説明

光源用電極

【課題】本発明によれば、製作コストが嵩まない機械的強度も強い信頼性の高い光源用電極を実現することを技術的課題としている。
【解決手段】本発明に係る光源装置は、耐熱容器で成る発光管の中央部に、一対の太径部、軸部からなる電極が対向して配置されると共に、放電物質と始動用ガスが充填された放電容器が形成され、当該放電容器から発光管の両端にかけて一対の電極封着部が形成され、当該電極封着部の端面から突出した電極リードを介して点灯回路に接続される高圧放電ランプと、当該ランプから放射される光を集光する凹面反射鏡(2)とを備えた光源装置において、前記電極太径部(20)に放熱部材を取り付け、且つ前記太径部と前記軸部(21)の間にテーパ部を設け、前記電極太径部の中央より後方の前記電極封着部側に電界集中しやすく、且つ昇温しやすいアーク移行補助部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶プロジェクタやDLPプロジェクタなどに用いられる光源用ランプの電極に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で且つ投影画像が明るいことが要求される液晶プロジェクタやDLPプロジェクタの光源装置は、その光源として、小型で高輝度発光が得られるショートアークタイプの高圧水銀蒸気放電ランプを用いており、点灯時のアーク間距離が短くするに従って光の利用効率が向上する傾向があるが、アーク間距離が短くなるに従いアークから放出される光が電極に遮られてしまい効率が向上しなくなると言う問題があるため、電極の先端形状が光を遮らないようなテーパ形状とし光の利用効率を高めることをしている。
【0003】
図5に示す従来の光源用電極は、太径の放電部45bにテーパ部45cを設け、放電部後方にある電極軸45aに放熱導体17を一体的溶融せずに電極軸を取り囲むよう配置することによってアーク間距離が短くした場合でもアークの安定性、ランプの始動性、ランプの長寿命化を達成している。(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、近年さらなるショートアーク化が求められる中で放電部のみの熱伝導と放熱だけでは放電部先端の形状が維持できず、アーク間距離が伸びたり、アークが不安定になるという不具合が生じることが判明した。
【0005】
また、コイル状の放熱導体はその位置によって電極温度分布が変化し電極の変形によるアークが不安定になることや、ランプ始動時に速やかにグロー放電からアーク放電へ移行しなくなり立ち消えてしまうことがある、さらにグロー放電時間が長くなるため、グロー放電により生じたイオンによる電極材の飛散量が多くなり管壁が黒化しランプが短寿命になってしまうという問題が生じるため、電極軸に取り付ける際の位置決め、及び寿命中の温度変化などによる移動がないことが重要であり、電極軸と一体的溶融しない場合、特に位置決め及び固定が難しくなる。
【0006】
電極軸を取り囲む放熱導体を取り付ける方法として最も簡単な方法は、コイル状の放熱導体を作製したあと放電部と電極軸からなる垂直な面に突き当てるように圧入し、位置決め固定する方法である。
【0007】
しかしながら、電極軸方向に対して垂直な突き当て面を放電部と電極軸間に設けなければならないため、簡単に放電導体を位置決めしたい場合には放電部後方にテーパ部を設けることができなくなる。
【0008】
放電部後方にテーパ部が無い場合、折れ、曲がりに対しての機械的強度が落ち、且つ放電部と電極軸部の温度分布の差が大きくなるため、寿命中の電極の太径部である放電部と電極軸との間でクラックが発生し、電極曲がり、場合によっては折れてランプが不点になるという問題が生じた。また、寿命中の熱衝撃によりコイルがゆるみ、移動してしまった。
【0009】
さらに、放電部と電極軸を一体で作製する場合、最も簡単な方法として考えられるのは電極棒材を旋盤に取り付け回転させ切削して作製する方法である、一般的に、この方法の場合削り出す角度が90°に近くなるにつれて削る刃の損耗が激しくなり交換する頻度が多くなるため作製コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3623137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、太径部、軸部からなる放電灯用電極を有する高圧放電ランプにおいて点灯時のアークの安定性の確保と、点灯始動時において、速やかにグロー放電からアーク放電へ移行し安定した始動性が確保できることと、グロー放電時の電極材の飛散による発光管内の黒化を抑制しランプを長寿命とすること、且つ製作コストが嵩まない簡易な構成とすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明請求項1の光源装置は、発光管の中央部に、一対の太径部、軸部が一体の切削加工により作製された放電灯用電極が対向して配置されると共に、少なくとも発光物質と始動用ガスが充填された放電容器が形成され、当該放電容器から発光管の両端にかけて一対の電極封着部が形成され、当該電極封着部の端面から突出した電極リードを介して点灯回路に接続される高圧放電ランプと、当該ランプから放射される光を集光する凹面反射鏡とを備えた光源装置において、前記電極太径部に放熱部材を取り付け、且つ太径部と軸部の間にテーパ部を設け、電極太径部の中央より後方の電極封着部側に電界集中しやすく、且つ昇温しやすいアーク移行補助部材を設けたことを特徴とする。
請求項2の光源装置は、請求項1において、前記アーク移行部材はタングステンワイヤであり、その作製方法は、太径部に配置されているコイル状放熱部材を溶断することで作製される
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ショートアークの高圧放電ランプ点灯時において適切な温度分布を保ち安定した電極形状、アーク間距離を実現でき、また点灯始動時に速やかにグロー放電からアーク放電へと移行させるアーク移行補助部材を設けているため高圧放電ランプの黒化の原因である点灯始動時のグロー放電により生成、加速されたイオンによる電極材の飛散を抑制でき、簡単に低コストで作製でき機械的強度も強い信頼性の高い光源用電極を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る光源装置の一例を示す図
【図2】本発明に係る光源用電極図
【図3】本発明に係る光源用電極の効果の説明図
【図4】本発明に係る光源用電極の別の実施例を示す図
【図5】光源の寿命、アークの安定性を向上するための従来技術を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る光源装置の実施形態は、耐熱容器で成る発光管の中央部に、一対の太径部、軸部からなる電極が対向して配置されると共に、放電物質と始動用ガスが充填された放電容器が形成され、当該放電容器から発光管の両端にかけて一対の電極封着部が形成され、当該電極封着部の端面から突出した電極リードを介して点灯回路に接続される高圧放電ランプと、当該ランプから放射される光を集光する凹面反射鏡とを備えた光源装置において、前記電極太径部に放熱部材を取り付け、且つ前記太径部と前記軸部の間にテーパ部を設け、前記電極太径部の中央より後方の前記電極封着部側に電界集中しやすく、且つ昇温しやすいアーク移行補助部材を設けたことを特徴とする。
【実施例1】
【0016】
図1に示す本発明に係る光源装置は、高圧放電ランプ1と、当該ランプ1から放射される光を反射する凹面反射鏡2とを備えており、ランプ1は、石英ガラスで成る発光管3の放電容器4内に、一対のタングステン電極5R、5Lが約1mm程度の短い極間距離で対向して配置されると共に、水銀と臭素等のハロゲンとアルゴンガス等の始動用ガスとが封入され、その放電容器4から発光管3の両端に至る部分を気密に封止して各電極5R、5Lとこれに接続されたモリブデン箔で成る金属箔6とモリブデンワイヤで成る電極リード7とを封着した一対の電極封着部8R、8Lが形成されている。そして、各電極封着部8R、8Lの端面から突出した電極リード9が、ランプ電力を供給する点灯回路(図示せず)の片極側10Rと他極側10Lに夫々接続されると共に、電極5R、5L間のアーク放電を促すトリガ線/アンテナ線となる金属線11が、その片端側を電極封着部9Rの端面10から突出した電極リード9に接続し、その他端側を電極封着部8Lの外周部にループ状に巻き付けるように配線されている。
【0017】
凹面反射鏡2は、その底部に、高圧放電ランプ1の片方の電極封着部8Lを挿通させてセメント等で固定するボトム孔12が開口形成されると共に、その反射部に、高圧放電ランプ1の他方の電極封着部8Rから突出する電極リード8に接続されたニッケル線で成るリード線13を挿し通す配線孔14が穿設され、その反射部の背面に、配線孔14から引き出されたリード線13を固定する配線金具15が固着されている。
【0018】
放電容器4内に配置されたタングステン電極5R、5Lは図2に示すように、末端に角度60゜程度のテーパ部26を持つφ1.2mmの太径部20とφ0.4mmの軸部21が一体の切削加工により作製され、前記電極太径部20にφ0.25mmのコイル状の放熱部材22を取り付け、且つ太径部20と軸部21の間にテーパ部23を設け、電極太径部20の中央より後方の電極封着部側に電界集中しやすく、且つ昇温しやすいアーク移行補助部材24を設けてある構成である。
【0019】
アーク移行補助部材24は、φ0.25mmのタングステンワイヤであり太径部20、軸部21からなるタングステン電極5R、5Lの太径部20後方に巻かれてあり、その作製方法は、あらかじめ長めにコイル状にしておいた放熱部材22を太径部20に圧入して配置した後でコイル状放熱部材22の電極封着部側から1ターン巻かれた位置25においてレーザー等によりコイル状放熱部材22溶断することで作製できる。
【0020】
これにより放電容器4内にある電極構成部材としては最も熱容量の小さい部材であるアーク移行補助部材24が作製されるとともにコイル状放熱部材22が太径部20に溶着し位置が固定される。
【0021】
最も高温であるアークに近い太径部20に放熱部材22を溶着することで放熱及び熱伝導性が向上しランプ1点灯時において適切な温度分布を保ち安定した電極形状、アーク間距離を実現し且つ更なるショートアーク化が可能となった。またテーパ部23を設けることで電極先端部と封着部近傍での温度差が緩和され寿命中の折れ、曲がりが発生しなくなり、電極作製時の電極折れ、及び切削する刃の交換回数も減った。
【0022】
また、点灯始動前には図3に示すように水銀27が電極溶着部付近と電極軸部21近傍に液化している。これは、ランプ1点灯時に気化していた水銀27が消灯とともに最も熱伝導が良く、点灯時も温度が比較的低い電極溶着部付近と電極軸部21近傍が温度が低くなりやすいためである。
【0023】
ランプ1点灯時において高電圧が電極間に印加されると放電容器内にグロー放電が生じる、その際にアーク移行補助部材24がその熱容量と形状から局所的な電子なだれを引き起こしグロー放電からアーク放電へと速やかに移行させる。また、局所的に放電している際にアーク移行補助部材24はイオン、及び電子の衝突により周りの電極構成部材に比べて温度が高い状態になるため、電極溶着部付近と電極軸部21近傍に液化していた水銀27を気化させる。
【0024】
これにより、管内の圧力が増加し黒化の原因である点灯始動時のグロー放電により生成、加速されたイオンが電極に衝突することによる電極材の飛散を気化した水銀27が衝突することで抑制でき、且つ衝突した水銀27が電離され管内電子が増加しアーク放電に移行しやすくなる。また簡単に低コストで作製でき機械的強度も強い光源用ランプ電極を実現できる。
【実施例2】
【0025】
次に本発明に係る光源用電極の別の実施例を図4に示す。図2と同符号の部材は図2の電極と同一の部材である。
【0026】
アーク移行補助部材24aは、φ0.25mmのタングステンワイヤであり太径部20、軸部21からなるタングステン電極5R、5Lの太径部20後方に巻かれてあり、その作製方法は、あらかじめコイル状にしておき太径部20に圧入して配置するだけである。コイル状放熱部材22は巻き終わり位置25aにおいてレーザー等により太径部20に溶着し、且つコイル状放熱部材22の巻き終わり端部のエッジ部をフィレット状にすることで巻き終わり端部での電界集中を防止しアーク移行補助部材24aのみに電界集中することを促している。
【0027】
これにより実施例1と同様の効果が得られる。またアーク移行補助部材24aはコイル状に限らず電界集中しやすく且つ熱容量が小さい形状であれば良く、例えば金属箔、板形状などでも良く、またその材質は太径部20より熱伝導が良い材料などにするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、液晶プロジェクタやDLPプロジェクタ等の光源装置に用いられる高圧放電ランプの長寿命、及び高効率化に資するものである。
【符号の説明】
【0029】
1・・・高圧放電ランプ
2・・・凹面反射鏡
3・・・発光管
4・・・放電容器
5R・・電極
5L・・電極
6・・・金属箔
7・・・電極リード
8R・・電極封着部
8L・・電極封着部
9・・・外部リード
10R・・点灯回路の片極側
10L・・点灯回路の片極側
11・・・金属線
12・・・ボトム孔
13・・・リード線
14・・・配線孔
15・・・配線金具
20・・・太径部
21・・・軸部
22・・・放熱部材
23・・・テーパ部
24・・・アーク移行補助部材
24a・・アーク移行補助部材
25・・・溶断位置
26・・・テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱容器で成る発光管の中央部に、一対の太径部、軸部からなる電極が対向して配置されると共に、放電物質と始動用ガスが充填された放電容器が形成され、当該放電容器から発光管の両端にかけて一対の電極封着部が形成され、当該電極封着部の端面から突出した電極リードを介して点灯回路に接続される高圧放電ランプと、当該ランプから放射される光を集光する凹面反射鏡とを備えた光源装置において、前記電極太径部に放熱部材を取り付け、且つ前記太径部と前記軸部の間にテーパ部を設け、前記電極太径部の中央より後方の前記電極封着部側に電界集中しやすく、且つ昇温しやすいアーク移行補助部材を設けたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記アーク移行部材はタングステンワイヤであり、その作製方法は、太径部に配置されているコイル状放熱部材を溶断することで作製される請求項1の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−60666(P2011−60666A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210825(P2009−210825)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】