説明

光照射装置および画像読み取り装置

【課題】熱的な変動が作用した場合においても光源部と導光体との相対位置を高い精度で位置決めすることが容易な構成を備えた光照射装置を提供する。
【解決手段】直線状に配列された複数の点光源32と、該光源32から入射した光を特定の方向に案内して出射する透光性材料からなる導光体31と、を備えた光照射装置において、前記導光体31には前記点光源32に対する位置決め部311s、312b、313cが設けられており、前記位置決め部は、取付けられた前記導光体31が、前記光源32の配列方向に平行な方向(Y方向とする)には伸縮の自由度を持たせ331a,331c、Y方向に直交する方向(光軸方向をZ方向、Y方向及びZ方向に直交する方向をX方向とする)では固定される構成332bであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置および画像読み取り装置に関し、さらに詳しくは、原稿走査時に用いられる光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電子写真方式による画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に画像情報に応じた静電潜像が形成されその静電潜像がトナーにより可視像処理し後、トナー像を記録紙などの記録媒体に転写して複写出力を得るようになっている。
【0003】
画像情報を得るための原稿走査に際しては、発光素子から照射された操作光が原稿面で反射しその反射光が受光素子に受光される方式が多用されている。
具体的には、受光素子(Charge Coupled Devices:CCD,Complementary Metal Oxide Semiconductor:CMOS等)を用いて原稿面からの反射光を読み取ることで画像情報として取り込むことが行われる。
読み取り対象となる原稿には、単一色のものだけでなく、フルカラー画像で構成されたものもあり、カラー画像を読み取る場合には、一般に原稿面からの煩瑣光を、R(赤)、G(緑)、B(青)の三原色に分解された個別色を受光素子により受光するようになっている。
【0004】
図13は、カラー画像を対象とした原稿走査径の構成を説明するための模式図である。
同図において、原稿からの反射光を受講する受光素子(便宜上、イメージセンサの一つとして符号CCDと表記する)は色毎に異なる位置にそれぞれ配置されており、これにより、各受光素子で受光される反射光は原稿面の異なる地点からの反射光が含まれていることになる。
【0005】
異なる位置に配置されている各受光素子に対する反射光は、各受光素子の並び方向(図Aにおいて左右方向:主走査方向に相当)において強度が十分大きくかつ均一であることが読み取り画像品質の向上にとって重要となる。
【0006】
そこで、図A(B)に示すように、各受光素子の受光面の幅(各受光素子の並び方向における長さ)を「a」とし、各受光素子の受光面の中心間距離を「b」とし、原稿面から各受光素子までの光学系による縮率を「m」としたとき、照射される光の強度を大きくしかつ均一にする必要がある原稿面上の幅(図1(a)中左右方向の長さ)Xが、(a+b×2+α)/mとして設定されるようになっている。なお、「α」は、製造誤差等の誤差を考慮して適宜設定されるパラメータである。
【0007】
上記原稿面上の幅Xにおいて十分に強度が大きくかつ均一な光を照射し得る光照射装置としては、例えば、その幅Xの方向に対して直交する方向に長手方向が一致するように配置された円筒形状のキセノンランプを光源部として用いたものがある。
【0008】
しかし、近年の省エネルギー化、画像読み取り装置の信頼性向上等の要求に十分に応えるには、キセノンランプでは、消費電力が大きい。このため、キセノンランプよりも、消費電力の小さい光源部が望まれている。
そこで、従来では、このような光源部として、例えば発光ダイオード(LED)が利用することが提案されている。
【0009】
しかし、LEDは、一般に、キセノンランプに比べて、光照射強度が小さい。そのため、単純にLEDを光源部として利用する場合には、上記原稿面上の幅Xにおいて十分に強度が大きい光を照射することが困難である。
これを解決するため、光源部と原稿面との間に透光性材料からなる導光体を配置した光照射装置が用いられる(例えば、特許文献2、3及び4)。
【0010】
これらの特許文献1、2及び3に開示されている光照射装置は、回路基板上に取付けられたLED(光源部)と、そのLEDから照射されて入射した光を原稿面に向けて案内して出射する導光体とを備えている。このような導光体を備えた光照射装置であれば、LEDから放射状に照射された光の多くを上記原稿面上の幅Xの狭い領域に集めることが可能となる。従って、導光体を利用すれば、光照射強度が小さいLED等を光源部として用いても、その幅Xの部分に強度が大きい光を照射することが可能となる。
【0011】
ところで、LED等のように比較的光照射強度が小さい光源部を用いる場合、その光源部から照射された光をなるべく多く導光体へ入射させ、かつ、導光体に入射した入射光の多くを照射対象に向けて出射させ、そのうえで光照射強度のムラも抑えることが望まれる。この要望に応えるためには、その光源部と導光体との相対的な位置決めに高い精度が要求される。また、外乱に対しても高精度に位置決めされた状態を維持する必要がある。
【0012】
このような要求を満たすために、特許文献5及び特許文献6に開示されているように、LEDと導光体を接触させ、両面テープや接着剤等で固定する方法が提案されている。これらの手法を用いると、LEDと導光体の位置関係が精度良く決められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
最近では画像読み取りの高速化の要望があり、このためには照明装置の輝度を上げ、これにより原稿の読み取り面を照明する照明光の輝度を上げることが必要になる。
【0014】
しかしながら、照明装置の輝度を上げるために発光素子の通電電流を増加すると、発光と同時にジャンクション温度が上昇する(発光素子自体から発熱する)。このとき、光源の熱が光透過性を有して光源から入射した光を特定方向に案内する導光体へ伝わり、熱による変形(膨張)によって高精度に位置決めされた光源部と導光体の位置関係が崩れ所望の照射強度とその平坦性が保てないという問題があった。
【0015】
本発明の目的は、上記従来の光照射装置における問題に鑑み、熱的な変動が作用した場合においても光源部と導光体との相対位置を高い精度で位置決めすることが容易な構成を備えた光照射装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、この目的を達成するため、次の構成よりなる。
(1)直線状に配列された複数の点光源と、該光源から入射した光を特定の方向に案内して出射する透光性材料からなる導光体と、を備えた光照射装置において、
前記導光体には前記点光源に対する位置決め部が設けられており、
前記位置決め部は、取付けられた前記導光体が、前記光源の配列方向に平行な方向(Y方向とする)には伸縮の自由度を持たせ、Y方向に直交する方向(光軸方向をZ方向、Y方向及びZ方向に直交する方向をX方向とする)では固定される構成であることを特徴とする光照射装置。
【0017】
(2)前記導光体は、ベース部材において前記光源の光出射側に設けられている支持面に前記光軸方向(Z方向)の一方面を当接されて支持され、該光軸方向(Z方向)の他方面を押し当て部材により押圧されて前記支持面側に付勢され、
前記導光体および前記支持面とには、前記光源の配列方向に平行な方向に相当する前記導光体の長手方向中央もしくは該中央を基準とした長手方向の少なくとも一方側で前記導光体の長手方向およびこれと直角な方向の動きを固定し、長手方向の他の位置で前記導光体の長手方向の伸縮のみを許容する係止部が設けられていることを特徴とする(1)記載の光照射装置。
【0018】
(3)前記係止部は、前記導光体側に設けられた突起部と、前記支持面側において該導光体の長手方向中央に位置する凹状部および前記導光体の長手方向に平行する長手方向を有する凹状部とで構成されていることを特徴とする(2)記載の光照射装置。
【0019】
(4)前記係止部は、互いに嵌り込むことが可能な円柱部を有し、前記導光体の長手方向と直角な方向での動きを規制されることを特徴とする(3)記載の光照射装置。
【0020】
(5)前記係止部のうちで、前記導光体の長手方向中央以外に位置する係止部は、前記導光体の長手方向に平行した凸条部で構成され、該凸条部に対向する前記支持面には、前記導光体の長手方向と直角な方向での動きを規制可能でかつ凹での伸縮を許容する長さを持ち、該凸条部が嵌り込む凹状溝が設けられていることを特徴とする(2)記載の光照射装置。
【0021】
(6)前記導光体を押し当てる押し当て部材は、前記ベース部材に基端が取り付けられた片持ち梁状の板バネが用いられることを特徴とする(2)記載の光照射装置。
【0022】
(7)前記係止部は、前記導光体の長手方向中央を含む長手方向全域に亘って延長された凸条部で構成され、該凸条部に対向する前記支持面には、前記導光体の長手方向と直角な方向での動きを規制可能でかつ凹での伸縮を許容する長さを持ち、該凸条部が嵌り込む凹状溝が設けられていることを特徴とする(2)記載の光照射装置。
【0023】
(8)前記係止部に用いられる凸条部は、接着により設けられることを特徴とする(4)乃至(7)のうちの一つに記載の光照射装置。
【0024】
(9)原稿面に対して光を照射する光照射手段と、該原稿面からの光を受光して該原稿面の画像を読み取る画像読み取り手段とを備えた画像読み取り装置において、
上記光照射手段として、(1)乃至(8)のうちの一つに記載の光照射装置を用いたことを特徴とする画像読み取り装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、導光体の熱変形を抑止するのでなく、導光体の熱変形、特に膨らみが生じた場合の変形を、光源に対する導光体の位置関係を狂わせることなく正常状態に維持できる状態で許容することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による光照射装置が用いられる原稿読み取り装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明による光照射装置構成を説明するための斜視図である。
【図3】図2に示した光照射装置の要部構成を示す図である。
【図4】図3に示した要部構成に用いられる導光体の構成を示す斜視図である。
【図5】図4中、符号(5)で示す部分の拡大図である。
【図6】図3に示した要部構成に用いられるベース部材の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明による光照射装置の特徴を説明するための図3想到の図である。
【図8】本発明による光照射装置の要部変形例の一つを説明するための斜視図である。
【図9】図8に示した構成の部分拡大図である。
【図10】本発明による光照射装置の要部変形例の他の一つを説明するための斜視図である。
【図11】本発明による光照射装置に用いられる導光体の他の変形例を説明するための斜視図である。
【図12】図11に示した構成の要部を示す拡大図である。
【図13】原稿読み取り装置の従来例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図示実施例により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による光照射装置を用いる画像読み取り装置の構成を説明するための模式図である。
同図において画像読み取り装置100は、図3において詳細を説明する1対の光照射装置18により光が照明される照明対象物である原稿10を自動送りする搬送ベルト11と、原稿面の画像を読み取る画像読み取り手段としての画像読み取り機構13とを備えている。
【0028】
画像読み取り機構13は、ミラー15、結像レンズ16、受光素子としての光電変換素子であるCCD17等により構成されている。また、画像読み取り機構13と光照射装置18は、ガラス窓14を持つ光学ハウジング12に取付けられている。
画像読み取り装置100では、光照射装置18により原稿10を照射し、原稿10からの光がミラー15によって折り返され、結像レンズ16を通ってCCD17に入射し、CCD17によって受光される。
光照射装置18は、図2の斜視図に示すように、回路基板であるLEDアレイ基板30上に一列に配置された光源部である複数のLED32と、導光体31とを有している。
【0029】
LEDアレイ基板30は、その長手方向が、搬送ベルト11の搬送方向に対して直交する方向であって略水平方向に延びるように、すなわち、原稿10の主走査方向に延びるように配置される。
複数のLED32は、LEDアレイ基板30上にその長手方向(この方向をY方向と呼ぶ)に沿って一列に並んで配置されている。LEDアレイ基板30には、各LED32に電力を供給するための図示しない配線パターン及び各種回路素子が形成されている。
図3は、光照射装置の側面図であり、同図において本実施例におけるLED32は、その出射面がLEDアレイ基板30の基板面に対して垂直な方向(Z方向と呼ぶ)に向くように、LEDアレイ基板30上に配置されている。
したがって、LED32の出射面から出射する光の中心線方向、すなはちZ方向は、LEDアレイ基板30の基板面に対してほぼ垂直な方向となる。なお、本実施形態では、複数のLED32を一列に配置する場合を例に挙げて説明するが、複数列に配置するようにしてもよい。 また、LED32の出射面がLEDアレイ基板30に対して平行であっても良い。
【0030】
導光体31は、光透過性を有する透光性材料、例えば透明な樹脂(アクリル、ポリカーボネート等)やガラスなどから形成されている。導光体31は、少なくとも複数のLED32の列長よりも長い長尺な入射面31a及び出射面31bを有する略直方体状の部材である。導光体31は光軸方向両側面31c、31dがテーパ面に形成されており、入射面31aよりも出射面31bの方が面積が広くなっている。導光体の側面31c、31dは鏡面加工されており、導光体31の内部を進む光が側面から漏れないようになっている。
【0031】
この導光体31は、各LED32と原稿面との間に配置される。具体的には、導光体31は、その入射面31aが各LED32の出射面に対向するように近接又は接触するように配置され、その出射面31bが原稿面に向くように配置される。これにより、導光体31は、LED32から照射された光を入射面31aで受光し、これを原稿面に向けて案内して出射面31bから出射する。
LEDアレイ基板30及び導光体31はベース部材33に固定され、上記の位置関係に配置する。
ここで、LED32の光出射方向をZ方向、LED32の配列方向をY方向、Z方向(出射方向)とY方向(配列方向)に直交する方向をX方向と呼ぶ。
【0032】
画像読み取り部の光源として複数のLED32を使用する場合、各LED32から照射される光を適切に原稿面へと導く必要がある。そのためには、各LED32と導光体31との相対的な位置を高い精度で位置決めし、経時的な温度変化が生じ、樹脂で形成されている導光体31に環境温度の変化によりソリや伸び等の形状の変化が生じても、その位置関係が維持される必要がある。
【0033】
従来は、光照射装置18の製造工程において、このように高い精度で位置決めしても温度変化が生じた場合、樹脂で形成された導光体31が膨張しその位置精度を維持することが困難であった。そこで、本実施形態では、LED32の配列方向に平行する導光体31の長手方向(Y方向)には導光体の伸縮の自由度があり、この方向に直交する平面内(X、Z平面)では導光体がLED32に対して位置決めされた構造で導光体31を固定する。
【0034】
図4〜図7を用いて、導光体の構成について説明すると次の通りである。なお、図4は導光体の全体構成示す斜視図であり、そして、図5は導光体の一部を拡大した図である。
図4において、導光体31の側面31dには、突起311a、突起312b、突起313cが形成されている。
突起312bは、導光体31の長手方向に相当するY方向の中心位置に形成され、突起311a、突起313cは長手方向の中心を基準として対称となるように導光体31の長手方向端部側に位置している。
突起312bは、図5に示すように、X方向に平行に形成された略円柱形状をしており、端部はテーパで形成されている。
なお、図5には示していないが、突起311a、突起313cも突起312bと同様の形状をしている。
【0035】
図6は、導光体31の支持に用いられるベース部材の斜視図を示しており、同図において、丸内に示す図はベース部材33の一部を引き出した拡大図である。
同図においてベース部材33は、Y方向(導光体31の長手方向)に平行する長尺な導光体支持面335を有する。
導光体支持面335はY、Z平面に略平行な方向で、導光体31の側面のテーパに合わせ、導光体31の側面31cを導光体支持面335に乗せた時に導光体31の出射面31bがX、Y平面に平行を成す角度となっている。
導光体支持面335には、導光体31の長手方向端部側の伸縮変形を許容し、そして長手方向中央ではその長手方向に加えて長手方向と直角な方向での移動を規制することで固定する構成が設けられている。
【0036】
上記導光体31の移動を制御するために、導光体支持面335には溝331a、溝332b、溝333cが形成されている。溝332bはベース部材33のY方向(長手方向)の中心に位置し、溝331a、溝333cは、溝332bを中心にして対称にY方向(長手方向)の両端側に位置している。溝331a、溝332b、溝333cの間隔は、導光体31に形成された、突起311a、突起312b、突起313cの間隔と等しい。
【0037】
図6における丸内の図は、ベース部材33の各部における突起の嵌合部を示す図である。
同図においてY軸方向の中心部に形成された溝332bは導光体31の中心の突起312bが滑合程度の公差を持つ大きさの円形の溝であり、突起311bが嵌り込むとX、Y、Zの各方向への移動が規制されるようになっている。
一方、ベース部材33のY方向の端部に形成された溝331a及び溝333cはZ方向には突起311aが、ほとんど公差なく、いわゆる止まり嵌めができるように、がたつくことがない状態で嵌る大きさを有し、Y方向には、Y方向に長手方向を有して突起311aよりも大きな長穴が形成されている。
【0038】
図7には、光照射装置におけるベース部材33による導光体31の支持状態、詳しくは、光照射装置のY方向の中心に形成された突起312b及び溝332bでの断面が示されている。これを用いて導光体31のベース部材33への取付け構造を説明する。
ベース部材33にはXY平面に平行な方向にLED支持面336が形成されている。LED支持面336はY方向及びZ方向においてLEDアレイ基板30よりも大きい。
【0039】
この面のY方向の中心には不図示の位置決めピンとネジ穴がZ方向に形成されている。また、LEDアレイ基板30には、位置決めピンに対応する位置に、位置決めピンより径が大きく、嵌合可能な穴が開けられている。この穴を位置決めピンに挿入することにより、LEDアレイ基板30のXY平面内における位置を決めることができる。また、LEDアレイ基板30には、ネジ径よりも大きな貫通穴が、LED支持面336のネジ穴に対応する位置に開けられており、ネジでLEDアレイ基板30をLED支持面336に締結することにより、LEDアレイ基板30のZ方向の位置を決め、固定することができる。これにより、所望の位置にLED32の位置を固定することができる。
【0040】
一方、導光体31の側面31cに形成された突起312bはベース部材33の導光体支持面335に形成された溝332bに滑合程度の公差を持ち、隙間無く嵌めこむことができる。これにより、LED32に対して、X、Y、方向での位置を固定された状態で導光体31の中心位置を位置決めすることができる。
【0041】
一方、突起311a及び突起313cも同様にして溝331aと溝333cに嵌め込むことができる。突起311aと溝331a及び突起313cと溝333cの嵌合では、それぞれの溝が突起に対してY方向では大きくなっている。
これにより、導光体31の中心は突起312bによってベース部材33に対して位置決めされているため、熱が加わると導光体31の中心部分を基準としてY軸の+方向と−方向に導光体31の膨張(及び伸縮)が発生する。この時突起311aと溝331a及び突起313cと溝333cの嵌合部ではY方向に形状変化があっても突起部が溝に干渉しないため、熱による導光体31の膨張(及び伸縮)が発生しても、その大きさの変化を吸収する事ができる。
【0042】
この構成においては、導光体31の中心を位置決めの基準としたが、隙間無く嵌めこむことができる突起と溝の組合せを形成する位置を変えれば、所望の位置を基準とすることができる。本実施例では、LEDアレイ基板30の位置決めの基準位置と、導光体31とベース部材33の滑合位置を合わせた事により、熱による導光体31の伸縮が生じてもY方向の+及び−方向の形状変化は等しくなる。
【0043】
これにより、LEDアレイ基板30の両端に例えばコネクタのような、LED32よりもZ方向のサイズが大きく、導光体31のY方向の伸縮により干渉する可能性のある部品を実装した場合にも、Y方向の+及び−方向の配置を対称にする事ができるため、LEDアレイ基板の実装も左右対称となり、LEDアレイ基板30を2枚に分割して製作する場合にも実装のレイアウトを左右同じにする事ができ、基板設計が容易になる。
【0044】
また、LEDアレイ基板30が2枚になっても、最も短い長さで、導光体31の熱による伸縮を吸収可能なLEDボードアレイ基板30を実現することができる。
さらに、突起を3カ所に形成したことにより、導光体31の中心及び両端のZ方向の位置を所望の位置に決めることができ、これにより一次の曲がりを補正することができる。
【0045】
また、一般的に導光体の側面に構造体を形成すると、漏れ光が発生し導光体における光の減衰の原因となる。これを低減するには導光体側面の構造をできるだけ小さな面積に押える必要がある。ここでは、突起311a、突起312b及び突起313cの形状を円柱状としたことで、最低限の面積で所望の固定構造を達成することができる。これにより、突起からの漏れ光を低減することができ、光利用効率の良い固定構造を達成することができる。
特に、長手方向中央では突起と凹部の構成がY方向(長手方向)にもこれと直角なX方向での移動を規制する構成であるので導光体31の位置決めが正確に行えると共に、長手方向中央以外の部分に位置する突起と凹部との嵌合状態が、Z方向の位置を規制しながら導光体の熱変形に応じて伸縮できる関係であるので、所望の位置を基準として経時的な温度変化による部品形状の変化を制御することができる。これにより,光照射強度のムラが少なく,また効率も良い光照射装置を実現することが可能となる。
【0046】
一方、導光体31の突起が形成された側面31cに対向した側面31dの側には、板バネ34が配置されている。板バネ34には、不図示の円孔が設けられており、これを用いてベース部材33の板バネ取付け部336(図6参照)に締結し取付けることができるようになっている。
この板バネ34はY方向の中心位置(図6の位置)と中心位置に対称にY方向に沿って等間隔に5箇所の位置に設置する(図3参照)。この板バネ34を用いて導光体31をベース部材33に押し付けることによって、導光体をベース部材33に形成された導光体支持面335に倣わせ、導光体31のソリを補正しX方向の位置決め及び固定を行うことができる。
【0047】
導光体31はY方向に長尺な形状をしているため、熱による伸縮はY方向が最も影響が大きい。また、照射面での照度や色度等の光学特性にはLED32とのZ方向及びX方向の位置関係の寄与が大きい。そのため、上記のように導光体31のX方向及びZ方向については位置を精度良く固定し、Y方向については熱による変形を許容する様な構造をとることにより、環境温度の変化があっても原稿面で所望の光学特性を維持することができる。
【0048】
次に本発明による光照射装置に関する第2の実施例について図8を用いて説明すると次の通りである。
図8において導光体31には、前述した実施例と同様の面に3つの突起が形成されている。
Y方向中心の突起は前述した実施例と同様に円柱状をしており、導光体を支持するベース部材33には止まり嵌めのような滑合程度の公差を持つ凹部が形成されている。
【0049】
一方、Y方向端部に形成された突起は前述した実施例とは異なり、直線状の凸条形状をしている。この拡大図を図11に示す。
直線状の突起はY軸に平行な方向に形成されている。ベース部材33にはこれら2つの直線状の突起に対応し、直線状の切り欠き(溝)が設けられ、Z軸方向に平行な方向には中心部の突起と同様滑合程度の公差を持つ幅となっており、Y方向には熱による導光体31の伸縮が生じても干渉しない程度に十分大きな幅を持っている。
【0050】
これにより、環境温度の変化によって導光体31に伸縮が生じても、導光体31の中心とLED32の中心位置が精度良く固定された位置を保つことができる。また、導光体31の突起の形状が直線状となっていることにより、導光体31の高次の曲がりが生じることを防ぐ事ができる。
【0051】
なお、以上の実施例では導光体31に形成する突起の数を長手方向中央とこの中法を基準とした対称位置というように3カ所に設けた場合を説明したが、図10に示す様に中央を基準とした対称位置のみに2つでも良い。
突起の数を2つとすることで、最低限の突起の数で導光体の位置決めを行う事ができる。また一般的に導光体の側面は鏡面加工されている状態が理想的で、最も光利用効率の良い構造となるが、導光体31の側面に形成する構造を最低限に押えることにより、突起部が鏡面加工されていないことによって生じる、導光体側面からの漏れ光を低減し、これにより導光体における光損失を低減することができる。
【0052】
また、突起部の形状は図11および図12に示す様にY方向に平行な直線状の形状であっても良い。これにより、導光体31のX軸周りの高次形状変形を抑制することができる。特に、突起は直線状であることにより,経時的な温度変化による導光体の高次の形状変形を防ぐことができる。これにより高精度な位置決めと光照射強度の損失を抑えることが出来,光照射効率の良い光照射装置を実現することが出来る。
【0053】
また、導光体31のY方向の中心位置固定は接着によって行っても良い。これにより、部品点数を削減することができる。特に、導光体を支持するベース部材には,導光体のZY平面に略平行な面に形成された接着面に平行に向かい合う被接着面と,突起と嵌合可能な凹部(または突起)が形成され,凹部の寸法は突起の寸法に対してY方向には隙間がありZ方向には隙間が無いことになるので,部品点数を増やすことなく,安価な光照射装置の実現が可能となる。
【0054】
上記の様にしてLEDアレイ基板30と導光体31の位置固定を行った光照射装置18は、光学ハウジング12の光照射装置取付け部に取付ける。光照射装置は照射位置の両側に1個ずつ、計2個取付ける。光照射装置の長手方向(LED32が並んだ方向)が原稿10の搬送方向と垂直で、かつ、CCD17の素子の配列方向と一致している。
この様にして光照射装置18を光学ハウジング12に取付ける事により光照射装置18を原稿面画像読み取り機構13ならびに原稿10と所望の位置関係となる様に固定することができる。
また、光照射装置18を搭載することにより、画像読み取り装置100の読み取りを高精度に行う事が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
30 LED支持基板
31 導光体
32 LED
33 ベース部材
311a,312b,313c 突起
331a,332b,333c 溝
34 板バネ
X YおよびZ方向と直角な方向
Y 光源の配列方向
Z 光軸方向
100 画像読み取り装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開2009−93939号公報
【特許文献2】特許第3187280号公報
【特許文献3】特開平10−322521号公報
【特許文献4】特開平11−232912号公報
【特許文献5】特開2005−294172号公報
【特許文献6】特開2009−146874号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配列された複数の点光源と、該光源から入射した光を特定の方向に案内して出射する透光性材料からなる導光体と、を備えた光照射装置において、
前記導光体には前記点光源に対する位置決め部が設けられており、
前記位置決め部は、取付けられた前記導光体が、前記光源の配列方向に平行な方向(Y方向とする)には伸縮の自由度を持たせ、Y方向に直交する方向(光軸方向をZ方向、Y方向及びZ方向に直交する方向をX方向とする)では固定される構成であることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記導光体は、ベース部材において前記光源の光出射側に設けられている支持面に前記光軸方向(Z方向)の一方面を当接されて支持され、該光軸方向(Z方向)の他方面を押し当て部材により押圧されて前記支持面側に付勢され、
前記導光体および前記支持面とには、前記光源の配列方向に平行な方向に相当する前記導光体の長手方向中央もしくは該中央を基準とした長手方向の少なくとも一方側で前記導光体の長手方向およびこれと直角な方向の動きを固定し、長手方向の他の位置で前記導光体の長手方向の伸縮のみを許容する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の光照射装置。
【請求項3】
前記係止部は、前記導光体側に設けられた突起部と、前記支持面側において該導光体の長手方向中央に位置する凹状部および前記導光体の長手方向に平行する長手方向を有する凹状部とで構成されていることを特徴とする請求項2記載の光照射装置。
【請求項4】
前記係止部は、互いに嵌り込むことが可能な円柱部を有し、前記導光体の長手方向と直角な方向での動きを規制されることを特徴とする請求項3記載の光照射装置。
【請求項5】
前記係止部のうちで、前記導光体の長手方向中央以外に位置する係止部は、前記導光体の長手方向に平行した凸条部で構成され、該凸条部に対向する前記支持面には、前記導光体の長手方向と直角な方向での動きを規制可能でかつ凹での伸縮を許容する長さを持ち、該凸条部が嵌り込む凹状溝が設けられていることを特徴とする請求項2記載の光照射装置。
【請求項6】
前記導光体を押し当てる押し当て部材は、前記ベース部材に基端が取り付けられた片持ち梁状の板バネが用いられることを特徴とする請求項2記載の光照射装置。
【請求項7】
前記係止部は、前記導光体の長手方向中央を含む長手方向全域に亘って延長された凸条部で構成され、該凸条部に対向する前記支持面には、前記導光体の長手方向と直角な方向での動きを規制可能でかつ凹での伸縮を許容する長さを持ち、該凸条部が嵌り込む凹状溝が設けられていることを特徴とする請求項2記載の光照射装置。
【請求項8】
前記係止部に用いられる凸条部は、接着により設けられることを特徴とする請求項4乃至7のうちの一つに記載の光照射装置。
【請求項9】
原稿面に対して光を照射する光照射手段と、該原稿面からの光を受光して該原稿面の画像を読み取る画像読み取り手段とを備えた画像読み取り装置において、
上記光照射手段として、請求項1乃至8のうちの一つに記載の光照射装置を用いたことを特徴とする画像読み取り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−234718(P2012−234718A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102792(P2011−102792)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】