社製、商品名「MX180TA」、平均粒径1.8μm、屈折率1.495)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み16μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0107】
<実施例5:光拡散素子の作製>
超微粒子成分としてチタニアナノ粒子(平均1次粒子径10nm、平均粒子径60nm、屈折率2.3)を60%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、MEK/PGME含有)100部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、厚み11μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子をTEM観察したところ、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に屈折率変調領域が形成されていることを確認した。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0108】
<実施例6:光拡散素子の作製>
樹脂成分の前駆体としてヒドロキシエチルアクリルアミド(株式会社興人製、商品名「HEAA」、屈折率1.52)の50%MEK溶液11部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、厚み11μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子をTEM観察したところ、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に屈折率変調領域が形成されていることを確認した。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0109】
<実施例7:光拡散素子の作製>
樹脂成分の前駆体としてアクリロイルモルホリン(株式会社興人製、商品名「ACMO」、屈折率1.52)の50%MEK溶液11部を用いたこと以外は実施例3と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子をTEM観察したところ、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に屈折率変調領域が形成されていることを確認した。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0110】
<実施例8:光拡散素子の作製>
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)に親水基を付与した微粒子(積水化成品工業製、商品名「XX−157−AA」、平均粒子径2.5μm、屈折率1.495)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子をTEM観察したところ、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に屈折率変調領域が形成されていることを確認した。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0111】
<実施例9:光拡散素子の作製>
光拡散性微粒子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリスチレン(PS)の共重合微粒子(積水化成品工業製、商品名「XX−164−AA」、平均粒子径2.5μm、屈折率1.495)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子をTEM観察したところ、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に屈折率変調領域が形成されていることを確認した。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0112】
<実施例10:光拡散素子の作製>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子のハードコート用樹脂中の含有量を25%としたこと以外は実施例1と同様にして、厚み9μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子をTEM観察したところ、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に屈折率変調領域が形成されていることを確認した。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0113】
<比較例1>
超微粒子成分を含まない構成の光拡散素子を、以下の手順で作製した:
アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂(旭化成ケミカルズ社製、商品名「スタイラックAS」、屈折率1.57)20部をシクロペンタノン(CPN)100部に溶解した溶液に、シリコーン樹脂微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「トスパール120」、平均粒径2.0μm、屈折率1.43)を4部添加して塗工液を調製した。この塗工液の固形分濃度は19.4%であった。当該塗工液を調製後ただちに、アプリケーターを用いてTACフィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック」)上に塗工し、150℃で1分間乾燥して、厚み13μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0114】
<比較例2>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子を含まないハードコート用樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。さらに、TEM観察により、マトリクスと光拡散性微粒子との界面は明確であり、屈折率変調領域は形成されていないことを確認した。
【0115】
<比較例3>
超微粒子成分としてシリカナノ粒子(平均1次粒子径10nm、平均粒子径40nm、屈折率1.49)を30%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「Z7540」)100部に、光拡散性微粒子としてポリスチレン(PS)微粒子(綜研化学社製、商品名「SX−350H」、平均粒子径3.5μm、屈折率1.595)15部を添加したこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0116】
<比較例4>
光拡散性微粒子としてシリカにメチル修飾を施した微粒子(日本触媒製、商品名「シーホスターKE−250」)15部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの光拡散素子を得た。得られた光拡散素子を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。
【0117】
<実施例11:液晶表示装置の作製>
マルチドメイン型VAモードの液晶セルを備える市販の液晶テレビ(SONY社製、ブラビア20型、商品名「KDL20J3000」)から液晶セルを取り出した。当該液晶セルの両側に、市販の偏光板(日東電工社製、商品名「NPF−SEG1423DU」)を、それぞれの偏光子の吸収軸が直交するようにして貼り合わせた。より具体的には、バックライト側偏光板の偏光子の吸収軸方向が垂直方向(液晶パネルの長辺方向に対して90°)となり、視認側偏光板の偏光子の吸収軸方向が水平方向(液晶パネルの長辺方向に対して0°)となるようにして貼り合わせた。さらに、視認側偏光板の外側に、実施例1の光拡散素子を基材から転写して貼り合わせ、液晶パネルを作製した。
【0118】
一方、PMMAシートの片面に、レンチキュラーレンズのパターンを、転写ロールを用いて溶融熱転写した。レンズパターンが形成された面とは反対側の面(平滑面)に、レンズの焦点のみ光が透過するよう、アルミニウムのパターン蒸着を行い、開口部の面積比率7%(反射部の面積比率93%)の反射層を形成した。このようにして、集光素子を作製した。バックライトの光源として冷陰極蛍光ランプ(ソニー社製、BRAVIA20JのCCFL)を用い、当該光源に集光素子を取り付けて、コリメート光を出射する平行光光源装置(バックライトユニット)を作製した。
【0119】
上記液晶パネルに上記バックライトユニットを組み込み、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、明所での黒表示が黒くかつ暗所の白表示の輝度が高いという良好な表示特性を示した。
【0120】
<比較例5>
比較例1の光拡散素子を用いたこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、暗所の白表示の輝度は高かったが、明所での黒表示は白ぼけて見えた。
【0121】
<比較例6>
比較例2の光拡散素子を用いたこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、暗所の白表示の輝度は高かったが、明所での黒表示は白ぼけて見えた。
【0122】
<実施例12:液晶表示装置の作製>
実施例1の光拡散素子の代わりに実施例2の光拡散素子を用いたこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、明所での黒表示が黒くかつ暗所の白表示の輝度が高いという良好な表示特性を示した。
【0123】
<実施例13:液晶表示装置の作製>
実施例1の光拡散素子の代わりに実施例3の光拡散素子を用いたこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置について暗所にて白表示および黒表示を行い、その表示状態を目視にて観察した。その結果、斜め方向から見た場合、明所での黒表示が黒くかつ暗所の白表示の輝度が高いという良好な表示特性を示した。
【0124】
<実施例14:マトリクスの平均屈折率および光拡散性微粒子の屈折率と後方散乱との関係>
FIT(Finite Integration Technique)法による電磁界解析ソフト(CST社製、Microwave Studio)を用いて、光拡散性微粒子1個あたりの散乱強度を種々の条件下でシミュレーションした。波長は550nmに設定した。なお、FIT法とは、積分形式のMaxwell方程式を離散化し、時間領域で解析するものである。以下、実施例17まで同様のシミュレーションを行った。
本実施例では、図18(a)および図18(b)にそれぞれ示すような屈折率変化を示す光拡散性微粒子/マトリクスの系について上記シミュレーションを行った。なお、図18(a)において、nは屈折率であり、dは光拡散性微粒子の中心からの距離(μm)である(以下、特に明記しなければ、同様である)。図18(a)の7−1の系および図18(b)の7−2系について、後方散乱率を比較して図18(c)に示す。図18(c)から明らかなように、n>nのほうが、後方散乱率が小さくなる。なお、屈折率変化にギャップが存在する系は、nとnの大小関係にかかわらず、後方散乱率は図18(c)に示すものに比べて格段に大きかった。
【0125】
<実施例15:マトリクスの平均屈折率および光拡散性微粒子の屈折率と拡散性および後方散乱との関係>
図19(a)に示すような屈折率変化を示す光拡散性微粒子/マトリクスの系8−1〜8−5についてそれぞれ、実施例14に記載のシミュレーションを行った。それぞれの系についての単位体積当たりの散乱強度(拡散性に対応)と後方散乱率との関係を図19(b)に示す。図19(b)から明らかなように、系8−1〜系8−5で、それほど大きな違いは認められなかった。このことから、n>nであれば、光拡散性微粒子と屈折率変調領域との境界の屈折率のギャップ、および、屈折率変調領域とマトリクスとの境界の屈折率のギャップはいずれも、所定の範囲内(例えば、Δnが0.05以下)であれば許容され得ることがわかる。
【0126】
<実施例16:マトリクスの平均屈折率および光拡散性微粒子の屈折率と拡散性および後方散乱との関係>
図20(a)に示すような屈折率変化を示す光拡散性微粒子/マトリクスの系9−1〜9−3、および、図21(a)に示すような屈折率変化を示す光拡散性微粒子/マトリクスの系9−4〜9−6について、それぞれ、実施例14に記載のシミュレーションを行った。系9−1〜9−3についての単位体積当たりの散乱強度(拡散性に対応)と後方散乱率との関係を図20(b)に、系9−4〜9−6についての単位体積当たりの散乱強度(拡散性に対応)と後方散乱率との関係を図21(b)に示す。図20(b)から、n<nであれば、屈折率変調領域とマトリクスとの境界に屈折率のギャップが存在すると、後方散乱率が顕著に大きくなってしまうことがわかる。一方、図21(b)から、n>nであれば、光拡散性微粒子と屈折率変調領域との境界、および/または、屈折率変調領域とマトリクスとの境界に屈折率のギャップが存在しても、後方散乱率はそれほど変わらないことがわかる。これは、図19(b)の結果とも整合している。
【0127】
<実施例17:Δn/Lと拡散性との関係>
種々のΔn/Lの系について、実施例14に記載のシミュレーションを行った。結果を表2および図22に示す。計算例1から5は、r+Lを一定にしつつ、かつ、Lの大きさを減少させていった計算を行った。Lが減少していくにつれて、Δn×A×Bも増加していき、Δn/Lが0.0006以上かつΔn×A×Bが10以上となった計算例4および5では、強い光拡散強度が算出された。次に、計算例5から7にかけては、rを固定しながらLを増加させて計算を行った。Lが増加するにつれて、Δn/LおよびΔn×A×Bが減少していき、Δn/Lが0.0006以上かつΔn×A×Bが10以上を満たす計算例5のみで、強い光拡散強度が算出された。さらに、計算例8、9および11では、急峻な屈折率変調勾配Δn/Lを持ちながら、(AまたはΔnが小さいために)Δn×A×Bが10未満となるケースの計算を行ったところ、強い光拡散強度は算出されなかった。計算例10では、計算例5と比較してΔnを減少させるものの、Δn×A×Bが10以上となる程度にΔnを減少させた条件で、計算を行ったところ、強い光拡散強度が算出された。
【0128】
【表2】

【0129】
<評価>
表1から明らかなように、屈折率変調領域が形成され、Δn/Lおよび(Δn)×A×Bが所定の範囲内に最適化された実施例の光拡散素子は、ヘイズが高く、かつ、後方散乱率が低かった。また、実施例の光拡散素子は、厚みが最大でも16μmであり、非常に薄い。さらに、実施例の光拡散素子は、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置のフロント拡散素子として用いた場合に、非常に優れた表示特性を示した。さらに、本発明の実施例の光拡散素子は、煩雑なプロセスを用いることなく製造することができる。一方、屈折率変調領域が形成されない比較例1の光拡散素子は、ヘイズは高いが後方散乱率が高く、比較例2の光拡散素子は、後方散乱率は低いがヘイズはきわめて不十分であった。比較例の光拡散素子は、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置のフロント拡散素子として用いた場合に、明所での黒表示が白ぼけるという問題が認められた。このように、本発明によれば、ヘイズ値が高く、強い光拡散性を有し、かつ、後方散乱が抑制された薄膜の光拡散素子を得ることができる。
【0130】
<参考例1:反射防止素子付光拡散素子の作製>
エチレングリコール換算による数平均分子量が500〜10000であるシロキサンオリゴマー(コルコート(株)社製、商品名「コルコートN103」、固形分濃度2重量%)を用意した。測定したシロキサンオリゴマーの数平均分子量は、エチレングリコール換算で950であった。また、ポリスチレン換算による数平均分子量が5000以上であって、フルオロアルキル構造およびポリシロキサン構造を有するフッ素化合物(JSR(株)社製、商品名「オプスターJTA105」、固形分濃度5重量%)を用意し、同様に数平均分子量を測定した。測定したフッ素化合物の数平均分子量は、ポリスチレン換算で8000であった。
シロキサンオリゴマー50部、フッ素化合物100部、硬化剤(JSR(株)社製、商品名「JTA105A」、固形分濃度5重量%)1部およびMEK160.5部を混合して、反射防止層形成材料を調製した。得られた反射防止層形成材料を実施例1で作製した光拡散素子上に、同じ幅になるように、バーコーターを用いて塗工した。反射防止層形成材料を塗布した光拡散素子を120℃で3分間加熱することにより、乾燥・硬化して反射防止層(低屈折率層、厚み0.11μm、屈折率1.42)付光拡散素子(厚み11μm、ヘイズ98%、光拡散半値角62°)を形成した。上記の反射防止層は、厚みが薄いので、反射防止層付光拡散素子の厚みは、実施例1の光拡散素子と実質的に同一である。
【0131】
<参考例2:平行光光源装置の作製>
以下のようにして、図11Aに示す構成の平行光光源装置を作製した。100Wのメタルハライドランプ光源の前面に、プロジェクションレンズ、レンチキュラレンズ(スポット状スリット)、アルミ鏡面反射板、アクリル製フレネルレンズ(サイズ:対角20インチ、焦点距離:f=40cm)を配置し、平行光光源装置1を作製した。平行光光源装置1の半値角は2.5°であった。
【0132】
<参考例3:平行光光源装置の作製>
ヘイズが70%、光拡散半値角が15°の表面凹凸光拡散シートを用いた以外は参考例2と同様にして、平行光光源装置2を作製した。平行光光源装置2の半値角は15°であった。
【0133】
<参考例4:光拡散粘着層の作製>
アクリル粘着剤の塗工液(固形分濃度:12重量%)100重量部に、シリコーン微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、商品名「トスパール140」、粒子径4.2μm)を3.8重量部を加えて、1時間攪拌し、光拡散粘着層形成用塗工液を得た。軽剥離処理が施されたPETフィルム(セパレータ)上に該光拡散粘着層形成用塗工液を塗工して、120℃で乾燥し、厚み25μmの塗工層を得た。塗工および乾燥工程を3回繰り返し、塗工層が3層積層した光拡散粘着層(厚み:75μm)を作製した。この光拡散粘着層は、ヘイズが97%、全光線透過率が89%、光拡散半値角が31°であった。
【0134】
<実施例18:光拡散素子付偏光板および液晶表示装置の作製>
厚み60μmのポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(クラレ(株)社製 商品名「VF−PE#6000」)をフィルム長手方向に張力を付与しながら通常の条件で膨潤、染色、架橋および水洗工程に供し、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対して、6.2倍となるように延伸した。この延伸フィルムを40℃の空気循環式乾燥オーブン内で1分間乾燥させて、偏光子(厚み:24μm)を作製した。
得られた偏光子の片面に厚み40μmのセルロース系樹脂を含有する高分子フィルム(コニカ・ミノルタ社製、商品名「KC4UY」)をポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して貼り合せた。次いで、該偏光子の他方の面に実施例1で得られた光拡散素子をポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤5μm(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して、基材から転写し、貼り合せた。その後、上記セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムの表面に、アクリル系粘着剤20μmを塗布し、光拡散素子付偏光板を得た。
得られた光拡散素子付偏光板を上記高分子フィルムの表面に塗布したアクリル系粘着剤を介してツイステッド・ネマチック(TN)型の液晶セルに貼り合せた。次いで、光拡散素子の偏光子と対向していない面に、アクリル系粘着剤5μmを介して、フロント基板としてアクリル板(日立社製携帯電話、商品名「W43H」に使用された透明アクリル板、厚み:485μm)を密着させて貼り合せた。次いで、液晶セルの光拡散素子付偏光板を貼り合わせていない面に市販の偏光板(日東電工社製、商品名「NWF−LNSEG」)を貼り合せた。当該偏光板の外側に平行光光源装置1を配置して、表3に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0135】
【表3】

【0136】
<実施例19:液晶表示装置の作製>
実施例1の光拡散素子の代わりに、参考例1で得られた反射防止層付光拡散素子を用いた以外は実施例18と同様にして、表3に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0137】
<実施例20:液晶表示装置の作製>
平行光光源装置1の代わりに、平行光光源装置2を用いた以外は実施例18と同様にして、表3に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0138】
<比較例7>
光拡散素子の代わりに参考例4で得られた光拡散粘着層を用い、該光拡散粘着層と偏光子とが密着するように貼り合せて光拡散粘着層付偏光板を得た。この光拡散粘着層付偏光板を用いた以外は実施例18と同様にして、表3に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0139】
<比較例8>
光拡散素子の代わりに参考例4で得られた光拡散粘着層を用い、該光拡散粘着層と偏光子とが密着するように貼り合せて光拡散粘着層付偏光板を得た。この光拡散粘着層付偏光板を用いた以外は実施例20と同様にして、表3に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0140】
<実施例21:液晶表示装置の作製>
フロント基板として、アクリル板の代わりにタッチパネル(NEC社製NOTE−PC、商品名「ShieldPRO」に使用されていた抵抗膜方式タッチパネル、厚み:945μm)を用いた以外は実施例18と同様にして、表4に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0141】
【表4】

【0142】
<実施例22:液晶表示装置の作製>
実施例1の光拡散素子の代わりに、参考例1で得られた反射防止層付光拡散素子を用いた以外は実施例21と同様にして、表4に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0143】
<比較例9>
光拡散素子の代わりに参考例4で得られた光拡散粘着層を用い、該光拡散粘着層と偏光子とが密着するように貼り合せて光拡散粘着層付偏光板を得た。この光拡散粘着層付偏光板を用いた以外は実施例21と同様にして、表4に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0144】
<実施例23:液晶表示装置の作製>
ガラス板(厚み:200μm)の表面を洗浄し、スパッタリング法により、酸化インジウムと酸化スズとの複合酸化物からなる透明な導電性薄膜(以下、ITO薄膜ともいう)(厚み:150Å)を形成し、上部基板を得た。同様に、表面を洗浄したガラス板(厚み:200μm)に、アクリル系粘着剤5μmを塗布し、実施例1で得られた光拡散素子を貼付した。次いで、該光拡散素子の表面にスパッタリング法により、ITO薄膜(厚み:150Å)を形成し、下部基板を得た。これらの上部基板および下部基板を、ITO薄膜同士が対向するように、厚さ50μmのスペーサを介して対向配置してタッチパネルを作製した。
フロント基板および光拡散素子付偏光板の代わりに上記の光拡散素子を有するタッチパネルをアクリル系粘着剤5μmを介して積層した以外は実施例18と同様にして、表5に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0145】
【表5】

【0146】
<比較例10>
実施例1の光拡散素子およびアクリル系粘着剤の代わりに、参考例4で得られた光拡散粘着層を用いた以外は実施例23と同様にして、表5に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0147】
<実施例24:液晶表示装置の作製>
粘着剤層を形成する代わりに、両面テープ(日東電工社製、商品名「No.532」、厚み:60μm)を配置した以外は実施例18と同様にして、表6に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0148】
【表6】

【0149】
<比較例11>
露出した光拡散粘着層に透光性フィルム(富士フィルム社製、商品名「フジタック」、厚み:40μm)を貼り合わせ、透光性フィルムの縁部に両面テープ(日東電工社製、商品名「No.532」、厚み:60μm)を配置して、アクリル板を貼り合わせた以外は比較例7と同様にして、表6に示す構成の液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の特性を表7に示す。
【0150】
【表7】

【0151】
<評価>
表7から明らかなように、光拡散素子を用いた実施例18〜24は、光拡散粘着層を用いた比較例7〜11に比べて、明環境において、白輝度が向上し、かつ黒輝度を抑えることができ、正面コントラスト比も向上した。また、光拡散素子は光拡散粘着層に比べて、厚みが薄いので、優れた視認性を有し、かつ、液晶表示装置の薄型化が可能となる。実施例18〜24では、より厚みの薄い光拡散素子を用いるため、比較例7〜11よりも液晶セルとの距離が近くなり、視差が低減された。
【0152】
本発明の光拡散素子は、非常に薄いため、両面テープを用いてフロント基板を貼り合せた実施例24であっても、空気層による影響が少なく、良好な明環境下での視認性を有し、視差を低減することができた。一方、光拡散粘着層を用いた比較例11においては、十分な視差の改善効果が得られなかった。
【0153】
<実施例25:偏光素子の作製>
超微粒子成分としてのジルコニアナノ粒子(平均粒径60nm、屈折率2.19)を62%含有するハードコート用樹脂(JSR社製、商品名「オプスターKZ6661」(MEK/MIBK含有))100部に、樹脂成分の前駆体としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」、屈折率1.52)の50%MEK溶液を70部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製、商品名「イルガキュア907」)を0.5部、レベリング剤(DIC社製、商品名「メガファック479」)を0.1部、および、光拡散性微粒子としてのアクリレート系微粒子(根上工業社製、商品名「アートパール J4P」、平均粒径2.1μm、屈折率1.49)を20部添加し、固形分が50%となるように希釈溶剤としてトルエンを加えた。この混合物をディスパーにて、上記の各成分を均一に分散させて塗工液を調製した。
当該塗工液を、複屈折性多層構造を有する反射型偏光子(3M社製、商品名「DBEF」、厚み38μm)上にダイコーターを用いて塗布し、80℃にて2分間オーブンで乾燥後、高圧水銀灯で積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、反射型偏光子上に厚み6.5μmの光拡散素子を形成した。光拡散素子のTEM観察により、マトリクスと光拡散性微粒子との界面近傍に実施例1と同様の屈折率変調領域が形成されていることを確認した。
次いで、反射型偏光子側に、粘着剤(厚み5μm)を介して、吸収型偏光子を含む偏光板(日東電工製、商品名「NPF」、厚み108μm)を貼り合わせて偏光素子を作製した。
【0154】
得られた偏光素子を、拡散板/ランプハウス構成のバックライト上に配置して、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。
【0155】
<実施例26:偏光素子の作製>
光拡散素子の厚みを10.5μmとしたこと以外は実施例25と同様にして、偏光素子を作製した。得られた偏光素子を、拡散板/ランプハウス構成のバックライト上に配置して、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。
【0156】
<実施例27:偏光素子の作製>
TACフィルム(富士フイルム社製、商品名「フジタック」)上に、実施例25と同様にして、厚み17.3μmの光拡散素子を形成し、光拡散素子付フィルム作製した。得られた光拡散素子付フィルムの光拡散素子側に、粘着剤(厚み5μm)を介して、反射型偏光子(3M社製、商品名「DBEF」、厚み38μm)を貼り合わせた。次いで、反射型偏光子側に、粘着剤(厚み5μm)を介して、吸収型偏光子を含む偏光板(日東電工製、商品名「NPF」)を貼り合わせて偏光素子を作製した。得られた偏光素子を、拡散板/ランプハウス構成のバックライト上に配置して、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。
【0157】
<実施例28:偏光素子の作製>
光拡散素子の厚みを5.0μmとしたこと以外は実施例27と同様にして、偏光素子を作製した。得られた偏光素子を、拡散板/ランプハウス構成のバックライト上に配置して、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。
【0158】
<実施例29:偏光素子の作製>
光拡散素子の厚みを21.5μmとしたこと以外は実施例27と同様にして、偏光素子を作製した。得られた偏光素子を、拡散板/ランプハウス構成のバックライト上に配置して、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。
【0159】
<実施例30:光拡散照度およびランプイメージの評価>
実施例26で得られた偏光素子を、透明板(アクリル板)/ランプハウス構成のバックライト上に配置して、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。
【0160】
<実施例31:光拡散照度およびランプイメージの評価>
実施例27で得られた偏光素子を、透明板(アクリル板)/ランプハウス構成のバックライト上に配置して、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。
【0161】
<比較例12>
市販の液晶テレビ(ソニー製、商品名「Bravia KDL−20J1」)からバックライトユニットを取り出した。このバックライトユニットは、拡散フィルムが上下に積層された複屈折性多層構造を有する反射型偏光子(3M社製、商品名「DBEF−D400」、厚み415μm)と拡散シートが、拡散板上に据え置きされて構成されている。このバックライトユニットの上(DBEF−400側)に、偏光板(日東電工製、商品名「NPF」)を接着せずにそのまま据え置き、この状態で、光拡散照度およびランプイメージの評価を行った。
【0162】
各実施例の光拡散素子の特性を表8に示す。また、光拡散照度およびランプイメージの評価結果を得られた偏光素子の総厚とともに表9に示す。
【0163】
【表8】

【0164】
【表9】

【0165】
表9から明らかなように、実施例25〜31において、複数枚の拡散フィルムおよび拡散シートを用いた比較例12と同様、ランプイメージを良好に解消することができた。また、比較例12よりも光拡散照度が高く、光利用効率を向上させることができた。これは、表8に示すとおり、実施例に用いた光拡散素子が、優れた光拡散性を示し、かつ、後方散乱率が良好に抑制されていることによると考えられる。後方散乱率が2.0%以下の光拡散素子を備える場合(実施例25〜28)に至っては、比較例に比べて10%以上も光拡散照度を向上させることができた。また、実施例に用いた光拡散素子は、非常に薄く、かつ、光学部材(反射型偏光子)に直接形成されて空気層を排除することができた。これらも、光利用効率の向上に寄与していると考えられる。具体的には、比較例12のように、拡散フィルムおよび拡散シートが据え置きされている場合、空気層が存在する。屈折率差の大きい空気層との界面では、光をロスしやすく、光利用効率が低下する。さらに、各実施例は、比較例12に比べて厚み(総厚)が格段に薄く、1/3以下に薄型化することができた。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の光拡散素子および光拡散素子付偏光板は、液晶表示装置の視認側部材、液晶表示装置のバックライト用部材、照明器具(例えば、有機EL、LED)用拡散部材に好適に用いられ得、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置のフロント拡散素子として特に好適に用いられ得る。本発明の偏光素子は、液晶表示装置のバックライト側部材として好適に用いられ得る。本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途としては、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター、デジタルインフォメーションディスプレイなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器が挙げられる。本発明の液晶表示装置の特に好ましい用途の1つとして、コリメートバックライトフロント拡散システムの液晶表示装置が挙げられる。本発明の液晶表示装置の別の好ましい用途の1つとして、携帯電話、タッチパネルを含む製品に用いられる液晶表示装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0167】
10 マトリクス
11 樹脂成分
12 超微粒子成分
20 光拡散性微粒子
30 屈折率変調領域
100、100’ 光拡散素子
110 偏光子
120 保護層
130 保護層
200 光拡散素子付偏光板
210、210’ 偏光素子
500、500’、500” 液晶表示装置
510 液晶セル
511、512 基板
513 液晶層
530 偏光板
550 バックライトユニット(バックライト部)
560 フロント基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屈折率n1を有する第1の領域と;該第1の領域を包囲する実質的に球殻状の屈折率変調領域と;該屈折率変調領域の該第1の領域と反対側に位置し、第2の屈折率n2を有する第2の領域と;を有し、下記の式(1)および(2)を満足する、光拡散素子:
0.0006≦Δn/L ・・・(1)
10≦(Δn)×A×B≦100 ・・・(2)
ここで、Δnは第1の屈折率n1と第2の屈折率n2との差の絶対値|n1−n2|であり、L(nm)は屈折率変調領域の平均厚みであり、Δn/Lの単位は(nm−1)であり、Aは光拡散素子全体を100重量部としたときの第1の領域を構成する材料の重量部数であり、Bは光拡散素子全体を100重量部としたときの第2の領域を構成する材料の重量部数である。
【請求項2】
マトリクスと該マトリクス中に分散された光拡散性微粒子とを有し、
該光拡散性微粒子の表面近傍外部に、屈折率が実質的に連続的に変化する屈折率変調領域が形成され、かつ、下記の式(1)および(2)を満足する、光拡散素子:
0.0006≦Δn/L ・・・(1)
10≦(Δn)×A×B≦100 ・・・(2)
ここで、Δnはマトリクスの平均屈折率nと光拡散性微粒子の屈折率nとの差の絶対値|n−n|であり、L(nm)は屈折率変調領域の平均厚みであり、Δn/Lの単位は(nm−1)であり、Aは光拡散素子全体を100重量部としたときの光拡散性微粒子の重量部数であり、Bは光拡散素子全体を100重量部としたときのマトリクスの重量部数である。
【請求項3】
>nである、請求項2に記載の光拡散素子。
【請求項4】
式(3)を満足する、請求項2または3に記載の光拡散素子:
0.005≦L/r≦0.40 ・・・(3)
ここで、rは前記光拡散性微粒子の半径(nm)である。
【請求項5】
前記マトリクスが樹脂成分および超微粒子成分を含み、前記屈折率変調領域が、該マトリクス中の該超微粒子成分の分散濃度の実質的な勾配により形成されている、請求項2から4のいずれかに記載の光拡散素子。
【請求項6】
式(4)を満足する、請求項5に記載の光拡散素子:
|n−n|<|n−n|・・・(4)
ここで、nはマトリクスの樹脂成分の屈折率を表し、nはマトリクスの超微粒子成分の屈折率を表す。
【請求項7】
ヘイズが90%〜99.9%である、請求項2から6のいずれかに記載の光拡散素子。
【請求項8】
厚みが4μm〜50μmである、請求項2から7のいずれかに記載の光拡散素子。
【請求項9】
光拡散半値角が10°〜150°である、請求項2から8のいずれかに記載の光拡散素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の光拡散素子と偏光子とを有する、光拡散素子付偏光板。
【請求項11】
液晶セル、フロント基板および平行光光源装置を含む液晶表示装置に用いられる、請求項10に記載の光拡散素子付偏光板であって、
該液晶表示装置に用いる際に、該光拡散素子と該フロント基板が対向するように配置される、光拡散素子付偏光板。
【請求項12】
液晶表示装置の液晶セルのバックライト側に配置される偏光素子であって、
請求項1から9のいずれかに記載の光拡散素子と反射型偏光子とを有する、偏光素子。
【請求項13】
前記光拡散素子が前記反射型偏光子に直接形成されている、請求項12に記載の偏光素子。
【請求項14】
吸収型偏光子をさらに備える、請求項12または13に記載の偏光素子。
【請求項15】
液晶セルと、
該液晶セルに向かってコリメート光を出射する平行光光源装置と、
該液晶セルを通過したコリメート光を透過および拡散させる、請求項1から9のいずれかに記載の光拡散素子と、を備える
液晶表示装置。
【請求項16】
液晶セルと、
該液晶セルに向かってコリメート光を出射する平行光光源装置と、
該液晶セルを通過したコリメート光を透過および拡散させる、請求項1から9のいずれかに記載の光拡散素子と、
該光拡散素子のさらに視認側に配置されたフロント基板と、を備える
液晶表示装置。
【請求項17】
前記フロント基板が透明保護板またはタッチパネルである、請求項16に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
液晶セルと、
該液晶セルの両側に配置された偏光板と、
視認側に配置された偏光板のさらに視認側に該偏光板と対向するように配置されたタッチパネルと、
該タッチパネルのガラス板と導電性薄膜との間に配置された請求項1から9のいずれかに記載の光拡散素子と、
視認側と反対に配置された偏光板の外側に配置された、コリメート光を出射する平行光光源装置と、を備える
液晶表示装置。
【請求項19】
液晶セルと、
バックライト部と、
該液晶セルと該バックライト部との間に配置された、請求項12から14のいずれかに記載の偏光素子と、を備える
液晶表示装置。


【図1A】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図22】
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【図23】
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【図1B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−88692(P2012−88692A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202284(P2011−202284)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】