説明

光源装置、投影装置及び投影方法

【課題】高い輝度で駆動しながらも、なるべく熱の影響を排除し、長寿命化を図る。
【解決手段】複数のLED21〜23と、これらLED21〜23に対し、立上り時の波高値が立下り時の波高値より大きい鋸歯状のパルス波形を有する電力信号を時分割で循環的に供給して発光駆動させる投影光処理部28とを備える。投影光処理部28は、上記複数の半導体光源素子の温度と寿命の相関特性上の閾値に応じて立上り時及び立下り時の波高値を設定した電力信号を上記複数の半導体光源素子に対して供給し、発光駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ装置等に好適な光源装置、投影装置及び投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ装置で、半導体レーザや発光ダイオードを光源として用いる技術が多く考えられている。(例えば、特許文献1,2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−341105号公報
【特許文献2】特開2007−025466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体レーザや発光ダイオードなどの半導体光源は、素子がきわめて小さい上に高輝度の発光が可能である。その反面、熱の影響を受けやすく、高い温度で長時間に渡って駆動すると劣化が激しく、寿命が大幅に短縮されるという不具合があった。
【0005】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高い輝度で駆動しながらも、なるべく熱の影響を排除し、長寿命化を図ることが可能な光源装置、投影装置及び投影方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、複数の半導体光源素子と、上記複数の半導体光源素子に対し、立上り時の波高値が立下り時の波高値より大きい鋸歯状のパルス波形を有する電力信号を時分割で循環的に供給して発光駆動させる駆動制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記駆動制御手段は、上記複数の半導体光源素子の温度と寿命の相関特性上の閾値に応じて立上り時及び立下り時の波高値を設定した電力信号を上記複数の半導体光源素子に対して供給し、発光駆動させることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、複数の半導体光源素子と、上記複数の半導体光源素子に対し、立上り時の波高値が立下り時の波高値より大きい鋸歯状のパルス波形を有する電力信号を時分割で循環的に供給して発光駆動させる駆動制御手段と、画像信号を入力する入力手段と、上記複数の半導体光源素子から出射する光を用い、上記入力手段で入力する画像信号に対応した光像を形成して投影する投影手段とを具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、複数の半導体光源素子、画像信号を入力する入力部、及び複数の半導体光源素子から出射する光を用い、上記入力部で入力する画像信号に対応したカラーの光像を形成して投影する投影部を備えた投影装置での投影方法であって、上記複数の半導体光源素子に対し、立上り時の波高値が立下り時の波高値より大きい鋸歯状のパルス波形を有する電力信号を時分割で循環的に供給して発光駆動させる駆動制御工程を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い輝度で駆動しながらも、なるべく熱の影響を排除し、長寿命化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るデータプロジェクタ装置の回路構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態に係るカラー画像のフレームを構成するRGBフィールドと、各LEDに与えられる電流信号の波形とを例示するタイミングチャート。
【図3】同実施形態に係るLEDの駆動電流波形を取出して示す図。
【図4】同実施形態に係る電流波形と温度変化特性とを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明をDLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式のデータプロジェクタ装置に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るデータプロジェクタ装置10の概略機能構成を示すブロック図である。
11は入出力コネクタ部であり、例えばピンジャック(RCA)タイプのビデオ入力端子、D−sub15タイプのRGB入力端子、及びUSB(Universal Serial Bus)コネクタを含む。
【0014】
入出力コネクタ部11より入力される各種規格の画像信号は、入出力インタフェース(I/F)12、システムバスSBを介し、一般にスケーラとも称される画像変換部13に入力される。
【0015】
画像変換部13は、入力された画像信号を投影に適した所定のフォーマットの画像信号に統一し、表示用のバッファメモリであるビデオRAM14に適宜書込んだ後に、書込んだ画像信号を読出して投影画像処理部15へ送る。
【0016】
この際、OSD(On Screen Display)用の各種動作状態を示すシンボル等のデータも必要に応じてビデオRAM14で画像信号に重畳加工され、加工後の画像信号が読出されて投影画像処理部15へ送られる。
【0017】
投影画像処理部15は、送られてきた画像信号に応じて、所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば60[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により、空間的光変調素子(SLM)であるマイクロミラー素子16を表示駆動する。
【0018】
このマイクロミラー素子16は、アレイ状に配列された複数、例えばXGA(横1024画素×縦768画素)分の微小ミラーの各傾斜角度を個々に高速でオン/オフ動作して表示動作することで、その反射光により光像を形成する。
【0019】
一方で、光源部17から時分割でR,G,Bの原色光が循環的に出射される。この光源部17からの原色光が、ミラー18で全反射して上記マイクロミラー素子16に照射される。
【0020】
そして、マイクロミラー素子16での反射光で光像が形成され、形成された光像が投影レンズユニット19を介して、投影対象となる図示しないスクリーンに投影表示される。
【0021】
光源部17は、赤色(R)光を発する発光ダイオード(以下「R−LED」と称する)21、緑色(G)光を発する発光ダイオード(以下「G−LED」と称する)22、及び青色(B)光を発する発光ダイオード(以下「B−LED」と称する)23を有する。
【0022】
R−LED21の発する赤色光は、ダイクロイックミラー24を透過した後、インテグレータ25で輝度分布が略均一な光束とされた後に上記ミラー18へ送られる。
【0023】
G−LED22の発する緑色光は、ダイクロイックミラー26で反射された後、上記ダイクロイックミラー24でも反射され、上記インテグレータ25を介して上記ミラー18へ送られる。
【0024】
B−LED23の発する青色光は、ミラー27で反射された後に上記ダイクロイックミラー26を透過し、その後に上記ダイクロイックミラー24で反射され、上記インテグレータ25を介して上記ミラー18へ送られる。
上記ダイクロイックミラー24は、赤色光を透過する一方で、緑色光及び青色光を反射する。上記ダイクロイックミラー26は、緑色光を反射する一方で、青色光を透過する。
【0025】
光源部17の各LED21〜23の発光タイミングや駆動信号の波形等を投影光処理部28が統括して制御する。投影光処理部28は、投影画像処理部15から与えられる画像データのタイミングと後述するCPU31の制御に応じてLED21〜23の発光動作を制御する。
【0026】
上記各回路の動作すべてをCPU31が制御する。このCPU31は、メインメモリ32及びプログラムメモリ33と直接接続される。メインメモリ32は、DRAMで構成され、CPU31のワークメモリとして機能する。プログラムメモリ33は、電気的書換可能な不揮発性メモリで構成され、CPU31が実行する動作プログラムや各種定型データ等を記憶する。CPU31は、上記メインメモリ32及びプログラムメモリ33を用いて、このデータプロジェクタ装置10内の制御動作を実行する。
【0027】
上記CPU31は、操作部34からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。
この操作部34は、データプロジェクタ装置10の本体に設けられるキー操作部と、このデータプロジェクタ装置10専用の図示しないリモートコントローラからの赤外光を受光するレーザ受光部とを含み、ユーザが本体のキー操作部またはリモートコントローラで操作したキーに基づくキー操作信号をCPU31へ直接出力する。
【0028】
上記CPU31はさらに、上記システムバスSBを介して音声処理部35とも接続される。音声処理部35は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時に与えられる音声データをアナログ化し、スピーカ部36を駆動して拡声放音させ、あるいは必要によりビープ音等を発生させる。
【0029】
次に上記実施形態の動作について説明する。
なお、マイクロミラー素子16が直接投影画像処理部15に駆動されて表示動作を行なう一方で、LED21〜23は投影光処理部28に直接駆動されて順次間欠的に発光動作を行なう。これら投影画像処理部15及び投影光処理部28は、いずれも上述した如くCPU31の制御の下に動作するものであり、CPU31はプログラムメモリ33に記憶されている動作プログラム等を読出してメインメモリ32に展開した上で制御処理を実行する。
【0030】
図2は、カラー画像1フレームを構成するR,G,Bの各フィールドの投影タイミングと、光源部17の各LED21〜23に与えられる電流信号の波形とを例示するタイミングチャートである。
【0031】
図2(A)は、投影動作中に、マイクロミラー素子16で表示するカラー画像のフレームを構成するR,G,Bの各フィールドの切換タイミングを示す。
【0032】
このマイクロミラー素子16での表示動作に同期した色の光像を形成して投影するべく、図2(B)〜図2(D)に示すようにR,G,Bの各フィールドに対応してLED21〜23を間欠駆動する。
【0033】
上述した如く画像データのフレームレートが60[フレーム/秒]であった場合、1フィールド当たりの期間は1/180[秒]となる。したがって投影光処理部28は、1/60[秒]の周期でLED21〜23を順次1/180[秒]ずつ、いずれも図示するような信号波形で間欠的に発光駆動する。
【0034】
図3で、投影光処理部28が上記LED21〜23を駆動する信号波形を抽出して示す。LED21〜23の輝度調整は電流値制御で行なわれる。そのため投影光処理部28はLED21〜23に対し、規定電圧で図示するような電流波形となる鋸歯状の信号を与えて時分割で発光駆動させる。
【0035】
すなわち、パルス波形の立上り時の波高値をi1、立下り時の波高値をi2とすると、必ず「i1>i2」の関係を保ち、立上り時の波高値が立下り時の波高値より大きい鋸歯状のパルス波形を有する電力信号を時分割で循環的に供給する。
【0036】
一般にLED及びLD(半導体レーザ)等の半導体光源素子では、温度の低い状態の方が発光効率が高くなる。そのため、本実施形態のように、間欠時に温度が下がっている状態からの立上り時に、より大きな電流値i1で駆動することで発光効率を上げる。以後、同一パルス内で後半にかけて徐々に電流値を下げることで、光源素子への蓄熱量を減少させる。
【0037】
図4は、上記のような波形の電流値駆動によるLED21〜23での温度シミュレーションを示す。図4(A)は、LED21〜23に与える信号の鋸歯状の波形Iを一般的な方形波による駆動波形IIと比較して示す。
【0038】
方形波IIの波高値が上記電流値i1,i2の中間値である「(i1+i2)/2」である場合、本実施形態の波形Iと方形波IIとでLED21〜23で消費する電力自体は同様となる。
【0039】
しかしながら、図4(B)にLED21〜23の温度変化を示すように、上記波形Iで示した信号を与えた場合の温度変化波形III では、パルスの立上り時の電流の波高値i1により急峻に温度が上昇するものの、その後に電流値が徐々に低下することで、結果として最高温度tP1が低く抑えられ、以後の間欠期間で順次低下する。
【0040】
これと比較して上記一般的な方形波による駆動波形IIで示した信号を与えた場合の温度変化波形IVでは、立上り時から温度が徐々に上昇し、その後も電流値が変化しないために、結果として最高温度tP2が上記温度tP1よりも高くなり、以後の間欠期間で順次低下する。
【0041】
したがって、本実施形態による駆動方法は、一般的な駆動方法に比して、より発光効率が高い状態でLED21〜23を駆動できることに加え、上記最高温度tP1,tP2の差分tDだけ、素子の最高温度を低く抑えることが可能となる。
【0042】
素子の温度条件は、LEDを含む半導体光源素子の寿命を左右する大きな要因であるため、最高温度を低く抑えることで、素子の長寿命化を図ることが可能となる。
【0043】
特に半導体光源素子では、温度と寿命の相関特性上、ある閾値温度を超えるような環境下では急激に寿命が短くなることが知られている。したがって、その半導体光源素子の温度特性上、上記閾値温度を超えないように立上り時の波高値及び立下り時の波高値を設定することにより、素子の発光効率を高い状態で維持しながら、同時に素子の長寿命化を図ることが可能となる。
【0044】
さらに、本実施形態では、プロジェクタにおける光源としてLED21〜23を想定しているため、上述したようにLED21〜23はそれぞれ間欠駆動される。したがって、図4に示すように、一旦点灯されると次回点灯時まで空き時間が生じ、この空き時間中にLEDは冷却されることとなるが、LEDを長時間連続駆動していると、フレームを経る毎に次第に熱が蓄積してくため、この空き時間では熱が充分に下がりきらなくなるといった事態が生じる虞がある。このような場合でも、本実施例のように最高温度を低く抑えることが可能であれば、間欠駆動する場合の空き時間を使って効率的に冷却をすることが可能となる。
【0045】
以上詳記した如く本実施形態によれば、温度が低く、発光効率が高い状態で大きな電力を供給して発光させるため、消費電力が制限される環境下では、LED21〜23に所望される発光輝度を得るために必要な電力を低く抑えることができる一方で、消費電力が制限されていない環境下ではより大きな発光輝度で光源素子であるLED21〜23を駆動できる。
【0046】
加えて、LED21〜23を構成する素子自体の温度特性上、予め設定されている閾値温度を超えないように駆動電流の立上り時の波高値及び立下り時の波高値を設定することで、LED21〜23の発光効率を高い状態で維持しながら、同時にLED21〜23の長寿命化を図ることが可能となる。
【0047】
なお、上記実施形態では光源の素子として3原色のLED21〜23を用いる場合について説明したが、本発明はLEDに限らず、LD(半導体レーザ)でも同様に適用可能であり、複数の半導体光源素子を用いる装置あるいは当該装置の駆動方法であれば、その素子の種類や構成個数等を制限するものではない。
【0048】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0049】
10…データプロジェクタ装置、11…入出力コネクタ部、12…入出力インタフェース(I/F)、13…画像変換部、14…ビデオRAM、15…投影画像処理部、16…マイクロミラー素子、17…光源部、18…ミラー、19…投影レンズユニット、21…R−LED、22…G−LED、23…B−LED、24…ダイクロイックミラー、25…インテグレータ、26…ダイクロイックミラー、27…ミラー、28…投影光処理部、31…CPU、32…メインメモリ、33…プログラムメモリ、34…操作部、35…音声処理部、36…スピーカ部、SB…システムバス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体光源素子と、
上記複数の半導体光源素子に対し、立上り時の波高値が立下り時の波高値より大きい鋸歯状のパルス波形を有する電力信号を時分割で循環的に供給して発光駆動させる駆動制御手段と
を具備したことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
上記駆動制御手段は、上記複数の半導体光源素子の温度と寿命の相関特性上の閾値に応じて立上り時及び立下り時の波高値を設定した電力信号を上記複数の半導体光源素子に対して供給し、発光駆動させることを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
複数の半導体光源素子と、
上記複数の半導体光源素子に対し、立上り時の波高値が立下り時の波高値より大きい鋸歯状のパルス波形を有する電力信号を時分割で循環的に供給して発光駆動させる駆動制御手段と、
画像信号を入力する入力手段と、
上記複数の半導体光源素子から出射する光を用い、上記入力手段で入力する画像信号に対応した光像を形成して投影する投影手段と
を具備したことを特徴とする投影装置。
【請求項4】
複数の半導体光源素子、画像信号を入力する入力部、及び複数の半導体光源素子から出射する光を用い、上記入力部で入力する画像信号に対応したカラーの光像を形成して投影する投影部を備えた投影装置での投影方法であって、
上記複数の半導体光源素子に対し、立上り時の波高値が立下り時の波高値より大きい鋸歯状のパルス波形を有する電力信号を時分割で循環的に供給して発光駆動させる駆動制御工程を有したことを特徴とする投影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−113874(P2011−113874A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270515(P2009−270515)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】